(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098737
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】自動車運送事業者による空き便の活用方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20120101AFI20220627BHJP
【FI】
G06Q10/08 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212310
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】518324153
【氏名又は名称】株式会社油吉
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100095739
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】臼井 博康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】臼井 稔清
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】本発明は、対象を運送業者に絞り、且つ、その運送業者の特性を活かして、特有な形態での連携を図り、効率的な空き便の活用を図ろうとするものである。
【解決手段】
本発明自動車運送業者による空き便の活用方法は、(1)自動車運送事業者を対象とし、a)地域情報、b)運転者情報、c)車輌情報なる会員情報を記載した参加申し込みを受けることで会員を募集する。(2)α)輸送実行決定型、β)輸送依頼決定型、γ)双方受諾可能型の3つの型の中からいずれか一つの型を活用パターンとして選択し、運行条件を提出する。(3)候補者を選出し申込者に紹介し、利用者は、決定した役割に基づいて輸送の依頼又は輸送の代行を行い、結果報告を行うことを特徴とする。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)運営者は、自動車運送事業者を対象とし、下記a)~c)からなる会員情報を記載した参加申し込みを受けることで会員を募集し、
a)本社及び営業所の存する住所地を含む地域情報、
b)事業者に属する運転者の取得免許の種類を含む運転者情報、
c)事業者の所有する車輌の車種、トン数、台数を含む車輌情報
(2)加入の認められた会員は、空き便利用のための申込にあたって、
(A)下記α)、β)、γ)の3つの型の中からいずれか一つの型を活用パターンとして選択し、
α)往路又は復路での荷の輸送を実行することが既に決定している輸送実行決定型、
β)往路及び復路での荷の輸送を依頼することが既に決定している輸送依頼決定型、
γ)往路又は復路での荷の輸送実行又は輸送依頼のいずれも受諾可能な双方受諾可能型
(B)次いで、下記a)~e)の各条件のすべてを空き便利用の運行条件として提出し、
a)輸送の出発地及び到着地、
b)輸送の出発日時及び到着日時、
c)荷の種類、量、
d)輸送に必要な車輌の種類及び台数、
e)運転者免許資格
(3)運営者は、上記α)、β)、γ)の活用パターン要因、地理的要因、時間的要因、車種要因の各要因の中から結合を避けるべきものを選別して回避条件とし、
活用パターン要因、地理的要因、時間的要因、経歴的要因、人的要因の中から結合の可能なものを選択して結合条件とし、
上記回避条件と結合条件から、利用者にとって適合度の高い単数又は複数の組み合わせを算出するソフトウエアを備えたコンピュータの演算により組み合わせの候補者を選出し、
(4)(A)運営者は、上記コンピュータから算出された適合度の高い単数又は複数の候補者を選出し、その選出された候補者を空き便利用の申込者に紹介し、
(B)利用者は、活用パターンが相互にγ-γ型となる場合は、互いに打ち合わせを行い、それ以外の場合は、紹介された候補者の中から望む相手を選別し、夫々の場合に従って、輸送を依頼するか又は輸送を代行するかの互いの役割を決定し、
(5)利用者は、決定した役割に基づいて輸送の依頼又は輸送の代行を行い、
(6)運営者は、その輸送の依頼及び輸送の実行がなされた後に、相互の利用者から空き便輸送の結果報告を受ける、
ことを特徴とする自動車運送業者による空き便の活用方法。
【請求項2】
結合条件から利用者にとって適合度の高い単数又は複数の組み合わせを算出するにあたって、結合条件の活用パターン要因、地理的要因、時間的要因、経歴的要因、人的要因の各要因に優先順位を設定し、その優先順位の基に適合度を算出することを特徴とする自動車運送業者による空き便の活用方法。
