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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098838
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】トレーラーハウス
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/33 20060101AFI20220627BHJP
   B60P 3/36 20060101ALI20220627BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20220627BHJP
   B60P 3/00 20060101ALN20220627BHJP
【FI】
B60P3/33
B60P3/36
F24F7/06 C
B60P3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212458
(22)【出願日】2020-12-22
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】509204208
【氏名又は名称】トレーラーハウスデベロップメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達彦
【テーマコード(参考)】
3L058
【Fターム(参考)】
3L058BF03
(57)【要約】
【課題】トレーラーハウスのハウス部における空間の全体にわたり適切に換気を行う。
【解決手段】第1方向に沿って配置され、相互に対向する第1側壁部および第2側壁部と、当該第1方向に直交する第2方向に沿って配置され、相互に対向する第3側壁部および第4側壁部と、上壁部および底壁部とで構成される空間を有するハウス部と、前記ハウス部が載置される載置部と、当該載置部において前記ハウス部とは反対側に設けられるタイヤとを有する台車部と、前記第1側壁部に形成される1つ以上の給気口と、前記第2側壁部に形成される排気口と、前記空間内のうち前記第2側壁部側において前記給気口よりも低い位置から当該空間内の空気を吸引して、前記排気口から当該吸引した空気を排出させる排気装置とを具備するトレーラーハウス。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両により牽引されることで移動可能なトレーラーハウスであって、
第1方向に沿って配置され、相互に対向する第1側壁部および第2側壁部と、当該第1方向に直交する第2方向に沿って配置され、相互に対向する第3側壁部および第4側壁部と、上壁部および底壁部とで構成される空間を有するハウス部と、
前記ハウス部が載置される載置部と、当該載置部において前記ハウス部とは反対側に設けられるタイヤとを有する台車部と、
前記第1側壁部に形成される1つ以上の給気口と、
前記第2側壁部に形成される排気口と、
前記空間内のうち前記第2側壁部側において前記給気口よりも低い位置から当該空間内の空気を吸引して、前記排気口から当該吸引した空気を排出させる排気装置と
を具備するトレーラーハウス。
【請求項2】
前記空間内において前記第1側壁部に設けられる空調装置を具備する
請求項1のトレーラーハウス。
【請求項3】
前記給気口は、前記第1側壁部における前記上壁部側において、前記第2側壁部側と前記第3側壁部側とにそれぞれ形成される2つの給気口を含み、
前記空調装置は、前記第1側壁部において前記2つの給気口の間に設けられる
請求項2のトレーラーハウス。
【請求項4】
前記第1側壁部側から牽引される
請求項1から請求項3の何れかのトレーラーハウス。
【請求項5】
前記排気装置は、前記空間内の空気を吸引するファン部と、当該ファン部の上流側に設けられるフィルター部と、当該ファンと前記排気口とを連結するダクトを含む
請求項1から請求項4の何れかのトレーラーハウス。
【請求項6】
前記フィルター部は、第1フィルターと、当該第1フィルターよりも下流側に設置され、当該第1フィルターよりも捕集対象となる粒子の径が小さい第2フィルターとを含む
請求項5のトレーラーハウス。
【請求項7】
前記排気装置は、前記フィルター部の上流側と下流側とにおける差圧が所定の閾値を上回る場合に、当該フィルター部の交換を報知する報知部を含む
請求項5または請求項6のトレーラーハウス。
