(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098822
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】エアセクションにおけるトロリ線短絡検出装置および検出方法
(51)【国際特許分類】
B60L 5/24 20060101AFI20220627BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20220627BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20220627BHJP
G01M 17/08 20060101ALI20220627BHJP
G01N 27/72 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B60L5/24 Z
B60L3/00 N
G01M99/00 Z
G01M17/08
G01N27/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212435
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】増井 裕太
(72)【発明者】
【氏名】早坂 高雅
【テーマコード(参考)】
2G024
2G053
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
2G024AD21
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA18
2G024CA30
2G024DA21
2G024FA01
2G053BA13
2G053BA14
2G053CA05
2G053CA06
2G053CB24
2G053DA01
5H105AA11
5H105AA16
5H105BA02
5H105BB01
5H105CC02
5H105CC12
5H105CC20
5H105DD04
5H105DD12
5H105EE02
5H105EE13
5H105GG03
5H105GG13
5H125AA05
5H125CD00
5H125EE51
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】エアセクションにおけるパンタグラフを経由したトロリ線の短絡を検出する。
【解決手段】パンタグラフの舟体20は、トロリ線12A、12Bのいずれもと接触することにより、トロリ線12A、12Bを短絡する状態となることがある。舟体20は、すり板21と、その下面に一体に設けられて補強するアルミニウム等により構成された舟体本体22とを有し、枠組23によって、図示しない電気鉄道車両の屋根に支持される。前記舟体本体22は中空状に構成され、その内部には、ホール素子、あるいは、磁気抵抗素子により構成された磁気センサ24が設けられ、その出力は、図示しない推定演算部に供給されて電流経路の推定データに変換される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源供給系に接続された第1のトロリ線から電源供給可能な給電区間と、該第1の電源供給系とは異なる第2の電源供給系に接続された第2のトロリ線から電源供給可能な給電区間における、前記第1の電源供給系に接続された第1のトロリ線と、前記第2の電源供給系に接続された第2のトロリ線とが所定の距離にわたって互いに電気的に絶縁された状態で並行して配置されたエアセクションに在線する鉄道車両のパンタグラフの舟体の短絡を検出する装置であって、
前記舟体は、
前記エアセクションの幅方向に沿って設けられ、上面が、前記第1のトロリ線または第2のトロリ線と接触することにより電気的に接続可能なすり板と、
該すり板の前記第1のトロリ線または第2のトロリ線と接触可能な面と反対の面にすり板およびこれと一体の舟体本体に対して電気的に絶縁して設けられて、前記すり板を流れる電流によって生じる磁界を検出する磁気センサとを有し、さらに、
該磁気センサが検出した磁界から前記すり板を流れる電流の経路を推定する推定演算部を有するエアセクションにおけるトロリ線短絡検出装置。
【請求項2】
前記磁気センサは、前記すり板の前記第1のトロリ線および第2のトロリ線との接触範囲に複数設けられた、
請求項1に記載のエアセクションにおけるトロリ線短絡検出装置。
【請求項3】
前記磁気センサは、前記すり板の下面に設けられた舟体本体の内部に設けられた、請求項1または2のいずれか1項に記載のエアセクションにおけるトロリ線短絡検出装置。
【請求項4】
