(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098907
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】軸ばね装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20220627BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20220627BHJP
F16F 1/41 20060101ALI20220627BHJP
B61F 5/30 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
F16F15/04 P
F16F15/02 E
F16F1/41
B61F5/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212568
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】小湊 健吾
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AA02
3J048AC01
3J048BA05
3J048BA08
3J048BA20
3J048BE12
3J048DA01
3J048EA15
3J048EA36
3J059AA10
3J059BA43
3J059BA55
3J059BC01
3J059BC04
3J059BC06
3J059BD01
3J059GA02
(57)【要約】
【課題】 上下方向のばね定数を変えることなく、前後・左右方向のばね定数のみ調整可能な軸ばね装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 軸芯2と、外筒3と、軸芯2及び外筒3の間に介在する弾性部4とを備えた軸ばね本体1と、軸芯2と外筒3の間に着脱可能に介装された筒状の補助弾性部材12とを備え、補助弾性部材12は、外筒3に内嵌固定され、軸芯2と外筒3との上下方向Zの相対変位に追従して軸芯2に対して相対的に上下動自在に構成され、又は、軸芯2に外嵌固定され、上下方向Zにおける軸芯2と外筒3の相対変位に追従して外筒3に対して相対的に上下動自在に構成された軸ばね装置とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯と、外筒と、前記軸芯及び外筒の間に介在する弾性部とを備えた軸ばね本体と、前記軸芯と前記外筒の間に着脱可能に介装された筒状の補助弾性部材とを備え、前記補助弾性部材は、前記外筒に内嵌固定され、前記軸芯と外筒との上下方向の相対変位に追従して前記軸芯に対して相対的に上下動自在に構成され、又は、前記軸芯に外嵌固定され、前記軸芯と外筒との上下方向の相対変位に追従して前記外筒に対して相対的に上下動自在に構成された軸ばね装置。
【請求項2】
前記補助弾性部材は、前記外筒に内嵌固定され、前記軸芯と外筒との上下方向の相対変位に追従して前記軸芯に対して相対的に摺動自在に構成され、又は、前記軸芯に外嵌固定され、前記軸芯と外筒との上下方向の相対変位に追従して前記外筒に対して相対的に摺動自在に構成された請求項1に記載の軸ばね装置。
【請求項3】
前記補助弾性部材と、前記軸芯又は前記外筒との摺動面に、摩擦低減処理が施された請求項2に記載の軸ばね装置。
【請求項4】
前記補助弾性部材は、前記外筒に内嵌固定された状態で前記軸芯に遊嵌され、又は、前記軸芯に外嵌固定された状態で前記外筒に遊挿された請求項1に記載の軸ばね装置。
【請求項5】
前記補助弾性部材は、内環部と、外環部と、前記内環部及び外環部の間に介在する補助弾性部とを備え、前記補助弾性部は弾性体層を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の軸ばね装置。
【請求項6】
前記補助弾性部は、弾性体層と硬質筒とが同心円状に交互に積層された積層弾性体構造を有する請求項5に記載の軸ばね装置。
【請求項7】
前記補助弾性部材は、前記軸ばね装置が鉄道車両の台車枠と車軸側部材との間に介装された状態で、水平方向のばね定数が鉄道車両の前後方向と左右方向とで異なる請求項1~6のいずれか一項に記載の軸ばね装置。
