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特開2022-9891液体試料検査キット用膜担体、液体試料検査キット及び膜担体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009891
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】液体試料検査キット用膜担体、液体試料検査キット及び膜担体
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/543 525U
G01N33/543 541Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179265
(22)【出願日】2021-11-02
(62)【分割の表示】P 2019559636の分割
【原出願日】2018-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2017236605
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】秋山 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】門田 健次
(57)【要約】
【課題】高感度な判定が可能な検査キット用膜担体を提供する。
【解決手段】液体試料中の被検出物質を検出する液体試料検査キット用膜担体であり、前記液体試料を輸送できる、一体成型された少なくとも一つの流路を備え、前記流路の底面に、前記液体試料を輸送するための毛細管作用を生じせしめる微細構造が設けられ、前記微細構造が、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり2か所以上有する構造である液体試料検査キット用膜担体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の被検出物質を検出する液体試料検査キット用膜担体であり、
前記液体試料を輸送できる、一体成型された少なくとも一つの流路を備え、
前記流路の底面に、前記液体試料を輸送するための毛細管作用を生じせしめる微細構造が設けられ、
前記微細構造が、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり2か所以上有する構造である液体試料検査キット用膜担体。
【請求項2】
前記した、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり2か所以上有する構造が、前記流路の一部にのみ設けられた請求項1に記載の液体試料検査キット用膜担体。
【請求項3】
前記微細構造の中のピーク位置間の領域での極小値となる微細構造高さが、ピーク位置での高さの1/8以上7/8以下である請求項1又は2に記載された液体試料検査キット用膜担体。
【請求項4】
液体試料中の被検出物質を検出するための検知ゾーンを有する請求項1~3の何れか1項に記載された液体試料検査キット用膜担体。
【請求項5】
前記検知ゾーンにおいて被検出物質を検出する際に、検出されたことが光学的手法で確認可能な請求項4に記載された液体試料検査キット用膜担体。
【請求項6】
前記液体試料中の前記被検出物質と特異的に反応する抗体又はその抗原結合性断片を有する標識体が、前記被検出物質と反応し得るように前記液体試料検査キット用膜担体の少なくとも一部に設けられており、
光学的手法で確認可能な手段が色変化であり、前記色変化が、前記被検出物質と結合した前記標識体によって生じる請求項1~5の何れか1項に記載された液体試料検査キット用膜担体。
【請求項7】
前記標識体が、前記抗体又は前記抗原結合性断片が結合した粒子である請求項6に記載の液体試料検査キット用膜担体。
【請求項8】
前記粒子が、着色ラテックス粒子、蛍光ラテックス粒子からなる群の1種以上である請求項7に記載された液体試料検査キット用膜担体。
【請求項9】
請求項4又は5に記載された液体試料検査キット用膜担体の検知ゾーンに、検知ゾーンにおいて被検出物質を検出する際に、検出されたことが光学的手法で確認可能な色変化を生じせしめる検出物質を固定する液体試料検査キット用膜担体。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の液体試料検査キット用膜担体を有する液体試料検査キット。
【請求項11】
液体試料中の被検出物質を検出する膜担体であり、
前記液体試料を輸送できる流路を備え、
前記流路の底面に微細構造が設けられ、
前記微細構造が、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり2か所以上有する構造である膜担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料検査キット用膜担体、液体試料検査キット及び膜担体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗原抗体反応等を用いることで、感染症への罹患や妊娠、血糖値等を測定する、Point of Care Test(POCT)試薬が注目を集めている。POCT試薬は、短時間で結果の判別が可能、使用方法が簡便、安価であるといった特徴をもっている。POCT試薬は、これらの特徴から、症状が軽度の段階での診察や定期診察等に多く使用されており、今後増加することが予想される在宅医療においても重要な診察ツールとなっている。
