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特開2022-98764食用油の品質管理装置および食用油の品質管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098764
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】食用油の品質管理装置および食用油の品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20220627BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20220627BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
G01N27/00 L
G01N27/06 A
G01N27/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212346
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】520287356
【氏名又は名称】株式会社GIANT
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】リー ジュンソク
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】磯部 孝
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AE30
2G060AF03
2G060AF08
2G060AF11
2G060AG08
2G060AG10
2G060FA01
2G060FA10
2G060HA02
2G060HC15
2G060HE03
2G060KA05
(57)【要約】
【課題】本発明は、食用油の品質評価にかかる新規な技術を提供することを、解決すべき課題とする。
【解決手段】
上記課題を解決するため、本発明は、食用油3の劣化指標を評価するための品質管理装置であって、食用油3を収容する油槽2に設置可能な通電部1を備え、通電部1は、熱対流する食用油3が通過可能な空隙15を挟んで配置されてなる平行平板電極11を備える。また、本発明は、食用油3の劣化指標を評価するための品質管理方法であって、熱対流する食用油3が通過可能な空隙15を挟んで配置されてなる平行平板電極11を用いて食用油3にかかる比誘電率およびコンダクタンスを含む群から選択されるパラメータを測定する工程を含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油の劣化指標を評価するための品質管理装置であって、
前記食用油を収容する油槽に設置可能な通電部を備え、
前記通電部は、熱対流する前記食用油が通過可能な空隙を挟んで配置されてなる平行平板電極を備える、食用油の品質管理装置。
【請求項2】
前記通電部は、複数の前記平行平板電極が隣接されてなるくし状の電極を備える、請求項1記載の食用油の品質管理装置。
【請求項3】
前記通電部は、前記油槽の外縁に引掛可能な取付具をさらに備える、請求項1または2記載の食用油の品質管理装置。
【請求項4】
前記劣化指標を評価可能な評価部をさらに備え、
前記通電部は、前記油槽に設けられた前記食用油の比誘電率およびコンダクタンスを含む群から選択されるパラメータを測定可能であり、
前記評価部は、前記パラメータに基づき前記劣化指標を評価可能である、請求項1~3の何れか記載の食用油の品質管理装置。
【請求項5】
前記油槽に設けられた前記食用油の温度を、前記通電部による前記パラメータの測定と同時に測定可能な温度測定部をさらに備え、
前記評価部は、前記パラメータの温度依存性を決定し、前記温度依存性に基づき前記劣化指標を評価可能である、請求項4記載の食用油の品質管理装置。
【請求項6】
前記劣化指標は、酸価、過酸化物価、カルボニル価、アニシジン価、極性化合物量、重合物量および色度を含む群から選択される、請求項4または5記載の食用油の品質管理装置。
【請求項7】
前記通電部は、前記食用油に交流電界を印加可能であり、
前記評価部は、前記劣化指標と、前記劣化指標と対応する所定の閾値と、に基づき前記油槽の前記食用油が劣化状態にあるか否かを判定可能であり、
前記通電部は、前記評価部により前記油槽の前記食用油が劣化状態にあると判定された場合、前記油槽に設けられた前記食用油に前記交流電界を印加する、請求項4~6の何れか記載の食用油の品質管理装置。
【請求項8】
前記通電部は、前記パラメータが極値をとる測定周波数を前記交流電界の周波数として前記食用油に前記交流電界を印加する、請求項7記載の食用油の品質管理装置。
【請求項9】