【請求項3】
結合条件から利用者にとって適合度の高い単数又は複数の組み合わせを算出するにあたって、その適合度の高さを指数化して各要因に付与し、付与された指数を基に適合度を算出することを特徴とする自動車運送業者による空き便の活用方法。
【請求項4】
結合条件から利用者にとって適合度の高い単数又は複数の組み合わせを算出するにあたって、結合条件の人的要因に国土交通省の定める適正診断受講の有無を加えることを特徴とする自動車運送業者による空き便の活用方法。
【請求項5】
空き便利用の往路又は復路のルート設定にあたって、その往路又は復路の出発地から到着地との間に中継地を設定することを特徴とする自動車運送業者による空き便の活用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空き便の利用にあって、その対象を自動車運送事業者とし、自動車運送業界の特殊性等に鑑みて、より効率的で安全な活用方法を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
空き便利用の価値
貨物等の輸送において、荷主から依頼を受けて荷物を相手先に輸送した後、荷下ろしをした往路を空き便のまま帰るのは、大きな無駄となる。
従来この空き便を利用しようとして種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、運送業向け情報検索方法に関し、荷物の発地と着地の情報を予め登録する検索方法にあて、その着地情報に着地の地区を含む求車情報を活用しようとする方法が提案されている。
又、特許文献2には、貨物輸送業者間の連携関係を求めるものであって、荷主からの配送日、仕向地等の情報と、トラックの車輌情報等を組合せ、輸送トラックの最適な運行スケジュールを割り出そうとする管理システムが提案されている。
更に、特許文献3には、荷主の条件と空車情報とを適合する組合せを自動的に見いだしマッチングさせるもので、発注条件と空車情報とを組合せ、そこに条件を満たす組合せが得られなかったときに特定運送業者に配車依頼を促すシステムが提案されている。
【0003】
しかしこれらは、多くが荷主と運送業者との間で連携を求める等対象が広く、幾多の組合せを模索するために、却って適合した解答が得られず、有効な連携がなかなか得られないケースが多いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-96238号公報
【特許文献2】特開2001-297393号公報
【特許文献3】2002-297937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、対象を運送業者に絞り、且つ、その運送業者の特性を活かして、特有な形態での連携を図り、効率的な空き便の活用を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明自動車運送業者による空き便の活用方法は、
(1)運営者は、自動車運送事業者を対象とし、下記a)~c)からなる会員情報を記載した参加申し込みを受けることで会員を募集し、
a)本社及び営業所の存する住所地を含む地域情報、
b)事業者に属する運転者の取得免許の種類を含む運転者情報、
c)事業者の所有する車輌の車種、トン数、台数を含む車輌情報
(2)加入の認められた会員は、空き便利用のための申込にあたって、
(A)下記α)、β)、γ)の3つの型の中からいずれか一つの型を活用パターンとして選択し、
α)往路又は復路での荷の輸送を実行することが既に決定している輸送実行決定型、
β)往路及び復路での荷の輸送を依頼することが既に決定している輸送依頼決定型、
γ)往路又は復路での荷の輸送実行又は輸送依頼のいずれも受諾可能な双方受諾可能型
(B)次いで、下記a)~e)の各条件のすべてを空き便利用の運行条件として提出し、
a)輸送の出発地及び到着地、
b)輸送の出発日時及び到着日時、
c)荷の種類、量、
d)輸送に必要な車輌の種類及び台数、
e)運転者免許資格
(3)運営者は、上記α)、β)、γ)の活用パターン要因、地理的要因、時間的要因、車種要因の各要因の中から結合を避けるべきものを選別して回避条件とし、
上記回避条件に含まれず、活用パターン要因、地理的要因、時間的要因、経歴的要因、人的要因の中から結合の可能なもの選択して結合条件とし、
上記回避条件と結合条件から、利用者にとって適合度の高い単数又は複数の組み合わせを算出するソフトウエアを備えたコンピュータの演算により組み合わせの候補者を選出し、
(4)(A)運営者は、上記コンピュータから算出された適合度の高い単数又は複数の候補者を選出し、その選出された候補者を空き便利用の申込者に紹介し、
