(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098811
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】埋設型枠の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/02 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
E02D29/02 309
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212416
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 均
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝
(72)【発明者】
【氏名】沖田 佳隆
(72)【発明者】
【氏名】可児 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】守屋 健一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 英紀
【テーマコード(参考)】
2D048
【Fターム(参考)】
2D048AA92
(57)【要約】
【課題】埋設型枠の施工精度を向上するとともに、高所作業を低減し、施工の省力化を図る。
【解決手段】上端部が一体に跨設された吊枠3に支持されるとともに、下端部が位置決め用定規4に支持された複数の縦鋼材2、2…を、間隔を空けて直立させた状態で、前記縦鋼材2、2…に複数の埋設型枠1、1…を固定した後、前記吊枠3を吊持して前記縦鋼材2、2…及び埋設型枠1、1…を所定の施工位置に設置する。前記吊枠3によって前記縦鋼材2、2…の上端部を支持した状態で、中詰めコンクリートを打設する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部が一体に跨設された吊枠に支持されるとともに、下端部が位置決め用定規に支持された複数の縦鋼材を、間隔を空けて直立させた状態で、前記縦鋼材に複数の埋設型枠を固定した後、前記吊枠を吊持して前記縦鋼材及び埋設型枠を所定の施工位置に設置することを特徴とする埋設型枠の施工方法。
【請求項2】
前記吊枠によって前記縦鋼材の上端部を支持した状態で、中詰めコンクリートを打設する請求項1記載の埋設型枠の施工方法。
【請求項3】
前記吊枠に、前記縦鋼材の上端部の支持及び解除が可能な支持手段が、前記縦鋼材の配置間隔に合わせて複数設けられている請求項1、2いずれかに記載の埋設型枠の施工方法。
【請求項4】
前記位置決め用定規に、前記縦鋼材の下端部が嵌合可能な嵌合部が、前記縦鋼材の配置間隔に合わせて複数設けられている請求項1~3いずれかに記載の埋設型枠の施工方法。
【請求項5】
前記埋設型枠に、前記縦鋼材に固定するための埋込ボルト、埋込インサート及び埋込鋼材のうち少なくとも1つが設けられている請求項1~4いずれかに記載の埋設型枠の施工方法。
【請求項6】
前記縦鋼材の上端部に、前記縦鋼材から突出する連結金具を固設しておき、前記連結金具の前記縦鋼材から突出した部分を、上部に設置される縦鋼材の下端部に嵌合することにより前記縦鋼材を連結する請求項1~5いずれかに記載の埋設型枠の施工方法。
【請求項7】
前記連結金具の前記縦鋼材から突出した部分にツメ部が形成されるとともに、この連結金具に嵌合する縦鋼材の下端部に、前記ツメ部が嵌合可能な凹部が形成されている請求項6記載の埋設型枠の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型のプレキャストパネルからなる埋設型枠を施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート構造物の構築において、現場における鉄筋の組み立て作業や型枠の設置・撤去作業を大幅に軽減したプレキャストパネルからなる埋設型枠を用いた施工方法が知られている。前記埋設型枠は、コンクリート打設後も取り外すことなく構造物の一部として使用される型枠のことであり、高強度モルタルやコンクリート等で形成されている。
【0003】
前記埋設型枠は、通常、大型のプレキャストパネルを、クレーン等の重機で吊り下げて設置していたが、重機を不要とし、省力化を図ることなどを目的として、人力で運搬が可能な小型のプレキャストパネルが多用されつつある。
