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特開2022-98745有機無機複合組成物およびそれからなる成形品
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  • 特開-有機無機複合組成物およびそれからなる成形品 図1
  • 特開-有機無機複合組成物およびそれからなる成形品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098745
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】有機無機複合組成物およびそれからなる成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220627BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220627BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220627BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20220627BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20220627BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/00
C08K3/22
C08K9/00
C08L33/04
C08L69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212324
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 智大
(72)【発明者】
【氏名】小森 千晶
(72)【発明者】
【氏名】武田 強
(72)【発明者】
【氏名】川口 正剛
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002BG021
4J002BG041
4J002BG061
4J002CG001
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ016
4J002FB086
4J002FB236
4J002FD016
4J002FD126
4J002GN00
4J002GP00
4J002GP01
4J002GP02
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】良好な透明性、機械物性、低誘電特性を有する有機無機複合組成物およびそれからの成形品を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と、無機微粒子(B)とを含む有機無機複合組成物であって、前記有機無機複合組成物の全体を100質量%とした時、前記無機微粒子(B)の含有量が8質量%以下であり、前記有機無機複合組成物中における前記無機微粒子(B)の平均粒子径が1~85nmであることを特徴とする有機無機複合組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)と、無機微粒子(B)とを含む有機無機複合組成物であって、前記有機無機複合組成物の全体を100質量%とした時、前記無機微粒子(B)の含有量が8質量%以下であり、前記有機無機複合組成物中における前記無機微粒子(B)の平均粒子径が1~85nmであることを特徴とする有機無機複合組成物。
【請求項2】
無機微粒子(B)がZrO(酸化ジルコニウム)、TiO(酸化チタン)、SnO(酸化スズ)、SiO(酸化ケイ素)、Al(酸化アルミニウム)、ZnO(酸化亜鉛)およびMgO(酸化マグネシウム)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の有機無機複合組成物。
【請求項3】
無機微粒子(B)が、表面修飾剤により修飾されている、請求項1または2に記載の有機無機複合組成物。
【請求項4】
前記表面修飾剤が、酸性官能基を有する、請求項3に記載の有機無機複合組成物。
【請求項5】
前記酸性官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性官能基である、請求項4に記載の有機無機複合組成物。
【請求項6】
前記表面修飾剤の含有量が、無機微粒子(B)100質量%に対して1~30質量%である、請求項3~5のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
【請求項7】
熱可塑性樹脂(A)が、アクリル樹脂あるいはポリカーボネート樹脂である、請求項1~6のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
【請求項8】
無機微粒子(B)が、ZrO(酸化ジルコニウム)である、請求項1~7のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の有機無機複合組成物を用いて得られる成形品。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の有機無機複合組成物を用いて得られるフィルムまたはシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子が熱可塑性樹脂中に分散した有機無機複合組成物およびそれからなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の情報通信機器の信号帯域は高周波数化が進んでいる。電波が高周波数となるに従い、高周波伝播時の損失を低減させるために、誘電体の誘電特性が重要となる。誘電体内での熱損失は、比誘電率と誘電正接の積で表される損失係数に比例するため、高周波信号を取り扱う機器を構成する材料においては、低誘電特性が求められる。
【0003】
一般に、樹脂材料の誘電特性は、構成単位の分子構造によって決定されるため、誘電率を下げる試みとして分子骨格を設計する方法が考えられる。しかし、分子骨格の制御による低誘電率化には限界があり、また分子骨格の変更により樹脂成形体の強度などが変化してしまうなどの問題が生じる。
【0004】