(B)利用者は、活用パターンが相互にγ-γ型となる場合は、互いに打ち合わせを行い、それ以外の場合は、紹介された候補者の中から望む相手を選別し、夫々の場合に従って、輸送を依頼するか又は輸送を代行するかの互いの役割を決定し、
(5)利用者は、決定した役割に基づいて輸送の依頼又は輸送の代行を行い、
(6)運営者は、その輸送の依頼及び輸送の実行がなされた後に、相互の利用者から空き便輸送の結果報告を受けることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の自動車運送業者による空き便の活用方法は、結合条件から利用者にとって適合度の高い単数又は複数の組み合わせを算出するにあたって、結合条件の活用パターン要因、地理的要因、時間的要因、経歴的要因、人的要因の各要因に優先順位を設定し、その優先順位の基に適合度を算出することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の自動車運送業者による空き便の活用方法は、結合条件から利用者にとって適合度の高い単数又は複数の組み合わせを算出するにあたって、その適合度の高さを指数化して各要因に付与し、付与された指数を基に適合度を算出することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の自動車運送業者による空き便の活用方法は、結合条件から利用者にとって適合度の高い単数又は複数の組み合わせを算出するにあたって、結合条件の人的要因に国土交通省の定める適正診断受講の有無を加えることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の自動車運送業者による空き便の活用方法は、空き便利用の往路又は復路のルート設定にあたって、その往路又は復路の出発地から到着地との間に中継地を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、方法を実行するにあたって会員制を採り、その会員を地域情報、運転者情報、車輌情報を提出した貨物運送業に絞り込むことで、一般化を避けて貨物自動車業界独自の特殊性等を勘案することができ、その貨物業界で起こる空き便の不合理を効率的に解消することができる。
【0012】
業界独自の特殊性に基づいて、α)先行輸送決定型、β)輸送依頼決定型、γ)双方受諾可能型の3つの活用パターンを形成し、この活用パターンと、a)輸送の出発地及び到着地、b)輸送の出発日時及び到着日時、c)荷の種類、量、d)車輌の種類及び台数、e)運転者免許資格を含む運行条件とから、回避条件と結合条件とを割り出し、そこから空き便利用にとって適合度の高い候補者を選出することができる。
【0013】
上記3つの活用パターン及び独自の条件設定を基礎としたコンピュータのソフトウエアを構築し、それを演算することで自動的に空き便を埋めるべき適合度の高い候補者を算出することができ、利用者が相手先を画面上から選ぶ等の面倒さを避け、簡潔で合理的な活用が可能となる。
その組み合わせの提示にあたっては、複数の候補者を紹介する手段をとることができ、その際、適合度を表示することができ、利用者には自らの選択に高い利便性が与えられる。
【0014】
請求項2の発明にあっては、結合条件の活用パターン要因、地理的要因、時間的要因、経歴的要因、人的要因の各要因に優先順位を設定し、その優先順位の基に適合度を算出することで、結合条件から利用者にとって適合度の高い組み合わせを容易に算出することができる。
【0015】
請求項3の発明にあっては、適合度の高さを指数化して各要因に付与し、付与された指数を基に適合度を算出することで、用者にとって適合度の高い組み合わせを容易に算出ことができる。
【0016】
請求項4の発明にあっては、結合条件の人的要因に国土交通省の定める適正診断受講の有無を加えることで、利用者にとってより安全性の高い組み合わせを求めることができる。
【0017】
請求項5の発明にあっては、往路又は復路の出発地から到着地との間に中継地を設定することで、空き便利用の往路又は復路のルート設定をより効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1-1】本発明方法実行の流れを示すフローチャートである。
【
図1-2】本発明方法実行の流れを示すフローチャートである。
【
図2】本発明方法に使用される活用パターンの一形態を示す模式図で、(A)が東京から大阪への輸送決定型、(B)が大阪から東京への輸送決定型を示す。
【
図3】本発明方法に使用される活用パターンの一形態を示す模式図で、(A)が東京から大阪への依頼決定型、(B)が大阪から東京への依頼決定型を示す。
