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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098705
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】フタロシアニン化合物
(51)【国際特許分類】
   C09B 47/12 20060101AFI20220627BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C09B47/12 CSP
G02B5/20 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212262
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】桑名 康弘
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148BB02
2H148BE36
2H148BE39
2H148BF02
2H148BH01
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、赤外領域に透過性があり、可視領域の吸収性が高い化合物を利用することで、カラーフィルタ用ブラックマトリックスレジスト、LCDのフォトスペーサー、医療包装用のPTP印刷物、食品パッケージ用印刷インキ、赤外線センサーカバー用フィルム、自動車塗装用塗料、建築、舗装用上塗り塗料等を提供することにある。
【解決手段】特定のチオフェノール置換基を有するフタロシアニン系化合物が、赤外領域の透過性が高く、一方可視領域の透過性が低い化合物であることを見出し、上記の課題を解決できたものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式( 1 ) で表されるフタロシアニン化合物 。
一般式(1)
【化1】
(式中、Xは各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表し、lは0~15の整数、m、nは、各々独立して0~8の整数を表し、ただし、どちらかが0の場合は、一方は1~8の整数を表し、0.5≦m+(n/2)≦10を満たし、Mは2価の金属原子、3価あるいは4価の置換金属またはオキシ金属を表す。)
【請求項2】
X線回折スペクトルにおいて、4.2°±0.2°≦2θ≦5.1°±0.2°に回折ピークを有する請求項1記載のフタロシアニン系化合物。
【請求項3】
請求項1または2記載のフタロシアニン系化合物をウレタンアクリル樹脂に分散した塗膜中の分光透過率が905nmにおいて50~99%であり、1500nmにおいて90~99.9%であることを特徴とする請求項1または2記載のフタロシアニン系化合物。
【請求項4】
請求項1~3いずれか一項記載のフタロシアニン系化合物を含有することを特徴とする波長制御剤。
【請求項5】
請求項1~4記載のフタロシアニン系化合物を含むインキ、印刷物、塗料、塗装、プラスチック、繊維、フィルム、ブラックマトリックス用レジスト、フォトスペーサー用レジスト、及び、その硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフタロシアニン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤外領域の波長の制御が要求される装置や設備、あるいは、材料が、幅広い分野において増加傾向にある。例えば、医療包装用のプレススルーパッケージ(PTP)印刷、食品パッケージ、赤外線センサー、自動車塗装、外壁材、道路舗装等が挙げられる。
PTP印刷された医薬包装用の異物検査装置においては、赤外線センサーを用いて、錠剤、あるいは、パッケージ自体の異物を検出する。その際、赤外領域に吸収を有するものは、光源からの赤外光をパッケージの基材であるアルミから十分に反射することができずに異物として認識される。そのため、色材には赤外領域の吸収が少ない、あるいは小さい材料が求められる。
【0003】
食品パッケージのリサイクルにおいては、赤外線センサーを用いて、リサイクルの可否を判断、あるいは、材料識別等を行っている。赤外領域に吸収を有するものは、光源からの赤外光を透過、あるいは識別装置によっては反射であるが、いずれもできずにリサイクル不可品として識別されてしまうことから、色材には赤外領域に吸収の少ない、あるいは小さい材料が求められている。
【0004】
赤外線センサーにおいては、センサーに相当する検出器、あるいは、光源等が必ずしも赤外領域のみを検出したり、発光したりする素子から形成されているとは限らないので、赤外領域のみの検出や出射には、可視領域を吸収あるいは反射し、赤外領域のみを透過する材料が求められる。
【0005】
一方、LCDやOLED等のカラーフィルタに用いられるブラックマトリックスやLCDのフォトスペーサーにおいては、各々のポストベーク後の後工程においてフォトマスクとの位置合わせに赤外線カメラを使用するため、精度良く位置合わせするには、赤外領域を透過する材料が望まれている。
【0006】
自動車塗装、外壁材、道路舗装等においては、暑い季節に前記対象物が太陽光を吸収することによって昇温するのをできるだけ防ぐ必要がある。これは、快適に過ごす観点のみならず、省エネルギーの観点からも重要な課題であるため、熱に寄与する度合いの大きい光近赤外領域を透過する材料が望まれている。さらに自動車塗装や道路舗装等においては、将来の普及が期待されている自動運転車の周辺環境認識で用いられる赤外線レーザーに対して有用でもある。
前記例示用途では、様々な理由から外観に有彩色以外に黒色も使用される傾向にある。PTP印刷や食品パッケージは、主に文字認識のために、赤外線センサーは、主にセンサーそのものを覆い隠すために、自動車塗装や外壁材では人気色であり、主に個人の嗜好を満たすために、道路塗装はアスファルト由来のためと、理由は異なるが無彩色である黒色は、白色と並び前記用途に限定されず数多くの用途に使用される基本色である。
【0007】
以上のように上記用途の黒色色材は、基本的には赤外領域の波長を透過する材料が望ましい。しかしながら、一般的に使用される黒色色材であるカーボンブラックは、熱に寄与する度合いの大きい800~1400nmを含め、赤外領域の波長の大範囲において光を吸収することから、カーボンブラックに代わる黒色色材が望まれている。
