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特開2022-98751チオピリジノン化合物を含む組成物中のチオピリジノン化合物の安定化及び組成物の黄変低減
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098751
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】チオピリジノン化合物を含む組成物中のチオピリジノン化合物の安定化及び組成物の黄変低減
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20220627BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20220627BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/36
A61Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020212330
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・タション
(72)【発明者】
【氏名】アメリー・プレヴォ-ゲギニア
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 誠
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC212
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC251
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC532
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC902
4C083AD092
4C083AD152
4C083CC02
4C083DD23
4C083EE01
4C083EE16
(57)【要約】
【課題】特に組成物が高温下で比較的長時間維持される場合に、チオピリジノン化合物の経時的な安定性が強化され、組成物にチオピリジノン化合物を添加した直後の黄変が低減される、チオピリジノン化合物を含む組成物を提供すること。
【解決手段】(a)少なくとも1種のチオピリジノン化合物、及び(b)18個以上の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸を含む組成物であって、組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の式(I)
【化1】
(式中、
R1は、
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分枝状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)
の化合物、又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体
並びに
(b)18個以上の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸
を含む組成物であって、
組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上である、
組成物。
【請求項2】
R1が、
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはメチル
から選択される基を指し、
R2が、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基、及び
c)飽和分枝状C3~C6アルキル基
から選択される基を指す、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R1が、
a)水素原子、及び
b)メチル基
から選択される基を指し、
R2が、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはエチル、
c)飽和分枝状C3~C4アルキル基、好ましくはイソプロピル及びイソブチル
から選択される基を指す、
請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(a)式(I)の化合物が、以下の化合物:
【表1】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(a)式(I)の化合物が、以下の化合物:
【表2】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中の(a)式(I)の化合物の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%から20質量%、好ましくは0.05質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から5質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸が、30個以下の炭素原子を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、及びネルボン酸からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、10質量%~35質量%、好ましくは10質量%~30質量%、より好ましくは10質量%~25質量%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(c)少なくとも1種の油を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(d)水を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(e)少なくとも1種の界面活性剤を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ケラチン物質、好ましくは皮膚の美白用である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ケラチン物質、好ましくは皮膚のための美容方法、好ましくは美白方法であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に塗布する工程
を含む、方法。
【請求項15】
(a)少なくとも1種の式(I)
【化2】
(式中、
R1が、
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2が、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分枝状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)、
の化合物、又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体
を含む組成物中における(b)18個以上の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸の、(a)化合物を安定化させ且つ組成物の黄変を低減するための使用であって、
組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオピリジノン化合物を含む組成物中のチオピリジノン化合物の安定化及び組成物の黄変低減に関する。
【背景技術】
【0002】
人生のさまざまな時期において、自分たちの皮膚、より特定すると手に、皮膚に不均質さを与える、より黒い染み及び/又はより有色の染みの出現を認める人々がいる。これらの染みは、特に、皮膚の表面に位置するケラチノサイト中の高濃度メラニンに起因する。
【0003】
色素沈着を処置する目的のためには、効力が高く無害の局所的脱色素物質の使用が最も特定的に望まれている。
【0004】
例えば、アルブチン、ナイアシンアミド及びコウジ酸は、皮膚脱色素剤として知られる。
【0005】
他方で、WO2017/102349は、新規の脱色素剤又は美白剤、すなわちチオピリジノン化合物を開示している。チオピリジノン化合物は、メラニンの生成を低減することによって強力な脱色素又は美白効果を示すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2017/102349
【特許文献2】米国特許第4,874,554号
【特許文献3】米国特許第4,137,180号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Synthesis of N-(2-mercaptopyridyl-3-formyl)-N-alkyl glycine and the corresponding disulfides、Luo, Y. L.; Yang, Z. X.; Peng, S. X. Div. Med.Chem., China Pharm. Univ., Nanjing, 210009, Peop. Rep. China Yaoxue Xuebao (1990)、25(5)、374~8
【非特許文献2】Walter Noll著「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年) Academic Press
【非特許文献3】Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmetics
【非特許文献4】「Handbook of Surfactants」、M.R.Porter、Blackie & Son出版(Glasgow及びLondon)、1991年、116~178頁
【非特許文献5】「The HLB system. A time-saving guide to emulsifier selection」(ICI Americas Inc.社より刊行、1984年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、チオピリジノン化合物は、特にチオピリジノン化合物を含む組成物が高温下で比較的長時間維持される場合に、組成物中で経時的に不安定化する傾向があること、並びにチオピリジノン化合物を含む組成物は、チオピリジノン化合物を組成物に添加した直後に強い黄色を示す傾向があることが発見された。
【0009】
したがって、本発明の目的は、特に組成物が高温下で比較的長時間維持される場合に、チオピリジノン化合物の経時的な安定性が強化され、組成物にチオピリジノン化合物を添加した直後の黄変が低減される、チオピリジノン化合物を含む組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、
(a)少なくとも1種の式(I)
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、
R1は、
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分岐状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)、
の化合物、又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体、
並びに
(b)18個以上の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸
を含む組成物であって、
組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上である、組成物によって達成することができる。
【0013】
式(I)中、
R1は、
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはメチル
から選択される基を指し、
R2は、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基、及び
c)飽和分岐状C3~C6アルキル基
から選択される基を指すことが好ましい。
【0014】
式(I)中、
R1は、
a)水素原子、及び
b)メチル基
から選択される基を指し、
R2は、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはエチル、
c)飽和分岐状C3~C4アルキル基、好ましくはイソプロピル及びイソブチル
から選択される基を指すことがより好ましい。
【0015】
(a)式(I)の化合物は、以下の化合物:
【0016】
【表1】