【
図4】本発明方法に使用される活用パターンの一形態を示す模式図で、(A)が東京から大阪への輸送と依頼の双方型、(B)が大阪から東京への輸送と依頼の双方型を示す。
【
図5】本発明方法に使用される地理的要因のなかに、中継点を設けた態様を模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)<会員募集>
本発明自動車運送業者による空き便の活用方法の実施の形態を、
図1~
図5に基づいて以下説明する。
本発明空き便の活用方法は、会員制を採り、その会員資格対象者は、原則自動車運送事業者とする。
参加は、加入、脱退の許される自由参加型とするが、企業規模、過去の履歴等から一定要件が求められ、運営者の判断で参加の認められないものも存する。
会員資格を原則自動車運送事業者とし、荷主等を除くのは、会員を自動車運送業に絞り込むことで、自動車運送業界独自の特殊性等を勘案することができ、その運送業界で起こる空き便の不合理を効率的に解消することができるからである。
【0020】
尚、以下に登場する言葉のなかで、運営者と会員と利用者、及び空き便利用、組み合わせ、結合条件、候補者の意味を定義する。
運営者とは、本発明の空き便活用方法を実施するにあたり、その方法推進の主体をなす者であって、実施するための会を組織し、その会の運営全般にあたって責任をもってこれを遂行する者を指す。
会員とは、自動車運送事業者であって本空き便の活用を望むために会への参加を申し込み、且つ、参加を運営者から認められた者を指す。
利用者とは、上記会への参加を認められた者であって、具体的に空き便活用を望む際に、その利用の申し込みを行う者を指す。
【0021】
又、空き便利用とは、輸送便の往路又は復路に荷を積載しない空きが生じる場合、又は、荷輸送の注文を受けながら事情により輸送ができない場合において、他の業者の輸送の代行又はその依頼をすることをいう。
組み合わせとは、荷の輸送を依頼する者と、荷の輸送を代行する者とを結び合わせることをいう。
結合条件とは、上記組み合わせが可能となるべき条件をいい、回避条件とは、その組み合わせが困難又は不可能なものをいう。
候補者とは、上記結合条件を満たす者の中で、より適格な者として選出される者をいう。
【0022】
<会員資格>
運営者は、組織した会の会員募集を行うにあたり、参加希望者から、少なくとも下記の地域情報、運転者情報、車輌情報を含む会員情報の提供を義務付ける。
【0023】
<会員情報>
a)地域情報
本社、営業所等の会員が活動可能な地域を住所地として指定する地域情報とし、この地域情報を提出する。本社、営業所、車輌の保管場所等の地域情報は、荷の出発点や到着点を確定する上で必要であり、単独でなく、複数でも良い。必要に応じて、荷の中継点の候補地ともなり得る。
【0024】
b)運転者情報
運転者の免許の種類、氏名、年齢等に関する情報を指す。事業者に勤務する運転者の人数も規模を示す必要情報となる。
荷の搬送を担う主体である運転者には、一定の資格が求められる。例えば、大型、中型、普通、大型特殊等の取得している免許の種類等が挙げられる。
この他に、国交省が定める初任運転者、高齢運転者、事故惹起運転者等の特定運転者に対しする運転者の安全運転態度、認知・処理機能、視覚機能等への適正診断の履修の有無等を含むものとする。
空き便利用にあっても、運転者の安全への配慮が求められるからである。
【0025】
c)車輌情報
事業者の所有する車輌の車種、トン数、台数を含む車輌情報を提出する。
特に一般車輌の他に、特殊車両が求められる場合、その存否の有無が問題となる。
例えば、冷凍車やコンテナ車等、荷の種類によって、対応の可否が問われる場合に有効となる。
【0026】
d)その他情報
その他の情報として、例えば、資本金、営業履歴、得意分野等の企業情報を会運営の参考情報として加えることができる。
【0027】
<参加申請>
参加申請者は、上記情報を記入した参加申込書を、インターネットを介して提出する。
運営者は、上記情報の提供を受けて、申請者が会への参加に適切な否かを検討し、参加の可否を決定する。
会への参加は、申込者の自由意思ではなく、申込者が会の運営に適した要件を備えているか否かを運営者が決定するものとする。会の信用と円滑な運用維持のためである。
【0028】
(2)利用申込
上記会への参加が認められた会員にあっては、空き便の利用を望む具体的な事案が生じた場合には、以下の手順に従って、利用申込を行う。
(A)活用パターンの選択
本発明方法では、空き便利用の形態に以下の3つの活用パターンを設定してある。
α)輸送実行決定型
