(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098924
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】射出成形機、コントローラ
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20220627BHJP
B29C 45/03 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212599
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 大輔
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM20
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JM16
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP17
4F206JP30
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】射出成形機等を含む制御システムにおいて、受信側が正しいデータを取得することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る射出成形機1は、射出成形機1は、型締装置100と、射出装置300と、エジェクタ装置200とを備える。具体的には、型締装置100は、金型装置10を型締する。また、射出装置300は、型締装置100により型締された金型装置10に成形材料を充填する。また、エジェクタ装置200は、射出装置300により充填された成形材料が冷却固化した後、金型装置10から成形品を取り出す。そして、射出成形機1は、内部機器同士の間、及び自機と外部機器との間の少なくとも一方で、送信側が、受信側に対して、同じデータを複数回送信する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型装置を型締する型締装置と、
前記型締装置により型締された前記金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置により充填された成形材料が冷却固化した後、前記金型装置から成形品を取り出すエジェクタ装置と、を備え、
内部機器同士の間、及び自機と外部機器との間の少なくとも一方で、送信側が、受信側に対して、同じデータを複数回送信する、
射出成形機。
【請求項2】
前記送信側は、前記受信側からデータの受信に関する応答が受信されるまでの間に、前記受信側に対して、同じデータを複数回送信する、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記送信側は、前記受信側に対して、同じデータを連続して複数回送信する、
請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記送信側は、前記受信側に対して、データを1回送信し、通信エラーが発生したときに同じデータを再送信する第1の動作状態と、通信エラーの有無に依らず、同じデータを複数回送信する第2の動作状態とを有する、
請求項2又は3に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記送信側は、送信対象のデータに応じて、前記第1の動作状態と、前記第2の動作状態とを切り替える、
請求項4に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記送信側は、前記送信対象のデータの送信周期が相対的に長い場合、前記第1の動作状態を選択し、前記送信対象のデータの送信周期が相対的に短い場合、前記第2の動作状態を選択する、
請求項5に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記送信対象のデータは、センサの出力データであり、
前記送信側は、前記センサのうち、測定対象の物理量の変化速度が相対的に小さい第1のセンサの出力データが送信対象である場合、前記第1の動作状態を選択し、測定対象の物理量の変化速度が相対的に大きい第2のセンサの出力データが送信対象である場合、前記第2の動作状態を選択する、
請求項5又は6に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記第1のセンサは、温度センサを含み、
前記第2のセンサは、電圧センサ、電流センサ、圧力センサ、及び回転状態センサの少なくとも一つを含む、
請求項7に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記送信側は、前記送信側から前記受信側へのデータ送信時における通信エラーの発生頻度に応じて、前記第1の動作状態と、前記第2の動作状態とを切り替える、
請求項4乃至8の何れか一項に記載の射出成形機。
【請求項10】
内部機器同士の間、及び自機と外部機器の間の少なくとも一方で、送信側が、受信側に対して、同じデータを複数回送信する、
コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御システムでは、複数のコンポーネント間で通信が行われる。
【0003】
例えば、射出成形機等の産業用の機械では、各種センサで出力されるデータがコントローラに送信され、コントローラで受信されるデータが成形動作等の制御に使用される(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、ノイズにより通信フレームのデータに誤りが発生すると、受信側では、正しいデータを取得することができなくなってしまう可能性がある。そのため、例えば、そのデータに基づき、成形動作が制御されることで、適切な成形動作が実現できない可能性がある。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、射出成形機等を含む制御システムにおいて、受信側が正しいデータを取得することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
金型装置を型締する型締装置と、
前記型締装置により型締された前記金型装置に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置により充填された成形材料が冷却固化した後、前記金型装置から成形品を取り出すエジェクタ装置と、を備え、
内部機器同士の間、及び自機と外部機器との間の少なくとも一方で、送信側が、受信側に対して、同じデータを複数回送信する、
射出成形機が提供される。
【0008】
また、本開示の他の実施形態では、
内部機器同士の間、及び自機と外部機器の間の少なくとも一方で、送信側が、受信側に対して、同じデータを複数回送信する、
コントローラが提供される。
【発明の効果】
【0009】
上述の実施形態によれば、射出成形機等を含む制御システムにおいて、受信側が正しいデータを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】射出成形機を含む射出成形機管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】射出成形機を含む射出成形機管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】射出成形機の内部通信に関する構成の一例を示す図である。
【
図4】コントローラの内部通信に関する第1通信モードの一例を説明する図である。
【
図5】コントローラの内部通信に関する第1通信モードの一例を説明する図である。
【
図6】コントローラの内部通信に関する第2通信モードの一例を説明する図である。
【
図7】コントローラの内部通信に関する第2通信モードの一例を説明する図である。
【
図8】コントローラの内部通信に関する第2通信モードの他の例を説明する図である。
【
図9】コントローラの内部通信に関する第2通信モードの他の例を説明する図である。
【
図10】FPGAによる通信モード切替処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図11】FPGAによる第1通信モードでの内部通信に関する処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図12】FPGAによる第2通信モードでの内部通信に関する処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図13】CPUによる内部通信に関する処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図14】FPGAによる通信モード選択処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
【
図15】FPGAによる通信モード選択処理の更に他の例を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0012】
[射出成形機管理システムの概要]
まず、
図1、
図2を参照して、本実施形態に係る射出成形機管理システムSYSの概要について説明する。
【0013】
図1、
図2は、本実施形態に係る射出成形機管理システムの一例を示す図である。具体的には、
図1には、射出成形機1の型開完了時の状態を示す側面断面図が描画され、
図2には、射出成形機1の型締時の状態を示す側面断面図が描画される。以下、
図1、
図2に示すように、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに垂直であり、X軸の正負方向(以下、単に「X方向」)及びY軸の正負方向(以下、単に「Y方向」)は水平方向を表し、Z軸の正負方向(以下、単に「Z方向」)は鉛直方向を表す。
【0014】
射出成形機管理システムSYSは、複数(本例では、3台)の射出成形機1と、管理装置2とを含む。
【0015】
尚、射出成形機管理システムSYSに含まれる射出成形機1は、1台であってもよい。
【0016】
<射出成形機>
射出成形機1は、成形品を得るための一連の動作を行う。
【0017】
また、射出成形機1は、所定の通信回線NWを通じて、管理装置2と通信可能に接続される。また、射出成形機1は、通信回線NWを通じて、他の射出成形機1と通信可能に接続されてもよい。
【0018】
