(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098882
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】車両のセカンダリラッチ装置
(51)【国際特許分類】
B62D 25/12 20060101AFI20220627BHJP
E05B 83/24 20140101ALI20220627BHJP
【FI】
B62D25/12 N
E05B83/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212530
(22)【出願日】2020-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】591038587
【氏名又は名称】株式会社アンセイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】森 克巳
【テーマコード(参考)】
2E250
3D004
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ49
2E250KK01
2E250LL15
2E250MM05
2E250QQ03
3D004AA12
3D004AA13
3D004BA02
3D004CA02
3D004CA05
3D004CA15
3D004CA41
(57)【要約】
【課題】セカンダリレバーを円滑に揺動させ、かつ、フードが開位置に移動しようとすることでストライカから係合位置にあるセカンダリレバーに力が作用するときにその力を好適に支持することができる車両のセカンダリラッチ装置を提供する。
【解決手段】セカンダリラッチ装置1において、第2片部22は、第1軸穴71H及び第2軸穴22Hを挿通して固定された軸体60によって第1片部71に対して揺動可能である。セカンダリレバー10は、被支持部20、係合部30及び操作部40と一体に形成された少なくとも1つの当接部51、52をさらに有する。当接部51、52は、フード8が開位置に移動しようとすることでストライカ80から係合位置にあるセカンダリレバー10に力F1が作用するときにベース70に当接することで、力F1を軸体60、第1片部71及び第2片部22と共に支持する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、閉位置と半開位置と開位置との間で移動可能に前記車体に支持されたフードとの間に設けられ、前記フードが前記半開位置を越えて前記開位置に移動することを規制する車両のセカンダリラッチ装置であって、
前記車体及び前記フードの一方に設けられたストライカと、
前記車体及び前記フードの他方に設けられたベースと、
揺動軸心周りに揺動可能に前記ベースに支持された被支持部と、前記被支持部に一体に形成され、前記揺動軸心の径外方向であって互いに異なる方向にそれぞれ延びる係合部及び操作部と、を有し、前記係合部が前記ストライカに係合することで前記フードが前記半開位置を越えて前記開位置に移動することを規制する係合位置と、前記操作部が解除操作を受けて前記係合部が前記ストライカに係合不能となる解除位置と、の間で揺動可能なセカンダリレバーと、
前記ベースと前記セカンダリレバーとの間に設けられ、前記セカンダリレバーを前記係合位置に向けて付勢する付勢手段と、を備え、
前記ベースには、前記車体及び前記フードの前記一方に向かって突出する1つの第1片部が設けられ、
前記第1片部には、前記揺動軸心を中心とする第1軸穴が貫設され、
前記被支持部には、前記揺動軸心方向において前記第1片部に隣接する1つの第2片部が設けられ、
前記第2片部には、前記揺動軸心を中心とする第2軸穴が貫設され、
前記第2片部は、前記第1軸穴及び前記第2軸穴を挿通して固定された軸体によって前記第1片部に対して揺動可能であり、
前記セカンダリレバーは、前記被支持部、前記係合部及び前記操作部と一体に形成された少なくとも1つの当接部をさらに有し、
前記当接部は、前記フードが前記開位置に移動しようとすることで前記ストライカから前記係合位置にある前記セカンダリレバーに力が作用するときに前記ベースに当接することで、前記力を前記軸体、前記第1片部及び前記第2片部と共に支持するように構成されていることを特徴とする車両のセカンダリラッチ装置。
【請求項2】
前記当接部は、前記揺動軸心方向において互いに離れた複数である請求項1記載の車両のセカンダリラッチ装置。
【請求項3】
前記セカンダリレバーが前記係合位置にあるときに前記係合部と前記ストライカとが噛み合う噛み合い位置を通過し、かつ前記揺動軸心に直交する仮想平面を規定すると、
1つの前記当接部は、前記仮想平面と重なる位置に配置されている請求項1又は2記載の車両のセカンダリラッチ装置。
【請求項4】