前記磁気センサは、ホール素子である、請求項1~3のいずれか1項に記載のエアセクションにおけるトロリ線短絡検出装置。
【請求項5】
前記磁気センサは、磁気抵抗素子である、請求項1~3のいずれか1項に記載のエアセクションにおけるトロリ線短絡検出装置。
【請求項6】
第1の電源供給系に接続された第1のトロリ線から電源供給可能な給電区間と、該第1の電源供給系とは異なる第2の電源供給系に接続された第2のトロリ線から電源供給可能な給電区間とにおける、前記第1の電源供給系に接続された第1のトロリ線と、前記第2の電源供給系に接続された第2のトロリ線とが所定の距離にわたって互いに電気的に絶縁された状態で並行して配置されたエアセクションに在線する鉄道車両のパンタグラフの舟体の短絡を検出する方法であって、
前記エアセクションの幅方向に沿って設けられ、上面が前記第1のトロリ線または第2のトロリ線と接触可能な前記舟体のすり板を流れる電流によって生じる磁界を磁気センサにより検出する工程と、
該磁気センサが検出した磁界から前記すり板を流れる電流の経路を推定する工程と、
を有するエアセクションにおけるトロリ線短絡検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアセクションにおけるトロリ線短絡検出装置および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所から電気鉄道車両へ電源を供給する一の給電区間と、前記一の給電区間に隣接する他の給電区間との間には、前記一の給電区間に接続されたトロリ線と、他の給電区間に接続されたトロリ線とを並行して配置したエアセクションと呼ばれる給電区間が設けられる。
【0003】
図8は、前記エアセクションにおける電気鉄道車両のパンタグラフ(より具体的にはその舟体)とトロリ線との位置関係の例を示す。
符号10は変電所で、この変電所10は、第1の電源供給系(より具体的にはそのき電線)11Aと第2の電源供給系11Bとに各々電源(例えば直流1.5kV)を供給している。前記第1の電源供給系11Aの端部には、エアセクションを構成するトロリ線12Aが接続され、前記第2の電源供給系11Bの端部には、エアセクションを構成するトロリ線12Bが接続されている。各トロリ線12A、12Bは、一端から他端へ向かって、地上高が高くなるように傾斜して敷設されている。
【0004】
前記第1、第2の電源供給系11A、11Bには、一台の電気鉄道車両13が図中左から右へ向かって進行しており、(a)(b)(c)(d)(e)は、前記電気鉄道車両13が進行に伴って移動する各地点の位置(
図8の左右方向への座標)を示している。
【0005】
前記エアセクションを電気鉄道車両13が進行すると、
図8の(a)(b)(c)(d)(e)の各位置における、トロリ線12A、12Bと電気鉄道車両13のパンタグラフ(舟体)14との位置関係は、
図9のように変化する。
(a)の位置では、進行方向前方側のトロリ線12Bの先端が図中左側へ徐々に高くなっているため、第1の電源供給系11Aのトロリ線12Aが舟体14に接触し、第2の電源供給系11Bのトロリ線12Bが舟体14から離れた位置にある。ここで、トロリ線12Bと舟体14との間には、アークが発生しない程度に充分な距離があるものとする。
(b)の位置では、トロリ線12Bが(a)の位置より低いため、舟体14に接近し、アークが発生して放電することがある。なおトロリ線12Aは、低い位置にあって、舟体14に接触している。
【0006】
(c)の位置では、トロリ線12A、12Bがほぼ同じ高さの低い位置にあるので、トロリ線12A、12Bのいずれもが舟体14に接触している。
(d)の位置では、トロリ線12Aが(c)の位置より高いため、舟体14から僅かに離れていることから、アークが発生して放電することがある。なおトロリ線12Bは舟体14に接触している。
(e)の位置では、トロリ線12Aがさらに高い位置にあるため、トロリ線12Aと舟体14との間に十分な距離があり、アークが発生することはない。
【0007】
図8の例の送電系では、一の変電所10から複数の電源供給系へ送電していたが、実際の送電系では、特定の変電所への負荷の集中を防止し、あるいは、電気鉄道車両13への継続的な給電を担保する目的で、複数の変電所から複数の電源供給系へ送電している。
図10は、第1~第3の変電所10A、10B、10Cから、第1および第2の電源供給系11A、11Bへ電源供給する場合の電源供給系統を示している。
ここで、第1の電源供給系11Aと、第2の電源供給系11BとのエアセクションAS内となる(f)の位置に電気鉄道車両13Aが停止すると、その舟体14との接触あるいはアーク放電によって、並行するトロリ線12A、12Bは、これら並行に敷設された給電区間となるエアセクションASにおいて、舟体14を介して短絡状態となることがある。