他の低誘電率化の試みとして、無機フィラーを配合する方法が種々提案されている(特許文献1)。この方法では、低誘電特性を有する無機フィラーを添加することによりある程度は低誘電率化できるものの、無機フィラーを大量に添加する必要があるため、透明性や機械物性が低下するなどの課題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-129387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、ごく微量の無機微粒子を熱可塑性樹脂中に分散させることにより、樹脂本来機械物性の低下を生じることなく、透明性に優れ、且つ低誘電率化された有機無機複合組成物およびそれからなる成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を積み重ねた結果、驚くべきことに、熱可塑性樹脂に特定粒径の無機微粒子を特定量配合した有機無機複合組成物が、良好な透明性および低誘電特性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、下記(構成1)~(構成10)が提供される。
【0008】
(構成1)
熱可塑性樹脂(A)と、無機微粒子(B)とを含む有機無機複合組成物であって、前記有機無機複合組成物の全体を100質量%とした時、前記無機微粒子(B)の含有量が8質量%以下であり、前記有機無機複合組成物中における前記無機微粒子(B)の平均粒子径が1~85nmであることを特徴とする有機無機複合組成物。
(構成2)
無機微粒子(B)がZrO(酸化ジルコニウム)、TiO(酸化チタン)、SnO(酸化スズ)、SiO(酸化ケイ素)、Al(酸化アルミニウム)、ZnO(酸化亜鉛)およびMgO(酸化マグネシウム)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、前項1に記載の有機無機複合組成物。
(構成3)
無機微粒子(B)が、表面修飾剤により修飾されている、前項1または2に記載の有機無機複合組成物。
(構成4)
前記表面修飾剤が、酸性官能基を有する、前項3に記載の有機無機複合組成物。
(構成5)
前記酸性官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性官能基である、前項4に記載の有機無機複合組成物。
(構成6)
前記表面修飾剤の含有量が、無機微粒子(B)100質量%に対して1~30質量%である、前項3~5のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
(構成7)
熱可塑性樹脂(A)が、アクリル樹脂あるいはポリカーボネート樹脂である、前項1~6のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
(構成8)
無機微粒子(B)が、ZrO(酸化ジルコニウム)である、前項1~7のいずれかに記載の有機無機複合組成物。
(構成9)
前項1~8のいずれかに記載の有機無機複合組成物を用いて得られる成形品。
(構成10)
前項1~8のいずれかに記載の有機無機複合組成物を用いて得られるフィルムまたはシート。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機無機複合組成物は、特定粒径の無機微粒子を特定量添加することにより、良好な透明性および低い誘電率を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1の写真は、実施例4で製造された有機無機複合組成物のTEM画像を示す。
図2図2の写真は、比較例4で製造された有機無機複合組成物のTEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、熱可塑性樹脂(A)と無機微粒子(B)とを含む有機無機複合組成物であり、有機無機複合組成物の全体を100質量%とした時、無機微粒子(B)の含有量が8質量%以下であり、前記無機微粒子(B)の平均粒子径が1~85nmであることを特徴とする。
【0012】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0013】
<<熱可塑性樹脂(A)>>
熱可塑性樹脂(A)としては、具体的には、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、6ナイロン樹脂、66ナイロン樹脂、アラミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂及び各種高分子物質の共重合物、混合物等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0014】
上記熱可塑性樹脂のなかでも、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂がさらに好ましく、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0015】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明において好適に用いられるポリカーボネート樹脂に使用される単量体としては、芳香族ジオール化合物、脂肪族ジオール化合物、脂環式ジオール化合物、のいずれでもよく、国際公開第2004/111106号パンフレット、国際公開第2011/021720号パンフレットに記載のジオール化合物やジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類が挙げられる。これらジオール化合物は1種のみを用いても良く、2種類以上併用して用いても良い。
【0016】
芳香族ジオール化合物としては、下記式(1)で表される構造単位を含むものが好ましい。
【0017】
【化1】
【0018】
上記式(1)において、RおよびRは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。RおよびRが夫々複数ある場合は、それらは同一でも異なっていても良い。
【0019】
ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0020】
炭素原子数1~18のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0021】
炭素原子数1~18のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキトキシ基、オクトキシ基等が挙げられる。炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。