通信回線NWは、例えば、射出成形機1が設置される施設(工場)のローカルネットワーク(LAN:Local Network)を含んでよい。ローカルネットワークは、有線で構築されていてもよいし、無線で構築されていてもよいし、双方を含む形で構築されていてもよい。また、通信回線NWは、射出成形機1が設置される施設(工場)の外部の広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)を含んでもよい。広域ネットワークは、例えば、基地局を末端とする移動体通信網を含んでよい。移動体通信網は、例えば、LTE(Long Term Evolution)を含む4G(4th Generation)や5G(5th Generation)等に対応していてよい。また、広域ネットワークは、例えば、通信衛星を利用する衛星通信網を含んでもよい。また、広域ネットワークは、例えば、インターネット網を含んでもよい。また、通信回線NWは、例えば、ブルートゥース(登録商標)通信やWiFi通信等の無線通信規格に対応する近距離通信回線を含んでもよい。
【0019】
例えば、射出成形機1は、通信回線NWを通じて、管理装置2に射出成形機1の稼働状態に関するデータ(以下、「稼働状態データ」)や生産状況に関するデータ(以下、「生産状況データ」)を送信(アップロード)する。稼働状態に関するデータには、例えば、射出成形機1の被駆動部の動作状態(例えば、位置、速度、角速度、加速度等)に関する計測データや制御データが含まれてよい。また、稼働状態に関するデータには、例えば、射出成形機1の電気駆動部の動作状態(例えば、電流、電圧等)に関する計測データや制御データが含まれてよい。また、稼働状態に関するデータには、例えば、油圧駆動部の動作状態(例えば、作動油の圧力等)に関する計測データや制御データが含まれてよい。また、稼働状態に関するデータには、例えば、射出成形機1の所定部位の温度状態に関するデータが含まれてよい。これにより、管理装置2は、自動で、或いは、管理者や作業者の入力に応じて手動で、稼働状態を把握し、射出成形機1のメンテナンスのタイミングや射出成形機1の稼働スケジュール等を管理することができる。また、生産状況に関するデータには、例えば、所定の時点からの成形品の生産数(ショット数)に関するデータが含まれる。これにより、管理装置2は、射出成形機1による成形品の生産状況を把握することができる。
【0020】
また、例えば、射出成形機1は、マスタ機として、通信回線NWを通じて、スレーブ機としての他の射出成形機1の動作を監視したり、制御したりしてもよい。具体的には、射出成形機1(スレーブ機)は、通信回線NWを通じて、稼働状態データを射出成形機1(マスタ機)に送信してよい。これにより、射出成形機1(マスタ機)は、他の射出成形機1(スレーブ機)の動作を監視することができる。また、射出成形機1(マスタ機)は、稼働状態データに基づき、他の射出成形機1(スレーブ機)の動作状態を把握しながら、動作に関する制御指令を、通信回線NWを通じて、他の射出成形機1(スレーブ機)に送信してもよい。これにより、射出成形機1(マスタ機)は、他の射出成形機1(スレーブ機)の動作を制御することができる。
【0021】
<管理装置>
管理装置2(外部装置の一例)は、通信回線NWを通じて、射出成形機1と通信可能に接続される。
【0022】
管理装置2は、例えば、射出成形機1が設置される工場の外部の管理センタ等の遠隔地に設置されるクラウドサーバである。また、管理装置2は、例えば、射出成形機1が設置される工場内部や工場に相対的に近い場所(例えば、工場の近くの無線基地局や局舎等)に設置されるエッジサーバであってもよい。また、管理装置2は、射出成形機1が設置される工場内の管理用の端末装置であってもよい。管理用の端末装置は、例えば、デスクトップ型のコンピュータ端末等の定置型の端末装置であってよい。また、管理用の端末装置は、例えば、射出成形機1の管理者等のユーザが携帯可能な携帯型(可搬型)の端末装置であってもよい。携帯型の端末装置は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のコンピュータ端末等を含んでよい。
【0023】
例えば、管理装置2は、射出成形機1から送信(アップロード)される稼働状態データに基づき、射出成形機1の稼働状態を把握し、射出成形機1の稼働状態を管理してよい。また、管理装置2は、稼働状態データに基づき把握される、射出成形機1の稼働状態に基づき、射出成形機1の異常診断等の各種診断を行ってもよい。
【0024】
また、管理装置2は、例えば、射出成形機1から送信(アップロード)される生産状況データに基づき、射出成形機1の生産状況を管理してよい。
【0025】
また、例えば、管理装置2は、通信回線NWを通じて、射出成形機1に対する制御情報(例えば、各種の設定条件に関する情報)を含む制御信号を送信してもよい。これにより、管理装置2は、射出成形機1の動作を制御することができる。
【0026】
[射出成形機の構成]
次に、引き続き、
図1、
図2を参照して、射出成形機の構成について説明する。
【0027】
図1、
図2に示すように、射出成形機1は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、コントローラ700とを含む。
【0028】
<<型締装置>>
型締装置100は、金型装置10の型閉、型締、及び型開を行う。型締装置100は、例えば、横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、及び型厚調整機構180を有する。
【0029】
以下、型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(
図1及び
図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(
図1及び
図2中左方向)を後方として説明する。
【0030】
固定プラテン110は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型11が取付けられる。
【0031】
可動プラテン120は、フレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされる。フレームFr上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型12が取付けられる。
【0032】
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。
【0033】
金型装置10は、固定プラテン110に対応する固定金型11と、可動プラテン120に対応する可動金型12とを含んで構成される。
【0034】
トグルサポート130は、固定プラテン110と所定の間隔Lをおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。トグルサポート130は、例えば、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてよい。この場合、トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通であってもよい。
【0035】
尚、固定プラテン110がフレームFrに対し固定され、トグルサポート130がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレームFrに対し固定され、固定プラテン110がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0036】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば、4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられる。タイバー歪検出器141は、例えば、歪みゲージである。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、例えば、型締力の検出等に用いられる。
【0037】
尚、タイバー歪検出器141に代えて、或いは、加えて、型締力を検出するために利用可能な任意の型締力検出器が用いられてもよい。例えば、型締力検出器は、歪みゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式等であってもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0038】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群等で構成される。各リンク群は、ピン等で屈伸自在に連結される第1リンク152及び第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピン等で揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピン等で揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152及び第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0039】
尚、トグル機構150の構成は、
図1及び
図2に示す構成に限定されない。例えば、
図1及び
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0040】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152及び第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリ等を介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0041】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0042】
型締装置100は、コントローラ700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程等を行う。
【0043】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型12を固定金型11にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば、型締モータエンコーダ161等を用いて検出される。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。
【0044】
尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、及び、クロスヘッド151の速度を検出するクロスヘッド速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の速度を検出する可動プラテン速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0045】