【0004】
従来、小型のプレキャストパネルからなる埋設型枠の施工は、人力で埋設型枠を所定の施工位置まで運搬・設置し、下記特許文献1などに開示されるセパレーターをパネル内面に設置するとともに、その先端を内側に予め立設した支柱アングルに固定する方法がとられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、小型のプレキャストパネルからなる埋設型枠は、専用の連結金具やセパレーターのみで固定されているため、中詰めコンクリートの打設によって埋設型枠がずれたり、目違いが生じるおそれがあった。
【0007】
また、従来の施工では、所定の施工位置において埋設型枠を1つ1つ連結金具やセパレーターを用いて固定しており、地組みができないため、施工場所が高所の場合は、高所作業が必要であった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、埋設型枠の施工精度を向上するとともに、高所作業を低減し、施工の省力化を図った埋設型枠の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、上端部が一体に跨設された吊枠に支持されるとともに、下端部が位置決め用定規に支持された複数の縦鋼材を、間隔を空けて直立させた状態で、前記縦鋼材に複数の埋設型枠を固定した後、前記吊枠を吊持して前記縦鋼材及び埋設型枠を所定の施工位置に設置することを特徴とする埋設型枠の施工方法が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、先ずはじめに、複数の縦鋼材を間隔を空けて直立させた状態で、この直立した縦鋼材に複数の埋設型枠を固定する。このとき、複数の縦鋼材は、上端部が一体に固設された吊枠に支持されるとともに、下端部が位置決め用定規に支持されている。その後、前記吊枠を吊持して前記縦鋼材及び埋設型枠を所定の施工位置に設置する。埋設型枠の設置が完了したら、内部に中詰めコンクリートを打設する。
【0011】
このように、本施工方法では、予め、複数の埋設型枠を縦鋼材に固定することによって埋設型枠の組立体が地組みできるため、高所で埋設型枠を1つ1つ固定する高所作業が低減でき、施工の省力化が図れるようになる。また、前記縦鋼材を直立させた状態で埋設型枠を固定しているため、埋設型枠の設置状態とほぼ同じ状態で組立てができ、埋設型枠の施工精度が向上するとともに、中詰めコンクリートを打設した後も、目違いやパネルのずれなどが防止できる。更に、前記埋設型枠を直立させた状態で組み立てているため、上下方向に隣接する埋設型枠同士の隙間を極めて小さくすることができ、中詰めコンクリートを打設したときのコンクリートの流出が確実に防止できる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記吊枠によって前記縦鋼材の上端部を支持した状態で、中詰めコンクリートを打設する請求項1記載の埋設型枠の施工方法が提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明では、前記吊枠によって縦鋼材の上端部を支持した状態で、中詰めコンクリートを打設することにより、前記吊枠を中詰めコンクリート打設時の補強材として利用でき、中詰めコンクリートの打設による埋設型枠のずれや目違いをより確実に防止することができる。
【0014】
請求項3に係る本発明として、前記吊枠に、前記縦鋼材の上端部の支持及び解除が可能な支持手段が、前記縦鋼材の配置間隔に合わせて複数設けられている請求項1、2いずれかに記載の埋設型枠の施工方法が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の発明では、前記吊枠に自動フックや立吊クランプ等の支持手段を、縦鋼材の配置間隔に合わせて複数設けておき、この支持手段によって前記縦鋼材の上端部を支持できるようにしている。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記位置決め用定規に、前記縦鋼材の下端部が嵌合可能な嵌合部が、前記縦鋼材の配置間隔に合わせて複数設けられている請求項1~3いずれかに記載の埋設型枠の施工方法が提供される。
【0017】
