(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098845
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】調光シート
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
G02F1/13 505
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212480
(22)【出願日】2020-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】黒川 裕香
【テーマコード(参考)】
2H088
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA02
2H088GA06
2H088GA10
2H088GA13
2H088GA17
2H088HA02
2H088HA03
2H088HA18
2H088JA10
2H088JA11
2H088KA06
2H088KA20
2H088KA26
2H088KA27
2H088KA29
2H088KA30
(57)【要約】
【課題】低温環境での光透過率の応答性を高めることができる調光シート用液晶組成物、および、調光シートを提供する。
【解決手段】調光シート10Aは、液晶組成物23、および、液晶組成物23を保持する透明高分子層21を有する調光層20と、調光層20を挟む一対の透明電極層31,32とを備える。液晶組成物23において、23℃における粘度を基準粘度とするとき、-20℃以上110℃以下の範囲における粘度の最大値が、基準粘度の100倍以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶分子を含む液晶組成物であって、
23℃における当該液晶組成物の粘度を基準粘度とするとき、-20℃以上110℃以下の範囲における粘度の最大値が、前記基準粘度の100倍以下である
調光シート用液晶組成物。
【請求項2】
前記粘度の最大値が、前記基準粘度の30倍以上である
請求項1に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項3】
前記粘度の最大値が、前記基準粘度の35倍以上である
請求項2に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項4】
前記粘度の最大値が、-20℃における前記液晶組成物の粘度の値である
請求項1~3のいずれか一項に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項5】
大気圧下における前記液晶組成物のNI点は、100℃以上145℃以下の範囲に含まれる
請求項1~4のいずれか一項に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項6】
前記液晶分子における長軸方向と短軸方向との屈折率差は、0.17以上0.28以下である
請求項1~5のいずれか一項に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項7】
前記液晶組成物は、誘電率異方性が正である前記液晶分子を含む
請求項1~6のいずれか一項に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項8】
前記液晶組成物は、誘電率異方性が負である前記液晶分子を含む
請求項1~6のいずれか一項に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶組成物、および、前記液晶組成物を保持する透明高分子層を有する調光層と、
前記調光層を挟む一対の透明電極層と、
を備える調光シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光シート用液晶組成物、および、調光シートに関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、液晶組成物を含む調光層と、調光層を挟む一対の透明電極層とを備えている。一対の透明電極層間には、電圧が印加される。透明電極層間の電位差に応じて液晶分子の配向状態が変わることにより、調光シートの光透過率が変わる。例えば、液晶分子の長軸方向が調光層の厚さ方向に沿う状態であるとき、調光シートは無色透明であり、調光シートの光透過率は高い。また、液晶分子の長軸方向が調光層の厚さ方向と交差する状態であるとき、調光層内で光が散乱し、調光シートの光透過率は低い(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶組成物の性質に起因して、電圧の印加に対する調光シートの光透過率の応答性は温度に応じて変わる。電圧の印加に伴う光透過率の切り換えが良好に可能である温度範囲が広がるほど、調光シートの適用対象の拡張が可能であり、特に、低温環境での光透過率の応答性の向上が求められている。例えば、車両の窓ガラスに調光シートが適用される場合、車両の内部の物品や屋内の物品と比較して、調光シートは低温環境に曝されやすい。低温環境での光透過率の切り換えが迅速に可能であれば、車載部材としての利用に対する調光シートの適性が高められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための調光シート用液晶組成物は、液晶分子を含む液晶組成物であって、23℃における当該液晶組成物の粘度を基準粘度とするとき、-20℃以上110℃以下の範囲における粘度の最大値が、前記基準粘度の100倍以下である。