【請求項8】
前記補助弾性部材は、内環部と、外環部と、前記内環部及び外環部の間に介在する補助弾性部とを備え、前記補助弾性部は弾性体層を有し、前記補助弾性部において、鉄道車両の前後方向又は左右方向のいずれかの方向に一部弾性体を除去した中空部が形成された請求項7に記載の軸ばね装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用、特に鉄道車両用として好適に用いられる、軸ばね装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、鉄道車両において、上下動時の衝撃を緩和するために、台車枠と車軸側部材との間に軸ばねを介装した構成が知られている(特許文献1の
図5参照)。具体的な構成について説明すると、
図11に示すように、台車31は、車体を支持する台車枠32と、左右一対の車輪33がはめ込まれた車軸34と、車軸34を回転自在に支持する軸受を収納する車軸箱35と、台車枠32と車軸箱35との間に介装される軸ばね36とを備える。
【0003】
図12は、従来の軸ばね36の縦断面図である。軸ばね36は、軸芯(主軸)37と、これと互いに同一の軸心Pを有する外筒38と、軸芯37及び外筒38の間に介装される弾性部41とを備える。軸芯37は、弾性部41が固着される軸部42と、軸部42の下方に形成されるフランジ部43と、フランジ部43に連設される軸基部44とを有する。車軸箱35の前後両端には軸ばね36の軸基部44を嵌合可能な凹状の受部45が形成される。軸ばね36の軸基部44を受部45に嵌入して固定し、外筒38を台車枠32側に取付けることで軸ばね36が台車に組み入れられる。
【0004】
弾性部41は、複数の弾性体層39(39a、39b及び39c)と、複数の硬質筒40(40a及び40b)とを、軸心Pを中心として同心円状に交互に積層された積層弾性体構造を有する。弾性体層39a~39c及び硬質筒40a~40bは、縦断面視形状がハ字状の円錐筒状に形成される。弾性体層39は、ゴム状弾性体によって構成される。さらに、弾性体層39aが接する軸部42の外周面、及び、弾性体層39cが接する外筒38の内周面は円錐面状に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成の軸ばねは、車両ごとに、上下方向、前後方向及び左右方向の3方向における要求ばね特性(ばね定数)がそれぞれ設定される。これらの要求ばね特性に対して、軸ばねに用いるゴム状弾性体の硬さを変更して一方向のばね特性を調整しようとすると、3方向のばね特性が連動して変化することになり、各方向のばね特性を個別に調整することができないといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明では、上下方向のばね定数を変えることなく、前後・左右方向のばね定数を個別で調整可能な軸ばね装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様の軸ばね装置は、軸芯と、外筒と、前記軸芯及び外筒の間に介在する弾性部とを備えた軸ばね本体と、前記軸芯と前記外筒の間に着脱可能に介装された筒状の補助弾性部材とを備え、前記補助弾性部材は、前記外筒に内嵌固定され、前記軸芯と外筒との上下方向の相対変位に追従して前記軸芯に対して相対的に上下動自在に構成され、又は、前記軸芯に外嵌固定され、上下方向における前記軸芯と外筒の相対変位に追従して前記外筒に対して相対的に上下動自在に構成することができる。
【0009】
前記補助弾性部材は、前記外筒に内嵌固定され、前記軸芯と外筒との上下方向の相対変位に追従して前記軸芯に対して相対的に摺動自在に構成され、又は、前記軸芯に外嵌固定され、前記軸芯と外筒との上下方向の相対変位に追従して前記外筒に対して相対的に摺動自在に構成してもよい。
【0010】
この場合、前記補助弾性部材と、前記軸芯又は前記外筒との摺動面に、摩擦低減処理が施された構成としてもよい。
【0011】
前記補助弾性部材は、前記外筒に内嵌固定された状態で前記軸芯に遊嵌され、又は、前記軸芯に外嵌固定された状態で前記外筒に遊挿された構成としてもよい。
【0012】
