IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社TANAーXの特許一覧

<>
  • 特開-香り見本容器 図1
  • 特開-香り見本容器 図2
  • 特開-香り見本容器 図3
  • 特開-香り見本容器 図4
  • 特開-香り見本容器 図5
  • 特開-香り見本容器 図6
  • 特開-香り見本容器 図7
  • 特開-香り見本容器 図8
  • 特開-香り見本容器 図9
  • 特開-香り見本容器 図10
  • 特開-香り見本容器 図11
  • 特開-香り見本容器 図12
  • 特開-香り見本容器 図13
  • 特開-香り見本容器 図14
  • 特開-香り見本容器 図15
  • 特開-香り見本容器 図16
  • 特開-香り見本容器 図17
  • 特開-香り見本容器 図18
  • 特開-香り見本容器 図19
  • 特開-香り見本容器 図20
  • 特開-香り見本容器 図21
  • 特開-香り見本容器 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098860
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】香り見本容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/00 20060101AFI20220627BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B65D85/00 A
B65D83/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212501
(22)【出願日】2020-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000133157
【氏名又は名称】株式会社TANAX
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 史訓
(72)【発明者】
【氏名】中江 靖
(72)【発明者】
【氏名】南城 岳之
(72)【発明者】
【氏名】日野 亮一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 健太
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲也
【テーマコード(参考)】
3E068
【Fターム(参考)】
3E068AA40
3E068CC03
3E068CE03
3E068CE20
3E068DD08
3E068DD40
3E068DE02
3E068EE21
3E068EE34
3E068EE40
(57)【要約】
【課題】液状又は粉末状の芳香体を収容した場合でも、該芳香体が外部に漏れ出すことのない香り見本容器を提供する。
【解決手段】開口部11を有する中空の容器本体10と、ガス透過性を有する合成ゴムから成り、前記開口部11を液密に封止する封止体20と、を有し、前記封止体の、前記開口部を覆う領域の厚さが10mm以下である香り見本容器を構成する。封止体20は、液状又は粉末状の芳香体を透過させないため、容器本体10にこのような芳香体を収容した状態で香り見本容器が傾けられたり倒されたりしても、該芳香体が外部に漏出することがない。また、前記封止体は、気体を透過するため、開口部11を封止体で封止した状態でも、使用者が容器内の芳香体の香りを十分に嗅ぎ取ることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する中空の容器本体と、
ガス透過性を有する合成ゴムから成り、前記開口部を液密に封止する封止体と、
を有し、
前記封止体の、前記開口部を覆う領域の厚さが10mm以下である香り見本容器。
【請求項2】
前記封止体の、前記開口部を覆う領域の厚さが5mm以下である請求項1に記載の香り見本容器。
【請求項3】
前記合成ゴムの酸素透過率が、5,000ml・mm/m2・24hr・atm以上である請求項1又は2に記載の香り見本容器。
【請求項4】
前記合成ゴムがミラブル型シリコーンゴムである請求項1~3のいずれかに記載の香り見本容器。
【請求項5】
更に、
前記封止体を覆う、複数の孔を備えたガード部材を有する
請求項1~4のいずれかに記載の香り見本容器。
【請求項6】
更に、
前記封止体を覆う開閉可能な蓋部を有する