【0006】
上記構成によれば、液晶組成物の粘度が大きくなる低温環境であっても、電圧の印加による液晶分子の配向状態の変化が好適に生じる程度に、液晶組成物の粘度の上昇が抑えられる。したがって、液晶組成物を利用した調光シートにおける透明状態と不透明状態との切り替えが良好に可能である。
【0007】
上記構成において、前記粘度の最大値が、前記基準粘度の30倍以上であってもよい。
上記構成によれば、液晶分子の分子量が小さくなりすぎないことから、液晶分子における長軸方向と短軸方向との屈折率差が過度に小さくなることが抑えられる。それゆえ、調光シートにおけるヘイズ等の光学特性が良好に得られ、低温環境での液晶組成物の粘度の大きさを抑えることと、光学特性の向上とのバランスが好適となる。
【0008】
上記構成において、前記粘度の最大値が、前記基準粘度の35倍以上であってもよい。
上記構成によれば、調光シートの透明状態と不透明状態とのいずれにおいても良好なヘイズが得られやすくなり、すなわち、良好な光学特性が得られやすくなる。
【0009】
上記構成において、前記粘度の最大値が、-20℃における前記液晶組成物の粘度の値であってもよい。
上記構成によれば、-20℃の粘度が基準粘度の100倍以下であるため、低温環境での光透過率の応答性の向上が的確に可能である。
【0010】
上記構成において、大気圧下における前記液晶組成物のNI点は、100℃以上145℃以下の範囲に含まれてもよい。
上記構成によれば、NI点が100℃以上であることにより、高温環境において調光シートの透明状態と不透明状態との良好な切り替えが可能である。したがって、低温環境と高温環境とのいずれでも調光シートが良好に駆動するため、調光シートを使用可能な温度範囲の拡大が可能である。また、NI点が145℃以下であることにより、低温での液晶組成物の粘度を小さく抑えやすい。
【0011】
上記構成において、前記液晶分子における長軸方向と短軸方向との屈折率差は、0.17以上0.28以下であってもよい。
上記構成によれば、液晶分子の屈折率差が0.17以上であることにより、調光シートの透明状態と不透明状態とのヘイズの差が良好に得られる。また、液晶分子の屈折率差が0.28以下であることにより、液晶分子の分子量が大きくなることが抑えられることから、液晶組成物の粘度が大きくなり過ぎることが抑えられ、それゆえ、液晶分子の配向状態が変化したときに液晶分子の向きが揃いにくくなることを抑えることが可能である。
【0012】
上記構成において、前記液晶組成物は、誘電率異方性が正である前記液晶分子を含んでもよい。
上記構成の液晶組成物を用いることで、例えば、駆動電圧の印加時に透明状態となる調光シートを得ることができる。
【0013】
上記構成において、前記液晶組成物は、誘電率異方性が負である前記液晶分子を含んでもよい。
上記構成の液晶組成物を用いることで、例えば、駆動電圧の非印加時に透明状態となる調光シートを得ることができる。
【0014】
上記課題を解決するための調光シートは、上記液晶組成物、および、前記液晶組成物を保持する透明高分子層を有する調光層と、前記調光層を挟む一対の透明電極層と、を備える。
【0015】
上記構成によれば、低温環境において、透明状態と不透明状態との切り替えが良好に可能である。これにより、調光シートにおける車載部材としての適性が高められる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、調光シートにおける低温環境での光透過率の応答性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態におけるノーマルタイプの調光シートが不透明状態であるときの断面構造を示す図。
【
図2】一実施形態におけるノーマルタイプの調光シートが透明状態であるときの断面構造を示す図。
【
図3】一実施形態におけるリバースタイプの調光シートが透明状態であるときの断面構造を示す図。
【
図4】一実施形態におけるリバースタイプの調光シートが不透明状態であるときの断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、調光シート用液晶組成物、および、調光シートの一実施形態を説明する。
[調光シートの構成]
図1~
図4を参照して、調光シートの構成を説明する。本実施形態の調光シートは、例えば、ノーマルタイプおよびリバースタイプのいずれかの層構成を有する。まず、
図1および
図2を参照して、ノーマルタイプの層構成について説明する。
【0019】
