(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098905
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】管理装置、管理プログラムおよび管理システム
(51)【国際特許分類】
E02D 7/00 20060101AFI20220627BHJP
E02D 5/24 20060101ALI20220627BHJP
E02D 5/34 20060101ALI20220627BHJP
E02D 13/06 20060101ALI20220627BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
E02D7/00 Z
E02D5/24
E02D5/34
E02D13/06
G01C15/00 104D
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212563
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】小松 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】細田 光美
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041AA02
2D050AA01
2D050EE01
2D050EE17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】支持層への到達を管理することができる管理装置、仮プログラムおよび管理システムを提供する。
【解決手段】管理装置3は、データ取得部311と、算出部312と、判定部313とを含む。データ取得部311は、地盤掘削時に計測される掘削装置の掘削芯からの偏芯量と掘削深度とを取得する。算出部312は、前記偏芯量を用いて、単位深度ごとに前記掘削装置の偏芯指標値を算出する。判定部313は、前記偏芯指標値を用いて、支持層に到達したか否かを判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤掘削時に計測される掘削装置の掘削芯からの偏芯量と掘削深度とを取得する取得部と、
前記偏芯量を用いて、単位深度ごとに前記掘削装置の偏芯指標値を算出する算出部と、
前記偏芯指標値を用いて、支持層に到達したか否かを判定する判定部と、
を具備する管理装置。
【請求項2】
前記判定部は、第1深度における偏芯指標値が、前記第1深度よりも浅い第2深度における偏芯指標値よりも大きい場合、前記支持層に到達したと判定する、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記偏芯指標値は、平均偏芯量または積分偏芯量である、請求項1または請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記地盤掘削時に計測される前記掘削装置の傾斜量を取得し、
前記判定部は、前記傾斜量をさらに用いて、前記支持層に到達したか否かを判定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記単位深度ごとの前記偏芯量および前記偏芯指標値の少なくともどちらか一方のグラフデータを生成する生成部をさらに具備する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項6】
前記偏芯指標値が閾値以上となった場合、プッシュ通知を行なう通知部をさらに具備する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項7】
前記単位深度ごとの前記偏芯指標値に基づいて、地表面から現在の掘削深度までの杭孔の径の大きさを反映した、杭孔の形状を示す杭孔形状データを生成する生成部をさらに具備する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項8】
杭の建込み時において、前記杭孔形状データにおける前記杭孔の径の大きさが閾値以上である場合、プッシュ通知を行なう通知部をさらに具備する請求項7に記載の管理装置。
【請求項9】
前記単位深度は、掘削地層および掘削深度の少なくともどちらか一方に応じて可変とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項10】
コンピュータを、
地盤掘削時に計測される掘削装置の掘削芯からの偏芯量と掘削深度とを取得する取得手段と、
前記偏芯量を用いて、単位深度ごとに前記掘削装置の偏芯指標値を算出する算出手段と、
前記偏芯指標値を用いて、支持層に到達したか否かを判定する判定手段として機能させるための管理プログラム。
【請求項11】
計測装置と、杭打機に搭載される管理装置と、管理者端末とを含む管理システムであって、
前記計測装置は、地盤掘削時における掘削装置の掘削芯からの偏芯量を計測し、