一方、金属フタロシアニンは、青色色材や緑色色材として、幅広い分野において使用されている。フタロシアニン分子は、その基本骨格となるテトラアザポルフィリンの環状ヘテロポリエンの共役二重結合の影響により、基本的には600~700nmに吸収を有し、更に前記フタロシアニン分子が一定の結晶形を形成することによって、吸収範囲を広げている。このような観点から、金属フタロシアニンは、赤外領域の波長を吸収する色材として開発がなされてきた。
例えば、金属フタロシアニンの一部がアミノチオール化合物で置換された溶解性近赤外線吸収化合物(引用文献1)、金属フタロシアニンの一部がスルホン酸塩、及び、アミノ基で置換された赤外領域に広く吸収を有する黒色フタロシアニン化合物(引用文献2)、特定のX線回折ピークを有し、かつ、可視領域の吸収が小さく、赤外領域に強い吸収を有する金属ナフタロシアニン化合物(引用文献3)等が挙げられる。
しかしながら、上記のいずれも赤外領域の吸収を向上させることを目的としており、赤外領域の吸収が小さく、かつ、可視領域の吸収が大きい黒色色材は、着目されてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-176501号公報
【特許文献2】特開2002-201371号公報
【特許文献3】特開2008-202000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、赤外領域に透過性があり、可視領域の吸収性が高い化合物を利用することで、カラーフィルタ用ブラックマトリックスレジスト、LCDのフォトスペーサー、医療包装用のPTP印刷物、食品パッケージ用印刷インキ、赤外線センサーカバー用フィルム、自動車塗装用塗料、建築、舗装用上塗り塗料等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のチオフェノール置換基を有するフタロシアニン化合物が、赤外領域の透過性が高く、一方可視領域の透過性が低い化合物であることを見出し、上記の課題を解決できたものである。
【0011】
すなわち本発明は、以下を含む。
【0012】
[1]下記一般式( 1 ) で表されるフタロシアニン化合物。
【0013】
一般式(1)
【0014】
【化1】
(式中、Xは各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表し、lは0~15の整数、m、nは、各々独立して0~8の整数を表し、ただし、どちらかが0の場合は、一方は1~8の整数を表し、0.5≦m+(n/2)≦10を満たし、Mは2価の金属原子、3価あるいは4価の置換金属またはオキシ金属を表す。)
[2]X線回折スペクトルにおいて、4.2°≦2θ≦5.1°に回折ピークを有する[1]記載のフタロシアニン化合物。
[3]1または2記載のフタロシアニン化合物をウレタンアクリル樹脂に分散した塗膜中の分光透過率が905nmにおいて50~99%であり、1500nmにおいて90~99.9%であることを特徴とする[1]または[2]記載のフタロシアニン化合物。
[4][1]~[3]いずれか一記載のフタロシアニン化合物を含有することを特徴とする波長制御剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明の新規なフタロシアニン化合物は、900~2500nmの近赤外域にわたって透過性を有する。また、400~800nmにわたって広域に強い吸収を有するため、波長制御剤として、カラーフィルタ用ブラックマトリックスレジスト、LCDのフォトペーサー、医療包装用のPTP印刷物、食品パッケージ用印刷インキ、赤外線センサーカバー用フィルム、自動車塗装用塗料、建築、舗装用上塗り塗料等の幅広い産業分野に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例2のX線回折スペクトルを示す図である。
図2】実施例2の透過波長スペクトルを示す図である。
図3】比較例1の透過波長スペクトルを示す図である。
図4】比較例2の透過波長スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に示す本発明の実施形態は本発明の一部の実施形態を表すにすぎず、要旨を大幅に逸脱しない限りにおいて記載内容のみには限定されない。
【0018】
[フタロシアニン化合物]
本発明の上記フタロシアニン化合物において、Xは各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、ハロゲン原子であるものとしては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子、フッ素原子が好ましく、特に塩素原子、臭素原子が好ましい。
また、lは1~15の整数を表すが、赤外領域の透過性の観点から、3~15が好ましく、さらに4~14が好ましく、特に5~13が好ましい。
m、nは各々独立して0~8の整数を表すが、mは0~6が好ましく、特に0~4が好ましい。nは1~7が好ましく、特に1~5が好ましい。
さらに本発明の上記フタロシアニン化合物において、赤外領域の透過性、及び、可視領域の吸収性の観点から、0.5≦m+(n/2)≦10を満たすことが好ましく、さらに0.5≦m+(n/2)≦8を満たすことが好ましく、特に1≦m+(n/2)≦6を満たすことが好ましい。
【0019】
Mが2価の金属であるものの例としては、Cu(II)、Zn(II) 、Fe(II)、Ni(II) 、Ru(II) 、Rh(II) 、Pd(II) 、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)Cd(II)、Hg(II)、Pd(II)、Sn(II)などが挙げられる。
【0020】
Mが1置換の3価金属であるものの例としては、Al-Cl 、Al-Br、Al-F、Al-I、Ga-Cl、Ga-I、Ga-Br、In-Cl、In-Br、In-I、In-F、Tl-Cl、Tl-Br、Tl-I、Tl-F、Al-C6H5、Al-C6H4(CH3 )、In-C6 H5、In-C6H4(CH3 )、Mn-(OH)、Mn-(OC6H5 )、Mn-[OSi(CH3 )3]、Fe-Cl 、Ru-Cl等が挙げられる。
【0021】
Mが2置換の4価金属であるものの例としては、CrCl2 、SiCl2 、SiBr2、SiF2 、SiI2 、ZrCl2 、GeCl2 、GeBr2 、GeF2 、GeBr2 、GeF2 、TiCl 2 、TiBr2 、TiF2 、Si(OH)2 、Ge(OH)2 、Zr(OH)2 、Mn-(OH)2 、Sn-(OH)2 、TiR2 、CrR2 、Sn-R2 、GeR2 [ Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す] 、Si(OR’)2 、S n-(OR’)2 、Ge(OR’)2 、T i(OR’)2 、Cr(OR’)2 [ R’はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基およびその誘導体を表す]、Sn- S R ’ ’ )2 、Ge ( S R ’ ’ )2 [ R ’ ’ はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す] などが挙げられる。