図1が示すように、ノーマルタイプの調光シート10Aは、調光層20、第1透明電極層31、第2透明電極層32、第1透明支持層41、および、第2透明支持層42を備えている。調光層20は、第1透明電極層31と第2透明電極層32とに挟まれ、これらの透明電極層31,32に接している。第1透明支持層41は、第1透明電極層31に対して調光層20と反対側で第1透明電極層31を支持し、第2透明支持層42は、第2透明電極層32に対して調光層20と反対側で第2透明電極層32を支持している。
【0020】
調光層20は、透明高分子層と液晶組成物とを含んでいる。透明高分子層は、液晶組成物が充填される空隙であるドメインを有しており、当該ドメイン内に液晶組成物が保持されている。
【0021】
透明高分子層の構造および液晶組成物の保持型式は、ポリマーネットワーク型、高分子分散型、カプセル型からなる群から選択されるいずれか一種である。ポリマーネットワーク型の調光層20は、3次元の網目状を有したポリマーネットワークを備える。ポリマーネットワークは、透明高分子層の一例であり、ポリマーネットワークにおける相互に連通した網目状の空隙のなかに液晶組成物が保持される。高分子分散型の調光層20は、孤立した多数の空隙を区画する透明高分子層を備え、透明高分子層に分散した空隙のなかに液晶組成物が保持される。カプセル型の調光層20は、透明高分子層のなかに分散したカプセル内の空隙に液晶組成物を保持する。
【0022】
図面においては、ポリマーネットワーク型の調光層20を例示している。
図1が示すように、調光層20は、ポリマーネットワーク21と、液晶組成物23とを含んでいる。
ポリマーネットワーク21は、紫外線重合性化合物の重合体である。紫外線重合性化合物は、例えば、ブチルエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアクリレート化合物、N,N‐ジメチルアミノエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等のメタクリレート化合物、スチルベン化合物、ジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物、トリアクリレート化合物、テトラアクリレート化合物、トリメタクリレート化合物、テトラメタクリレート化合物、および、各化合物のオリゴマーである。
【0023】
ポリマーネットワーク21は、複数のドメイン22を区画する。ドメイン22は、隣接する他のドメイン22と繋がる空隙である。液晶組成物23は、複数の液晶分子24を含み、ドメイン22に充填されている。液晶分子24は、例えば、誘電率異方性が正の液晶分子であり、すなわち、液晶分子24の長軸方向の誘電率は、液晶分子24の短軸方向の誘電率よりも大きい。
調光層20の総質量に対するポリマーネットワーク21の質量は、20%以上80%以下であることが好ましい。
【0024】
第1透明電極層31、および、第2透明電極層32の各々は、導電性を有し、可視領域の光に対して透明である。透明電極層31、32の材料は、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)等である。
【0025】
第1透明支持層41、および、第2透明支持層42の各々は、可視領域の光に対して透明な基材である。透明支持層41,42の材料は、例えば、合成樹脂や無機化合物である。合成樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン等である。無機化合物は、例えば、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等である。
【0026】
第1透明電極層31、および、第2透明電極層32には、液晶分子24の配向状態を変えるための電圧である駆動電圧が印加される。調光シートは、液晶分子24の配向状態の変化に基づいて、透明状態と不透明状態とのうちの一方から他方へ切り替わる。透明状態は、光透過率、すなわち平行光線透過率が相対的に高い状態であり、不透明状態は、光透過率が相対的に低い状態である。また、透明状態は、ヘイズが相対的に低い状態であり、不透明状態は、ヘイズが相対的に高い状態である。
【0027】
図1は、不透明状態の調光シート10Aを示す。駆動電圧が印加されていないとき、液晶分子24の長軸方向の向きは不規則である。そのため、調光シート10Aに入射した光は、調光層20において様々な方向に散乱される。したがって、ノーマルタイプの調光シート10Aは、駆動電圧が印加されていないときに、不透明状態となる。不透明状態の調光シート10Aは、例えば、白く濁って見える。
【0028】
図2は、透明状態の調光シート10Aを示す。液晶分子24の誘電率異方性が正の場合、駆動電圧が印加されると、液晶分子24は、その長軸方向が電界方向に沿う向きに配向される。すなわち、調光層20の厚さ方向に長軸方向が沿うように、液晶分子24の向きが変わる。その結果、調光層20での光の散乱が抑えられ、調光シート10Aを光が透過しやすくなる。したがって、ノーマルタイプの調光シート10Aは、駆動電圧が印加されているときに、透明状態となる。
【0029】
