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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098868
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】ランフラットタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/00 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
B60C17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212511
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】富▲高▼ 祐
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA30
3D131BA01
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB10
3D131BC25
3D131HA37
3D131JA02
(57)【要約】
【課題】リム組みの容易化が図られながらリム外れを抑制することができるランフラットタイヤを提供する。
【解決手段】一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延び、サイドウォールゴム21を含む一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20間に配置されたトレッド30と、一対のビード10間に架け渡されたカーカスプライ40と、サイドウォール20に配置された補強ゴム層60と、サイドウォールゴム21の外表面21aに固定可能なビード外装材70と、を備え、ビード外装材70は、サイドウォールゴム21よりも硬度が高く、かつ、サイドウォールゴム21に固定された状態で、ビード10のタイヤ径方向外側に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、
前記一対のビードの各々からタイヤ径方向外側に延び、サイドウォールゴムを含む一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォール間に配置されたトレッドと、
前記一対のビード間に架け渡されたカーカスプライと、
前記サイドウォールに配置された補強ゴム層と、
前記サイドウォールゴムの外表面に固定可能なビード外装材と、を備え、
前記ビード外装材は、前記サイドウォールゴムよりも硬度が高く、かつ、前記サイドウォールゴムに固定された状態で、前記ビードのタイヤ径方向外側に配置される、ランフラットタイヤ。
【請求項2】
前記ビードのタイヤ幅方向外側に配置された前記ビード外装材のタイヤ径方向外側端は、タイヤ断面高さにおいてタイヤ径方向内側端から70%以内の領域に配置されている、請求項1に記載のランフラットタイヤ。
【請求項3】
前記ビード外装材は、当該タイヤを構成するゴム部品に埋設される固定部材により固定可能とされ、前記固定部材は、前記ゴム部品の厚さに対して50%以下の深さに埋設される、請求項1または2に記載のランフラットタイヤ。
【請求項4】
前記ビード外装材は、樹脂で構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【請求項5】
前記ビードのタイヤ幅方向外側に配置された前記ビード外装材のタイヤ径方向内側端は、前記ビードが嵌合されるリムフランジのタイヤ径方向外側端よりもタイヤ径方向内側に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【請求項6】
前記ビードのタイヤ幅方向外側に配置された前記ビード外装材のタイヤ径方向内側端は、前記ビードが嵌合されるリムフランジのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側に5mm以上50mm以下の位置に配置される、請求項1~5のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランフラットタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイドウォールに補強ゴム層を配置したサイド補強タイプのランフラットタイヤが知られている。このようなランフラットタイヤは、タイヤの内圧が低下した場合、補強ゴム層によりタイヤが完全に偏平化することが抑制され、ある程度の距離のランフラット走行(タイヤの内圧が低下した状態での走行)が可能となっている。
