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特開2022-98752W/O型組成物中のチオピリジノン化合物の安定化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098752
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】W/O型組成物中のチオピリジノン化合物の安定化
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20220627BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20220627BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20220627BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/89
A61K8/894
A61Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020212331
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・タション
(72)【発明者】
【氏名】アメリー・プレヴォ-ゲギニア
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 誠
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC812
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD072
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD172
4C083CC05
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE16
(57)【要約】
【課題】高温下で比較的長時間維持されるときでも、チオピリジノン化合物の安定性が増強されたチオピリジノン化合物を含む組成物を提供すること。
【解決手段】(a)少なくとも1種のチオピリジノン化合物、(b)少なくとも1種の油、及び(c)水を含む組成物であって、(b)少なくとも1種の油を含む連続油性相と、(a)チオピリジノン化合物及び(c)水を含む不連続水性相と、を含み、水性相の油性相に対する質量比が1.0から10.0である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の式(I)の化合物
【化1】
(式中、
R1は:
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分枝状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)、
又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体、
(b)少なくとも1種の油、及び
(c)水
を含む、W/O型組成物であって、
前記組成物が、
前記(b)少なくとも1種の油を含む連続油性相と、
前記油性相中に分散された、前記(a)少なくとも1種の式(I)の化合物及び前記(c)水を含む不連続水性相と、
を含み、
前記水性相の前記油性相に対する質量比が1.0から10.0である、組成物。
【請求項2】
R1が:
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはメチル
から選択される基を指し、
R2が:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基、及び
c)飽和分枝状C3~C6アルキル基
から選択される基を指す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R1が:
a)水素原子、及び
b)メチル基
から選択される基を指し、
R2が:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはエチル、
c)飽和分枝状C3~C4アルキル基、好ましくはイソプロピル及びイソブチル
から選択される基を指す、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(a)式(I)の化合物が、以下:
【表1】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記(a)式(I)の化合物が、以下:
【表2】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記(a)式(I)の化合物の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%から20質量%、好ましくは0.05質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から5質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記(b)油が、シリコーン油、好ましくは不揮発性シリコーン油、より好ましくはジメチコン、フェニルトリメチコン、及びこれらの混合物から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の前記(b)油の量が、前記組成物の総質量に対して、8質量%から40質量%、好ましくは9質量%から35質量%、より好ましくは10質量%から30質量%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中の前記(c)水の量が、前記組成物の総質量に対して、10質量%から80質量%、好ましくは20質量%から75質量%、より好ましくは30質量%から70質量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
好ましくは非乳化性シリコーンエラストマーから選択される、より好ましくはジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコンクロスポリマー及びこれらの混合物から選択される、(d)少なくとも1種の親油性ゲル化剤を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
好ましくは少なくとも1つのオキシアルキレン化鎖及び/又は少なくとも1つのグリセリル化鎖を含むシリコーンエラストマー、より好ましくは少なくとも1つのオキシエチレン化鎖を含むシリコーンエラストマーから選択される、(e)少なくとも1種の乳化性シリコーンエラストマーを更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
好ましくはポリオキシアルキレン-ポリオルガノシロキサンコポリマーから選択される、より好ましくはPEG10ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、(e)乳化性シリコーンエラストマーとは異なる(f)少なくとも1種の乳化剤を更に含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ケラチン物質、好ましくは皮膚の美白用である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ケラチン物質、好ましくは皮膚のための、美容方法、好ましくは美白方法であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を前記ケラチン物質に塗布する工程を含む、方法。
【請求項15】
(b)少なくとも1種の油を含む連続油性相、及び
前記油性相中に分散された、(c)水を含む不連続水性相を含み、前記水性相の前記油性相に対する質量比が1.0から10.0である、W/O型組成物の使用であって、
(a)少なくとも1種の式(I)の化合物
【化2】
(式中、
R1は:
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分枝状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)、
又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体を安定化させるための使用であり、
前記(a)少なくとも1種の式(I)の化合物が、前記組成物の前記水性相中に存在する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、W/O型の組成物中のチオピリジノン化合物の安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
人生のさまざまな時期に、一部の人々は、自分たちの皮膚、より詳細には手の外観に、より黒い染み及び/又はより有色の染みが見られ、皮膚に不均質さを与える。これらの染みは、特に、皮膚の表面に位置するケラチノサイト中の高濃度メラニンに起因する。
【0003】
色素沈着の染みを処置する目的のためには、効能が良く無害の局所的に脱色する物質の使用が最も特定的に望まれている。
【0004】
例えば、アルブチン、ナイアシンアミド及びコウジ酸は、皮膚の脱色剤として公知である。
【0005】
他方で、WO2017/102349は、新規の脱色剤又は美白剤、すなわちチオピリジノン化合物を開示している。チオピリジノン化合物は、メラニンの生成を低減することによって強力な脱色又は美白効果を示すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2017/102349
【特許文献2】EP-A-295 886
【特許文献3】EP 242 219
【特許文献4】EP 285 886
【特許文献5】EP 765 656
【特許文献6】特開昭61-194009
【特許文献7】米国特許第5538793号
【特許文献8】米国特許第5,236,986号
【特許文献9】米国特許第5,412,004号
【特許文献10】米国特許第5,837,793号
【特許文献11】米国特許第5,811,487号
【特許文献12】WO-A-2004/024798
【特許文献13】米国特許第9,095,543号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Synthesis of N-(2-mercaptopyridyl-3-formyl)-N-alkyl glycine and the corresponding disulfides、Luo, Y. L.; Yang, Z. X.; Peng, S. X.、Div. Med.、Chem., China Pharm.、Univ., Nanjing, 210009, Peop. Rep. China、Yaoxue Xuebao (1990), 25(5), 374~8頁
【非特許文献2】Walter Noll著「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年) Academic Press
【非特許文献3】Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmetics
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、チオピリジノン化合物は、特にチオピリジノン化合物を含む組成物が高温下で比較的長時間維持されるとき、組成物中で不安定化する傾向があることが発見されている。
【0009】
したがって、本発明の目的は、組成物が高温下で比較的長時間維持されるときでも、チオピリジノン化合物の安定性が増強されたチオピリジノン化合物を含む組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は:
(a)少なくとも1種の式(I)の化合物
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、
R1は:
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基、
から選択される基を指し、
R2は:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分枝状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)、
又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体、
(b)少なくとも1種の油、並びに
(c)水
を含むW/O型組成物であって、
組成物が、
(b)少なくとも1種の油を含む連続油性相と、
油性相中に分散された、(a)少なくとも1種の式(I)の化合物及び(c)水を含む不連続水性相と、
を含み、
水性相の油性相に対する質量比が1.0から10.0である、組成物によって達成することができる。
【0013】
式(I)中、
R1は:
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはメチル
から選択される基を指し、
R2は:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基、及び
c)飽和分枝状C3~C6アルキル基
から選択される基を指すことが好ましい。
【0014】
式(I)中、
R1は:
a)水素原子、及び
b)メチル基
から選択される基を指し、
R2は:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはエチル、
c)飽和分枝状C3~C4アルキル基、好ましくはイソプロピル及びイソブチル
から選択される基を指すことがより好ましい。
【0015】
(a)式(I)の化合物は、以下の化合物:
【0016】
【表1】
【0017】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択することができる。
【0018】
好ましくは、(a)式(I)の化合物は、以下の化合物:
【0019】
【表2】
【0020】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択することができる。
【0021】