ポリマーネットワーク型の調光層20は、ポリマーネットワーク21を形成するための紫外線重合性化合物と液晶組成物23との混合物からなる塗膜に紫外線を照射することによって形成される。すなわち、第1透明電極層31と第1透明支持層41との積層体と、第2透明電極層32と第2透明支持層42との積層体とで上記塗膜を挟み、これらの積層体を介して塗膜に紫外線を照射することで、ポリマーネットワーク型の調光層20を有するノーマルタイプの調光シート10Aが形成される。
【0030】
次に、
図3および
図4を参照して、リバースタイプの調光シートの層構成について説明する。
図3が示すように、リバースタイプの調光シート10Bは、調光層20、透明電極層31,32、透明支持層41,42に加えて、第1配向層51と第2配向層52とを備えている。第1配向層51は、調光層20と第1透明電極層31との間に位置し、これらの層と接する。第2配向層52は、調光層20と第2透明電極層32との間に位置し、これらの層と接する。
【0031】
第1配向層51、および、第2配向層52は、液晶分子24の配向を規制する。配向層51,52は、例えば、垂直配向膜である。垂直配向膜は、液晶分子24を、その長軸方向が調光層20の厚さ方向に沿うように配向させる。配向層51,52が垂直配向膜である場合、液晶分子24としては、誘電率異方性が負の液晶分子、すなわち、長軸方向の誘電率が短軸方向の誘電率よりも小さい液晶分子が用いられる。
【0032】
配向層51,52の材料は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物等の有機化合物、シリコン酸化物、酸化ジルコニウム等の無機化合物、シリコーン等である。配向層51,52を形成するための配向処理は、例えば、ラビング処理、偏光照射処理、微細加工処理である。
【0033】
図3は、透明状態の調光シート10Bを示す。駆動電圧が印加されていないとき、配向層51,52からの配向規制力を受けて、液晶分子24は、その長軸方向が調光層20の厚さ方向に沿う向きとなる。その結果、調光層20での光の散乱が抑えられ、調光シート10Bを光が透過しやすくなる。したがって、リバースタイプの調光シート10Bは、駆動電圧が印加されているときに、透明状態となる。
【0034】
図4は、不透明状態の調光シート10Bを示す。液晶分子24の誘電率異方性が負の場合、駆動電圧が印加されると、液晶分子24は、その長軸方向が電界方向に直交する向きに配向される。すなわち、長軸方向が調光層20の厚さ方向と交差する向きとなるように、液晶分子24の向きが変わる。その結果、調光層20で光の散乱が生じやすくなる。したがって、リバースタイプの調光シート10Bは、駆動電圧が印加されているときに、不透明状態となる。
【0035】
ポリマーネットワーク型の調光層20を有するリバースタイプの調光シート10Bは、第1配向層51と第1透明電極層31と第1透明支持層41との積層体と、第2配向層52と第2透明電極層32と第2透明支持層42との積層体とで上述した塗膜を挟み、これらの積層体を介して塗膜に紫外線を照射することによって形成される。
【0036】
なお、駆動電圧の印加による液晶分子の配向状態の変化に基づいて、調光シートの透明状態と不透明状態とが切り換えられるように構成されていれば、調光シートの層構成は上記に限られない。例えば、調光シートは、調光層20に対する入射光あるいは透過光の偏光を制御する偏光層を備えていてもよいし、配向層51,52は水平配向膜であってもよい。駆動電圧の印加時に調光シートが透明状態となるか不透明状態となるかは、配向層51,52の有無、配向層51,52による配向規制力の働く方向、液晶分子における誘電率異方性の正負、偏光層の有無等によって変えることができる。
【0037】
調光シートの表面および裏面の少なくとも一方は、ガラスや樹脂等からなる透明板に貼り付けられる。透明板は、例えば、各種の建物が備える窓ガラス、屋内に設置されたパーティション、車両や航空機等の移動体が備える窓ガラスやウインドシールドである。透明板の表面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。本実施形態の調光シートは、低温環境での透明状態と不透明状態との切り替えが良好となる特性を有した液晶組成物を用いているため、低温環境で使用可能であることが求められる車載部材に好適に用いられる。すなわち、本実施形態の調光シートは、車両の窓ガラスへの適用に適している。
【0038】
[液晶組成物の特性]
本実施形態の調光シートに用いられる液晶組成物の特性について、詳細に説明する。
液晶組成物の主成分は、液晶分子である。液晶分子は、例えば、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、ピリダジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ジシアノベンゼン系、ナフタレン系、ジオキサン系からなる群から選択される一種である。液晶組成物は、液晶分子として単一の種類の液晶分子のみを含んでいてもよいし、複数の種類の液晶分子を含んでいてもよい。液晶組成物は、常温でネマチック相を有する。
【0039】