食用油の劣化指標を評価するための品質管理方法であって、熱対流する前記食用油が通過可能な空隙を挟んで配置されてなる平行平板電極を用いて前記食用油にかかる比誘電率およびコンダクタンスを含む群から選択されるパラメータを測定する工程を含む、食用油の品質管理方法。
【請求項10】
前記パラメータの測定と同時に前記食用油の温度を測定する工程と、前記パラメータの温度依存性に基づき前記劣化指標を評価する工程と、をさらに含む、請求項9記載の食用油の品質管理方法。
【請求項11】
前記劣化指標は、酸価、過酸化物価、カルボニル価、アニシジン価、極性化合物量、重合物量および色度を含む群から選択される、請求項9または10記載の食用油の品質管理方法。
【請求項12】
前記劣化指標と、前記劣化指標と対応する所定の閾値と、に基づき前記食用油が劣化状態にあるか否かを判定する工程と、前記食用油が劣化状態にあると判定された場合、前記食用油に交流電界を印加する工程と、をさらに含む、請求項9~11の何れか記載の食用油の品質管理方法。
【請求項13】
前記パラメータが極値をとる測定周波数を決定する工程と、前記測定周波数を周波数として前記食用油に前記交流電界を印加する工程と、をさらに含む、請求項12記載の食用油の品質管理方法。
【請求項14】
請求項12または13記載の方法により前記交流電界が印加された前記食用油のパラメータを測定する工程をさらに含む、食用油の品質管理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油の品質管理装置および食用油の品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物の調理に用いられる食用油は、熱酸化、熱重合、熱分解および加水分解などの反応にともない劣化し得るものであるため、日常的な品質管理が重要である。食用油の品質はフライ食品の品質に直結するため、フライ食品の安全性を担保する上でその品質管理が好適になされるべきである。
【0003】
食用油の品質管理のために用いられる劣化指標の1つは、食用油中の極性化合物量などである。食用油の劣化にともない生じる遊離脂肪酸などの劣化生成物は極性をもつため、食用油中の極性化合物量は食用油における劣化指標の1つとして用いられている場合がある。
【0004】
食用油中の極性化合物量に基づく劣化指標は、その評価・試験にかかるコストを低減させるために、非破壊的に評価されることが望ましい。食用油の品質評価にかかる非破壊的手法は、例として、食用油における静電容量、コンダクタンスおよび比誘電率などのパラメータにかかる電気測定である。
【0005】
特許文献1では、食用油にかかる電気的特性の評価技術の一例として、食用油の劣化程度評価方法であって、被験油の導電率の温度依存性の傾きと、食用油の劣化程度に関する指標(酸価、重量物量、色度、極性化合物量)との間に良好な相関関係があるという知見に基づくものであり、本発明の食用油の劣化程度の評価方法は、被験油の導電率の温度依存性の傾きから、酸価、重量物量、色度および極性化合物量のうち少なくとも1つ以上を算出する工程、または被験油の導電率の温度依存性の傾きが所定の値以上となった場合に、被験油が食用油として使用不可であると判断する工程を含む発明が開示されている。
【0006】
特許文献1記載の発明は、食用油の劣化程度に関する指標(酸価、重量物量、色度、極性化合物量)を全て(もしくは複数)捕捉して食用油の劣化程度を評価することができ、かつ食用油の使用時間、測定温度の条件を考慮することなく食用油の劣化程度の評価することができる。しかしながら、当該発明は、その装置構成が食用油に浸漬し食用油からの取り出しが容易でなく、食用油が収容された油槽における取り付けが容易ではないため、取り回しの観点において改善の余地がある。また、当該発明は、食用油を用いた揚げ物の調理、および、その食用油の評価の両立が容易ではなく、改善の余地がある。
【0007】
また、特許文献2では、油劣化検出装置であって、油の電気的特性を測定するセンサと、長手の一方の端部にセンサが側方を向く姿勢で有する本体部と、本体部に取りつけられた基部、センサよりも先端側に突出しかつ径方向に大きい弧状形状又は環状形状を有して配置された先端頭部、並びに、基部と先端頭部と連結する第1の連結柱部および第1の連結柱部よりも細幅の第2の連結柱部を含む連結部を有するセンサカバーと、を備えることを特徴とする発明が開示されている。ここで、センサカバーは、連結部がセンサの少なくとも一部を覆う第1の周方向位置にあることを特徴とする。
【0008】
特許文献2記載の発明は、センサが壊れにくくクリーニング作業が容易な油劣化検出装置を提供することで、表面に前回測定した他種の油が残着していることに起因し測定精度が落ちてしまうことや、電極表面をクリーニングが困難である、という課題に対処している。しかしながら、当該発明のような、棒状の検出装置を油槽に設置し食用油の評価を行う手法では、食用油にかかる電気測定が局所的なものに基づき電気測定の結果に変動やばらつきが生じ易い、