【0022】
炭素原子数6~20のシクロアルキル基として、シクロヘキシル基、シクロオクチル基
等が挙げられる。炭素原子数6~12のシクロアルキル基が好ましい。
【0023】
炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基として、好ましくはシクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等が挙げられる。炭素原子数6~12のシクロアルコキシ基が好ましい。
【0024】
炭素原子数2~10のアルケニル基として、メテニル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。炭素原子数2~6のアルケニル基が好ましい。
【0025】
炭素原子数6~14のアリール基として、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素原子数6~14のアリールオキシ基として、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0026】
炭素原子数7~20のアラルキル基として、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基として、ベンジルオキシ基、フェニルエチルオキシ基等が挙げられる。
【0027】
eおよびfは夫々独立に1~4の整数である。
【0028】
Wは、単結合もしくは下記式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。
【0029】
【化2】
【0030】
上記式(2)においてR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は夫々独立して、水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基および炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表わす。
【0031】
炭素原子数1~18のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0032】
炭素原子数6~14のアリール基として、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらは置換されていてもよい。置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素原子数1~6のアルキル基が挙げられる。
【0033】
炭素原子数7~20のアラルキル基として、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
【0034】
19およびR20は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18の
アルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表す。複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
【0035】
ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0036】
炭素原子数1~18のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0037】
炭素原子数1~10のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。
【0038】
炭素原子数6~20のシクロアルキル基として、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素原子数6~12のシクロアルキル基が好ましい。
【0039】
炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基として、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素原子数6~12のシクロアルコキシ基が好ましい。
【0040】
炭素原子数2~10のアルケニル基として、メテニル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。炭素原子数1~6のアルキル基が好ましい。
【0041】
炭素原子数6~14のアリール基として、フェニル基、ナフチル基等挙げられる。炭素原子数6~14のアリールオキシ基として、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0042】
炭素原子数7~20のアラルキル基として、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基として、ベンジルオキシ基、フェニルエチルオキシ基等が挙げられる。
【0043】
gは1~10の整数であり、好ましくは1~6の整数である。hは4~7の整数であり、好ましくは4~5の整数である。
【0044】
上記式(1)で表される芳香族ジオール化合物としては、例えば、4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラフルオロ-4,4’-ビフェノール、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-o-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン(以下“BPM”と略することがある)、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下“BPZ”と略することがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下“BPTMC”と略することがある)、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下“BPOCTMC”と略することがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルスルホン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“BPA”と略することがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下“BPC”と略することがある)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン(以下“BP26XA”と略することがある)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシー3-フェニルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(2,3-ジメチルー4-ヒドロキシフェニル)デカン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(以下“BPAF”と略することがある)、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、7,7’-ジメチル-6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、7,7’-ジフェニル-6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、および2,2-ビス(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチルー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、および2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。これらの芳香族ジオール化合物は、1種のみを用いても良く、2種類以上併用して用いても良い。
【0045】
脂肪族ジオール化合物としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1.9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,3-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。これらの脂肪族ジオール化合物は、1種のみを用いても良く、2種類以上併用して用いても良い。
【0046】
脂環式ジオール化合物としては、イソソルビド、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、3,9-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジエチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジプロピルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどが挙げられる。これらの脂環式ジオール化合物は、1種のみを用いても良く、2種類以上併用して用いても良い。
【0047】
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明で好適に使用されるポリカーボネート樹脂は、前記ジオール化合物とカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。また、3官能成分を重合させた分岐ポリカーボネートであってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、並びにビニル系単量体を共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。
【0048】
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は数分~5時間である。
【0049】
カーボネート前駆物質として例えば炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0050】
末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、1-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、イソオクチルフェノール、p-長鎖アルキルフェノール等が挙げられる。
【0051】
ポリカーボネート樹脂は、必要に応じて脂肪酸を共重合することができる。例えば、1,10-ドデカンジオン酸(DDDA)、アジピン酸、ヘキサンジオン酸、イソフタル酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、テレフタル酸、1,4-ベンゼンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、3-ヒドロキシ安息香酸(mHBA)、及び4-ヒドロキシ安息香酸(pHBA)が挙げられる。
【0052】
ポリカーボネート樹脂は、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートを含む。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、およびイコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が好ましく挙げられる。これらのカルボン酸は、目的を阻害しない範囲で共重合してもよい。本発明のポリカーボネート樹脂は、必要に応じてポリオルガノシロキサン単位を含有する構成単位を、共重合することもできる。
【0053】
ポリカーボネート樹脂は、必要に応じて三官能以上の多官能性芳香族化合物を含有する構成単位を、共重合し、分岐ポリカーボネートとすることもできる。分岐ポリカーボネートに使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、および4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。かかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、他の二価成分からの構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.03~1.5モル%、より好ましくは0.1~1.2モル%、特に好ましくは0.2~1.0モル%である。
【0054】