上記請求項4記載の発明では、前記位置決め用定規に、前記縦鋼材の下端部が嵌合可能な嵌合部を、縦鋼材の配置間隔に合わせて複数設けておき、縦鋼材の下端部を前記嵌合部に嵌合させるだけで、縦鋼材を簡単に直立させることができるようにしている。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記埋設型枠に、前記縦鋼材に固定するための埋込ボルト、埋込インサート及び埋込鋼材のうち少なくとも1つが設けられている請求項1~4いずれかに記載の埋設型枠の施工方法が提供される。
【0019】
上記請求項5記載の発明では、埋設型枠を縦鋼材に固定するための手段として、埋設型枠に埋込ボルト、埋込インサート及び埋込鋼材のうち少なくとも1つを設けている。
【0020】
請求項6に係る本発明として、前記縦鋼材の上端部に、前記縦鋼材から突出する連結金具を固設しておき、前記連結金具の前記縦鋼材から突出した部分を、上部に設置される縦鋼材の下端部に嵌合することにより前記縦鋼材を連結する請求項1~5いずれかに記載の埋設型枠の施工方法が提供される。
【0021】
上記請求項6記載の発明では、縦鋼材を上下方向に連結する連結構造として、縦鋼材の上端部に、該縦鋼材から突出する連結金具を固設しておき、この連結金具の縦鋼材から突出した部分を、上部に設置される縦鋼材の下端部に嵌合するようにしている。
【0022】
請求項7に係る本発明として、前記連結金具の前記縦鋼材から突出した部分にツメ部が形成されるとともに、この連結金具に嵌合する縦鋼材の下端部に、前記ツメ部が嵌合可能な凹部が形成されている請求項6記載の埋設型枠の施工方法が提供される。
【0023】
上記請求項7記載の発明では、前記縦鋼材を上下方向に連結するための連結構造において、連結強度を高め、連結後のずれを防止するため、前記連結金具の縦鋼材から突出した部分にツメ部を形成するとともに、この連結金具に嵌合する縦鋼材の下端部に、前記ツメ部が嵌合可能な凹部を形成している。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、埋設型枠の施工精度が向上できるとともに、高所作業が低減でき、施工の省力化が図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る施工方法の施工手順を示す正面図である。
【
図3】縦鋼材2と吊枠3との支持構造を示す、縦断面図である。
【
図5】縦鋼材2と位置決め用定規4との支持構造を示す、(A)は上面図、(B)は正面図である。
【
図7】埋設型枠1と縦鋼材2との固定構造を示す断面図(
図6のVII-VII線矢視図)である。
【
図8】変形例に係る埋設型枠1と縦鋼材2との固定構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
本発明に係る埋設型枠1の施工方法は、
図1(A)に示されるように、埋設型枠1の設置位置とは異なる地上などの場所で、上端部が一体に跨設された吊枠3に支持されるとともに、下端部が位置決め用定規4に支持された複数の縦鋼材2、2…を、間隔を空けて直立させた状態で、
図1(B)に示されるように、前記縦鋼材2、2…に複数の埋設型枠1、1…を固定する。その後、
図1(C)に示されるように、クレーンなどによって前記吊枠3を吊持して前記縦鋼材2、2…及び埋設型枠1、1…を設置済みのコンクリート構造物Sの上部に設置する(
図1(D))。しかる後、埋設型枠1、1…内部に中詰めコンクリートを現場打ちする。
【0028】
このように、本施工方法では、予め、複数の埋設型枠1、1…を縦鋼材2、2…に固定することによって埋設型枠の組立体を地組みできるため、従来のように高所の施工位置で埋設型枠を1つ1つ固定するなどの高所作業を低減することができ、施工の省力化及び安全性の向上が図れるようになる。
【0029】
また、前記縦鋼材2を直立させた状態で埋設型枠1を固定しているため、埋設型枠1の設置状態とほぼ同じ状態で組み立てることができ、埋設型枠1の施工精度が向上できるとともに、中詰めコンクリートを打設した後も、目違いやパネルのずれなどが防止できる。
【0030】
更に、埋設型枠1を直立させた状態で組み立てているため、上下方向に隣接する埋設型枠1、1同士の隙間を極めて小さく抑えることができ、中詰めコンクリートを打設したときのコンクリートの流出が確実に防止できるようになる。
【0031】
コンクリート構造物Sが橋脚構造などの柱構造の場合は、前記縦鋼材2を柱構造の外殻に沿って直立させ、埋設型枠1を組み立てることができる。一方、擁壁構造などの壁構造の場合は、背面に転倒防止用の支柱などの治具を仮設した上で、埋設型枠1を組み立てるのがよい。
【0032】