【0003】
多くのPOCT試薬では、血液等の液体試料を検査キットに導入し、その中に含まれる特定の被検出物質を検出することで判定を行っている。液体試料から特定の被検出物質を検出する方法としてイムノクロマトグラフィ法がよく用いられている。イムノクロマトグラフィ法とは、検査キットの膜担体上に滴下された液体が膜担体上を移動する中で、被検出物質と標識体とが結合し、更にこれらが検査キット中に固定化された物質(以下、検出物質という)と特異的に結合し、その結果生じた色や質量の変化等を検出するという手法である。検出物質は、試薬(reagent)と言い換えてもよい。
【0004】
被検出物質を検出する手法として、標識体として着色ラテックス粒子、蛍光ラテックス粒子、金属コロイド粒子等を用いることで生じる色変化を、吸光度測定器等の光学測定機器を介して検知するものがよく知られている。
【0005】
上記の色変化を光学的に判定するPOCT試薬として、ニトロセルロース膜を用いたラテラルフロー型のキットがよく用いられている(特許文献1)。ニトロセルロース膜は、直径が数μm程度の微細な孔を多数有しており、その孔の中を液体試料が毛細管力によって移動する。
【0006】
しかし、ニトロセルロース膜は天然物由来であり、孔径や孔同士のつながり方が一様ではないため、それぞれの膜で液体サンプルの流れる流速に差異が生じてしまう。流速を制御する手法として特許文献2が示されているが、孔径や孔同士のつながり方が一様ではないという本質的な課題は解決されていない。流速に差異が生じると、被検出物質を検出するためにかかる時間も変化してしまい、その結果、被検出物質が結合を生じる前に非検出として誤って判断してしまう可能性がある。
【0007】
上記の課題を解決するため、微細流路を人工的に作製するという手法が考案されている(特許文献3~7)。この手法を用いると、均一な構造を有する膜担体を作製できるため、被検出物質が結合を生じる前に非検出として誤って判断してしまう可能性を低減できる。
【0008】
上記の特許文献では系内での流路構造が均一であるため検出性能に制限があった。特許文献8には、人工的な微細流路を用いた際の検出性能を向上させる手法として、流速制御を目的とした溝型流路と、感度向上を目的としたピラー型流路を組み合わせるものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-062820号公報
【特許文献2】国際公開第2016/051974号
【特許文献3】特許第4597664号
【特許文献4】特表2012-524894号公報
【特許文献5】特許第5609648号
【特許文献6】特開2016-011943号公報
【特許文献7】特開2013-113633号公報
【特許文献8】特許第5821430号
【特許文献9】国際公開第2016/098740号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし上記の先行文献に記載の技術を用いた場合、液体試料中の多くの被検出物質や標識体は溝型の流路中やピラー構造の間をすり抜けていき、微細構造の表面部に固定化されている検出物質との反応率は低かった。このことが要因で、検出感度が低くなっていた。
特許文献9は、液体試料中の被検出物質を検出する検査キット用の膜担体であって、前記液体試料を輸送できる少なくとも一つの流路が設けられ、前記流路の底面に、前記液体試料を輸送するための毛細管作用を生じせしめる微細構造が設けられている、液体試料検査キット用膜担体が記載されている。しかし、特許文献9は、微細構造がピーク位置を2か所以上有することについて記載がない。
【0011】
本発明は上記問題を鑑みて、高感度な判定が可能な検査キット用膜担体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は、以下の通りである。
(1)液体試料中の被検出物質を検出する液体試料検査キット用膜担体であり、
前記液体試料を輸送できる、一体成型された少なくとも一つの流路を備え、
前記流路の底面に、前記液体試料を輸送するための毛細管作用を生じせしめる微細構造が設けられ、
前記微細構造が、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり2か所以上有する構造である液体試料検査キット用膜担体。
(2)前記した、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり2か所以上有する構造が、前記流路の一部にのみ設けられた(1)に記載の液体試料検査キット用膜担体。
(3)前記微細構造の中のピーク位置間の領域での極小値となる微細構造高さが、ピーク位置での高さの1/8以上7/8以下である(1)又は(2)に記載された液体試料検査キット用膜担体。
(4)液体試料中の被検出物質を検出するための検知ゾーンを有する(1)~(3)の何れか1項に記載された液体試料検査キット用膜担体。
(5)前記検知ゾーンにおいて被検出物質を検出する際に、検出されたことが光学的手法で確認可能な(4)に記載された液体試料検査キット用膜担体。