本発明による組成物中の(a)式(I)の化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%から20質量%、好ましくは0.05質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から5質量%であってもよい。
【0022】
(b)油は、シリコーン油、好ましくは不揮発性シリコーン油、より好ましくはジメチコン、フェニルトリメチコン、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0023】
組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、8質量%から40質量%、好ましくは9質量%から35質量%、より好ましくは10質量%から30質量%であってもよい。
【0024】
組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%から80質量%、好ましくは20質量%から75質量%、より好ましくは30質量%から70質量%であってもよい。
【0025】
本発明による組成物は、好ましくは非乳化性シリコーンエラストマーから選択される、より好ましくはジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコンクロスポリマー及びこれらの混合物から選択される、(d)少なくとも1種の親油性ゲル化剤を更に含んでもよい。
【0026】
本発明による組成物は、好ましくは少なくとも1つのオキシアルキレン化鎖及び/又は少なくとも1つのグリセリル化鎖を含むシリコーンエラストマー、より好ましくは少なくとも1つのオキシエチレン化鎖を含むシリコーンエラストマーから選択される、(e)少なくとも1種の乳化性シリコーンエラストマーを更に含んでもよい。
【0027】
本発明による組成物は、好ましくはポリオキシアルキレン-ポリシロキサンコポリマーから選択される、より好ましくはPEG10ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、(e)乳化性シリコーンエラストマーとは異なる(f)少なくとも1種の乳化剤を更に含んでもよい。
【0028】
本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくは皮膚の美白のためであってもよい。
【0029】
本発明はまた、ケラチン物質、好ましくは皮膚のための、美容方法、好ましくは美白方法であって、
本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む方法にも関する。
【0030】
本発明の別の態様は、
(b)少なくとも1種の油を含む連続油性相、並びに、
油性相中に分散された、(c)水を含む不連続水性相を含み、水性相の油性相に対する質量比が1.0から10.0である、W/O型組成物の使用であって、
(a)少なくとも1種の式(I)の化合物
【0031】
【化2】
【0032】
(式中、
R1は:
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分枝状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)、
又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体を安定化させるための使用であり、
(a)少なくとも1種の式(I)の化合物は、組成物の水性相中に存在する、使用である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
鋭意検討の結果、本発明者らは、組成物が高温下で比較的長時間維持されるときでも、チオピリジノン化合物、又はチオピリジノン化合物の安定性が増強されたチオピリジノン化合物を含む組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0034】
したがって、本発明による組成物は、W/O型組成物であり、以下:
(a)少なくとも1種の式(I)の化合物
【0035】
【化3】
【0036】
(式中、
R1は:
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分枝状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)、
又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体(以下、「(a)チオピリジノン化合物」と呼んでもよい)、
(b)少なくとも1種の油、並びに
(c)水
を含み、
組成物は、
(b)少なくとも1種の油を含む連続油性相と、
油性相中に分散された、(a)少なくとも1種の式(I)の化合物及び(c)水を含む不連続水性相と、
を含み、
水性相の油性相に対する質量比は1.0から10.0である。
【0037】
本発明による組成物は、その中に含まれる(a)チオピリジノン化合物の増強された安定性を示すことができる。
【0038】
換言すると、本発明による組成物は、その中の(a)チオピリジノン化合物の安定性を増強させることができる。(a)チオピリジノン化合物の「安定性」という用語は、本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量の変化によって決定することができる。増強された「安定性」とは、(a)チオピリジノン化合物の量の変化が更に限定されることを意味する。
【0039】
組成物中の(a)チオピリジノン化合物は、経時的に分解する傾向がある。したがって、(a)チオピリジノン化合物の量は、経時的に減少する傾向がある。したがって、(a)チオピリジノン化合物の増強された安定性とは、(a)チオピリジノン化合物の量の経時的な減少が制限されるか又は少ないことを意味する。
【0040】
本発明による組成物は、組成物が45℃等の高温下で比較的長期間(例えば、2カ月間)維持されるときでも、その中の(a)チオピリジノン化合物の増強された安定性を示すことができる。
【0041】
本発明による組成物はまた、組成物が25℃等の室温下で比較的長期間(例えば、2カ月間)維持されるときも、その中の(a)チオピリジノン化合物の増強された安定性を示すことができる。
【0042】
したがって、本発明による組成物は、周囲条件及び高温条件の両方の下で、特に高温条件下でも、長期間貯蔵することができる。
【0043】
加えて、(a)チオピリジノン化合物の増強された安定性は、(a)チオピリジノン化合物の改善又は強化されたバイオアベイラビリティにつながり得、脱色剤又は美白剤として機能することができる。したがって、本発明による組成物は、強化又は改善された脱色又は美白効果をもたらすことができる。
【0044】
本発明による組成物は、べたつきが少ない又は滑らかな感触等の良好な質感ももたらすことができる。
【0045】
理論に束縛されるものではないが、(a)チオピリジノン化合物の安定化は、組成物中の油性相に囲まれた内部の水性相中に存在する(a)チオピリジノン化合物を作製することによる、空気による酸化からの(a)チオピリジノン化合物の保護に少なくとも起因しうる。
【0046】
そのため、
(b)少なくとも1種の油を含む連続油性相、及び
油性相中に分散された、(c)水を含む不連続水性相を含み、水性相の油性相に対する質量比が1.0から10.0である、W/O型組成物の使用は、(a)チオピリジノン化合物を安定化させることができる。
【0047】
換言すると、本発明によるW/O型組成物は、(a)チオピリジノン化合物の安定剤として機能することができ、これは、(a)チオピリジノン化合物の酸化阻害剤であってもよい。
【0048】
以下に、本発明による組成物、使用等を詳細に説明する。
【0049】
[組成物]
本発明による組成物は:
(a)少なくとも1種のチオピリジノン化合物、
(b)少なくとも1種の油、及び
(c)水
を含み、
組成物は、
(b)少なくとも1種の油を含む連続油性相と、
油性相中に分散された、(a)チオピリジノン化合物及び(c)水を含む不連続水性相と、
を含み、
水性相の油性相に対する質量比は、1.0から10.0、好ましくは1.3から9.0、より好ましくは1.5から8.0、更により好ましくは1.7から7.0である。
【0050】
(a)チオピリジノン化合物、(b)油、及び(c)水、並びに本発明による組成物の他の特徴を、以下に説明する。
【0051】
(チオピリジノン化合物)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のチオピリジノン化合物を含む。2種以上の(a)チオピリジノン化合物を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの(a)チオピリジノン化合物、又は異なるタイプの(a)チオピリジノン化合物の組合せを使用することができる。
【0052】
(a)チオピリジノン化合物は、化粧料又は皮膚科用製品中の活性成分又は活性化合物であってもよい。本明細書で使用される「活性」成分又は化合物という用語は、抗酸化効果、美白効果、UVフィルター効果及び抗菌効果等の、化粧用又は皮膚科用の活性特性を有する成分又は化合物を意味する。本発明で使用される(a)チオピリジノン化合物は、脱色剤、漂白剤又は美白剤として機能することができ、したがって、本発明による組成物は、美白製品として、又はケラチン物質を美白するための化粧用組成物として使用することができる。
【0053】
(a)チオピリジノン化合物は、特に色素沈着又は老化性色素斑(senescence spots)を除去するために及び/又は日焼け防止剤として、皮膚、体毛、睫毛又は毛髪、更には唇及び/又は爪、好ましくは皮膚を脱色、漂白又は美白するための作用剤として使用することができる。
【0054】
(a)チオピリジノン化合物は、以下の式(I)
【0055】
【化4】
【0056】
(式中、
R1は:
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分枝状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)、
又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体によって表される。
【0057】
式(I)の化合物の塩は、前記化合物の従来型の非毒性塩、例えば酸から又は塩基から形成されるものを含む。
【0058】
式(I)の化合物の塩として:
(酸性基を含むとき)式(I)の化合物を、
例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム、及び炭酸ナトリウム、炭酸カリウム若しくは炭酸カルシウム又は炭酸水素塩等の無機塩基、
或いは
例えば第一級、第二級、若しくは第三級アルキルアミン、例えばトリエチルアミン若しくはブチルアミン等の有機塩基に加えることにより得られる塩を挙げることができる。この第一級、第二級、又は第三級アルキルアミンは、1個又は複数の窒素原子及び/又は酸素原子を含んでもよく、そのため、例えば1個又は複数のアルコール官能基を含んでもよく、特に、2-アミノ-2-メチルプロパノール、エタノールアミン、トリエタノールアミン、2-ジメチルアミノプロパノール、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール及び3-(ジメチルアミノ)プロピルアミンを挙げることができる。
【0059】
また、アミノ酸、例としてはリジン、アルギニン、グアニジン、グルタミン酸及びアスパラギン酸の塩も挙げることができる。有利には、式(I)の化合物(それが酸性基を含むとき)の塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩、並びにアンモニウム塩から選択することができる。
【0060】
本発明において記載される化合物の許容される溶媒和物は、溶媒が存在する結果として前記化合物の調製中に形成されるもの等の従来型の溶媒和物を含む。例として、水の存在、又は直鎖状若しくは分枝状アルコール、例えばエタノール若しくはイソプロパノールの存在に起因する、溶媒和物を挙げることができる。
【0061】
光学異性体は、特に、エナンチオマー及びジアステレオ異性体である。
【0062】
優先的には、直鎖状又は分枝状の基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルから選択することができる。
【0063】
より優先的には、飽和の直鎖又は分枝状のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル並びにオクチルから選択されてもよい。
【0064】
化合物a)は、PubCHEMデータベース(番号47329290)
http://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/47329290?from=summary#section=Top entry : 2010-11-26に開示されている。
【0065】
化合物b)CAS>1240664-41-8は、刊行物:
Synthesis of N-(2-mercaptopyridyl-3-formyl)-N-alkyl glycine and the corresponding disulfides
Luo, Y. L.; Yang, Z. X.; Peng, S. X.
Div. Med. Chem., China Pharm. Univ., Nanjing, 210009, Peop. Rep. China
Yaoxue Xuebao (1990), 25(5), 374~8頁に記載されている。
【0066】
好ましくは、(a)式(I)のチオピリジノン化合物は、以下の意味を有する:
R1は:
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはメチル
から選択される基を指し、
R2は:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基、及び
c)飽和分枝状C3~C6アルキル基
から選択される基を指す。
【0067】
より好ましくは、(a)式(I)のチオピリジノン化合物は、以下の意味を有する:
R1は:
a)水素原子、及び
b)メチル基
から選択される基を指し、
R2は:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C4アルキル基、好ましくはエチル、