液晶組成物は、液晶分子以外の成分を含んでいてもよい。液晶分子以外の成分は、例えば、粘度低下剤、二色性色素、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候剤である。液晶組成物の異方性や、光透過率やヘイズといった調光シートの光学特性を良好に得るためには、液晶組成物における液晶分子全体の質量割合は、液晶組成物の総質量に対して80%以上であることが好ましい。
【0040】
液晶組成物の粘度は、温度に応じて変化し、温度が低くなるほど大きくなる。低温環境において液晶組成物の粘度が大きすぎると、液晶分子が動きにくくなるため、駆動電圧の印加に対して液晶分子の配向状態が変化しにくくなる。その結果、調光シートにおける光透過率の応答性が低下し、すなわち、透明状態と不透明状態との切り換えに時間がかかる、あるいは、切り替えができなくなる。調光層20においては、上述のように、透明高分子層内に区画された微小なドメイン内で液晶分子が向きを変える。それゆえ、表示装置に用いられる液晶パネルのように層状の広い領域に液晶組成物が充填されている構造と比較して、液晶組成物の粘度が液晶分子の配向状態の変わりやすさに与える影響が大きく、低温環境で光透過率の応答性が低くなりやすい。
【0041】
液晶組成物の粘度は、温度に対して非線形的に変化し、温度が低くなるほど急激に大きくなる。そして、常温から低温に向けた粘度の上昇の程度は、液晶組成物の組成によって異なる。そこで、本願の発明者は、常温である23℃での粘度を基準として、低温や高温での液晶組成物の粘度の変化の程度を算出し、その算出結果を利用することで、常温以外の温度での調光シートの光透過率の応答性を評価可能であることを見出した。
【0042】
すなわち、-20℃以上110℃以下の範囲における液晶組成物の粘度の最大値である最大粘度Vmが、当該液晶組成物の23℃での粘度である基準粘度Vbの100倍以下であれば、上記の温度範囲にて調光シートの透明状態と不透明状態との切り換えが良好に可能である。上述のように、液晶組成物の粘度は温度が低くなるほど大きくなることから、最大粘度Vmは、低温領域での粘度であり、具体的には-20℃での粘度である。
【0043】
基準粘度Vbは、例えば、10mPa・s以上500mPa・s以下である。基準粘度Vbが上記範囲内であれば、23℃において調光シートの透明状態と不透明状態との切り換えが迅速に可能であり、最大粘度Vmが基準粘度Vbの100倍以下であることにより、透明状態と不透明状態との切り換えが低温環境でも常温と近しい速度で可能である。例えば、駆動電圧の印加の開始から60秒以内に透明状態と不透明状態との切り換えが完了する。
なお、液晶組成物の粘度は、例えば、セコニック社製の粘度計(VM-300)を用い、JIS Z 8809:2011に準拠して測定される。
【0044】
液晶組成物の基準粘度Vbおよび最大粘度Vmは、液晶組成物が含む液晶分子の種類や、液晶組成物への粘度低下剤の添加の有無および添加量によって調整可能である。粘度低下剤は、液晶組成物の粘度を低下させる機能を有する。特に、粘度低下剤として、液晶組成物の凝固を抑えることで低温柔軟性を向上させる可塑剤を用いることにより、基準粘度Vbに対する最大粘度Vmの比を低下させることができる。こうした粘度低下剤としては、例えば、下記構造式(1)で示されるアルケニル化合物を用いることができる。液晶組成物の異方性や調光シートの光学特性を良好に得るためには、液晶組成物における粘度低下剤の含有割合は、液晶組成物の総質量に対して10%以下であることが好ましい。
【化1】
さらに、液晶分子にねじれを付与するカイラル剤を液晶組成物に加えることで、液晶組成物の粘度を微調整することもできる。
【0045】
また、大気圧下における液晶組成物のNI点(Nematic-Isotropic転移温度)は、100℃以上145℃以下であることが好ましい。液晶組成物は、NI点以上の温度で異方性を消失するため、NI点が低すぎると、高温環境において、液晶分子が配向されにくくなり、調光シートの透明状態と不透明状態との切り換えが困難になる。NI点が100℃以上であれば、高温環境においても液晶分子の配向状態の変化が良好に生じ、透明状態と不透明状態との切り換えが良好に可能である。
【0046】
一方で、NI点が高いほど、低温での液晶組成物の粘度が大きくなる傾向がある。NI点が145℃以下であれば、液晶組成物の最大粘度Vmが大きくなることを抑えることができる。上述のように、粘度低下剤の添加によって低温での液晶組成物の粘度を低下させることは可能ではあるが、液晶組成物における液晶分子以外の含有物の割合が多くなると、液晶組成物の異方性や調光シートの光学特性の低下が懸念される。NI点が145℃以下であれば、粘度低下剤の添加量を過大にせずとも、最大粘度Vmを基準粘度Vbの100倍以下とすることが可能であるように、低温での液晶組成物の粘度を小さく抑えることができる。
【0047】
続いて、調光シートの光学特性に影響を与える液晶組成物の特性について説明する。