【0008】
さらに、この短絡状態で第2の電源供給系11Bを第2の電気鉄道車両13Bが力行していると、
図10に矢印で示すように、この第2の鉄道車両13Bへの給電のため、前記エアセクションASを経由して、第1の電源供給系11A~第2の電源供給系11Bへ継続して過大な電流が流れ、そのジュール熱によって第1の電源供給系11A、第2の電源供給系11Bのき電線やトロリ線が溶断に到ることがあり得る。
【0009】
この短絡の原因となるアークの発生を検出する技術に関連して、特許文献1、2が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5646306号公報
【特許文献2】特許第5801178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1、2には、単に舟体とトロリ線との間に発生するアークを検出する技術が開示されているに過ぎない。
したがって、エアセクションにおけるトロリ線と舟体とを経由する短絡そのものを確実に検出する技術は未だ提案されていなかった。
【0012】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、エアセクションにおける短絡を判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本願にかかるエアセクションにおけるトロリ線短絡検出装置は、第1の電源供給系に接続された第1のトロリ線から電源供給可能な給電区間と、該第1の電源供給系とは異なる第2の電源供給系に接続された第2のトロリ線から電源供給可能な給電区間における、前記第1の電源供給系に接続された第1のトロリ線と、前記第2の電源供給系に接続された第2のトロリ線とが所定の距離にわたって互いに電気的に絶縁された状態で並行して配置されたエアセクションに在線する鉄道車両のパンタグラフの舟体の短絡を検出する装置であって、前記舟体は、前記エアセクションの幅方向に沿って設けられ、上面が、前記第1のトロリ線または第2のトロリ線と接触することにより電気的に接続可能なすり板と、該すり板の前記第1のトロリ線または第2のトロリ線と接触可能な面と反対の面にすり板およびこれと一体の舟体本体に対して電気的に絶縁して設けられて、前記すり板を流れる電流によって生じる磁界を検出する磁気センサとを有し、該磁気センサが検出した磁界から前記すり板を流れる電流の経路を推定する推定演算部を有することを特徴とする。
【0014】
また、本願にかかるエアセクションにおけるトロリ線短絡検出方法は、第1の電源供給系に接続された第1のトロリ線から電源供給可能な給電区間と、該第1の電源供給系とは異なる第2の電源供給系に接続された第2のトロリ線から電源供給可能な給電区間とにおける、前記第1の電源供給系に接続された第1のトロリ線と、前記第2の電源供給系に接続された第2のトロリ線とが所定の距離にわたって互いに電気的に絶縁された状態で並行して配置されたエアセクションに在線する鉄道車両のパンタグラフの舟体の短絡を検出する方法であって、前記エアセクションの幅方向に沿って設けられ、上面が前記第1のトロリ線または第2のトロリ線と接触可能な前記舟体のすり板を流れる電流によって生じる磁界を磁気センサにより検出する工程と、該磁気センサが検出した磁界から前記すり板を流れる電流の経路を推定する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エアセクションに在線する電気鉄道車両のパンタグラフの舟体を経由する短絡の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態における磁気センサを用いた舟体の電流推定回路の一例の説明図である。
【
図2】
図1の電流推定回路により測定された舟体周辺の磁束密度分布の一例の説明図である。
【
図3】
図1の電流推定回路により測定された舟体周辺の磁束密度分布の他の例の説明図である。
【
図4】一実施形態におけるパンタグラフの斜視図、およびパンタグラフを各座標軸方向視した図である。
【
図5】
図4のパンタグラフとトロリ線との接触状態と流れる電流の方向の説明図である。
【
図6】一実施形態におけるパンタグラフとトロリ線との接触状態に応じた磁束密度分布の一例を示す図である。
【
図7】一実施形態におけるパンタグラフとトロリ線との接触状態に応じた磁束密度分布の他の例を示す図である。
【
図8】エアセクションにおけるトロリ線と電気鉄道車両のパンタグラフとの接触状態の例を説明する側面図である。
【
図9】エアセクションにおけるトロリ線と電気鉄道車両とパンタグラフとの接触状態の例を電気鉄道車両の進行方向から見た説明図である。
