(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098721
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/10 20220101AFI20220627BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20220627BHJP
F24H 8/00 20220101ALI20220627BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20220627BHJP
【FI】
F24H1/10 303Z
F23N5/24 Z
F24H8/00
F24H1/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212286
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 久貴
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼上 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英幸
(72)【発明者】
【氏名】山西 健太
(72)【発明者】
【氏名】西村 和裕
【テーマコード(参考)】
3K003
3L034
【Fターム(参考)】
3K003PA06
3K003PB01
3L034BA26
3L034BB03
3L034BB06
3L034EA07
(57)【要約】
【課題】中和槽又は排水通路の閉塞の予兆を検知することができる給湯装置を提供すること。
【解決手段】燃焼部と燃料供給部と、燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、燃焼排気から潜熱を回収する熱交換器を有する熱交換部と、熱交換部で生じた凝縮水を中和する中和部と、給水部と出湯部と、燃焼部の燃焼熱を利用して熱交換部で加熱した湯水を出湯する加熱運転を制御する制御部を備え、中和部が中和槽と、中和槽に凝縮水を導く導入通路と、中和された凝縮水の排水通路と、中和槽内の水位を検知する水位検知手段を有し、制御部は、水位検知手段が基準時間以上継続して所定水位を検知した場合に、中和槽又は排水通路の閉塞の発生と判定して加熱運転を禁止する安全動作を行う給湯装置において、この制御部は、水位検知手段による基準時間未満の所定水位の検知回数が予め設定された基準回数以上となった場合に、中和槽又は排水通路の閉塞の予兆を検知したと判定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼部と、前記燃焼部に燃料を供給する燃料供給部と、前記燃焼部に燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、燃焼排気から潜熱を回収する熱交換器を有する熱交換部と、前記熱交換部で生じた凝縮水を中和する中和部と、給水部と、出湯部と、前記燃焼部の燃焼熱を利用して前記熱交換部で加熱した湯水を出湯する加熱運転を制御する制御部を備えた給湯装置であって、前記中和部は、中和剤を収容する中和槽と、前記中和槽に凝縮水を導く導入通路と、中和された凝縮水を外部に排水する排水通路と、前記中和槽内の凝縮水の水位を検知する水位検知手段を有し、前記制御部は、前記水位検知手段が基準時間以上継続して所定水位を検知した場合に、前記中和槽又は前記排水通路の閉塞の発生と判定して前記加熱運転を禁止する安全動作を行う給湯装置において、
前記制御部は、前記水位検知手段が前記基準時間未満の間前記所定水位を検知した回数が、予め設定された基準回数以上となった場合に、前記中和槽又は前記排水通路の閉塞の予兆を検知したと判定する閉塞予兆検知機能を備えたことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