c)飽和分枝状C3~C4アルキル基、好ましくはイソプロピル及びイソブチル
から選択される基を指す。
【0068】
(a)式(I)のチオピリジノン化合物は、以下の化合物:
【0069】
【表3】
【0070】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択することができる。
【0071】
好ましくは、(a)式(I)のチオピリジノン化合物は、以下の化合物:
【0072】
【表4】
【0073】
並びにそれらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、及びそれらのラセミ体から選択することができる。
【0074】
より好ましくは、(a)チオピリジノン化合物は、N-[(2-チオキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)カルボニル]グリシンであってもよい。
【0075】
(a)チオピリジノン化合物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2017/102349に記載の方法に従って調製することができる。
【0076】
本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量が、組成物の総質量に対して0.3質量%以上であることが、更により好ましいことがある。
【0077】
その一方で、本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量は、組成物の総質量に対して3質量%以下であることが、更により好ましいことがある。
【0078】
本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%から20質量%、好ましくは0.05質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から5質量%の範囲であってもよい。本発明による組成物中の(a)チオピリジノン化合物の量は、組成物の総質量に対して0.3質量%から3質量%であることが、更により好ましいこともある。
【0079】
(油)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の油を含む。2種以上の(b)油を使用する場合、これらは同じであっても異なっていてもよい。
【0080】
本明細書では、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)で液体又はペースト(非固体)の形態の脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧品において一般に使用されるものを、単独で、又はそれらの組合せで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0081】
(b)油は、炭化水素油又はシリコーン油等の非極性油、植物油若しくは動物油及びエステル油若しくはエーテル油等の極性油、又はそれらの混合物とすることができる。
【0082】
(b)油は、植物又は動物起源の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油、及び脂肪アルコールからなる群から選択してもよい。
【0083】
植物油の例として、例えば、アマニ油、カメリア油、マカデミアナッツ油、コーン油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、アブラナ種子油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0084】
動物油の例として、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0085】
合成油の例として、アルカン油、例えばイソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油及び人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0086】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又は多酸と、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液状エステルであり、これらのエステルの合計炭素原子数は10以上である。
【0087】
好ましくは、一価アルコールのエステルの場合、本発明のエステルが由来するアルコール及び酸の中から少なくとも1つは分枝状である。
【0088】
一酸及び一価アルコールのモノエステルの中でも、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0089】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、並びにモノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸と、非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ、又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルも使用されうる。
【0090】
特に挙げることができるのは以下:セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシンイソプロピル(isopropyl lauroyl sarcosinate)、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールである。
【0091】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の糖エステル及びジエステルを使用することができる。用語「糖」が、アルデヒド又はケトン官能基を含む又は含まない、且つ少なくとも4個の炭素原子を含む、いくつかのアルコール官能基を含有する、酸素を保持する炭化水素系化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖、又は多糖であってもよい。
【0092】
挙げることができる好適な糖の例としては、スクロース(又はサッカロース)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにそれらの誘導体、特にアルキル誘導体、例えばメチル誘導体、例としてはメチルグルコースがある。
【0093】
脂肪酸の糖エステルは、とりわけ、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状で飽和若しくは不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル又はエステルの混合物を含む群から選択することができる。これらの化合物は、不飽和である場合、1から3個の共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有することができる。
【0094】
この変形形態によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、及びポリエステル、並びにこれらの混合物から選択してもよい。
【0095】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル、及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えばとりわけ、オレオパルミチン酸、オレオステアリン酸、及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルであってもよい。
【0096】
より詳細には、モノエステル及びジエステル、とりわけスクロース、グルコース、又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0097】
挙げることができる例は、ジオレイン酸メチルグルコースである、Amerchol社により名称Glucate(登録商標)DOで販売されている製品である。
【0098】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、(カプリル酸/カプリン酸)2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0099】
人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0100】
シリコーン油の例として、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等、環状オルガノポリシロキサン、例えばシクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0101】
好ましくは、シリコーン油は、液状ポリジアルキルシロキサン、とりわけ、液状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び少なくとも1つのアリール基を含む液状ポリオルガノシロキサンから選択される。
【0102】
これらのシリコーン油はまた、有機変性されていてよい。本発明に従って使用することができる有機変性シリコーンは、上に定義したシリコーン油であり、構造中に、炭化水素系基を介して結合されている1個又は複数の有機官能基を含む。
【0103】
オルガノポリシロキサンは、Walter Noll著「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年) Academic Pressにおいて詳細に定義されている。オルガノポリシロキサンは、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0104】
それらが揮発性である場合、シリコーンは、より詳細には、60℃から260℃の間の沸点を有するものから選択され、更により詳細には、以下から選択される:
(i)3から7個、好ましくは4から5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。これらは、例えば、特にUnion Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標) 7207で販売されている、又はRhodia社により名称Silbione(登録商標) 70045 V2で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標) 7158で販売されている、Rhodia社によりSilbione(登録商標) 70045 V5で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社により名称Silsoft 1217で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにこれらの混合物である。ジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサン等のタイプのシクロコポリマー、例えば次式の、Union Carbide社により販売されているSilicone Volatile(登録商標)FZ 3109もまた挙げることができる。
【0105】
【化5】
【0106】
環状ポリジアルキルシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物を挙げることもできる。
(ii)2から9個のケイ素原子を含有し、25℃において5×10-6m2/s以下の粘度を有する、直鎖状の揮発性ポリジアルキルシロキサン。例は、特にToray Silicone社により名称SH 200で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。この部類に属するシリコーンは、Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsに公表されている論文にも記載されている。シリコーンの粘度は、ASTM規格445附属書Cに従って、25℃において測定される。
【0107】
また、不揮発性ポリジアルキルシロキサンを使用してもよい。これらの不揮発性シリコーンは、より詳細にはポリジアルキルシロキサンから選択され、その中では、主としてトリメチルシリル末端基を含有するポリジメチルシロキサンを挙げることができる。
【0108】
これらのポリジアルキルシロキサンの中で、以下の市販製品を非限定的な手法で挙げることができる:
- Rhodia社により販売されているSilbione(登録商標)油の47及び70 047シリーズ又はMirasil(登録商標)油、例えば70 047 V 500 000油;
- Rhodia社により販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油;
- Dow Corning社製の200シリーズの油、例えば粘度60000mm2/sのDC200;並びに
- General Electric社製のViscasil(登録商標)油及びGeneral Electric社製のSFシリーズの特定の油(SF 96、SF 18)。
【0109】
名称ジメチコノール(CTFA)で知られる、ジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社製の48シリーズの油も挙げることができる。
【0110】
アリール基を含有するシリコーンの中でも、ポリジアリールシロキサン、とりわけポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0111】
フェニルシリコーン油は、以下の式のフェニルシリコーンから選択することができる:
【0112】
【化6】
【0113】
(式中、
R1~R10は、互いに独立して、飽和又は不飽和で、直鎖状、環状又は分枝状のC1~C30炭化水素系基、好ましくはC1~C12炭化水素系基、より好ましくはC1~C6炭化水素系基、特にメチル、エチル、プロピル、又はブチル基であり、
m、n、p、及びqは、互いに独立して、両端を含めて0から900、好ましくは両端を含めて0から500、より好ましくは両端を含めて0から100の整数であり、