【
図10】エアセクションへの電源供給の例を電気鉄道車両の位置に対応して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1~
図7を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1~
図3により、一実施形態の短絡判定に利用される磁束密度の測定原理について説明する。
図1の符号1は、パンタグラフのすり板に相当する導体であり、例えば、鉄、銅などの導体により構成され、2点がトロリ線に接触あるいはアーク放電している場合と同様、
図1の直流電源2を短絡した状態となっている。
【0018】
前記磁束測定回路の測定点5A~5Cにおいて、テスラメーターにより磁束密度を測定した結果に基づく磁束密度分布のシミュレーション結果について、
図2、
図3により説明する。
図2は、前記導体1に2Aの電流が流れる場合の、導体1から1mm(厚さ方向へ1mm)離隔させた位置での磁束密度の分布を示し、
図3は、前記導体1に2Aの電流が流れる場合の、導体1から11mm(厚さ方向へ11mm)離隔させた位置での磁束密度の分布を示す。なお、磁束の方向は、軌道の長さ方向をX軸方向、導体1の長さ方向(軌間方向)をY軸方向、XYに対して直交する方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0019】
図2、
図3によれば、導体1に2Aの電流を通電した状態において、
図2、3のX軸方向への磁束密度Bxに有意な差を確認することができた。すなわち測定点は、導体1(実用的には、パンタグラフの舟体)と電気的な絶縁が可能であって、導体1におけるトロリ線12A、12Bとの接触面(上面)にできるだけ近い、下面側のいずれの位置に取り付けることが望ましいことを確認することができた。
【0020】
図4は、一実施形態におけるパンタグラフの構造を示すもので、(a)は全体の斜視図、(b)はX軸(進行方向)方向視、(c)はY軸(幅方向~舟体長さ方向)方向視、(d)はZ軸方向(鉛直方向)視したものである。
このパンタグラフの舟体20は、エアセクションにおいて、一の給電系に接続されたトロリ線12A、他の給電系に接続されたトロリ線12Bのいずれかと接触することにより集電するが、トロリ線12A、12Bとの間に発生するアークにより、トロリ線12A、12Bを短絡する状態となることがある。
この舟体20は、鉄系金属材料あるいは銅系金属材料により形成されすり板21と、このすり板21の下面に一体に設けられてすり板21を補強する、アルミニウム系金属等により構成された舟体本体22とを有する。なお前記すり板21は、全体を鉄系、銅系の金属により構成する構造のみならず、表面に電気伝導性、あるいは、耐摩耗性を付与する処理を施した構造をも含むものとする。
【0021】
そして前記パンタグラフは、前記舟体20の下部に設けられた枠組23によって、図示しない電気鉄道車両の屋根に前記舟体20が支持されるとともに、枠組23に沿って設けられた図示しない給電線によって電気鉄道車両へ給電する。また前記舟体本体22は、中空状に構成され、その内部には、ホール素子、あるいは、磁気抵抗素子により構成された磁気センサ24が設けられている。この磁気センサ24は、前記舟体20の長さ方向へ複数個設けられるが、これら複数個の磁気センサ24の設置範囲は、舟体の摩耗の集中を避けるべく、斜めに敷設(水平面内でX軸方向に対して傾斜して配置)されたトロリ線との接触個所の軌間方向(Y軸方向)への移動を考慮して、トロリ線との接触が想定される幅以上の領域に設定されている。また前記磁気センサ24の出力は、図示しない推定演算部に供給されて、電流経路の推定データに変換される。
【0022】
図5は、前記舟体20とトロリ線12A、12Bとの間に例えば100Aもの大電流が流れるような短絡が発生した場合の電流経路の状況を示すものである。
図5(a)に示すように、電気的鉄道車両がエアセクションに停止して、トロリ線12A、12Bとすり板21とが、接触し、およびまたは、これらの間にアークが発生すると、図中矢印で示すように、トロリ線12Aと12Bとがすり板21を介して短絡し、トロリ線12Bから12Aへ過大な電流が流れる。
【0023】
これに対して、
図5(b)に示す、通常の集電状態にあっては、単一のトロリ線12A(または12B)にすり板21が接触して集電し、電気鉄道車両へ電源を供給する。
図5(c)に示すエアジョイント(AJ)の集電状態にあっては、トロリ線12A、12Bの両方から集電して車両へ電源を供給する。
図5(d)に示す無集電状態では、すり板21とトロリ線12A、12Bとの間に、例えば10mm以上の十分な間隔があるため、電気的な接触も、アークが発生することもなく、無集電状態となる。