この型は、ある荷の往路又は復路での輸送を実行することが既に決定しており、しかし、その往路又は復路に空き便が生じる場合を指す。
例えば、
図2(A)に示す如く、A社が荷主から東京から大阪への輸送の依頼を受けて、既にその輸送計画が決定しており、荷の種類や数量、輸送の実行の期日、輸送車のトン数や車種等の輸送条件が明らかな場合がある。
斯かる場合には、復路は大阪から東京となり、空き便の発生が不可避で、その到着地や期日等の条件も一定範囲で予想可能であるから、それを埋めるため輸送の代行を受けるべく空き便利用が求められる。
図2(B)は、逆にB社が大阪から東京への輸送実行が決定している場合である。
【0029】
β)輸送依頼決定型
この型は、上記α型の逆のパターンであり、既に荷主から輸送の受注を受けているが、諸々の状況からそれを実行することが困難であり、受注を断るか他社に輸送を依頼せねばならない場合を指す。
斯かる場合には、空き便が利用できるなら、受注を断ることなく、荷主の依頼にも応えられることになる。
例えば、
図3(A)に示す如く、C社は荷主から東京から大阪への荷の輸送を受注しているが、その予定期日には、運転者が不足し、又は、適合する車種のトラックが手配できない等の事情を抱えてしまうことがある。
図3(B)は、D社が大阪から東京への荷の輸送を受注している場合である。
斯かる場合に、C社、D社共に、東京から大阪又は大阪から東京への空き便があるなら、期日、車種等の条件が合えば、これを利用することで受注を果たすことができ、望ましい空き便利用の形態となる。
【0030】
γ)双方受諾可能型
この型は、
図4に示す如く、上記α型とβ型の中間型となるものであり、本方法の空き便を利用するにあたって、既に荷の輸送受注を受けているが、その荷の輸送を自らが実行するか、それとも相手に荷の輸送を依頼するか、組み合わせの相手との相談で、どちらのタイプでも対応が可能な場合を指す。
例えば、
図4(A)に示す如く、E社は既に荷主から東京から大阪への輸送を受注しているが、自らがその輸送を実行しても良く、又は逆に、
図4(B)に示す如く、大阪から東京への輸送を行った後に復路の東京から大阪が空き便となるF社があれば、そのF社に輸送を依頼しても良いと考えている場合がある。このケースは、D社にとっても同様で、D社が既に大阪から東京への輸送を受注している場合に、C社の往路にその荷の輸送を依頼するという逆のパターンも組み合わせが可能となる。
【0031】
これら活用パターンが決定されると、後述する組み合わせの可否を検討する際に、結合を避けるべき回避条件と、組み合わせが可能とされる結合条件との識別が容易となる。
【0032】
(B)運行条件の提出
具体的利用の申し込みにあたっては、上記会員情報及び活用パターンの他に、下記の運行条件を該当欄に記載する。
1)出発地及び到着地
出発地及び到着地の住所を都道府県の番地等まで詳細に記入する。
営業所等が該当地になる場合にはそれも含め、駐車場等の情報も明らかにする。
2)出発日時、及び到着日時
出発期日及び時刻等が詳細に決まっている場合にはその年月日、時刻を記載し、期日にある程度の幅がある場合には、その幅日数を記載する。
3)荷の種類、量
自ら輸送する場合はともかく、依頼する場合には、その荷の種類や量、及びその荷に特有の取り扱い等があれば、それを洩れなく記載する。
冷凍品や慎重取扱商品等には特別な扱いが必要となるからである。
4)車輌の種類、台数
輸送を依頼する場合には、上記荷の種類とともに、望む車輌の種類や台数を明記する。
一般車輌の他に冷凍車、コンテナ車等特殊車輌等の別を記載する。
5)運転者資格等
一般車輌、大型、中型等の他に特殊車輌等の特別資格が運転者に求められる場合には、これらも記載する。
【0033】
これら運行条件が提出されると、上記活用パターンに基づいて利用申込者の希望する空き便利用の具体的条件が定められたものとなる。
【0034】
(3)適格候補者の選定
さて、当初の会員情報に加えて、上記活用パターンの選択、運行条件の提出がなされると、本方法を利用するにあたっての必要条件が出揃ったことになる。
そこで、運営者は、コンピュータ等に基いて、空き便利用申し込み者の組み合わせ適格者の選定に入る。
尚、この適格者選定の作業は、利用申込があったら、直ぐに作業を開始するという性格のものではなく、一定の申込者の数が出揃ったところで、作業を開始するものである。
時間的制約がある場合はともかく、適格者の選定は、その組み合わせ対象者の人数が一定量に達しないと、真に有効な組み合わせとならないからである。蓄積量の適否は、運営者の判断に任される。
