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特開2022-98878タービンディスク溝加工用ブローチおよびそれを用いたタービンディスクの溝加工方法
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  • 特開-タービンディスク溝加工用ブローチおよびそれを用いたタービンディスクの溝加工方法 図1
  • 特開-タービンディスク溝加工用ブローチおよびそれを用いたタービンディスクの溝加工方法 図2
  • 特開-タービンディスク溝加工用ブローチおよびそれを用いたタービンディスクの溝加工方法 図3
  • 特開-タービンディスク溝加工用ブローチおよびそれを用いたタービンディスクの溝加工方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098878
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】タービンディスク溝加工用ブローチおよびそれを用いたタービンディスクの溝加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 43/02 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
B23D43/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212523
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】井沢 晃
(72)【発明者】
【氏名】阿閉 喜一
【テーマコード(参考)】
3C050
【Fターム(参考)】
3C050BB03
3C050BC02
3C050BD01
(57)【要約】
【課題】タービンディスクの溝加工時において外部から給油する場合でも切削加工の位置まで切削油剤が届くタービンディスク溝加工用ブローチおよびそれを用いたタービンディスクの溝加工方法を提供する。
【解決手段】長手方向に形成された基部2と、長手方向に沿って基部2の上方に設けられた複数の切れ刃3,3と、隣接する切れ刃3,3間に形成された刃溝4と、を有するタービンディスク溝加工用ブローチ1において、長手方向に対して垂直な方向に凹部5を刃溝4に隣接するように設けるタービンディスク溝加工用ブローチ1とする。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に形成された基部と、前記長手方向に沿って前記基部の上方に設けられた複数の切れ刃と、隣接する前記切れ刃間に形成された刃溝と、を有するタービンディスク溝加工用ブローチであって、前記長手方向に対して垂直な方向に凹部が前記刃溝に隣接するように設けられていることを特徴とするタービンディスク溝加工用ブローチ。
【請求項2】
請求項1に記載のタービンディスク溝加工用ブローチを前記長手方向に移動させることでタービンディスクに溝加工を行う際に、前記凹部を上方にした状態で外部から切削油剤を前記凹部へ供給しながら前記タービンディスクに溝加工を行うことを特徴とするタービンディスクの溝加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機や火力発電所等で使用されるタービンディスクの外周面に溝加工を行うためのブローチおよび当該ブローチを用いたタービンディスクの溝加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主に航空機や火力発電所等で使用されるタービンディスクの外周面には、多数の羽根を嵌め込むために樹枝形状の溝加工を特殊な工具(タービンディスク溝加工用ブローチ)で切削加工により行われる(特許文献1ないし5参照)。
【0003】
また、タービンディスクは一般的に耐熱鋼や耐熱合金などの高硬度材であり、かつ溝形状が複雑であるため、溝加工の際には複数の工程に分割して、工程ごとに異なる形状や材質の工具が使用される。従来のタービンディスク溝加工用ブローチ100の形状を図5に示す。
【0004】
特に、被削材が高硬度材の場合には、一般的な鋼材に比べて切削工具による被切削性が著しく低下する。そのため、切削加工時には切削工具の外部から塩素等の特殊な成分を含有する切削油剤を切削位置に給油していた。従来のタービンディスク溝加工用ブローチ100を使用してタービンディスクW100に溝加工を行っている状態を図6および図7に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62-61419号公報
【特許文献2】特開平1-188219号公報
【特許文献3】特開2001-234704号公報
【特許文献4】実開昭51-45693号公報
【特許文献5】実開昭53-76389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、使用する専用のブローチが複雑な形状であるため、ブローチの外部から給油を行っても切削加工の位置まで切削油剤が届かず、切削油剤が届かない位置で切削加工が行われると、ブローチの切れ刃の刃先が早期に摩耗するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明はタービンディスクの溝加工において、外部から給油する場合でも切削加工の位置まで切削油剤が届くタービンディスク溝加工用ブローチおよびそれを用いたタービンディスクの溝加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のタービンディスク溝加工用ブローチは、長手方向に形成された基部,その長手方向に沿って基部の上方に設けた複数の切れ刃,隣接する切れ刃間に形成させる刃溝を有するタービンディスク溝加工用ブローチにおいて、当該タービンディスク溝加工用ブローチの長手方向に対して垂直な方向に(刃溝に隣接するように)凹部を設けられている。
【0009】
また、前述のタービンディスク溝加工用ブローチを用いてタービンディスクの溝加工を行う方法については、当該溝加工を行う際に凹部の開口部を上方にした状態で外部から切削油剤を開口部へ供給しながらタービンディスクに溝加工を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明のタービンディスク溝加工用ブローチは、当該ブローチを形成する刃溝に長手方向に対して直角方向へ凹部を設けることで切削加工時に外部から切削油剤を給油した際に当該凹部および刃溝を介して各切れ刃の切削加工位置まで切削油剤が届く。そのため、タービンディスク溝加工用ブローチの切れ刃の早期摩耗やタービンディスク溝の加工面の悪化を防止するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態のブローチ1の平面図である
図2】本発明の実施形態のブローチ1の正面図である。
図3図2に示すブローチ1のX-X線断面図である。
図4】本実施形態のブローチ1による加工時の模式断面図である。
図5】従来のブローチ100の形態を示す図である。
図6】従来のブローチ100を用いた加工状態を示す正面図である。
図7図6に示すブローチ100付近のA-A線模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のタービンディスク溝加工用ブローチの実施形態について、図面を用いて説明する。本発明の一実施形態であるタービンディスク溝加工用ブローチ1の部分平面図を図1、部分正面図を図2図2のタービンディスク溝加工用ブローチ1のX-X線断面図を図3に示す。
【0013】
本発明のタービンディスク溝加工用ブローチ1は、図1ないし図3に示すようにタービンディスク溝加工用ブローチ1の底部で基礎部分でもある基部2が長手方向に形成されている。この基部2の上方には同じく長手方向に沿って複数の切れ刃3,3が刃溝4を介して隣接して形成されている。
【0014】
この刃溝4には、タービンディスク溝加工用ブローチ1の一側面側に凹部5が設けられている。凹部5は、タービンディスク溝加工用ブローチ1の長手方向に対して垂直な方向に刃溝4に隣接している。
【0015】
次に、図1ないし図3に示すタービンディスク溝加工用ブローチ1を用いてタービンディスクの溝加工を行った状態の模式断面図を図4に示す。図4において溝加工時におけるタービンディスクW1や加工装置等の条件は前述の図7に示した状態と同一にしている。
【0016】
本発明のタービンディスク溝加工用ブローチ1を同溝加工に使用すると、図4に示すように加工装置から給油される切削油剤(図4中の矢印)がタービンディスク溝加工用ブローチ1の凹部5および刃溝4を通過して加工点である切れ刃3の刃先まで到達できることがわかる。
【0017】
つまり、本発明のタービンディスク溝加工用ブローチは、当該ブローチを形成する刃溝に長手方向に対して直角方向へ凹部を設けることで切削加工時に外部から切削油剤を給油した際に当該凹部を介して各切れ刃の切削加工位置まで切削油剤が届く。そのため、タービンディスク溝加工用ブローチの切れ刃の早期摩耗やタービンディスク溝の加工面の悪化を防止するという効果を奏する。
【符号の説明】
【0018】
1,100 タービンディスク溝加工用ブローチ
2 基部
3 切れ刃
4 刃溝
5 凹部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7