また分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換法による重合反応時に生じる副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
【0055】
(粘度平均分子量)
本発明で好適に使用されるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは15,000~40,000、より好ましくは16,000~39,000、さらに好ましくは17,000~38,000である。上述の範囲内であると、多くの分野において実用上の機械強度が獲得しやすく、成形加工時においては適度な溶融粘度を有するため熱劣化等の不具合が抑制されるとともに随時混合するポリカーボネート樹脂との溶融粘度差が小さく混錬性が良好となる。さらには、樹脂製造時の水洗工程の効率が良好であり、生産性に優れる。
【0056】
本発明におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出したものである。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0057】
(ガラス転移温度:Tg)
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは90~180℃、より好ましくは100~160℃である。Tgが上記範囲内であると、成形体として使用した際に、耐熱安定性及び成形性が良好であり好ましい。ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
【0058】
<アクリル樹脂>
本発明において好適に用いられるアクリル樹脂に使用される単量体として以下の化合物が挙げられる。例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロドデシルメタクリレート、シクロドデシルアクリレート等が例示される。
【0059】
これらは、単独で重合して使用してもよく、2種類以上を重合して使用してもよい。特にメタクリル酸メチルおよび/またはアクリル酸メチルを含むことが好ましい。モノマー成分として、メタクリル酸メチルを50~99mol%、アクリル酸メチルを1~50mol%含むことが好ましく、メタクリル酸メチルを60~99mol%、アクリル酸メチルを1~40mol%含むことがより好ましく、メタクリル酸メチルを70~99mol%、アクリル酸メチルを1~30mol%含むことがよりいっそう好ましい。モノマー成分として、メタクリル酸メチルが99mol%より多い場合、耐熱分解性が劣り、成形時にシルバー等の成形不良が発生することがある。モノマー成分として、メタクリル酸メチルが50mol%より小さい場合、熱変形温度が低下することがある。また、これらのアクリル系単量体と重合され得る他の単量体、例えばオレフィン系単量体、ビニル系単量体等を0~30質量%併用してもよい。
【0060】
(分子量)
前記アクリル樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量で3万以上、30万以下の範囲であれば、成形する際に流れムラ等の外観不良を生じることがなく
、機械特性、耐熱性に優れた成形品を提供することができる。
【0061】
(ガラス転移温度:Tg)
また、本発明で好適に使用されるアクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは90~150℃、より好ましくは95~145℃、さらに好ましくは100~140℃である。Tgが90~150℃であると、耐熱安定性及び成形性が良好であり好ましい。ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
【0062】
<<無機微粒子>>
本発明で用いる無機微粒子は、特に限定されるものではないが、ZrO(酸化ジルコニウム)、TiO(酸化チタン)、SnO(酸化スズ)、SiO(酸化ケイ素)、Al(酸化アルミニウム)、ZnO(酸化亜鉛)、MgO(酸化マグネシウム)等を例示することができる。なかでもZrO(酸化ジルコニウム)が好ましい。
【0063】
また、本発明において。有機無機複合組成物の全体を100質量%とした時、無機微粒子の含有量が8質量%以下であり、6質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、2質量%以下が特に好ましく、1質量%以下がもっとも好ましい。下限としては0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、0.3質量%以上がもっとも好ましい。無機微粒子の含有量が8質量%を超えると透明性や低誘電率化に悪影響を与えるため好ましくない。
【0064】
<表面修飾剤>
無機微粒子は必要に応じて、表面修飾剤で修飾されていても良い。本発明での無機微粒子の表面修飾剤は、複合化する熱可塑性樹脂に対し、無機微粒子の分散性を確保できれば特に制限はないけれども、酸性官能基を有することが好ましく、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カルボン酸基のいずれかの酸性官能基を有することが表面修飾に優れるため特に好ましい。以下に表面修飾剤の代表的具体例を示すが、本発明の表面修飾剤は、それらによって限定されるものではない。それらは単一で用いられても良く、また、複数種のものを混合して用いてもよい。微粒子の熱可塑性樹脂への分散性を向上させること、あるいは誘電率への悪影響を与えないことを目的として、適宜選択して用いることが望ましい。
【0065】
スルホン酸としては、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等のアルキルスルホン酸やベンゼンスルホン酸、メチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアリールスルホン酸が挙げられる。中でも、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、アリールスルホン酸が好ましい。
【0066】
ホスホン酸としては、プロパンホスホン酸等のアルキルホスホン酸、ベンゼンホスホン酸等のアリールホスホン酸が挙げられる。中でも、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、アリールホスホン酸が好ましい。
【0067】