前記管理装置は、前記地盤掘削時における掘削深度を計測し、
前記管理者端末は、
前記計測装置から前記偏芯量を、前記管理装置から前記掘削深度をそれぞれ取得する取得部と、
前記偏芯量を用いて、単位深度ごとに前記掘削装置の偏芯指標値を算出する算出部と、
前記偏芯指標値を用いて、支持層に到達したか否かを判定する判定部と、を具備する管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、管理プログラムおよび管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤内に杭を設置する杭工事において、施工予定場所の地質状況を把握することは重要である。特に、構造物の重量を支持する支持層の深度を把握することが重要である。
掘削ヘッドが支持層に到達したか否かを判定する手法として、掘削機のオーガモータの電流値や積分電流値の変化等に基づいて判定する手法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、支持層への到達判定とは別に、杭孔の鉛直性を評価するため、いわゆるトータルステーションなどの計測機器を用いて、杭孔の水平方向のずれ量を算出する手法もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4958028号公報
【特許文献2】特許第6496540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、支持層の到達判定においては、掘削作業の担当者が電流値や積分電流値のグラフを目視すると共に掘削状況全体を確認することにより、掘削ヘッドが支持層に到達したか否かを判定する必要がある。よって、掘削ヘッドが支持層に到達したか否かを的確に判定できるまでに相当程度の経験が必要である。このため、経験値や個人差によるばらつきが生じる可能性がある。
本発明は、支持層への到達を管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一態様に係る、管理装置は、取得部と、算出部と、判定部とを含む。取得部は、地盤掘削時に計測される掘削装置の掘削芯からの偏芯量と掘削深度とを取得する。算出部は、前記偏芯量を用いて、単位深度ごとに前記掘削装置の偏芯指標値を算出する。判定部は、前記偏芯指標値を用いて、支持層に到達したか否かを判定する。
上記構成(1)によれば、管理装置が偏芯指標値を算出して電流値等の施工データと組み合わせて支持層に到達したか否かを判定することで、管理者の経験値や個人差による判定のばらつきが生じることなく支持層の到達を管理することができる。
【0006】
(2)いくつかの実施形態では、上記(1)において、
判定部は、第1深度における偏芯指標値が、前記第1深度よりも浅い第2深度における偏芯指標値よりも大きい場合、前記支持層に到達したと判定する。
上記構成(2)によれば、偏芯指標値を用いて一定の深度区間ごとの地層の固さを比較して支持層に到達したか否かを判定できるため、支持層への到達判定の精度を向上させることができる。
【0007】
(3)いくつかの実施形態では、上記構成(1)および構成(2)において、
前記偏芯指標値は、平均偏芯量または積分偏芯量である。
上記構成(3)によれば、偏芯量の統計値を用いることでより精度の高い偏芯指標値を得ることができるため、支持層への到達判定の精度をさらに向上させることができる。
【0008】
(4)いくつかの実施形態では、上記構成(1)から構成(3)のいずれか1つにおいて、
前記取得部は、地盤掘削時に計測される前記掘削装置の傾斜量を取得する。前記判定部は、前記傾斜量をさらに用いて、前記支持層に到達したか否かを判定する。
上記構成(4)によれば、偏芯指標値に加えて傾斜量をさらに用いて支持層に到達したか否かを判定できるため、支持層への到達判定の精度を向上させることができる。
【0009】
(5)いくつかの実施形態では、上記構成(1)から構成(4)のいずれか1つにおいて、
管理装置は、生成部をさらに含む。生成部は、前記単位深度ごとの前記偏芯量および前記偏芯指標値の少なくともどちらか一方のグラフデータを生成する。
上記構成(5)によれば、管理者端末がグラフデータを表示することで、管理者が施工状態を視覚的に容易に把握できる。
【0010】
(6)いくつかの実施形態では、上記構成(1)から構成(5)のいずれか1つにおいて、
管理装置は、通知部をさらに含む。通知部は、前記偏芯指標値が閾値以上となった場合、プッシュ通知を行なう。
上記構成(6)によれば、管理者または閲覧者が施工状態を常に監視していなくとも、自動的にアラートが行われるため、アラートがあるタイミングで施工状態をより注視すればよく、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0011】
(7)いくつかの実施形態では、上記構成(1)から構成(4)のいずれか1つにおいて、
管理装置は、生成部をさらに含む。前記単位深度ごとの前記偏芯指標値に基づいて、地表面から現在の掘削深度までの杭孔の径の大きさを含む杭孔の形状を示す杭孔形状データを生成する。