燃焼部と、前記燃焼部に燃料を供給する燃料供給部と、前記燃焼部に燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、燃焼排気から潜熱を回収する熱交換器を有する熱交換部と、前記熱交換部で生じた凝縮水を中和する中和部と、給水部と、出湯部と、前記燃焼部の燃焼熱を利用して前記熱交換部で加熱した湯水を出湯する加熱運転を制御する制御部を備えた給湯装置であって、前記中和部は、中和剤を収容する中和槽と、前記中和槽に凝縮水を導く導入通路と、中和された凝縮水を外部に排水する排水通路と、前記中和槽内の凝縮水の水位を検知する水位検知手段を有し、前記制御部は、前記水位検知手段が基準時間以上継続して所定水位を検知した場合に、前記中和槽又は前記排水通路の閉塞の発生と判定して前記加熱運転を禁止する安全動作を行う給湯装置において、
前記制御部は、前記水位検知手段が前記所定水位を検知した場合に、凝縮水の発生量が低減して前記所定水位を検知しなくなるまで加熱能力を低減し、前記所定水位を検知しなくなったときの加熱能力が予め設定された基準能力未満となった場合に、前記中和槽又は前記排水通路の閉塞の予兆を検知したと判定する閉塞予兆検知機能を備えたことを特徴とする給湯装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記閉塞予兆検知機能によって前記中和槽又は前記排水通路の閉塞の予兆を検知したと判定した場合には、前記中和部の点検を促す報知を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスの潜熱を回収する熱交換器と、この熱交換器で発生する酸性の凝縮水を中和する中和槽を備えた燃焼式の給湯装置に関し、特に中和槽から排水できなくなる閉塞を検知するように構成された給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1の給湯装置のように、燃焼ガスの潜熱を回収する熱交換器と、この熱交換器で発生する酸性の凝縮水を中和する中和槽を備え、排気サーミスタの検知温度によって中和槽から排水できなくなったことを検知する技術が知られている。一方、1対の電極棒間を流れる電流によって、中和槽内の凝縮水の水位を検知する技術も広く知られている。何れも中和槽から凝縮水が溢れ出て給湯装置の他の部位に影響が出る前に水位を検知することにより、中和槽に接続された排水通路を介して排水できなくなったことを検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水位検知手段として1対の電極棒を備えた中和槽において、凝縮水の所定の水位の検知が一定時間継続すると閉塞が発生したと判定され、給湯装置の加熱運転が禁止される(安全動作)。一旦閉塞が発生すると、例えば中和槽を交換するメンテナンスが終わるまで給湯装置を使用できない不便な状態が継続する。
【0005】
ところで、例えば中和槽内で微生物が繁殖して形成されたバイオフィルムが、中和槽内の水位上昇によって破れて凝縮水と共に流れ出るような一時的な閉塞の場合がある。一方、例えば中和槽の排水通路に異物が進入して、燃焼量が小さいときには凝縮水の発生量と中和槽からの排水量のバランスが保たれるが、燃焼量を大きくしたときに凝縮水の発生量が排水量を上回るような完全には閉塞していない場合がある。これら場合には、閉塞が発生したと判定されなくても、近いうちに閉塞する虞があるので、安全動作により加熱運転が禁止される前に閉塞の予兆を検知することが検討されている。
【0006】
本発明の目的は、中和槽又は排水通路の閉塞の予兆を検知することができる給湯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の給湯装置は、燃焼部と、前記燃焼部に燃料を供給する燃料供給部と、前記燃焼部に燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、燃焼排気から潜熱を回収する熱交換器を有する熱交換部と、前記熱交換部で生じた凝縮水を中和する中和部と、給水部と、出湯部と、前記燃焼部の燃焼熱を利用して前記熱交換部で加熱した湯水を出湯する加熱運転を制御する制御部を備えた給湯装置であって