前記埋設型枠1…と縦鋼材2…との組立体を設置済みのコンクリート構造物Sの上部に設置した後、埋設型枠1…内部に中詰めコンクリートを打設する前に、中詰めコンクリート打設時における前記組立体のずれなどを防止するため、前記組立体を、コンクリート構造物Sの内部に鉛直方向に立設した主鋼材T(
図1(D)参照。)などに、セパレーターなどを用いて連結してもよい。このとき、本施工方法では、複数の埋設型枠1…が縦鋼材2…によって相互に連結されているため、各埋設型枠1をセパレーターで主鋼材Tに連結する必要はない。したがって、設置するセパレーターの数が少なくて済み、セパレーターの取付作業が大幅に削減できる。前記主鋼材Tは、C形鋼、溝形鋼、H形鋼、L形鋼、T形鋼、角鋼管等の鋼材である。
【0033】
以下、各構成部材について詳細に説明すると、
前記埋設型枠1は、コンクリート構造物Sの外殻を構成するプレキャストコンクリート製のパネルであり、人力で持ち運びできる程度に小型化されている。人力で持ち運び可能な最大重量は、およそ20kg前後であり、このときの外形寸法としては、例えば900×300×35mm程度である。埋設型枠1の配置は、
図1に示されるように、幅方向に長い横長に配置するとともに、上下段で幅方向に半分ずつずらして配置するのが好ましい。なお、埋設型枠1の配置は、図示例の配置に限定されるものではなく、公知の配置構造を制限なく採用することができる。
【0034】
前記埋設型枠1の背面側には、幅方向に沿う複数のせん断補強筋等を上下方向に所定の間隔で配置してもよい。
【0035】
前記縦鋼材2は、C形鋼、溝形鋼、H形鋼、L形鋼、角鋼管などの上下方向に長い鋼材であり、上下方向に沿うとともに、幅方向に間隔を空けて複数配置されている。この縦鋼材2に沿って前記複数の埋設型枠1、1…が固定されることにより、前記複数の埋設型枠1、1…が一体化された埋設型枠の組立体が構築できる。前記縦鋼材2は、好ましくは図示例のように、各埋設型枠1に2本の割合で配置されており、幅方向に隣り合う埋設型枠1、1間の上下方向に沿う継目と、その上下段側に隣接する幅方向に隣り合う埋設型枠1、1間の上下方向に沿う継目との中間位置、好ましくはこれらの継目間の中央部にそれぞれ配置されている。
【0036】
前記縦鋼材2は、埋設型枠1の設置高さとほぼ同じ長さに形成されている。前記複数の埋設型枠1、1…を組み立てたときの最大高さは、作業員が脚立等を用いることなく、地上に立った状態で組立て作業ができるように、1.2~1.5m程度とするのがよい。このとき、埋設型枠1の高さ方向の設置段数としては、3~6段程度とするのがよい。
【0037】
前記縦鋼材2の上端部には、
図2及び
図3に示されるように、前記縦鋼材2から突出する連結金具5が固設されている。この連結金具5の縦鋼材2から突出した部分を、上部に設置される縦鋼材2の下端部に嵌合することにより、縦鋼材2、2が上下方向に連結できるようになっている。
【0038】
前記連結金具5は、例えば、C形鋼からなる縦鋼材2に内接する一回り小さなサイズのC形鋼又は溝形鋼などからなり、部材長手方向の略半分の位置まで縦鋼材2の上端部に挿入され、残りの略半分が縦鋼材2から突出した状態で、縦鋼材2に溶接されている。また、前記連結金具5には、吊枠3に備えられたフックなどが掛止する開孔5aが形成されている。
【0039】
次いで、前記縦鋼材2の上端部を支持する吊枠3について説明すると、前記吊枠3は、
図1に示されるように、全ての縦鋼材2、2…の上端部に一体に跨設される枠材であり、
図3に示されるように、その上面には、クレーンで吊り上げるときにクレーンのフックが掛止する環状の掛止部3aが必要な箇所に備えられている。
【0040】
また、前記吊枠3には、
図3に示されるように、前記縦鋼材2の上端部(連結金具5の上端部)の支持及び解除が可能なフック材又はクランプ材などからなる支持手段6が、前記縦鋼材2の配置間隔に合わせて複数設けられている。前記支持手段6としては、例えば、フックの支持及び解除が無線で遠隔操作可能な電動式の自動フックを用いることができる。この自動フックを用いることにより、埋設型枠1を高所に設置したときでも、地上からの遠隔操作によって吊枠3が縦鋼材2を支持した状態を簡単に解除することができ、より一層高所作業を低減することができる。前記支持手段6としては、前記自動フックの他に、立吊クランプを用いてもよいし、ピンやボルト・ナットにより掛止する手段などとしてもよい。前記支持手段6は、全ての縦鋼材2、2…に対応する位置にそれぞれ設けるのが好ましいが、数本の縦鋼材2…に対して1箇所の割合で設けてもよい。
【0041】
前記吊枠3には、