例えば特許文献1には、第2ビードを有する環状膨出部を第1ビードのタイヤ幅方向外側に配置し、ランフラット走行時において、環状膨出部がリムフランジを拘束することにより、ビードがリムフランジから外れるいわゆるリム外れの発生防止を図ったランフラットタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-44611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されるランフラットタイヤでは、タイヤを変形させてホイールのリムに組み込むリム組みの際に、剛性を有する第2ビードがタイヤを変形させにくくしてリム組みの障害になるおそれが懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、リム組みの容易化が図られながらリム外れを抑制することができるランフラットタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のランフラットタイヤは、一対のビードと、前記一対のビードの各々からタイヤ径方向外側に延び、サイドウォールゴムを含む一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォール間に配置されたトレッドと、前記一対のビード間に架け渡されたカーカスプライと、前記サイドウォールに配置された補強ゴム層と、前記サイドウォールゴムの外表面に固定可能なビード外装材と、を備え、前記ビード外装材は、前記サイドウォールゴムよりも硬度が高く、かつ、前記サイドウォールゴムに固定された状態で、前記ビードのタイヤ径方向外側に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リム組みの容易化が図られながらリム外れを抑制することができるランフラットタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るランフラットタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図2】実施形態のランフラットタイヤの、タイヤ径方向内側の端部を示すタイヤ幅方向拡大断面図であって、ビード外装材がタイヤ1に固定される構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るランフラットタイヤであるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図2は、タイヤ1のタイヤ径方向内側の端部を示すタイヤ幅方向拡大断面図であって、後述するビード外装材70がタイヤ1に固定される構造を示す図である。
【0010】
タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、図1においては、右半分の断面図を示す。図1中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0011】
なお、図1の断面図は、タイヤ1をホイールのリム100に装着して規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0012】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1の断面図における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては、紙面下側である。
なお、図2では図1と同様に、タイヤ幅方向を矢印Xで示し、タイヤ径方向を矢印Yで示している。
【0013】
タイヤ1は、例えば乗用車用のランフラットタイヤである。図1に示されるように、タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20間に配置されたトレッド30と、一対のビード10間に配置されたカーカスプライ40と、カーカスプライ40のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー50と、を備えている。
【0014】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11のタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、を備えている。
【0015】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。
ビードフィラー12は、タイヤ径方向外側に延びるにつれてしたがって先細り形状となっているゴム部材である。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。ビードフィラー12は、例えば周囲のゴム部材よりも硬度が高いゴムにより構成される。
【0016】
チェーハー13は、ビードコア11周りに設けられたカーカスプライ40のタイヤ径方向内側に設けられている。
リムストリップゴム14は、チェーハー13およびカーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムと接触する部材である。
【0017】
一対のサイドウォール20は、カーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム21と、補強ゴム層60と、ビード外装材70と、を有している。
サイドウォールゴム21は、タイヤ1の外壁面を構成する。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
補強ゴム層60およびビード外装材70については後述する。