【0017】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択することができる。
【0018】
好ましくは、(a)式(I)の化合物は、以下の化合物:
【0019】
【表2】
【0020】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択することができる。
【0021】
本発明による組成物中の(a)式(I)の化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%から20質量%、好ましくは0.05質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から5質量%であってもよい。
【0022】
(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸は、30個以下の炭素原子を含んでもよい。
【0023】
(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、及びネルボン酸からなる群から選択することができる。
【0024】
本発明による組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、10質量%~35質量%、好ましくは10質量%~30質量%、より好ましくは10質量%~25質量%でありうる。
【0025】
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の油を更に含んでもよい。
【0026】
本発明による組成物は、(d)水を更に含んでよい。
【0027】
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種の界面活性剤を更に含んでよい。
【0028】
本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくは皮膚の美白のためであってよい。
【0029】
本発明はまた、ケラチン物質、好ましくは皮膚のための、美容方法、好ましくは美白方法であって、
本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程
を含む、方法にも関する。
【0030】
本発明の別の態様は、(a)少なくとも1種の式(I)
【0031】
【化2】
【0032】
(式中、
R1は、
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分岐状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)、
の化合物、又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体
を含む組成物中における(b)18個以上の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸の、(a)化合物を安定化させ且つ組成物の黄変を低減するための使用であって、
組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上である、
使用である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
鋭意検討の結果、本発明者らは、特に組成物が高温下で比較的長時間維持されると場合も、チオピリジノン化合物の経時的な安定性が強化され、組成物にチオピリジノン化合物を添加した直後の黄変が低減される、チオピリジノン化合物(複数可)を含む組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0034】
そのため、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種の式(I)
【0035】
【化3】
【0036】
(式中、
R1は、
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分岐状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)、
の化合物、又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体(以下、「(a)チオピリジノン化合物」と呼ぶことができる)、
並びに
(b)18個以上の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸
を含み、
組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上である。
【0037】
本発明による組成物は、該組成物中の(a)チオピリジノン化合物の強化された安定性を示すことができる。
【0038】
換言すると、本発明による組成物は、該組成物中の(a)チオピリジノン化合物の安定性を増強させることができる。(a)チオピリジノン化合物の「安定性」という用語は、特定の期間の間の、本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量における変化によって決定することができる。増強された「安定性」とは、(a)チオピリジノン化合物の量における経時的な変化が更に限定されることを意味する。
【0039】
組成物中の(a)チオピリジノン化合物は、経時的に分解する傾向がある。そのため、(a)チオピリジノン化合物の量は、経時的に減少する傾向がある。これに応じて、(a)チオピリジノン化合物の増強された安定性は、組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量の経時的な減少が限定されるか又はより小さいことを意味する。
【0040】
本発明による組成物は、組成物を、45℃のような高温下で、比較的長時間、例えば2カ月間維持する場合でも、該組成物中の(a)チオピリジノン化合物の増強された安定性を示すことができる。
【0041】
本発明による組成物はまた、組成物を、25℃のような室温下で、比較的長時間、例えば2カ月間維持する場合に、該組成物中の(a)チオピリジノン化合物の増強された安定性を示すことができる。
【0042】
したがって、本発明による組成物は、周囲条件及び高温条件の両方で、特に高温条件下でも、長時間の間、貯蔵することができる。
【0043】
加えて、(a)チオピリジノン化合物の増強された安定性は、脱色素剤又は美白剤として機能することができる(a)チオピリジノン化合物の改善された又は増強されたバイオアベイラビリティをもたらすことができる。したがって、本発明による組成物は、増強された又は改善された脱色素又は美白効果をもたらすことができる。
【0044】
本発明による組成物はまた、チオピリジノン化合物を組成物に添加した直後に低減された黄変も示すことができる。
【0045】
理論に束縛されるものではないが、黄変の低減は、本発明による組成物の黄色を隠蔽又は非表示できる、(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸による真珠光沢又は真珠構造の形成に少なくとも起因しうる。
【0046】
本発明による組成物中の、組成物の総質量に対して10質量%以上の量の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の使用は、許容されるレベルで、(a)チオピリジノン化合物を組成物に添加した直後に、組成物の黄変を隠蔽又は非表示するのに十分でありうる。
【0047】
以下に、本発明による組成物、使用等を詳細に説明する。
【0048】
[組成物]
本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種のチオピリジノン化合物、及び
(b)18個以上の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸
を含み、
組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上である。
【0049】
(a)チオピリジノン化合物及び(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸、並びに本発明による組成物の他の特徴を、以下で説明していく。
【0050】
(チオピリジノン化合物)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のチオピリジノン化合物を含む。2種以上の(a)チオピリジノン化合物を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの(a)チオピリジノン化合物、又は異なるタイプの(a)チオピリジノン化合物の組合せを使用することができる。
【0051】
(a)チオピリジノン化合物は、化粧料又は皮膚科用製品中の活性成分又は活性化合物であってよい。本明細書で使用される「活性」成分又は化合物という用語は、抗酸化効果、美白効果、UVフィルター効果及び抗菌効果等の、化粧用又は皮膚科用の活性特性を有する成分又は化合物を意味する。本発明で使用される(a)チオピリジノン化合物は、脱色素剤、漂白剤又は美白剤として機能することができ、したがって、本発明による組成物は、美白製品として、又はケラチン物質を美白するための化粧用組成物として使用することができる。
【0052】
(a)チオピリジノン化合物は、色素沈着又は老化性色素斑(senescence spots)を除去するために及び/又は日焼け防止剤として、皮膚、体毛、睫毛又は頭髪、更には唇及び/又は爪、好ましくは皮膚を脱色素、漂白又は美白するための作用剤として使用することができる。
【0053】
(a)チオピリジノン化合物は、以下の式(I)
【0054】
【化4】
【0055】
(式中、
R1は、
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分岐状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)
によって表され、
又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体である。
【0056】
式(I)の化合物の塩には、前記化合物の従来型の非毒性塩、例えば酸から又は塩基から形成されるものが挙げられる。
【0057】
式(I)の化合物の塩の例としては、
式(I)の化合物(それが酸基を含む場合)を、
無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム、及び炭酸ナトリウム、カリウム若しくはカルシウム若しくは炭酸水素塩等に、
又は
有機塩基、例えば第一級、第二級、若しくは第三級アルキルアミン、例えばトリエチルアミン若しくはブチルアミンに、
付加することにより得られる塩を挙げることができる。この第一級、第二級、又は第三級アルキルアミンは、1個以上の窒素原子及び/又は酸素原子を含んでもよく、そのため、例えば1つ以上のアルコール官能基を含んでもよく、特に、2-アミノ-2-メチルプロパノール、エタノールアミン、トリエタノールアミン、2-ジメチルアミノプロパノール、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール及び3-(ジメチルアミノ)プロピルアミンを挙げることができる。
【0058】
また、アミノ酸、例としては、リジン、アルギニン、グアニジン、グルタミン酸及びアスパラギン酸の塩も挙げることができる。有利には、式(I)の化合物(それが酸基を含む場合)の塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩、アンモニウム塩から選択することができる。
【0059】
本発明において記載される化合物の許容される溶媒和物は、溶媒が存在する結果として前記化合物の調製中に形成されるもの等の従来型の溶媒和物を含む。例として、水の存在、又は直鎖状若しくは分枝状アルコール、例えばエタノール若しくはイソプロパノールの存在に起因する、溶媒和物を挙げることができる。
【0060】
光学異性体は、特に、エナンチオマー及びジアステレオ異性体である。
【0061】
優先的には、直鎖状又は分岐状の基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル並びにデシルから選択することができる。
【0062】
より優先的には、飽和の直鎖状又は分枝状のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル並びにオクチルから選ばれてもよい。
【0063】
化合物a)は、PubCHEMデータベース(番号47329290)