(6)前記液体試料中の前記被検出物質と特異的に反応する抗体又はその抗原結合性断片を有する標識体が、前記被検出物質と反応し得るように前記液体試料検査キット用膜担体の少なくとも一部に設けられており、
光学的手法で確認可能な手段が色変化であり、前記色変化が、前記被検出物質と結合した前記標識体によって生じる(1)~(5)の何れか1項に記載された液体試料検査キット用膜担体。
(7)前記標識体が、前記抗体又は前記抗原結合性断片が結合した粒子である(6)に記載の液体試料検査キット用膜担体。
(8)前記粒子が、着色ラテックス粒子、蛍光ラテックス粒子からなる群の1種以上である(7)に記載された液体試料検査キット用膜担体。
(9)(4)又は(5)に記載された液体試料検査キット用膜担体の検知ゾーンに、検知ゾーンにおいて被検出物質を検出する際に、検出されたことが光学的手法で確認可能な色変化を生じせしめる検出物質を固定する液体試料検査キット用膜担体。
(10)(1)~(9)の何れか1項に記載の液体試料検査キット用膜担体を有する液体試料検査キット。
(11)液体試料中の被検出物質を検出する膜担体であり、
前記液体試料を輸送できる流路を備え、
前記流路の底面に微細構造が設けられ、
前記微細構造が、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり2か所以上有する構造である膜担体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液体試料検査キット用膜担体は、高感度な検査を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
上述した目的、及びその他の目的、特徴及び利点は、以下に述べる好適な実施の形態、及びそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0015】
図1】本発明による実施形態の一例であり、微細構造の俯瞰図である。
図2】本発明による実施形態の一例であり、微細構造の俯瞰図である。
図3】本発明による実施形態の一例であり、微細構造の俯瞰図である。
図4】本発明による実施形態の一例であり、微細構造の俯瞰図である。
図5】本発明による実施形態の一例であり、微細構造の俯瞰図と断面図である。
図6】本発明による実施形態の一例であり、微細構造中の流れを表す模式図である。
図7】本発明による実施形態の一例であり、膜担体の模式的な俯瞰図である。
図8】本発明による実施形態の一例であり、検査キットの模式的な上面図である。
図9】本発明による実施形態の一例であり、膜担体の模式的な上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。尚、全ての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。又、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0017】
本実施形態の液体試料検査キット用膜担体とは、例えば、液体試料中の被検出物質を検出する液体試料検査キット用の膜担体をいう。
【0018】
本実施形態に係る検査キットは、液体試料中の被検出物質を検出する。例えば、図8に示すように、検査キット18は、膜担体3と、膜担体3を収容する筐体18aと、を備える。膜担体3の表面には、液体試料が滴下される滴下ゾーン3xと、液体試料中の被検出物質を検出するための検知ゾーン3yと、がある。滴下ゾーン3xは、筐体18aの第一開口部18bにおいて露出している。検知ゾーン3yは、筐体18aの第二開口部18cにおいて露出している。膜担体3には、液体試料を輸送する少なくとも一つの流路が設けられ、流路の底面には、微細構造が設けられている。微細構造は、少なくとも滴下ゾーン3xと検知ゾーン3yとの間に位置する。膜担体3の表面全体にわたり、微細構造があってよい。
【0019】
図9は、膜担体3の模式的な上面図である。図9に示すように、膜担体3は、液体試料を輸送する少なくとも一つの流路2を備えている。流路2は、一体成型により備えることが好ましい。流路2の底面には、微細構造が設けられている(図示せず、詳細は後述)。微細構造は、少なくとも滴下ゾーン3xと検知ゾーン3yとの間に位置する。膜担体3の表面全体にわたり、微細構造が設けられていてもよい。膜担体3の表面全体が、液体試料の流路2であってよい。微細構造は、毛細管作用を生じせしめる。微細構造の毛細管作用により、液体試料は、微細構造を介して、滴下ゾーン3xから検知ゾーン3yへ(輸送方向1に沿って)輸送される。液体試料中の被検出物質が検知ゾーン3yにおいて検出されると、検知ゾーン3yの色が変化する。
【0020】
膜担体3の全体の形状は、特に限定されないが、例えば、四角形等の多角形、円形、又は楕円形であってよい。膜担体3が四角形である場合、膜担体3の縦幅(短手方向の長さ)L1は、例えば、2mm以上100mm以下であってよく、膜担体3の横幅(長手方向の長さ)L2は、例えば、2mm以上100mm以下であってよい。微細構造の高さを除く膜担体の厚みは、例えば、0.1mm以上10mm以下であってよい。
【0021】