【0018】
トレッド30は、無端状のベルト31およびキャッププライ32と、トレッドゴム33と、を備えている。
【0019】
ベルト31は、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ32は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。本実施形態のベルト31は、内側のベルト311と外側のベルト312とを備えた2層構造である。内側のベルト311および外側のベルト312は、いずれも複数のスチールコード等のコードがゴムで覆われた構造を有している。
【0020】
本実施形態の2層構造のベルト31は、内側のベルト311が外側のベルト312よりも幅広であり、したがってベルト31のタイヤ幅方向外側端31Aは、内側のベルト311のタイヤ幅方向外側端で構成される。ベルト31を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、路面に対するトレッド30の接地性が向上する。
なお、ベルト31は2層構造に限らず、1層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0021】
キャッププライ32は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ32は、例えばポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。
【0022】
本実施形態においては、キャッププライ32のタイヤ幅方向外側端32Aは、ベルト31のタイヤ幅方向外側端31Aよりもタイヤ幅方向外側に延出している。キャッププライ32を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
なお、本実施形態のキャッププライ32のタイヤ幅方向両端部は、タイヤ内腔側に畳まれて2重に重ねられた構造を有しており、これによりトレッド30のタイヤ幅方向両端部がより補強されたものとなっている。
【0023】
トレッドゴム33は、キャッププライ32のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム33は、走行時に路面と接地する接地面331を構成する部材である。トレッドゴム33の接地面331には、例えば複数の溝で構成されるトレッドパターン34が設けられている。本実施形態においてトレッドパターン34は、タイヤ幅方向に並ぶ複数の溝341、342を有している。複数の溝341、342のそれぞれは、タイヤ周方向に沿って延びている。
【0024】
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ40は、一対のビード10間を、一対のサイドウォール20およびトレッド30を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となる複数のカーカスコードを含んでいる。複数のカーカスコードは、例えばタイヤラジアル方向に延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。カーカスコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のカーカスコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ40が構成されている。
【0025】
カーカスプライ40は、一方のビードコア11から他方のビードコア11に延び、トレッド30とビード10との間に延在するプライ本体部401と、プライ本体部401からビードコア11で折り返される一対の屈曲部402と、屈曲部402のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対の折り返し部403と、を有する。プライ本体部401、屈曲部402および折り返し部403は、連続している。
【0026】
プライ本体部401は、タイヤ径方向内側においてビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置されている。折り返し部403は、タイヤ径方向内側においてビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置されている。ビードコア11およびビードフィラー12以外の部分において、折り返し部403はプライ本体部401に重ね合わされている。屈曲部402は、カーカスプライ40においてタイヤ径方向の最も内側の部分を構成している。
【0027】
なお、本実施形態のカーカスプライ40は1層構造であるが、カーカスプライ40は1層構造に限らず、2層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0028】
上述したビード10のチェーハー13は、屈曲部402を含むカーカスプライ40のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。また、リムストリップゴム14は、チェーハー13およびカーカスプライ40の折り返し部403の、タイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側の外表面は、上述したサイドウォールゴム21で覆われている。