ホスフィン酸としては、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジ(2-エチルへキシル)ホスフィン酸等のアルキルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等のアリールホスフィン酸が挙げられる。中でも、樹脂や溶媒への分散性、アリールホスフィン酸が好ましく、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸がさらに好ましく、ジフェニルホスフィン酸が特に好ましい。
【0068】
カルボン酸としては、ブタン酸、イソブタン酸、メタクリル酸、ヘキサン酸、オクタン
酸、オレイン酸、リノール酸、ラウリル酸等のアルキルカルボン酸や、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェノキシ安息香酸等のアリールカルボン酸が挙げられる。中でも、樹脂や溶媒への分散性を鑑みて、アリールカルボン酸が好ましく、オルトまたはメタまたはパラ位にフェノキシ基を有するフェノキシ安息香酸がさらに好ましく、パラフェノキシ安息香酸が特に好ましい。
【0069】
<表面修飾の方法>
本発明における無機微粒子の表面修飾は、例えば以下のような工程により行われる。すなわち、平均粒子径20nm程度以下の親水性の無機微粒子が分散した透明の水分散液、およびメタノールの混合液に、酸性官能基を有する表面修飾剤を添加し、その後、水とメタノールを共沸により除去して、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機溶媒に置換することで表面修飾無機微粒子が分散した分散液を調整できる。その後、溶媒を完全に留去することで、表面修飾無機微粒子の白色粉末が得られる。
【0070】
表面修飾剤で修飾された無機微粒子における、表面修飾剤の含有量は、熱可塑性樹脂への分散性や誘電特性への影響を鑑みて、無機微粒子に対して1~30質量%であることが好ましく、5~28質量%であることが好ましく、10~25質量%であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂への分散性の観点からは、表面修飾剤の含有率は高いほど良い。表面修飾剤の含有率は、分散性や誘電特性に応じて適宜調整することが望ましい。
【0071】
<有機無機複合組成物の製造方法>
熱可塑性樹脂に無機微粒子を配合する方法としては、特に限定されるものでは無いが、以下のような方法が挙げられる。
【0072】
(溶融混錬法)
熱可塑性樹脂と無機微粒子をドライブレンドした後、溶融混錬し、有機無機複合組成物を得る方法。
【0073】
(溶媒分散法)
熱可塑性樹脂と無機微粒子を、溶媒に溶解または分散させて混合した後に、溶媒を蒸発させて有機無機複合組成物を得る方法。
【0074】
(重合分散法)
無機微粒子を、モノマーを含む重合反応液中に分散させた後、通常の重合操作を行うことによって、無機微粒子が均一に分散した有機無機複合組成物を得る方法。
【0075】
これらの中でも、得られる有機無機複合組成物中での微粒子の分散性をより一層良好にできる観点、および生産性の観点から、溶媒分散法が好ましい。溶媒分散法で得られた組成物は、そのままキャストフィルムとして成形品としても良いし、押出、成形などの溶融加工をして成形品とすることもできる。
【0076】
溶媒分散法の場合、使用する溶媒としては、熱可塑性樹脂と無機微粒子が溶解または分散するものを適宜選択すればよく、その種類は特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂と無機微粒子の溶解度パラメータや極性を考慮して選択される。例えば、メチレンクロライド、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン等を溶媒として用いることができる。
【0077】
熱可塑性樹脂を溶媒に溶解させた溶液に、無機微粒子を固体のまま混合しても良いし、あらかじめ無機微粒子を溶媒に分散させた分散体とし、これを混合してもよい。
【0078】
溶媒の使用量は特に限定されないが、熱可塑性樹脂と無機微粒子が完全に溶解または分散できる濃度になるよう選択すればよい。例えば、熱可塑性樹脂または無機微粒子100質量部に対して、溶媒を100~10,000質量部で用いることが好ましい。
【0079】
本発明の有機無機複合組成物は、必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
【0080】
(成形方法)
本発明における有機無機複合組成物の成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、溶媒キャスト法等、一般の熱可塑性樹脂の成形法を採用することができる。本発明の有機無機複合組成物は、透明性、誘電特性に優れているので種々の成形品として利用することができる。殊に光学レンズ、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品、パソコンや携帯電話の前面板や外装、フィルムアンテナなどの電気電子部品、自動車のヘッドランプや窓などの自動車用途、または機能材料用途に適した成形体として有利に使用することができ、特に透明性、低誘電特性を生かした、光学部品、電気電子部品に好適である。
【0081】
(粒子径)
有機無機複合組成物中において、無機微粒子の平均粒子径は1~85nmであり、好ましくは2~80nmであり、より好ましくは3~75nmであり、さらに好ましくは5~72nmであり、特に好ましくは10~70nmである。無機微粒子の平均粒子径が上限を超えると、透明性や低誘電率化に悪影響を与えるため好ましくない。
【実施例0082】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。以下の実施例、および比較例において、各特性の測定法は次のとおりである。
【0083】
<評価方法>
(粘度平均分子量)
次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに試料0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出した。
ηSP/c=[η]+0.45×[η] c (但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0084】
(ガラス転移温度(Tg))