上記構成(7)によれば、偏芯指標値に基づいて杭孔の外形を表す杭孔形状を例えば管理者端末に表示させる、または帳票などに含めることで、施工状態の信頼性をより向上させることができる。
【0012】
(8)いくつかの実施形態では、上記構成(7)において、
管理装置は、通知部をさらに含む。通知部は、杭の建込み時において、前記杭孔形状データにおける前記杭孔の径の大きさが閾値以上である場合、プッシュ通知を行なう。
上記構成(8)によれば、杭孔の径が広い地層部分では、杭の建込み時に傾斜しないよう注意を促すことができる。
【0013】
(9)いくつかの実施形態では、上記構成(1)から構成(8)のいずれか1つにおいて、
前記単位深度は、掘削地層および掘削深度の少なくともどちらか一方に応じて可変とする。
上記構成(9)によれば、より柔軟に計測データおよび施工データを収集することができ、データ量の削減も実現できる。
【0014】
(10)本発明の一態様に係る、管理プログラムは、コンピュータを、地盤掘削時に計測される、掘削装置の掘削芯からの偏芯量と掘削深度とを取得する取得手段と、前記偏芯量を用いて、単位深度ごとに前記掘削装置の偏芯指標値を算出する算出手段と、前記偏芯指標値とを用いて、支持層に到達したか否かを判定する判定手段として機能させる。
上記構成(10)によれば、管理装置が偏芯指標値を算出して電流値等の施工データと組み合わせて支持層に到達したか否かを判定することで、管理者の経験値や個人差による判定のばらつきが生じることなく支持層の到達を管理することができる。
【0015】
(11)本発明に一態様に係る管理システムは、計測装置と、管理装置と、管理者端末とを含む。前記計測装置は、地盤掘削時における掘削装置の掘削芯からの偏芯量を計測する。前記管理装置は、前記地盤掘削時における前記掘削装置を回転させるモータの電流値とその電流値を基に演算した積分電流値と、掘削深度とを計測する。前記管理者端末は、取得部と、算出部と、判定部とを含む。取得部は、前記計測装置から前記偏芯量を、前記管理装置から前記掘削深度をそれぞれ取得する。算出部は、前記偏芯量を用いて、単位深度ごとに前記掘削装置の偏芯指標値を算出する。判定部は、前記偏芯指標値を用いて、支持層に到達したか否かを判定する。
上記構成(11)によれば、管理装置が偏芯指標値を算出して電流値や積分電流値等の施工データと組み合わせて支持層に到達したか否かを判定することで、管理者の経験値や個人差による判定のばらつきが生じることなく支持層の到達を管理することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、支持層への到達を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る管理システムを示す概念図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る管理装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る管理システムの動作を示すシーケンス図である。
【
図4】
図4は、支持層判定処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る管理者端末に表示される計測データおよび施工データの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、偏芯指標値に基づき生成される杭孔形状の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、杭の建込みにおける管理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る管理装置、管理プログラムおよび管理システムについて詳細に説明する。なお、以下の実施形態中では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行なうものとして、重ねての説明を省略する。
【0019】
本実施形態に係る管理システムについて
図1の概念図を参照して説明する。
図1に示す管理システムは、杭打機1と、計測装置2と、管理装置3と、管理者端末4と、閲覧者端末5とを含む。杭打機1と、計測装置2と、管理装置3と、管理者端末4と、閲覧者端末5とのそれぞれは、無線により、データの送受信が可能であるとする。なお、無線に限らず、有線によりデータの送受信を行なってもよい。
なお、
図1の例では、杭打機1は1台であるが、複数存在してもよい。同様に、計測装置、管理者端末4および閲覧者端末5についても、複数存在してもよい。また、管理装置3は、杭打機1のメインボックスなどに搭載されてもよいし、管理者端末4に搭載されてもよい。
【0020】