ここで重要なことは、本方法にあっては、利用者がコンピュータ画面から利用の状況等を検索して自らの望む相手を選ぶということではなく、適格者となる組み合わせの解答を得るのは、その最適解を導くべきソフトウエアを備えたコンピュータ及びそこに運営者の判断等を加えたものによることである。
膨大な資料のなかから適格者を選定するのは、利用者側では難しく、却って遅延と混乱を招くからである。
【0035】
適格候補者の選定にあたっては、回避条件と結合条件とが設定される。
回避条件とは、上述の如く、荷の依頼と代行との組み合わせが困難又は不可能なもので、結合条件とは、組み合わせが可能なものをいう。
斯かる条件の設定で、組み合わせの効率化を図ることができる。
【0036】
<回避条件>
選定の第一歩にあたり、下記の要因に基づくものは回避条件として、対象から除外される。
1)活用パターンによる回避要因
活用パターンに基づく組合せにあって、下記の場合は、その組合せを回避しなければならない。
α型-α型
このなかで、方向の同じものは不適格となる。例えば、どちらも東京から大阪へと方向が同じものの組み合わせは、双方が輸送を実行することとなるで、荷を受ける側が存在しなくなる。
β型-β型
この組合せの場合は、どちらも荷の輸送を依頼するものなので、輸送を実行する側が存在しなくなる。
よって、斯かる活用パターンの組合の場合は、絶対的にこれを回避すべき条件となる。
【0037】
2)地理的回避要因
出発地点と到着地点には、組み合わせの可能な地理的要因が発生する。
例えば、東京からの便が大阪に到着して、そこからの復路が空き便となる場合には、そこに荷の輸送を依頼する事業者は到着地点を中心として、一定距離範囲に営業所の活動拠点を有する者の方が効率的運用となる。
そこで、選定の距離範囲に一定の地理的限界領域を設けて、その限界領域外のものは回避条件として選択の対象外とする。限界領域の設定は、運営者の判断に任される。
3)時間的回避要因
輸送の運行には当然に時間的制約がある。
例えば、東京から大阪にある日時を時刻に到着するものとして、復路となる東京への戻り便にも時間の制約があり、待ち時間を例えば一定年月のa日~b日、c刻~d刻としたとき、その時間に合致しないものは、組み合わせの対象外となる。
【0038】
4)車輌種類の回避要因
車輌には、その種類による組み合わせの制約がある。
例えば、依頼する側の荷が冷凍品であった場合には、当然に冷凍車でなければならない。
又、一方がタンクローリーであった場合には、それを受けるのもタンクローリーでなければならない。
【0039】
5)過去の経歴による回避要因
過去に、同じ者同士の組み合わせがあり、互いに不満があった場合等には、これを避けた方が好ましいものとなる。
【0040】
<結合条件>
次に組み合わせ可能とされる結合条件の検討に入る。
a)α-β型
一定の申し込みを受け付けた後、α型-β型の組み合わせがあれば、この両者間のマッチングが理想的である。先行輸送決定と輸送依頼のそれぞれの利害が完全に一致するからである。
例えば、東京から大阪に輸送を実行したA者に対し、その復路となる大阪から東京が空き便となるから、B社はその空き便に自らの荷の輸送を依頼すれば、往路、復路共に空きのない効率的輸送が実現される。
このとき、利用申し込みの順番には影響されることはなく、例えば、上記の場合、β型のB社が先に利用申し込みを行っていた場合でも、後にα型のA社の申し込みがあっても、これを受ければα-β型の組合せに支障はない。
【0041】
b)α-γ型、β-γ型
α型は上記β型との組合せ以外にも、γ型との組み合わせが可能である。復路の空き便が決定しているのであるから、γ型からその荷の輸送の依頼を受ければ良い。
例えば、東京から大阪への輸送実行の決定しているα型のA社に対し、大阪から東京への輸送を計画しているC社にとって、その輸送が実行(代行)でも依頼でも対応の可能なγ型であるから、依頼という形態を採れば良く、α-γ型が成立する。
同様にβ型とγ型の組み合わせも可能である。β型からの依頼が決定しているのであるから、γ型がその決定された荷の輸送依頼を受ければ良い。
もちろん、上記α-β型も含めて、α-γ型、β-γ型は、順序が逆となる、β-α型、γ-α型、γ-β型も成立し得る。
【0042】
c)γ-γ型
同じ型同志となるγ型-γ型の組み合わせも、もちろん可能であるが、この場合には双方の話し合いが必要となる。
どちらも相手にも合わせることが可能な状況なので、実行(代行)と依頼をどう振り分けるか、幾つかの決定方法が考えられる。
【0043】
運行条件による結合条件の検討
次いで、運行条件の各要因に基づく、結合条件の検討に入る。
1)地理的要因
地理的要因にあって、上記回避条件となる地理的限界領域には該当せず、一応の対象内となる条件を備えるものであっても、その該当候補者が複数存在する場合には、その距離の差が問題となる。