請求項1~5のいずれかに記載の香り見本容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店頭に設置して柔軟剤やシャンプー等の芳香性商品の香りを買い物客に嗅がせるための香り見本に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、柔軟剤、シャンプー、芳香剤、又は化粧品等の香りを発する商品の売り場では、買い物客に商品の香りを試しに嗅がせるためのテスター(香り見本)が広く設置されている。こうした香り見本としては、例えば特許文献1に記載のように、粒状の担体に香り物質(すなわち製品に含まれる香料)を保持させて成る芳香体を、中空のプラスチック容器に収容し、該容器に形成された通気孔に買い物客が鼻を近づけることで香りを嗅げるようにしたものが広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-012563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような粒状の芳香体を収容した香り見本を作製する際には、香りの強さが製品と同等になるように、前記担体に保持させる香料の量を調整する必要がある。このような手間を省くため、また製品本来の香りを買い物客に嗅いでもらうため、製品そのものを香り見本に使用したいというニーズがある。しかしながら、製品が液状や粉末状であった場合、上記のような従来の香り見本において、こうした製品を芳香体として使用すると、容器に設けられた香り放出用の通気孔から容器内の芳香体(すなわち液状又は粉末状の製品)が漏れ出すおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液状又は粉末状の芳香体を収容した場合でも、該芳香体が外部に漏れ出すことのない香り見本容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明に係る香り見本容器は、
開口部を有する中空の容器本体と、
ガス透過性を有する合成ゴムから成り、前記開口部を液密に封止する封止体と、
を有し、
前記封止体の、前記開口部を覆う領域の厚さが10mm以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記封止体は、液体及び粉末を透過しないため、液状又は粉末状の芳香体を容器本体に収容した状態で、香り見本容器が傾けられたり倒されたりしても、芳香体が外部に漏出することがない。また、前記封止体は、気体を透過するため、前記開口部を該封止体で封止した状態でも、使用者が容器内の芳香体の香りを十分に嗅ぎ取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る香り見本容器の斜視図。
図2】上記香り見本容器の分解斜視図。
図3】容器本体の縦断面図。
図4】封止体の縦断面図。
図5】被せ部の縦断面図。
図6】本発明に係る香り見本容器の別の構成例を示す分解斜視図。
図7】本発明に係る香り見本容器の更に別の構成例を示す分解斜視図。
図8】本発明に係る香り見本容器のまた更に別の構成例を示す分解斜視図。
図9】封止体の別の構成例を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は縦断面図である。
図10】アンバー香料の組成を示す図。
図11】アロマ香料の組成を示す図。
図12】フローラル香料の組成を示す図。
図13】シトラス香料の組成を示す図。
図14】フルーティ香料の組成を示す図。
図15】グリーン香料の組成を示す図。
図16】ミント香料の組成を示す図。
図17】バニラ香料の組成を示す図。
図18】シリコーンゴムから成る封止体を用いた官能試験の結果を示す表。
図19】PET樹脂又はPP樹脂から成る封止体を用いた官能試験の結果を示す表。
図20】ガス透過性試験の結果を示す表。
図21】酸素透過率の異なるシリコーンゴムから成る複数の封止体を用いた官能試験の結果を示す表。
図22】液漏れ試験の結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る香り見本容器の斜視図であり、図2は前記香り見本容器の分解斜視図である。本実施形態に係る香り見本容器は、容器本体10と、封止体20と、被せ部30と、を有している。
【0010】
図3は、容器本体10の縦断面図である。容器本体10は、上面が開放された有底の円筒状容器である。容器本体10は、典型的には、硬質のプラスチック素材で構成されるが、その他の素材、例えばガラス等によって構成されたものであってもよい。以下、容器本体10の上面の開口部を上部開口11とよぶ。容器本体10の上部の外周面には、被せ部30に設けられた係合凹部32(後述)と係合する、円環状の係合凸部12が設けられている。
【0011】
図4は、封止体20の縦断面図である。封止体20は、容器本体10の上部に取り付けられる取付部21と、取付部21に設けられた膜体24とを備えている。取付部21は、容器本体10の上部開口11に挿入される略円筒形の挿入部22と、挿入部22の上端から径方向に突出し、挿入部22が上部開口11に挿入された状態において、その下面が容器本体10の上端縁に当接するフランジ部23と、を有している。ここで、挿入部22は、容器本体10の上部開口11の内径と略同一の外径を有しており、フランジ部23は、容器本体10の上端部の外径と略同一の外径を有している。膜体24は、取付部21の上端から下端までのいずれかの高さ位置に、取付部21の内部空間を介した液体の流通を遮断するように張設されている。なお、膜体24の形状は、図4に示すように平坦なものであってもよいが、上方又は下方に膨出した形状とすることにより、香気成分の透過面積を増大させるようにしてもよい。