【0022】
Mがオキシ金属であるものの例としては、VO、Mn-O、TiOなどが挙げられる。
MとしてはCu 、Al-Cl 、TiO 、あるいはVOが好ましく、特に好ましいのはCuである。
【0023】
[ フタロシアニン化合物の製造方法]
本発明の前記一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、例えば下記の製造方法によって製造することができる。
【0024】
下記一般式(2)で表されるハロゲノフタロシアニン化合物。
【0025】
一般式(2)
【0026】
【化2】
( 式中、Yはハロゲン原子を表し、zは1~16の整数を表し、Mは2価の金属原子、3 価あるいは4 価の置換金属またはオキシ金属を表す。)
に(I)2 - アミノチオフェノールを反応させる工程、(II)反応により得られたフタロシアニン化合物以外の出発原料を除去する工程、(III)得られたフタロシアニン化合物を洗浄する工程を、この順序で実施することにより製造できる。上記(II)の工程と(III)の工程は順序が入れ替わっても本発明のフタロシアニン化合物を製造することは可能であるが、(II)の工程を先に行う方が、目的とする化合物を安定して得ることができる。
以下に、上記各工程ごとに製造法を詳しく説明する。
上記(I)の工程の反応は、塩基の存在下、好ましくは溶媒を使用して行われる。
一般式(2) のハロゲノフタロシアニン化合物と反応させる2-アミノチオフェノールの量は、ハロゲノフタロシアニン化合物に対して3~20倍モル量、好ましくは4~10倍モル量である。
【0027】
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、t - ブトキシカリウム、酢酸ナトリム、酢酸カリウム等が使用できるが、好ましくは炭酸カリウムである。
【0028】
塩基の使用量は、2 - アミノチオフェノールの使用量と2倍等モル量程度が好ましい。
溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF) 、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-,N-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、スルホラン等の極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶媒が用いられるが、ジメチルホルムアミド(DMF) 、ジメチルアセトアミド(DMAC) が好ましい。
【0029】
溶媒の使用量は、ハロゲノフタロシアニン化合物に対して1~50倍重量、好ましくは5~20倍重量である。
反応温度は、50~140℃であり、好ましくは100~130 ℃ である。
反応時間は、1~20時間であり、好ましくは5~10時間である。
【0030】
反応冷却後反応溶媒量の1~5倍重量のアルコールに排出、析出物を濾取、アルコール洗浄して、フタロシアニン化合物の粗生成物を取出す。
【0031】
上記(II)の工程は、上記(I)の工程で得られたフタロシアニン化合物の粗生成物にアルコールを使用して室温からアルコールの沸点以下の温度で攪拌することで行われる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の脂肪族アルコールが使用できるが、メタノールが好ましい。また、アルコールに水を混合してもよい。アルコールの使用量は、上記フタロシアニン化合物の粗生成物に対して、5~20倍重量が好ましく、10~15倍重量がさらに好ましい。
上記(III)の工程は、上記(II)で得られたフタロシアニン化合物に水を使用して室温から100℃以下の温度で攪拌することで行われる。水の使用量は、上記フタロシアニン化合物に対して、5~20倍重量が好ましく、10~15倍重量がさらに好ましい。
上記(III)の工程後、乾燥させることで本発明のフタロシアニン化合物を得ることができるが、乾燥させずにろ過した状態の含水ウェットケーキで用いることもできる。
【0032】
上記反応工程に従って製造したものは式(1)で表されるフタロシアニン化合物の混合物であり、このままでも赤外領域を透過する化合物として使用可能であるが、必要に応じて顔料化される。
前記顔料化を行う場合は、公知慣用の方法をいずれも用いることができる。具体的には本発明のフタロシアニン化合物を水溶性無機塩と水溶性有機溶剤と共に混錬磨砕する方法(ソルベントソルトミリング法)、本発明のフタロシアニン化合物と前記フタロシアニン化合物が不溶の溶剤中で加熱する方法(ソルベント法)、顔料磨砕機又は顔料分散機を用いて微細化する方法、等が挙げられる。
ソルベントソルトミリング法としては、例えば、本発明のフタロシアニン化合物を、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムの様な水溶性無機塩と、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの様な水溶性有機溶媒と共に、加熱しながら混練摩砕し水洗する方法が挙げられる。
ソルベント法を行う場合の液媒体は、本発明のフタロシアニン化合物を溶解しないものを選択して用いる。この液媒体としては、本発明のフタロシアニン化合物の結晶制御をより安定的に行うために、水可溶性有機溶媒を必須成分として含む液媒体を用いるのが好ましい。
微細化する方法を行う場合は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、横型連続媒体分散機、ニーダー、連続式一軸混練機、連続式二軸混練機、三本ロール、及びオープンロール連続混練機等の顔料磨砕機や顔料分散機を用いることができる。また、前記顔料磨砕機や顔料分散機は、ソルベントソルトミリング法でも用いることができる。
本発明の一般式(1) で表されるフタロシアニン化合物の具体例を表1 に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