【請求項8】
前記3側壁部および前記第4側壁部の何れか一方に、手動により開き、自動で閉じるスライド式のドアが設けられる
請求項1から請求項7の何れかのトレーラーハウス。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラーハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の新型コロナウィルスの流行に伴い、感染者を診察するための診察室を新たに設ける動きがある。しかし、既設の病院内に診察室を設けることは、院内での感染の拡大につながる恐れがある。そこで、病院の外部に診察室を設置したいという要望がある。しかし、病院の外部に新たに診察室を建設するには、時間および費用も掛かるという問題がある。そこで、車両により牽引されることで移動可能なトレーラーハウスを診察室に使用することが考えられる。例えば、特許文献1には、居住空間を形成する構造体と、当該構造体に配設される車輪とを具備するトレーラーハウスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-154328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、居住空間内の換気が適切に行えず、居住区間を診察室として使用した場合、診察室内での感染の拡大が想定される。以上の事情に考慮して、本発明では、トレーラーハウスのハウス部における空間内の全体にわたり適切に換気を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明のトレーラーハウスは、第1方向に沿って配置され、相互に対向する第1側壁部および第2側壁部と、当該第1方向に直交する第2方向に沿って配置され、相互に対向する第3側壁部および第4側壁部と、上壁部および底壁部とで構成される空間を有するハウス部と、前記ハウス部が載置される載置部と、当該載置部において前記ハウス部とは反対側に設けられるタイヤとを有する台車部と、前記第1側壁部に形成される1つ以上の給気口と、前記第2側壁部に形成される排気口と、前記空間内のうち前記第2側壁部側において前記給気口よりも低い位置から当該空間内の空気を吸引して、前記排気口から当該吸引した空気を排出させる排気装置とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係るトレーラーハウスの側面図である。
図2】実施形態に係るトレーラーハウスの上面図である。
図3】実施形態に係る第1側壁部を内部空間側からみたときの概略図である。
図4】実施形態に係る第2側壁部を内部空間側からみたときの概略図である。
図5】実施形態に係る排気装置の側面図である。
図6】実施形態に係る排気装置の上面図である。
図7】実施形態に係る報知部の構成を示す回路図である。
図8】実施形態に係るハウス部の換気に関する実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1はトレーラーハウス1の側面図であり、図2はトレーラーハウス1の上面図である。本発明のトレーラーハウス1は、自走可能な車両により牽引されることで移動可能である。本実施形態に係るトレーラーハウス1は、ハウス部11と台車部21とを具備する。なお、トレーラーハウス1は、道路運送車両法上の所謂車検取得が可能であり、移動に際し基準緩和認定、特殊車両通行許可等の特段の許可を要しないという利点もある。
【0008】
以下の説明では、水平面内において相互に直交する方向をX方向(「第1方向」の例示)およびY方向(「第2方向」の例示)と表記し、鉛直方向をZ方向と表記する。
【0009】
ハウス部11は、利用者が所在可能な空間(以下「内部空間R」という)を有する。内部空間Rは、立方体状(例えば直方体状)の空間である。具体的には、ハウス部11は、第1側壁部11aと第2側壁部11bと第3側壁部11cと第4側壁部11dと上壁部11eと底壁部11fとを具備する。第1側壁部11aと第2側壁部11bと第3側壁部11cと第4側壁部11dと上壁部11eと底壁部11fとで構成される空間が内部空間Rである。なお、図2では、便宜的に上壁部11eは図示しない。
【0010】