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型12と固定金型11との間にキャビティ空間14が形成され、射出装置300がキャビティ空間14に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間14の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
【0046】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型12を固定金型11から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型12から成形品を突き出す。
【0047】
型閉工程及び型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)や型締力等は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0048】
また、型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、型開工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型締位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0049】
尚、クロスヘッド151の速度や位置等の代わりに、可動プラテン120の速度や位置等が設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば、型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0050】
トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角(以下、「リンク角度」)θに応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0051】
金型装置10の交換や金型装置10の温度変化等により金型装置10の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば、可動金型12が固定金型11にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0052】
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0053】
ねじ軸181及びねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。
【0054】
尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0055】
回転伝達部185は、例えば、歯車等で構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車及び駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。
【0056】
尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリ等で構成されてもよい。
【0057】
型厚調整機構180の動作は、コントローラ700によって制御される。コントローラ700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0058】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。
【0059】
尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0060】
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
【0061】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0062】
また、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0063】
<<エジェクタ装置>>
エジェクタ装置200は、金型装置10から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、及びエジェクタロッド230等を有する。
【0064】
以下、エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(
図1及び
図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(
図1及び
図2中左方向)を後方として説明する。
【0065】
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリ等を介して運動変換機構220に連結されてもよい。
【0066】
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0067】
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型12の内部に進退自在に配設される可動部材15と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材15と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0068】
エジェクタ装置200は、コントローラ700による制御下で、突き出し工程を行う。
【0069】
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材15を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材15を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えば、エジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。
【0070】
尚、エジェクタロッド230の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド230の速度を検出するエジェクタロッド速度検出器は、エジェクタモータエンコーダ211に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0071】
<<射出装置>>
射出装置300は、フレームFrに対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置10に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置10にタッチし、金型装置10内のキャビティ空間14に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、及び圧力検出器360等を有する。
【0072】
以下、射出装置300の説明では、射出装置300を金型装置10に対し接近させる方向(
図1及び
図2中左方向)を前方とし、射出装置300を金型装置10に対し離間させる方向(
図1及び
図2中右方向)を後方として説明する。
【0073】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば、樹脂等を含む。成形材料は、例えば、ペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダ等の冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータ等の加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0074】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(
図1及び
図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、コントローラ700が加熱器313を制御する。
【0075】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置10に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、コントローラ700が加熱器313を制御する。
【0076】
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置10内に充填される。
【0077】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0078】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0079】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0080】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプとのいずれでもよい。
【0081】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0082】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば、油圧ポンプ等でもよい。
【0083】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構等が設けられる。運動変換機構は、例えば、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラ等が設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば、油圧シリンダ等でもよい。
【0084】
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
【0085】
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力等の制御や監視に用いられる。
【0086】
射出装置300は、コントローラ700による制御下で、計量工程、充填工程、及び、保圧工程等を行う。