【0009】
特許文献2記載の発明は、例として、棒状の検出装置による食用油の撹拌が必要な場合がある。また、当該発明では、例えば、熱対流が生じている食用油であっても、棒状の検出装置を浸漬させるスポットによって、その測定結果にばらつきが生じることを考慮する必要がある、と把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006-226735号公報
【特許文献2】特開2019-191140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記事情を考慮して、本発明は、食用油の劣化指標を評価するための食用油の品質管理にかかる新規な技術を提供することを、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、食用油の劣化指標を評価するための品質管理装置であって、前記食用油を収容する油槽に設置可能な通電部を備え、前記通電部は、熱対流する前記食用油が通過可能な空隙を挟んで配置されてなる平行平板電極を備える。このような構成とすることで、本発明は、食用油の熱対流をともなう揚げ物の調理において、当該調理と、食用油の劣化指標にかかる評価と、を両立することができる。また、このような構成とすることで、本発明は、熱対流により上記空隙を介して流動する食用油にかかる電気測定を行い、非局所的に食用油の電気測定を実現することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記通電部は、複数の前記平行平板電極が隣接されてなるくし状の電極を備える。このような構成とすることで、本発明は、熱対流により複数の上記空隙のそれぞれを介して流動する食用油にかかる電気測定を行うことで、食用油の品質管理を高精度に実現することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記通電部は、前記油槽の外縁に引掛可能な取付具をさらに備える。このような構成とすることで、本発明は、上述の電気測定のための平行平板電極を備える通電部について、油槽に簡便に設置可能とすることができる。これにより、本発明は、食用油の劣化指標の評価にかかる調理者の作業負担を軽減することができ、揚げ物の調理と、食用油の劣化指標にかかる評価と、をより簡便に評価することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記劣化指標を評価可能な評価部をさらに備え、前記通電部は、前記油槽に設けられた前記食用油の比誘電率およびコンダクタンスを含む群から選択されるパラメータを測定可能であり、前記評価部は、前記パラメータに基づき前記劣化指標を評価可能である。このような構成とすることで、本発明は、食用油にかかる劣化指標の評価について、非局所的、高精度かつ非破壊的に実現することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記油槽に設けられた前記食用油の温度を、前記通電部による前記パラメータの測定と同時に測定可能な温度測定部をさらに備え、前記評価部は、前記パラメータの温度依存性を決定し、前記温度依存性に基づき前記劣化指標を評価可能である。このような構成とすることで、食用油にかかる劣化指標の評価について、温度情報にさらに基づき、より高精度に実現することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記劣化指標は、酸価、過酸化物価、カルボニル価、アニシジン価、極性化合物量、重合物量および色度を含む群から選択される。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記通電部は、前記食用油に交流電界を印加可能であり、前記評価部は、前記劣化指標と、前記劣化指標と対応する所定の閾値と、に基づき前記油槽の前記食用油が劣化状態にあるか否かを判定可能であり、前記通電部は、前記評価部により前記油槽の前記食用油が劣化状態にあると判定された場合、前記油槽に設けられた前記食用油に前記交流電界を印加する。このような構成とすることで、本発明は、食用油の劣化指標に応じて、食用油の長寿命化を実現するような品質管理を実現することができる。
【0019】
また、このような構成とすることで、本発明は、食用油と接する水分の疎水・親水の界面形成を抑制し、油中水滴当たりの体積を微小化し、油から食材への熱伝導を向上することができる。これにより、本発明は、揚げ物をする際の食用油中の食材から水分を放出することで生ずる突沸を軽減する効果と、突沸にともなる油ハネを軽減する効果と、オイルミストを削減する効果と、食材への食用油の吸収量を削減する効果と、水分の表面積拡大にともなう熱効率向上による揚げ時間の短縮をする効果と、を実現することができるため、食用油の寿命を伸ばすことができるため、食用油の好適な品質管理に寄与する。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記通電部は、前記パラメータが極値をとる測定周波数を前記交流電界の周波数として前記食用油に前記交流電界を印加する。このような構成とすることで、本発明は、食用油における電界処理の効果を向上することができる。