、前記中和部は、中和剤を収容する中和槽と、前記中和槽に凝縮水を導く導入通路と、中和された凝縮水を外部に排水する排水通路と、前記中和槽内の凝縮水の水位を検知する水位検知手段を有し、前記制御部は、前記水位検知手段が基準時間以上継続して所定水位を検知した場合に、前記中和槽又は前記排水通路の閉塞の発生と判定して前記加熱運転を禁止する安全動作を行う給湯装置において、前記制御部は、前記水位検知手段が前記基準時間未満の間前記所定水位を検知した回数が、予め設定された基準回数以上となった場合に、前記中和槽又は前記排水通路の閉塞の予兆を検知したと判定する閉塞予兆検知機能を備えたことを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、所定水位の検知が基準時間以上継続すると安全動作を行い、基準時間未満の所定水位の検知回数が基準回数以上になると中和槽又は排水通路の閉塞の予兆を検知したと判定する。従って、一時的な閉塞を基準回数検知した場合に中和槽又は排水通路の閉塞の予兆を検知したと判定するので、安全動作により加熱運転が禁止される前に閉塞の予兆を検知することができる。
【0009】
請求項2の発明の給湯装置は、燃焼部と、前記燃焼部に燃料を供給する燃料供給部と、前記燃焼部に燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、燃焼排気から潜熱を回収する熱交換器を有する熱交換部と、前記熱交換部で生じた凝縮水を中和する中和部と、給水部と、出湯部と、前記燃焼部の燃焼熱を利用して前記熱交換部で加熱した湯水を出湯する加熱運転を制御する制御部を備えた給湯装置であって、前記中和部は、中和剤を収容する中和槽と、前記中和槽に凝縮水を導く導入通路と、中和された凝縮水を外部に排水する排水通路と、前記中和槽内の凝縮水の水位を検知する水位検知手段を有し、前記制御部は、前記水位検知手段が基準時間以上継続して所定水位を検知した場合に、前記中和槽又は前記排水通路の閉塞の発生と判定して前記加熱運転を禁止する安全動作を行う給湯装置において、前記制御部は、前記水位検知手段が前記所定水位を検知した場合に、凝縮水の発生量が低減して前記所定水位を検知しなくなるまで加熱能力を低減し、前記所定水位を検知しなくなったときの加熱能力が予め設定された基準能力未満となった場合に、前記中和槽又は前記排水通路の閉塞の予兆を検知したと判定する閉塞予兆検知機能を備えたことを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、所定水位を検知した場合に加熱能力を低下させて凝縮水の発生量を低減することにより、所定水位が検知されなくなるように試みる。そして、所定水位が検知されなくなったときの加熱能力が基準能力未満の場合に、中和槽又は排水通路の閉塞の予兆を検知したと判定する。一方、所定水位の検知が基準時間以上継続した場合に、安全動作を行う。従って、完全には閉塞していない場合に加熱能力に基づいて中和槽又は排水通路の閉塞の予兆を検知したと判定するので、安全動作により加熱運転が禁止される前に中和槽又は排水通路の閉塞の予兆を検知することができる。
【0011】
請求項3の発明の給湯装置は、請求項1又は2の発明において、前記制御部は、前記閉塞予兆検知機能によって前記中和槽又は前記排水通路の閉塞の予兆を検知したと判定した場合には、前記中和部の点検を促す報知を行うことを特徴としている。
上記構成によれば、安全動作により加熱運転が禁止される前に中和槽又は排水通路の閉塞の予兆を検知して、中和部の点検を促す報知を行う。従って、この報知に基づいて安全動作の前に中和部の点検、交換を行うことにより、安全動作によって突然給湯装置を使用できなくなる不便な状態を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の給湯装置によれば、中和槽又は排水通路の閉塞の予兆を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る燃焼式の給湯装置の説明図である。
【
図2】給湯装置の制御部の構成と通信経路の説明図である。