また、本実施形態では、杭打機1を用いた既製杭施工時の掘削ロッドを例に説明するが、これに限らず、掘削ヘッド、スクリューなどに対しても同様に適用できる。また、アースドリル工法で用いられるケリーバ、オールケーシング工法で用いられるケーシングなどの場所打ち杭工法に対しても同様に適用できる。すなわち、これら地盤掘削に用いる掘削装置であれば、本実施形態に係る管理装置3による処理を適用できる。
【0021】
杭打機1は、上下動可能な掘削ロッド(以下、単にロッドという)を有し、ロッドを回転させながら杭孔を掘削する。杭打機1には、各種センサが搭載され、各種センサにより、杭打機1の施工時におけるオーガモータの瞬時電流値、積分電流値、掘削深度、セメントミルク注入量などが計測される。なお、杭打機1の構造は、一般的な杭打機の構造と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0022】
計測装置2は、例えば、トータルステーション、トランシット、セオドライトといった計測機器であり、地盤掘削時に、杭打機1のロッドの偏芯量および傾斜量を計測し、計測データとする。偏芯量は、ロッドの水平方向のずれ量であり、ここでは、x方向(東西方向)およびy方向(南北方向)の2方向のずれ量を用いることを想定するが、2方向のずれ量を合成した偏芯量であってもよい。傾斜量は、ロッドが鉛直方向から傾いている角度を示し、x方向(東西方向)およびy方向(南北方向)の2方向の傾斜量を用いることを想定するが、2方向の傾斜量を合成した傾斜量であってもよい。
【0023】
管理装置3は、例えばプロセッサにより実現され、杭打機1の各種センサで計測される施工データを取得する。具体的には、例えば、杭打機1のオーガー制御盤から瞬時電流値および積分電流値を含む電流データを、深度検出器から掘削深度データを、流量検出器からセメントミルク流量データを、施工データとして取得できる。管理装置3は、施工データおよび計測データに基づいて、支持層への到達判定を実施する。
【0024】
管理者端末4は、例えばスマートフォン、フィーチャーフォン、タブレットPC、ノートPC等の端末である。管理者端末4に備わるブラウザ機能により、計測データおよび施工データを管理者端末4の画面に表示する。なお、管理者端末4は、持ち運び可能な端末を想定するが、これに限らず、詰所などに据え置きのデスクトップPCであってもよい。
【0025】
閲覧者端末5は、管理者端末4と同様の端末またはデスクトップPCである。ただし、閲覧者端末5は、管理装置3に対する機能が制限される。例えば、閲覧者端末5は、管理者端末4のように、施工管理に関する指示を杭打機1に送信することはできず、施工データ、判定結果および帳票等の閲覧のみ可能である。
【0026】
次に、本実施形態に係る管理装置3の詳細について
図2のブロック図を参照して説明する。
本実施形態に係る管理装置3は、処理回路31と、格納部32と、通信インタフェース33とを含み、それぞれバスを介して接続される。
【0027】
処理回路31は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのいずれかまたはこれらの組合せにより実現される。処理回路31は、データ取得部311と、算出部312と、判定部313と、生成部314と、通知部315とを含む。
【0028】
データ取得部311は、杭打機1から施工データを取得し、計測装置2からロッドの偏芯量を取得する。
【0029】
算出部312は、偏芯量を用いて、単位深度ごとにロッドの偏芯指標値を算出する。偏芯指標値は、例えば、単位深度ごとの平均偏芯量または積分偏芯量である。平均偏芯量は、単位深度、例えば1mの区間において計測された偏芯量の平均値である。積分偏芯量は、単位深度の区間において計測された偏芯量または平均偏芯量を所定のピッチで時間積分した値である。
【0030】
判定部313は、施工データに含まれる電流値と偏芯指標値とを用いて、支持層に到達したか否かを判定する。
【0031】
生成部314は、施工データおよび偏芯量の時系列データ、または偏芯指標値の時系列データに基づき、偏芯量または偏芯指標値の推移を表すグラフデータを生成する。生成部314はさらに、支持層に到達した判定結果を生成する。生成部314はさらに、単位深度ごとの偏芯指標値に基づいて、地表面から現在の掘削深度までの杭孔の径の大きさを反映した、杭孔の形状を示す杭孔形状データを生成する。
【0032】
通知部315は、生成部314により生成されたグラフデータ、判定結果および杭孔形状データを、例えば管理者端末4または閲覧者端末5に送信する。
【0033】
格納部32は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などで構成され、施工データを格納する。施工データとしては、上述の各種センサから得られるデータに加え、施工場所、掘削日時、掘削機の機種情報を含む。なお、これらに限らず、杭打機1で取得できる他のデータ、およびボーリング調査により得られる情報(柱状図、N値)などが対応付けられて格納されてもよい。
【0034】
通信インタフェース33は、所定の通信規格に準拠した、