前記当接部は、前記軸体から前記揺動軸心方向において離れた1つである請求項1記載の車両のセカンダリラッチ装置。
【請求項5】
前記セカンダリレバーが前記係合位置にあるときに前記係合部と前記ストライカとが噛み合う噛み合い位置を通過し、かつ前記揺動軸心に直交する仮想平面を規定すると、
前記軸体は、前記仮想平面と重なる位置に配置されている請求項1乃至4のいずか1項記載の車両のセカンダリラッチ装置。
【請求項6】
前記操作部は、前記仮想平面と重なる位置に配置されている請求項5記載の車両のセカンダリラッチ装置。
【請求項7】
前記ストライカは、前記セカンダリレバーが前記解除位置にある状態で前記フードが前記開位置から前記閉位置に移動したときに、前記セカンダリレバーに摺接して前記セカンダリレバーを前記係合位置に案内する案内部を有している請求項1乃至6のいずか1項記載の車両のセカンダリラッチ装置。
【請求項8】
前記揺動軸心は、前記車体の幅方向に延びており、
前記操作部は、前記車体の前方から前記解除操作を受け、
前記係合部の輪郭部分は、前記車体の後方に向かって曲げられている請求項1乃至7のいずれか1項記載の車両のセカンダリラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のセカンダリラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の車両のセカンダリラッチ装置の一例が開示されている。このセカンダリラッチ装置は、車体とフードとの間に設けられている。フードは、閉位置と半開位置と開位置との間で移動可能に車体に支持されている。このセカンダリラッチ装置は、フードが半開位置を越えて開位置に移動することを規制する。
【0003】
より詳しくは、このセカンダリラッチ装置は、ストライカ、ベース、セカンダリレバー及び付勢手段を備えている。ストライカは、車体に設けられている。ベースは、フードに設けられている。
【0004】
セカンダリレバーは、被支持部、係合部及び操作部を有している。被支持部は、揺動軸心周りに揺動可能にベースに支持されている。係合部は、被支持部に一体に形成されている。係合部は、揺動軸心の径外方向であって下向きに延びている。操作部は、被支持部及び係合部とは別部材であって、被支持部及び係合部に一体的に組み付けられている。操作部は、揺動軸心の径外方向であって前向きに延びている。
【0005】
セカンダリレバーは、係合部がストライカに係合することでフードが半開位置を越えて開位置に移動することを規制する係合位置と、操作部が解除操作を受けて係合部がストライカに係合不能となる解除位置と、の間で揺動可能である。
【0006】
付勢手段は、ベースとセカンダリレバーとの間に設けられている。付勢手段は、セカンダリレバーを係合位置に向けて付勢している。
【0007】
ベースには、車体に向かって突出する2つの第1片部が設けられている。両第1片部のそれぞれには、揺動軸心を中心とする第1軸穴が貫設されている。セカンダリレバーの被支持部には、揺動軸心方向において両第1片部にそれぞれ隣接する2つの第2片部が設けられている。両第2片部のそれぞれには、揺動軸心を中心とする第2軸穴が貫設されている。
【0008】
両第2片部は、両第1軸穴及び両第2軸穴を挿通して固定された長い軸体によって両第1片部に対して揺動可能である。
【0009】
軸体と、ベースの第1片部と、被支持部の第2片部とは、フードが開位置に移動しようとすることでストライカから係合位置にあるセカンダリレバーに力が作用するときに、その力を支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記従来のセカンダリラッチ装置では、両第1軸穴と両第2軸穴とに軸体を挿通して固定しているため、構造が複雑である。このため、このセカンダリラッチ装置では、各部品の製造誤差やそれらの組み付け誤差が累積され易い。その結果、このセカンダリラッチ装置では、セカンダリレバーがベースに対してがたついたり、セカンダリレバーが揺動するときの抵抗が増大したり、セカンダリレバーが揺動するときにこじられたりする不具合が発生し易く、セカンダリレバーを円滑に揺動させることが難しい。
【0012】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、セカンダリレバーを円滑に揺動させ、かつ、フードが開位置に移動しようとすることでストライカから係合位置にあるセカンダリレバーに力が作用するときにその力を好適に支持することができる車両のセカンダリラッチ装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の車両のセカンダリラッチ装置は、車体と、閉位置と半開位置と開位置との間で移動可能に前記車体に支持されたフードとの間に設けられ、前記フードが前記半開位置を越えて前記開位置に移動することを規制する車両のセカンダリラッチ装置であって、