4つの側壁部(11a~11d)の各々は、Z方向に沿って延在する。図2に例示される通り、第1側壁部11aおよび第2側壁部11bは、X方向に沿って配置され、相互に対向する。第3側壁部11cおよび第4側壁部11dは、Y方向に沿って配置され、相互に対向する。第3側壁部11cは、第1側壁部11aにおけるY方向の正側の周縁と第2側壁部11bにおけるY方向の正側の周縁とに接続される。第4側壁部11dは、第1側壁部11aにおけるY方向の負側の周縁と第2側壁部11bにおけるY方向の負側の周縁とに接続される。上壁部11eは、4つの側壁部(11a~11d)の各々におけるZ方向の正側の周縁に接続される。底壁部11fは、4つの側壁部(11a~11d)の各々におけるZ方向の負側の周縁に接続される。
【0011】
台車部21は、載置部211と複数のタイヤ121とを具備する。載置部211は、ハウス部11が載置される構造体である。複数のタイヤ121は、載置部211においてハウス部11とは反対側(Z方向の負側)に設けられる。本実施形態では、載置部211のうちY方向の正側の周縁に2つのタイヤ121が設けられ、載置部211のうちY方向の負側の周縁に2つのタイヤ121が設けられる。各タイヤ121は、X方向に沿って回転するように設置される。X方向は、タイヤ121の回転方向であるとも換言できる。
【0012】
載置部211には、接続部212が設けられる。接続部212は、牽引車両を接続するための部材である。本実施形態の接続部212は、載置部211おけるX方向の負側の周縁(第1側壁部11aに対応する部分)に設置される。すなわち、トレーラーハウス1は、第1側壁部11a側から牽引される。すなわち、車両により牽引されるトレーラーハウス1は、X方向の負側に向かって移動する。
【0013】
載置部211におけるタイヤ121が設置される側には、支持脚122が設けられる。車両により牽引されることで目的の場所まで到達したら、支持脚122を地面に設置させることで、トレーラーハウス1を固定する。なお、ハウス部11と台車部21とは切り離し可能である。
【0014】
図3は、内部空間R内からみたときの第1側壁部11aの概略図である。第1側壁部11aには、外部空間と連通する1つ以上の給気口12aが形成される。図3に例示される通り、本実施形態では、第1側壁部11aにおける上壁部11e側(Z方向の正側)に2つの給気口12aが形成される。一方の給気口12aは、第3側壁部11c側(Y方向の正側)に位置し、他方の給気口12aは第4側壁部11d側(Y方向の負側)に位置する。
【0015】
図1および図2に例示される通り、第2側壁部11bには、外部と連通する排気口13aが形成される。例えば、2つの給気口12aの一方(本実施形態ではY方向の負側に位置する給気口12a)に対向する位置に排気口13aが形成される。
【0016】
以上の説明から理解される通り、トレーラーハウス1の進行方向であるX方向に沿って第1側壁部11aと第2側壁部11bとが配置され、第1側壁部11aには給気口12aが形成され、第2側壁部11bには排気口13aが形成される。なお、図1および図2に例示される通り、給気口12aにおける第1側壁部11aの外側(内部空間Rとは反対側)には、雨水等の進入を抑制するためのカバー12を取り付けてもよい。同様に、排気口13aにおける第2側壁部11bの外側にはカバー13を取り付けてもよい。
【0017】
本実施形態のトレーラーハウス1は、ハウス部11に空調装置151と排気装置5とドア14とが設けられる。空調装置151と排気装置5とは内部空間Rに設置される。空調装置151(例えばエアコン)は、内部空間R内の温度や湿度を調整する装置である。内部空間R内において第1側壁部11aに空調装置151が設けられる。本実施形態では、図3に例示される通り、第1側壁部11aにおいて2つの給気口12aの間に設けられる。なお、図1および図2に例示される通り、空調装置151の室外機15は、例えば台車部21における接続部212に載置される。
【0018】
図4は、第2側壁部11bを内部空間R側からみたときの概略図である。図5は排気装置5をY方向からみたときの概略図であり、図6は排気装置5をZ方向の正側からみたときの概略図である。
【0019】
図4から図6に例示される通り、排気装置5は、内部空間Rの空気を吸引し、当該吸引した空気を排気口13aから排出させる機器である。図2および図4に例示される通り、本実施形態の排気装置5は、内部空間R内のうち第2側壁部11b側に配置される。例えば、第2側壁部11bと第4側壁部11dとで構成される内部空間Rの角部において排気装置5が設けられる。なお、図4に例示される通り、排気装置5は、底壁部11fに設けられる台座58の上に載置される。排気装置5と当該排気装置5が載置される台座58とは、実際には板状の仕切パネル54により被覆される。