http://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/47329290?from=summary#section=Top entry: 2010-11-26に開示されている。
【0064】
化合物b)CAS>1240664-41-8は、刊行物:
Synthesis of N-(2-mercaptopyridyl-3-formyl)-N-alkyl glycine and the corresponding disulfides
Luo, Y. L.; Yang, Z. X.; Peng, S. X.
Div. Med. Chem., China Pharm. Univ., Nanjing, 210009, Peop. Rep. China
Yaoxue Xuebao (1990)、25(5)、374~8に記載されている。
【0065】
好ましくは、(a)式(I)のチオピリジノン化合物は、以下の意味を有する:
R1は、
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはメチル
から選択される基を指し、
R2は、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基、及び
c)飽和分岐状C3~C6アルキル基
から選択される基を指す。
【0066】
より好ましくは、(a)式(I)のチオピリジノン化合物は、以下の意味を有する:
R1は、
a)水素原子、及び
b)メチル基
から選択される基を指し、
R2は、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはエチル、
c)飽和分岐状C3~C4アルキル基、好ましくはイソプロピル及びイソブチル
から選択される基を指す。
【0067】
(a)式(I)のチオピリジノン化合物は、以下の化合物:
【0068】
【表3】
【0069】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択することができる。
【0070】
好ましくは、(a)式(I)のチオピリジノン化合物は、以下の化合物:
【0071】
【表4】
【0072】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択することができる。
【0073】
より好ましくは、(a)チオピリジノン化合物は、N-[(2-チオキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)カルボニル]グリシンであってもよい。
【0074】
(a)チオピリジノン化合物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2017/102349に記載の方法に従って調製することができる。
【0075】
本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量が、組成物の総質量に対して0.3質量%以上であることが、更により好ましいことがある。
【0076】
その一方で、本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下でありうる。本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量は、組成物の総質量に対して3質量%以下であることが、更により好ましいこともある。
【0077】
本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%から20質量%、好ましくは0.05質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から5質量%の範囲であってよい。本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量は、組成物の総質量に対して0.3質量%~3質量%であることが、更により好ましいこともある。
【0078】
(脂肪酸)
本発明による組成物は、(b)18個以上の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸(以下、「(b)脂肪酸」と呼ぶことができる)を含む。それぞれが18個以上の炭素原子を含む2種以上の(b)脂肪酸を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸又は異なるタイプの(b)それぞれが18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の組合せを使用してよい。
【0079】
本明細書において用語「脂肪酸」は、脂肪族炭素の長鎖を有するカルボン酸を意味する。脂肪酸は、飽和又は不飽和で直鎖状又は分枝状の脂肪酸から選択されることが好ましい。不飽和の直鎖状又は分岐状脂肪酸として、一価不飽和の直鎖若しくは分岐状脂肪酸又は多価不飽和の直鎖若しくは分岐状脂肪酸を使用してもよい。不飽和の直鎖又は分岐状脂肪酸の不飽和部分として、炭素間二重結合又は炭素間三重結合を挙げることができる。
【0080】
(b)脂肪酸は、30個以下の炭素原子を含んでもよい。
【0081】
(b)脂肪酸は、C18~C30脂肪酸、より好ましくはC18~C26脂肪酸、更により好ましくはC18~C24脂肪酸から選択されることが好ましい。
【0082】
(b)脂肪酸として、例えば、C18~C30飽和の直鎖状又は分岐状脂肪酸を使用してもよい。C18~C30飽和の直鎖状又は分岐状脂肪酸として、ステアリン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、アラキドン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、及びリグノセリン酸(C24)を挙げることができる。
【0083】
他方、(b)脂肪酸として、例えば、C18~C30不飽和の直鎖状又は分岐状脂肪酸を使用してもよい。C18~C30飽和の直鎖状又は分岐状脂肪酸として、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、アラキドン酸(C20)、及びネルボン酸(C24)を挙げることができる。
【0084】
(b)脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、及びネルボン酸からなる群から選択することができる。
【0085】
(b)脂肪酸は、その遊離酸の形態又はその塩の形態であってもよい。脂肪酸の塩として、無機塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、並びに有機塩、例えばアンモニウム塩(第4級アンモニウム塩等)及びアミン塩(トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等)を挙げることができる。単一のタイプの脂肪酸塩又は異なるタイプの脂肪酸塩の組合せを使用してもよい。更に、遊離酸の形態の1種又は複数の脂肪酸と、塩の形態の1種又は複数の脂肪酸との組合せを使用することができ、1種又は複数のタイプの塩を使用することもできる。少なくとも一部(好ましくは少なくとも80%、より好ましくは90%)、特に全ての脂肪酸が、遊離酸の形態であることが好ましい。
【0086】
本発明による組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上である。本発明による組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、16質量%以上であることが更により好ましいことがある。
【0087】
その一方で、本発明による組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、35質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下でありうる。本発明による組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下であることが更により好ましいことがある。
【0088】
本発明による組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、10質量%~35質量%、好ましくは12質量%~30質量%、より好ましくは14質量%~25質量%の範囲でありうる。本発明による組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、16質量%~20質量%であることが更により好ましいことがある。
【0089】
本発明による組成物中の、(a)チオピリジノン化合物の量の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量に対する質量比は、10以上、好ましくは15以上、より好ましくは30以上であってよい。
【0090】
(油)
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の油を含んでもよい。2種以上の(c)油が使用される場合には、これらは同じであっても異なっていてもよい。
【0091】
本明細書では、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)で液体又はペースト(非固体)の形態の脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧品において一般に使用されるものを、単独で、又はそれらの組合せで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0092】
(c)油は、炭化水素油又はシリコーン油等の非極性油、植物油若しくは動物油及びエステル油若しくはエーテル油等の極性油、又はそれらの混合物とすることができる。
【0093】
(c)油は、植物又は動物起源の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油、及び脂肪アルコールからなる群から選択してもよい。
【0094】
植物油の例として、例えば、アマニ油、カメリア油、マカデミアナッツ油、コーン油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、ベニバナ油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0095】
動物油の例として、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0096】
合成油の例として、アルカン油、例えば、イソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油、並びに人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0097】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又は多酸と、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液状エステルであり、これらのエステルの合計炭素原子数は10以上である。
【0098】
好ましくは、一価アルコールのエステルの場合には、本発明のエステルが由来するアルコール及び酸の中から少なくとも1つは分枝状である。
【0099】
一酸及び一価アルコールのモノエステルの中でも、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0100】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、並びにモノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸と、非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ、又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルも使用されうる。
【0101】
特に挙げることができるのは以下:セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールである。
【0102】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の糖エステル及びジエステルを使用することができる。用語「糖」が、アルデヒド又はケトン官能基を含む又は含まない、且つ少なくとも4個の炭素原子を含む、いくつかのアルコール官能基を含有する、酸素を保持する炭化水素系化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖、又は多糖でありうる。
【0103】