【
図4】実施例1に係る故障予兆検知制御のフローチャートである。
【
図5】実施例2に係る故障予兆検知制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0015】
燃焼式の給湯装置1は、通常、屋外に設置される。給湯装置1は、
図1に示すように、燃焼部2と熱交換部3と給水部4と出湯部5を有し、燃焼部2で発生させた燃焼熱を利用して熱交換部3において給水部4から供給される上水を加熱して出湯部5に出湯する加熱運転を行うように構成されている。燃焼部2には、燃料ガス(天然ガス又はプロパンガス)を供給するための燃料供給部6が接続されている。
【0016】
燃焼部2の近傍には、この燃焼部2に燃焼用空気を供給すると共に、燃焼によって発生した燃焼熱の媒体である燃焼ガスを熱交換部3に送り込んで排気口7から外部に排気させるために、燃焼ファン8が装備されている。燃焼部2は、燃料供給部6から供給される燃料ガスと燃焼用空気を混合して燃焼させる複数の燃焼領域として、例えば第1~第4燃焼領域2a~2dに区分され、必要熱量を発生させるための必要燃焼量に応じて燃焼させる領域が変更される。
【0017】
燃料供給部6は、第1~第4燃焼領域2a~2dに対応する第1~第4ガス電磁弁6a~6dと、燃焼部2に供給する燃料流量を調整する燃料流量調整弁6eを有する。燃料供給部6は、燃料流量を調整すると共に、これら第1~第4燃焼領域2a~2dに対して燃料ガスの供給/停止を個別に切り替え可能に構成されている。
【0018】
熱交換部3は、フィンアンドチューブ型の第1熱交換器3aと、複数の湯水通路で構成された第2熱交換器3bを有する。第1熱交換器3aは、燃焼直後の高温の燃焼ガスの顕熱を回収して湯水を加熱する。第2熱交換器3bは、顕熱が回収されて温度が下がった燃焼ガス(燃焼排気)の潜熱を回収して上水を加熱する。
【0019】
この第2熱交換器3bでは、燃焼ガスに含まれる水分が凝縮して凝縮水が生じる。この凝縮水は、燃焼ガスの成分を含んで強い酸性になっている。それ故、そのまま排水することは不適切なので、中和剤として例えば炭酸カルシウム粒が収容された中和槽9aに導入され、中和されてから排水される。第2熱交換器3bで潜熱が回収されて温度が下がった燃焼ガスは、排気口7から外部に排気される。
【0020】
中和槽9aには、第2熱交換器3bの下側に配設されたドレンパン3cに落下した凝縮水を中和槽9aに導く導入通路9bと、中和した凝縮水を給湯装置1の外部に排水する排水通路9cが接続されて中和部9が形成されている。この中和槽9aの上端部には、凝縮水の水位(所定水位)を検知する水位検知手段として1対の電極棒9dが装備されている。1対の電極棒9dの間に電圧を印加しておき、所定水位になって凝縮水に触れた1対の電極棒9dの間に凝縮水を介して電流が流れることにより、所定水位が検知される。
【0021】
給水部4は、上水源から供給される上水を第2熱交換器3bに供給する給水通路4aと、給水通路4aから分岐され且つ流量調整弁10を備えた給水分岐通路4bを有する。第2熱交換器3bで加熱された湯水は、第1熱交換器3aに導入されてさらに高温に加熱される。第1熱交換器3aで加熱された湯水は出湯通路5aに供給される。この出湯通路5aに給水分岐通路4bが接続されて形成された出湯部5において、加熱された湯水と上水が混合されて温度調整され、給湯先の例えば給湯栓11に給湯される。
【0022】
燃焼部2の第1燃焼領域2aは、加熱運転を開始したときに点火して最初に燃焼させる点火領域である。この第1燃焼領域2aに対応する位置に、放電によって火花を発生させる点火装置14と、点火確認のために第1燃焼領域2aの火炎を検知するための第1フレームロッド15aが配設されている。
【0023】
第1燃焼領域2aに隣接させた第2燃焼領域2bは、燃焼量を増加させて燃焼熱の発生を増加させるために、第1燃焼領域2aから最初に燃焼領域を拡大させる火移り領域である。この第2燃焼領域2bに対応する位置に、第2燃焼領域2bの火炎を検知するための第2フレームロッド15bが配設されている。第3、第4燃焼領域2c,2dにも燃焼領域を拡大させることによって、燃焼量を増加させることができる。尚、第3、第4燃焼領域2c,2dの火炎を検知するために、第3、第4燃焼領域2c,2dに対応するフレームロッドが配設されていてもよい。