前記補助弾性部材は、内環部と、外環部と、前記内環部及び外環部の間に介在する補助弾性部とを備え、前記補助弾性部は弾性体層を有する構成としてもよい。
【0013】
前記補助弾性部は、弾性体層と硬質筒とが同心円状に交互に積層された積層弾性体構造を有する構成としてもよい。
【0014】
前記補助弾性部材は、前記軸ばね装置が鉄道車両の台車枠と車軸側部材との間に介装された状態で、水平方向のばね定数が鉄道車両の前後方向と左右方向とで異なる構成としてもよい。
【0015】
この場合、前記補助弾性部材は、内環部と、外環部と、前記内環部及び外環部の間に介在する補助弾性部とを備え、前記補助弾性部は弾性体層を有し、前記補助弾性部において、鉄道車両の前後方向又は左右方向のいずれかの方向に一部弾性体を除去した中空部が形成された構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係る軸ばね装置によれば、軸芯又は外筒に固定された筒状の補助弾性部材が、外筒又は軸芯に対して相対的に上下動自在に構成されたため、上下方向のばね定数を変えることなく、前後・左右方向のばね定数を個別で調整可能な軸ばね装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の軸ばね装置に用いられる軸ばね本体の平面図
【
図3】第1実施形態の軸ばね装置に用いられる補助弾性部材の平面図
【
図5】第1実施形態の軸ばね装置の無負荷状態におけるA-O-B断面図
【
図6】第1実施形態の軸ばね装置の満車状態におけるA-O-B断面図
【
図7】
図5の軸ばね装置にかかる上下方向の荷重と変位量の関係を示す線図
【
図8】
図6の軸ばね装置にかかる水平方向の荷重と変位量の関係を示す線図
【
図11】鉄道車両用台車に装着された従来の軸ばねを示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を基に説明する。本実施形態における軸ばね装置は、鉄道車両用として用いられるものであり、その使用形態については、
図11で説明した従来の軸ばねと同様とされる。すなわち、
図11中、軸ばね36に代えて本発明に係る軸ばね装置を使用することができる。本発明の軸ばね装置は、軸ばね本体と、軸ばね本体に取り付けられる補助弾性部材から構成される。
【0019】
図1は、軸ばね本体の平面図を、
図2は、
図1のA-O-B断面図を、
図3は、補助弾性部材の平面図を、
図4は、
図3のC-C断面図をそれぞれ示す。また、
図5は、無負荷状態の軸ばね装置のA-O-B断面図を、
図6は、
図5において満車相当の負荷がかかった状態の軸ばね装置のA-O-B断面図をそれぞれ示す。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の軸ばね本体は、基本的に従来の軸ばねと同様の構成とされる。すなわち、軸ばね本体1は、軸芯2と、外筒3と、軸芯2及び外筒3の間に介装される弾性部4とを備える。弾性部4は、弾性体層5と、硬質筒6とが交互に積層された積層弾性体構造とされる。弾性体層5はゴム状弾性体から構成される。硬質筒6は、金属や強化プラスチックなどの硬質材料からなる。軸芯2、弾性体層5、硬質筒6及び外筒3はいずれも同一の軸心Oを有する。軸心Oの方向は、上下方向Zと一致する。
【0021】
軸芯2は金属製であり、弾性部4が固着される軸部7と、軸部7の下端に形成されるフランジ部8と、フランジ部8下側に連設される軸基部9とを備える。弾性部4は、複数の弾性体層5a~5c(以下、弾性体層全般に関して記載する場合は、「弾性体層5」として記載する。)と、複数の硬質筒6a~6b(以下、硬質筒全般に関して記載する場合は、「硬質筒6」として記載する。)とを、軸心Oを中心として同心円状に交互に積層された積層弾性体構造を有する。弾性体層5a~5c及び硬質筒6a~6bは、縦断面視形状がハ字状の円錐筒状に形成される。弾性体層5aが接する軸部7の外周面、及び、弾性体層5cが接する外筒3の内周面は円錐面状に形成される。
【0022】
軸部7には、弾性体層5aが固着された円錐面部の上側に円筒状のガイド部11が連設される。ガイド部11は、補助弾性部材12に挿通され、補助弾性部材12の上下動を案内する。また、外筒3において、弾性体層5cが固着された円錐面部の上側に、補助弾性部材12を内嵌可能な円筒状の嵌合部10が連設される。嵌合部10は、その下端部に縮径部が形成されており、これにより、外筒3の内周面に段差部10aが形成される。