【0029】
インナーライナー50は、一対のビード10間のタイヤ内面を覆っており、タイヤ1の内壁面を構成する。インナーライナー50は、トレッド30においてはカーカスプライ40のプライ本体部401の内面を覆い、トレッド30から一対のサイドウォール20にわたる領域においては補強ゴム層60の内面を覆い、一対のサイドウォール20から一対のビード10にわたる領域では、補強ゴム層60およびチェーハー13の内面を覆っている。
インナーライナー50は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0030】
サイドウォール20を構成する補強ゴム層60は、カーカスプライ40とインナーライナー50との間に挟まれた状態に配置されている。
【0031】
補強ゴム層60は、タイヤ幅方向断面視(タイヤ子午線断面視)において略三日月形状を有するサイド補強ゴムである。補強ゴム層60は、タイヤ1の全周にわたって環状に設けられている。補強ゴム層60は、タイヤ1の内圧が低下した場合であっても、タイヤ1が完全に偏平化することを妨げる機能を有する。
【0032】
ここで、図1に示されるように、トレッド30とサイドウォール20との移行領域のカーカスプライ40のタイヤ外表面側においては、サイドウォールゴム21がトレッド30に向かって延び、トレッドゴム33がサイドウォール20に向かって延びており、トレッドゴム33の外表面側をサイドウォールゴム21が覆っている。
【0033】
また、ビード10のカーカスプライ40のタイヤ内腔側においては、チェーハー13のタイヤ径方向外側端部を補強ゴム層60のタイヤ径方向内側端60Bが覆っている。
また、補強ゴム層60のタイヤ径方向外側端60Aは、ベルト31のタイヤ幅方向外側端31Aよりも内側であって、トレッド30のタイヤ幅方向端部まで延在している。
インナーライナー50は、さらにこれらのゴム部材のタイヤ内腔側を覆っている。
【0034】
ここで、ビードフィラー12および補強ゴム層60に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム21およびインナーライナー50よりも硬度が高いゴムを用いる。
ゴムの硬度は、JIS K6253に準拠して、23℃雰囲気において、タイプAデュロメータで測定される値(デュロメータ硬さ)である。
【0035】
例えば、サイドウォールゴム21の硬度を基準としたとき、ビードフィラー12の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1.2倍~2.3倍程度の硬度のゴムを用いることがより好ましい。また、補強ゴム層60の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1.1倍~1.9倍程度の硬度のゴムを用いることがより好ましい。
さらに、リムストリップゴム14の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1倍~1.6倍程度の硬度のゴムを用いることがより好ましい。
このような硬度とすることで、タイヤとしての柔軟性とビード10付近の剛性のバランスを保ち、かつランフラット耐久性を確保することができる。
【0036】
ここで、本実施形態に係るタイヤ1が装着されるリム100について説明する。
【0037】
図1には、リム100における、タイヤ1のビード10が装着される部分が示されている。リム100は、当該リム100の軸方向(タイヤ幅方向に相当)外側端の部分を構成するリムフランジ101と、リムフランジ101よりも軸方向内側に設けられたハンプ102と、リムフランジ101とハンプ102との間に設けられたシート部103と、を備えている。リムフランジ101およびハンプ102のそれぞれは、リム100の径方向(タイヤ径方向に相当)外側に突出する周方向に沿った環状の凸条である。リムフランジ101は、径方向外側に凸となるように湾曲形成されている。リム100は、ハンプ102の軸方向内側に、当該リム100の主体をなす円筒状のウェル部104を有している。
【0038】
シート部103は、リムフランジ101とハンプ102とに挟まれる周溝形状の底部を形成する。リムフランジ101とハンプ102との間にビード10のタイヤ径方向内側の端部が嵌合して、リム100にタイヤ1が装着される。その装着状態で、シート部103からリムフランジ101の外表面にわたり、ビード10のタイヤ径方向内側の端部がほぼ密着する。詳しくは、チェーハー13がシート部103およびリムフランジ101に密着し、リムストリップゴム14におけるタイヤ径方向外側の外表面の少なくともタイヤ幅方向内側の部分が、リムフランジ101に密着する。
【0039】
図1に示されるように、サイドウォール20を構成するサイドウォールゴム21の外表面21aは、タイヤ径方向内側に向かうにしたがってタイヤ幅方向外側にせり出すように形成されている。そのサイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側の端部におけるタイヤ幅方向外側に、環状の形状を有するビード外装材70が配置される。