【0087】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば、計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。
【0088】
尚、スクリュ330の回転数を検出するスクリュ回転数検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0089】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば、圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0090】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置10内のキャビティ空間14に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば、射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも称する。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間等に応じて変更されてもよい。
【0091】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の速度を検出するスクリュ速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0092】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも称する。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置10に向けて押す。金型装置10内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば、圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号をコントローラ700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間等に応じて変更されてもよい。
【0093】
保圧工程では金型装置10内のキャビティ空間14の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間14の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間14からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間14内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0094】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
【0095】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0096】
<<移動装置>>
移動装置400は、金型装置10に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置10に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、及び液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430等を有する。
【0097】
以下、移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、射出装置300を金型装置10に対し接近させる方向(
図1及び
図2中左方向)を前方とし、射出装置300を金型装置10に対し離間させる方向(
図1及び
図2中右方向)を後方として説明する。
【0098】
尚、移動装置400は、
図1,2では射出装置300のシリンダ310の片側に配置されるが、シリンダ310の両側に配置されてもよく、シリンダ310を中心に対称に配置されてもよい。
【0099】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411及び第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば、油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。また、液圧ポンプ410は、タンクから作動液を吸引して第1ポート411及び第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出させることもできる。
【0100】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、コントローラ700からの制御信号に応じた回転方向及び回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0101】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、及びピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0102】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型11に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0103】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型11から離間される。
【0104】
尚、移動装置400は、液圧シリンダ430を含む構成に限定されない。例えば、液圧シリンダ430に代えて、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0105】
<<コントローラ>>
コントローラ700は、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、及び移動装置400等に直接的に制御信号を送信し、射出成形機1に関する各種制御を行う。
【0106】
コントローラ700は、任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。コントローラ700は、例えば、CPU(Central Processing Unit)701と、メモリ装置702と、補助記憶装置703と、入出力用のインタフェース装置704とを有するコンピュータを中心に構成される。コントローラ700は、補助記憶装置703にインストールされるプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、コントローラ700は、インタフェース装置704を通じて、外部の信号を受信したり、外部に信号を出力したりする。例えば、コントローラ700は、インタフェース装置704に基づき、通信回線NWを通じて、管理装置2と通信可能に接続される。また、コントローラ700は、インタフェース装置704に基づき、通信回線NWを通じて、他の射出成形機1(のコントローラ700)と通信可能に接続されてもよい。
【0107】
コントローラ700の機能は、一のコントローラ700だけで実現されてもよいし、後述の如く、複数のコントローラ(例えば、上位コントローラ700A、及び下位コントローラ700B等)により分担されてもよい(
図2参照)。
【0108】
コントローラ700は、射出成形機1に型閉工程、型締工程、及び型開工程等を繰り返し行わせることにより、成形品を繰り返し製造させる。また、コントローラ700は、型締工程の間に、射出装置300に計量工程、充填工程、及び保圧工程等を行わせる。
【0109】
成形品を得るための一連の動作、例えば、射出装置300による計量工程の開始から次の射出装置300による計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも称する。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも称する。
【0110】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、及び突き出し工程の順に構成される。この順番は、各工程の開始の順番である。また、充填工程、保圧工程、及び冷却工程は、型締工程の開始から型締工程の終了までの間に行われる。また、型締工程の終了は、型開工程の開始と一致する。
【0111】
尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程が行われてもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。また、射出装置300のノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないからである。
【0112】
コントローラ700は、操作装置750及び表示装置760等と接続されている。
【0113】
操作装置750は、ユーザによる射出成形機1に関する操作入力を受け付け、操作入力に応じた信号をコントローラ700に出力する。
【0114】
表示装置760は、コントローラ700による制御下で、各種画像を表示する。
【0115】
表示装置760は、例えば、操作装置750における操作入力に応じた射出成形機1に関する操作画面を表示する。
【0116】
表示装置760に表示される操作画面は、射出成形機1に関する設定等に用いられる。射出成形機1に関する設定には、例えば、射出成形機1に関する成形条件の設定(具体的には、設定値の入力)が含まれる。また、当該設定には、例えば、成形動作時のロギングデータとして記録される射出成形機1に関する各種センサ等の検出値の種類の選択に関する設定が含まれる。また、当該設定には、例えば、成形動作時の射出成形機1に関する各種センサ等の検出値(実績値)の表示装置760への表示仕様(例えば、表示する実績値の種類や表示のさせ方等)の設定が含まれる。操作画面は、複数用意され、表示装置760に切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760に表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより、射出成形機1に関する設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。
【0117】