前記車体及び前記フードの一方に設けられたストライカと、
前記車体及び前記フードの他方に設けられたベースと、
揺動軸心周りに揺動可能に前記ベースに支持された被支持部と、前記被支持部に一体に形成され、前記揺動軸心の径外方向であって互いに異なる方向にそれぞれ延びる係合部及び操作部と、を有し、前記係合部が前記ストライカに係合することで前記フードが前記半開位置を越えて前記開位置に移動することを規制する係合位置と、前記操作部が解除操作を受けて前記係合部が前記ストライカに係合不能となる解除位置と、の間で揺動可能なセカンダリレバーと、
前記ベースと前記セカンダリレバーとの間に設けられ、前記セカンダリレバーを前記係合位置に向けて付勢する付勢手段と、を備え、
前記ベースには、前記車体及び前記フードの前記一方に向かって突出する1つの第1片部が設けられ、
前記第1片部には、前記揺動軸心を中心とする第1軸穴が貫設され、
前記被支持部には、前記揺動軸心方向において前記第1片部に隣接する1つの第2片部が設けられ、
前記第2片部には、前記揺動軸心を中心とする第2軸穴が貫設され、
前記第2片部は、前記第1軸穴及び前記第2軸穴を挿通して固定された軸体によって前記第1片部に対して揺動可能であり、
前記セカンダリレバーは、前記被支持部、前記係合部及び前記操作部と一体に形成された少なくとも1つの当接部をさらに有し、
前記当接部は、前記フードが前記開位置に移動しようとすることで前記ストライカから前記係合位置にある前記セカンダリレバーに力が作用するときに前記ベースに当接することで、前記力を前記軸体、前記第1片部及び前記第2片部と共に支持するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の車両のセカンダリラッチ装置では、第1片部の第1軸穴と、第2片部の第2軸穴とに軸体を挿通して固定しているため、構造が簡素である。このため、このセカンダリラッチ装置では、各部品の製造誤差やそれらの組み付け誤差が累積され難い。
【0015】
その結果、このセカンダリラッチ装置では、セカンダリレバーがベースに対してがたついたり、セカンダリレバーが揺動するときの抵抗が増大したり、セカンダリレバーが揺動するときにこじられたりする不具合が発生し難く、セカンダリレバーを円滑に揺動させることができる。
【0016】
また、このセカンダリラッチ装置では、セカンダリレバーが有する少なくとも1つの当接部は、フードが開位置に移動しようとすることでストライカから係合位置にあるセカンダリレバーに力が作用するときにベースに当接することで、その力を軸体、第1片部及び第2片部と共に支持する。つまり、当接部は、被支持部がベースに支持される構成の簡素化による強度低下を補うことができる。
【0017】
したがって、本発明の車両のセカンダリラッチ装置では、セカンダリレバーを円滑に揺動させ、かつ、フードが開位置に移動しようとすることでストライカから係合位置にあるセカンダリレバーに力が作用するときにその力を好適に支持することができる。その結果、このセカンダリラッチ装置では、耐久性の低下を抑制しつつ、製造コストの低廉化を実現できる。
【0018】
当接部は、揺動軸心方向において互いに離れた複数であることが望ましい。この場合、複数の当接部は、ストライカからセカンダリレバーに力が作用するときにベースの複数箇所に当接することで、その力の一部を確実性高く支持できる。その結果、各当接部は、被支持部がベースに支持される構成の簡素化による強度低下を確実性高く補うことができる。
【0019】
セカンダリレバーが係合位置にあるときに係合部とストライカとが噛み合う噛み合い位置を通過し、かつ揺動軸心に直交する仮想平面を規定すると、1つの当接部は、仮想平面と重なる位置に配置されていることが望ましい。この場合、ストライカからセカンダリレバーに力が作用するときに、1つの当接部によって軸体がこじられることを抑制できる。
【0020】
当接部は、軸体から揺動軸心方向において離れた1つであることが望ましい。この場合、ストライカからセカンダリレバーに力が作用するときに、1つの当接部がベースにおける軸体から揺動軸心方向において離れた一箇所に当接することで、その力を軸体等と共に好適に支持できる。
【0021】
セカンダリレバーが係合位置にあるときに係合部とストライカとが噛み合う噛み合い位置を通過し、かつ揺動軸心に直交する仮想平面を規定すると、軸体は、仮想平面と重なる位置に配置されていることが望ましい。この場合、ストライカからセカンダリレバーに力が作用するときに、軸体がこじられることを抑制できる。
【0022】
操作部は、仮想平面と重なる位置に配置されていることが望ましい。この場合、ユーザが操作部に対して解除操作を行ってセカンダリレバーを係合位置から解除位置に揺動させるときに、軸体がこじられることを抑制できる。
【0023】