挙げることができる好適な糖の例としては、スクロース(又はサッカロース)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにそれらの誘導体、特にアルキル誘導体、例えばメチル誘導体、例としてはメチルグルコースがある。
【0104】
脂肪酸の糖エステルは、とりわけ、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状で飽和若しくは不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル又はエステルの混合物を含む群から選ぶことができる。これらの化合物は、不飽和である場合には、1から3個の共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有することができる。
【0105】
この変形形態によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、及びポリエステル、並びにこれらの混合物から選択してもよい。
【0106】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル、及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えばとりわけ、オレオパルミチン酸、オレオステアリン酸、及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルであってもよい。
【0107】
より詳細には、モノエステル及びジエステル、とりわけスクロース、グルコース、又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0108】
挙げることができる例は、ジオレイン酸メチルグルコースである、Amerchol社により名称Glucate(登録商標)DOで販売されている製品である。
【0109】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0110】
人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル、及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0111】
シリコーン油の例として、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等、環状オルガノポリシロキサン、例えばシクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0112】
好ましくは、シリコーン油は、液状ポリジアルキルシロキサン、とりわけ、液状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び少なくとも1つのアリール基を含む液状ポリオルガノシロキサンから選ばれる。
【0113】
これらのシリコーン油はまた、有機変性されていてよい。本発明に従って使用することができる有機変性シリコーンは、上に定義したシリコーン油であり、構造中に、炭化水素系基を介して結合されている1個又は複数の有機官能基を含む。
【0114】
オルガノポリシロキサンは、Walter Noll著「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年) Academic Pressにおいて詳細に定義されている。オルガノポリシロキサンは、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0115】
それらが揮発性である場合には、シリコーンは、より詳細には、60℃から260℃の間の沸点を有するものから選択され、更により詳細には、以下から選択される:
(i)3~7個、好ましくは4~5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。これらは、例えば、特にUnion Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標) 7207で販売されている、又はRhodia社により名称Silbione(登録商標) 70045 V2で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標) 7158で販売されている、Rhodia社によりSilbione(登録商標) 70045 V5で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社により名称Silsoft 1217で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにこれらの混合物である。ジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサン等のタイプのシクロコポリマー、例えば次式の、Union Carbide社により販売されているSilicone Volatile(登録商標)FZ 3109もまた挙げることができる。
【0116】
【化5】
【0117】
環状ポリジアルキルシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物を挙げることもできる。
(ii)2~9個のケイ素原子を含有し、25℃において5×10-6m2/s以下の粘度を有する、直鎖状の揮発性ポリジアルキルシロキサン。例は、特にToray Silicone社により名称SH 200で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。この部類に属するシリコーンは、Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsに公表されている論文にも記載されている。シリコーンの粘度は、ASTM規格445附属書Cに従って、25℃において測定される。
【0118】
不揮発性ポリジアルキルシロキサンを使用してもよい。これらの不揮発性シリコーンは、より詳細にはポリジアルキルシロキサンから選ばれ、その中では、主としてトリメチルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサンを挙げることができる。
【0119】
これらのポリジアルキルシロキサンの中で、以下の市販製品を非限定的に挙げることができる:
- Rhodia社により販売されているSilbione(登録商標)油の47及び70 047シリーズ又はMirasil(登録商標)油、例えば70 047 V 500 000油;
- Rhodia社により販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油;
- Dow Corning社製の200シリーズの油、例えば粘度60000mm2/sのDC200;並びに
- General Electric社製のViscasil(登録商標)油及びGeneral Electric社製のSFシリーズの特定の油(SF 96、SF 18)。
【0120】
名称ジメチコノール(CTFA)で知られる、ジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社製の48シリーズの油も挙げることができる。
【0121】
アリール基を含有するシリコーンの中でも、ポリジアリールシロキサン、とりわけポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0122】
フェニルシリコーン油は、以下の式のフェニルシリコーンから選択することができる:
【0123】
【化6】
【0124】
(式中、
R1~R10は、互いに独立して、飽和又は不飽和で、直鎖状、環状又は分枝状のC1~C30炭化水素系基、好ましくはC1~C12炭化水素系基、より好ましくはC1~C6炭化水素系基、特にメチル、エチル、プロピル、又はブチル基であり、
m、n、p、及びqは、互いに独立して、両端を含めて0~900、好ましくは両端を含めて0~500、より好ましくは両端を含めて0~100の整数であり、
ただし、n+m+qの和は0以外である)。
【0125】
挙げることができる例には、以下の名称で販売されている製品がある:
- Rhodia社製のSilbione(登録商標)油の70 641シリーズ、
- Rhodia社製のRhodorsil(登録商標) 70 633及び763シリーズの油、
- Dow Corning社製の油であるDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid、
- Bayer社製のPKシリーズのシリコーン、例えばPK20製品、
- General Electric社製のSFシリーズの特定の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250、及びSF 1265。
【0126】
フェニルシリコーン油として、フェニルトリメチコン(上の式中、R1~R10はメチルであり、p、q、及びn=0であり、m=1である)が好ましい。
【0127】
有機変性液状シリコーンは、とりわけ、ポリエチレンオキシ及び/又はポリプロピレンオキシ基を含有してもよい。そのため、信越化学工業株式会社により提案されているシリコーンKF-6017、及びUnion Carbide社製の油Silwet(登録商標)L722及びL77を挙げることができる。
【0128】
炭化水素油は、以下から選択されうる:
- 直鎖状又は分枝状、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン(挙げることができる例としては、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカンがある)、並びに
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば流動パラフィン、流動ワセリン、ポリデセン及び水素化ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、及びスクアラン。
【0129】
炭化水素油の好ましい例として、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えばイソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱油(例えば、流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン(vaseline)又はペトロラタム(petrolatum)、ナフタレン等;水素化ポリイソブテン、イソエイコサン及びデセン/ブテンコポリマー;並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0130】
脂肪アルコールにおける用語「脂肪」は、比較的大きい数の炭素原子を包含することを意味する。したがって、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪アルコールの範囲内に包含される。脂肪アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。脂肪アルコールは、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。
【0131】
脂肪アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4~40個の炭素原子、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは12~20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和の、直鎖状及び分枝状の基から選択される)を有しうる。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル基及びC12~C20アルケニル基から選択されうる。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換されていても、されていなくてもよい。
【0132】
脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0133】
脂肪アルコールは、飽和脂肪アルコールであることが好ましい。
【0134】
したがって、脂肪アルコールは、直鎖状又は分枝状で、飽和又は不飽和のC6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、より好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択することができる。