但しn+m+qの和は0以外である)。
【0114】
挙げることができる例には、以下の名称で販売されている製品がある:
- Rhodia社製のSilbione(登録商標)油の70 641シリーズ、
- Rhodia社製のRhodorsil(登録商標) 70 633及び763シリーズの油、
- Dow Corning社製の油であるDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid、
- Bayer社製のPKシリーズのシリコーン、例えばPK20製品、
- General Electric社製のSFシリーズの特定の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250、及びSF 1265。
【0115】
フェニルシリコーン油として、フェニルトリメチコン(上の式中、R1~R10はメチルであり、p、q、及びn=0であり、m=1である)が好ましい。
【0116】
有機変性液状シリコーンは、とりわけ、ポリエチレンオキシ及び/又はポリプロピレンオキシ基を含有してもよい。そのため、信越化学工業株式会社により提案されているシリコーンKF-6017、並びにUnion Carbide社製の油Silwet(登録商標)L722及びL77を挙げることができる。
【0117】
炭化水素油は、以下から選択され得る:
- 直鎖状又は分枝状、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。(挙げることができる例としては、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカンがある)、並びに
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば流動パラフィン、流動ワセリン、ポリデセン及び水素化ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、及びスクアラン。
【0118】
炭化水素油の好ましい例として、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えばイソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱油(例えば、流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン(vaseline)又はペトロラタム(petrolatum)、ナフタレン等;水素化ポリイソブテン、イソエイコサン及びデセン/ブテンコポリマー;並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0119】
脂肪アルコールにおける用語「脂肪」は、比較的大きい数の炭素原子を包含することを意味する。したがって、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪アルコールの範囲内に包含される。脂肪アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。脂肪アルコールは、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。
【0120】
脂肪アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4から40個の炭素原子、好ましくは6から30個の炭素原子、より好ましくは12から20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和の、直鎖状及び分枝状の基から選択される)を有し得る。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル基及びC12~C20アルケニル基から選択され得る。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換されていても、されていなくてもよい。
【0121】
脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0122】
脂肪アルコールは、飽和脂肪アルコールであることが好ましい。
【0123】
したがって、脂肪アルコールは、直鎖状又は分枝状で、飽和又は不飽和のC6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、より好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択することができる。
【0124】
「飽和脂肪アルコール」という用語は、ここでは、長鎖の脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪アルコールは、いずれかの直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪アルコールの中でも、直鎖状又は分枝状の飽和C12~C20脂肪アルコールが、好ましくは使用され得る。任意の直鎖状又は分枝状の飽和C16~C20脂肪アルコールが使用されることがより好ましい。分枝状C16~C20脂肪アルコールが使用されることが更により好ましい。
【0125】
飽和脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びそれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えばセテアリルアルコール)、及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪アルコールとして使用することができる。
【0126】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物中に使用される脂肪アルコールは、好ましくは、セチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物から選択される。
【0127】
(b)油は、揮発性油、不揮発性油、及びこれらの混合物から選択できる。
【0128】
(b)油は、極性油、非極性油、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0129】
(b)油は、植物油、シリコーン油、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0130】
(b)油は、シリコーン油、より好ましくは不揮発性シリコーン油、更により好ましくはジメチコン、フェニルトリメチコン、及びこれらの混合物から選択することが好ましい。
【0131】
本発明による組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、8質量%以上、好ましくは9質量%以上、より好ましくは10質量%以上であってもよい。
【0132】
本発明による組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、40質量%以下、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下であってもよい。
【0133】
本発明による組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、8質量%から40質量%、好ましくは9質量%から35質量%、より好ましくは10質量%から30質量%であってもよい。
【0134】
(油性相)
本発明による組成物は、連続油性相を含む。連続油性相は、(b)油を含む。連続油性相は、(b)油を有する任意の親油性成分を更に含んでもよい。
【0135】
本発明による組成物中の連続油性相の量は、組成物の総質量に対して、8質量%以上、好ましくは9質量%以上、より好ましくは10質量%以上であってもよい。
【0136】
本発明による組成物中の連続油性相の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下であってもよい。
【0137】
本発明による組成物中の連続油性相の量は、組成物の総質量に対して、8質量%から50質量%、好ましくは9質量%から40質量%、より好ましくは10質量%から30質量%であってもよい。
【0138】
(水)
本発明による組成物は、(c)水を含む。
【0139】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であってもよい。本発明による組成物中の(c)水の量が、組成物の総質量に対して40質量%以上であることが、更により好ましい場合がある。
【0140】
その一方で、本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下であってもよい。本発明による組成物中の(c)水の量が、組成物の総質量に対して65質量%以下であることが、更により好ましい場合がある。
【0141】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%から80質量%、好ましくは20質量%から75質量%、より好ましくは30質量%から70質量%であってもよい。本発明による組成物中の(c)水の量が、組成物の総質量に対して40質量%から65質量%であることが、更により好ましい場合がある。
【0142】
(水性相)
本発明による組成物は、不連続水性相を含む。不連続水性相は、組成物中の連続相中に分散される。
【0143】
本発明による組成物は、組成物中の連続油性相中に分散することができる複数の不連続水性相を含むことができる。
【0144】
不連続水性相は、上で説明した(a)式(I)の化合物及び(c)水を含む。不連続水性相は、(c)水を有する任意の親水性成分を更に含んでもよい。
【0145】
本発明による組成物中の不連続水性相の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であってもよい。
【0146】
本発明による組成物中の不連続水性相の量は、85質量%以下であってもよい。本発明による組成物中の不連続水性相の量は、組成物の総質量に対して、80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更により好ましくは70質量%以下であることが、好ましい場合がある。
【0147】
本発明による組成物中の不連続水性相の量は、組成物の総質量に対して、10質量%から85質量%、好ましくは20質量%から85質量%、より好ましくは30質量%から85質量%であってもよい。
【0148】
(水性相/油性相の質量比)
本発明によれば、(不連続)水性相の(連続)油性相に対する質量比は、1.0から10.0、好ましくは1.3から9.0、より好ましくは1.5から8.0、更により好ましくは1.7から7.0である。
【0149】
一実施形態において、(不連続)水性相の(連続)油性相に対する質量比は、1.0以上、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上、更により好ましくは1.7以上であってもよい。
【0150】
別の実施形態では、(不連続)水性相の(連続)油性相に対する質量比は、10.0以下、好ましくは9.0以下、より好ましくは8.0以下、更により好ましくは7.0以下であってもよい。
【0151】
(親油性ゲル化剤)
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種の親油性ゲル化剤を含んでもよい。2種以上の親油性ゲル化剤を使用する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0152】
本発明の目的のために、「親油性ゲル化剤」という用語は、本発明による組成物の油性相をゲル化できる化合物を意味する。
【0153】
ゲル化剤は親油性であり、そのため、ゲル化剤は組成物の油性相中に存在する。
【0154】
ゲル化剤は、脂溶性又は脂質分散性である。
【0155】
(d)親油性ゲル化剤は、シリコーンエラストマーから選択されることが好ましい。
【0156】
用語「シリコーンエラストマー」又は「オルガノポリシロキサンエラストマー」とは、粘弾性を有し、特にスポンジ又は柔軟な球体のコンシステンシーを有する、柔軟で変形可能なオルガノポリシロキサンを意味する。その弾性係数は、この材料が変形に耐え、伸長し且つ収縮する能力が制限されるようなものである。この材料は、伸長後にその元の形状を回復可能である。それは、より詳細には、架橋オルガノポリシロキサンエラストマーである。
【0157】
したがって、オルガノポリシロキサンエラストマーは、特に白金触媒の存在下における、ケイ素に結合する少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンとケイ素に結合するエチレン性不飽和基を有するジオルガノポリシロキサンとの架橋付加反応によって;又は、特に有機スズ化合物の存在下における、ヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合する少なくとも1個の水素を含有するジオルガノポリシロキサンとの間の脱水素架橋縮合反応によって;又は、ヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと加水分解性オルガノポリシランとの架橋縮合反応によって;又は、特に有機ペルオキシド触媒の存在下における、オルガノポリシロキサンの熱架橋によって;又は、ガンマ線、紫外線若しくは電子ビーム等の高エネルギー照射を介するオルガノポリシロキサンの架橋によって得ることができる。
【0158】
好ましくは、オルガノポリシロキサンエラストマーは、例えば特許出願EP-A-295 886に記載のとおり、とりわけ(C)白金触媒の存在下における、(A)それぞれケイ素に結合する少なくとも2つの水素を含有するジオルガノポリシロキサンの、及び、(B)ケイ素に結合する少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するジオルガノポリシロキサンの架橋付加反応により得られる。
【0159】
特に、オルガノポリシロキサンエラストマーは、白金触媒の存在下で、ジメチルビニルシロキシ末端基を保有するジメチルポリシロキサンと、トリメチルシロキシ末端基を保有するメチルヒドロゲノポリシロキサンとの反応によって得ることができる。