図4に示されるように、前記縦鋼材2の上端部(連結金具5の上端部)が嵌合可能な上部嵌合部7を設けることができる。前記上部嵌合部7は、前記縦鋼材2が嵌合可能な構造であればどのような形態でもよく、例えば、
図4に示されるように、前記支持手段6による支持部以外の三方をそれぞれ、下方に突出させたL形鋼の一辺で囲んだ部分とすることができる。そして、この上部嵌合部7に縦鋼材2の上端部(連結金具5の上端部)を嵌合させることにより、縦鋼材2の上端部の位置合わせが容易にできるようになる。
【0042】
前記吊枠3は、中詰めコンクリートの打設が完了するまで、縦鋼材2…の上端部に残置しておくのが望ましい。即ち、吊枠3によって縦鋼材2…の上端部を支持した状態で、中詰めコンクリートを打設するのがよい。これによって、吊枠3を中詰めコンクリート打設時の補強材として利用することができ、中詰めコンクリートの打設による埋設型枠1のずれや目違いをより確実に防止することができる。
【0043】
前記縦鋼材2の下端部を支持する位置決め用定規4は、
図1に示されるように、全ての縦鋼材2、2…の下端部に一体に跨設されたH形鋼などからなる部材であり、その上面に、
図5に示されるように、縦鋼材2の下端部が嵌合可能な下部嵌合部8が、前記縦鋼材2の配置間隔に合わせて複数設けられている。
【0044】
前記下部嵌合部8は、前記縦鋼材2の下端部が嵌合可能な構造であればどのような形態でもよく、例えば、
図5に示されるように、縦鋼材2のうち、前記埋設型枠1の設置面以外の三方をそれぞれ、上方に突出させたL形鋼の一辺で囲んだ部分とすることができる。この下部嵌合部8に縦鋼材2の下端部を嵌合させることにより、縦鋼材2の下端部の位置合わせが容易にできるようになる。
【0045】
前記下部嵌合部8に嵌合した縦鋼材2が位置決め用定規4の上面に立設されるとともに、埋設型枠1が同じ位置決め用定規4の上面に載置された状態で、前記縦鋼材2に固設されるため、縦鋼材2の下端縁と組み立てられた複数の埋設型枠1…の下端縁とがほぼ一致した平面に配置されるため、埋設型枠1、1…の施工精度がより確実に向上する。
【0046】
前記埋設型枠1を縦鋼材2に固定する手段としては、
図6及び
図7に示されるように、埋設型枠1の裏面にボルト部が突出した状態で埋込ボルト9を設けておくとともに、縦鋼材2に前記埋込ボルト9の突出したボルト部が挿通可能な開孔10を設けておき、前記埋込ボルト9のボルト部を開孔10に挿通し、ナット11で固定する。
【0047】
また、図示しないが、埋設型枠1に埋込インサートを設けておき、この埋込インサートにボルトを挿入して埋設型枠1を縦鋼材2に固定することとしてもよい。
【0048】
更に、他の固定方法として、
図8に示されるように、埋設型枠1の裏面に、L形鋼などの埋込鋼材12の一辺を、縦鋼材2が嵌合可能な離隔幅で左右に離隔して突出させた縦鋼材嵌合部を形成するとともに、突出した埋込鋼材12の先端部にそれぞれ、内側に突出する鉤形の係止部13を設けておき、突出した埋込鋼材12、12間に縦鋼材2を嵌合させることにより、前記係止部13によって係止した状態を保持できる構造としてもよい。この構造によって、縦鋼材嵌合部に縦鋼材2を嵌合させるだけで、ワンタッチ式に埋設型枠1が縦鋼材2に固定できるようになる。なお、
図7に示される埋込ボルト9や前述の埋込インサートによって固定した上で、前記埋込鋼材12によって固定してもよいし、前記埋込鋼材12と縦鋼材2とを、図示しないボルト・ナットやピンなどによって固定してもよい。
【0049】
ところで、前記縦鋼材2、2を前記連結金具5によって上下方向に連結する際、
図9に示されるように、前記連結金具5の縦鋼材2から突出した部分にツメ部14を形成するとともに、この連結金具5に嵌合する縦鋼材2の下端部に、前記ツメ部14が嵌合可能な凹部15を形成することにより、前記ツメ部14が凹部15に係止して上下の縦鋼材2、2の連結強度を高めるとともに、連結後のずれを確実に防止できるようにしてもよい。
【0050】
本発明に係る施工方法が適用可能な構造物は、橋脚構造などの柱構造や、擁壁構造、護岸構造、岸壁構造などの壁構造であり、埋設型枠1を平面方向に複数並べて配置する幅広い構造物を対象とすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…埋設型枠、2…縦鋼材、3…吊枠、4…位置決め用定規、5…連結金具、6…支持手段、7…上部嵌合部、8…下部嵌合部、9…埋込ボルト、10…開孔、11…ナット、12…埋込鋼材、13…係止部、14…ツメ部、15…凹部