従来フタロシアニン化合物において、可視領域の吸収における産業分野への応用としての波長制御は、赤外線領域の吸収を主眼として開発が行われていた。本発明では、特定のアミノチオフェノール基を有するフタロシアニン化合物が赤外波長領域において、透過率が高く、一方可視領域では透過性が低い化合物を見出したものである。アミノチオフェノール基を導入することで、X線回折スペクトルにおいて、メインのX線回折ピークが4.2°±0.2°≦2θ≦5.1°±0.2°の範囲にあることを特徴とする。フタロシアニン環の積層に由来するピークと推測している。これにより、フタロシアニン骨格間の距離が増大すると共に積層しているフタロシアニン環の距離が全体的に長くなることで450~600nm付近の透過領域に吸収を有し、可視領域での透過率が低くなっていると考えられる。また、アミノチオフェノールの置換基数によって、結晶状態が変化し、赤外線領域の吸収に影響を与えていると考えられる。
【0035】
本発明のフタロシアニン化合物を利用することで、カラーフィルタ用ブラックマトリックスレジスト、LCDのフォトスペーサー、医療包装用のPTP印刷インキ、食品パッケージ用印刷インキ、各種プラスチック製品、赤外線センサーカバー用フィルム、自動車塗装用塗料、建築、舗装用上塗り塗料等を提供することができる。下記詳述する用途は一例であり、本発明のフタロシアニン化合物を波長制御剤としていかなる用途へも使用することができる。
【0036】
特にカラーフィルタ用ブラックマトリックスレジストやLCDのフォトスペーサーにおいては、各々のポストベーク後の後工程でフォトマスクと精度良く位置合わせを行うことが可能となる。医療包装用のPTP印刷物においては、異物検査装置を使用した際に異物としての誤認識がなくなるため、歩留まり向上に寄与できる。食品パッケージ用印刷インキやプラスチック製品においては、リサイクル時に識別可能となり、これまでリサイクルが困難であった黒色系プラスチックの選別が可能となる。自動車塗装においては、将来の普及が期待されている自動運転車の周辺環境認識で用いられる赤外線レーザー装置に対して対応可能になると共に、自動車のサーマルマネジメントにも寄与できると考えらえる。建築、舗装用上塗り塗装においては、太陽光の吸収低減によって、昇温が一定レベルで抑えられることにより、必要以上の空調を使用しなくて済むため、結果的に省エネルギーに寄与できる。
【0037】
(塗料用途)
本発明の化合物を着色剤として塗料とする場合、塗料として使用される樹脂としては、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂など様々である。
【0038】
塗料に使用される溶媒としては、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノールn-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクタムn-メチル-2-ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等がある。溶媒としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【0039】
また、化合物添加剤及び/又は化合物を、液状樹脂中で分散し又は混合し、塗料用樹脂組成物とする場合に、通常の添加剤類、例えば、分散剤類、充填剤類、塗料補助剤類、乾燥剤類、可塑剤類及び/又は補助化合物を用いることができる。これは、それぞれの成分を、単独又は幾つかを一緒にして、全ての成分を集め、又はそれらの全部を一度に加えることによって、分散又は混合して達成される。
【0040】
上記のように用途にあわせて調製された本発明の化合物を含む組成物を分散する分散機としては、ディスパー、ホモミキサー、ペイントコンディショナー、スキャンデックス、ビーズミル、アトライター、ボールミル、二本ロール、三本ロール、加圧ニーダー等の公知の分散機が挙げられるが、これらに限定されるものではない。化合物の分散は、これらの分散機にて分散が可能な粘度になるよう、樹脂、溶剤が添加され分散される。分散後の高濃度塗料ベースは固形分5~20%であり、これにさらに樹脂、溶剤を混合し塗料として使用に供される。
【0041】
(インクジェットインキ用途)
本発明の化合物は、インクジェット用インクに好適に使用することができ、特に化合物分散剤などを用いて分散させた水性化合物分散液として、水性インクジェット用インクに好適に使用することができる。前記水性化合物分散液は、本発明の縮合多環系有機化合物の高濃度水分散液(化合物ペースト)を作成し、それを水溶性溶媒及び/または水で希釈し、必要に応じてその他の添加剤を添加して調製することができる。
【0042】
本発明の化合物を前記水溶性溶媒及び/または水に分散させて化合物ペーストを得る方法は特に限定はなく、公知の分散方法を使用することが好ましい。この時使用する分散剤も、公知の化合物分散剤を使用して水に分散してもよいし、界面活性剤を使用してもよい。前記化合物分散剤としては水性樹脂がよく、好ましい例としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アニオン性基やカチオン性基を有するウレタン樹脂、アニオン性基やカチオン性基を有するラジカル系共重合体樹脂等が挙げられる。アニオン性基やカチオン性基を有するラジカル系共重合体樹脂としては例えば、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのスチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、及び該水性樹脂の塩が挙げられる。
【0043】
前記共重合体の塩を形成するための化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化アルカリ金属類、およびジエチルアミン、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどが挙げられる。これらの塩を形成するための化合物の使用量は、前記共重合体の中和当量以上であることが好ましい。
【0044】
また市販品を使用することも勿論可能である。市販品としては、味の素ファインテクノ(株)製品のアジスパーPBシリーズ、ビックケミー・ジャパン(株)のDisperbykシリーズ、BYK-シリーズ、BASFジャパン株式会社製のEFKAシリーズ等を使用できる。
【0045】
また、分散方法としては、例えば以下(1)~(3)を示すことができる。
(1)化合物分散剤及び水を含有する水性媒体に、化合物を添加した後、撹拌・分散装置を用いて化合物を該水性媒体中に分散させることにより、化合物ペーストを調製する方法。