例えば、微細構造は、液体試料の輸送方向1に沿って変化するように設けられている。換言すると、膜担体3は、液体試料の輸送方向1に沿って設けられた複数の領域(滴下ゾーン側から順に、第一の領域A、第二の領域B及び第三の領域C)を有し、隣接する領域(第一の領域A及び第二の領域B、第二の領域B及び第三の領域C)が互いに異なる微細構造を有する。
【0022】
膜担体3の表面全体が、液体試料の流路であってよい。微細構造は、毛細管作用を生じせしめる。微細構造の毛細管作用により、液体試料は、微細構造を介して、滴下ゾーン3xから検知ゾーン3yへ輸送される。液体試料中の被検出物質が検知ゾーン3yにおいて検出されると、検知ゾーン3yの色が変化する。図1~6に示すように、微細構造は、凸部の総体(集合体)である。つまり、微細構造は、液体試料の流路の底面に相当する平坦部と、平坦部から突出する複数の凸部と、を備える。毛細管作用により、複数の凸部の間の空間が、液体試料を膜担体3の表面に沿って輸送する流路として機能する。換言すれば、毛細管作用により、微細構造における空隙が、液体試料を膜担体3の表面に沿って輸送する流路として機能する。複数の凸部は、規則的に、又は、並進対称的に、膜担体の表面上に並んでいてよい。
【0023】
本実施形態の一側面に係る液体試料の検査方法は、検査キット18を用いる検査方法で
ある。
【0024】
例えば、上記検査方法は、液体試料を、膜担体3の表面のうち滴下ゾーン3xに滴下する工程と、膜担体3の表面に形成されている微細構造が奏する毛細管作用により、微細構造を介して、液体試料を滴下ゾーン3xから検知ゾーン3yへ輸送する工程と、輸送過程において、液体試料中の被検出物質を、標識体と結合させ、更に、被検出物質を、検知ゾーン3yに固定された試薬(以下検出物質ということもある)と結合させて、検知ゾーン3yにおける色の変化(標識体の呈色)の有無を光学的に判定する工程と、を備えてよい。
【0025】
標識体とは、例えば、被検出物質と結合するものをいう。標識体の中では、粒子が好ましい。上記の検査方法において、標識体を固定化しておく方法は特に制限はない。例えば、標識体はキット中の部材に固定化されていてもよいし、例えば膜担体3の一部に固定化されていてもよい。
【0026】
例えば、検査キット18を用いる検査方法は、液体試料と粒子を混合し、液体試料中の被検出物質を粒子と結合させて標識体(以下標識粒子ということもある)を作製する工程と、混合済み液体試料を膜担体3の表面のうち滴下ゾーン3xに滴下する工程と、膜担体3の表面に形成されている微細構造が奏する毛細管作用により、微細構造を介して、液体試料を滴下ゾーン3xから検知ゾーン3yへ輸送する工程と、更に、被検出物質を、検知ゾーン3yに固定された試薬と結合させて、検知ゾーン3yにおける色の変化(標識粒子の呈色)の有無を光学的に判定する工程と、を備えてよい。
【0027】
上記の検査方法において、液体試料と標識粒子を混合する方法は特に制限はない。例えば、標識粒子の入れられた容器に液体試料を添加する方法でもよいし、例えば、標識粒子を含む液体と液体試料とを混合してもよい。例えば、液体試料の入れられた容器の滴下口にフィルターを挟み、そのフィルター中に標識粒子を固定化していてもよい。
【0028】
本実施形態の液体試料検査キットの微細構造や膜担体は、熱可塑性プラスチックからなっていてもよい。換言すれば、熱可塑性プラスチックからなる膜状の基材を加工することにより、微細構造を有する膜担体を作製できる。加工方法としては、例えば、熱インプリント、UVインプリント、射出成型、エッチング、フォトリソグラフィー、機械切削、レーザー加工等が挙げられる。この中でも安価に精密な加工を施す手法として、熱可塑性プラスチックに対する熱インプリントが適している。熱可塑性プラスチックとしては、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂及びアクリル系樹脂等が挙げられ、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等様々な種類のものを用いることができる。
【0029】
上記の微細構造(以下凸部ということもある)は、凸部を有することにより形成できる。複数の凸部を有することが好ましい。微細構造の形状は、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり2か所以上有する形状である。微細構造の形状は、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり5か所以下有する形状であることが好ましく、3か所以下有する形状であることがより好ましく、2か所有する形状であることが特に好ましい。
ここで言う一つの繰り返し単位構造は、通常は一つの凸部をいう。
【0030】
例えば、図1に示すように、微細構造は、円錐が二つ連なった構造であってもよい。例えば、図2に示すように、微細構造は、四角錐が二つ連なった構造であってもよい。例えば、図3に示すように、微細構造は、横置きの三角柱(三角柱における一側面(四角形の面)が膜担体に接するように置かれた三角柱)が二つ連なった構造であってもよい。微細構造を俯瞰した際に全表面積を視認できる方が被検出物質が検出された際の色変化を光学的に検知しやすい点で、これらの中では、円錐や多角錐等の錐体が複合化されたもの、即ち、ピーク位置を2か所以上有する錐体が好ましい。錐体の中では、円錐が好ましい。液体試料は、液体試料の流れる輸送方向1から検査キットの微細構造や膜担体に輸送される。