また、表示装置760は、例えば、コントローラ700による制御下で、操作画面上での操作に応じた各種情報をユーザに提供する情報画面を表示する。情報画面は、複数用意され、表示装置760に切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。例えば、表示装置760は、射出成形機1に関する設定内容(例えば、射出成形機1の成形条件に関する設定内容)を表示する。また、例えば、表示装置760は、管理情報(例えば、射出成形機1の稼働実績に関する情報等)を表示する。
【0118】
操作装置750及び表示装置760は、例えば、タッチパネル式のディスプレイとして構成され、一体化されてよい。
【0119】
尚、本実施形態の操作装置750及び表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
【0120】
[射出成形機の内部通信に関する構成]
次に、
図3を参照して、射出成形機1の内部通信に関する構成について説明する。
【0121】
図3は、射出成形機1の内部通信に関する構成の一例を示す図である。
【0122】
図3に示すように、コントローラ700は、CPU701と、FPGA(Field Programmable Gate Array)710とを含む。
【0123】
CPU701(内部機器の一例)は、上述の如く、補助記憶装置703にインストールされる各種プログラムをメモリ装置702にロードし実行することにより、コントローラ700の各種機能を実現するプロセッサである。
【0124】
FPGA710(内部機器の一例)は、コントローラ700におけるセンサ800との間の入出力用のインタフェースとして機能する。即ち、コントローラ700のインタフェース装置704は、FPGA710を含む。
【0125】
FPGA710は、センサ800と通信線により接続され、センサ800の出力データを受信したり、CPU701の制御下で、センサ800に制御信号を出力したりする。
【0126】
また、FPGA710は、コントローラ700の内部において、CPU701と通信線により接続される。FPGA710は、例えば、センサ800から取得される出力データをCPU701に送信したり、CPU701からのセンサ800への制御信号を受信したりする。
【0127】
センサ800は、射出成形機1に関する稼働状態や生産状況に関する計測データを取得する。センサ800は、例えば、センサ800A~800Cを含む。以下、センサ800A~800Cの任意の一つを個別に、或いは、センサ800A~800Cを包括的に、「センサ800X」と称する場合がある。
【0128】
尚、コントローラ700(FPGA710)に通信線で接続されるセンサ800Xは、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4以上であってもよい。
【0129】
センサ800A~800Cには、例えば、射出成形機1における被駆動部の動作状態に関する計測データを出力するセンサが含まれてよい。例えば、センサ800A~800Cは、被駆動部の位置や(回転位置を含む)や速度(回転速度を含む)を計測するエンコーダを含んでよい。エンコーダには、例えば、型締モータエンコーダ161、型厚調整モータエンコーダ184、エジェクタモータエンコーダ211、計量モータエンコーダ341、射出モータエンコーダ351等を含まれる。また、例えば、センサ800A~800Cは、駆動部から被駆動部に伝達される動力に関する計測データを出力するセンサ(例えば、圧力検出器360等)を含んでよい。
【0130】
また、センサ800A~800Cには、例えば、射出成形機1における電気駆動部の動作状態に関する計測データを出力するセンサが含まれてよい。射出成形機1の電気駆動部には、例えば、型締モータ160、型厚調整モータ183、エジェクタモータ210、計量モータ340、射出モータ350、モータ420等が含まれてよい。例えば、センサ800A~800Cは、電気駆動部の電流を計測する電流センサや電圧を計測する電圧センサを含んでよい。
【0131】
また、センサ800A~800Cには、例えば、射出成形機1における油圧駆動部の動作状態に関する計測データを出力するセンサが含まれてよい。油圧駆動部には、例えば、油圧シリンダ等が含まれる。例えば、センサ800A~800Cは、油圧駆動部の作動油の圧力を検出する圧力センサ等を含んでよい。
【0132】
また、センサ800A~800Cには、例えば、射出成形機1における所定箇所の温度状態を計測する温度センサが含まれてよい。例えば、センサ800A~800Cは、温度検出器314を含む。
【0133】
[射出成形機における内部通信に関する第1通信モード]
次に、
図4、
図5を参照して、射出成形機1の内部通信に関する第1通信モード(第1の動作状態の一例)について説明する。具体的には、FPGA710からCPU701にセンサ800Xの出力データを送信する場合の内部通信に関する第1通信モードについて説明する。
【0134】
図4、
図5は、コントローラ700の内部通信に関する第1通信モードの一例を説明する図である。具体的には、
図4は、第1通信モードにおいて、FPGA710から送信されたパケットが、そのパケットに含まれるデータに誤りが無い状態でCPU701により受信される場合のコントローラ700の内部通信の様子を模式的に示す図である。また、
図5は、第1通信モードにおいて、FPGA710から送信されたパケットが、そのパケットに含まれるデータに誤りが生じた状態でCPU701により受信される場合のコントローラ700の内部通信の様子を模式的に示す図である。
【0135】
本例では、FPGA710は、センサ800A~800Cのそれぞれの出力データを複数のパケットP1,・・・,Pn(n:2以上の整数)に分割して送信する場合を中心に説明を行う。この場合、FPGA710は、送信対象のセンサ800Xの出力データが分割される形で含まれる複数のパケットP1,・・・,Pnを、出力データの送信周期より短い時間で、CPU701に全て送信完了する。但し、FPGA710は、送信対象のセンサ800Xの出力データのデータ量が一つのパケットで送信可能なサイズ以下である場合、その出力データを一つのパケットP1で送信してもよい。以下、後述の第2通信モードの一例及び他の例(
図6~
図9参照)の場合についても同様である。
【0136】
図4、
図5に示すように、FPGA710(送信側)は、パケットPi(i:1~nの任意の整数)をCPU701(受信側)に送信する。
【0137】
CPU701は、パケットPiを受信すると、パケットPiのヘッダに含まれる誤り訂正符号を用いて、パケットPiのデータの誤りの有無を判断する。誤り訂正符号は、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Code)である。
【0138】
図4に示すように、CPU701は、受信したパケットPiのデータに誤りが無い場合、パケットPiのデータを取り込み、パケットPiが正常に受信されたことを示す応答信号(以下、「正常応答信号」)をFPGA710に返信する。
【0139】
一方、
図5に示すように、CPU701は、受信したパケットPiのデータに誤りを検出する場合、パケットPiのデータに誤りが検出されたことを示す応答信号(以下、「エラー応答信号」)をFPGA710に返信すると共に、受信したパケットPiを破棄する。
【0140】
図4に示すように、FPGA710は、パケットPiの送信後、CPU701から正常応答信号を受信すると、次の異なるデータを含むパケットPj(j=i+1)を送信する。この場合、FPGA710は、パケットPiの最初の送信を起点として、パケットPiの送信から、CPU701からの応答信号の受信までに要する時間(以下、「応答時間」)RTの経過後に、次のパケットPjをCPU701に送信する。
【0141】
一方、
図5に示すように、FPGA710は、パケットPiの送信後、CPU701からエラー応答信号を受信すると、同じパケットPiを再送する。換言すれば、FPGA710は、パケットPiの送信から応答信号の受信までの時間(応答時間RT)の経過を待って、パケットPiをCPU701に再送する。
【0142】
CPU701は、再送されたパケットPiを受信すると、前回と同様、パケットPiのデータの誤りの有無を判断する。
【0143】
図5に示すように、CPU701は、再送されたパケットPiのデータに誤りが無い場合、正常応答信号をFPGA710に送信する。
【0144】
FPGA710は、パケットPiのCPU701への再送後、正常応答信号をCPU701から受信すると、次の異なるデータを含むパケットPj(j=i+1)を送信する。この場合、FPGA710は、パケットPiの最初の送信を起点として、応答時間RTの2倍(2回分)の時間の経過後に、次のパケットPjをCPU701に送信する。
【0145】
このように、本例(第1通信モード)では、FPGA710は、基本的に、パケットPiを1回送信する態様で、複数のパケットP1~PnをCPU701に順次送信する。これにより、FPGA710は、基本的に、パケットPiを1回だけ送信すればよいため、処理負荷を相対的に低くすることができる。但し、通信の過程で、パケットPiのデータに誤りが生じ、その誤りがCPU701で検出された場合、FPGA710は、CPU701からのエラー応答信号の受信に応じて、パケットPiを再送する。これにより、CPU701は、再度、パケットPiに含まれる正常なデータを取得する機会を得ることができる。
【0146】
[射出成形機における内部通信に関する第2通信モード]
次に、
図6~
図9を参照して、射出成形機1の内部通信に関する第2通信モード(第2の動作状態の一例)について説明する。具体的には、FPGA710からCPU701にセンサ800Xの出力データを送信する場合の内部通信に関する第2通信モードについて説明する。
【0147】
<第2通信モードの一例>
図6、
図7は、コントローラ700の内部通信に関する第2通信モードの一例を説明する図である。具体的には、
図6は、第2通信モードにおいて、FPGA710から送信されたパケットが、そのパケットに含まれるデータに誤りが無い状態でCPU701により受信される場合のコントローラ700の内部通信の様子を模式的に示す図である。また、
図7は、第2通信モードにおいて、FPGA710から送信されたパケットが、そのパケットに含まれるデータに誤りが生じた状態でCPU701により受信される場合のコントローラ700の内部通信の様子を模式的に示す図である。
【0148】
本例では、FPGA710からCPU701に送信される複数のパケットP1~Pnのヘッダには、互いに区別可能な固有の識別子(ID:Identifier)が含まれる。具体的には、パケットP1~Pnのヘッダには、それぞれ、ID="1"~"n"が付与される。以下、後述の第2通信モードの他の例の場合についても同様である。
【0149】
図6、