【0160】
化合物(A)は、エラストマー性オルガノポリシロキサンの形成のためのベース反応物であり、架橋は、化合物(A)の化合物(B)との、触媒(C)の存在下における付加反応を介して生じる。
【0161】
化合物(A)は、特に、各分子中に異なるケイ素原子に結合された少なくとも2個の水素原子を含有するオルガノポリシロキサンである。
【0162】
化合物(A)は、任意の分子構造、とりわけ直鎖若しくは分枝鎖構造又は環状構造を有していてもよい。
【0163】
化合物(A)は、とりわけ化合物(B)と容易に混和可能であるように、25℃での粘度が、1から50000センチストークスの範囲であってもよい。
【0164】
化合物(A)のケイ素原子に結合された有機基は、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル;置換アルキル基、例えば2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル又は3,3,3-トリフルオロプロピル;アリール基、例えばフェニル、トリル、キシリル;置換アリール基、例えばフェニルエチル;及び置換一価炭化水素系基、例えばエポキシ基、カルボン酸エステル基又はメルカプト基であってもよい。
【0165】
したがって、化合物(A)は、トリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンポリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサンメチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、及びジメチルシロキサンメチルハイドロジェンシロキサン環状コポリマーから選択できる。
【0166】
化合物(B)は、有利には、少なくとも2つの低級アルケニル基(例えばC2~C4)を含有するジオルガノポリシロキサンであり、低級アルケニル基は、ビニル、アリル及びプロペニル基から選択することができる。これらの低級アルケニル基は、オルガノポリシロキサン分子の任意の位置にあってもよいが、好ましくは、オルガノポリシロキサン分子の末端に位置する。オルガノポリシロキサン(B)は、分枝鎖、直鎖、環状又は網状構造を有していてもよいが、直鎖構造が好ましい。化合物(B)は、粘度が、液体状態からゴム状態の範囲であってもよい。好ましくは、化合物(B)は、粘度が、25℃で少なくとも100センチストークスである。
【0167】
上述のアルケニル基の他に、化合物(B)中でケイ素原子に結合する他の有機基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はオクチル等のアルキル基;2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル又は3,3,3-トリフルオロプロピル等の置換アルキル基;フェニル、トリル又はキシリル等のアリール基;フェニルエチル等の置換アリール基;及びエポキシ基、カルボン酸エステル基又はメルカプト基等の置換一価炭化水素系基であってもよい。
【0168】
オルガノポリシロキサン(B)は、メチルビニルポリシロキサン、メチルビニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端基を含むジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端基を含むジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むメチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、及びジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルシロキサン-メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサンコポリマーから選択することができる。
【0169】
特に、オルガノポリシロキサンエラストマーは、白金触媒の存在下での、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルポリシロキサンとトリメチルシロキシ末端基を含むメチルヒドロポリシロキサンとの反応により得ることができる。
【0170】
有利には、化合物(B)中のエチレン性基の1分子当たりの数と、化合物(A)中のケイ素原子に結合している水素原子の1分子当たりの数との合計は、少なくとも5である。
【0171】
化合物(A)は、化合物(A)中のケイ素原子に結合している水素原子の総量と、化合物(B)中の全てのエチレン性不飽和基の総量との間の分子比が、1.5/1から20/1の範囲内となるような量で添加することが有利である。
【0172】
化合物(C)は、架橋反応のための触媒であり、とりわけクロロ白金酸、クロロ白金酸-オレフィン錯体、クロロ白金酸-アルケニルシロキサン錯体、クロロ白金酸-ジケトン錯体、白金黒及び担体上の白金である。
【0173】
触媒(C)は、好ましくは、清浄な白金族金属として、化合物(A)及び(B)の総量1,000質量部当たり、0.1から1,000質量部、より一層良好には1から100質量部の量で添加される。
【0174】
エラストマーは、非乳化性シリコーン又はオルガノポリシロキサンエラストマーであることが好ましい。
【0175】
「非乳化性」という用語は、親水性鎖を含有せず、特にポリオキシアルキレン単位(とりわけポリオキシエチレン若しくはポリオキシプロピレン単位)又はポリグリセリル単位を含有しないオルガノポリシロキサンエラストマーを定義する。したがって、本発明の特定の一形態によれば、組成物は、ポリオキシアルキレン単位及びポリグリセリル単位を含まないオルガノポリシロキサンエラストマーを含む。
【0176】
特に、本発明に用いられるシリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー(INCI名)、ビニルジメチコンクロスポリマー(INCI名)、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー(INCI名)又はジメチコンクロスポリマー-3(INCI名)から選択される。
【0177】
オルガノポリシロキサンエラストマー粒子は、少なくとも1種の炭化水素系油及び/又は1種のシリコーン油に含まれる弾性オルガノポリシロキサンから形成されるゲルの形態で運ばれうる。これらのゲル中で、オルガノポリシロキサン粒子は、非球状粒子であることが多い。
【0178】
非乳化性エラストマーは、とりわけ特許EP 242 219、EP 285 886及びEP 765 656並びに特許出願特開昭61-194009に記載されている。
【0179】
シリコーンエラストマーは、一般的に、ゲル、ペースト又は粉末の形態で供給されるが、有利には、シリコーンエラストマーが、直鎖状シリコーン油(ジメチコン)又は環状シリコーン油(例えば、シクロペンタシロキサン)、有利には直鎖状シリコーン油中に分散しているゲルの形態である。
【0180】
使用できる非乳化性エラストマーには、より具体的には、信越化学工業株式会社によりKSG-6、KSG-15、KSG-16、KSG-18、KSG-41、KSG-42、KSG-43及びKSG-44の名称で販売されているもの、Dow Corning社によりDC 9040及びDC 9041の名称で販売されているもの、並びに、General Electric社によりSFE 839の名称で販売されているものが含まれる。
【0181】
特定の様式によれば、シクロペンタジメチルシロキサン、ジメチコン、ジメチルシロキサン、メチルトリメチコン、フェニルメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチコン及びシクロメチコンを含む非限定的なリストから選択されるシリコーン油、好ましくは25℃での粘度が1から500cStの範囲の、任意選択でフッ素化された脂肪族基で又はヒドロキシル基、チオール基及び/若しくはアミン基等の官能基で任意選択により修飾された、ポリジメチルシロキサン(PDMS)又はジメチコンから選択される直鎖状シリコーン油中に分散されたシリコーンエラストマーのゲルが使用される。
【0182】
特に挙げることができるのは、以下のINCI名を有する化合物である:
ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、例えば信越化学工業株式会社製のUSG-105及びUSG-107A、Dow Corning社製のDC9506及びDC9701、
ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー(及び)ジメチコン、例えば信越化学工業株式会社製のKSG-6及びKSG-16、
ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー(及び)シクロペンタシロキサン、例えばKSG-15、
シクロペンタシロキサン(及び)ジメチコンクロスポリマー、例えばDow Corning社製のDC9040、DC9045及びDC5930、
ジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマー、例えばDow Corning社製のDC9041、
ジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマー、例えばDow Corning社製のDow Corning EL-9240 Silicone Elastomer Blend[ヘキサジエン/ポリジメチルシロキサンで架橋されたポリジメチルシロキサンの混合物(2cSt)]、
C4~24アルキルジメチコン/ジビニルジメチコンクロスポリマー、例えばAlzo社製のNuLastic Silk MA。
【0183】
特に、有利に本発明にしたがって使用することができる直鎖状シリコーン油中に分散されているシリコーンエラストマーの例として、以下のリファレンスを挙げることができる:
ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー(及び)ジメチコン、例えば信越化学工業株式会社製のKSG-6及びKSG-16、
ジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマー、Dow Corning社製の例えばDC9041、Dow Corning EL-9240 Silicone Elastomer Blend。
【0184】
オルガノポリシロキサンエラストマー粒子はまた、粉末形態で使用してもよく、特に挙げることができるのは、Dow Corning社により名称Dow Corning 9505 Powder及びDow Corning 9506 Powderで販売されている粉末であり、これらの粉末は、INCI名:ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーを有する。
【0185】
オルガノポリシロキサン粉末はまた、シルセスキオキサン樹脂で被覆されてもよく、例えば米国特許第5538793号に記載のとおりである。そのようなエラストマー粉末は、信越化学工業株式会社によりKSP-100、KSP-101、KSP-102、KSP-103、KSP-104及びKSP-105という名称で販売されており、INCI名:ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマーを有する。
【0186】
本発明にしたがって有利に使用されうるシルセスキオキサン樹脂で被覆されたオルガノポリシロキサン粉末の例として、とりわけ、信越化学工業株式会社製のリファレンスKSP-100を挙げることができる。
【0187】
オルガノポリシロキサンエラストマータイプの好ましい親油性ゲル化剤として、とりわけ、ジメチコンクロスポリマー(INCI名)、ジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマー(INCI名)、ビニルジメチコンクロスポリマー(INCI名)、ジメチコンビニルジメチコンクロスポリマー(INCI名)、ジメチコンクロスポリマー-3(INCI名)、特にジメチコンクロスポリマー(INCI名)を挙げることができる。
【0188】
(d)親油性ゲル化剤は、非乳化性シリコーンエラストマーから、より好ましくはジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコンクロスポリマー及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0189】
本発明による組成物中の(d)親油性ゲル化剤の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0190】
本発明による組成物中の(d)親油性ゲル化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってもよい。
【0191】
そのため、本発明による組成物中の(d)親油性ゲル化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%から20質量%、好ましくは0.5質量%から15質量%、より好ましくは1質量%から10質量%の範囲であってもよい。
【0192】
(乳化性シリコーンエラストマー)
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種の乳化性シリコーンエラストマーを含む。2種以上の乳化性シリコーンエラストマーが使用される場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0193】
「シリコーンエラストマー」という用語は、粘弾性を有する柔軟で変形可能な物質である、部分的に又は完全に架橋されたオルガノポリシロキサンを意味することが意図される。その弾性係数は、この材料が変形に耐え、且つ限定的な伸長及び収縮能力を有するようなものである。この物質は、伸縮後にその原形に戻ることができる。
【0194】
「乳化性シリコーンエラストマー」の「乳化性」という用語は、シリコーンエラストマーが乳化可能であること、又は乳化剤としての機能を有することを意味する。
【0195】
(e)乳化性シリコーンエラストマーは、一般に、本発明による組成物の脂肪相中に導入されて、この脂肪相の一部となりうる。