【0031】
上記図6のように、微細構造の形状を、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり2か所以上有する形状にした場合、各構造の間を進行する流れ1Aから、ピーク位置の隙間を進行する流れ1Bへと分岐が生じ、その過程において液体試料内で高さ方向に関する被検出物質及び標識体の撹拌が促進され、被検出物質と標識体との反応率が向上することから、検査キットの性能が向上する。検知ゾーンの微細構造が上記構造である場合、ピーク位置の隙間を進行する流れ1Bによって微細構造の表面部に被検出物質及び標識体が衝突する。検知ゾーンの表面部には検出物質が固定化されており、そこに被検出物質及び標識体が衝突することで、検出感度の向上が達成できる。
【0032】
上記のように、微細構造の形状を、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり2か所以上有する領域は、微細構造全体の一部分であってもよい。構造による検出感度向上の効果が最も強く表れる検知ゾーンのみを上記構造とし、他の領域では円錐、多角錐、円錐台、多角錐台、円柱、多角柱、半球、半楕円体等の単純な構造、例えば、ピーク位置を1か所有する錐体にすることで、全体の流速を制御しつつ検知ゾーンでの感度を向上できる。
【0033】
上記のように、微細構造の形状を、高さが極大となるピーク位置を一つの繰り返し単位構造当たり2か所以上有するものにした場合、ピーク位置の中間の領域に高さが極小となる領域が生じる。この領域での高さの極小値5B(以下極小値となる微細構造高さということもある)と、極大となるピーク位置のうちより高い値5A(高さの最大値)との比5B/5Aは、1/8以上7/8以下が好ましく、1/4以上3/4以下がより好ましい。この範囲内であると、各構造の間を進行する流れからピーク位置の隙間を進行する流れへの分岐が生じ、かつ被検出物質及び標識体が衝突する表面部の面積も大きいため、検出感度が向上する。
【0034】
図1に示すように、微細構造において、円錐が二つ連なった構造である場合、下記であることが好ましい。凸部11の底面の径5Cは、円錐の底面(円)の直径であることが好ましい。5A(高さの最大値)は円錐の頂点から底面に下ろした垂線の長さであることが好ましい。5B(高さの極小値)は、極小となる領域点から底面に下ろした垂線の長さであることが好ましい。5A(高さの最大値)の垂線の足X、X'、5B(高さの極小値)の垂線の足Yは、底面(円)の直径ZW上にあることが好ましい。Z、Wは底面(円)の円周と直径の交点である。円周と直径の交点と、高さの最大値の垂線の足との距離(例えば、ZX、WX')や、高さの最大値の垂線の足と、高さの極小値との垂線の足との距離(例えば、XY、YX')は、全て同一であることが好ましい。
【0035】
図2に示すように、微細構造において、四角錐が二つ連なった構造である場合、下記であることが好ましい。凸部11の底面の径5Cは、底面(四角形)の辺の長さである。辺は長辺が好ましい。5A(高さの最大値)は四角錐の頂点から底面に下ろした垂線の長さであることが好ましい。5B(高さの極小値)は、極小となる領域点から底面に下ろした垂線の長さであることが好ましい。5A(高さの最大値)の垂線の足、5B(高さの極小値)の垂線の足は、底面(四角形)の同一線上にあることが好ましい。
図3に示すように、微細構造において、横置きの三角柱が二つ連なった構造である場合、下記であることが好ましい。凸部11の底面の径5Cは、底面(四角形)の辺の長さである。辺は短辺が好ましい。5A(高さの最大値)は横置きの三角柱の稜線から底面に下ろした垂線の長さであることが好ましい。5B(高さの極小値)は、極小となる領域点から底面に下ろした垂線の長さであることが好ましい。5A(高さの最大値)の垂線の足、5B(高さの極小値)の垂線の足は、底面(四角形)の同一辺上にあることが好ましい。
5B(高さの極小値)の垂線の足Yは、底面の中心や重心にあることが好ましい。
【0036】
上記構造の、高さが極大となるピーク位置での高さは、図4のようにピーク位置ごとに異なっていても構わない。複数のピーク位置間での高さの比(5A'/5A)は、特に限定されないが、膜担体加工時の構造の損傷を抑制できる点で、0.5/1以上5/1以下が好ましく、1/1以上3/1以下がより好ましい。
【0037】
インプリントや射出成型といった金型を用いた加工方法の場合、錐体は、底面に比べ上部が細くなっているため、同底面の柱体を作製するよりも金型作製時に削り出す体積は少なくて済み、金型を安価に作製することができる。
【0038】
微細構造は幾何学的に正確な形状である必要はなく、角部が丸みを帯びている場合や表面に微細な凹凸が存在する等していてもよい。
【0039】
図1~5は、本実施形態における、流路底面に設けられた微細構造の俯瞰図及び断面図の一例を示す。
【0040】
本実施形態に係る粒子としては、コロイド粒子やラテックス粒子等が挙げられる。粒子は、磁性や蛍光発光性を有しても良い。コロイド粒子としては、金コロイド粒子、白金コロイド粒子の金属コロイド粒子等が挙げられる。これらの中では、粒径制御、分散安定性、結合容易性の点で、ラテックス粒子が好ましい。