【0023】
図3及び
図4に示すように、補助弾性部材12は、内環部13と、外環部14と、内環部13及び外環部14の間に介在する補助弾性部15とを備える。補助弾性部15は、弾性体層(補助弾性体層)16と硬質筒(補助硬質筒)17とが同心円状に交互に積層された積層弾性体構造を有する。弾性体層16及び硬質筒17は円筒状に形成される。なお、外環部14は、軸心0方向の高さが内環部13及び補助弾性部15よりも高くなるように形成されている。内環部13、外環部14及び硬質筒17は、金属や強化プラスチックなどの硬質材料からなる。弾性体層16は、ゴム状弾性体からなる。ゴム状弾性体としては弾性体層5を構成する材料と同種でもよいし、別種でもよい。
【0024】
本実施形態では、弾性体層16は、2つの弾性体層16a及び16bから構成され、硬質筒17は1つとされる。補助弾性部15は上記構成に限定されず、たとえば、硬質筒17をn層(n=2以上の整数)とし、弾性体層16をn+1層とすることができる。また、弾性体層16の1層のみで構成することも可能である。補助弾性部15の構成は、軸ばね本体1が有する水平方向のばね定数をどの程度補強するかによって適宜決めればよい。
【0025】
図5に示すように、本実施形態の軸ばね装置は、軸ばね本体1と、軸ばね本体1の軸芯2と外筒3の間に着脱可能に介装された補助弾性部材12とを備える。本図は、補助弾性部材12を軸ばね本体1に組み入れた無負荷時の軸ばね装置の状態を示す。無負荷時の外筒3と軸芯2との上下方向Zの距離はD1とされる。補助弾性部材12を軸ばね本体1に組み入れる際には、補助弾性部材12の外環部14が外筒3の段差部10aに当接するまで補助弾性部材12を軸ばね本体1に挿入する。補助弾性部材12は、内環部13にガイド部11が挿通された状態で外筒3に内嵌される。
【0026】
台車枠32の下面には、外筒3が嵌合可能な円板状の凸部32aが形成されており、軸ばね装置は、外筒3を凸部32aに嵌合した状態で台車枠32に固定される。これによって、補助弾性部材12は、外環部14が凸部32aに当接した状態で外筒3に内嵌固定される。内環部13はガイド部11に固定されておらず、軸芯2と外筒3との上下方向Zの相対変位に追従して軸芯2に対して相対的に上下動自在とされる。
【0027】
具体的には、ガイド部11の外周面と、内環部13の内周面は、両面が当接した状態で、ガイド部11に対して補助弾性部材12を摺動自在とした構成とすることができる。この場合、ガイド部11の外周面と内環部13の内周面に、摩擦低減処理を施すのが好ましい。摩擦低減処理としては、両面の間に潤滑剤を注入したり、少なくとも一方の表面をフッ素樹脂等の低摩擦材で構成したり、いずれか一方の面を粗面化することで接触面積を小さくすることができる。また、ガイド部11の外周面と、内環部14の内周面との間に隙間を形成し、補助弾性部材12の内環部13を軸芯2のガイド部に遊嵌することも可能である。
【0028】
図6は、満車相当の負荷がかかった状態の軸ばね装置のA-O-B断面図である。図示のごとく、この状態での外筒3と軸芯2との上下方向の距離はD2とされる。すなわち、無負荷時を基準として満車時における外筒3と軸芯2との上下方向の相対変位量はD1-D2となる。
【0029】
図7および
図8は、本実施形態の軸ばね装置にかかる荷重と変位量の関係を示す図であり、
図7は、上下方向Zにおける荷重と変位量の関係を、
図8は満車相当の負荷がかかった状態での水平方向における荷重と変位量の関係をそれぞれ示す。補助弾性部材12は、軸芯2と外筒3との上下方向Zの相対変位に追従して前記軸芯2に対して相対的に上下動するため、補助弾性部材12の存在は、軸ばね装置としての上下方向Zのばね定数に影響を与えない。したがって、
図7に示すように、軸ばね本体1に補助弾性部材12を組み入れた軸ばね装置の場合も、軸ばね装置から補助弾性部材12を外した場合も、上下方向Zにおける荷重と変位量の関係は同じ線図となる。
【0030】
一方、軸芯2と外筒3が水平方向に相対変位したときには、軸ばね本体1の弾性部4が弾性変形するとともに補助弾性部材12の補助弾性部15も弾性変形する。したがって、水平方向における荷重と変位量の関係を示す線図の傾きは、