【0135】
「飽和脂肪アルコール」という用語は、ここでは、長鎖の脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪アルコールは、いずれかの直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪アルコールの中でも、直鎖状又は分枝状の飽和C12~C20脂肪アルコールが、好ましくは使用されうる。任意の直鎖状又は分枝状の飽和C16~C20脂肪アルコールが、より好ましく使用されうる。分枝状C16~C20脂肪アルコールが、更により好ましく使用されうる。
【0136】
飽和脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えばセテアリルアルコール)、及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪アルコールとして使用することができる。
【0137】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物中に使用される脂肪アルコールは、好ましくは、セチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物から選ばれる。
【0138】
(c)油は、600g/mol未満の分子量を有する油から選択されることもまた好ましい。
【0139】
好ましくは、(c)油は、600g/mol未満等の低分子量を有し、炭化水素短鎖(C1~C12)を有するエステル油(例えば、イソプロピルラウロイルサルコシネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、及びパルミチン酸エチルヘキシル)、シリコーン油(例えば、シクロヘキサシロキサン等の揮発性のシリコーン)、炭化水素油(例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、及びスクアラン)、オクチルドデカノール及びオレイルアルコール等の分枝状及び/又は不飽和脂肪アルコール(C12~C30)型油、並びにジカプリリルエーテル等のエーテル油のうちから選択される。
【0140】
(c)油は、揮発性油、不揮発性油、及びそれらの混合物から選択できる。
【0141】
(c)油は、極性油及び非極性油から選択することができる。
【0142】
(c)油は、エステル油及びシリコーン油から選択されることが好ましい。
【0143】
(c)油は、ミリスチン酸イソプロピル等の不揮発性エステル油、及びジメチコーン等の不揮発性シリコーン油から選択されることが更により好ましい。
【0144】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上でありうる。
【0145】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下でありうる。
【0146】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%から15質量%、好ましくは0.5質量%から10質量%、より好ましくは1質量%から5質量%であってもよい。
【0147】
(水)
本発明による組成物は、(d)水を含んでもよい。
【0148】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であってもよい。本発明による組成物中の(d)水の量が、組成物の総質量に対して75質量%以上であることが、更により好ましい場合がある。
【0149】
その一方で、本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下であってもよい。本発明による組成物中の(d)水の量が、組成物の総質量に対して80質量%以下であることが、更により好ましい場合がある。
【0150】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~95質量%、好ましくは60質量%~90質量%、より好ましくは70質量%~85質量%でありうる。本発明による組成物中の(d)水の量が、組成物の総質量に対して75質量%~80質量%であることが、更により好ましい場合がある。
【0151】
(界面活性剤)
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種の界面活性剤を含んでよい。2種以上の界面活性剤が使用される場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0152】
任意の界面活性剤を、本発明のために使用することができる。本発明中で使用される(e)界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択することができる。2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの界面活性剤、又は異なるタイプの界面活性剤の組合せを使用することができる。
【0153】
(e)界面活性剤は、非イオン性界面活性剤からなる群から好ましくは選択されうる。
【0154】
(アニオン性界面活性剤)
本発明によれば、アニオン性界面活性剤のタイプは限定されない。アニオン性界面活性剤は、(C6~C30)アルキル硫酸塩、(C6~C30)アルキルエーテル硫酸塩、(C6~C30)アルキルアミドエーテル硫酸塩、アルキルアリールポリエーテル硫酸塩、及びモノグリセリド硫酸塩;(C6~C30)アルキルスルホン酸塩、(C6~C30)アルキルアミドスルホン酸塩、(C6~C30)アルキルアリールスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びパラフィンスルホン酸塩;(C6~C30)アルキルリン酸塩;(C6~C30)アルキルスルホコハク酸塩、(C6~C30)アルキルエーテルスルホコハク酸塩、及び(C6~C30)アルキルアミドスルホコハク酸塩;(C6~C30)アルキルスルホアセテート;(C6~C24)アシルサルコシネート;(C6~C24)アシルグルタメート;(C6~C30)アルキルポリグリコシドカルボキシルエーテル;(C6~C30)アルキルポリグリコシドスルホコハク酸塩;(C6~C30)アルキルスルホスクシナメート;(C6~C24)アシルイセチオネート;N-(C6~C24)アシルタウレート;C6~C30脂肪酸塩;ヤシ油酸塩又は水素化ヤシ油酸塩;(C8~C20)アシルラクチレート;(C6~C30)アルキル-D-ガラクトシドウロン酸塩;ポリオキシアルキレン化(C6~C30)アルキルエーテルカルボン酸塩;ポリオキシアルキレン化(C6~C30)アルキルアリールエーテルカルボン酸塩;及びポリオキシアルキレン化(C6~C30)アルキルアミドエーテルカルボン酸塩からなる群から選択されることが好ましい。
【0155】
アニオン性界面活性剤は、(C6~C30)硫酸アルキルの塩又はポリオキシアルキレン化(C6~C30)アルキルエーテルカルボン酸塩から選択されることがより好ましい。
【0156】
少なくとも1つの実施形態では、アニオン性界面活性剤は塩の形態にあり、例えばアルカリ金属(例としてはナトリウム)の塩;アルカリ土類金属(例としてはマグネシウム)の塩;アンモニウム塩;アミン塩;及びアミノアルコール塩等である。条件によっては、アニオン性界面活性剤は酸の形態にあってもよい。
【0157】
(両性界面活性剤)
本発明によれば、両性界面活性剤のタイプは限定されない。両性又は双性界面活性剤は、例えば(非限定的列挙)、アミン誘導体、例えば脂肪族第二級又は第三級アミン、及び任意選択で四級化されているアミン誘導体であってよく、ここで、脂肪族基は、8~22個の炭素原子を含んで少なくとも1つの水可溶化アニオン性基(例えばカルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート又はホスホネート)を含有する直鎖又は分枝鎖である。
【0158】
両性界面活性剤は、好ましくは、ベタイン及びアミドアミンカルボキシル化誘導体からなる群から選択することができる。
【0159】
ベタイン型両性界面活性剤は、アルキルベタイン、アルキルアミドアルキルベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン及びアルキルアミドアルキルスルホベタイン、具体的には(C8~C24)アルキルベタイン、(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルベタイン、スルホベタイン、及び(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルスルホベタインからなる群から好ましくは選択される。一実施形態では、ベタイン型両性界面活性剤は、(C8~C24)アルキルベタイン、(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルスルホベタイン、スルホベタイン及びホスホベタインから選択される。
【0160】
挙げることができる非限定的な例には、CTFA辞典、第9版、2002において、単独で又は混合物として、名称ココベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、ココ/オレアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、パルミタミドプロピルベタイン、ステアラミドプロピルベタイン、コカミドエチルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、オレアミドプロピルヒドロキシスルタイン、ココヒドロキシスルタイン、ラウリルヒドロキシスルタイン及びココスルタインで分類されている化合物が含まれる。
【0161】
ベタイン型両性界面活性剤は、好ましくは、アルキルベタイン及びアルキルアミドアルキルベタイン、特に、ココベタイン及びコカミドプロピルベタインである。
【0162】
アミドアミンカルボキシル化誘導体の中でも、米国特許第2,528,378号及び第2,781,354号に記載され、CTFA辞典、第3版、1982(その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)において分類されている、Miranolの名称で販売されている製品、Amphocarboxyglucinates及びAmphocarboxypropionatesの名称で各構造が以下の製品を挙げることができる:
R1-CONHCH2CH2-N+(R2)(R3)(CH2COO-)
(式中、
R1は、加水分解ココナツ油中に存在する酸R1-COOHのアルキル基、ヘプチル、ノニル又はウンデシルの各基を示し、
R2は、β-ヒドロキシエチル基を示し、
R3は、カルボキシメチル基を示す)
並びに
R1'-CONHCH2CH2-N(B)(C)
(式中、
Bは、-CH2CH2OX'を表し、
Cは、-(CH2)z-Y'を表し、z=1又は2であり、
X'は、-CH2CH2-COOH基、-CH2-COOZ'、-CH2CH2-COOH、-CH2CH2-COOZ'又は水素原子を示し、
Y'は、-COOH基、-COOZ'基、-CH2-CHOH-SO3Z'基又は-CH2-CHOH-SO3H基を示し、
Z'は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えばナトリウムのイオン、アンモニウムイオン、又は有機アミンから発生するイオンを表し、
R1'は、ココナツ油中、若しくは加水分解アマニ油中に存在する酸R1'-COOHのアルキル基、C7、C9、C11若しくはC13アルキル基等のアルキル基、C17アルキル基及びそのイソ型、又は不飽和のC17基を示す)。
【0163】
両性界面活性剤が、(C8~C24)アンホモノ酢酸アルキル、(C8~C24)アンホ二酢酸アルキル、(C8~C24)アンホモノプロピオン酸アルキル及び(C8~C24)アンホジプロピオン酸アルキルから選択されることが好ましい。
【0164】
これらの化合物は、CTFA辞典、第5版、1993において、名称ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリルアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリロアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホプロピオン酸二ナトリウム、カプリルアンホジプロピオン酸二ナトリウム、カプリルアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホジプロピオン酸及びココアンホジプロピオン酸で分類されている。
【0165】
例として、Rhodia Chimie社によりMiranol(登録商標)C2M濃縮物という商標名で販売されているココアンホジアセテートを挙げることができる。