【0024】
給水通路4aには、熱交換部3に供給される上水の給水流量を検知する給水流量センサ4cと、給水温度を検知する給水温度センサ4dが配設されている。出湯通路5aには熱交換部3で加熱された湯水の出湯温度を検知する出湯温度センサ5bが配設されている。この出湯通路5aの給水分岐通路4bとの接続部よりも下流側には、上水と混合されて温度が調整された湯水の給湯温度を検知するための給湯温度センサ5cが配設されている。
【0025】
給湯装置1は、給水流量と給水温度と出湯温度に基づいて給湯設定温度の給湯を行うために、加熱運転を制御する制御部16を備えている。給湯設定温度は、制御部16に接続された操作端末17の操作によって設定される。加熱運転において、制御部16は、例えば給湯設定温度と給水流量と給水温度に基づいて必要な燃焼量(必要熱量)を算出する。そして制御部16は、必要熱量を発生させるために、燃焼部2の燃焼させる燃焼領域と、燃焼ファン8の目標回転数と、燃料供給部6の燃料流量を設定する。また、制御部16は、給湯温度が給湯設定温度に近づくように流量調整弁10の開度を調整して、上水と加熱された湯水の混合比率を調整する。
【0026】
図2に示すように、制御部16は、各種制御プログラムを実行する演算部16aと、各種制御プログラム、制御パラメータ等を記憶しておく記憶部16bと、通信部16cを有する。演算部16aは、給湯装置1の内蔵機器及び操作端末17と通信する通信部16cを介して流量調整弁10及び燃料供給部6の弁類と、燃焼ファン8を制御すると共に、給水温度センサ4d等のセンサ類の検知信号、操作端末17の操作内容を受信する。
【0027】
操作端末17は、例えばホームネットワーク構築機能を備えた通信ゲートウェイ18を介して外部の通信網19(インターネット)に接続されている。この通信網19には、給湯装置1を含めて現在設置されている給湯装置及び他の機器に関する情報を管理するために、給湯装置1の施工、保守を行うサービスショップ又は製造メーカが設置した管理サーバ20が接続されている。これにより、制御部16は管理サーバ20と通信が可能となっている。尚、通信部16c又は操作端末17が通信網19に直接接続されていてもよい。
【0028】
給湯使用開始によって、給水流量センサ4cにより検知される給水流量が所定の最低流量以上になると、加熱運転が開始される。
図3に示すように、加熱運転は、プリパージ工程と点火工程と燃焼工程とポストパージ工程に分けられている。プリパージ工程では、燃焼ファン8の目標回転数が掃気回転数(例えば3000rpm)に設定され、燃焼ファン8が掃気回転数で所定のプリパージ時間(例えば5秒間)駆動される。これにより、燃焼部2と熱交換部3に滞留している空気が排気口7から排気されると共に、停止していた燃焼ファン8の回転数が掃気回転数程度に増加する。
【0029】
次に点火工程に移行して、第1燃焼領域2a(点火領域)に対応する第1ガス電磁弁12aが開かれ、目標回転数が点火回転数(例えば2500rpm)に設定され、燃焼ファン8が点火回転数で駆動される。そして、第1燃焼領域2aに点火するために点火装置14が駆動される。第1燃焼領域2aの火炎が第1フレームロッド15aによって検知(点火確認)されると、燃焼工程に移行する。
【0030】
次に、燃焼工程において、算出した必要熱量を供給可能なように、燃焼部2の燃焼させる燃焼領域と、燃焼ファン8の目標回転数と、燃料供給部6の燃料流量が設定される。そして、燃焼ファン8が目標回転数で駆動されると共に、燃焼させる燃焼領域に対応する燃料ガス電磁弁が開かれて設定した燃料流量で燃料が供給され、必要熱量を発生させて給湯設定温度の給湯が行われる。
【0031】