【0020】
図5および図6に例示される通り、本実施形態の排気装置5は、ファン部51とフィルター部52とダクト53と報知部55と収容部56と操作スイッチ部SWとを含む。収容部56は、例えば立方体状の構造体であり、内部が中空である。例えば、複数の鉄板プレートを組み合わせて収容部56が形成される。収容部56の内部には、ファン部51とフィルター部52とが収容される。
【0021】
図4から図6に例示される通り、収容部56には、吸引口56aが形成される。吸引口56aは、収容部56のうち第1側壁部11aに対向する位置に形成される。X方向に沿って相互に対向する2つの側壁のうち第1側壁部11aに近い方の側壁(X方向の負側に位置する側壁)に吸引口56aが形成されるとも換言できる。本実施形態では、吸引口56aは、給気口12aよりも低い位置(Z方向の負側)に形成される。
【0022】
なお、仕切パネル54には吸引口56aに対応する位置に連通口5aが形成され、吸引口56aは当該連通口5aを介して内部空間Rと連通する。また、図5に例示される通り、仕切パネル54には、排気装置5を保守や点検をするための開閉扉5bが設けられる。ただし、仕切パネル54を設けることは本発明において必須ではない。
【0023】
図5および図6に例示される通り、収容部56の内部において、フィルター部52とファン部51とがX方向に沿って配置される。吸引口56aとファン部51との間にフィルター部52が設けられる。フィルター部52は、第1フィルター522と第2フィルター521とを含む。第1フィルター522と第2フィルター521とは、捕集対象となる粒子の径が相違する。
【0024】
第1フィルター522は、例えば、埃等の粉塵を捕集可能なフィルターである。一方で、第2フィルター521は、第1フィルター522よりも捕集対象となる粒子の径が小さい。具体的には、第2フィルター521は、空気中のウィルスを捕集可能なフィルターである。例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルターが第2フィルター521として使用される。なお、フィルター部52の構成は以上の例示には限定されない。
【0025】
ファン部51は、X方向の負側(すなわち第1側壁部11a側)から吸引する空気を他方向に送付する送風機(例えばシロッコファン)を含む。ダクト53は、ファン部51と排気口13aとを接続するバイプ状の部材である。例えば収容部56の上壁に形成された貫通孔を貫通するようにダクト53が設置される。なお、図6に例示される通り、収容部56には、フィルター部52を交換および点検するための扉561と、ファン部51を点検するための扉562とがそれぞれ設けられる。扉561および扉562は、収容体56におけるY方向の正側の側壁に設けられる。また、ファン部51は、フィルター部52側から吸い込んだ空気がダクト53以外の部分に流出しないように設計される。
【0026】
ファン部51が作動すると、内部空間Rの空気は、吸引口56aを介して収容部56に吸引される。吸引口56aから吸引された空気は、フィルター部52を通過して、ファン部51からダクト53を介して排気口13aから排出される。すなわち、内部空間Rの空気は、吸引口56a→第1フィルター522部52→第2フィルター521部52→ファン部51→排気口13aの順番でハウス部11の外部に排出される。排気装置5において、吸引口56a側が上流であり、排気口13a側が下流であるとも換言できる。フィルター部52は、ファン部51よりも上流側に設けられ、第2フィルター521は、第1フィルター522よりも下流に設けられる。内部空間R内の空気は、フィルター部52(第1フィルター522および第2フィルター521)を通過してから外部に排出されるから、粉塵やウィルスをハウス部11の外部に排出すること抑制することが可能である。
【0027】
また、排気装置5が作動することで、内部空間R内の空気が排出されると、内部空間Rは陰圧になる。その結果、給気口12aから外部の空気を内部空間Rに取り込むことができる。以上の説明から理解される通り、排気装置5が作動すると、給気口12aからから排気装置5(排気口13a)に向かう空気の流れが発生する。
【0028】
上述した通り、本実施形態では、排気装置5の吸引口56aは給気口12aよりも低い位置に形成される。すなわち、排気装置5は、内部空間R内のうち第2側壁部11b側において給気口12aよりも低い位置(底壁部11fに近い位置)から内部空間R内の空気を吸引して、排気口13aから当該吸引した空気を排出させる。