【0040】
ビード外装材70は、後述するようにタイヤ内腔に空気が充填された後にサイドウォールゴム21の外表面21aに固定される。ビード外装材70は、サイドウォールゴム21の外表面21aに固定された状態においては、ビード10を構成するリムストリップゴム14のタイヤ径方向外側の部分に、サイドウォール20と同心状に配置される。
【0041】
図2に示されるように、ビード外装材70の厚み方向に沿った断面(タイヤ幅方向断面に相当する)の形状は、外周側すなわちタイヤ径方向外側に向かって先細り形状に延び、かつ、内周側すなわちタイヤ径方向内側に向かって厚みが増大するような略涙滴形状を有している。
ビード外装材70は、サイドウォールゴム21に密着させられる内面73と、タイヤ側面の側に露出する外面74と、を有している。外面74は、内周側に向かうにしたがってサイドウォールゴム21から離間するように傾斜している。
【0042】
ビード外装材70は、サイドウォールゴム21よりも硬度が高い材料で構成され、サイドウォールゴム21よりも剛性を有していることが好ましい。ビード外装材70は、サイドウォールゴム21よりも硬度が高い樹脂によって構成されることがより好ましい。
【0043】
ビード外装材70が樹脂で構成される場合、その樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、あるいは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂が好適とされ、これらの中では、ポリウレタン樹脂がより好適とされる。また、ビード外装材70を構成する樹脂の特性としては、引張モジュラス(10%伸び時)が、5MPa以上180000MPa以下程度を有する樹脂が好ましい。
【0044】
図2に示されるように、ビード外装材70は、固定部材としての複数の第1固定部材80Aおよび複数の第2固定部材80Bにより、サイドウォールゴム21の外表面に固定される。
【0045】
第1固定部材80Aは、軸部81の一端に頭部82を有し、軸部81に返し部83が設けられたスタッドピンである。第2固定部材80Bは、軸部81の長さが異なる以外は第1固定部材80Aと同一の構成を有している。すなわち第2固定部材80Bは、第1固定部材80Aの軸部81よりも長い軸部81の一端に頭部82を有し、軸部81に返し部83が設けられたスタッドピンである。
返し部83は、サイドウォールゴム21内に埋設されて固定部材80A、80Bがサイドウォールゴム21から抜けることを抑止するように機能する部分であり、軸部81から離間するにしたがって頭部82側に傾斜している。返し部83は、軸部81の周方向に分割した複数の突起を含む態様でもよく、周方向に連続する環状に形成された態様でもよい。
【0046】
ビード外装材70は、第1固定部材80Aの軸部81が挿通される第1挿通穴71と、第2の固定部材80Bの軸部81が挿通される第2挿通穴72と、を有している。第1挿通穴71および第2挿通穴72のそれぞれは、ビード外装材70の厚み方向に貫通している。第1挿通穴71は外周側に配置され、第2挿通穴72は第1挿通穴71の内周側に配置されている。第1挿通穴71および第2挿通穴72のそれぞれは、環状のビード外装材70の周方向に間隔をおいて複数設けられている。第1挿通穴71および第2挿通穴72の外面74側の端部には、頭部82が収容される座ぐり71a、72aがそれぞれ設けられている。
【0047】
図2に示されるように、サイドウォールゴム21は、外表面21aに開口する第1固定穴23および第2固定穴24を有している。第1固定穴23には、第1固定部材80Aの軸部81が打ち込まれて埋設される。第2固定穴24には、第2固定部材80Bの軸部81が打ち込まれて埋設される。第1固定穴23および第2固定穴24の内径は、軸部81が圧入状態となって第1固定穴23および第2固定穴24の内部に強固に保持されるように、軸部81よりも小径に形成されることが好ましい。第1固定穴23および第2固定穴24は、ビード外装材70の第1挿通穴71および第2挿通穴72のそれぞれに対応して、周方向に間隔をおいて複数配置されている。
【0048】
第1固定穴23は、第1固定部材80Aの返し部83が係合して第1固定部材80Aを抜け止めする溝23aを有している。第2固定穴24は、第2固定部材80Bの返し部83が係合して第2固定部材80Bを抜け止めする溝24aを有している。
【0049】
第1固定穴23は、タイヤ幅方向とほぼ平行に延びており、サイドウォールゴム21のみに形成されている。第1固定穴23の深さは、第1固定穴23が形成された部分のゴム部品のタイヤ幅方向の厚さT1に対して50%以下であることが好ましい。
第2固定穴24もタイヤ幅方向とほぼ平行に延びているが、第1固定穴23は、サイドウォールゴム21からリムストリップゴム14にわたって形成されている。第2固定穴24の深さは、第2固定穴24が形成された部分のゴム部品のタイヤ幅方向の厚さT2に対して50%以下であることが好ましい。
【0050】
第1固定穴23が形成された部分のゴム部品は、カーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されているサイドウォールゴムを含んでいる。