給湯使用終了により給水流量が所定の最低流量未満になると、ポストパージ工程に移行する。ポストパージ工程は、開いているガス電磁弁が全て閉じられて燃焼部2の燃焼が停止され、目標回転数が掃気回転数に設定され、燃焼ファン8が掃気回転数でポストパージ時間(例えば10秒)駆動される。これにより、燃焼ガスが燃焼部2と熱交換部3に残留しないように排気される。最後に燃焼ファン8が停止されて、加熱運転が終了する。
【0032】
給湯装置1の設置時には、給湯装置1が正常に作動することを確認するために試運転を行う。制御部16は、この試運転時の加熱運転データを設置当初の初期データとして記憶部16b又は管理サーバ20の記憶領域に記憶しておく。
【0033】
加熱運転において、通常は中和槽9a内の凝縮水の水位が一定(
図1の水位M)に保たれるように、凝縮水の導入量と排水量が同量になる。しかし、例えば中和槽9a内で微生物が繁殖してバイオフィルムが形成された場合、細かくなった中和剤が排水通路9cに進入した場合等、中和槽9a内又は排水通路9cの凝縮水の流動が妨げられて水位が上昇する場合がある。
【0034】
水位が上昇して、1対の電極棒9dが例えば予め設定された基準時間以上継続して所定水位(
図1の水位H)を検知した場合に、制御部16は、中和部9の中和槽9a又は排水通路9cの閉塞が発生したと判定して加熱運転を禁止する安全動作を行う。また、制御部16は、閉塞が発生したことをユーザと管理サーバ20を介して例えばサービスショップに報知する。この故障発生を知ったユーザ又はサービスショップは、点検、修理を手配する。
【0035】
給湯装置1のユーザにとって、安全動作によって突然給湯装置1が使用できない不便な状態になることは好ましくない。そこで、制御部16は安全動作を行う前に、中和槽9a又は排水通路9cの閉塞の予兆を検知した場合に、管理サーバ20を介して閉塞の予兆があることをサービスショップに報知して点検を促す。この中和槽9a又は排水通路9cの閉塞予兆検知機能について、
図4の閉塞予兆検知制御のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0036】
加熱運転が開始されると、プリパージ工程で滞留していた空気を排気して新鮮な空気を導入し、次の点火工程で点火装置14によって燃焼部2に点火した後、燃焼工程が開始されると共に閉塞予兆検知制御が開始される。S1において、凝縮水は加熱運転中に生成されて中和槽9aに導入されるので、加熱運転中か否か判定する。S1の判定がNoの場合は閉塞予兆検知制御を終了する。S1の判定がYesの場合にはS2に進む。
【0037】
次にS2において、水位検知手段の1対の電極棒9dが所定水位を検知しているか否か判定する。S2の判定がNoの場合にはS1に戻る。S2の判定がYesの場合にはS3に進む。
【0038】
S3において、1対の電極棒9dが所定水位を検知している時間(検知継続時間)を取得してS4に進む。そしてS4において、この検知継続時間が予め設定された基準時間以上となったか否か判定する。基準時間は、例えば熱交換部3から燃焼部2に凝縮水が流出しない時間に設定され、例えば60秒である。
【0039】
S4の判定がYesの場合にはS5に進み、S5において凝縮水が燃焼部2に流出しないように加熱運転を停止してS6に進む。そしてS6において、加熱運転を禁止してS7に進み、S7において中和槽9a又は排水通路9cの閉塞が発生したことを報知して閉塞予兆検知制御を終了する。以上のS5~S7が通常の安全動作に相当する。
【0040】
一方、S4の判定がNoの場合にはS8に進む。そしてS8において、1対の電極棒9dが所定水位を検知しなくなったか否か判定する。一時的に凝縮水の導入量に対する排水量が減少して所定水位以上になった後、その原因となった例えばバイオフィルム、中和剤が流されて正常に排水されるようになる場合があるので、一時的な所定水位の検知か否か判定するステップである。S8の判定がNoの場合は、まだ所定水位以上なので、S3に戻る。S8の判定がYesの場合にはS9に進み、S9において所定水位の検知回数を1増加させてS10に進む。
【0041】
S10において、所定水位の検知回数が基準回数以上になったか否か判定する。基準回数は、中和槽9a又は排水通路9cの閉塞の予兆を検知したと判定する回数であり、例えば実験に基づいて予め設定されている。S10の判定がNoの場合はS1に戻る。S10の判定がYesの場合にはS11に進む。