図7に示すように、FPGA710(送信側)は、パケットPi(ID="i")をCPU701(受信側)に送信する(1回目)。
【0150】
その後、FPGA710は、上述の第1通信モードの場合と異なり、CPU701からの正常応答信号の受信を待つことなく、同じパケットPiをCPU701に送信する(2回目)。具体的には、FPGA710は、応答時間RTの経過を待つことなく、1回目のパケットPiの送信から応答時間RTよりも短く設定される、時間T1が経過すると、同じパケットPiをCPU701に送信する。
【0151】
CPU701は、パケットPiを受信すると、上述の第1通信モードの場合と同様、パケットPiのヘッダに含まれる誤り訂正符号を用いて、パケットPiのデータの誤りの有無を判断する。
【0152】
本例では、上述の如く、応答時間RTの経過を待つことなく、2回目のパケットPiが送信される。そのため、
図6、
図7に示すように、CPU701は、1回目のパケットPiを正常に受信できたか否かに依らず、2回目のパケットPiも受信する。CPU701は、受信したパケットPiのヘッダに含まれるIDを確認することにより、今回受信したパケットPiが前回受信したパケットと同じであるか否かを判断することができる。
【0153】
図6に示すように、CPU701は、受信した1回目のパケットPiのデータに誤りが無い場合、パケットPiのデータを取り込み、第1通信モードの場合と同様、正常応答信号をFPGA710に返信する。その後、CPU701は、受信した2回目のパケットPiのデータにも誤りが無い場合、正常応答信号をFPGA710に返信することなく、パケットPiを破棄する。
【0154】
尚、
図6のように、受信した1回目のパケットPiのデータに誤りが無い場合、CPU701は、データの誤りの有無を判断することなく、受信した2回目のパケットPiを破棄してもよい。以下、後述の
図8の場合についても同様であってよい。
【0155】
図7に示すように、CPU701は、受信した1回目のパケットPiのデータに誤りがある場合、第1通信モードの場合と異なり、エラー応答信号(図中の破線矢印参照)を返信することなく、パケットPiを破棄する。その後、CPU701は、受信した2回目のパケットPiのデータに誤りが無い場合、2回目のパケットPiのデータを取り込み、正常応答信号をFPGA710に返信する。
【0156】
尚、1回目及び2回目の双方でパケットPiを正常に受信できなかった場合、CPU701は、FPGA70210にエラー応答信号を送信してよい(
図13のステップS426参照)。以下、後述の第2通信モードの他の例の場合についても同様であってよい。
【0157】
図6、
図7に示すように、FPGA710は、2回目のパケットPiの送信後、CPU701から正常応答信号を受信すると、次の異なるデータを含むパケットPj(ID="j")を送信する。
【0158】
図6に示すように、CPU701で受信された1回目のパケットPiに誤りがない場合、FPGA710は、上述の
図4の場合と同様、パケットPiの1回目の送信を起点として、応答時間RTの経過後に、次のパケットPjをCPU701に送信する。
【0159】
一方、
図7に示すように、CPU701で受信された2回目のパケットPiだけに誤りがない場合、FPGA710は、パケットPiの1回目の送信を起点として、応答時間RT及び時間T1の合計時間の経過後に、次のパケットPjをCPU701に送信する。応答時間RT及び時間T1の合計時間は、応答時間RTの2倍の時間より短い。これにより、FPGA710がパケットPiの1回目の送信を起点として、次のパケットPjの1回目の送信を行うまでに要する時間は、上述の
図5の場合より短くなる。
【0160】
このように、本例(第2通信モード)では、FPGA710は、CPU701からの応答信号の受信に依らず、パケットPiをCPU701に2回送信する。具体的には、本例では、FPGA710は、1回目のパケットPiの送信から、応答時間RTより短く設定される時間T1が経過した後に、2回目のパケットPiをCPU701に送信する。これにより、FPGA710は、1回目のパケットPiのデータに誤りが生じている場合であっても、2回目のパケットPiのデータに誤りが無ければ、パケットPiの1回目の送信から、次のパケットPjの1回目の送信までの間隔を相対的に短くできる。そのため、パケットPiの通信の過程で、データの誤りが生じても、送信対象のセンサ800Xのデータを送信完了するまでの時間を相対的に短くすることができる。よって、FPGA710は、例えば、送信対象のセンサ800Xのデータの送信周期が相対的に短い場合に、送信周期内でデータ送信が完了する確率を相対的に高め、CPU701がFPGA710からデータを取得できない事態の発生を抑制することができる。
【0161】
尚、FPGA710は、1回目のパケットPiから応答時間RTが経過するまでに、1回目を含めて、パケットPiを3回以上送信してもよい。
【0162】
<第2通信モードの他の例>
図8、
図9は、コントローラ700の内部通信に関する第2通信モードの他の例を説明する図である。具体的には、
図8は、第2通信モードにおいて、FPGA710から送信されたパケットが、そのパケットに含まれるデータに誤りが生じた状態でCPU701により受信される場合のコントローラ700の内部通信の様子を模式的に示す図である。また、
図9は、第2通信モードにおいて、FPGA710から送信されたパケットが、そのパケットに含まれるデータに誤りが無い状態でCPU701により受信される場合のコントローラ700の内部通信の様子を模式的に示す図である。
【0163】
図8、
図9に示すように、FPGA710(送信側)は、パケットPi(ID="i")をCPU701(受信側)に送信する(1回目)。
【0164】
その後、FPGA710は、CPU701からの正常応答信号の受信を待つことなく、同じパケットPiをCPU701に送信する(2回目)。具体的には、FPGA710は、応答時間RTの経過を待つことなく、1回目のパケットPiの送信後、連続して2回目のパケットPiをCPU701に送信する。より具体的には、FPGA710は、1回目のパケットPiの送信完了の後、パケットPiの送信を行うことが可能になったタイミングで、直ぐに、2回目のパケットPiのCPU701への送信を行ってよい。
【0165】
CPU701は、パケットPiを受信すると、上述の第1通信モードや第2通信モードの一例の場合と同様、パケットPiのヘッダに含まれる誤り訂正符号を用いて、パケットPiのデータの誤りの有無を判断する。
【0166】
本例では、上述の如く、応答時間RTの経過を待つことなく、2回目のパケットPiが送信される。そのため、
図8、
図9に示すように、CPU701は、1回目のパケットPiを正常に受信できたか否かに依らず、2回目のパケットPiも受信する。CPU701は、受信したパケットPiのヘッダに含まれるIDを確認することにより、今回受信したパケットPiが前回受信したパケットと同じであるか否かを判断することができる。
【0167】
図8に示すように、CPU701は、受信した1回目のパケットPiのデータに誤りが無い場合、パケットPiのデータを取り込み、上述の第1通信モードや第2通信モードの一例の場合と同様、正常応答信号をFPGA710に返信する。その後、CPU701は、受信した2回目のパケットPiのデータにも誤りが無い場合、正常応答信号をFPGA710に返信することなく、パケットPiを破棄する。
【0168】
図9に示すように、CPU701は、受信した1回目のパケットPiのデータに誤りがある場合、第1通信モードの一例の場合と同様、エラー応答信号(図中の破線矢印参照)を返信することなく、パケットPiを破棄する。その後、CPU701は、受信した2回目のパケットPiのデータに誤りが無い場合、2回目のパケットPiのデータを取り込み、正常応答信号をFPGA710に返信する。
【0169】
図8、
図9に示すように、FPGA710は、2回目のパケットPiの送信後、CPU701から正常応答信号を受信すると、次の異なるデータを含むパケットPj(ID="j")を送信する。
【0170】
図8に示すように、CPU701で受信された1回目のパケットPiに誤りがない場合、FPGA710は、上述の
図4、
図6の場合と同様、パケットPiの1回目の送信を起点として、応答時間RTの経過後に、次のパケットPjをCPU701に送信する。
【0171】
一方、
図9に示すように、CPU701で受信された2回目のパケットPiだけに誤りがない場合、FPGA710は、パケットPiの1回目の送信を起点として、応答時間RT及び時間T2の合計時間の経過後に、次のパケットPjをCPU701に送信する。時間T2は、1回目のパケットPiの送信処理開始から2回目のパケットPiの送信処理開始までに物理的に必要な時間に相当し、応答時間RT及び時間T2の合計時間は、応答時間RTの2倍の時間より短い。これにより、FPGA710がパケットPiの1回目の送信を起点として、次のパケットPjの1回目の送信を行うまでに要する時間は、上述の第2通信モードの一例の場合と同様、上述の
図5の場合より短くなる。
【0172】
このように、本例(第2通信モード)では、FPGA710は、CPU701からの応答信号によらず、パケットPiをCPU701に2回送信する。具体的には、本例では、FPGA710は、パケットPiを連続して2回送信する。これにより、FPGA710は、1回目のパケットPiのデータに誤りが生じている場合であっても、2回目のパケットPiのデータに誤りが無ければ、パケットPiの1回目の送信から、次のパケットPjの1回目の送信までの間隔を更に短くすることができる。そのため、パケットPiの通信の過程で、データの誤りが生じても、送信対象のセンサ800Xの出力データを送信完了するまでの時間を更に短くすることができる。よって、FPGA710は、例えば、送信対象のセンサ800Xのデータの送信周期が相対的に短い場合に、送信周期内でデータ送信が完了する確率を更に高め、CPU701がFPGA710からデータを取得できない事態の発生を更に抑制することができる。
【0173】
尚、FPGA710は、1回目のパケットPiから応答時間RTが経過するまでに、1回目を含めて、パケットPiを3回以上送信してもよい。以下、後述の第2通信モードの他の例の場合についても同様であってよい。
【0174】
[射出成形機の内部通信に関する制御処理の一例]
次に、
図10~
図13を参照して、射出成形機1の内部通信に関する制御処理の一例について説明する。
【0175】
<FPGAの制御処理>
まず、
図10~
図12を参照して、FPGA710の制御処理について説明する。
【0176】
<<通信モード切替処理>>