【0021】
上記課題を解決するため、本発明は、食用油の劣化指標を評価するための品質管理方法であって、熱対流する前記食用油が通過可能な空隙を挟んで配置されてなる平行平板電極を用いて前記食用油にかかる比誘電率およびコンダクタンスを含む群から選択されるパラメータを測定する工程を含む。このような構成とすることで、本発明は、熱対流により上記空隙を介して流動する食用油にかかる電気測定を実現することができるため、非局所的に食用油の電気的パラメータを測定することができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記パラメータの測定と同時に前記食用油の温度を測定する工程と、前記パラメータの温度依存性に基づき前記劣化指標を評価する工程と、をさらに含む。このような構成とすることで、食用油にかかる劣化指標の評価について、揚げ物の調理の過程においてデータとして収集され得る温度の情報にさらに基づき、より高精度に実現することができる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記劣化指標は、酸価、過酸化物価、カルボニル価、アニシジン価、極性化合物量、重合物量および色度を含む群から選択される。このような構成とすることで、本発明は、食用油にかかる電気測定結果との相関が認められる劣化指標に基づき、揚げ物の調理に用いられる食用油の劣化度合いを評価することができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記劣化指標と、前記劣化指標と対応する所定の閾値と、に基づき前記食用油が劣化状態にあるか否かを判定する工程と、前記食用油が劣化状態にあると判定された場合、前記食用油に前記交流電界を印加する工程と、をさらに含む。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記パラメータが極値をとる測定周波数を決定する工程と、前記測定周波数を周波数として前記食用油に前記交流電界を印加する工程と、をさらに含む。このような構成とすることで、本発明は、食用油における電界処理の効果を向上することができる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記交流電界が印加された前記食用油の前記パラメータを測定する工程をさらに含む。このような構成とすることで、本発明は、電界処理により長寿命化した食用油についても同様にその劣化指標の評価を実現することができるため、劣化指標の評価と、電界処理による食用油の改質と、を循環的に実現することができ、好適な品質管理に寄与する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、食用油の品質管理にかかる新規な技術の提供することができる。また、本発明によれば、熱対流により上記空隙を介して流動する食用油にかかる電気測定により、非破壊的、高精度かつ非局所的に、食用油の劣化指標の評価を実現することができる。
【0028】
また、本発明によれば、食用油の劣化状態に評価を、油槽に常設された装置(通電部に相当)により日常的にモニタリングすることが可能となり、揚げ物調理の現場において曖昧となってしまっていた食用油の交換タイミングの管理を容易とするようなソリューションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一実施形態にかかる食用油の品質管理装置の概要図である。
図2】一実施形態にかかる通電部の概要図である。
図3】一実施形態にかかる通電部の概要図である。
図4】一実施形態にかかる通電部の概要図である。
図5】一実施形態にかかる油槽に設置された通電部の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〈実施形態〉
本発明の一実施形態を以下に説明する。食用油の品質管理装置、および、食用油の品質管理方法にかかる一実施形態は、以下の実施形態の構成に限定されるものではなく、公知技術に基づき適宜、変形可能である。なお、食用油の品質管理方法の構成は、食用油の品質管理装置の構成と適宜、対応する。
【0031】