ストライカは、セカンダリレバーが解除位置にある状態でフードが開位置から閉位置に移動したときに、セカンダリレバーに摺接してセカンダリレバーを係合位置に案内する案内部を有していることが望ましい。
【0024】
この場合、セカンダリレバーが解除位置に固着した場合でも、フードを開位置から閉位置に移動させる動作によって、案内部がセカンダリレバーを係合位置に強制的に復帰させる。その結果、係合位置に復帰したセカンダリレバーは、フードが次に閉位置から開位置に移動するときに、フードが半開位置を越えて開位置に移動することを確実性高く規制できる。
【0025】
揺動軸心は、車体の幅方向に延びていることが望ましい。操作部は、車体の前方から解除操作を受けることが望ましい。そして、係合部の輪郭部分は、車体の後方に向かって曲げられていることが望ましい。この場合、ユーザが車体の前方から操作部に対いて解除操作を行うときに係合部に手が触れたとしても、係合部の輪郭部分が車体の後方に向かって曲げられていることにより、不快感を抱くことを抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の車両のセカンダリラッチ装置によれば、セカンダリレバーを円滑に揺動させ、かつ、フードが開位置に移動しようとすることでストライカから係合位置にあるセカンダリレバーに力が作用するときにその力を好適に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施例1の車両のセカンダリラッチ装置の模式側面図であって、車体及びフードに適用された状態を示す図である。
【
図2】
図2は、セカンダリラッチ装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、セカンダリラッチ装置の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、フードが閉位置から上昇するときにおけるセカンダリラッチ及びストライカの作用を説明する模式側面図である。
【
図5】
図5は、フードが開位置から下降するときにおけるセカンダリラッチ及びストライカの作用を説明する模式側面図である。
【
図6】
図6は、フードが開位置に移動しようとすることでストライカから係合位置にあるセカンダリレバーに力が作用するときに、複数の当接部がその力を軸体、第1片部及び第2片部と共に支持する状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、軸体、当接部及び操作部と、仮想平面との位置関係を説明する正面図である。
【
図9】
図9は、実施例2のセカンダリラッチ装置に係り、フードが開位置に移動しようとすることでストライカから係合位置にあるセカンダリレバーに力が作用するときに、1つの当接部がその力を軸体、第1片部及び第2片部と共に支持する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の車両のセカンダリラッチ装置1は、自動車等である車両の車体9とフード8との間に設けられている。
【0030】
車体9は、フレーム部材9Fを有している。フレーム部材9Fは、車体9の前方に設けられたエンジンルームの前端に配置されている。フレーム部材9Fは、車体9の幅方向に、すなわち
図1の紙面に直交する方向に延びている。
【0031】
車体9の幅方向は、車両に搭乗するユーザを基準としたときの左右方向である。
図1の紙面手前側は車体9の左側面側であり、
図1の紙面奥側は車体9の右側面側である。
図2以降の各図に示す前後方向、左右方向及び上下方向は、全て
図1に対応させて表示する。
【0032】
フード8は、車両の外装の一部を構成するアウターパネルと、アウターパネルを補強するインナーパネルとを有している。フード8は、その前端がフレーム部材9Fよりも前方に位置して前後方向及び左右方向に延在することにより、エンジンルームを覆っている。
【0033】
図示は省略するが、フード8は、その後端がエンジンルームの後端に設けられた図示しないヒンジを介して車体9に揺動可能に支持されている。これにより、フード8は、
図1に示すようにエンジンルームを覆う閉位置と、図示は省略するがフード8の前端が上方かつ後方に変位するように揺動してエンジンルームを開放する開位置との間で移動可能となっている。
【0034】
車体9のフレーム部材9Fとフード8との間には、メインラッチ装置7が設けられている。メインラッチ装置7は、メインラッチ本体7A及びメインストライカ7Bを有している。
【0035】
メインラッチ本体7Aは、フレーム部材9Fの上端部に固定されており、図示しないフォーク及びポール等を有している。メインストライカ7Bは、フード8のインナーパネルに固定され、メインラッチ本体7Aに向かって下向きに突出している。
【0036】