試料8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC-2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0085】
(全光線透過率、ヘーズ)
ヘーズメーター(製品名:NDH-3000、日本電色工業社製)を用いて、得られたフィルムの全光線透過率、ヘーズを測定した。
【0086】
(平均粒子径)
有機無機複合組成物のフィルムをミクロトーム(Leica Microsystems社製 EM UC6)を用いて切削することにより超薄切片を作成し、グリッド(日本電子株式会社製 EM FINE GRID No.2632 F-200-CU 100PC/CA)に付着させ、日本電子株式会社製 透過型電子顕微鏡TEM JEM-2100を用いて加速電圧200kVで観察した。観察倍率は10,000倍とした。
【0087】
得られた顕微鏡写真を画像解析ソフトWin ROOF Ver.6.6(三谷商事(株))を用いて粒子解析を行い、試料薄片中の無機微粒子の平均サイズおよび粒径分布(頻度分布)を得た。ここで各粒子のサイズとして最大長径(粒子の外側輪郭線上の任意の2点を、その間の長さが最大になるように選んだ時の長さ)を利用した。5枚の試料切片で同様の解析を行い、その平均値を各試料の値とした。
【0088】
(比誘電率および誘電正接)
有機無機複合組成物のフィルムを、KEYCOM誘電率計(ネットワークアナライザー:Anritsu MS4622B)を用いて空洞共振器により、1、5、10GHzの比誘電率および誘電正接を測定した。
【0089】
<ポリカーボネート樹脂>
PC-1:温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、25%水酸化ナトリウム水溶液4179部およびイオン交換水9404部を仕込み、これに2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)1,988部、およびハイドロサルファイト3.98部(和光純薬製)を溶解した後、塩化メチレン7,401部を加え、撹拌下、15~25℃でホスゲン1,000部を約70分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、25%水酸化ナトリウム水溶液697部およびp-tert-ブチルフェノール16.9部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン2.20部を加え、さらに28~33℃で1時間撹拌して反応を終了した。
【0090】
反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発した。脱水後、熱風循環式乾燥機により100℃で12時間乾燥し樹脂パウダーを得た。得られた樹脂の粘度平均分子量は37,500、ガラス転移温度は155℃であった。
【0091】
PC-2:温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水8,523部、25%水酸化ナトリウム水溶液3787部を入れ、二価フェノールとしてBPA901部および2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(BPC)1,010部、およびハイドロサルファイト5.73部を溶解した後、塩化メチレン6708部を加え、撹拌下16~24℃でFH1,000部を70分要して吹き込んだ。25%水酸化ナトリウム水溶液631部を加え、さらに末端停止剤としてp-tert-ブチルフェノール45.0部を加え、攪拌して乳化状態とした後、再度激しく撹拌した。かかる攪拌下、反応液が28℃の状態でトリエチルアミン2.0部を加えて温度26~31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。その後の操作は実施例1と同様の操作を行い、樹脂パウダーを得た。得られた樹脂の粘度平均分子量は20,000、ガラス転移温度は130℃であった。
【0092】
PC-3:温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水22,380部、48%水酸化ナトリウム水溶液3844部を入れ、二価フェノールとしてBPC3,984部、およびハイドロサルファイト7.53部を溶解した後、塩化メチレン13,210部を加え、撹拌下16~24℃でFH2,000部を60分要して吹き込んだ。48%水酸化ナトリウム水溶液640部を加え、さらに末端停止剤としてp-tert-ブチルフェノール93.2部を加え、攪拌して乳化状態とした後、再度激しく撹拌した。かかる攪拌下、反応液が28℃の状態でトリエチルアミン3.24部を加えて温度26~31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。その後の操作は実施例1と同様の操作を行い、樹脂パウダーを得た。得られた樹脂の粘度平均分子量は26,900、ガラス転移温度は120℃であった。
【0093】
<アクリル樹脂>
PMMA-1:三菱レイヨンアクリペットVH-001(メチルメタクリレートとメチルアクリレートの共重合アクリル樹脂)。
【0094】
<無機微粒子>
NP-1:スターラーチップをセットした2Lナスフラスコに、表面修飾剤としてパラフェノキシ安息香酸3.84gを入れ、メタノール300mLおよびクロロホルム700mLを加え、溶解させた。次に、ZrO水分散液(堺化学工業製:SZR-W)37.2gを15分かけて滴下した。混合液を1時間室温で撹拌した後、ロータリーエバポレーターにより200mL程度になるまで溶媒を留去した。留去は液相内で突沸が生じない程度の圧力に減圧することにより行った。その混合液に、さらにメタノール300mL、クロロホルム700mLを加えて再び界面がない透明な分散液とし、再度200mL程度になるまで溶媒を留去した。この操作を3回繰り返し、粉状の固体を得た。
【0095】
得られた固体に塩化メチレン500mLを加えて、再び界面がない透明な分散液とし、100mL程度になるまで溶媒を留去した。この操作を3回重ねることにより、水/メタノール/クロロホルム混合溶媒から塩化メチレンのみの溶媒に置換してZrO微粒子の塩化メチレン分散液を得た。さらに、この塩化メチレン分散液を室温で24時間真空乾燥させ、塩化メチレンを除去した後、さらに120℃で48時間乾燥させ、表面修飾ZrOの粉末を得た(表面修飾剤が24質量%含有したZrO微粒子)。
【0096】
NP-2:表面修飾剤としてジフェニルホスフィン酸1.34gを用いた以外は、NP-1と同様の方法で表面修飾ZrOの粉末を得た(表面修飾剤が10質量%含有したZrO微粒子)。