図10は、FPGA710による通信モード切替処理の一例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、射出成形機1の稼働中(電源ON中)に、センサ800A~800Cの出力データのCPU701へのタイミングが発生するごとに繰り返し実行される。具体的には、本フローチャートは、射出成形機1の稼働中に、FPGA710がセンサ800Xから出力データを受信した場合に実行されてよい。以下、後述の
図14、
図15の処理についても同様である。
【0177】
図10に示すように、ステップS102にて、FPGA710は、CPU701へのデータ送信時の通信エラーの発生頻度が所定基準以下であるか否かを判定する。具体的には、FPGA710は、CPU701からエラー応答信号が受信される頻度が所定基準以下であるか否かを判定する。FPGA710は、CPU701へのデータ送信時の通信エラーの発生頻度が所定基準以下である場合、ステップS104に進み、所定基準以下でない場合、ステップS106に進む。
【0178】
ステップS104にて、FPGA710は、第1通信モードで、送信対象のセンサ800Xの出力データをCPU701に送信する。これにより、FPGA710は、通信エラーが相対的に発生しにくい状況では、基本的に、パケットを1回だけ送信する形態を採用し、処理負荷の軽減を優先することができる。
【0179】
FPGA710は、ステップS104の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0180】
一方、ステップS106にて、FPGA710は、第2通信モードで、送信対象のセンサ800Xの出力データをCPU701に送信する。これにより、FPGA710は、通信エラーが相対的に発生し易い状況では、応答時間RTの経過前に1回目を含めてパケットを複数回送信し、CPU701へのデータの送信の所要時間の抑制を優先することができる。
【0181】
FPGA710は、ステップS106の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0182】
このように、本例では、FPGA710は、FPGA710からCPU701へのデータ送信時の通信エラーの発生頻度に応じて、第1通信モードと第2通信モードとを選択的に切り替えることができる。
【0183】
<<第1通信モードに関する処理>>
図11は、FPGA710による第1通信モードでの内部通信に関する処理の一例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートは、
図10のステップS104の処理に相当する。
【0184】
図11に示すように、ステップS202にて、FPGA710は、送信対象のセンサ800Xの出力データの一部又は全部を含むパケットをCPU701に1回送信する。
【0185】
FPGA710は、ステップS202の処理が完了すると、ステップS204に進む。
【0186】
ステップS204にて、FPGA710は、CPU701から応答信号を受信する。
【0187】
FPGA710は、ステップS204の処理が完了すると、ステップS206に進む。
【0188】
ステップS206にて、FPGA710は、ステップS204でエラー応答信号を受信したか否かを判定する。FPGA710は、エラー応答信号を受信した場合、ステップS208に進み、エラー応答信号を受信していない、即ち、正常応答信号を受信した場合、ステップS210に進む。
【0189】
ステップS208にて、FPGA710は、ステップS202で送信した同じパケットをCPU701に再送する。
【0190】
FPGA710は、ステップS208の処理が完了すると、ステップS204に戻る。
【0191】
一方、ステップS210にて、FPGA710は、データ送信が完了したか否かを判定する。具体的には、FPGA710は、送信対象のデータに対応する一又は複数のパケットの全てが送信完了したか否かを判定する。FPGA710は、データ送信が完了していない場合、ステップS202に戻り、次のパケットをCPU701に送信し、データ送信が完了している場合、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0192】
このように、FPGA710は、第1通信モードにおいて、基本的に、パケットをCPU701に1回送信する前提の下で、パケットのデータに誤りが生じた場合に限定して、パケットをCPU701に再送する通信形態を採用する。これにより、FPGA710は、上述の如く、処理負荷の軽減を優先することができる。
【0193】
<<第2通信モードに関する処理>>
図12は、FPGA710による第2通信モードでの内部通信に関する処理の一例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートは、
図10のステップS106の処理に相当する。
【0194】
図12に示すように、ステップS302にて、FPGA710は、送信対象のセンサ800Xの出力データの一部又は全部を含むパケットをCPU701に2回送信する。例えば、FPGA710は、上述の第2通信モードの一例(
図6、
図7参照)のように、時間T1の間隔を空けて、パケットを2回送信してもよい。また、例えば、FPGA710は、上述の第2通信モードの他の例(
図8、
図9参照)のように、パケットを連続して2回送信してもよい。また、FPGA710は、上述の如く、3回以上パケットを送信してもよい。
【0195】
FPGA710は、ステップS302の処理が完了すると、ステップS304に進む。
【0196】
ステップS304~S310は、
図11のステップS204~S210の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0197】
このように、FPGA710は、第2通信モードにおいて、CPU701からの1回目のパケットに対する応答信号の受信前に、1回目を含めてパケットを2回送信する。これにより、FPGA710は、送信対象のセンサ800Xの出力データのCPU701への送信時にデータの誤りが生じても、上述の如く、データの送信完了に要する時間を相対的に短くすることができる。つまり、FPGA710は、データの送信完了に要する時間の短縮を優先することができる。
【0198】
<CPUの制御処理>
続いて、
図13を参照して、CPU701の制御処理について説明する。
【0199】
図13は、CPU701による内部通信に関する処理の一例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、FPGA710からパケットが受信されると実行される。
【0200】
図13に示すように、ステップS402にて、CPU701は、第1通信モードが採用されているか否かを判定する。FPGA710により採用される通信モードが第1通信モードであるか第2通信モードであるかは、例えば、パケットのヘッダの内容から判断されてよい。この場合、FPGA710は、採用する通信モードを表す情報をパケットのヘッダに設定する。CPU701は、第1通信モードが採用される場合、ステップS404に進み、第1通信モードが採用されない、即ち、第2通信モードが採用される場合、ステップS410に進む。
【0201】
ステップS404にて、CPU701は、受信したパケットのデータに誤りを検出したか否かを判定する。CPU701は、受信したパケットのデータに誤りを検出しなかった場合、ステップS406に進み、誤りを検出した場合、ステップS408に進む。
【0202】
ステップS406にて、CPU701は、受信したパケットのデータを取り込み、正常応答信号をFPGA710に返信する。これにより、FPGA710は、パケットのデータに誤りが検出されなかったことを認識することができる(
図11のステップS206のYES)。そのため、CPU701は、次のパケットの送信に移行したり(
図11のステップS210のNO)、全てのパケット送信完了により、データ送信を終了したり(
図11のステップS210のYES)することができる。
【0203】
CPU701は、ステップS406の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0204】
一方、ステップS408にて、CPU701は、受信したパケットを破棄し、エラー応答信号をFPGA710に返信する。これにより、FPGA710は、パケットのデータに誤りが検出されたことを認識することができる(
図11のステップS206のNO)。そのため、FPGA710は、パケットをCPU701に再送することができる(
図11のステップS208)。
【0205】
CPU701は、ステップS408の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0206】
また、ステップS410にて、CPU701は、受信したパケットのヘッダに含まれるIDが前回受信したパケットのIDと同じであるか否かを判定する。CPU701は、受信したパケットのIDが前回のパケットのIDと同じでない場合、パケットの1回目の受信であると判断し、ステップS412に進み、同じである場合、パケットの2回目の受信であると判断し、ステップS418に進む。
【0207】
ステップS412にて、CPU701は、受信したデータに誤りを検出したか否かを判定する。CPU701は、受信したパケットのデータに誤りを検出しなかった場合、ステップS414に進み、誤りを検出した場合、ステップS416に進む。
【0208】
ステップS414にて、CPU701は、受信したパケットのデータを取り込み、FPGA710に正常応答信号を返信する。これにより、FPGA710は、CPU701で受信されたパケットのデータに誤りが検出されなかったことを認識することができる(
図12のステップS306のNO)。そのため、CPU701は、次のパケットの送信に移行したり(
図12のステップS310のNO)、全てのパケット送信完了により、データ送信を終了したり(
図12のステップS310のYES)することができる。
【0209】
CPU701は、ステップS414の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0210】
一方、ステップS416にて、CPU701は、応答信号をFPGA710に返信することなく、受信したパケットを破棄する。1回目のパケットのデータに誤りがあっても、2回目のパケットを受信する機会があるからである。
【0211】
CPU701は、ステップS416の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0212】
また、ステップS418にて、CPU701は、前回のパケットを正常に受信したか、即ち、前回受信したパケットに誤りが無い状態であったか否かを判定する。CPU701は、前回のパケットを正常に受信している場合、ステップS420に進み、前回のパケットを正常に受信していない場合、ステップS422に進む。
【0213】