【0196】
本発明に従って使用される(e)乳化性シリコーンエラストマーは、少なくとも1つの親水性鎖を含む架橋エラストマーオルガノポリシロキサンであってもよく、この鎖は特にオキシアルキレン化又はグリセリル化されることが可能である。したがって、(e)乳化性シリコーンエラストマーは、少なくとも1つのオキシアルキレン化鎖及び/又は少なくとも1つのグリセリル化鎖を含むシリコーンエラストマーから選択することができる。
【0197】
(e)乳化性シリコーンエラストマーは、少なくとも1つの親水性部分を有する少なくとも1種の架橋シリコーンポリマーを含むことが好ましい。親水性部分は、少なくとも1つのポリオキシアルキレン鎖及び/又は少なくとも1つのポリグリセリル鎖を含んでいてもよい。
【0198】
少なくとも1つのオキシアルキレン化鎖を含むシリコーンエラストマーは、例えば、文献米国特許第5,236,986号及び米国特許第5,412,004号に記載のとおり、特に、ケイ素にそれぞれ結合された少なくとも2つの水素を含有するジオルガノポリシロキサン(A1)と、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するポリオキシアルキレン(B1)との、特に触媒(C1)、特に白金触媒の存在下での付加反応及び架橋により得ることができる。
【0199】
化合物(A1)は、エラストマーオルガノポリシロキサンの形成のためのベース化合物であり、架橋は、化合物(A1)と化合物(B1)との、触媒(C1)の存在下での付加反応を介して生じる。
【0200】
化合物(B1)は、有利には、化合物(A1)のSi-H結合と反応することになる少なくとも2つのビニル基をシリコーン鎖のα~ω位に含有するオキシエチレン化及び/又はオキシプロピレン化された化合物である。化合物(B1)は、特に、ジメチルビニルシロキシ末端基を含有するポリオキシアルキレン(特にポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン)とすることができる。
【0201】
化合物(A1)のケイ素原子に結合される有機基は、1から18個の炭素原子を含有するアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、デシル、ドデシル(又はラウリル)、ミリスチル、セチル又はステアリル;置換アルキル基、例えば2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル又は3,3,3-トリフルオロプロピル;アリール基、例えばフェニル、トリル又はキシリル;置換アリール基、例えばフェニルエチル;及び置換一価炭化水素系基、例えばエポキシ基、カルボン酸エステル基又はメルカプト基であってもよい。
【0202】
したがって、化合物(A1)は、トリメチルシロキシ末端基を含有するメチルヒドロゲノポリシロキサン、トリメチルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサンコポリマー、環状ジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサンコポリマー及びトリメチルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサンラウリルメチル-シロキサンコポリマーから選択することができる。
【0203】
化合物(C1)は架橋反応触媒であり、担体上のクロロ白金酸、クロロ白金酸-オレフィン錯体、クロロ白金酸-アルケニルシロキサン錯体、クロロ白金酸-ジケトン錯体、白金黒及び白金から特に選択できる。
【0204】
触媒(C1)は、好ましくは、清浄白金金属として、1,000質量部の化合物(A1)及び(B1)の総量当たり、0.1から1,000質量部、より一層良好には1から100質量部の量で添加される。
【0205】
特に、少なくとも1つのオキシアルキレン化鎖を含むシリコーンエラストマーは、白金触媒の存在下で、ジメチルビニルシロキシ末端基を含有するポリオキシアルキレン(特に、ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン)と、トリメチルシロキシ末端基を含有するメチルヒドロゲノポリシロキサンとの反応により得ることができる。
【0206】
本発明に従って使用される少なくとも1つのオキシアルキレン化鎖を含むシリコーンエラストマーは、好ましくは少なくとも1つのオキシエチレン化鎖を含むシリコーンエラストマーである。
【0207】
加えて、少なくとも1つのオキシアルキレン化鎖を含むシリコーンエラストマーは、好ましくは、少なくとも1種の炭化水素系油及び/又は1種のシリコーン油中のゲルの形態で運搬される。そのため、(e)乳化性シリコーンエラストマーは、ゲルの形態とすることができる。これらのゲル中で、少なくとも1つのオキシアルキレン化鎖を含むエラストマーは、通常、非球状粒子の形態である。
【0208】
ポリオキシアルキレン化シリコーンエラストマーは、特に、文献米国特許第5,236,986号、米国特許第5,412,004号、米国特許第5,837,793号及び米国特許第5,811,487号に記載され、これらの内容は、参照により組み込まれる。
【0209】
少なくとも1つのオキシエチレン化鎖を含むシリコーンエラストマーとして、信越化学工業株式会社により、以下の名称で販売されているものを特に使用できる:
ジメチコン/PEG-10ジメチコンビニルジメチコンクロスポリマー、例えば名称KSG-21で販売されているもの(活性物質が27%)、
PEG-10ジメチコンクロスポリマー、例えば名称KSG-20で販売されているもの(活性物質が100%)、
ジメチコン/PEG-10/15クロスポリマー、例えば名称KSG-210で販売されているもの(シリコーン油中、シリコーンエラストマーの活性物質が25%)、
シクロペンタシロキサン(及び)ジメチコン/PEG-10/15クロスポリマー、例えば名称KSG-240で販売されているもの、
鉱油(及び)PEG-15/ラウリルジメチコンクロスポリマー、例えば名称KSG-310で販売されているもの、
イソドデカン(及び)PEG-15/ラウリルジメチコンクロスポリマー、例えばKSG-320の名称で販売されているもの、
イソドデカン(及び)PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコンクロスポリマー、例えばKSG-320Zの名称で販売されているもの、
シクロペンタシロキサン(及び)PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコンクロスポリマー、例えばKSG-350Zの名称で販売されているもの、
ジメチコン(及び)PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコンクロスポリマー、例えば名称KSG-360Z及びKSG-380Zで販売されているもの(シリコーン油中、シリコーンエラストマーの活性物質が25~45%)、
又は
Dow Corning社によって以下の名称で販売されているものを特に使用することができる:
PEG-12ジメチコンクロスポリマー、例えば名称DC9010で販売されているもの(活性物質が11%)、並びに
シクロペンタシロキサン(及び)PEG-12ジメチコンクロスポリマー、例えば名称DC9011で販売されているもの(活性物質が91%)。
【0210】
これらの製品は、一般に、シリコーンエラストマーの粒子を含有する油性ゲルの形態にある。
【0211】
ジメチコン/PEG-10/15クロスポリマー、例えばKSG-210の名称で販売されているもの、PEG/15ラウリルジメチコンクロスポリマー、例えばKSG-320の名称で販売されているもの、及びPEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコンクロスポリマー、例えばKSG-380Zの名称で販売されているものが、好ましくは使用される。
【0212】
(a)乳化性シリコーンエラストマーはまた、少なくとも1つのグリセリル化鎖を含むシリコーンエラストマーからも選択できる。
【0213】
少なくとも1つのグリセリル化鎖を含むシリコーンエラストマーは、特に、ケイ素に結合された少なくとも1つの水素を含有するジオルガノポリシロキサン(A2)と、エチレン性不飽和基を有するポリグリセリル化化合物(B2)との、特に触媒(C2)、特に白金触媒の存在下での付加反応及び架橋により得ることができる。
【0214】
詳細には、オルガノポリシロキサンは、白金触媒の存在下で、ジメチルビニルシロキシ末端基を含有するポリグリセリル化化合物と、トリメチルシロキシ末端基を含有するメチルヒドロゲノポリシロキサンとの反応により得ることができる。
【0215】
化合物(A2)は、エラストマーオルガノポリシロキサンの形成のためのベース化合物であり、架橋は、化合物(A)と化合物(B2)との、触媒(C2)の存在下での付加反応を介して生じる。
【0216】
化合物(A2)は、特に、各分子の別個のケイ素原子に結合する少なくとも2つの水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。化合物(A2)は、とりわけ化合物(B2)と容易に混和可能であるように、25℃での粘度が、1から50000センチストークスの範囲であってもよい。
【0217】
化合物(A2)のケイ素原子に結合される有機基は、1から18個の炭素原子を含有するアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、デシル、ドデシル(又はラウリル)、ミリスチル、セチル又はステアリル;置換アルキル基、例えば2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル又は3,3,3-トリフルオロプロピル;アリール基、例えばフェニル、トリル又はキシリル;置換アリール基、例えばフェニルエチル;及び置換一価炭化水素系基、例えばエポキシ基、カルボン酸エステル基又はメルカプト基であってもよい。好ましくは、前記有機基は、メチル、フェニル及びラウリル基から選択される。
【0218】
したがって、化合物(A2)は、トリメチルシロキシ末端基を含有するメチルヒドロゲノポリシロキサン、トリメチルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサンコポリマー、環状ジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサンコポリマー、及びトリメチルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサン-ラウリルメチル-シロキサンコポリマーから選択することができる。
【0219】
化合物(B2)は、下記の式(B'2)に相当するポリグリセリル化化合物であってもよい:
CmH2m-1-O-[Gly]n-CmH2m-1 (B'2)
(式中、mは、2から6の範囲の整数であり、nは、2から200の範囲、好ましくは、2から100、優先的には2から50の範囲、より一層良好には2から20の範囲、なおより一層良好には2から10の範囲、なおより一層良好には2から5の範囲の整数であり、特に、nは3に等しく、Glyは、以下を意味する:
CH2-CH(OH)-CH2-O-又は-CH2-CH(CH2OH)-O-)。
【0220】
有利には、化合物(B2)の1分子当たりのエチレン性基の数と、化合物(A2)の1分子当たりのケイ素原子に結合された水素原子の数との和は、少なくとも4である。
【0221】
化合物(A2)におけるケイ素原子に結合された水素原子の総量の、化合物(B2)における全てのエチレン性不飽和基の総量に対する分子比が、1/1から20/1の範囲内になる量で、化合物(A2)を添加するのが有利である。
【0222】
化合物(C2)は架橋反応触媒であり、担体上のクロロ白金酸、クロロ白金酸-オレフィン錯体、クロロ白金酸-アルケニルシロキサン錯体、クロロ白金酸-ジケトン錯体、白金黒及び白金から特に選択できる。
【0223】
触媒(C2)は、好ましくは、清浄白金金属として、1,000質量部の化合物(A2)及び(B2)の総量当たり、0.1から1,000質量部、より一層良好には1から100質量部の量で添加される。
【0224】
本発明に従って使用される少なくとも1つのグリセリル化鎖を含むシリコーンエラストマーは、一般に、少なくとも1種の炭化水素系油及び/又は1種のシリコーン油との混合物としてのゲルの形態である。これらのゲル中で、少なくとも1つのグリセリル化鎖を含むエラストマーは、通常、非球状粒子の形態である。
【0225】
このようなエラストマーは、文献WO-A-2004/024798に特に記載されている。
【0226】
少なくとも1つのグリセリル化鎖を含むシリコーンエラストマーとして、信越化学工業株式会社により、以下の名称で販売されているものを使用できる:
ジメチコン/ポリグリセリン-3クロスポリマー、例えば名称KSG-710で販売されているもの(25%の活性物質を含有)、
鉱油(及び)ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3クロスポリマー、例えば名称KSG-810で販売されているもの、
イソドデカン(及び)ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3クロスポリマー、例えば名称KSG-820で販売されているもの、
トリエチルヘキサノイン(及び)ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3クロスポリマー、例えば名称KSG-830で販売されているもの、並びに
スクアラン(及び)ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3クロスポリマー、例えば名称KSG-840で販売されているもの。
【0227】
(e)乳化性シリコーンエラストマーは、少なくとも1つのオキシアルキレン化鎖及び/又は少なくとも1つのグリセリル化鎖を含むシリコーンエラストマー、より好ましくは少なくとも1つのオキシエチレン化鎖を含むシリコーンエラストマーから選択されることが好ましい。
【0228】
本発明による組成物中の(e)乳化性シリコーンエラストマーの量は、組成物の総質量に対して20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0229】