粒子としては、視認性の点で、着色粒子、蛍光粒子からなる群の1種以上が好ましく、着色粒子がより好ましい。着色粒子は、肉眼で色が検出可能なものであればよい。蛍光粒子は、蛍光物質を含有すればよい。
本実施形態に係るラテックス粒子の材料としては特に限定はないが、ポリスチレンが好ましい。
【0041】
本実施形態に係る粒子は、被検出物質と特異的に反応する抗体又はその抗原と結合し標識体を作製している。抗体又は抗原は、結合性断片であってもよい。結合性断片とは、被検出物質と特異的に結合することができる断片をいい、例えば、抗体の抗原結合性断片や抗原の抗体結合性断片をいう。これにより、標識体は、抗体や抗原を介して被検出物質に結合できる。
【0042】
前記微細構造のピーク位置での高さとは、例えば、凸部11の高さ5Aをいう。微細構造のピーク位置での高さは、特に限定されないが、例えば、10~500μmが好ましく、50~480μmがより好ましい。高さが10μm以上だと、流路体積が大きくなり液体試料を展開するのに長い時間がかからない。高さが500μm以下だと、微細構造を作製するのに多大な時間とコストがかからず、構造の作製が容易になる。
【0043】
上記微細構造を構成する凸部11同士の最近接距離(以下微細構造同士の最近接距離ということもある)6は、好ましくは500μm以下、より好ましくは2μm以上100μm以下である。凸部11同士の最近接距離6は、複数の凸部11間においてこの範囲で変化していてもよい(互いに異なっていてもよい)。凸部11同士の最近接距離6は、0μmより小さいことは有りえず、500μm以下である場合、液体試料と流路との接触面積が増大し、これにより毛細管力が増大するため液体試料を移動させることがより容易になる。ここで、「凸部11同士の最近接距離」とは、同一の領域内で隣り合う一対の凸部11の最近接距離である。
【0044】
上記微細構造を構成する凸部11のアスペクト比は、好ましくは0.1以上2.0以下である。ここで言うアスペクト比とは、凸部11の高さ(Lh)を、凸部11の底面10の代表長さ(径5C)(Lv)で割った値(Lh/Lv)である。高さは5A(高さの最大値)が好ましい。アスペクト比が0.1以上である場合、液体試料と流路との接触面積が増大し、これにより毛細管力が増大するため液体試料を移動させることがより容易になる。アスペクト比が2.0以下である場合、微細構造の作製がより容易になる。
【0045】
膜担体の全体の形状は、特に限定されないが、例えば、四角形等の多角形、円形、楕円形であってよい。膜担体が四角形である場合、膜担体の縦幅は、例えば、2mm以上100mm以下であってよく、膜担体の横幅は、例えば、2mm以上100mm以下であってよい。微細構造の高さを除く膜担体の厚みは、例えば、0.1mm以上10mm以下であってよい。
【0046】
本実施形態の液体試料検査キットに検知ゾーンを作製するためには、上記流路の少なくとも一部に、検出物質を固定化しておく必要がある。上記流路の材質及び検出物質の種類によっては、検知時の判定が目視で行える程の検出物質を固定化できない可能性があるので、その際には検知ゾーンのみに適当な表面処理を施すことができる。
【0047】
上記表面処理手法としては、何ら限定されるものではなく、例えばUV照射、UV/オゾン処理、各種プラズマ処理、3-AminopropyltriethoxysilaneやGlutaraldehydeによる表面修飾等種々の手法を用いることができる。
【0048】
本実施形態において、前記検出物質としては、例えば、抗体が挙げられる。抗体は、被検出物質と抗原抗体反応する抗体であり、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。ここで、被検出物質としては、何ら限定されるものではなく、各種病原体、各種臨床マーカー等、抗体と抗原抗体反応することが可能ないかなる物質であってもよい。具体例として、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、HAV、HBs、HIV等のウイルス抗原、MRSA、A群溶連菌、B群溶連菌、レジオネラ属菌等の細菌抗原、細菌等が産生する毒素、マイコプラズマ、クラミジア・トラコマティス、ヒト絨毛性ゴナドトロピン等のホルモン、C反応性タンパク質、ミオグロビン、心筋トロポニン、各種腫瘍マーカー、農薬及び環境ホルモン等を例示できるが、これらに限定されるものではない。特に、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、C反応性タンパク質、ミオグロビン及び心筋トロポニンのような検出と治療措置に急を要する項目の場合にはその有用性が特に大きい。被検出物質は、単独で免疫反応を誘起できる抗原であってもよいし、単独では免疫反応を誘起できないが抗体と抗原抗体反応により結合できるハプテンであってもよい。
【0049】
上記光学的手法による判定に関して、主に目視による判定と蛍光強度を測定する手法の2つが挙げられる。目視によって判定する場合には、検知前と検知後の色をCIE1976L色空間の表色系で測定した際の、2つの色刺激間の色差(JIS Z8781-4:2013に記載のΔE)は0.5以上が好ましい。この色差が0.5以上だと、色の違いを目視で確認することが容易になる。蛍光強度を測定して判定する場合には、検知ゾーンでの蛍光強度(Fl1)と、検知ゾーンに隣接する上流域及び下流域での蛍光強度(Fl2)の比(S/N比)がFl1:Fl2=10:1以上であることが好ましい。この比が10:1以上だとシグナルとノイズの分離が容易になる。