例えば、到着地点の住所と候補者の営業所の住所とを比較し、両者の距離の差を計測したとき、その距離の短いほど適合度が高いものとなろう。
その適合度は、指数化すれば客観的に評価することができる。
【0044】
又、地理的要因にあって、輸送の経路を1本にとどめず、中継点を設けて繋いだ経路としても良い。
例えば、
図5に示す如く、大阪から東京への戻り便の場合、その荷の依頼が大阪から東京であれば理想的であるが、ある場合には、大阪から名古屋までであり、又、大阪から横浜までの場合もある。
斯かる場合には、運営者が中継点を設ける経路設定を行い、そこに適合者の組み合わせを図ることもできる。
この場合には、重なる距離の長い方が適合度の高いものとなろう。この適合度も、指数化することで客観的評価が容易となる。
又、重なる地点を出発地点に限定せずに、到着地点から逆算して適合度を定めても良い。
例えば、往路を東京から大阪とし、復路を大阪から東京とのルートを設定した場合、荷を中間点の名古屋で荷を受けて東京まで輸送するケースも想定される。もちろん、大阪から名古屋までを一区画とし、これに名古屋から東京までを一区画として繋ぐケースも想定される。
ここでも重なる距離の長短が適合度を高める要因となろう。
【0045】
2)時間的要因
荷の輸送を代行する側の時刻予定と荷の輸送を依頼する側の時刻予定との合致は当然に必要で、複数の選定候補があった場合には適合度が問題となる。
例えば、東京-大阪の復路で、復路となる戻り便の出発予定時刻に余裕がない場合には、対象候補は絞られたものとなろう。しかし、往路の到着時から復路便の出発までの間に比較的余裕がある場合には、複数候補の組み合わせが可能となる。
例えば、往路が夕方到着で、翌日朝に復路の出発となる場合には、比較的長い待機時間の設定が可能となり、この場合には、地理的条件のような距離間の差等は基準とならず、設定時間内であれば適合度に差は生じないものとなる。
他の要因の適合度が優先されよう。
【0046】
3)履歴要因
本方法の利用が繰り返されると、その実績が過去の履歴として積み重ねられる。
例えば、A業者とB業者とは、過去にマッチングした経歴があり、相互に問題の生じず、満足度の高いものであったとしよう。このときは、相互に信頼が置け、運営者としも安心感のもてるものとなる。これを指数化して適合度に反映させることができる。
一方、過去の経歴で問題があり、又は、満足度低いものであった場合には、適合度は低いものとなろう。
これらは業者間で互いの相性等もあり微妙な問題を含むが選択の一要因となる。
【0047】
4)人的要因
上記地理的条件、時間的条件、経歴的条件に加え、運転者の人的条件も、適合度の評価に加えることが本方法の一つの特性でもある。
貨物自動車運送事業者の運転者には、国土交通省の定める適性診断や一般診断が義務付けられる。
即ち、貨物自動車運送事業者及び旅客自動車運送事業者の事業用自動車の運転者には、事故惹起運転者、新任運転者、高齢運転者等に国土交通省で定める適性診断を運転者に受診させることが義務付けられている。これは運転者の運転行動の特性を把握し、自己のもつ特性を正解に認識することで、自己のもつ事故につながり易い特性等が現れないようにする為である。
又、65才未満のものに対しては、義務ではないが受診が推奨される「一般診断」があり、この一般診断は、65才未満の比較的若い者を対象とすることから、一定期間ごとの受講が推奨されている。
これらは、直接的な適合度の対象ではないが、これら診断を確実に修めている運転者及びその管理者としての事業者には、輸送の安全等に対し高い信頼がおけるものとなる。
個々の実績ばかりでなく、斯かる点も適合度の評価対象とすることで、全体の安全性が高まり、円滑な運営が期待できる。
【0048】
<適格者選定の方法>
さて、上記回避条件、結合条件が出揃うと、それらを構成した要因を含めて、具体的な適格者の候補選定の手続きに入る。
回避条件に該当する場合には、選別の対象から除外される。
その候補選定の手段には、以下の方法がある。
a)要因に選別の順序を付す方法。
結合条件の要因となる活用パターン要因、地理的要因、時間的要因、人的要因等の項目に選別のための順序を与え、その順序に従って選別手続きを進めるもの。
例えば、地理的要因を1番目として対象候補を絞り、次に、活用パターン要因を2番目とし、順々に人的要因、時間的要因へと移って、最終的選別に至るもの。
b)指数化されたものを基準として選別する方法。
対象要因をそれぞれに指数化し、その指数化された値を基に選別を進めるもの。
例えば、活用パターン要因、地理的要因、時間的要因、人的要因等の対象要因に適合度を定め、その適合度を指数化し、その指数の総計を基に選別を図る。