【0012】
封止体20は、少なくとも膜体24が合成ゴムで構成されているものとする。また、膜体24の厚さは、10mm以下(好ましくは5mm以下)とする。また、前記合成ゴムは、JIS K 7126-2:2006で測定された酸素透過率が5,000ml・mm/m2・24hr・atm以上であるものとすることが望ましい。前記合成ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム(ミラブル型シリコーンゴム)を用いることができる。更に、前記シリコーンゴムとしては、ビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)を好適に用いることができる。但し、膜体24を構成する合成ゴムの種類は、これに限らず、例えば、VMQ以外のミラブル型シリコーンゴム、ウレタンゴム、又はイソプレンゴム等、いかなるものを用いてもよい。なお、封止体20は、典型的にはその全体が合成ゴムによって一体成形されたものとすることができるが、これに限らず、例えば、合成ゴム又はその他の素材で構成された取付部21に、別途製造された合成ゴム製の膜体を取り付けたものとしてもよい。膜体24の厚さは、破れにくさを確保するため、0.5mm以上とすることが望ましい。また、液漏れを防止するため、封止体20の挿入部22の長さは2mm以上とすることが望ましい。
【0013】
図5は、被せ部30の縦断面図である。被せ部30は、容器本体10の上部に取り付けられる被せ部本体31と、被せ部本体31に対してヒンジ35を介して開閉可能な蓋部36と、を備えている。被せ部本体31は、下面が解放された略円筒形の部材であり、その上面は円形の板状部材であるガード部材33によって覆われている。ガード部材33は、使用者によって膜体24が破られるのを防止するものであり、人の指が通らない程度の大きさの通気孔34を備えている。なお、図1及び図2には、ガード部材33に4つの扇形の通気孔34を設けた例を示しているが、通気孔34の数及び形状はこれに限定されるものではなく、例えば、円形や四角形の通気孔を多数設けた構成としてもよい。また、被せ部本体31の内周面には、容器本体10の外周面に設けられた係合凸部12と係合する、円環状の係合凹部32が設けられている。
【0014】
本実施形態に係る香り見本容器を組み立てる際には、まず、容器本体10の内部に液状の芳香体を収容した状態で、容器本体10の上部開口11に封止体20を取り付ける。このとき、封止体20の取付部21の外周面が容器本体10の内周面に密着すると共に、膜体24によって容器本体10の上部開口11が覆われるため、容器本体10が封止体20によって液密に封止された状態となる。なお、容器本体10に収容する液状の芳香体は、典型的には、柔軟剤、シャンプー、ボディーソープ、芳香剤、又は化粧品等の芳香性の製品そのものであるが、これに限らず、こうした製品に用いられる香料を液体の溶媒に溶解したものであってもよい。次に、封止体20が取り付けられた容器本体10の上部に、被せ部30を取り付ける。このとき、容器本体10に設けられた係合凸部12と被せ部本体31に設けられた係合凹部32とが互いに係合することにより、容器本体10に被せ部30が確実に固定される。なお、このような係合凸部12及び係合凹部32に代えて、容器本体10の外周面にねじ山を設けると共に、被せ部本体31の内周面に前記ねじ山と螺合するねじ溝を設けるようにしてもよい。
【0015】
以上のようにして組み立てられた香り見本容器は、芳香性の製品と共に、店頭の陳列棚などに配置される。この香り見本容器を買い物客(使用者)が手にとって蓋部36を開けると、容器内の芳香体から放散されて膜体24を透過した香気成分が、通気孔34を介して香り見本容器の外部に放出される。膜体24を構成するシリコーンゴムは、ガス透過性に優れているものの、液体は透過しないため、蓋部36が開放された状態で香り見本容器が傾けられたり倒されたりしても、液状の芳香体が外部に漏出することはない。
【0016】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。例えば、本発明における容器本体10の形状は、上記のような円筒形に限らず、例えば角筒状など、種々の形状とすることができる。また、封止体20及び被せ部30の形状も上記実施形態で示した形状に限らず、容器本体10の上部開口11の形状に合わせた種々の形状とすることができる。
【0017】
また、本発明に係る香り見本容器は、上記実施形態のように、被せ部本体31と蓋部36とがヒンジ35を介して接続されているものに限らず、被せ部本体31と蓋部36とが分離された形状であってもよい。
【0018】
また、本発明に係る香り見本容器は、ガード部材33又は蓋部36のいずれか一方を有しないものとしてもよい。具体的には、例えば、図6に示すように、上記実施形態における被せ部30から蓋部36及びヒンジ35を除いた構成としたり、図7に示すように、上記実施形態における被せ部30からガード部材33を除いた構成としたりすることができる。あるいは、図8に示すように、上記のような被せ部30に代えて、容器本体10の上部に着脱自在なスクリューキャップ37(本発明における蓋部に相当)を取り付ける構成としてもよい。また、本実施形態に係る香り見本容器は、ガード部材33及び蓋部36の両方を有しない(すなわち、容器本体10と封止体20のみから成る)構成としてもよい。