【0166】
(カチオン性界面活性剤)
本発明によれば、カチオン性界面活性剤のタイプは限定されない。カチオン性界面活性剤は、任意選択でポリオキシアルキレン化されている、第一級、第二級又は第三級脂肪アミン塩、第四級アンモニウム塩、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0167】
挙げることができる第四級アンモニウム塩の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
以下の一般式(I)のもの:
【0168】
【化7】
【0169】
(式中、
R1、R2、R3及びR4は、同一であっても異なっていてもよく、1~30個の炭素原子を含んで酸素、窒素、硫黄及びハロゲン等のヘテロ原子を任意選択で含む、直鎖状及び分枝状の脂肪族基から選択される。脂肪族基は、例えば、アルキル、アルコキシ、C2~C6ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、(C12~C22)アルキルアミド(C2~C6)アルキル、(C12~C22)アルキルアセテート及びヒドロキシアルキルの各基;並びに芳香族基、例えばアリール及びアルキルアリールから選択することができ;X-は、ハロゲン化物イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、(C2~C6)アルキル硫酸イオン、及びアルキルスルホン酸イオン又はアルキルアリールスルホン酸イオンから選択される);
イミダゾリンの第四級アンモニウム塩、例えば、次式(II)のもの:
【0170】
【化8】
【0171】
(式中、
R5は、8~30個の炭素原子を含むアルケニル基及びアルキル基、例えば、獣脂の若しくはココナツの脂肪酸誘導体から選択され、
R6は、水素、C1~C4アルキル基、及び8~30個の炭素原子を含むアルケニル基及びアルキル基から選択され、
R7は、C1~C4アルキル基から選択され、
R8は、水素及びC1~C4アルキル基から選択され、
X-は、ハロゲン化物イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、アルキル硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン及びアルキルアリールスルホン酸イオンから選択される)。
一実施形態では、R5及びR6は、例えば、獣脂の脂肪酸誘導体等の、12~21個の炭素原子を含むアルケニル基及びアルキル基から選択される基の混合物であり、R7はメチルであり、R8は水素である。こうした製品の例には、これらに限定されないが、Witco社により「Rewoquat(登録商標)」W75、W90、W75PG及びW75HPGという名称で販売されている、クオタニウム-27(CTFA 1997年)及びクオタニウム-83(CTFA 1997年);
式(III)のジ四級アンモニウム塩:
【0172】
【化9】
【0173】
(式中:
R9は、16~30個の炭素原子を含む脂肪族基から選択され、
R10は、水素、又は1~4個の炭素原子を含むアルキル基、又は(R16a)(R17a)(R18a)N+(CH2)3基から選択され、
R11、R12、R13、R14、R16a、R17a及びR18aは、同一であっても異なっていてもよく、水素、及び1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
X-は、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、エチル硫酸イオン、及びメチル硫酸イオンから選択される)。
【0174】
このようなジ第四級アンモニウム塩の例は、FINETEX社のFINQUAT CT-P(クオタニウム-89)、又はFINETEX社のFINQUAT CT(クオタニウム-75)である;並びに
少なくとも1つのエステル官能基を含む第四級アンモニウム塩、例えば次式(IV)のものが挙げられる:
【0175】
【化10】
【0176】
(式中、
R22は、C1~C6アルキル基、並びにC1~C6ヒドロキシアルキル基及びジヒドロキシアルキル基から選択され、
R23は、
以下の基:
【0177】
【化11】
【0178】
直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC1~C22炭化水素系基R27、並びに水素から選択され、
R25は、
以下の基:
【0179】
【化12】
【0180】
、直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC1~C6炭化水素系基R29、並びに水素から選択され、
R24、R26及びR28は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状及び分枝状の飽和及び不飽和C7~C21炭化水素系基から選択され、
r、s及びtは、同一であっても異なっていてもよく、2~6の範囲の整数から選択され、
r1及びt1のそれぞれは、同一であっても異なっていてもよく、0又は1であり、r2+r1=2r且つt1+2t=2tであり、
yは1~10の範囲の整数から選択され、
x及びzは、同一であっても異なっていてもよく、0~10の範囲の整数から選択され、
X-は、単純な及び錯体の、有機及び無機のアニオンから選択され、ただし、和x+y+zは、1から15の範囲であり、xが0である場合、R23は、R27を示し、zが0である場合、R25は、R29を示す)。R22は、直鎖状及び分枝状のアルキル基から選択することができる。一実施形態では、R22は、直鎖状のアルキル基から選択される。別の実施形態では、R22は、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、及びジヒドロキシプロピル基から選択され、例えば、メチル基及びエチル基から選択される。一実施形態では、和x+y+zは、1~10の範囲である。R23が炭化水素系基R27である場合、これは長鎖であって、12~22個の炭素原子を含んでもよく、又は短鎖であって、1~3個の炭素原子を含んでもよい。R25が炭化水素系基R29である場合、これは、例えば、1~3個の炭素原子を含んでもよい。非限定的な例として、一実施形態では、R24、R26及びR28は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC11~C21炭化水素系基から選択され、例えば、直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC11~C21アルキル基及びアルケニル基から選択される。別の実施形態では、x及びzは、同一であっても異なっていてもよく、0又は1である。一実施形態において、yは1に等しい。別の実施形態では、r、s及びtは、同一であっても異なっていてもよく、2又は3に等しく、例えば2に等しい。アニオンX-は、例えば、ハロゲン化物イオン、例えば塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン;並びにC1~C4アルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオンから選択することができる。しかしながら、メタンスルホン酸アニオン、リン酸アニオン、硝酸アニオン、トシル酸アニオン、有機酸に由来するアニオン、例えば酢酸アニオン及び乳酸アニオン、並びにエステル官能基を含むアンモニウムと適合性のある任意の他のアニオンが、本発明により使用されうるアニオンの他の非限定的な例である。一実施形態では、アニオンX-は、塩化物イオン及びメチル硫酸イオンから選択される。
【0181】
別の実施形態では、式(IV)(式中、
R22は、メチル基及びエチル基から選択され、
x及びyは、1に等しく、
zは0又は1に等しく、
r、s及びtは、2に等しく、
R23は、
以下の基:
【0182】
【化13】
【0183】
、メチル基、エチル基、及びC14~C22炭化水素系基、並びに水素から選択され、
R25は、
以下の基:
【0184】
【化14】
【0185】
及び水素から選択され、
R24、R26及びR28は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC13~C17炭化水素系基から選択され、例えば、直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC13~C17アルキル基及びアルケニル基から選択される)
のアンモニウム塩を使用することができる。
【0186】
一実施形態では、炭化水素系基は、直鎖状である。
【0187】
挙げることができる式(IV)の化合物の非限定的な例には、塩、例えば、ジアシルオキシエチル-ジメチルアンモニウムの塩化物及びメチル硫酸塩、ジアシルオキシエチル-ヒドロキシエチル-メチルアンモニウムの塩化物及びメチル硫酸塩、モノアシルオキシエチル-ジヒドロキシエチル-メチルアンモニウムの塩化物及びメチル硫酸塩、トリアシルオキシエチル-メチルアンモニウムの塩化物及びメチル硫酸塩、モノアシルオキシエチル-ヒドロキシエチル-ジメチル-アンモニウムの塩化物及びメチル硫酸塩、並びにこれらの混合物が含まれる。一実施形態では、アシル基は、14~18個の炭素原子を含んでもよく、例えば植物油、例えばパーム油及びヒマワリ油に由来してよい。化合物がいくつかのアシル基を含む場合、これらの基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0188】
これらの生成物は、例えば、任意選択でオキシアルキレン化されているトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アルキルジエタノールアミン又はアルキルジイソプロパノールアミンを、脂肪酸に、又は植物若しくは動物起源の脂肪酸の混合物に直接エステル化することによって、又はそれらのメチルエステルをエステル交換することによって得ることができる。このエステル化の後に、アルキル化剤を使用して四級化してもよく、該アルキル化剤は、ハロゲン化アルキル、例えばハロゲン化メチル及びハロゲン化エチル;硫酸ジアルキル、例えば硫酸ジメチル及び硫酸ジエチル;メタンスルホン酸メチル:パラ-トルエンスルホン酸メチル;グリコールクロロヒドリン;及びグリセロールクロロヒドリンから選ばれる。
【0189】
このような化合物は、例えば、Cognis社により名称Dehyquart(登録商標)で、Stepan社により名称Stepanquat(登録商標)で、Ceca社により名称Noxamium(登録商標)で、且つRewo-Goldschmidt社により名称「Rewoquat(登録商標)WE 18」で販売されている。
【0190】
本発明による組成物中で使用されうるアンモニウム塩の他の非限定的な例には、米国特許第4,874,554号及び同第4,137,180号に記載されている、少なくとも1つのエステル官能基を含むアンモニウム塩が挙げられる。
【0191】
本発明による組成物中で使用されうる上記の第四級アンモニウム塩の中で、式(I)に相当するもの、例えば、テトラアルキルアンモニウムクロリド、例としてはジアルキルジメチルアンモニウムクロリド及びアルキルトリメチルアンモニウムクロリド(ここで、アルキル基は、約12~22個の炭素原子を含む)、例えばベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド及びベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド;パルミチルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド;及びVan Dyk社により名称「Ceraphyl(登録商標)70」で販売されているステアラミドプロピルジメチル(酢酸ミリスチル)アンモニウムクロリドが挙げられるがこれらに限定されない。
【0192】
一実施形態によれば、本発明の組成物中で使用されうるカチオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム塩、例えば、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、クオタニウム-83、クオタニウム-87、クオタニウム-22、ベヘニルアミドプロピル-2,3-ジヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド、パルミチルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、及びステアラミドプロピルジメチルアミンから選ばれる。