図1に例示するように、食用油3の電界処理装置は、加熱部5を有し食用油3を収容する油槽2に設置可能であり熱対流する食用油3が通過可能な空隙15を有する通電部1を備える。ここで、油槽2は、アースに接続される。また、ここで、加熱部5は、油槽2の側面および/または底面を加熱可能であり、油槽2における通電部1を含む側面領域10Aおよび油槽2における中央領域10Bの双方向で食用油3の熱対流を形成可能である。ここで、加熱部5は、例として、油槽2の外部に設けられ、電熱機構に基づいてよい。なお、油槽2における食用油3の熱対流は、好ましくは、通電部1を含む上述の側面領域10A、および、中央領域10Bの双方向(方向Xに相当)で行われる。なお、本発明の一実施形態を構成する各部・各装置は、ネットワークを介して相互接続され、測定データなどの情報の送受信や制御指示などが適宜、行われる。
【0032】
図2および図3に例示されるように、通電部1は、食用油3の熱対流方向(方向X)の直交方向(例として方向Z)に沿って空隙15を挟んで配置されてなる平行平板電極11(電極11aおよび電極11b)を備える。ここで、電極11aおよび電極11bは、それぞれ、正極および負極として扱われる。また、通電部1は、油槽2の側壁またはその近傍(側面領域10Aに相当)に設けられる。なお、平行平板電極11は、方向Zに代えて/加えて、方向Yに沿って空隙15を挟んで配置されてなる構成としてもよい。ここで、平行平板電極11の離間距離dは、例として2mmであり、油槽2の寸法と対応する範囲において制限はない。また、ここで、平行平板電極11にかかる電極面積A(図示せず)に、油槽2の寸法と対応する範囲において制限はない。
【0033】
通電部1は、複数の平行平板電極11が隣接されてなるくし状の電極(電極11aおよび電極11bに相当)を備えてよい。ここで、電極11aおよび電極11bにおいて、それぞれ、くしを呈する歯状部分の延伸方向は、方向Yおよび/または方向Zと対応する。なお、「方向Yおよび方向Z」とは、例として、斜め方向に相当し、方向Yおよび方向Zの合成方向に相当する。
【0034】
通電部1は、油槽2に設けられた食用油3の比誘電率(ε)およびコンダクタンス(G)を含む群から選択されるパラメータを測定可能である。当該パラメータは、食用油3にかかる電気測定により得られるパラメータ全般であり、例として、食用油3にかかる静電容量(C)であってよく、電気抵抗(R)であってよく、抵抗率であってよく、導電率(ρ)であってよい。通電部1は、当該パラメータについて、1以上の平行平板電極11のそれぞれにおいて測定された結果に基づく平均値および中央値などの統計的指標としてよい。また、通電部1は、当該パラメータについて、温度が均一な条件下で所定の時間間隔で測定された結果に基づく統計的指標としてよい。
【0035】
通電部1はパラメータの測定に際し、静電容量(C)やコンダクタンス(G)の周波数依存性があらわれない周波数帯の周波数を測定周波数として決定してよい。なお、通電部1が採用する測定周波数は、例として、50Hz~10kHzであってよく、1kHzであってよい。なお、通電部1は、比誘電率の測定に際し、例として、食用油3が収容されていない油槽2中の空気の静電容量(C)を測定しリファレンスとして採用してよく、新たに収容された食用油3の静電容量(C)を測定しリファレンスとして採用してよい。
【0036】
通電部1は、平行平板電極11の一部(例えば空隙などがあらわれていない箇所)を被覆する保護カバー12を備えてよい。平行平板電極11を左右から挟み込む2の保護カバー12は、締結部13を介してボルトなどにより締結されてよい。なお、平行平板電極11の電極材料およびコーティング材料に制限はなく、例として、導電性を有する銅材料である。なお、保護カバー12は、絶縁性を有する材料を含んでよい。
【0037】
通電部1は、油槽2を構成する外縁21に設置されることで食用油3内に浸漬されてよく、取付具14により把持されるなどして設置されることで食用油3内に浸漬されてよく、その設置態様に制限はない。また、油槽2内に設置され得る通電部1の数量に制限はない。
【0038】
図4および図5に例示されるように、通電部1は、外縁21に引掛可能な取付具14を備える。取付具14は、例として、トーションばね構造を有し、外縁21などの寸法に依らず、通電部1の設置を実現することができる。
【0039】
評価部6は、食用油3の劣化指標を評価可能である。また、評価部6は、通電部1により測定されたパラメータに基づき劣化指標を評価可能である。ここで、劣化指標は、酸価、過酸化物価、カルボニル価、アニシジン価、極性化合物量(TPM値に相当)、重合物量および色度を含む群から選択される指標である。ここで、当該指標とは、例として、基準油脂分析試験法などに基づき測定される指標と対応するものである。また、ここで、酸価とは、食用油3中の調理対象である食材を構成する水分が加水分解されて生じた遊離脂肪酸の量に基づく指標である。また、ここで、極性化合物量は、食用油3中の過酸化物が分解されて生じた低分子分解物の量や、食用油3中の過酸化物が熱重合して生じた重合物の量や、食用油3中の遊離脂肪酸の量などに基づく指標である。なお、本発明の一実施形態で採用される食用油3の劣化指標は、通電部1により測定されるパラメータと相関関係があるものであれば、制限はない。