調光シートの透明状態では、調光シートを介した物体の視覚認識がより明瞭に可能であることが好ましく、すなわち、ヘイズが小さいことが好ましい。一方、調光シートの不透明状態では、調光シートを介した物体の視覚認識がより困難であることが好ましく、すなわち、ヘイズが大きいことが好ましい。したがって、透明状態と不透明状態とのヘイズの差は大きいことが好ましい。なお、ヘイズは、JIS K 7136:2000に準拠して測定される。
【0048】
液晶分子の長軸方向と短軸方向との屈折率差Δn(Δn=異常光屈折率ne-常光屈折率no)が大きいほど、駆動電圧の印加時と非印加時とで、調光層20への入射光に対しての液晶分子の屈折率の違いが大きくなるため、光の散乱性の差が大きくなる。それゆえ、透明状態と不透明状態とのヘイズの差が大きくなる。透明状態と不透明状態とのヘイズの差を良好に得るためには、屈折率差Δnは、0.17以上であることが好ましい。
【0049】
一方で、液晶分子の屈折率差Δnが大きいほど、液晶分子の分子量は大きくなる傾向を有し、液晶分子の分子量が大きくなるほど、液晶分子は動きにくくなる。それゆえ、液晶分子の屈折率差Δnが大きいほど、低温において液晶組成物の粘度が大きくなり、配向状態が変化し難くなる。また、常温においても、駆動電圧の印加時に配向が揃いにくくなるため、配向状態の変化後の光学特性が低くなりやすい。低温環境での光透過率の応答性の向上および光学特性の向上のためには、屈折率差Δnは、0.28以下であることが好ましい。
【0050】
反対に、低温において液晶組成物の粘度が小さいことは、液晶分子の分子量が小さく、屈折率差Δnが小さいことを意味する。言い換えれば、最大粘度Vmが過度に小さいと、屈折率差Δnが小さくなりすぎ、結果として、調光シートの光学特性の低下に繋がる。それゆえ、透明状態と不透明状態とのヘイズの差が良好に得られる屈折率差Δnを確保するためには、最大粘度Vmが基準粘度Vbの30倍以上であることが好ましく、最大粘度Vmが基準粘度Vbの35倍以上であることがより好ましい。
【0051】
なお、液晶組成物が複数種類の液晶分子を含む場合、屈折率差Δnは、複数種類の液晶分子の長軸方向の屈折率の平均値と、複数種類の短軸方向の屈折率の平均値との差である。
【0052】
[実施例]
上述した液晶組成物および調光シートについて、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
【0053】
(液晶組成物)
メルク社製の7種の液晶材料(MLC-6608、MLC-6609、MLC-6610、MLC-3018、ZLI-2806、ZLI-1131、ZLI-1132)を用いて、実施例1~9および比較例1~3の12種類の液晶組成物を調整した。12種類の液晶組成物は、上記7種の液晶材料のうちの1種、もしくは2種以上の混合であり、互いに異なる組成を有する。また、一部の液晶組成物には、粘度低下剤として、上記構造式(1)で示したアルケニル化合物を、液晶組成物中の濃度が5質量%となるように添加した。
【0054】
(調光シート)
各実施例および各比較例の液晶組成物を用いて、ポリマーネットワーク型の調光層を備えるノーマルタイプの調光シートを作製した。具体的には、紫外線重合性化合物であるアクリル系モノマーと液晶組成物とを混合して塗布液を作製し、第1透明支持層に支持された第1透明電極層上に塗布液を塗布して塗膜を形成した。塗膜上に第2透明支持層に支持された第1透明電極層を重ね、これらの積層体に紫外線を照射した。これにより、塗膜中のアクリル系モノマーが重合してポリマーネットワークを形成し、ポリマーネットワーク中に液晶組成物が保持された調光層が形成された。ポリマーネットワークの屈折率は1.5である。各透明電極層の材料は、酸化インジウムスズであり、各透明支持層の材料はポリエチレンテレフタレートである。なお、紫外線の露光条件等の製造条件は、実施例および比較例ごとに、調光シートにおける透明状態でのヘイズが最も低くなるように設定した。
【0055】
(評価方法)
[粘度変化]
各実施例および各比較例の液晶組成物について、-20℃、0℃、23℃、90℃、110℃での粘度を測定した。粘度は、セコニック社製の粘度計(VM-300)を用い、JIS Z 8809:2011に準拠して測定した。そして、23℃の粘度を基準粘度Vbとして、-20℃、0℃、90℃、110℃の各粘度の基準粘度Vbに対する比を算出した。
【0056】
[光透過率の応答性]
各実施例および各比較例の調光シートについて、光透過率の応答性の評価として、-20℃および90℃での駆動の可否を判定した。具体的には、調光シートへの駆動電圧の印加を開始してから60秒以内に不透明状態から透明状態への切り替えが完了した場合を駆動が可能であると判定した。不透明状態から透明状態への切り替えの完了とは、ヘイズの変化が完了することを意味する。なお、23℃においては、各実施例および各比較例のいずれの調光シートについても駆動が可能であった。
【0057】
[光学特性]
各実施例および各比較例の調光シートについて、23℃での透明状態および不透明状態の各々におけるヘイズを測定した。ヘイズは、日本電色工業社製のヘイズメーター(NDH7000)を用い、JIS K 7136:2000に準拠して測定した。
【0058】
(評価結果)