【0193】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤は、それ自体又は単独で周知の化合物である(例えば、この点に関して、「Handbook of Surfactants」、M.R.Porter、Blackie & Son出版(Glasgow及びLondon)、1991年、116~178頁を参照されたい)。そのため、非イオン性界面活性剤は、例えば、アルコール、α-ジオール、アルキルフェノール、及び脂肪酸のエステルから選ぶことができ、これらの化合物は、エトキシル化、プロポキシル化又はグリセロール化されており、例えば8~30個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪鎖を有し、エチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基の数が2~50個の範囲であり、グリセロール基の数が1~30個の範囲であることが可能である。マルトース誘導体もまた挙げることができる。エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのコポリマー;エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの、脂肪アルコールとの縮合物;例えば2~30molのエチレンオキシドを含むポリエトキシル化脂肪アミド;例えば1.5~5つ、例えば1.5~4つのグリセロール基を含むポリグリセロール化脂肪アミド;2~30molのエチレンオキシドを含むソルビタンのエトキシル化脂肪酸エステル;植物由来のエトキシル化された油;スクロースの脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル;グリセロール(C6~C24)アルキルポリグリコシドのポリエトキシル化脂肪酸モノエステル又はジエステル;N-(C6~C24)アルキルグルカミン誘導体;(C10~C14)アルキルアミンオキシド又はN-(C10~C14)アシルアミノプロピルモルホリンオキシド等のアミンオキシド;並びにこれらの混合物もまた非限定的に挙げることができる。
【0194】
非イオン性界面活性剤は、好ましくは、モノオキシアルキレン化、ポリオキシアルキレン化、モノグリセロール化、又はポリグリセロール化非イオン性界面活性剤から選択することができる。オキシアルキレン単位は、より詳細には、オキシエチレン若しくはオキシプロピレン単位、又はこれらの組合せであり、好ましくはオキシエチレン単位である。
【0195】
挙げることができるモノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化非イオン性界面活性剤の例には、以下のものが含まれる:
モノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化(C8~C24)アルキルフェノール、
飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状の、モノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化C8~C30アルコール、
飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状の、モノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化C8~C30アミド、
飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC8~C30酸と、ポリアルキレングリコールとのエステル、
飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC8~C30酸と、ソルビトールとの、モノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化エステル、
飽和又は不飽和の、モノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化植物油、
とりわけ単独又は混合物としてのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの縮合物。
【0196】
界面活性剤は、好ましくは、1から100の間、最も好ましくは2から50の間のモル数のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを含有する。有利には、非イオン性界面活性剤は、オキシプロピレン単位を一切含まない。
【0197】
本発明の実施形態の1つによれば、ポリオキシアルキレン化非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン化脂肪アルコール(脂肪アルコールのポリエチレングリコールエーテル)、ポリオキシエチレン化脂肪エステル(脂肪酸のポリエチレングリコールエステル)、及びポリオキシエチレン化脂肪アルコールとポリオキシエチレン化脂肪エステルとの混合物から選ばれる。
【0198】
挙げることができるポリオキシエチレン化脂肪アルコール(又はC8~C30アルコール)の例には、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物、特に2~50のオキシエチレン単位を含有するもの、より特定すると2~20のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名ではラウレス-2からラウレス-20)、ベヘニルアルコールのエチレンオキシド付加物、特に2~50のオキシエチレン単位を含有するもの、より特定すると2~20のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名ではベヘネス-2からベヘネス-20)、セテアリルアルコールのエチレンオキシド付加物(セチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物)、特に2~30のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名ではセテアレス-2からセテアレス-30)、セチルアルコールのエチレンオキシド付加物、特に2~30のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名ではセテス-2からセテス-30)、ステアリルアルコールのエチレンオキシド付加物、特に2~50のオキシエチレン単位を含有するもの、より特定すると2~20のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名ではステアレス-2からステアレス-20)、イソステアリルアルコールのエチレンオキシド付加物、特に2~50のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名ではイソステアレス-2からイソステアレス-50)、及びそれらの混合物が含まれる。
【0199】
挙げることができるポリオキシエチレン化脂肪酸エステルの例には、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はベヘン酸のエステルとのエチレンオキシドの付加物及びこれらの混合物、とりわけ、9~100のオキシエチレン単位を含有するもの、例えば、PEG-9からPEG-50ラウレート(CTFA名:PEG-9ラウレートからPEG-50ラウレート)、PEG-9からPEG-50パルミテート(CTFA名:PEG-9パルミテートからPEG-50パルミテート)、PEG-9からPEG-50ステアレート(CTFA名:PEG-9ステアレートからPEG-50ステアレート)、PEG-9からPEG-50パルミトステアレート、PEG-9からPEG-50ベヘネート(CTFA名:PEG-9ベヘネートからPEG-50ベヘネート)、ポリエチレングリコール100EOモノステアレート(CTFA名:PEG-100ステアレート)、及びこれらの混合物が含まれる。
【0200】
本発明の好ましい一実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1種のポリオキシエチレン化脂肪アルコールを含む。
【0201】
より好ましい一実施形態によれば、本発明による組成物は、2~9個のエチレンオキシド単位を含む少なくとも1種の脂肪アルコール、及び10~30個のエチレンオキシド単位を含む少なくとも1種の脂肪アルコールを含有する。
【0202】
モノグリセロール化又はポリグリセロール化非イオン性界面活性剤の例として、モノグリセロール化又はポリグリセロール化C8~C40アルコールが好ましくは使用される。
【0203】
特に、モノグリセロール化又はポリグリセロール化C8~C40アルコールは、次式に対応する:
RO-[CH2-CH(CH2OH)-O]m-H、又はRO-[CH(CH2OH)-CH2O]m-H
(式中、Rは、直鎖状又は分枝状のC8~C40、好ましくはC8~C30アルキル基又はアルケニル基を表し、mは、1~30、好ましくは1.5~10の範囲の数を表す)。
【0204】
本発明との関係において好適な化合物の例として、4molのグリセロールを含有するラウリルアルコール(INCI名:ポリグリセリル-4ラウリルエーテル)、1.5molのグリセロールを含有するラウリルアルコール、4molのグリセロールを含有するオレイルアルコール(INCI名:ポリグリセリル-4オレイルエーテル)、2molのグリセロールを含有するオレイルアルコール(INCI名:ポリグリセリル-2オレイルエーテル)、2molのグリセロールを含有するセテアリルアルコール、6molのグリセロールを含有するセテアリルアルコール、6molのグリセロールを含有するオレオセチルアルコール、及び6molのグリセロールを含有するオクタデカノールを挙げることができる。
【0205】
mの値が統計値を表すのと同様に、アルコールは、アルコールの混合物を表してもよく、このことは、市販品において、複数種のポリグリセロール化脂肪アルコールが混合物の形態で共存してもよいことを意味する。
【0206】
モノグリセロール化又はポリグリセロール化アルコールの中で、1molのグリセロールを含有するC8/C10アルコール、1molのグリセロールを含有するC10/C12アルコール及び1.5molのグリセロールを含有するC12アルコールを使用することが好ましい。
【0207】
モノグリセロール化又はポリグリセロール化C8~C40脂肪エステルは、次式に対応することができる:
R'O-[CH2-CH(CH2OR''')-O]m-R''、又はR'O-[CH(CH2OR''')-CH2O]m-R''
(式中、R'、R''及びR'''のそれぞれは、独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分枝状のC8~C40、好ましくはC8~C30アルキル-CO-又はアルケニル-CO-基を表し、ただし、R'、R''及びR'''のうちの少なくとも1つは水素原子ではなく、mは、1~30、好ましくは1.5~10の範囲の数を表す)。
【0208】
好ましくは、非イオン性界面活性剤は、8~18のHLBを有する非イオン性界面活性剤でありうる。HLBは、分子中の親水性部分と親油性部分との間の比である。このHLBという用語は、当業者に周知であり、「The HLB system. A time-saving guide to emulsifier selection」(ICI Americas Inc.社より刊行、1984年)に記載されている。
【0209】
本発明による組成物中の(e)界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上でありうる。
【0210】
本発明による組成物中の(e)界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下であってよい。
【0211】
本発明による組成物中の(e)界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.5質量%~5質量%、より好ましくは1質量%~3質量%であってよい。
【0212】
(他の任意選択の添加剤)
本発明による組成物はまた、例えば、アニオン性、カチオン性、両性若しくは非イオン性ポリマー、溶媒、増粘剤、分散剤、抗酸化剤、成膜剤、保存剤、芳香剤、中和剤、pH調整剤、防腐剤、UV遮蔽剤、成分(a)以外の化粧用活性剤、例えばビタミン、保湿剤、エモリエント、又はコラーゲン保護剤、及びこれらの混合物から選ばれる、化粧品の分野で通常使用される任意の他の任意選択の添加剤も含んでよい。
【0213】
本発明による組成物中に存在しうる上記の任意選択の添加剤の性質及び量を、所望の美容特性が該添加剤により影響を受けないよう調節することは、当業者にとって常法である。
【0214】