図1に示す装置間でデータ送受信を行なうためのインタフェースである。通信規格としては、Wi-Fi(登録商標)に準拠した無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)などの無線ネットワークでもよいし、LANケーブルなどを用いた有線ネットワークでもよい。
【0035】
次に、本実施形態に係る管理システムの動作について、
図3のシーケンス図を参照して説明する。
図3の例では、管理装置3が管理者端末4と別体である場合を想定する。
【0036】
ステップS301では、計測装置2が、ロッドの偏芯量を計測できる位置に据え付けられる。
ステップS302では、計測装置2が、杭芯をセットし、ロッドの杭芯位置データを取得する。具体的には、ロッドの中心が杭芯に一致するようにセットされ、その際の杭芯位置データが取得される。
ステップS303では、計測装置2が、杭芯位置データを杭打機1、管理装置3および管理者端末4に送信する。なお、少なくとも管理装置3に杭芯位置データが送信されればよく、管理者端末4からの要求により、計測装置2が管理者端末4に杭芯位置データを送信すればよい。
【0037】
ステップS304では、杭孔の掘削が開始される。
ステップS305では、計測装置2が、ロッドの偏芯量および傾斜量を計測データとして取得する。
ステップS306では、計測装置2が、計測データを杭打機1、管理装置3および管理者端末4に送信する。なお、杭芯位置データと同様に、少なくとも管理装置3に計測データが送信されればよく、管理者端末4からの要求により、計測装置2が管理者端末4に計測データを送信すればよい。
【0038】
ステップS307では、管理装置3が、杭打機1から施工データを取得する。
ステップS308では、管理装置3が、管理者端末4および杭打機1に施工データを送信する。
ステップS309では、管理装置3が、計測装置2から受信した計測データと、ステップS307で計測した施工データとを用いて、支持層に到達したか否かを判定する。支持層への到達判定については、
図4を参照して後述する。なお、支持層に到達するまでは、ステップS305からステップS309までの処理が、所定のサンプリング間隔で継続するものとする。
【0039】
ステップS310では、管理装置3が、支持層への到達判定結果を杭打機1および管理者端末4に送信する。
ステップS311では、杭孔の掘削が終了する。
【0040】
なお、計測データは、管理装置3に送信された後、管理装置から施工データの一部として管理者端末4に送信されてもよい。例えば、杭の識別番号と、電流値、セメントミルク注入量などと併せて、偏芯量および傾斜量を施工データとして管理装置3に記録し、管理者端末4に送信することで、支持層管理の証明材料として報告書の信憑性をより向上させることができる。
【0041】
図3の例では、管理装置3が管理者端末4と別体である場合を想定したが、管理者端末4に管理装置3が含まれてもよい。例えば、管理装置3の施工データを取得する機能のみ杭打機1に搭載されるとし、管理者端末4が、杭打機1から施工データを、計測装置2から計測データをそれぞれ取得し、ステップS309における支持層の判定処理を行なってもよい。
【0042】
次に、ステップS309の支持層判定処理の詳細について
図4のフローチャートを参照して説明する。ここでは、偏芯指標値として平均偏芯量を算出する場合を想定する。
ステップS401では、データ取得部311が、計測データから偏芯量を取得する。
ステップS402では、データ取得部311が、施工データから掘削深度を取得する。
【0043】
ステップS403では、算出部312が、偏芯量を用いて、設定された単位深度ごとに、平均偏芯量を算出する。なお、単位深度は、例えば1mを想定するが、掘削地層または掘削深度に応じて、可変でもよい。例えば、N値が閾値未満の層は、単位深度を1mとし、N値が閾値以上である層は、単位深度を300mmとしてもよい。
ステップS404では、判定部313が、ステップS403で算出した平均偏芯量と、当該算出した平均偏芯量よりも浅い層において算出した平均偏芯量とを比較する。
【0044】
ステップS405では、判定部313が、ステップS404における浅い層(第2深度)の平均偏芯量よりも、深い層(第1深度)における平均偏芯量の方が大きい場合、支持層に到達したと判定する。偏芯量は、掘削深度が深くなるにつれてロッドが土砂により拘束されるため、小さくなる。しかし、支持層に到達した場合は固い層であるため、ロッドのぶれが大きくなるため偏芯量も大きくなる。よって、単位深度ごとに平均偏芯量を算出し、前回算出した平均偏芯量とを比較することで、支持層への到達判定を行なうことができる。
支持層に到達したと判定された場合は、処理を終了し、支持層に到達していないと判定された場合は、ステップS401に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0045】
なお、平均偏芯量に限らず、積分偏芯量を偏芯指標値として用いても、平均偏芯量の場合と同様に、支持層の到達判定を行なうことができる。