【0029】
図5の操作スイッチ部SWは、ファン部51の操作するためのスイッチである。例えば、操作スイッチ部SWは、ファン部51を起動するための起動スイッチSW1と、ファン部51における送風量の強弱を切り替えるための切換スイッチSW2とを有する。操作スイッチ部SWは、内部空間Rの任意の場所(例えば第2側壁部11b)に設けられる。
【0030】
報知部55は、フィルター部52の交換を報知するための装置である。フィルター部52に付着した付着物(埃やウィルス等)が増加して、フィルター部52の機能が低下した場合に、フィルター部52の交換を促すことが報知される。フィルター部52に付着する付着物の量が増加すると(すなわち目詰まりを起こすと)、フィルター部52を空気が通過しにくくなる。すなわち、フィルター部52の上流(吸引口56a側)と下流(ファン部51側)とで気圧の差(差圧)が大きくなる。
【0031】
以上の事情を考慮して、報知部55は、フィルター部52の上流側と下流側とにおける差圧が所定の閾値を上回る場合に、当該フィルター部52の交換を報知する。図7は、報知部55の構成を示す回路図である。例えば、報知部55は、差圧スイッチ551と表示部552と電源553と抵抗554とを含む。
【0032】
差圧スイッチ551とは、フィルター部52の上流側の気圧Pusと下流側の気圧Pdsとの差圧が所定の閾値を上回る場合にオン状態にするスイッチである。所定の閾値は、統計的または実験的に設定される。表示部552(例えばLEDランプ)は、差圧スイッチ551がオン状態になると、電源が供給され、点灯する。したがって、例えばトレーラーハウス1の管理者にフィルター部52の交換が報知される。例えば、表示部552は、操作スイッチ部SWの付近に設けられる。
【0033】
本実施形態では、フィルター部52の全体について報知部55を設ける構成を例示したが、第1フィルター522および第2フィルター521の各々について報知部55を設けてもよい。また、フィルター部52の交換を報知する態様は、表示に限定されず、例えば放音により報知してもよい。
【0034】
図1および図2に例示される通り、ドア14は、第3側壁部11cに設けられる。例えば、第3側壁部11cにおける第2側壁部11b側にドア14が設けられる。第3側壁部11cのうち排気装置5に対向する位置にドア14が設けられるとも換言できる。本実施形態のドア14は、例えばスライド式のドアである。具体的には、手動により開き、自動で閉じるスライド式のドア14(半自動式ドア)が設けられる。
【0035】
内部空間Rに出入りするための階段部31がハウス部11の外部におけるドア14に対応する位置に設けられる。例えば、階段部31は、複数の階段311と踊り場312とで構成される。
【0036】
以下の説明では、内部空間Rを診察室として利用する場合を想定する。なお、本実施形態において診察室とは、医師が患者に対して治療または診察を施す診療室だけでなく、患者が治療前に待機する待機室、および、被検者等に対する検査(例えばPCR:Polymerase Chain Reaction検査)を行う検査室、陰圧隔離が求められる感染症患者の病室等の、医療行為と関連して飛沫の抑制が求められる空間全般を含む総称である。
【0037】
上述した通り、排気装置5が作動すると、給気口12aからから排気装置5(排気口13a)に向かう空気の流れが発生する。図2では、内部空間Rにおける空気の流れの一例を矢印Aにより模式的に図示した。図2に例示される通り、内部空間Rには、第1側壁部11aに形成された2つの給気口12aのうち第3側壁部11c側(Y方向の正側)の給気口12aから排気装置5に向かう空気の流れが生じる。そこで、例えば、第3側壁部11c側(Y方向の正側)の給気口12aと排気装置5とを結ぶ対角線上において、患者(被験者)Pを排気装置5側(下流側)に配置し、医療従事者Mを給気口12a側(上流側)に配置させる。したがって、患者Pによる会話、クシャミまたは咳等により発生する唾液の飛沫が医療従事者Mに付着することを防止することができる。ひいては、診療時における医療従事者Mに対するウィルス等の感染を回避することが可能となる。
【0038】