【0040】
温度測定部7は、油槽2に設けられた食用油3の温度(T)を、通電部1によるパラメータの測定と同時に測定可能である。温度測定部7は、既知の手法に基づき温度を測定可能であり、例として、熱電対などを用いる。
【0041】
温度測定部7は、揚げ物の調理が行われている最中などの高温条件下や、揚げ物の調理が行われていない低温条件下での通電部1によるパラメータの測定と同時に温度(T)を測定可能である。なお、温度測定部7は、加熱部5と協調して温度帯をスイープさせながら、通電部1によるパラメータの測定と同時に温度(T)を測定可能である。ここで、複数の温度条件下での温度およびパラメータの測定は、所定時間内で行われることが望ましい。なお、温度測定部7にかかる機能は、通電部1により実現されてもよい。
【0042】
評価部6は、通電部1により測定されたパラメータの温度依存性を決定し、当該温度依存性に基づき劣化指標を評価可能である。ここで、温度依存性とは、例として、コンダクタンス(G)の温度依存性の傾き(dG/dT)を採用してよく、食用油の劣化指標との相関関係があるものであればコンダクタンス(G)に代えて他のパラメータの温度依存性の傾きを採用してよい。
【0043】
通電部1は、電極1aおよび電極1bを1極または2極として用いて、食用油3に交流電界を印加可能である。ここで、食用油3に印加される交流電界にかかる電圧は、例として、5~600Vの範囲である。また、ここで、食用油3に印加される交流電界の周波数に制限はなく、25kHz~150kHzの範囲である。また、ここで、食用油3に印加される交流電界の電流は、例として、500mA以下の範囲である。また、ここで、食用油3に印加される交流電界の電界強度は、例として、10~10V/mの範囲である。
【0044】
通電部1は、当該周波数依存性において上述のパラメータが極値をとるような測定周波数を、交流電界の周波数として適宜、採用してよい。また、通電部1は、当該周波数依存性において静電量量(C)が最大となるような測定周波数を、交流電界の周波数として適宜、採用してよい。また、通電部1は、当該周波数依存性においてコンダクタンス(G)が最小となるような測定周波数を、交流電界の周波数として適宜、採用してよい。
【0045】
このような構成とすることで、通電部1は、食用油3におけるキャビテーション振動を形成可能であり、キャビテーション振動を形成することで食用油3における水分を細分化し乳化し、食用油3の長寿命化に寄与する。ここで、対象となる食用油3は、例として、その極性化合物量が1~24%の範囲にあるような劣化した食用油3であり、劣化指標に基づきその判別が可能であるような食用油3である。
【0046】
評価部6は、劣化指標と、劣化指標と対応する所定の閾値と、に基づき油槽2の食用油3が劣化状態にあるか否かを判定可能である。ここで、評価部6は、例として、極性化合物量と対応する劣化指標について測定・決定されたものに基づき、予め定められた所定の閾値を超過する場合、食用油3が劣化状態にある、と判定する。ここで、所定の閾値は、例として、後述の制御部8を構成するデータベースに参照可能な態様で格納されていてよい。
【0047】
通電部1は、評価部6により油槽2の食用油3が劣化状態にあると判定された場合、油槽2に設けられた食用油3に交流電界を印加する。このような構成とすることで、本発明は、劣化状態にある食用油3を新たなものに交換する手間を省き、電界処理により食用油3の長寿命化を行い、揚げ物の調理にかかる経済的コストを削減することができる。
【0048】
制御部8は、通電部1を制御可能であり評価部6と通信可能である。また、制御部8は、例として、当該パラメータの測定のためのLCRメータを備え上述の電気的なパラメータの測定に寄与してよく、熱的なパラメータの測定に寄与してよい。ここで、評価部6は、少なくともプロセッサなどの演算装置と、RAMなどの主記憶装置と、データベースを構成するデータストレージである補助記憶装置と、ネットワークインタフェースである通信装置と、がバスインタフェースを介して接続されるような、既知のコンピュータ装置である。ここで、評価部6による食用油3の劣化指標の評価は、エッジベースで行われてよく、クラウドベースで行われてよく、そのデータ格納場所に制限はない。なお、本発明の一実施形態において得られる測定データや劣化指標は、ネットワークを介して適宜、外部サーバなどへ送信可能な構成であってよい。
【0049】
本発明の一実施形態において、食用油3の劣化指標にかかる電気測定および評価は、特開2006-226735号公報などの公知技術にかかる構成の一部を適宜、採用して実現されてよい。
【符号の説明】
【0050】
1 :通電部
2 :油槽
3 :食用油
5 :加熱部
6 :評価部
7 :温度測定部
8 :制御部
11 :平行平板電極
12 :保護カバー
13 :締結部
14 :取付具
15 :空隙

図1
図2
図3
図4
図5