メインラッチ装置7は、フード8が閉位置にある状態で、メインラッチ本体7Aのフォークがメインストライカ7BのU字形状部分の下端を係止することにより、フード8を閉位置に保持する。フード8が閉位置にある状態におけるメインストライカ7Bの下端の位置を位置S1とする。
【0037】
メインラッチ装置7は、車両に搭乗するユーザが運転席の近傍に設けられた図示しない解除レバーを操作することにより、フード8を閉位置に保持しなくなる。具体的には、メインラッチ本体7Aのフォークが揺動してメインストライカ7Bの下端を位置S1から位置S2に押し上げて、その下端を係止しなくなる。メインストライカ7Bの下端が位置S2にあるときのフード8の位置は、半開位置である。この状態で、メインラッチ装置7は、フード8が半開位置を越えて開位置に移動することを許容する。
【0038】
ユーザは、半開位置にあるフード8を持ち上げて開位置に移動させることができる。また、ユーザは、開位置にあるフード8を押し下げて半開位置を通過させ、閉位置に移動させることができる。つまり、フード8は、閉位置と半開位置と開位置との間で移動可能である。
【0039】
メインラッチ装置7は、フード8が半開位置を通過して閉位置に移動するときに位置S2から位置S1に下降するメインストライカ7Bの下端をメインラッチ本体7Aのフォークが係止することにより、フード8を閉位置に保持する状態に復帰する。
【0040】
セカンダリラッチ装置1は、メインラッチ装置7から前方に離れた位置で、車体9のフレーム部材9Fとフード8との間に設けられている。
【0041】
セカンダリラッチ装置1は、車両の走行時において誤操作等によりメインラッチ装置7がフード8を閉位置に保持しなくなった場合でも、フード8が半開位置を越えて開位置に移動することを規制して、車両の安全性を確保するものである。
【0042】
図1~
図8に示すように、セカンダリラッチ装置1は、ストライカ80、ベース70、セカンダリレバー10、軸体60及び引っ張りコイルバネ17を備えている。引っ張りコイルバネ17は、本発明の「付勢手段」の一例である。
【0043】
なお、セカンダリラッチ装置1の各構成要素の説明において、前後方向及び上下方向は、フード8が閉位置にある状態を基準とする。
【0044】
本実施例では、ストライカ80、ベース70及びセカンダリレバー10はそれぞれ、板状の金属材料がプレス加工及び折り曲げ加工等されることによって製造される。軸体60は、棒状の金属材料がプレス加工及び切削加工等されることによって製造される。
【0045】
図1に示すように、ストライカ80は、ボルト等の締結具によって、フレーム部材9Fの前面の上端に固定されている。
図2及び
図3に示すように、ストライカ80における前向きに突出しかつ上下方向に延びる略板状部分の上部には被係合部81が形成され、その略板状部分の下部には案内部83が形成されている。
【0046】
被係合部81は、前向きかつ下向きに突出している。案内部83は、前向きかつ上向きに突出している。案内部83の先端は、被係合部81の先端よりも前方に位置している。被係合部81と案内部83との間には、凹部82が後向きかつ下向きに凹むように形成されている。
【0047】
図1に示すように、ベース70は、ボルト等の締結具によって、フード8のインナーパネルに固定されている。
図2及び
図3に示すように、ベース70は、一体に形成されたベース本体79、1つの第1片部71及び2つの被当接部73、74を有している。
【0048】
ベース本体79は、前向きに緩やかに下り傾斜するように延在し、かつ左右方向に延在する略矩形平板形状であって、後端縁の中央から前向きに凹む切り欠き79Cが形成されている。
【0049】
1つの第1片部71は、ベース本体79における切り欠き79Cの左辺からフレーム部材9Fに向かって下向きに突出し、かつ前後方向に延びている。
図3及び
図8に示すように、第1片部71には、揺動軸心X10を中心とする第1軸穴71Hが貫設されている。揺動軸心X10は、車体9の幅方向、すなわち左右方向に延びている。
【0050】
図2に示すように、第1片部71の後端には、バネ係止部70Sが設けられている。バネ係止部70Sは右向きに突出する小片であり、引っ張りコイルバネ17の一端を係止するための穴が貫設されている。
【0051】
図2及び
図3に示すように、2つの被当接部73、74は、ベース本体79の前端縁における左右方向に離れた2箇所からそれぞれ下向きに延びた後、同じ高さでそれぞれ左向きに延び、さらに上向きに短く突出している。
【0052】
図1に示すように、被当接部73、74は、下向きに延びながら後向きに緩やかに傾斜している。
図8に示すように、左方の被当接部73は、第1片部71から前方に離れた位置にある。右方の被当接部74は、第1片部71から前方かつ右方に離れた位置にある。
【0053】
図2及び