(2)化合物、及び化合物分散剤を2本ロール、ミキサー等の混練機を用いて混練し、得られた混練物を、水を含む水性媒体中に添加し、撹拌・分散装置を用いて化合物ペーストを調製する方法。
(3)メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のような水と相溶性を有する有機溶剤中に化合物分散剤を溶解して得られた溶液に化合物を添加した後、撹拌・分散装置を用いて化合物を有機溶液中に分散させ、次いで水性媒体を用いて転相乳化させた後、前記有機溶剤を留去し化合物ペーストを調製する方法。
【0046】
混練機としては、特に限定されることなく、例えば、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリミキサーなどがあげられる。また、撹拌・分散装置としても特に限定されることなく、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を挙げられる。これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
前記化合物ペーストに占める縮合多環系有機化合物の量は5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。化合物量が5質量%より少ない場合は、前記化合物ペーストから調製した水性インクの着色が不充分であり、充分な画像濃度が得られない傾向にある。また、逆に60質量%よりも多い場合は、化合物ペーストにおいて化合物の分散安定性が低下する傾向がある。
また、粗大粒子が、ノズル詰まり、その他の画像特性を劣化させる原因になるため、インク調製前後に、遠心分離、あるいは濾過処理等により粗大粒子を除去することが好ましい。
【0047】
分散工程の後に、イオン交換処理や限外処理による不純物除去工程を経て、その後に後処理を行っても良い。イオン交換処理によって、カチオン、アニオンといったイオン性物質(2価の金属イオン等)を除去することができ、限外処理によって、不純物溶解物質(化合物合成時の残留物質、分散液組成中の過剰成分、有機化合物に吸着していない樹脂、混入異物等)を除去することができる。イオン交換処理は、公知のイオン交換樹脂を用いる。限外処理は、公知の限外ろ過膜を用い、通常タイプ又は2倍能力アップタイプのいずれでもよい。
【0048】
前記化合物ペーストを作成した後、適宜希釈し必要に応じた添加剤を添加して、目的に応じた水性化合物分散液を得る。前記水性化合物分散液をインクジェット記録用インクに適用する場合は、更に水溶性溶媒及び/または水、バインダー目的のアニオン性基含有有機高分子化合物等を加え、所望の物性に必要に応じて湿潤剤(乾燥抑止剤)、浸透剤、あるいはその他の添加剤を添加して調製する。インクの調整後に、遠心分離あるいは濾過処理工程を加えてもよい。
【0049】
インクの物理特性については特に限定はされないが、インクジェットインクとしての吐出性に考慮して、粘度は1~10(mPa・s)が好ましく、表面張力は20~50(mN/m)が好ましく、化合物濃度は1~10質量%であることが好ましい。
【0050】
前記湿潤剤は、インクの乾燥防止を目的として添加する。乾燥防止を目的とする湿潤剤のインク中の含有量は3~50質量%であることが好ましい。本発明で使用する湿潤剤としては特に限定はないが、水との混和性がありインクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものが好ましい。例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、等が挙げられる。中でも、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールを含むことが安全性を有し、かつインク乾燥性、吐出性能に優れた効果が見られる。
【0051】
前記浸透剤は、被記録媒体への浸透性改良や記録媒体上でのドット径調整を目的として添加する。浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
前記界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために添加する。このために添加することのできる界面活性剤は特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0052】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0053】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0054】
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
【0055】
これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。界面活性剤を添加する場合は、その添加量はインクの全質量に対し、0.001~2質量%の範囲が好ましく、0.001~1.5質量%であることがより好ましく、0.01~1質量%の範囲であることがさらに好ましい。界面活性剤の添加量が0.001質量%未満の場合は、界面活性剤添加の効果が得られない傾向にあり、2質量%を超えて用いると、画像が滲むなどの問題を生じやすくなる。
【0056】
また、必要に応じて防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0057】
(プラスチック用途)
本発明の化合物はプラスチック着色用途にも使用できる。着色プラスチック成形品を得る場合には、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリ塩化ビニル樹脂等の、射出成形やプレス成形等の熱成形用の熱可塑性樹脂(プラスチック)が用いられるが、本発明の化合物はこれらの樹脂に従来公知の方法で練り込んで使用することができる。
【0058】
(トナー用途)
本発明の化合物はトナー着色用途にも使用できる。
静電荷像現像用トナーを得る場合には、たとえばポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂等の常温で固形の皮膜形成性の熱可塑性樹脂が分散用樹脂として使用される。
【0059】
本発明の化合物を構成成分として製造される静電荷像現像用トナーは、トナー中に磁性体を含有する1成分色磁性トナー(磁性一成分現像用カラートナー)、磁性体を含有しない非磁性1成分色カラートナー(非磁性一成分現像用カラートナー)、又は、キャリアーを混合した2成分色現像剤用カラートナー(二成分現像用カラートナー)として用いることができる。