また、偏芯指標値の代わりに、または偏芯指標値と共に傾斜量を用いることで、同様に支持層の到達判定を行なうことができる。例えば、傾斜量も偏芯量と同様、掘削深度が深くなるにつれて値が小さくなり、支持層に到達した場合は傾斜量が大きくなる。よって、ある深度の層における傾斜量と当該深度よりも浅い層における傾斜量とを比較し、浅い層における傾斜量よりも深い層における傾斜量の方が大きければ、支持層に到達したと判定できる。
【0046】
なお、偏芯指標値および傾斜量だけではなく、ボーリング調査で得られる柱状図およびN値、施工データに含まれる瞬時電流値および積分電流値、さらに、オーガモータの振動、掘削音といった要素を複数組み合わせて判定をすることで、より精度よく支持層の到達判定を行なうことができる。例えば、掘削深度と柱状図およびN値とを参照し、支持層に適した層の深度までロッドが到達したと想定される場合に、偏芯指標値、積分電流値および瞬時電流値が第1閾値以上であって、かつオーガモータの振動および掘削音が第2閾値以上である場合に、支持層に到達したと判定してもよい。
【0047】
また、管理装置3が支持層の判定をせずに、管理者端末4に施工データ(電流値、積分電流値など)および計測データ(偏芯指標値および傾斜量)を表示することで、管理者が支持層への到達を判定するための支援として、判断材料を提供してもよい。または、管理装置3の判定部313による支持層に到達した旨の判定結果を管理者端末4に送信することで、上述の施工データおよび計測データなどの判断材料に加え、管理者による支持層の到達判定を支援してもよい。
【0048】
次に管理者端末4で表示される計測データおよび施工データの一例について、
図5を参照して説明する。
図5は管理者端末4に表示される管理画面50の一例である。管理画面50には、深度に応じた地層の情報を示す柱状
図51と、N値52と、現状掘削した深度までの瞬時電流値531および積分電流値532と、偏芯量541および傾斜量542とについて、時系列データが一覧表示される。柱状
図51とN値52とは、管理者端末4側で保持するボーリング調査によるデータを用いてグラフ表示される。なお、ボーリング調査によるデータは、管理装置3の格納部32から管理者端末4が取得して管理者端末4の画面に表示してもよい。管理者端末4がボーリング調査によるデータを記憶しており、管理者端末4側で施工データと併せて表示されてもよい。また、管理装置3側にボーリング調査によるデータを予め入力して記憶させておき、管理者端末4からの指示により、管理装置3側で施工データと対応するボーリング調査によるデータとを選択し、管理者端末4に送信してもよい。
【0049】
瞬時電流値531および積分電流値532は、管理装置3から送信される施工データを用いてグラフ表示される。偏芯量541および傾斜量542は、管理装置3から施工データの一部として送信されたデータを用いてグラフ表示してもよいし、計測装置2から送信される計測データを用いてグラフ表示してもよい。
【0050】
図5に示すように、各データを、単位深度ごとの時系列データの推移をグラフ表示することで、掘削の状況を視覚的に見やすく表示させることができ、管理者も一目で把握することができる。
【0051】
なお、管理画面50は、管理者端末4において取得されたデータから端末内のアプリケーションによって作成されてもよいし、管理者端末4から所定の管理者用URL(Uniform Resource Locator)にアクセスすることで、閲覧可能な管理アプリケーションの画面を開くにしてもよい。管理画面50では、管理者がボタンを押下またはタッチするといった指示を与えることで、
図5に示すデータ以外の施工データの閲覧、グラフ作成などの各種処理を実行可能としてもよい。管理者用URLに存在する管理アプリケーションの画面は、HTML(Hyper Text Markup Language)で記述されることを想定し、ブラウザ機能があれば、特定のソフトウェアおよびアプリケーションに依存せずに操作可能な形式を想定する。
【0052】
さらに、偏芯指標値が閾値よりも大きくなったタイミングで、管理者端末4に対してプッシュ通知を行なってもよい。例えば、管理画面50に対してポップアップ表示などの別ウィンドウで「支持層に近づいています」など、掘削深度の状況を注視するように促す情報を表示してもよい。また、音声、音、振動などにより管理者端末4を保持する管理者に、掘削深度の状況を通知してもよい。これにより、管理者は、常に施工状態を気にせずとも、特定のイベントが発生したときに管理者端末4を確認すればよく、効率的な管理を実現できる。
【0053】
また、偏芯指標値に基づいて杭孔の形状を描画することもできる。偏芯指標値に基づき生成される杭孔形状図の一例について
図6を参照して説明する。
図6に示す杭孔形状図は、例えば、管理者端末4において、掘削開始から現状の掘削深度までの単位深度ごとの偏芯指標値を、杭孔の径として描画することで得られる杭孔の形状図である。また、拡大掘削などのように、意図的に杭孔を拡げた情報を杭孔形状に反映させてもよい。例えば、範囲61では、対応する地層において偏芯量が大きかったため、杭孔が拡がっていることが視覚的に容易に把握できる。