図3に示すように、セカンダリレバー10には、主壁10F、左壁10L及び右壁10Rが形成されている。主壁10Fは、上端縁から後向きに下り傾斜するように延び、かつ左右方向に延びている。主壁10Fの下端縁は後向きに曲げられている。左壁10Lは、主壁10Fの左端縁から後向きかつ上向きに延びている。右壁10Rは、主壁10Fの右端縁から後向きかつ上向きに延びている。
【0054】
セカンダリレバー10は、一体に形成された被支持部20、係合部30、操作部40及び2つの当接部51、52を有している。
【0055】
被支持部20は、左壁10Lの上部分に位置している。被支持部20には、1つの第2片部22が設けられている。第2片部22は、後向きかつ上向きに延びており、第1片部71に左方から隣接している。つまり、第2片部22は、揺動軸心X10方向において第1片部71に隣接している。
【0056】
図3及び
図8に示すように、第2片部22には、揺動軸心X10を中心とする第2軸穴22Hが貫設されている。第2軸穴22Hは、第1軸穴71Hよりも小径である。
【0057】
図2及び
図3に示すように、主壁10Fの下部分には、開口10Hが貫設されている。係合部30は、主壁10F、左壁10L及び右壁10Rにおける開口10Hを左方、右方及び下方から囲む部分である。係合部30の輪郭部分30Sは、車体9の後方に向かって曲げられている。
【0058】
操作部40は、主壁10Fの上端縁から前向きかつ下向きに延び、かつ左右方向に延びている。操作部40は、フード8の前端の下方に位置している。操作部40の先端側は、樹脂製のキャップ40Aによって覆われている。係合部30及び操作部40は、揺動軸心X10の径外方向であって互いに異なる方向にそれぞれ延びている。
【0059】
左壁10Lの上部分には、長穴11が貫設されている。右壁10Rの上部分には、長穴12が貫設されている。長穴11、12は、揺動軸心X10から前方かつ下方に離れた位置にあり、揺動軸心X10の周方向に延びている。長穴11と長穴12とは同一形状であり、揺動軸心X10方向から見たときの位置も一致している。
【0060】
2つの当接部51、52は、揺動軸心X10方向において互いに離れている。左方の当接部51は、左壁10Lにおける長穴11よりも上方に位置する部分であり、右方の当接部52は、右壁10Rにおける長穴12よりも上方に位置する部分である。
【0061】
図3に示すように、軸体60は、頭部63、第1軸部61、第2軸部62を有している。頭部63は、円盤形状である。第1軸部61は、頭部63の左面に接続し、頭部63よりも小径の円柱である。第2軸部62は、第1軸部61の左面に接続し、第1軸部61よりも小径の円柱である。
【0062】
図8に示すように、第2片部22は、第1軸穴71H及び第2軸穴22Hを挿通して固定された軸体60によって第1片部71に対して揺動可能である。
【0063】
より詳しくは、第1軸部61が第1軸穴71Hに挿通され、第2軸部62が第2軸穴22Hに挿通され、第2軸部62の先端が加締められることにより、軸体60が第2片部22に固定されている。第1軸穴71Hと第1軸部61との間には僅かな隙間が確保され、頭部63が第1片部71に右から隣接して抜け止めすることにより、第2片部22が第1片部71に対して揺動軸心X10周りに揺動可能となっている。
【0064】
こうして、被支持部20は、揺動軸心X10周りに揺動可能にベース70に支持されている。この状態で、
図2に示すように、左方の被当接部73は左方の長穴11に進入し、右方の被当接部74は右方の長穴12に進入している。
【0065】
セカンダリレバー10の右壁10Rには、バネ係止部10Sが設けられている。バネ係止部10Sは後向きかつ上向きに突出する小片であり、引っ張りコイルバネ17の他端を係止するための穴が貫設されている。
【0066】
引っ張りコイルバネ17は、一端がベース70のバネ係止部70Sに係止され、他端がセカンダリレバー10のバネ係止部10Sに係止されることにより、ベース70とセカンダリレバー10との間に設けられている。
【0067】
引っ張りコイルバネ17は、係合部30を後向きに変位させ、かつ操作部40を下向きに変位させるようにセカンダリレバー10を付勢している。左方の当接部51が左方の被当接部73に上から当接し、かつ右方の当接部52が右方の被当接部74に上から当接することにより、セカンダリレバー10は、係合位置に位置決めされる。つまり、引っ張りコイルバネ17は、セカンダリレバー10を係合位置に向けて付勢している。
【0068】
図1、
図6~
図8に示すセカンダリレバー10の位置も係合位置である。
図4及び
図5に実線で示すセカンダリレバー10の位置も係合位置である。
【0069】
車体9の前方に立つユーザから操作部40が解除操作を受けて上向きに変位することにより、セカンダリレバー10は、引っ張りコイルバネ17の付勢力に抗して、
図4及び