第2固定穴24が形成された部分のゴム部品は、カーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されているサイドウォールゴム21およびリムストリップゴム14を含んでいる。
【0051】
ビード外装材70の複数の第1挿通穴71のそれぞれに第1固定部材80Aの軸部81を挿通し、頭部82を打撃して軸部81を第1固定穴23に打ち込み、ビード外装材70の複数の第2挿通穴72のそれぞれに第2固定部材80Bの軸部81を挿通し、頭部82を打撃して軸部81を第2固定穴24に打ち込むことにより、図1に示されるようにビード外装材70がサイドウォールゴム21の外表面21aに固定される。
第1固定部材80Aにおいては、軸部81が第1固定穴23に埋設され、返し部83が溝23aに係合することにより、サイドウォールゴム21から抜けることが規制される。
第2固定部材80Bにおいては、軸部81が第2固定穴24に埋設され、返し部83が溝24aに係合することにより、サイドウォールゴム21から抜けることが規制される。
これにより、ビード外装材70はサイドウォールゴム21の外表面21aに強固に固定される。
【0052】
第1固定部材80Aにおいては、軸部81の先端が第1固定穴23の底部に達する。したがって、第1固定部材80Aの軸部81は、当該軸部81が埋設されるゴム部品の厚さに対して50%以下の深さに埋設される。
第2固定部材80Bにおいては、軸部81の先端が第2固定穴24の底部に達する。したがって、第2固定部材80Bの軸部81は、当該軸部81が埋設されるゴム部品の厚さに対して50%以下の深さに埋設される。
【0053】
図1に示されるように、サイドウォールゴム21の外表面21aに固定されると、ビード外装材70は、ビード10におけるリムストリップゴム14のタイヤ幅方向外側に配置される。そのビード外装材70においては、タイヤ径方向内側端70Bは、リムフランジ101のタイヤ径方向外側端101Aよりもタイヤ径方向内側に配置される。すなわち、ビード外装材70の内径はリムフランジ101の外径よりも小さい。詳しくは、ビード外装材70のタイヤ径方向内側端70Bは、リムフランジ101のタイヤ径方向外側端101Aからタイヤ径方向で距離L離間する位置に配置される。この距離Lは、5mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0054】
また、上記のようにビード10のタイヤ幅方向外側に配置されたビード外装材70においては、そのタイヤ径方向外側端70Aは、タイヤ1のタイヤ断面高さにおいてタイヤ径方向内側端から70%以内の領域に配置されていることが好ましい。
【0055】
本実施形態のタイヤ1は、ビード外装材70をサイドウォールゴム21に固定しない状態で、ホイールのリム100に装着する作業、すなわちリム組みが行われる。
【0056】
リム組みは、まず、ホイールをタイヤ1の径方向内側の空間に嵌め込んで、ビード10を含む一方側のタイヤ径方向内側の端部を、一方側のリムフランジ101の内側に配置する。
次いで、他方側のビード10に連なるサイドウォール20をタイヤ幅方向内側に撓ませて、ビード10を含む他方側のタイヤ径方向内側の端部を、他方側のリムフランジ101のタイヤ幅方向内側に配置する。次いで、タイヤ1の内腔に空気を充填して規定の内圧にする。
【0057】
タイヤ1の内腔に空気が充填されると、内圧を受けた一対のビード10のそれぞれがリム100のシート部103およびリムフランジ101に気密的に密着し、リム組みが完了する。このように本実施形態のタイヤ1では、ビード外装材70を外した状態でリム組みを行うことにより、リム組みを容易に遂行することができる。
【0058】
タイヤ内腔への空気充填後に、上記のようにしてビード外装材70をサイドウォールゴム21に固定する。ビード外装材70は、ビード10のタイヤ幅方向外側に配置される。
【0059】
本実施形態のタイヤ1においては、内圧が大気圧程度に低下した場合、補強ゴム層60によりサイドウォール20の撓みが抑制されて完全に偏平化することが抑制される。これにより、ある程度の距離の走行、すなわちランフラット走行が可能となる。
【0060】
ランフラット走行時において、例えばカーブを走行する際、タイヤ1はタイヤ幅方向に向かう横力を受ける場合がある。横力を受けたタイヤ1においては、ビード外装材70がリムフランジ101のタイヤ幅方向外側から当接することにより、ビード10がハンプ102を乗り越えてリム100から外れるリム外れが抑制される。
【0061】
このようなリム外れ抑制効果を確実に得る観点から、上述したように、ビード外装材70の内径はリムフランジ101の外径よりも小さいことが好ましく、さらには、ビード外装材70のタイヤ径方向内側端70Bとリムフランジ101のタイヤ径方向外側端101Aとの間のタイヤ径方向の距離Lは、少なくとも5mm以上であることが好ましい。
【0062】
なお、タイヤ1をリム100から外すリム外しの必要性が生じた場合には、サイドウォールゴム21からビード外装材70を引きはがすとともに、複数の第1固定部材80Aおよび第2固定部材80Bを引き抜いて、ビード外装材70をサイドウォール20より取り外してから行う。これにより、ビード外装材70が邪魔にならずにリム外しを容易に行なうことができる。