【0060】
1成分色磁性トナーは、通常使用されているものと同様に、例えば着色剤、結着樹脂、磁性粉、電荷制御剤(CCA)や離型剤に代表されるその他添加剤等から構成出来る。
【0061】
静電荷像現像用トナー中に占める本発明の化合物の使用量は特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対し0.5~25質量部の割合で使用することが好ましく、着色剤自身の有する帯電性能を一層顕著ならしめる点から結着樹脂100質量部に対し4~10質量部であることが更に好ましい。
【0062】
静電荷像現像用トナーに用いられる結着樹脂としては、前記熱可塑性樹脂として例示した公知慣用のものがいずれも使用できるが、熱又は圧力の適用下で接着性を示す合成樹脂、天然樹脂、天然ゴム、合成ゴム、合成ワックス等がいずれも使用できる。
【0063】
(ブラックマトリックス・フォトスペーサー用途)
本発明の化合物は、公知の方法でカラーフィルタのブラックマトリックス部のパターンの形成やLCD用のフォトスペーサーに用いることが出来る。典型的には、本発明の化合物と、感光性樹脂とを必須成分して含むパターン形成用感光性組成物を得ることが出来る。
【0064】
前記パターン形成用感光性組成物を調製するには、例えば、本発明の化合物と、感光性樹脂と、光重合開始剤と、前記樹脂を溶解する有機溶剤とを必須成分として混合する。その製造方法としては、本発明の化合物と有機溶剤と必要に応じて分散剤を用いて分散液を調製してから、そこに感光性樹脂等を加えて調製する方法が一般的である。
【0065】
前記パターン形成用感光性組成物に使用される本発明の化合物には必要に応じて黄色化合物を用いることができる。必要に応じて用いる分散剤としては、例えばビックケミー社のディスパービック(DISPERBYK 登録商標)130、同161、同162、同163、同170、同LPN-6919、同LPN-21116等が挙げられる。また、レベリング剤、カップリング剤、カチオン系の界面活性剤なども併せて使用可能である。
【0066】
有機溶剤としては、例えばトルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクタムn-メチル-2-ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等がある。有機溶剤としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【0067】
使用可能な感光性樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3-メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のような多官能モノマー等の光重合性モノマーが挙げられる。
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルパーオキサイド、2-クロロチオキサントン、1,3-ビス(4'-アジドベンザル)-2-プロパン、1,3-ビス(4'-アジドベンザル)-2-プロパン-2'-スルホン酸、4,4'-ジアジドスチルベン-2,2'-ジスルホン酸等がある。
こうして調製されたブラックマトリックス用感光性組成物は、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄することによりブラックマトリックスやスペーサーとなすことができる。
【実施例0068】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0069】
(実施例1)
塩素化銅フタロシアニン化合物(フタロシアニングリーン)(DIC株式会社製)10.0g、2-アミノチオフェノール4.3g(関東化学株式会社製)、炭酸カリウム9.9g(関東化学株式会社製)、N,N-ジメチルホルムアミド200gを冷却管を備えた四つ口フラスコに入れ、130℃で5時間反応させた。反応後、自然冷却しらがら、メタノール150gを加え、攪拌しながら室温まで冷却した。得られた反応生成物をさらにメタノールで洗浄し、その後、水洗を2回行い、100℃で5時間乾燥してフタロシアニン化合物11.2gを得た。
得られた化合物は、蛍光X線測定の結果、フタロシアニン化合物が2-アミノチオフェノールで平均4分子分置換されていることが判明した。また、X線回折測定において、最大ピークは4.8°であった。
【0070】
[評価1]
(色相評価)
得られた化合物2.0g、ウレタンアクリル樹脂(固形分濃度:40%、溶剤:キシレン/イソブチルアルコール=50/50)8.0g、キシレン4.0g、イソブチルアルコール1.0gをガラス瓶に入れ、さらに直径3mmのガラスビーズを加えてペイントコンディショナーで1時間前記化合物を分散した。その後、前記ウレタンアクリル樹脂25.0gを加えてペイントコンディショナーで10分間前記化合物を分散し、さらに得られた塗料8.0g、前記ウレタンアクリル樹脂9.6g、キシレン1.8g、イソブチルアルコール0.4g、前記ガラスビーズをガラス瓶に入れ、10分間分散して実施例1の塗料を得た。
得られた塗料を白色アート紙にアプリケーターで塗布し、膜厚25μmの塗膜を得た。得られた塗膜は目視で黒色であったので、色相を分光光度計(機器名:「DC650」datacolor社)で測定した結果、L*=27.3、a*=-3.75、b*=-0.52であった。なお、得られた塗膜における本発明のフタロシアニン化合物の重量比率は5%であった。
参考までに、黒色アート紙はL*=30.6、a*=1.31、b*=2.44であったことから、黒色の塗膜が得られていることが確認できた。
【0071】
[評価2]
(透過率評価)
上記色相評価で作成した塗料を188μmのPETフィルム上にバーコーターで塗布して、2μmの塗膜を得た。得られた塗膜の赤外領域の透過率を分光光度計で測定した。得られた塗膜の905nmにおける透過率は、77.7%であった。また、1500nmにおける透過率は、95.9%であった。
【0072】
(実施例2)
塩素化銅フタロシアニン化合物(フタロシアニングリーン)(DIC株式会社製)10.0g、2-アミノチオフェノール16.4g(関東化学株式会社製)、炭酸カリウム39.3g(関東化学株式会社製)、N,N-ジメチルホルムアミド200gを冷却管を備えた四つ口フラスコに入れ、130℃で5時間反応させた。反応後、自然冷却しらがら、メタノール150gを加え、攪拌しながら室温まで冷却した。得られた反応生成物をさらにメタノールで洗浄し、その後、水洗を2回行い、100℃で5時間乾燥してフタロシアニン化合物13.1gを得た。