図5に二点鎖線で示す解除位置に揺動し、係合部30を前向きに変位させる。ユーザが操作部40から手を離すと、セカンダリレバー10は、引っ張りコイルバネ17の付勢力により係合位置に復帰する。こうして、セカンダリレバー10は、係合位置と解除位置との間で揺動可能となっている。
【0070】
図4に実線で示すように、係合位置は、ストライカ80の凹部82内に位置する係合部30がストライカ80の被係合部81に係合することでフード8が半開位置を越えて開位置に移動することを規制する位置である。
【0071】
図4に二点鎖線で示すように、解除位置は、操作部40が解除操作を受けて係合部30がストライカ80の被係合部81から前方に離間し、被係合部81に係合不能となる位置である。
【0072】
図6及び
図7に示すように、セカンダリレバー10が係合位置にあるときに係合部30とストライカ80の被係合部81とが噛み合う位置を噛み合い位置E1とする。そして、
図7及び
図8に示すように、噛み合い位置E1を通過し、かつ揺動軸心X10に直交する仮想平面P1を規定する。
【0073】
左方の当接部51は、仮想平面P1と重なる位置に配置されている。軸体60も、仮想平面P1と重なる位置に配置されている。操作部40も、仮想平面P1と重なる位置に配置されている。
【0074】
図6に示すように、ユーザがエンジンルームの確認や整備を行うときに、また、車両の走行時において誤操作等によりメインラッチ装置7がフード8を閉位置に保持しなくなったときに、フード8が半開位置を越えて開位置に移動しようとする。そして、フード8が開位置に移動しようとすることで、係合位置にあるセカンダリレバー10の係合部30がストライカ80の被係合部81を上向きに押すと、その反力として、被係合部81から係合部30に力F1が下向きに作用する。
【0075】
当接部51、52は、被係合部81から係合部30に力F1が作用するときにベース70の被当接部73、74に当接することで、力F1を軸体60、第1片部71及び第2片部22と共に支持する。
【0076】
この際、当接部51、52は、力F1の方向と略同じである下向きの方向で被当接部73、74に当接することによって、力F1の一部を確実性高く支持する。
【0077】
図5に示すように、フード8が開位置から半開位置を通過して閉位置に移動するときに、係合位置にあるセカンダリレバー10の係合部30は、ストライカ80の被係合部81に上から摺接して前向きに変位する。これにより、セカンダリレバー10は、引っ張りコイルバネ17の付勢力に抗して解除位置に向けて揺動するので、係合部30が被係合部81を通過できる。
【0078】
セカンダリレバー10が
図5に二点鎖線で示す解除位置にある状態でフード8が開位置から半開位置を通過して閉位置に移動したときに、ストライカ80の案内部83は、セカンダリレバー10の係合部30に摺接して係合部30を後向きに変位させる。このような案内部83により、セカンダリレバー10は、固着が解消されて係合位置に案内される。
【0079】
<作用効果>
実施例1のセカンダリラッチ装置1では、
図3及び
図8に示すように、第1片部71の第1軸穴71Hと、第2片部22の第2軸穴22Hとに軸体60を挿通して固定しているため、構造が簡素である。このため、このセカンダリラッチ装置1では、各部品の製造誤差やそれらの組み付け誤差が累積され難い。
【0080】
その結果、このセカンダリラッチ装置1では、セカンダリレバー10がベース70に対してがたついたり、セカンダリレバー10が揺動するときの抵抗が増大したり、セカンダリレバー10が揺動するときにこじられたりする不具合が発生し難く、セカンダリレバー10を円滑に揺動させることができる。
【0081】
また、このセカンダリラッチ装置1では、
図6に示すように、セカンダリレバー10が有する2つの当接部51、52は、フード8が開位置に移動しようとすることでストライカ80の被係合部81から係合位置にあるセカンダリレバー10の係合部30に力F1が作用するときに、力F1の方向と略同じである下向きの方向でベース70に当接することで、力F1を軸体60、第1片部71及び第2片部22と共に支持する。つまり、当接部51、52は、被支持部20がベース70に支持される構成の簡素化による強度低下を補うことができる。
【0082】
したがって、実施例1のセカンダリラッチ装置1では、セカンダリレバー10を円滑に揺動させ、かつ、フード8が開位置に移動しようとすることでストライカ80の被係合部81から係合位置にあるセカンダリレバー10の係合部30に力F1が作用するときに力F1を好適に支持することができる。その結果、このセカンダリラッチ装置1では、耐久性の低下を抑制しつつ、製造コストの低廉化を実現できる。
【0083】
また、このセカンダリラッチ装置1では、