本発明による組成物中の(e)乳化性シリコーンエラストマーの量は、組成物の総質量に対して0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってもよい。
【0230】
そのため、本発明による組成物中の(e)乳化性シリコーンエラストマーの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%から20質量%、好ましくは0.5質量%から15質量%、より好ましくは1質量%から10質量%の範囲であってもよい。
【0231】
(乳化剤)
本発明による組成物は、(f)乳化性シリコーンエラストマーとは異なる少なくとも1種の(f)乳化剤を含んでもよい。2種以上の乳化剤が使用される場合、これらは同じであっても、異なってもよい。
【0232】
(f)乳化剤のタイプは、限定されない。そのため、例えば、(f)乳化剤として両親媒性粉末を使用してもよい。その場合、本発明による組成物は、ピッケリングエマルションの形態であってもよい。
【0233】
(f)乳化剤は、界面活性剤から選択されることが好ましい。
【0234】
そのため、本発明による組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を含んでもよい。2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの界面活性剤、又は異なるタイプの界面活性剤の組合せを使用することができる。
【0235】
本発明において使用される界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤からなる群から、好ましくは非イオン性界面活性剤から選択することができる。
【0236】
(f)乳化剤は、非イオン性シリコーン界面活性剤から選択されることがより好ましい。
【0237】
(f)乳化剤は、非イオン性の非架橋シリコーン界面活性剤から選択されることが更により好ましい。非イオン性の非架橋シリコーン界面活性剤は、直鎖状オルガノポリシロキサンをベースとしたものでよい。
【0238】
挙げることができる非イオン性シリコーン界面活性剤の例には、ジメチコンコポリオール、例えばDow Corning社により商標名DC 5225で販売されているシクロメチコンとジメチコンコポリオールとの混合物と、アルキルジメチコンコポリオール、例えばDow Corning社より名称Dow Corning 5200 Formulation Aidで販売されているラウリルジメチコンコポリオールと、Goldschmidt社より名称Abil EM 90(商標)で販売されているセチルジメチコンコポリオールとが含まれる。
【0239】
非イオン性シリコーン界面活性剤は、シクロテトラシロキサン(及び)シクロペンタシロキサン(及び)PEG/PPG-18ジメチコン、シクロペンタシロキサン(及び)PEG/PPG-18/18ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、ラウリルPEG/PPG-18/18メチコン、セチルPEG/PPG-14/14ジメチコン、ビス-セチルPEG/PPG-14/14ジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-3ジメチコン、PEG-9メチルエーテルジメチコン、PEG-10ジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなる群から選択することができる。
【0240】
非イオン性シリコーン界面活性剤の中でも、使用できるオキシアルキレン化ポリオルガノシロキサン乳化剤として、以下を挙げることができる:
次の一般式を有するオキシアルキレン化ポリオルガノシロキサン乳化剤:
【0241】
【化7】
【0242】
[式中、pは0~40(間にある全ての数を含む範囲及びその部分的な範囲、例えば2、3、4、13、14、15、16、17、18等)であり、PEは(-C2H4O-)a-(-C3H6O-)b-Hであり、式中、aは0~25であるが、但しa及びbは両方とも同時に0ではあり得ず、x、y及びzは、それぞれ独立に、0から1,000,000の範囲であるが、但しx及びyは同時に0ではあり得ないものとする]。幾つかの事例では、x、y、z、a及びbは、ポリマーの分子量が、約5,000から約500,000の範囲、約10,000から100,000の範囲、又は約50,000であり、ポリマーが総称してジメチコンコポリオールと呼ばれるようなものである。幾つかの例では、pは、長鎖アルキルがセチル又はラウリルであり、それぞれ、化合物が総称してセチルジメチコンコポリオール又はラウリルジメチコンコポリオールと呼ばれるようなものである。幾つかの事例では、ポリマー中の繰り返しのエチレンオキシド単位又はプロピレンオキシド単位の数もまた特定され、例えばPEG-15/PPG-10ジメチコンとも称されるジメチコンコポリオールは、15個のエチレングリコール単位及び10個のプロピレングリコール単位をシロキサン主鎖上に含有する置換基を有するジメチコンを指す。上の一般構造における1個又は複数のメチル基が、より長い鎖のアルキル(例えばエチル、プロピル、ブチル等)、又はメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル等のエーテルで置換されることもまた可能である。
【0243】
次の一般式を有するオキシアルキレン化ポリオルガノシロキサン乳化剤:
【0244】
【化8】
【0245】
(式中、各nは、独立に0~100であるが、但し少なくとも1つのPE基が存在しなければならないものとする)。幾つかの例では、各nは、独立に、約2から30の範囲であり、PEは(-C2H4O-)a-(-C3H6O-)b-Hであり、式中、aは0~25であり、bは0~25であるが、但しa及びbは両方とも同時に0ではあり得ないものとし、w、x、y及びzは、それぞれ独立に、0から1,000,000であるが、但し少なくとも1つのPEが存在するものとする。幾つかの実施形態では、オルガノポリシロキサン乳化剤は、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンである。米国特許第9,095,543号に開示されるオキシアルキレン化オルガノシロキサン乳化剤は、本組成物において有用である。米国特許第9,095,543号は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0246】
非イオン性シリコーン界面活性剤として、ポリオルガノシロキサン乳化剤の更なる例には、C.T.F.A.名ビス-ブチルジメチコンポリグリセリル-3;ビス-PEG/PPG-14/14ジメチコン;ビス-ブチルジメチコンポリグリセリル-3;ビス-イソブチルPEG/PPG-10/7ジメチコンコポリマー;ビス-PEG/PPG-18/6ジメチコン;ビス-PEG/PPG-20/20ジメチコン;ビス-PEG/PPG-16/16PEG/PPG-16/16ジメチコン;ビスPPG-7ウンデセネス-21-ジメチコン;セチルジメチコンPEG-7アセテート;セチルPEG-8ジメチコン;セチルPEG/PPG-15/16ブチルエーテルジメチコン;セチルPEG/PPG-15/15ブチルエーテルジメチコン;セチルPEG/PPG-7/3ジメチコン;セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン;ジメチコンPEG-15アセテート;ジメチコンPEG-7ココエート;ジメチコンPEG-7ホスフェート;ジメチコンPEG-10ホスフェート;ジメチコンPEG/PPG-7/4ホスフェート;ジメチコンPEG/PPG-12/4ホスフェート;ジメチコンPEG-7ウンデシレネート;ラウリルジメチコンPEG-10ホスフェート;イソポリグリセリル-3ジメチコン;イソポリグリセリル-3ジメチコノール;イソステアリルカルボキシルデシルPEG-8ジメチコン;ラウリルメチコンPEG-10ホスフェート;ラウリルPEG-8ジメチコン;ラウリルPEG-10メチルエーテルジメチコン;ラウリルPEG/PPG-18/18メチコン;PEG-6メチルエーテルジメチコン;PEG-7メチルエーテルジメチコン;PEG-9メチルエーテルジメチコン;PEG-10メチルエーテルジメチコン;PEG-11メチルエーテルジメチコン;PEG-11メチルエーテルジメチコン;PEG-32メチルエーテルジメチコン;PEG-PEG/PPG-28/21アセテートジメチコン;PEG/PPG-22/22ブチルエーテルジメチコン;PEG/PPG-23/23ブチルエーテルジメチコン;PEG/PPG-24/18ブチルエーテルジメチコン;PEG/PPG-3/10ジメチコン;PEG/PPG-4/12ジメチコン;PEG/PPG-6/11ジメチコン;PEG/PPG-8/14ジメチコン;PEG/PPG-12/16ジメチコン;PEG/PPG-12/18ジメチコン;PEG/PPG-14/4ジメチコン;PEG/PPG-15/5ジメチコン;PEG/PPG-15/15ジメチコン;PEG/PPG-16/2ジメチコン;PEG/PPG-16/8ジメチコン;PEG/PPG-17/18ジメチコン;PEG/PPG-18/12ジメチコン;PEG/PPG-19/19ジメチコン;PEG/PPG-20/6ジメチコン;PEG/PPG-20/15ジメチコン;PEG/PPG-20/20ジメチコン;PEG/PPG-20/29ジメチコン;PEG/PPG-22/23ジメチコン;PEG/PPG-22/24ジメチコン;PEG/PPG-25/25ジメチコン;PEG/PPG-27/27ジメチコン;PEG/PPG-30/10ジメチコン;PEG/PPG-10/3オレイルエーテルジメチコン;PEG-8トリシロキサン;ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン;PPG-12ブチルエーテルジメチコン;シリコーンクオタニウム-17;TEA-ジメチコンPEG-7ホスフェートを有するもの;又はこれらの混合物が含まれる。
【0247】
非イオン性シリコーン界面活性剤としての市販の直鎖状ポリオルガノシロキサン乳化剤の更なる例は、CTFA名シクロテトラシロキサン(及び)シクロペンタシロキサン(及び)PEG/PPG-18ジメチコンを有する商標名Dow Corning 3225C Formulation Aid、若しくはCTFA名シクロペンタシロキサン(及び)PEG/PPG-18/18ジメチコンを有する5225C Formulation Aid、若しくはCTFA名PEG/PPG-18/18ジメチコンを有するDow Corning 190 Surfactant、若しくはDow Corning 193 Fluid、CTFA名ラウリルPEG/PPG-18/18メチコンを有するDow Corning 5200でDow Corning社によって販売されているもの、又はGoldschmidt社によって販売されている、CTFA名がセチルPEG/PPG-14/14ジメチコンであるAbil EM 90、又はGoldschmidt社によって販売されている、CTFA名がビス-セチルPEG/PPG-14/14ジメチコンであるAbil EM 97、又はイソステアリン酸ポリグリセリル-4とラウリン酸ヘキシルも含有する混合物中の、CTFA名がセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンであるAbil WE 09、又は信越シリコーン社によって販売されている、CTFA名がPEG-11メチルエーテルジメチコンであるKF-6011、信越シリコーン社によって販売されている、CTFA名がPEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコンであるKF-6012、又は信越シリコーン社によって販売されている、CTFA名がPEG-9ジメチコンであるKF-6013、又は信越シリコーン社によって販売されている、CTFA名がPEG-3ジメチコンであるKF-6015、又は信越シリコーン社によって販売されている、CTFA名がPEG-9メチルエーテルジメチコンであるKF-6016、又は信越シリコーン社によって販売されている、CTFA名がPEG-10ジメチコンであるKF-6017、又は信越シリコーン社によって販売されている、CTFA名がラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンであるKF-6038である。
【0248】
(e)乳化剤は、ポリオキシアルキレン-ポリオルガノシロキサンコポリマーから選択され、より好ましくはPEG-10ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0249】
本発明による組成物中の(e)乳化剤の量は、組成物の総質量に対して、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下であってもよい。
【0250】
本発明による組成物中の(e)乳化剤の量は、組成物の総質量に対して0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であってもよい。
【0251】
そのため、本発明による組成物中の(e)乳化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%から30質量%、好ましくは0.005質量%から25質量%、より好ましくは0.01質量%から20質量%の範囲であってもよい。
【0252】
(他の任意選択の添加剤)
本発明による組成物はまた、例えば、アニオン性、カチオン性、両性若しくは非イオン性ポリマー、溶媒、親水性増粘剤、分散剤、抗酸化剤、成膜剤、保存剤、芳香剤、中和剤、pH調整剤、防腐剤、UV遮蔽剤、成分(a)以外の化粧用活性剤、例えばビタミン、保湿剤、エモリエント、又はコラーゲン保護剤、及びこれらの混合物から選択される、化粧品の分野で通常使用される任意の他の任意選択の添加剤も含んでよい。
【0253】
本発明による組成物中に存在しうる上記の任意選択の添加剤の性質及び量を、所望の美容特性が該添加剤により影響を受けないよう調整することは、当業者にとって常法である。
【0254】