このように、偏芯量および傾斜量の計測データに基づいて杭孔形状を管理者端末4に表示させることで、掘削の段階から鉛直な杭孔を掘削できていることを証明できる。
【0054】
続いて、杭の建込みにおける管理装置3の動作について
図7のフローチャートを参照して説明する。
ステップS701では、算出部312が、杭の建込みにおける杭の先端深度を計測する。先端深度は、例えば杭先端の位置を特定する距離センサなどを用いて、杭先端の深度を計測してもよいし、ワイヤーの送り込み量を計測することで先端深度を判定してもよいし、直接メジャー等を用いて深度情報を読み取ってもよい。
【0055】
ステップS702では、判定部313が、先端深度に相当する地層において、杭孔が閾値以上の径を有するか否かを判定する。具体的には、先端深度に相当する地層において、偏芯量が閾値以上であるか否かを判定する。偏芯量が閾値以上であれば、所定の杭孔よりも拡大した範囲を掘削したと想定されるため、杭孔が閾値以上の径を有すると判定し、ステップS703に進む。一方、偏芯量が閾値未満であれば、所定の杭孔の径であると考えられるため、ステップS704に進む。
【0056】
ステップS703では、通知部315が、プッシュ通知を行い、アラートを出力する。アラートとしては、例えば管理者端末4に
図6に示すような杭孔形状を表示している場合は、先端深度に対応する範囲の杭孔形状部分(範囲61)を囲み表示、ハイライト、点滅などといった強調表示をすればよい。また、音声、音、振動によるアラートを組み合わせてもよい。これにより、杭孔の径が広い地層部分では、杭の建込み時に傾斜しないよう注意を促すことができる。
【0057】
ステップS704では、杭の建込みが完了したとする。
ステップS705では、判定部313が、次に建込むべき杭が存在するか否かを判定する。具体的には、判定部313が、予め入力された杭数を参照することにより、全ての杭数が建込まれたか否かを判定すればよい。次の杭が存在する場合は、ステップS701に戻り、同様の処理を繰り返し、次の杭が存在しない、すなわち全ての杭の建込みが完了した場合は、処理を終了する。
【0058】
上述した実施形態では、計測データは計測装置2で計測する例を示すが、これに限らず、ロッドまたは掘削ヘッドに3軸ジャイロセンサーなどを搭載し、ジャイロセンサーにより偏芯量、傾斜量および掘削深度を計測してもよい。
【0059】
上述した支持層への到達判定の判定結果(支持層の深度、支持層到達までの計測データおよび施工データの時系列データ)を、同一の施工現場で蓄積した場合、管理装置3は、当該施工現場の地層変化および支持層の出現深度および傾きを把握できる。よって、管理装置3は、同一現場内の掘削において支持層の予測を行なうことができる。
【0060】
また、支持層への到達判定の判定結果を、近接した施工現場で事前に蓄積できていた場合、近接した施工現場の判定結果に基づき、施工対象の現場における同一深度における計測データおよび施工データを参照することで、管理装置3は、支持層の予測を行なうことができる。
【0061】
以上に示した実施形態によれば、偏芯指標値および/または傾斜量に基づいて、管理者の経験値や個人差による判定のばらつきが生じることなく支持層への到達を管理することができる。また、偏芯指標値および傾斜量に加えて、瞬時電流値、積分電流値などの施工データ、および柱状図、N値などのボーリング調査のデータとを併せて総合的に支持層への到達判定をすることで、判定の精度をより向上させることができる。
また、偏芯量および傾斜量に関する計測データと、電流値を含む施工データとを管理装置または管理者端末で一元管理することで、データ管理を効率化できる。
さらに、偏芯量、偏芯指標値および傾斜量などの時系列データの推移をサイクルタイムズなどでグラフ表示し、さらに電流値および積分電流値などと並列表示することで、地層変化を可視化することができる。
【0062】
上述の実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用の計算機システムが、このプログラムを予め記録媒体に記憶しておき、記憶されたプログラムを読み込むことにより、上述した識別装置による効果と同様な効果を得ることも可能である。さらに、本実施形態における記録媒体は、コンピュータあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記録媒体も含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…杭打機、2…計測装置、3…管理装置、4…管理者端末、5…閲覧者端末、31…処理回路、32…格納部、33…通信インタフェース、50…管理画面、51…柱状図、52…N値、53…電流値、54…計測値、61…範囲、311…データ取得部、312…算出部、313…判定部、314…生成部、315…通知部、531…瞬時電流値、532…積分電流値、541…偏芯量、542…傾斜量。