【実施例0050】
以下、本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0051】
[実験例1]
<モールドの準備>
モールドは、レーザー加工及び機械切削によって作製した。このモールドはアルミ合金A5052製である。この金型の中心部には、径(図1の5C)が100μm、深さ(表では高さということもある)が極小(表では極大)となるピーク位置での深さ(図1の5A)が100μm、ピーク位置の間の領域での深さの極大値(表では極小値)(図1の5B)が50μmとなり、深さの極大点が、底面となる円の中心点の鉛直下方向に存在する、図1に示した円錐が二つ連なった形状の凹部が、微細構造同士の最近接距離6を5μmとして図1の三角配列形式で3cm×3cmの範囲に加工されている。5Aの垂線の足X、X'、5Bの垂線の足Yは、底面(円)の直径ZW上にある。円周と直径の交点と、高さの最大値の垂線の足との距離(ZX、WX')、高さの最大値の垂線の足と、高さの極小値との垂線の足との距離(XY、YX')は、同一である。即ち、ZX=XY=YX'=WX'である。
5B(高さの極小値)の垂線の足は、底面(円)の中心にある。
上記のモールドの凹凸面に対し、転写した際のモールドと熱可塑性プラスチックの剥離を容易かつ確実にするため、離型処理を施した。離型処理の手法は、ダイキン工業社製オプツールHD-2100THに約1分浸し、乾燥させたのち、一晩静置することで行った。
【0052】
<微細構造の転写>
上記のようにして得られたモールドを用いて、熱可塑性プラスチックに微細構造を転写した。熱可塑性プラスチックとしては、ポリスチレン(デンカ社製デンカスチレンシート、膜厚300μm)を用いた。加工方法として熱インプリントを用い、装置はSCIVAX社製X-300を用いた。成形温度は120℃、印加圧力は5.5MPaとし、10分間転写を行った。転写後は、圧力を印加したまま熱可塑性プラスチックとモールドを80℃まで冷却し、その後圧力を除くことで、図1に示す微細構造の膜担体を作製した。
作製した膜担体において、極大となるピーク位置高さ、極小となるピーク位置高さ、5B/5A(この領域での高さの極小値5Bと、極大となるピーク位置のうちより高い値5A(高さの最大値)との比)、ピーク位置が複数ある構造の加工範囲を表1に示す。凸部は円錐である。微細構造(凸部)の高さを除く膜担体の厚みは、0.2mmである。
【0053】
<検知ゾーンの作製>
上記のように作製した図7の膜担体の特定の一辺(20A)から0.6cmと1.0cmの位置に、抗A型インフルエンザNP抗体浮遊液、並びに抗B型インフルエンザNP抗体浮遊液を各々3cm塗布し(塗布量は各3μL)、温風下で良く乾燥させ、検出物質を固定化した。
【0054】
<標識物質のセット>
精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体(上記と別の抗体)及び精製抗B型インフルエンザウイルスNP抗体(上記と別の抗体)を使用した。抗A型インフルエンザウイルスNP抗体に粒子径0.2μmの赤色ラテックス粒子(SC-042-R ポリスチレンラテックス粒子 着色ラテックス粒子 JSRライフサイエンス社製)を共有結合で標識し、糖、界面活性剤及びタンパク質を含むトリス緩衝液にラテックス粒子の濃度が0.025質量体積%(w/v%)になるように懸濁し、超音波処理を行って充分に分散浮遊させた抗A型標識体を調製した。同様に抗B型インフルエンザウイルスNP抗体に青色ラテックス粒子を標識した抗B型標識体を調製した。
【0055】
抗A型標識体と抗B型標識体とを混合し、大きさが3cm×1cmのガラス繊維(33GLASS NO.10539766 Schleicher&Schuell製)に1平方センチメートル当たり50μLになる量を塗布し、温風下で良く乾燥させ、標識体パッドを作製した。その後作製した膜担体の端部2mmだけ標識物質パッドを重ね、カッターで幅5mmの短冊に裁断して一体化された液体試料検査キットを作製した。
【0056】
<検知評価>
上記のように作製された液体試料検査キットの端部に、液体試料を100μL滴下した。液体試料は、希釈溶液としてデンカ生研社製クイックナビ―Fluに付属している検体浮遊液を用いた。A型インフルエンザウイルスA/Beijing/32/92(H3N2)の希釈倍率を2×10から大きくしていった際、試験開始10分後に着色ラインの有無を目視できなくなる希釈倍率(A型目視判定可能な限界倍率)を求めた。その希釈倍率の1/2の希釈倍率で検査した際に、試験開始してから着色ラインの色の濃さが安定するまでの時間(A型の濃さが安定するまでの時間)を検出時間として求めた。その結果を表1~2に示す。
【0057】