得られた化合物は、蛍光X線測定の結果、フタロシアニン化合物が2-アミノチオフェノールで平均8分子分置換されていることが判明した。また、X線回折測定において、最大ピークは4.6°であった。
【0073】
[評価3]
(色相評価)
実施例2で得られたフタロシアニン化合物を用いること以外は、評価1と同様にして膜厚25μmの塗膜を得た。得られた塗膜は目視で黒色であったので、色相を分光光度計(機器名:「DC650」datacolor社)で測定した結果、L*=26.3、a*=-0.59、b*=-0.48であった。
【0074】
[評価4]
実施例2で得られたフタロシアニン化合物を用いる以外は、評価2と同様にして膜厚2μmの塗膜を得た。 得られた塗膜の赤外領域の透過率を分光光度計で測定したところ、905nmにおける透過率は、66.9%、また、1500nmにおける透過率は、94.2%であった。
【0075】
(実施例3)
臭素化銅フタロシアニン化合物(フタロシアニングリーン)(DIC株式会社製)13.3g、2-アミノチオフェノール16.4g(関東化学株式会社製)、炭酸カリウム39.3g(関東化学株式会社製)、N,N-ジメチルホルムアミド200gを冷却管を備えた四つ口フラスコに入れ、130℃で5時間反応させた。反応後、自然冷却しらがら、メタノール150gを加え、攪拌しながら室温まで冷却した。得られた反応生成物をさらにメタノールで洗浄し、その後、水洗を2回行い、100℃で5時間乾燥してフタロシアニン化合物9.3gを得た。
得られた化合物は、蛍光X線測定の結果、フタロシアニン化合物が2-アミノチオフェノールで平均10分子分置換されていることが判明した。また、X線回折測定において、最大ピークは4.2°であった。
【0076】
[評価5]
(色相評価)
実施例3で得られたフタロシアニン化合物を用いること以外は、評価1と同様にして膜厚25μmの塗膜を得た。
得られた塗膜は目視で黒色であったので、色相を分光光度計(機器名:「DC650」datacolor社)で測定した結果、L*=25.9、a*=-0.24、b*=-0.74であった。
【0077】
[評価6]
実施例3で得られたフタロシアニン化合物を用いる以外は、評価2と同様にして膜厚2μmの塗膜を得た。 得られた塗膜の赤外領域の透過率を分光光度計で測定したところ、905nmにおける透過率は、68.4%、また、1500nmにおける透過率は、93.9%であった。
【0078】
(実施例4)
トリクロロ銅フタロシアニン化合物(フタロシアニンブルー)(DIC株式会社製)6.1g、2-アミノチオフェノール8.4g(関東化学株式会社製)、炭酸カリウム19.7g(関東化学株式会社製)、N,N-ジメチルホルムアミド200gを冷却管を備えた四つ口フラスコに入れ、130℃で5時間反応させた。反応後、自然冷却しらがら、メタノール150gを加え、攪拌しながら室温まで冷却した。得られた反応生成物をさらにメタノールで洗浄し、その後、水洗を2回行い、100℃で5時間乾燥してフタロシアニン化合物5.6gを得た。
得られた化合物は、蛍光X線測定の結果、フタロシアニン化合物が2-アミノチオフェノールで平均1分子分置換されていることが判明した。また、X線回折測定において、最大ピークは5.1°であった。
【0079】
[評価7]
(色相評価)
得られた化合物2.0g、ウレタンアクリル樹脂(固形分濃度:40%、溶剤:キシレン/イソブチルアルコール=50/50)8.0g、キシレン4.0g、イソブチルアルコール1.0gをガラス瓶に入れ、さらに直径3mmのガラスビーズを加えてペイントコンディショナーで1時間前記化合物を分散した。その後、前記ウレタンアクリル樹脂25.0gを加えてペイントコンディショナーで10分間前記化合物を分散して実施例4の塗料を得た。
得られた塗料を白色アート紙にアプリケーターで塗布し、膜厚25μmの塗膜を得た。得られた塗膜は目視で黒色であったので、色相を分光光度計(機器名:「DC650」datacolor社)で測定した結果、L*=26.9、a*=-1.29、b*=-1.62であった。
【0080】
[評価8]
(透過率評価)
上記色相評価で作成した塗料を188μmのPETフィルム上にバーコーターで塗布し、2μmの塗膜を得た。
得られた塗膜の赤外領域の透過率を分光光度計で測定したところ、得られた塗膜の905nmにおける透過率は、70.7%、また、1500nmにおける透過率は、92.8%であった。
【0081】
<比較例1>
WO2006/109480号公報の実施例3の記載に基づき、塩素化銅フタロシアニン化合物(フタロシアニングリーン)(DIC株式会社製)10.0g、2-アミノチオフェノール8.9g(関東化学株式会社製)、炭酸カリウム11.1g(関東化学株式会社製)、N,N-ジメチルアセトアミド200gを冷却管を備えた四つ口フラスコに入れ、160℃で48時間反応させた。反応後、得られた反応溶液を55℃まで冷却し、イオン交換水を80℃に加熱したお湯400gを攪拌しながら加えた。得られた反応生成物をさらにイオン交換水で1回洗浄し、100℃で5時間乾燥してフタロシアニン化合物15.3gを得た。
得られた化合物は、蛍光X線測定の結果、フタロシアニン化合物が2-アミノチオフェノールで平均13分子分置換されていることが判明した。また、X線回折測定において、最大ピークは3.9°であった。
【0082】
[評価9]
(色相評価)
比較例1で得られたフタロシアニン化合物を用いること以外は、評価1と同様にして膜厚25μmの塗膜を得た。
得られた塗料は目視で黒色であったので、色相を分光光度計(機器名:「DC650」datacolor社)で測定した結果、L*=25.8、a*=-1.04、b*=-0.26であった。
【0083】
[評価10]
(透過率評価)
比較例1で得られたフタロシアニン化合物を用いること以外は、評価2と同様にして膜厚2μmの塗膜を得た。
得られた塗膜の赤外領域の透過率を分光光度計で測定した。得られた塗膜の905nmにおける透過率は、46.3%であった。また、1500nmにおける透過率は、87.3%であった。
【0084】
<比較例2>
カーボンブラック(銘柄「#2600」三菱ケミカル株式会社製)を用いた以外は、評価1と同様にして、塗料を作成した。
【0085】
[評価11]
(色相評価)
比較例2のカーボンブラックを用いること以外は、評価1と同様にして塗料を得た。得られた塗料を白色アート紙にアプリケーターで塗布し、膜厚25μmの塗膜を得た。
得られた塗膜は目視で黒色であったので、色相を分光光度計(機器名:「DC650」datacolor社)で測定した結果、L*=25.9、a*=-0.01、b*=-0.79であった。
【0086】
[評価12]
(透過率評価)