表1に、各実施例および各比較例の液晶組成物について、粘度低下剤の添加の有無、粘度低下剤を添加していない状態での23℃における粘度、粘度低下剤の添加後の23℃における粘度を示す。
【0059】
表2に、各実施例および各比較例の液晶組成物について、-20℃、0℃、90℃、110℃の各粘度の基準粘度Vbに対する比、NI点、液晶分子の屈折率差Δnを示す。粘度低下剤を添加した実施例および比較例の基準粘度Vbは、粘度低下剤の添加後の23℃における粘度である。さらに、表2に、各実施例および各比較例の調光シートに対する駆動の可否の判定結果、および、ヘイズの測定結果を示す。
【0060】
【0061】
【0062】
表2が示すように、-20℃以上110℃以下の範囲において、各実施例および各比較例の液晶組成物の粘度は、-20℃で最大となる。そして、最大粘度Vmが基準粘度Vbの100倍以下である実施例1~9では、-20℃で調光シートの駆動が可能であった。一方、最大粘度Vmが基準粘度Vbの100倍を超えている比較例1~3では、-20℃で調光シートの駆動ができなかった。したがって、最大粘度Vmが基準粘度Vbの100倍以下であれば、低温環境で透明状態と不透明状態との良好な切り替えが可能であることが確認された。
【0063】
また、NI点が100℃未満である実施例7,8では、90℃で調光シートの駆動ができなかった。したがって、高温環境で透明状態と不透明状態との良好な切り替えを可能とするためには、NI点が100℃以上であればよいことが確認された。
【0064】
また、液晶分子の屈折率差Δnが0.17未満である実施例7,9では、透明状態のヘイズが他よりも高く、かつ、不透明状態のヘイズが他よりも低く、透明状態と不透明状態とのヘイズの差が小さくなっている。詳細には、実施例7では、特に不透明状態でのヘイズが低くなることにより、透明状態と不透明状態とのヘイズの差が小さくなっている。したがって、不透明状態での液晶分子の屈折率がポリマーネットワークの屈折率に近くなる領域に、長軸方向および短軸方向の屈折率が存在し、不透明状態での調光層での光の散乱性が低くなっていることが示唆される。一方、実施例9では、特に透明状態でのヘイズが高くなることにより、透明状態と不透明状態とのヘイズの差が小さくなっている。したがって、透明状態での液晶分子の屈折率がポリマーネットワークの屈折率から離れる領域に、長軸方向および短軸方向の屈折率が存在し、透明状態でも調光層での光の散乱が生じていることが示唆される。
【0065】
また、屈折率差Δnが0.28を超えている比較例3では、透明状態でのヘイズが高くなっている。これは、液晶分子の分子量が大きいことに起因して液晶分子が動きにくくなった結果、駆動電圧の印加によって不透明状態から透明状態に切り替わった後にも、液晶分子の向きが完全には揃わずに不規則性が残存し、調光層での光の散乱が生じていると考えられる。
【0066】
これに対し、屈折率差Δnが0.17以上0.28以下である実施例1~6,8、比較例1,2では、透明状態と不透明状態とのいずれにおいてもヘイズが良好であり、すなわち、良好な光学特性が得られている。
【0067】
また、実施例7,9から、最大粘度Vmが基準粘度Vbの30倍程度よりも小さいと、屈折率差Δnが小さくなりすぎ、上述のように光学特性が低下することが示唆される。実施例1~6,8が示すように、最大粘度Vmが基準粘度Vbの35倍以上であると、透明状態と不透明状態とのいずれにおいてもヘイズが良好となり、すなわち、良好な光学特性が得られることが示唆される。
【0068】
以上、実施形態および実施例にて説明したように、上記液晶組成物および調光シートによれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)液晶組成物において、-20℃以上110℃以下の範囲における最大粘度Vmが、23℃での基準粘度Vbの100倍以下である。これにより、液晶組成物の粘度が大きくなる低温環境であっても、駆動電圧の印加による液晶分子の配向状態の変化が好適に生じる程度に、液晶組成物の粘度の上昇が抑えられる。したがって、液晶組成物を利用した調光シートにおける透明状態と不透明状態との切り替えが良好に可能である。
【0069】
(2)最大粘度Vmが基準粘度Vbの30倍以上であれば、液晶分子の分子量が小さくなりすぎないことから、液晶分子の屈折率差Δnが過度に小さくなることが抑えられる。それゆえ、調光シートにおけるヘイズ等の光学特性が良好に得られ、低温環境での液晶組成物の粘度の大きさを抑えることと、光学特性の向上とのバランスが好適となる。また、最大粘度Vmが基準粘度Vbの35倍以上であれば、調光シートの透明状態と不透明状態とのいずれにおいても良好なヘイズが得られやすくなり、すなわち、良好な光学特性が得られやすくなる。
【0070】
(3)大気圧下における液晶組成物のNI点が、100℃以上であることにより、高温環境において調光シートの透明状態と不透明状態との良好な切り替えが可能である。したがって、低温環境と高温環境とのいずれでも調光シートが良好に駆動するため、調光シートを使用可能な温度範囲の拡大が可能である。また、上記NI点が145℃以下であることにより、低温での液晶組成物の粘度を小さく抑えやすい。
【0071】