【0063】
本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0064】
(1)本実施形態のタイヤ1は、一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延び、サイドウォールゴム21を含む一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20間に配置されたトレッド30と、一対のビード10間に架け渡されたカーカスプライ40と、サイドウォール20に配置された補強ゴム層60と、サイドウォールゴム21の外表面21aに固定可能なビード外装材70と、を備え、ビード外装材70は、サイドウォールゴム21よりも硬度が高く、かつ、サイドウォールゴム21に固定された状態で、ビード10のタイヤ径方向外側に配置される。
【0065】
本実施形態では、ビード外装材70を外した状態でリム組みを行うことにより、リム組みを容易に遂行することができ、空気充填後にビード外装材70をサイドウォールゴム21に固定することにより、ランフラット走行時のリム外れを抑制することができる。すなわち、本実施形態のタイヤ1によれば、リム組みの容易化が図られながらリム外れを抑制することができる。
【0066】
(2)本実施形態のタイヤ1においては、ビード10のタイヤ幅方向外側に配置されたビード外装材70のタイヤ径方向外側端70Aは、タイヤ断面高さにおいてタイヤ径方向内側端から70%以内の領域に配置されていることが好ましい。
【0067】
これにより、ビード外装材70がサイドウォールゴム21に固定されても、ビード外装材70によりサイドウォール20の剛性が高くなり過ぎず、適度な剛性と柔軟性とがともに確保されるため、良好な乗り心地を確保することができる。
【0068】
(3)本実施形態のタイヤ1においては、ビード外装材70は、タイヤ1を構成するゴム部品に埋設される第1固定部材80Aおよび第2固定部材80Bにより固定可能とされ、第1固定部材80Aおよび第2固定部材80Bは、ゴム部品の厚さに対して50%以下の深さに埋設される。
【0069】
これにより、サイドウォールゴム21に対するビード外装材70の固定強度を確保することができるとともに、第1固定部材80Aおよび第2固定部材80Bがカーカスプライ40に達してカーカスプライ40の強度を損ねるおそれを確実に回避することができる。
【0070】
(4)本実施形態のタイヤ1においては、ビード外装材70は、樹脂で構成されていることが好ましい。
【0071】
樹脂製のビード外装材70によれば、例えばゴムよりも剛性が高く変形しにくいように構成することができるため、横力を受けた際のリム外れ抑制効果を十分に得ることができる。また、剛性を備えたビード外装材70を固定した状態でありながらも、タイヤ1全体としての重量増を抑制することができる。
【0072】
(5)本実施形態のタイヤ1においては、ビード10のタイヤ幅方向外側に配置されたビード外装材70のタイヤ径方向内側端70Bは、ビード10が嵌合されるリムフランジ101のタイヤ径方向外側端101Aよりもタイヤ径方向内側に配置される形態を含む。
【0073】
これにより、ランフラット走行時に横力を受けた際においても、ビード外装材70によるリム外れの抑制効果を十分に得ることができる。
(6)本実施形態のタイヤ1においては、ビード10のタイヤ幅方向外側に配置されたビード外装材70のタイヤ径方向内側端70Bは、ビード10が嵌合されるリムフランジ101のタイヤ径方向外側端101Aからタイヤ径方向内側に5mm以上50mm以下の位置に配置されることが好ましい。
【0074】
これにより、ランフラット走行時に横力を受けた際においても、ビード外装材70によるリム外れの抑制効果を十分に得ることができる。また、ビード外装材70を備えることによる重量増を抑制することができる。
【0075】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができる。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
例えば、ビード外装材70は樹脂製に限定されず、例えば金属製であってよい。例えばアルミニウムやアルミニウム合金で構成されると、軽量であることから好ましい。
ビード外装材70をサイドウォールゴム21に固定する固定部材としては、ビード外装材70をサイドウォールゴム21に後付けによって確実に固定できるものであれば、スタッドピンである第1固定部材80Aおよび第2固定部材80Bに限定されない。
【符号の説明】
【0077】
1 タイヤ(ランフラットタイヤ)
10 ビード
14 リムストリップゴム(ゴム部品)
20 サイドウォール
21 サイドウォールゴム(ゴム部品)
21a サイドウォールゴムの外表面
30 トレッド
40 カーカスプライ
60 補強ゴム層
70 ビード外装材
70A ビード外装材のタイヤ径方向外側端
70B ビード外装材のタイヤ径方向内側端
80A 第1固定部材
80B 第2固定部材
100 リムフランジ
101A リムフランジのタイヤ径方向外側端
図1
図2