【0042】
S11において、中和部9の中和槽9a又は排水通路9cの閉塞の予兆を検知したことがまだ未報知か否か判定する。一度報知していれば十分なので、S11の判定がNoの場合はS1に戻る。S11の判定がYesの場合にはS12に進み、S12において中和部9の中和槽9a又は排水通路9cの閉塞の予兆を検知したことを報知してS1に戻る。
S1~S3は実施例1と同じなので説明を省略する。S4において、S3で取得した検知継続時間が予め設定された基準時間以上となったか否か判定する。S4の判定がYesの場合にはS5に進む。S5~S7は実施例1と同じ安全動作なので説明を省略する。
S4の判定がNoの場合はS20に進み、S20において、現在行っている加熱運転における加熱能力が、給湯装置1の下限能力よりも大きいか否か判定する。現在の加熱能力が下限能力であるため、S20の判定がNoの場合はS3に戻る。S20の判定がYesの場合にはS21に進む。
S21において、例えば燃料流量の調整、燃焼領域の調整によって、加熱能力を1段階低減して所定時間(例えば10秒)加熱運転を継続し、S22に進む。凝縮水の発生量は、加熱能力、即ち燃焼量に比例するので、加熱能力を小さくすることによって凝縮水の発生量を少なくして、中和槽9a内の水位低下を試みるステップである。そしてS22において、水位検知手段の1対の電極棒9dが所定水位を検知しなくなったか否か判定する。
S22の判定がNoの場合はS3に戻る。S22の判定がYesの場合はS23に進み、S23において現在の加熱能力が予め設定された基準能力未満か否か判定する。中和部9は、上限の加熱能力で加熱運転した場合でも水位上昇が起きないように形成されているが、上限の加熱能力が要求されない加熱運転を行う場合も多く、中間の加熱能力の加熱運転で所定水位が検知されなければ加熱運転に支障がない。一方で、加熱能力を低くし過ぎると給湯流量が大きい場合に対応できない。そのため、予め設定された基準能力に基づいて、中和部9の中和槽9a又は排水通路9cの閉塞の予兆を検知したと判定する。
S23の判定がYesの場合はS24に進み、S24において中和部9の中和槽9a又は排水通路9cの閉塞の予兆を検知したことを報知して、S25に進む。S23の判定がNoの場合にはS25に進む。そしてS25において、現在の加熱能力を上限として以降の加熱運転の加熱能力を制限し、S1に戻る。
一般的な家庭の1つの給湯栓の最大流量は20L/分程度であり、この最大流量で給湯する場合は限られている。それ故、基準能力を例えば16L/分の流量で25℃上昇させて給湯可能な加熱能力に予め設定しておく。これにより、通常の使用に支障がない程度に加熱能力を低減して加熱運転を行うことができると共に、中和部9の中和槽9a又は排水通路9cの閉塞の予兆を検知したことを管理サーバ20を介して例えばサービスショップに報知して、対応を促すことができる。
上記実施例2では、給湯装置1の制御部16は、中和槽9aの所定水位を検知した場合に加熱能力を低下させて凝縮水の発生量を低減することにより、所定水位を検知しなくなるように試みる。そして、所定水位を検知しなくなったときの加熱能力が基準能力未満の場合に、中和槽9a又は排水通路9cの閉塞の予兆を検知したと判定する。一方、所定水位の検知が基準時間以上継続すると安全動作を行う。従って、完全には閉塞していない場合に加熱能力に基づいて中和槽9a又は排水通路9cの閉塞の予兆を検知したと判定するので、安全動作により加熱運転が禁止される前に中和槽9a又は排水通路9cの閉塞の予兆を検知することができる。
給湯装置1の制御部16は、安全動作により加熱運転が禁止される前に、中和槽9a又は排水通路9cの閉塞の予兆を検知した場合に中和部9の点検を促す報知を行う。従って、安全動作の前に中和槽9a又は排水通路9cの点検、交換を行うことにより、安全動作によって突然給湯装置1を使用できなくなる不便な状態を回避することができる。
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。