(4)液晶分子の屈折率差Δnが0.17以上であることにより、調光シートの透明状態と不透明状態とのヘイズの差が良好に得られる。また、上記Δnが0.28以下であることにより、液晶分子の分子量が過度に大きくなることが抑えられることから、低温環境での液晶組成物の粘度の大きさを抑えることや、液晶分子の配向状態が変化したときに液晶分子の向きが揃いにくくなることを抑えることが可能である。したがって、低温環境での光透過率の応答性や調光シートの光学特性の向上が可能である。
【0072】
(5)液晶分子の誘電率異方性が正である液晶組成物を用いることで、例えば、駆動電圧の印加時に透明状態となる調光シートを得ることができる。また、液晶分子の誘電率異方性が負である液晶組成物を用いることで、例えば、駆動電圧の印加時に不透明状態となる調光シートを得ることができる。
【0073】
(6)調光シートが、上記液晶組成物を保持した透明高分子層を有する調光層20を備えることにより、低温環境において、調光シートの透明状態と不透明状態との切り替えが良好に可能となる。これにより、調光シートにおける車載部材としての適性が高められる。
【符号の説明】
【0074】
10A,10B…調光シート
20…調光層
21…ポリマーネットワーク
22…ドメイン
23…液晶組成物
24…液晶分子
31,32…透明電極層
41,42…透明支持層
51,52…配向層
【手続補正書】
【提出日】2021-08-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶分子および粘度低下剤を含む液晶組成物であって、
23℃における当該液晶組成物の粘度を基準粘度とするとき、
前記基準粘度は、10mPa・s以上500mPa・s以下であり、
-20℃以上110℃以下の範囲における粘度の最大値が、前記基準粘度の100倍以下であって、かつ、-20℃における前記液晶組成物の粘度の値である
調光シート用液晶組成物。
【請求項2】
前記粘度の最大値が、前記基準粘度の30倍以上である
請求項1に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項3】
前記粘度の最大値が、前記基準粘度の35倍以上である
請求項2に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項4】
大気圧下における前記液晶組成物のNI点は、100℃以上145℃以下の範囲に含まれる
請求項1~3のいずれか一項に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項5】
前記液晶分子における長軸方向と短軸方向との屈折率差は、0.17以上0.28以下である
請求項1~4のいずれか一項に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項6】
前記液晶組成物は、誘電率異方性が正である前記液晶分子を含む
請求項1~5のいずれか一項に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項7】
前記液晶組成物は、誘電率異方性が負である前記液晶分子を含む
請求項1~5のいずれか一項に記載の調光シート用液晶組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶組成物、および、前記液晶組成物を保持する透明高分子層を有する調光層と、
前記調光層を挟む一対の透明電極層と、
を備える調光シート。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶分子および粘度低下剤を含む液晶組成物と、前記液晶組成物を保持する透明高分子層とを有する調光層と、
前記調光層を挟む一対の透明電極層と、を備え、
前記調光層における前記透明高分子層の質量割合は20%以上80%以下であり、
23℃における前記液晶組成物の粘度を基準粘度とするとき、
前記基準粘度は、24mPa・s以上85mPa・s以下であり、
-20℃以上110℃以下の範囲における粘度の最大値が、前記基準粘度の100倍以下であって、かつ、-20℃における前記液晶組成物の粘度の値であり、
前記粘度の最大値が、696mPa・s以上7275mPa・s以下であり、
前記液晶分子における長軸方向と短軸方向との屈折率差が、0.17以上0.28以下である
調光シート。
【請求項2】
前記粘度の最大値が、前記基準粘度の30倍以上である
請求項1に記載の調光シート。
【請求項3】
前記粘度の最大値が、前記基準粘度の35倍以上である
請求項2に記載の調光シート。
【請求項4】
大気圧下における前記液晶組成物のNI点は、100℃以上145℃以下の範囲に含まれる
請求項1~3のいずれか一項に記載の調光シート。
【請求項5】
前記液晶組成物は、誘電率異方性が正である前記液晶分子を含む
請求項1~4のいずれか一項に記載の調光シート。
【請求項6】
前記液晶組成物は、誘電率異方性が負である前記液晶分子を含む
請求項1~4のいずれか一項に記載の調光シート。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、調光シートに関する。