【0019】
更に、上記実施形態では、容器本体10に液状の芳香体を収容するものとしたが、本発明における香り見本容器に収容する芳香体は、これに限定されるものではなく、いかなる形態のものであってもよい。例えば、上記液状の芳香体に代えて、粉末状又は顆粒状の芳香体を容器本体10に収容するようにしてもよい。この場合、該粉末状又は顆粒状の芳香体は、芳香性の製品そのものであってもよいが、製品に用いられる香料を粉末状又は顆粒状の担体に保持させたものであってもよい。
【0020】
なお、封止体20の形状は、図4に示したような膜体24を備えたものに限定されるものではなく、例えば、図9に示すような形状のものであってもよい。同図に示す封止体120は、容器本体10の上部開口11に挿入される挿入部122と、挿入部122の上部に設けられたフランジ部123とを有しており、その全体が中実となっている。この場合も、封止体120は合成ゴムから成るものとし、その厚さ(すなわち図9の上下方向の寸法)が10mm以下(好ましくは5mm以下)であるものとする。また、液漏れを防止するため、封止体120における挿入部122の長さは2mm以上とすることが望ましい。また、この場合も、封止体120を構成する合成ゴムとしては、JIS K 7126-2:2006で測定された酸素透過率が、5,000ml・mm/m2・24hr・atm以上であるものを用いることが望ましい。
【0021】
本発明者は、本発明に係る香り見本容器の開発にあたり、封止体の材質、厚さ、又は形状の異なる種々の香り見本容器を作り、これらの香り見本容器を用いた官能試験、ガス透過性試験、及び液漏れ試験を行った。以下、これらの試験について説明する。
【0022】
(官能試験)
素材及び厚さの異なる複数種類の封止体を用意し、芳香体を収容した香り見本容器の容器本体に、前記封止体を取り付ける前と、取り付けた後における香りの感じ方の変化を調べた。前記複数種類の封止体は、全体がシリコーンゴム(VMQ)、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、又はポリプロピレン(PP)樹脂から成るものとし、各素材について、容器本体の上部開口を覆う部分の厚さが1mm、3mm、5mm、7mm、又は10mmのものを用意した。なお、前記厚さが1mm又は3mmの封止体は、図4に示したような形状を有し、膜体の厚さが1mm又は3mmであるものとした。また、前記厚さが5mm、7mm、又は10mmの封止体は、図9に示したような形状を有し、全体の厚さ(図9の上下方向の寸法)が5mm、7mm、又は10mmであるものとした。なお、容器本体としては、図3で示したものと同様の形状を有する、PP樹脂製の容器を使用した。
【0023】
芳香体としては、アンバー、アロマ、シトラス、フローラル、フルーティ、グリーン、ミント、及びバニラと名付けられた8種類の香料を使用した。図10図17にこれらの香料の組成を示す。これらの香料はいずれも液体であり、香りの強弱が香料間で均等になるように調合されている。
【0024】
官能試験においては、前記8種類の芳香体をそれぞれ異なる香り見本容器の容器本体に20mlずつ収容し、各容器本体の上部開口に前記封止体を取り付ける前と、該封止体を取り付けた後とにおいて、10名のパネラー(いずれも香料の専門家)に香りを嗅がせた。そして、封止体の取り付け前後における香りの感じ方の変化を「5:変化なし、4:やや感じ方が弱くなった、3:明らかに感じ方が弱くなった、2:わずかに感じた、1:全く感じなくなった」の5段階で評価させ、10名の評価結果の単純平均を最終スコアとした。なお、評価の個人差を抑えるため、各パネラーは、前記5段階の各評価レベルに対応する標準サンプルを用いて、感じ方の変化の評価レベルについて共通認識を確立させてから試験を実施した。
【0025】
シリコーンゴム製の封止体を用いた官能試験の結果を図18に、PET樹脂製の封止体及びPP樹脂製の封止体を用いた官能試験の結果を図19に示す。これらの図から明らかであるように、シリコーンゴムから成り、厚さ10mm以下の封止体では、いずれのPET樹脂製の封止体及びPP樹脂製の封止体よりも、取り付け前後における香りの変化が少なかった。特に、シリコーンゴム製の厚さ5mm以下の封止体では、香りの感じ方は弱くなるものの十分に香りを感じることができ、厚さ1mmのシリコーンゴム製キャップでは、香りの感じ方があまり変化しないことが分かった。
【0026】
(ガス透過性試験)
上記官能試験における封止体に用いたものと同じ素材から成る厚さ1mmのシートを試験片として、酸素透過率を測定した結果を図20に示す。なお、酸素透過率の測定はJIS K 7126-2:2006に基づき、23℃、60%RHにおいて行った。この結果から、シリコーンゴムが、PET樹脂及びPP樹脂よりも遥かに高いガス透過性を示すことが確かめられた。
【0027】