c)上記a)とb)の方法を組み合わせて選別を図る方法。
【0049】
<コンピュータとソフトウエアの構築>
上記回避条件と結合条件とからの適格者候補選定にあたっては、上記a)~c)からなる候補選定手段を組み込んで、自動的な演算を可能とするソフトウエアの構築が求められる。
その具体例は、
図1-1、
図1-2のフローチャートによって示される如きものである。
斯かるソフトウエアを装備したコンピュータによって演算がなされ、候補選定が自動的に進められる。候補者の数は、固定的なものでなく、必要に応じて適正数を割り出す。
但し、この割り出された者をそのまま候補者とするか、そこに運営者の最終的判断を加えるかは、事象によって異なるものである。
上記の通り本方法は、利用を望むものが申し込みの一覧表等を覗いて、希望するものを選び出すものではなく、上記一定の条件を入力することで、適合するものをコンピュータの演算により算出し、これに運営者の判断を加えて、選出する構成をとるものである。
【0050】
(4)候補者紹介と選別及び役割決定
<候補者紹介>
コンピュータにより演算が実行されると、申し込み内容に応じて、該当者なしの場合を除いて、候補者が単数又は複数の数で選択されてくることになる。
そこで、運営者は、その内容を候補者として紹介することになる。
紹介は、システム画面上に、又は、メール等により伝達されるが、その手段を問わない。
紹介の記事には、輸送の代行者側には、候補者の名称、事業地、荷の種類、量、特別扱いの有無、出発地、到着地、時刻等が記載され、依頼者側には、候補者の名称、事業地、対象車輌、予定運転者、輸送実行の出発地、到着地、時刻等が記載される。
【0051】
<選別>
複数候補者のある場合には、斯かる内容に基づいて、紹介を受けた側は対象相手を絞り込むことになる。
【0052】
<役割決定>
候補者が選別されて、紹介を受けたとき、輸送の代行と輸送の依頼の役割が自動的に決定されてしまう場合と、相互の話し合いによって、その役割が変更される場合とがある。
例えば、活用パターンの組み合わせにあって、いずれか一方にα型の輸送実行決定型又はβ型の輸送依頼決定型が入る場合(α-α型、α-β型、α-γ型、β-γ型の場合)には、輸送代行と依頼の役割は既に決定済みのものなので、双方が話し合うことは不要となる。
一方、γ-γ型の場合には、輸送代行又は輸送依頼のいずれの選択も可能なので、調整が必要となる。
その調整方法には、以下の如きタイプが想定される。
イ)双方の話し合いに完全に任せ、会の運営者は関与しないタイプ。
双方が事情を出し合って話し合いをすれば良く、当事者の判断に任せようとすると場合である。
ロ)会の運営者が決定するタイプ。
期日が迫っている等の緊急性を要する場合、運営者の知識や経験を生かし、迅速に決定することが望まれる場合が該当する。
ハ)一定の合理的規則に従って決定していくタイプ。
組合せが過去の相手と同じ巡りあわせになった場合には、前回とは逆の役割分担とし、過去の履歴を活用して公平性を担保する場合が該当する。
ニ)偶然に任せるタイプ。
双六や乱数表等を利用し、事情や過去の履歴に捕われず、そのときの偶然に任せる場合である。
これらイ)~ニ)のいずれのタイプを用いるかは、固定的なものではなく、事象に合わせて選択すれば良い性格のものである。
【0053】
上記方法によって、候補者が選定されて、その相互の役割も決定されたとき、当然に相互の承諾を前提として、必要に応じて、契約等に入る。
契約書は、運営者が準備するか、又は、当事者が望む形態で契約しても良い。
【0054】
(5)輸送代行と結果報告
斯くして、本空き便の活用方法を用いた輸送の依頼及び代行が遂行されるものとなる。
その輸送が完了したら、その結果を先ず運営者に報告し、その報告を基に運営者から相手事業者へと結果を報告するものとする。
個々のやり取りを原則禁止とし、主体となる運営者のもとで情報のやり取りを促すものとする。
組織全体の安全と円滑な運用を図るためである。
【0055】
(6) 評価
評価性を導入することができる。
本方法による輸送代行後には、組み合わせの相手に対して、評価を点数等で付与することができる。
評価結果を反映させることで、個々の反省、改良点とすることができる。空き便利用の輸送が実行された後には、その確認と反省点を含めた改良性が担保されている。
【0056】
尚、上記方法の遂行にあたっては、会員募集、利用申込、候補者紹介、結果報告等において、原則的にインターネットを介してのやり取りとし、コンピュータの作動とその演算結果の取得等もネット上で行われる。
【0057】
以上により本自動車運送業者による空き便の活用方法が終了し、新たな利用を望む場合には、当初に戻って利用申し込みからスタートさせることになる。