比較例2のカーボンブラックを用いること以外は、評価2と同様にして膜厚2μmの塗膜を得た。得られた塗膜の赤外領域の透過率を分光光度計で測定したところ、905nmにおける透過率は、31.6%、また、1500nmにおける透過率は、63.7%であった。
【0087】
<比較例3>
特開平9-176501号公報の記載に基づき塩素化銅フタロシアニン化合物(フタロシアニングリーン)(DIC株式会社製)10.0g、2-アミノエタンチオール12.2g(関東化学株式会社製)、炭酸カリウム22.1g(関東化学株式会社製)、N,N-ジメチルホルムアミド200gを冷却管を備えた四つ口フラスコに入れ、130℃で5時間反応させた。反応冷却後、メタノール150gを加え、攪拌しながら室温まで冷却した。得られた反応生成物をさらにメタノールで洗浄し、その後、水洗を2回行い、100℃で5時間乾燥してフタロシアニン黒色顔料13.2gを得た。
得られた顔料は、蛍光X線測定の結果、フタロシアニン顔料が2-アミノエタンチオールで平均7分子分置換されていることが判明した。また、X線回折測定において、明確なピークは検出されなかった。
【0088】
[評価13]
(色相評価)
比較例3のフタロシアニン化合物を用いること以外は、評価1と同様にして膜厚25μmの塗膜を得た。得られた塗膜は目視で灰色であったが、色相を分光光度計(機器名:「DC650」datacolor社)で測定した結果、L*=39.3、a*=-0.92、b*=-6.33であった。
【0089】
[評価14]
(透過率評価)
比較例3のフタロシアニン化合物を用いること以外は、評価2と同様にして膜厚2μmの塗膜を得た。得られた塗膜の赤外領域の透過率を分光光度計で測定したところ、905nmにおける透過率は、83.1%、また、1500nmにおける透過率は、93.5%であった。
【0090】
(実施例5)
(フォトスペーサー)
(フォトスペーサー用アルカリ可溶性樹脂「A-1」の合成)
冷却管、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)5.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200g、メタクリル酸20g、メタクリル酸グリシジル25g、スチレン10g、メタクリル酸メチル15g、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン-8-イル20gに加え、窒素置換した後、ゆっくり攪拌しながら溶液の温度を70℃に上昇させ、前記温度を保持した状態で4時間重合反応させた。得られた共重合体の重量平均分子量Mwは8000であった。
【0091】
(感光性組成物)
アルカリ可溶性樹脂として、得られたアルカリ可溶性樹脂A-1を100g、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としてアロニックスM-400(東亞合成株式会社製)45g、重合開始剤としてイルガキュアOXE02(BASF社製)7質量g、レベリング剤としてメガファックR-40(DIC株式会社製)0.1g質量部、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.2gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100g、酢酸3-メトキシブチル22gに溶解させ、樹脂溶液を得た。次に実施例2のフタロシアニン化合物45g、アルカリ可溶性樹脂A-1を50g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gからなる分散液に得られた樹脂溶液を加え、孔径0.5μmのメンブランフィルターでろ過して、実施例5の感光性組成物を得た。
【0092】
(フォトスペーサー)
透明電極としてITOがスパッタされた無アルカリガラス基板のITO電極側に、スピンコーターを用いた得られた重合性組成物5を塗布し、90℃で2分間乾燥して、膜厚3.0μmの塗膜を形成した。
続いて、得られた塗膜に直径10μmの円形パターンの開口部を有する石英ガラス製のクロムフォトマスクを介して、365nmの光強度が30mW/cm2の紫外光を3.3秒照射した。なお、得られた塗膜と前記フォトマスクの間隔は150μmであった。
次に25℃の0.5重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像し、さらに超純水でリンスして、ガラス基板上にパターンを形成した。さらに230℃で30分間加熱して、実施例5のフォトスペーサーを得た。
得られたフォトスペーサー付きガラス基板のフォトスペーサー上に垂直配向用のポリイミドをスピンコーターに塗布し、80℃で5分乾燥し、さらに230℃で30分焼成した。一方、ITOが形成されたガラス基板のITO電極側に、同様に垂直配向用のポリイミドをスピンコーターで塗布し、80℃で5分乾燥し、さらに230℃で30分焼成した。
得られた両ガラス基板を基板面法線方向に対してプレチルトが1~2°になるようにラビング配向処理を行い、一方のガラス基板の外周にディスペンサーを用いてポリイミド膜上にエポキシ樹脂系のシール剤を塗布した後、貼り合せた後の液晶組成物のプレチルト角が約1°になるように両ガラス基板を貼り合せた。その後、90℃で5分、150℃で30分シール剤を硬化させ、評価用のセルを得た。
得られた評価用セルにN型液晶組成物(特開2017-95712号公報に記載のLCN-1、Δn:0.102、粘性:16.8、Δε:-3.8)を60℃に加熱して、真空注入法によりガラスセル内に注入した。
注入後ガラスセルを取り出し、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した。これによりVAモードの液晶表示素子を得た。直交する二枚の偏光板の間に作製したセルを置くと黒くなりセルを方位角方向へ回転しても暗視野が変化せず、フォトスペーサーに面内方向の位相差が存在しないか、あるいは、フォトスペーサーの光軸方向と液晶配向容易軸方向が同一方向であることを確認した。
【0093】
(コントラスト)
白色LED、偏光板、液晶表示素子、偏光板、分光放射計(SR-LEDW:株式会社トプコンテクノハウス社製)の順に配置した。2枚の偏光板はクロスニコルになるように配置した。
得られた液晶表示素子に電圧を印加していない時の輝度(OFF輝度)、及び、電圧印加して最大輝度に到達した時の輝度(ON輝度)をそれぞれ測定し、その比(ON輝度/OFF輝度)をコントラストとした。
得られた液晶表示素子のコントラストは、2050と良好であった。特にOFF輝度の低下が顕著であった。
図1
図2
図3
図4