図6に示すように、当接部51、52は、揺動軸心X10方向において互いに離れた2つである。この構成により、当接部51、52は、被係合部81から係合部30に力F1が作用するときにベース70の2箇所に当接することで、力F1の一部を確実性高く支持できる。その結果、当接部51、52は、被支持部20がベース70に支持される構成の簡素化による強度低下を確実性高く補うことができる。
【0084】
さらに、このセカンダリラッチ装置1では、
図7に示すように、1つの当接部51は、仮想平面P1と重なる位置に配置されている。この構成により、被係合部81から係合部30に力F1が作用するときに、1つの当接部51によって軸体60がこじられることを抑制できる。
【0085】
また、このセカンダリラッチ装置1では、軸体60は、仮想平面P1と重なる位置に配置されている。この構成により、被係合部81から係合部30に力F1が作用するときに、軸体60がこじられることを抑制できる。
【0086】
さらに、このセカンダリラッチ装置1では、操作部40は、仮想平面P1と重なる位置に配置されている。この構成により、ユーザが操作部40に対して解除操作を行ってセカンダリレバー10を係合位置から解除位置に揺動させるときに、軸体60がこじられることを抑制できる。
【0087】
また、このセカンダリラッチ装置1では、
図5に示すように、ストライカ80が案内部83を有している。そして、セカンダリレバー10が
図5に二点鎖線で示す解除位置にある状態で固着した場合でも、フード8を開位置から半開位置を通過して閉位置に移動させる動作を行ったときに、案内部83が係合部30に摺接して係合部30を後向きに変位させることでセカンダリレバー10を係合位置に強制的に復帰させる。その結果、係合位置に復帰したセカンダリレバー10は、フード8が次に閉位置から開位置に移動するときに、フード8が半開位置を越えて開位置に移動することを確実性高く規制できる。
【0088】
さらに、このセカンダリラッチ装置1では、
図2及び
図3に示すように、ユーザが車体9の前方から操作部40に対いて解除操作を行うときに係合部30に手が触れたとしても、係合部30の輪郭部分30Sが車体9の後方に向かって曲げられていることにより、不快感を抱くことを抑制できる。
【0089】
(実施例2)
図9に示すように、実施例2のセカンダリラッチ装置では、実施例1のセカンダリラッチ装置1に係る左壁10Lから長穴11及び当接部51を無くすとともに、ベース70の被当接部73を無くしている。つまり、実施例2では、当接部52は、軸体60から揺動軸心X10方向において離れた1つである。
【0090】
実施例2のその他の構成は、実施例1と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0091】
実施例2のセカンダリラッチ装置では、実施例1のセカンダリラッチ装置1と同様に、セカンダリレバー10を円滑に揺動させ、かつ、フード8が開位置に移動しようとすることでストライカ80の被係合部81から係合位置にあるセカンダリレバー10の係合部30に力F1が作用するときに力F1を好適に支持することができる。その結果、このセカンダリラッチ装置では、耐久性の低下を抑制しつつ、製造コストの低廉化を実現できる。
【0092】
また、このセカンダリラッチ装置では、被係合部81から係合部30に力F1が作用するときに、1つの当接部52がベース70における軸体60から揺動軸心X10方向において離れた一箇所に当接することで、力F1を軸体60等と共に好適に支持できる。
【0093】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0094】
実施例1、2では、ストライカ80が車体9に設けられ、ベース70がフード8に設けられているが本発明はこの構成には限定されず、その逆であってもよい。
【0095】
実施例1では、当接部51、軸体60及び操作部40が仮想平面P1と重なる位置に配置され、実施例2では、軸体60及び操作部40が仮想平面P1と重なる位置に配置されているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、軸体及び操作部の少なくとも一方が仮想平面と重ならない位置に配置された構成も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は例えば、自動車、産業車両等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…セカンダリラッチ装置
9…車体
8…フード
80…ストライカ
70…ベース
X10…揺動軸心
20…被支持部
30…係合部
40…操作部
10…セカンダリレバー
17…付勢手段(引っ張りコイルバネ)
71…第1片部
71H…第1軸穴
22…第2片部
22H…第2軸穴
60…軸体
51、52…当接部
F1…フードが開位置に移動しようとすることでストライカから係合位置にあるセカンダリレバーに作用する力
P1…仮想平面
83…案内部
30S…係合部の輪郭部分