以上の説明から理解される通り、本実施形態に係るトレーラーハウス1を牽引車両により牽引して、所望する場所(例えば病院の敷地内における駐車場)に移動することができる。そして、効率的に換気が可能な内部空間Rを診察室として使用することができる。ひいては、新たに診察室を建設する必要なく、適切に換気が可能な診察室を迅速に設けることが可能である。
【0039】
ここで、米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention : CDC)のガイドラインによれば、1時間当たり12回の室内換気と、室内外の気圧差が2.5Pa以上である陰圧の形成とが最低限に必要な要件として定められている。本実施形態のハウス部11によれば、以下の通り、米国疾病管理予防センターのガイドラインに定められる上記の要件に対応することが可能である。
【0040】
図8は、本実施形態のハウス部11において排気装置5を作動させることにより得られた、換気風量と、内部空間Rの内と外とにおける気圧差(室内外気圧差)との実験結果を示す。ハウス部11における内部空間Rは、幅(Y方向の長さ)が2.244mであり、長さ(X方向の長さ)が3.463mであり、高さ(Z方向の長さ)が2.300mであり、室内容積が17.87mである。なお、上記のガイドラインにおける1時間当たり12回の室内換気をハウス部11の室内容積により風量に換算すると、1時間当たり214.44mである。
【0041】
風量は、排気口13a計測器(カスタム風速風量計:WS-05)を接続することにより測定した。排気装置5の電源を投入した後、動作が安定した時点での1分当たりの風量([m/min])および室内外気圧差([Pa])を測定した。なお、測定した風量は、1時間当たりの風量([m/H])に換算した。風量は3回にわたり測定し、1回当たりの測定時間は3分とした。
【0042】
図8に係る実験においては、1時間あたり16回以上の換気を行うこととし、3回にわたり風量および室内外気差について計測した。ハウス部11の室内容積に基づく風量換算値は285.92m以上となる。1時間当たりの風量の平均値は、5.23m/minであり、室内外気圧差の平均値は、18.67Paであった。そして、1時間あたりの風量の平均値は、314.00m/Hであった。すなわち、米国疾病管理予防センターのガイドラインにおける、室内外の気圧差が2.5Pa以上である陰圧の形成に関する要件と、1時間当たり12回の室内換気(1時間当たりの風量214.44m)に関する要件とが十分に満たされることが把握できる。
【0043】
以上の説明から理解される通り、本実施形態のハウス部11では、第1側壁部11aに給気口12aが形成され、当該第1側壁部11aに対向する第2側壁部11b側に排気装置5(排気口13a)が位置するから、第1側壁部11a側から第2側壁部11b側に向かって、空気を換気することができる。したがって、例えば、第1側壁部11aに給気口12aが形成され第3側壁部11c(または第4側壁部11d)に排気口13aが形成される構成と比較して、内部空間Rの全体にわたり適切に換気することが可能になる。
【0044】
本実施形態では特に、排気装置5が給気口12aよりも低い位置から内部空間R内の空気を吸引するから、例えば排気装置5が給気口12aと同じ程度の高さから内部空間R内の空気を吸引する構成と比較して、ハウス部11の高さ方向にわたり十分に換気できるという利点がある。
【0045】
本実施形態では、給気口12aが形成された第1側壁部11a側からトレーラーハウス1が牽引されるから、例えば、トレーラーハウス1が牽引されて移動する際に(すなわち排気装置5を停止していても)、給気口12aから流入しやすくなる。そして、第1側壁部11aに対向する第2側壁部11bに形成された排気口13a(排気装置5)から内部空間Rの空気か排気されやすくなる。すなわち、トレーラーハウス1が移動する際にもハウス部11の内部空間Rの空気を換気できるという利点がある。
【0046】
本発明に係るトレーラーハウス1は、典型的には、施設内の駐車場に設置される。トレーラーハウス1の設置に要するスペースは、普通乗用車の駐車枠1.5区画分程度であり、設置性が高い。そして、トレーラーハウス1は、施設の近隣に対する配慮から、排気口13aが施設の外部を向かないように(施設の内部を向けて排気するように)設置することが好ましい。平坦に舗装された駐車場においてトレーラーハウス1を移動することは人力でも可能であるから、排気口13aが施設の外部を向かないように移動することが容易である。すなわち、トレーラーハウス11は可搬性に優れている。
【0047】