溶媒としては、1種又は数種の化粧品として許容される有機溶媒を挙げることができ、これらは、アルコール、特に一価アルコール、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール;ジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコール;他のポリオール、例えばグリセロール、糖及び糖アルコール;並びにエーテル、例えばエチレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、並びにブチレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテルであってもよい。
【0255】
有機溶媒は、組成物の総質量に対して、0.01質量%から35質量%、好ましくは0.1質量%から30質量%、より好ましくは1質量%から25質量%の濃度で存在できる。
【0256】
pH調整剤として、少なくとも1種の酸性化剤及び/又は少なくとも1種の塩基性化剤(アルカリ剤)を使用することができる。
【0257】
酸性化剤は、例えば、鉱酸又は有機酸、例としては塩酸、リン酸、カルボン酸、例としては酒石酸、クエン酸及び乳酸、又はスルホン酸とすることができる。
【0258】
塩基性化剤すなわちアルカリ剤は、例えば、化粧料中に一般に使用される任意の無機又は有機の塩基性剤、例えばアンモニア;アルカノールアミン、例えばモノ-、ジ-、及びトリ-エタノールアミン、イソプロパノールアミン;アルカリ金属水酸化物等の金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム);尿素、グアニジン、及びこれらの誘導体;並びに下記の構造:に記載されるもの等のジアミンとすることができる:
【0259】
【化9】
【0260】
(式中、
Rは、任意選択によりヒドロキシル又はC1~C4アルキル基で置換されているプロピレン等のアルキレンを表し、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、水素原子、アルキル基、又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を表し、これは、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示されうる)。水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい場合がある。
【0261】
酸性化剤又は塩基性化剤は、組成物の総質量に対して、5質量%未満、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下の範囲の量で存在してもよい。
【0262】
[調製]
本発明による組成物は、上記の必須成分と任意選択の成分とを従来の方法で混合して調製することができる。
【0263】
例えば、本発明による組成物は、
(b)少なくとも1種の油を含む油性相と、
(a)チオピリジノン化合物及び(c)水を含む水性相と、を混合して、
油性相中に水性相を分散させ、
したがって水性相の油性相に対する質量比を1.0から10.0にする工程
を含む方法によって調製することができる。
【0264】
任意選択の成分のいずれかを更に混合することが可能である。
【0265】
混合は、室温(例えば20~25℃、好ましくは25℃で)、好ましくは30℃以上の温度で、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上等の任意の温度で実施することができる。pH調整剤等の上記の任意選択の成分のいずれかと更に混合することが好ましい。
【0266】
本発明による組成物の形態は、油性相が連続相を形成し、水性相が不連続相を形成する、W/O型である。本発明による組成物は、エマルション又はゲル、好ましくはW/O型エマルション又はW/O型ゲル、より好ましくはW/O型ゲルエマルションの形態であることが好ましい。
【0267】
[美容方法]
本発明による組成物は、化粧用又は皮膚科用組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくはケラチン物質のための化粧用組成物として使用することができる。ケラチン物質としては、皮膚、頭皮、毛髪、唇等の粘膜、及び爪を挙げることができる。
【0268】
本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質のための脱色、漂白又は美白製品として使用することができる。特に、本発明による組成物は、美白製品として使用することができる。
【0269】
本発明による組成物は、好ましくは、皮膚、頭皮、及び/又は唇等のケラチン物質、好ましくは皮膚への適用を目的としうる。
【0270】
したがって、本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくは皮膚のための美容方法に使用することができる。一実施形態では、本発明は、ケラチン物質、好ましくは皮膚のための、美容方法、好ましくは美白方法であって、本発明による組成物をケラチン物質へ適用する工程を含む方法に関する。
【0271】
本発明による組成物は、ローション、乳液、クリーム、ジェル、ペースト、セラム、泡状物質又はスプレーの形態における局所用の化粧用組成物として使用することができる。
【0272】
[使用]
本発明は、
(b)少なくとも1種の油を含む連続油性相、及び
油性相中に分散された、(c)水を含む不連続水性相を含み、水性相の油性相に対する質量比が1.0から10.0である、W/O型組成物の使用であって、
(a)少なくとも1種の式(I)の化合物
【0273】
【化10】
【0274】
(式中、
R1は:
a)水素原子、及び
b)飽和直鎖状C1~C6アルキル基
から選択される基を指し、
R2は:
a)水素原子、
b)飽和直鎖状C1~C10アルキル基、
c)飽和分枝状C3~C10アルキル基、及び
d)C1~C6フェニルアルキル基、例えばベンジル
から選択される基を指す)、
又は
それらの塩、それらの溶媒和物、それらの光学異性体、若しくはそれらのラセミ体を安定化させるための使用であり、
(a)少なくとも1種の式(I)の化合物が、組成物の水性相中に存在する、使用にも関する。
【0275】
用語「安定化させる」とは、安定性を増強することと同じ意味を有する。
【0276】
本発明による使用は、(a)チオピリジノン化合物を含む組成物中の(a)チオピリジノン化合物の安定性を増強させることができる。
【0277】
したがって、本発明による使用は、周囲条件及び高温条件の両方の下で、特に高温条件下でも、(a)チオピリジノン化合物を含む組成物を長期間貯蔵することを可能にできる。
【0278】
本発明による組成物についての、(a)チオピリジノン化合物、(b)油、及び(c)水に関する上記の説明は、本発明による使用において用いられるものにも該当しうる。
【0279】
本組成物による使用において用いられる組成物は、本発明による組成物に関して上で説明された任意選択の成分のいずれかを含むことができる。
【実施例0280】
本発明を、実施例によって、より詳細な方法で説明する。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0281】
(実施例1及び2)
[調製]
実施例1及び2による組成物のそれぞれを、以下の工程1~6に従って、表1に示される成分を混合することにより調製した。
1. 相A1の成分を混合し、50℃+/-5℃まで加熱して、透明な溶液の相A1の混合物を得た。
2. 相A2の成分を相A1の混合物に添加し、混合して、透明な溶液の相A1と相A2との混合物を得た。
3. 相B2の成分を混合し、80℃+/-5℃まで加熱して、透明な液体の相B2の混合物を得た。
4. 相B1の成分を相B2の混合物に添加し、混合して、均一な液体の相B1と相B2との混合物を得た。
5. 相A1と相A2との混合物を、相B1と相B2との混合物に添加し、結果として得られた混合物を、8,000rpm下、室温で10分間、ホモジナイザー(TK robomix、PRIMIX)を用いて均質化した。
6. 相Cの成分を、工程5で得られた上記の混合物に更に添加した後、8,000rpm下、室温で10分間、ホモジナイザーを用いて均質化した。
【0282】
成分の量の数値は、全て、原料の「質量%」に基づく。
【0283】
【表5】
【0284】
(比較例1及び2)
[調製]
比較例1及び2による組成物のそれぞれを、以下の工程1~6に従って、表2に示される成分を混合することにより調製した。
1. 相Aの成分を混合し、80℃+/-5℃まで加熱して、透明な溶液の相Aの混合物を得た。
2. 相Bの成分を混合し、80℃+/-5℃まで加熱して、相Bの混合物を得た。
3. 相Bの混合物を相Aの混合物に添加し、結果として得られた混合物を、8,000rpm下、80℃+/-5℃でホモジナイザー(TK robomix、PRIMIX)を用いて均質化した。
4. 相Cの成分を、工程3で得られた上記の混合物に更に添加した後、8,000rpm下、自発的温度で10分間、ホモジナイザーを用いて均質化した。
5. 相Dの成分を攪拌することにより混合し、相Dの混合物を得た。
6. 相Dの混合物を、工程4で得られた上記の混合物に添加した後、8,000rpm下、室温で5分間、ホモジナイザーを用いて均質化した。
【0285】
成分の量の数値は、全て、原料の「質量%」に基づく。
【0286】
【表6】
【0287】
[評価]
(チオピリジノン定量化)
実施例1及び2並びに比較例1及び2による各組成物中のチオピリジノンの量は、以下のタイミングでHPLC-UVアッセイによって決定した。
(1)組成物を調製した直後(T0)
(2)調製から2カ月後で、組成物が室温で維持された状態
(3)調製から2カ月後で、組成物が45℃で維持された状態
【0288】
HPLC-UVアッセイの詳細は以下のとおりである。
【0289】
装置/試薬
【0290】
【表7】
【0291】
HPLC条件
【0292】
【表8】
【0293】
結果を表3に示す。
【0294】
(質感評価)
実施例1及び2並びに比較例1及び2による各組成物を、調製直後に、また、調製から2カ月後に、8名のパネリストによる官能評価に供した。各組成物0.08~0.12gを各パネリストの皮膚に適用し、べたつきについて評価した。パネリストらは、以下のスコア基準に従って評価し、スコアを平均した。
【0295】
非常に良好:6名超のパネリストが「べたつかない」と感じた
良好:4名超のパネリストが「べたつかない」と感じた
普通:2名超のパネリストが「べたつかない」と感じた
不良:2名以下のパネリストが「べたつかない」と感じた
【0296】
結果を表3中の「べたつき」の欄に示す。
【0297】
【表9】
【0298】
チオピリジノンの理論的な量(wt%): 組成物の調製中に使用されるチオピリジノンの量。
T0でのチオピリジノンの量(%): 組成物の調製直後のチオピリジノンの量(HPLCによって決定される)
RT 2Mでのチオピリジノンの量(%): 組成物の調製から2カ月後の、組成物が室温で維持されていた状態での、チオピリジノンの量(HPLCによって決定される)
45℃ 2Mでのチオピリジノンの量(%): 組成物の調製から2カ月後の、組成物が45℃で維持されていた状態での、チオピリジノンの量(HPLCによって決定される)
45℃ 2M/RT 2M(%): {組成物の調製から2カ月後の45℃でのチオピリジノンの量/組成物の調製から2カ月後の室温でのチオピリジノンの量}*100
【0299】
表3は、チオピリジノンが、典型的なO/Wエマルションの形態の比較例1及び2による組成物中に含まれていた場合、組成物を45℃で2カ月間保存したときに、室温で2カ月間保存したときと比べて、チオピリジノンの量が10%超減少したことを示す。
【0300】
一方で、表3はまた、チオピリジノンが、W/O型エマルションの形態の実施例1及び2による組成物中に含まれていた場合、組成物を45℃で2カ月間保存したときに、室温で2カ月間保存したときと比べて、チオピリジノンの量の減少が10%未満だったことも示す。
【0301】
加えて、実施例1及び2による組成物のべたつきは、比較例1及び2それぞれによる組成物のべたつきより良好だった。
【0302】
(実施例3)
[調製]
実施例3による組成物を、以下の工程1~5に従って、表4に示される成分を混合することにより調製した。
1. 相A1及びA2の成分を室温で混合して、均一な溶液を調製した。
2. 相B1の成分を混合し、50℃+/-5℃まで加熱して、透明な溶液を得た後、室温まで冷却した。
3. 相B2及びB3の成分を、工程2で得られた透明な溶液に添加し、混合して、相B1~B3の混合物を得た。
4. 相B1~B3の混合物を相A1及びA2の混合物に添加し、結果として得られた混合物を、5分間、ホモジナイザー(TK robomix、PRIMIX)を用いて均質化した後、擢型ミキサー(Heidon、BL600)を用いて穏やかに混合した。
5. 相Cの成分を、工程4で得られた上記の混合物に更に添加した後、10分間、擢型ミキサーを用いて混合した。
【0303】
成分の量の数値は、全て、原料の「質量%」に基づく。
【0304】
【表10】
【0305】
[評価]
(チオピリジノン定量化)
実施例3による組成物中のチオピリジノンの量は、以下のタイミングでHPLC-UVアッセイによって決定した。
(1)組成物を調製した直後(T0)
(2)調製から2カ月後で、組成物が室温で維持された状態
(3)調製から2カ月後で、組成物が45℃で維持された状態
【0306】
HPLC-UVアッセイの詳細は、上述の実施例1及び2のチオピリジノン定量化のものと同じである。
【0307】
結果を表5に示す。
【0308】
【表11】
【0309】
チオピリジノンの理論的な量(wt%): 組成物の調製中に使用されるチオピリジノンの量。
T0でのチオピリジノンの量(%): 組成物の調製直後のチオピリジノンの量(HPLCによって決定される)
RT 2Mでのチオピリジノンの量(%): 組成物の調製から2カ月後の、組成物が室温で維持されていた状態での、チオピリジノンの量(HPLCによって決定される)
45℃ 2Mでのチオピリジノンの量(%): 組成物の調製から2カ月後の、組成物が45℃で維持されていた状態での、チオピリジノンの量(HPLCによって決定される)
45℃ 2M/RT 2M(%): {組成物の調製から2カ月後の45℃でのチオピリジノンの量/組成物の調製から2カ月後の室温でのチオピリジノンの量}*100
【0310】
表5は、チオピリジノンが、W/O型エマルションの形態の実施例3による組成物中に含まれていた場合、組成物を45℃で2カ月間保存したときに、室温で2カ月間保存したときと比べて、チオピリジノンの量の減少が3%以内に抑えられたことを示す。
【外国語明細書】