【0097】
<有機無機複合組成物の製造>
熱可塑性樹脂と無機微粒子の混合方法として溶媒分散法(A)あるいは溶融混錬法(B)を用いた。フィルムの成形方法として溶媒キャスト法(C)あるいは溶融押出法(D)を用いた。
【0098】
[実施例1]
熱可塑性樹脂としてPC-1の塩化メチレン溶液、無機微粒子としてNP-1の塩化メチレン分散液を調製した後、両者を混合して均一なPC-1/NP-1塩化メチレン分散液とした(溶媒分散法:A)。次に、PC-1/NP-1塩化メチレン分散液を25℃12時間、80℃4時間乾燥して塩化メチレンを留去し、さらに100℃24時間乾燥させて有機無機複合組成物のキャストフィルムを得た(溶媒キャスト法:C)。キャストフィルムを用いて各種評価を実施し、結果を表1に示した。
【0099】
[実施例2]
熱可塑性樹脂としてPC-1の塩化メチレン溶液、無機微粒子としてNP-1の塩化メチレン分散液を調製した後、両者を混合して均一なPC-1/NP-1塩化メチレン分散液とした(溶媒分散法:A)。次いで、この溶液を軸受け部に異物取り出し口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらフレーク化し、引続き該
含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。該パウダーを(株)テクノベル製15mmφ二軸押出機(KZW15-25MG)を用いてシリンダおよびダイス温度共に350℃で溶融混錬し、PC-1/NP-1の有機無機複合組成物のペレットを得た。得られたペレットを90℃で6時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した。(株)テクノベル製15mmφ二軸押出機に幅150mm、リップ幅500μmのTダイとフィルム引取り装置を取り付け、得られたペレットを350℃でフィルム成形することにより押出フィルムを得た(溶融押出法:D)。得られたフィルムについて各種評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0100】
[実施例3]
熱可塑性樹脂としてPC-2を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0101】
[実施例4]
熱可塑性樹脂としてPC-2を使用し、無機微粒子としてNP-2を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0102】
[実施例5]
無機微粒子の含有量を5.0質量%となるよう変更した以外は、実施例4と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0103】
[実施例6]
熱可塑性樹脂としてPC-3を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0104】
[実施例7]
熱可塑性樹脂としてPMMA-1を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0105】
[比較例1]
熱可塑性樹脂としてPC-1の塩化メチレン溶液を調製し、25℃12時間、80℃4時間乾燥して塩化メチレンを留去し、さらに100℃24時間乾燥させてキャストフィルムを得た。キャストフィルムを用いて各種評価を実施し、結果を表1に示した。
【0106】
[比較例2]
熱可塑性樹脂としてPC-1のペレットと、無機微粒子としてNP-1の粉末をドライブレンドした後、(株)テクノベル製15mmφ二軸押出機(KZW15-25MG)を用いてシリンダおよびダイス温度共に350℃で溶融混錬し、PC-1/NP-1の有機無機複合組成物のペレットを得た(溶融混錬法:B)。得られたペレットを90℃で6時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した。(株)テクノベル製15mmφ二軸押出機に幅150mm、リップ幅500μmのTダイとフィルム引取り装置を取り付け、得られたペレットを350℃でフィルム成形することにより押出フィルムを得た。得られたフィルムについて各種評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0107】
[比較例3]
熱可塑性樹脂としてPC-2を用いた以外は、比較例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0108】
[比較例4]
熱可塑性樹脂としてPC-2を用い、溶融混錬温度およびフィルム成形温度を280℃
とした以外は、比較例2と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0109】
[比較例5]
熱可塑性樹脂としてPC-2を使用し、無機微粒子の含有量を10.0質量%となるよう変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0110】
[比較例6]
熱可塑性樹脂としてPC-3を使用した以外は、比較例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0111】
[比較例7]
熱可塑性樹脂としてPMMA-1を使用した以外は、比較例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0112】
【表1】
【0113】
実施例1~7のように無機微粒子の粒径が比較的小さい有機無機複合組成物は、比較例1、3、6、7のような熱可塑性樹脂単体の場合と比較して、低誘電率を示した。一方、比較例2、4のように無機微粒子の粒径が比較的大きい場合や、比較例5のように無機微
粒子の含有量が多い場合には、低誘電率は示さず、透明性も悪化した。
【0114】
また、図1に実施例4で得られた有機無機複合組成物のTEM画像を示した。透明性が高く無機微粒子が均一に分散していた。一方、図2に比較例4で得られた有機無機複合組成物のTEM画像を示した。透明性が低く無機微粒子が凝集していた。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の有機無機複合組成物は、特定粒径のごく微量の無機微粒子を添加することで、熱可塑性樹脂本来の透明性を損なうことなく低誘電率を示す点で優れている。このため、本発明を用いて得られる成形品、フィルムおよびシートは各種分野に利用可能である。
図1
図2