【0024】
図6は、すり板21として鉄系の金属を使用した場合の、
図5(a)~(d)の各集電状態における舟体本体22、枠組23の中空部上面から下方へ5mm離れた位置の磁束分布を示すものである。
図6にあっては、正方向(X軸を示す矢印方向)および負方向(X軸を示す矢印と反対方向)へ各々最大500μT(マイクロテスラ)程度の変化があるものとして説明する。
図6(a)にあっては、磁気センサ24にX軸に沿う負の方向への高密度の磁束が検出され、この磁束密度から、トロリ線12A~12Bの短絡により大電流が流れていることを検出することができる。
図6(b)にあっては、すり板21とトロリ線12Bとの接触個所から電気鉄道車両への給電の状態に応じた高密度の磁束が検出され、この磁束密度により、トロリ線12Bから電気鉄道車両へ通常の給電がなされることによる電流を検出することができる。
図6(c)にあっては、トロリ線12A、12Bの各々から電気鉄道車両への給電状況に応じた磁束が磁気センサ24から検出され、すり板21から電気鉄道車両へのAJ状態での給電と判定することができる。
図6(d)にあっては、トロリ線12Bから電気鉄道車両へ給電されない。電気鉄道車両へ給電されない状態では、トロリ線12Bを流れる電流の経路から、磁気センサ24に検出されるX軸に沿う磁束密度は非常に小さくなる。
【0025】
図7は、すり板21として銅系の金属を使用した場合の、
図5(a)~(d)の各集電状態における舟体本体22、枠組23の中空部上面から下方へ5mm離れた位置の磁束分布を示すものである。
図7にあっては、正方向(X軸を示す矢印方向)および負方向(X軸を示す矢印と反対方向)へ各々最大500μT(マイクロテスラ)程度の変化があるものとして説明する。
図7(a)にあっては、磁気センサ24にX軸に沿う負の方向への高密度の磁束が検出され、この磁束から、トロリ線12A~12Bの短絡による電流を検出することができる。
図7(b)にあっては、すり板21とトロリ線12Bとの接触個所から電気鉄道車両への給電の状態に応じた高密度の磁束が検出され、この磁束密度により、トロリ線12Bから電気鉄道車両への通常の給電による電流を検出することができる。
図7(c)にあっては、トロリ線12A、12Bの各々から電気鉄道車両への給電状況に応じた磁束が磁気センサ24から検出され、すり板21から電気鉄道車両へのAJ状態での給電と判定することができる。
図7(d)にあっては、トロリ線12Bから電気鉄道車両へ給電されない。電気鉄道車両へ給電されない状態では、トロリ線12Bを流れる電流の経路から、磁気センサ24に検出されるX軸に沿う磁束密度は非常に小さくなる。
【0026】
図6、7を参照して説明したように、トロリ線12Aと12Bとの短絡に伴ってすり板21が鉄系、銅系のいずれの金属の場合であっても、すり板21の下面に設けた磁気センサ24に検出される磁束密度から、すり板21を介したトロリ線12Aと12Bとの短絡を判定することができる。
【0027】
以上説明したように、一実施形態にあっては、磁気センサ24に検出される磁束密度からすり板21を流れる電流を推定することができ、この電流から、トロリ線12Aと12Bとの短絡の有無を判定することができる。また前記電流を推定する推定演算部は、前記すり板21に所定以上の電流が継続して流れていると判定した場合、エアセクションに停車した電気鉄道車両の舟体を経由する短絡が発生したと判断することができる。なお磁気センサに検出された磁束密度に基づいて短絡を判定する測定演算部は、車両の運行についての情報を管理するホストコンピュータ、車両運行指令所、変電所、電気鉄道車両等に設けられたローカルコンピュータの機能として実現することができる。
なお磁気センサによる磁束密度の測定と、測定された磁束密度からの電流経路の演算および電流値による短絡の有無の判定は、常時行っても、あるいは、エアセクションを含む閉鎖区間への電気鉄道車両の進入等、エアセクションASにおける短絡の可能性のある区間への電気鉄道車両の侵入、さらには、エアセクションに停車した(位置情報の変化がない)電気鉄道車両が存在することを条件に開始して良い。
【0028】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、エアセクションにおける電気鉄道車両のパンタグラフを介した短絡およびこの短絡に伴うトロリ線の溶断やクリープの防止に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
12A、12B (第1、第2の)トロリ線
20 舟体
21 すり板
22 舟体本体
23 枠組
24 磁気センサ