また、ハウス部11と台車部21とは切り離し可能であるであるから、台車部21に対するハウス部11の向きを自由に変更できるという利点がある。例えば、駐車場の構造や状況によっては、排気口13aが施設の外部を向かないようにトレーラーハウス1そのものを設置することが難しい場合がある。以上の場合には、トレーラーハウス1の位置は変更させずに、排気口13aの位置が施設の外部を向かないようにハウス部11を回転させた上で、台車部21に載置することもできる。
【0048】
建築物としての診察室では、診察室を移動させることや、診察室の向きを変えることは困難である。一方で、以上の説明から理解される通り、本発明に係るトレーラーハウス1は、トレーラーハウス1の移動と、ハウス部11の向きの変更とが容易にできるという利点がある。
【0049】
本実施形態では、給気口12aが形成される第1側壁部11aに空調装置151が設けられるから、給気口12aから排気装置5(排気口13a)に向かう空気の流れを乱すことなく内部空間Rの室内環境(温度や湿度)を適切に維持することができる。本実施形態では特に、第1側壁部11aの上壁部11e側において2つの給気口12aが設けられ、当該2つの給気口12aの間に空調装置151が設けられるから、2つの給気口12aから流入した空気の流れを阻害することなく、2つの給気口12aから十分に空気を流入させることができる。なお、本発明において、給気口12aの個数は1以上であれば任意である。
【0050】
本実施形態では、排気装置5がフィルター部52を具備するから、内部空間Rの空気を浄化してから外部に排出することができる。本実施形態では特に、捕集対象となる粒子の径が相違する第1フィルター522と第2フィルター521とでフィルター部52を構成するから、内部空間Rの空気を浄化するという効果が顕著である。
【0051】
本実施形態のハウス部11は、フィルター部52の交換を報知する報知部55を具備するから、フィルター部52が正常に機能しなくなる前に管理者にフィルター部52の交換を促すことができる。
【0052】
第3側壁部11cおよび第4側壁部11dの何れかにドア14を設ける本実施形態の構成によれば、給気口12aから排気装置5に向かう空気の流れがドアの開閉による外気の流入により乱れることを抑制することができる。さらに、本実施形態では、半自動式ドアをドア14として設けるから、ドア14の閉じ忘れによるドア14からの空気の流出を抑制することができる。なお、ドア14は半自動式ドアには限定されない。
【0053】
なお、本実施形態に係るトレーラーハウス1は、「道路運送車両法」に基づき登録可能である。したがって、トレーラーハウス1は、自走可能な牽引車両により牽引されることで、適法に公道上を移動可能である。また、トレーラーハウス1は、牽引車両により牽引される車両であるから、建築基準法第2条第1項に規定する「土地への定着性」ではない。すなわち、本発明に係るトレーラーハウス1は、法的に「建築物」としては取り扱われない。したがって、トレーラーハウス1を目的の場所に設置(固定)するのに、行政機関への届け出等が不要であるという利点がある。
【0054】
ハウス部11の内部空間Rを診察室として利用したが、内部空間Rを何に利用するかは任意である。例えば、喫煙所、または、有害物質等を取り扱う検査室や実験室として内部空間Rを利用してもよい。特に、十分な換気を必要とする場合に本発明のトレーラーハウス1は好適である。
【符号の説明】
【0055】
1 :トレーラーハウス
5 :排気装置
5a :連通口
5b :開閉扉
11 :ハウス部
11a :第1側壁部
11b :第2側壁部
11c :第3側壁部
11d :第4側壁部
11e :上壁部
11f :底壁部
12a :給気口
13a :排気口
14 :ドア
15 :室外機
21 :台車部
31 :階段部
51 :ファン部
52 :フィルター部
53 :ダクト
54 :仕切パネル
55 :報知部
56 :収容部
56a :吸引口
121 :タイヤ
151 :空調装置
522 :第1フィルター
521 :第2フィルター
551 :差圧スイッチ
552 :表示部
553 :電源
554 :抵抗
R :内部空間
SW :操作スイッチ部
SW1 :起動スイッチ
SW2 :切換スイッチ


図1
図2
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図6
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図8