更に、膜体の厚さがいずれも1mmであって、酸素透過率がそれぞれ5000ml・mm/m2・24hr・atm, 10000ml・mm/m2・24hr・atm, 又は98000ml・mm/m2・24hr・atmであるシリコーンゴムで構成された3種類の封止体(いずれも図4と同様の形状のもの)を作成し、上記と同様に官能試験を行った。その結果、酸素透過率が5000ml・mm/m2・24hr・atmのものではスコアが2~2.7であり、酸素透過率が10000ml・mm/m2・24hr・atmのものではスコアが3~3.6であり、酸素透過率が98000ml・mm/m2・24hr・atmのものではスコアが4.2~4.8であった(図21参照)。このことから、封止体の、容器本体の上部開口を覆う領域の酸素透過度が5000ml/m2・24hr・atm以上であれば、香り見本としての効果が達成できることが分かった。また、前記領域の酸素透過度が10000ml/m2・24hr・atm以上であれば、香り放散効果に優れた香り見本を構成できることが分かった。
【0028】
(液漏れ試験)
図4に示したものと同様の形状を有し、挿入部22の長さ(すなわち図4における上下方向の寸法)のみが異なる複数の封止体を使用して、香り見本容器の外部に液体の香料が漏れ出すかどうかを検証した。香り見本容器の容器本体としては、図3に示したものと同様の形状を有する、長さ6cm、直径3cmの円筒形容器(PP樹脂から成るもの)を使用した。前記複数の封止体は、いずれも図4に示したものと同様の形状を有し、膜体の厚さが1mm、フランジ部の厚さも1mmであるものとし、挿入部22の長さのみを10mm、6mm、及び2mmの3種類とした。また、このような挿入部22の長さが異なる3種類の封止体を、シリコーンゴム、PET樹脂、及びPP樹脂でそれぞれ作成した。
【0029】
上記の各封止体を用いた液漏れ試験は、それぞれ以下の手順で行った。まず、容器本体に上述のアンバー香料を20ml収容した上で、該容器本体の上部開口に封止体を取り付け、その上に図6に示したような被せ部を取り付けて固定した。そして、その状態で香り見本全体の重量(すなわち、容器本体、封止体、被せ部、及び香料を合わせた重量)を測定した。次に、前記香り見本を、上部開口を上に向けた状態で5回振り、その後に、液漏れの有無を目視で確認すると共に、香り見本全体の重量が変化したかどうかを確認した。
【0030】
以上の手順を10名のパネラーがそれぞれ行った。そして、各封止体を用いた際の結果を、それぞれ「3:液漏れが目視で確認できず、かつ重量の変化もなかった、2:液漏れが目視で確認できなかったが、重量が変化した、1:液漏れが目視で確認できた」の3段階で評価させ、10名の評価結果の単純平均を最終スコアとした。
【0031】
上記液漏れ試験の結果を図22に示す。この結果から、いずれの素材から成る封止体においても、挿入部の長さが長くなるにつれて液漏れが起こりにくくなることが確認された。これは、挿入部を長くすることにより、容器本体と封止体との間の摩擦力が高まるためと推察される。また、シリコーンゴムのように柔軟性が高い素材の場合、挿入部の長さが短いと、容器を振った際などに、容器内の液体との衝突によって挿入部が変形しやすく、これが液漏れの一因になることも考えられる。
【符号の説明】
【0032】
10…容器本体
11…上部開口
12…係合凸部
20…封止体
21…取付部
22…挿入部
23…フランジ部
24…膜体
30…被せ部
31…被せ部本体
32…係合凹部
33…ガード部材
34…通気孔
35…ヒンジ
36…蓋部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2021-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する中空の容器本体と、
ガス透過性を有する合成ゴムから成り、前記開口部を液密に封止する封止体と、
を有し、
前記封止体が、前記開口部に挿入される略円筒形の挿入部と、該挿入部の内部空間を介した液体の流通を遮断するように張設された膜体とを有し、該挿入部の外周面が前記容器本体の内周面に密着し、これにより該容器本体を液密に封止するものであって、
封止体の、前記膜体の厚さが5mm以下であり、前記挿入部の長さが6mm以上である香り見本容器。
【請求項2】
開口部を有する中空の容器本体と、
ガス透過性を有する合成ゴムから成り、前記開口部を液密に封止する封止体と、
を有し、
前記封止体が、前記開口部に挿入される中実の挿入部を有し、該挿入部の外周面が前記容器本体の内周面に密着し、これにより該容器本体を液密に封止するものであって、該挿入部の長さが6mm~10mmである香り見本容器。
【請求項3】
前記合成ゴムの酸素透過率が、5,000ml・mm/m2・24hr・atm以上である請求項1又は2に記載の香り見本容器。
【請求項4】
前記合成ゴムがミラブル型シリコーンゴムである請求項1~3のいずれかに記載の香り見本容器。
【請求項5】
更に、
前記封止体を覆う、複数の孔を備えたガード部材を有する
請求項1~4のいずれかに記載の香り見本容器。
【請求項6】
更に、
前記封止体を覆う開閉可能な蓋部を有する
請求項1~5のいずれかに記載の香り見本容器。