溶媒としては、1種又は数種の化粧品として許容される有機溶媒を挙げることができ、これらは、アルコール、特に一価アルコール、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール;ジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコール;他のポリオール、例えばグリセロール、糖及び糖アルコール;並びにエーテル、例えばエチレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、並びにブチレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテルであってもよい。
【0215】
有機溶媒は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.1質量%~20質量%、より好ましくは1質量%~15質量%の濃度で存在できる。
【0216】
pH調整剤として、少なくとも1種の酸性化剤及び/又は少なくとも1種の塩基性化剤(アルカリ剤)を使用することができる。
【0217】
酸性化剤は、例えば、鉱酸又は有機酸、例としては塩酸、リン酸、カルボン酸、例としては酒石酸、クエン酸及び乳酸、又はスルホン酸とすることができる。
【0218】
塩基性化剤すなわちアルカリ剤は、例えば、化粧料中に一般に使用される任意の無機又は有機の塩基性剤、例えばアンモニア;アルカノールアミン、例えばモノ-、ジ-、及びトリ-エタノールアミン、イソプロパノールアミン;アルカリ金属水酸化物等の金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム);尿素、グアニジン、及びこれらの誘導体;並びに以下の構造で説明されるもの等のジアミンとすることができる:
【0219】
【化15】
【0220】
(式中、
Rは、任意選択によりヒドロキシル又はC1~C4アルキル基で置換されているプロピレン等のアルキレンを表し、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、水素原子、アルキル基、又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を表し、これは、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示されうる)。水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい場合がある。
【0221】
酸性化剤及び/又は少なくとも1種の塩基性化剤は、組成物の総質量に対して、5質量%未満、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下の範囲の量で存在してもよい。
【0222】
[調製]
本発明による組成物は、上記の必須成分と任意選択の成分とを従来の方法で混合して調製することができる。
【0223】
例えば、本発明による組成物は、
組成物中の
(a)少なくとも1種のチオピリジノン化合物、及び
(b)18個以上の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸
を混合する工程であって、
組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上である、
工程を含む方法によって調製することができる。
【0224】
任意選択の成分のいずれかを更に混合することが可能である。
【0225】
混合は、室温(例えば20~25℃、好ましくは25℃)、好ましくは30℃以上の温度、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上等の任意の温度で実施することができる。pH調整剤等の上述の任意選択の成分の任意のものと更に混合することが好ましい。
【0226】
本発明による組成物の形態は、特に限定されず、W/Oエマルション、O/Wエマルション、ゲル、溶液等のさまざまな形態を取ってよい。本発明による組成物が、エマルション、好ましくはO/Wエマルション、より好ましくはO/Wゲルエマルションの形態であることが好ましい。
【0227】
[美容方法]
本発明による組成物は、化粧用又は皮膚科用組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくはケラチン物質のための化粧用組成物として使用することができる。ケラチン物質としては、皮膚、頭皮、毛髪、唇等の粘膜、及び爪を挙げることができる。
【0228】
本発明による組成物は、皮膚等のケラチン質物質のための脱色素、漂白又は美白製品として使用することができる。特に、本発明による組成物は、美白製品として使用することができる。
【0229】
本発明による組成物は、好ましくは、皮膚、頭皮、及び/又は唇等のケラチン物質、好ましくは皮膚への適用を目的としうる。
【0230】
したがって、本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくは皮膚のための美容方法で使用することができる。一実施形態では、本発明は、ケラチン物質、好ましくは皮膚のための、美容方法、好ましくは美白方法であって、本発明による組成物をケラチン物質へ適用する工程を含む方法に関する。
【0231】
本発明による組成物は、ローション、乳液、クリーム、ジェル、ペースト、セラム、泡状物質又はスプレーの形態の局所用の化粧用組成物として使用することができる。
【0232】
[使用]
本発明はまた、(a)少なくとも1種の式(I)
【0233】
【化16】
【0234】
(式中、
R1は、
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は、
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分岐状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)
の化合物、又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体
を含む組成物中における(b)18個以上の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪酸の、(a)化合物を安定化させ且つ組成物の黄変を低減するための使用であって、
組成物中の(b)18個以上の炭素原子を含む脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上である、
使用にも関する。
【0235】
用語「安定化させる」は、安定性を強化すると同じ意味を有する。
【0236】
本発明による使用は、(a)チオピリジノン化合物の、それを含む組成物中における安定性を増強させることができる。
【0237】
したがって、本発明による使用は、(a)チオピリジノン化合物を含む組成物を、周囲条件及び高温条件の両方で、特に高温条件下でも、長時間の間、貯蔵することを可能にできる。
【0238】
本発明による使用はまた、(a)チオピリジノン化合物を組成物に添加した直後、(a)チオピリジノン化合物を含む組成物の黄変を低減することもできる。
【0239】
したがって、本発明による使用は、(a)チオピリジノン化合物を含む組成物の外観の品質を強化することができる。
【0240】
換言すると、本発明による使用は、(a)チオピリジノン化合物を含む組成物の外観を、周囲条件及び高温条件の両方で、特に高温条件下でも、長時間の間、維持することを可能にできる。また、本発明による使用は、(a)チオピリジノン化合物を組成物に添加した直後、組成物の黄変を低減又は制御することを可能にできる。
【0241】
本発明による組成物のための(a)チオピリジノン化合物及び(b)脂肪酸に関する上記説明はまた、本発明による使用において用いられるものにも該当しうる。
【0242】
本発明による使用に用いられる組成物は、本発明による組成物に関して上で説明された任意選択の成分の任意のものを含むことができる。
【実施例0243】
本発明を、実施例によって、より詳細な方法で説明する。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0244】
(実施例1~3及び比較例1~4)
[調製]
実施例1~3及び比較例1~4による組成物のそれぞれを、以下の工程1~8に従って、表1に示される成分を混合することにより調製した。
【0245】
1.相Aの成分を混合し、80℃+/-5℃まで加熱して、相Aの混合物を得た。
2.相Bの成分を混合し、80℃+/-5℃まで加熱して、相Bの混合物を得た。
3.相Bの混合物を相Aの混合物に添加し、結果として得られた混合物を、8,000rpm下、80℃+/-5℃で10分間、ホモジナイザー(TK robomix、PRIMIX)を用いて均質化した。
4.相Cの成分を、工程3で得られた上記混合物に更に添加した後、8,000rpm下で10分間、ホモジナイザーを用いて均質化した。
5.工程4で得られた混合物を、ゆっくり攪拌しながら60℃+/-5℃まで冷却した。
6.相Dの成分を混合して相Dの混合物を得た。
7.相Dの混合物を、工程5で得られた混合物に添加し、ゆっくり攪拌しながらよく混合した。
8.工程7で得られた混合物を、ゆっくり攪拌しながら室温まで冷却した。
【0246】
成分の量の数値は、全て、活性原料の「質量%」に基づく。
【0247】
【表5】
【0248】
[評価]
(チオピリジノン定量化)
実施例1~3及び比較例1~4による各組成物のチオピリジノンの量は、以下のタイミングでHPLC-UVアッセイによって決定した。
【0249】
(1)組成物を調製した直後(T0)
(2)調製から2カ月後で、組成物が室温で維持された状態
(3)調製から2カ月後で、組成物が45℃で維持された状態
【0250】
HPLC-UVアッセイの詳細は以下のとおりである。
【0251】
装置/試薬
【0252】
【表6】
【0253】
HPLC条件
【0254】
【表7】
【0255】
結果を表2に示す。
【0256】
(色評価)
(1)機器による評価
実施例1~3及び比較例1~4による各組成物10gを、調製直後に、透明な20mlのガラス瓶に充填した。組成物のCIE1976に基づくb*値は、分光比色計CM-700d(Konica Minolta社製)によって瓶を介して測定した。
【0257】
結果を、表2における「b*T0」の行に示す。
【0258】
(2)目視による評価
実施例1~3及び比較例1~4による各組成物10gを、調製直後に、透明な20mlのガラス瓶に充填した。組成物の色を、以下のスコア基準に従って、5名のパネリストによって目視的に評価し、スコアを平均した。
【0259】
0:白色
1:非常に若干の黄色
2:やや黄色
3:どちらかといえば黄色
4:黄色
5:強い黄色
【0260】
結果を、表2における「外観」の行に示す。
【0261】
【表8】
【0262】
チオピリジノン(%)T0: 組成物を調製した直後
チオピリジノン(%)RT、2M: 調製から2カ月後で、組成物が室温で維持された状態
チオピリジノン(%)45℃、2M: 調製から2カ月後で、組成物が45℃で維持された状態
【0263】
(結果)
それぞれがチオピリジノン化合物及びステアリン酸(C18)を、組成物の総質量に対して10質量%以上の量で含んでいた実施例1~3による組成物は安定性だった。
【0264】
具体的には、実施例1~3による組成物中のチオピリジノン化合物は、比較例1~4による組成物中のものと比較して、室温及び高温下の両方で経時的により安定性だった。
【0265】
また、実施例1~3による組成物の色は、僅かに黄色だっただけである。
【0266】
比較例1は、ステアリン酸の量(7質量%)が、高温下でチオピリジノン化合物を経時的に安定化させ、実施例1~3に示すレベルまで黄変を低減するには不十分だったことを示す。
【0267】
また、比較例2は、ステアリン酸の量(4質量%)が、高温下でチオピリジノン化合物を経時的に安定化させるには不十分だったことを示す。また、比較例2による組成物は、強い黄変を示した。
【0268】
比較例3は、ステアリン酸の代わりにミリスチン酸(C14)を使用したことが、チオピリジノン化合物の安定化に影響しなかったことを示す。具体的には、比較例3による組成物中のチオピリジノン化合物は、実施例1~3による組成物中のものと比較して、室温及び高温下の両方で経時的に不安定だった。また、比較例3による組成物は、強い黄変を示した。
【0269】
比較例4は、ステアリン酸の代わりにパルミチン酸(C16)を使用したことが、チオピリジノン化合物の安定化に影響しなかったことを示す。具体的には、比較例4による組成物中のチオピリジノン化合物は、実施例1~3による組成物中のものと比較して、高温下で経時的に不安定だった。また、比較例4による組成物は、強い黄変を示した。
【外国語明細書】