上記のように作製された液体試料検査キットの端部に、液体試料を100μL滴下した。液体試料は、希釈溶液としてデンカ生研社製クイックナビ―Fluに付属している検体浮遊液を用いた。B型インフルエンザウイルスB/Shangdong/7/97の希釈倍率を2×10から大きくしていった際、試験開始10分後に着色ラインの有無を目視できなくなる希釈倍率(B型目視判定可能な限界倍率)を求めた。その希釈倍率の1/2の希釈倍率で検査した際に、試験開始してから着色ラインの色の濃さが安定するまでの時間(B型の濃さが安定するまでの時間)を検出時間として求めた。その結果を表1~2に示す。
検出時間は、A型の濃さが安定するまでの時間と、B型の濃さが安定するまでの時間との平均値を、検出時間として用いた。
【0058】
[実験例2]
ピーク位置の間の領域での深さの極大値(表では極小値)を25μmとした以外は、実験例1と同様の条件で実験を行った。
【0059】
[実験例3]
ピーク位置の間の領域での深さの極大値(表では極小値)を75μmとした以外は、実験例1と同様の条件で実験を行った。
【0060】
[実験例4]
ピーク位置の間の領域での深さの極大値(表では極小値)を12.5μmとした以外は、実験例1と同様の条件で実験を行った。
【0061】
[実験例5]
ピーク位置の間の領域での深さの極大値(表では極小値)を87.5μmとした以外は、実験例1と同様の条件で実験を行った。
【0062】
[実験例6]
図7において、モールド中の加工範囲の特定の一辺(20A)から加工範囲内側に5mm分の領域(領域A)と、特定の一辺の対辺(20B)から加工範囲内側に15mm分の領域(領域C)には、径が100μm、深さ(表では高さということもある)100μmの円錐の凹部(この円錐はピーク位置(頂点)を1個のみ有する)が、微細構造同士の最近接距離6を5μmとして図1の三角配列形式で並んでいる。
上記加工範囲のそれ以外の範囲(領域B)では、実験例1と同様にモールドを作製した。即ち、金型の中心部には、径(図1の5C)が100μm、深さ(表では高さということもある)が極小(表では極大)となるピーク位置での深さ(図1の5A)が100μm、ピーク位置の間の領域での深さの極大値(表では極小値)(図1の5B)が50μmとなり、深さの極大点が、底面となる円の中心点の鉛直下方向に存在する、図1に示した円錐が二つ連なった形状の凹部が、微細構造同士の最近接距離6を5μmとして図1の三角配列形式で3cm×3cmの範囲に加工されている。5Aの垂線の足X、X'、5Bの垂線の足Yは、底面(円)の直径ZW上にある。円周と直径の交点と、高さの最大値の垂線の足との距離(ZX、WX')、高さの最大値の垂線の足と、高さの極小値との垂線の足との距離(XY、YX')は、同一である。即ち、ZX=XY=YX'=WX'である。 5B(高さの極小値)の垂線の足は、底面(円)の中心にある。
それ以外は、実験例1と同様の条件で実験を行った。
【0063】
[実験例7]
実験例1の微細構造を、径が100μm、深さ(表では高さということもある)100μmの円錐(この円錐はピーク位置(頂点)を1個のみ有する)の凹部が、微細構造同士の最近接距離6を5μmとして図1の三角配列形式で並んでいるものとした以外は、実験例1と同様の条件で実験を行った。
【0064】
[実験例10~15]
用いる粒子を着色ラテックス粒子から蛍光ラテックス粒子(micromer-F 蛍光ラテックス粒子 材料ポリスチレン コアフロント社製)に変更し、試験開始10分後に着色ラインの有無をイムノクロマトリーダ(C11787 浜松ホトニクス社製)で読み取りできなくなる倍率(蛍光判定可能な限界倍率)、即ち、S/N比が10以下を示す倍率を求めた。これ以外の内容は実験例1~6と各々同様に行った。実験例15の膜担体は、実験例6と同一である。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1~2の結果から、本実施形態による液体試料検査キットは、流路中の微細構造中に複数の高さピーク位置を設けることで、高感度な検査が実施可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本実施形態は、被検出物質が検出されたことが光学的に確認可能なイムノクロマトグラフィ法において、高感度な判定が可能な検査キットの提供を課題とする。本実施形態の液体試料検査キットは、高感度な検査を安価に実施できるため、使い捨て可能なPOCT試薬に有用である。
【0069】
この出願は、2017年12月11日に出願された日本出願特願2017-236605号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0070】
1 液体試料の流れる方向(輸送方向)
1A 各構造の間を進行する流れ
1B ピーク位置のすき間を進行する流れ
2 流路
3 膜担体
3x 滴下ゾーン
3y 検知ゾーン
5 微細構造の高さ
5A ピーク位置での微細構造の高さ
5A' ピーク位置での微細構造の高さ
5B ピーク位置間の極小値での微細構造の高さ
5C 微細構造の径
6 微細構造同士の最近接距離(最近接距離)
11 凸部
18 検査キット
18a 筐体
18b 第一開口部
18c 第二開口部
20A 特定の一辺
20B 特定の一辺の対辺
W 底面(円)の円周と直径の交点
X 5A(高さの最大値)の垂線の足
X' 5A(高さの最大値)の垂線の足
Y 5B(高さの極小値)の垂線の足
Z 底面(円)の円周と直径の交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9