図8に示すように、軸ばね装置から補助弾性部材12を外した状態では、軸ばね本体1が有するばね定数の値となり(破線部)、軸ばね装置としての水平方向のばね定数は、軸ばね本体1の水平方向のばね定数に補助弾性部材12の水平方向のばね定数を足した値となる(実線部)。以上説明したように本発明の軸ばね装置は、軸ばね本体1の上下方向Zのばね定数を維持しつつ、軸ばね本体1の水平方向のばね定数を補助弾性部材15によって補強する(高める)ことが可能となる。
【0031】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態を示す補助弾性部材の平面図を、
図10は、
図9のE-O-F断面図をそれぞれ示す。本実施形態では、第1実施形態の軸ばね装置のうち、補助弾性部材を変更した点を除き、第1実施形態と同様の構成とされる。
【0032】
本実施形態で用いられる補助弾性部材18は、第1実施形態で用いられる補助弾性部材12と比べて、円筒状の弾性体層16a、16bのうち一部弾性体を除去した中空部16a2及び16b2と、平面視で扇状の弾性体層16a1及び16b1が形成された点が相違する。
【0033】
補助弾性部材18を軸ばね本体1に装着した軸ばね装置を、台車枠32と、車軸箱35の間に介装した状態での鉄道車両の前後方向をX方向、鉄道車両の左右方向をY方向とすると、中空部16a2及び16b2は、
図9に示すように、軸心Oを中心として前後方向Xから左右方向Yに角度θずつ傾斜した範囲で形成される。これにより、補助弾性部材18の水平方向のばね定数は、(前後方向Xのばね定数)<(左右方向Yのばね定数)となり、水平方向のばね定数が鉄道車両の前後方向Xと左右方向Yとで異なる補助弾性部材18を得ることができる。
【0034】
本実施形態の補助弾性部材18を軸ばね本体1に装着する場合、補助弾性部材18の向きを正しい方向で固定するために、外環部14の下端面又は段差部10aのいずれか一方に図示しない位置決め用凸部を形成し、他方に位置決め用凸部を嵌合可能な図示しない凹部を形成するのが好ましい。これにより、軸ばね本体1に対して補助弾性部材18が正しい向きに装着されたときのみ、位置決め用凸部と凹部とが嵌合し、軸ばね装置を台車枠32に固定することが可能となる。位置決め用凸部及び凹部は一組形成してもよいし、複数組形成することも可能である。
【0035】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。たとえば、上記実施形態においては、補助弾性部材12、18を外筒3に内嵌固定し、軸芯2と外筒3との上下方向Zの相対変位に追従して補助弾性部材12、18が軸芯2に対して相対的に上下動自在とした態様について説明した。
【0036】
これに限らず、補助弾性部材をガイド部11に外嵌固定し、軸芯2と外筒3との上下方向Zの相対変位に追従して補助弾性部材が外筒3に対して相対的に上下動自在な態様とすることもできる。この場合、補助弾性部材の外環部14の高さを低く形成し、補助弾性部材の外環部14の外周面と嵌合部10の内周面とが当接した状態で、嵌合部10に対して補助弾性部材が摺動する構成としてもよいし、補助弾性部材の外環部14の外周面と嵌合部10の内周面の間に隙間を形成し、補助弾性部材の外環部14を嵌合部10に遊挿することも可能である。
【0037】
ただ、補助弾性部材の外環部14の外周面と嵌合部10の内周面とが当接した状態で、嵌合部10に対して補助弾性部材が摺動する構成の場合には、両者の接触面積が大きくなる。したがって、補助弾性部材をスムーズに摺動させる観点からいえば、補助弾性部材を外筒3に内嵌固定し、軸芯2に対して補助弾性部材を相対的に上下動自在とするのが好ましい。
【0038】
本実施形態及び上記変形例に開示されている構成要件は互いに組合せ可能であり、組合せることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 軸ばね本体
2 軸芯
3 外筒
4 弾性部
5 弾性体層
6 硬質筒
7 軸部
8 フランジ部
9 軸基部
10 嵌合部
11 ガイド部
12 補助弾性部材
13 内環部
14 外環部
15 補助弾性部
16 弾性体層
17 硬質筒
18 補助弾性部材