ステップS420にて、CPU701は、誤りの有無を判断することなく、且つ、FPGA710に応答信号を返信することなく、受信したパケットを破棄する。1回目のパケットのデータに誤りがなく、正常なデータを取り込み済みであり、且つ、CPU701に正常応答信号を返信しているからである(ステップS414参照)。
【0214】
CPU701は、ステップS420の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0215】
一方、ステップS422にて、CPU701は、受信したデータに誤りを検出したか否かを判定する。CPU701は、受信したパケットのデータに誤りを検出しなかった場合、ステップS424に進み、誤りを検出した場合、ステップS426に進む。
【0216】
ステップS424にて、CPU701は、受信したパケットのデータを取り込み、正常応答信号をFPGA710に返信する。これにより、FPGA710は、CPU701で受信されたパケットのデータに誤りが検出されなかったことを認識することができる(
図12のステップS306のNO)。そのため、CPU701は、次のパケットの送信に移行したり(
図12のステップS310のNO)、全てのパケット送信完了により、データ送信を終了したり(
図12のステップS310のYES)することができる。
【0217】
CPU701は、ステップS424の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0218】
一方、ステップS426にて、CPU701は、受信したパケットを破棄し、エラー応答信号をFPGA710に返信する。これにより、FPGA710は、CPU701により受信された1回目及び2日目の双方のパケットのデータに誤りが生じていたことを認識
することができる(
図12のステップS306のYES)。そのため、FPGA710は、パケットをCPU701に再送することができる(
図12のステップS308)。
【0219】
CPU701は、ステップS426の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0220】
このように、CPU701は、FPGA710により採用される通信モード(第1通信モード或いは第2通信モード)に合わせて、適切な処理を採用することができる。
【0221】
[射出成形機の内部通信に関する制御処理の他の例]
次に、
図14を参照して、射出成形機1の内部通信に関する制御処理の他の例について説明する。
【0222】
本例では、FPGA710による通信モード切替処理のみが上述の一例と異なり、他の処理は、上述の一例の場合(
図11~
図13)と同じである。以下、上述の一例と異なる部分を中心に説明する。
【0223】
図14は、FPGA710による通信モード切替処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
【0224】
図14に示すように、ステップS502にて、FPGA710は、送信対象のセンサ800Xの出力データの送信周期が所定基準以下であるか否かを判定する。所定基準は、例えば、100μsecである。FPGA710は、送信対象のセンサ800Xの出力データの送信周期が所定基準以下でない場合、ステップS504に進み、所定基準以下である場合、ステップS506に進む。
【0225】
ステップS504にて、FPGA710は、第1通信モードで、送信対象のセンサ800Xの出力データをCPU701に送信する。これにより、FPGA710は、送信周期が相対的長く、送信対象のデータの送信完了までに要する時間にある程度余裕がある場合には、基本的に、パケットを1回だけ送信する形態を採用し、処理負荷の軽減を優先することができる。
【0226】
FPGA710は、ステップS504の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0227】
一方、ステップS506にて、FPGA710は、第2通信モードで、送信対象のセンサ800Xの出力データをCPU701に送信する。これにより、FPGA710は、送信周期が相対的に短い場合には、応答時間RTの経過前に1回目を含めてパケットを複数回送信し、CPU701へのデータの送信の所要時間の抑制を優先することができる。
【0228】
FPGA710は、ステップS506の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0229】
尚、ステップS504,S506は、
図10のステップS104,S106の処理と同じである。そのため、ステップS504,S506では、それぞれ、上述の
図11,
図12の処理が実行される。
【0230】
このように、本例では、FPGA710は、FPGA710からCPU701への送信対象のデータの送信周期に応じて、第1通信モードと第2通信モードとを選択的に切り替えることができる。
【0231】
[射出成形機の内部通信に関する制御処理の更に他の例]
次に、
図15を参照して、射出成形機1の内部通信に関する制御処理の他の例について説明する。
【0232】
本例では、FPGA710による通信モード切替処理のみが上述の一例や他の例と異なり、他の処理は、上述の一例の場合(
図11~
図13)と同じである。以下、上述の一例や他の例と異なる部分を中心に説明する。
【0233】
図15は、FPGA710による通信モード切替処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
【0234】
図15に示すように、FPGA710は、送信対象のセンサ800Xの出力データが第2通信モードの適用対象であるか否かを判定する。センサ800A~800Cの出力データごとに、第1通信モードの適用対象であるか第2通信モードの適用対象であるかが予め設定され、その設定内容は、コントローラ700(FPGA710)の内部に予め可能される。
【0235】
第1通信モードの適用対象のデータは、例えば、センサ800A~800Cのうち、測定対象の物理量の外乱に対する変化速度が相対的に小さいセンサ800X(第1のセンサの一例)の出力データである。具体的には、第1通信モードの適用対象のデータは、温度センサ等であってよい。
【0236】
これに対して、第2通信モードの適用対象のデータは、例えば、センサ800A~800Cのうち、測定(検出)対象の物理量の外乱に対する変化速度が相対的に大きいセンサ800X(第2のセンサの一例)の出力データである。具体的には、第2通信モードの適用対象のデータは、電圧センサ、電流センサ、圧力センサ、エンコーダ(回転状態センサの一例)等であってよい。
【0237】
FPGA710は、送信対象のセンサ800Xの出力データが第2通信モードの適用対象でない、即ち、第1通信モードの適用対象である場合、ステップS604に進み、第2通信モードの適用対象である場合、ステップS606に進む。
【0238】
ステップS604にて、FPGA710は、第1通信モードで、送信対象のセンサ800Xの出力データをCPU701に送信する。これにより、FPGA710は、送信対象のセンサ800Xの出力データに対応する物理量の外乱に対する変化速度が相対的に小さい場合には、基本的に、パケットPiを1回だけ送信する形態を採用し、処理負荷の軽減を優先することができる。仮に、通信エラーが多く発生し、送信周期内でデータ送信を完了することができない事態が発生しても、次のデータの受信までの間で、物理量が大きく変化する可能性は低く、CPU701側での外挿等により制御性能を維持することができるからである。
【0239】
FPGA710は、ステップS604の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0240】
一方、ステップS606にて、FPGA710は、第2通信モードで、送信対象のセンサ800Xの出力データをCPU701に送信する。これにより、FPGA710は、送信対象のセンサ800Xの出力データに対応する物理量の外乱に対する変化速度が相対的に大きい場合には、応答時間RTの経過前に1回目を含めてパケットを複数回送信し、データの送信の所要時間の抑制を優先することができる。仮に、通信エラーが多く発生し、送信周期内でデータ送信を完了することができない事態が発生すると、次のデータの受信までの間で、物理量が大きく変化し、CPU701側での制御性能を維持することが難しくなる可能性があるからである。
【0241】
FPGA710は、ステップS606の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0242】
尚、ステップS604,S606は、
図10のステップS104,S106の処理と同じである。そのため、ステップS604,S606では、それぞれ、上述の
図11,
図12の処理が実行される。
【0243】
このように、本例では、FPGA710は、FPGA710からCPU701への送信対象のデータの送信周期に応じて、第1通信モードと第2通信モードとを選択的に切り替えることができる。
【0244】
[他の実施形態]
次に、他の実施形態について、説明する。
【0245】
上述した実施形態の内容は、適宜、変形や変更が加えられてもよい。
【0246】
例えば、上述の実施形態では、FPGA710からCPU701にデータが送信される場合について、第1通信モードや第2通信モードが適用されるが、逆に、CPU701からFPGA710にデータが送信される場合に適用されてもよい。
【0247】
また、例えば、上述の実施形態やその変形・変更の例では、CPU701に一つのFPGA710が接続されるが、CPU701(マスタ)に対して、複数のFPGA710(スレーブ)がデイジーチェーン接続されてもよい。この場合、複数のFPGA710は、同じ種類であってもよいし、その少なくとも一部が異なる種類であってもよい。また、この場合、数珠つなぎで接続される、隣り合う2つのFPGA701同士の間の内部通信において、上記の第1通信モードや第2通信モード等が適用されてもよい。
【0248】
また、例えば、上述の実施形態やその変形・変更の例では、コントローラ700の内部通信に対して、第1通信モードや第2通信モードが適用されるが、射出成形機1の他の内部機器とコントローラ700(内部機器の一例)との間の通信や射出成形機1の他の内部機器同士の間の通信に適用されてもよい。射出成形機1の他の内部機器には、例えば、センサ800X(内部機器の一例)が含まれる。また、射出成形機1の他の内部機器には、他のコントローラが含まれる。他のコントローラには、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)等の上位のコントローラ(内部機器の一例)が含まれてよい。また、他のコントローラには、例えば、電気駆動部を駆動するドライバ等の下位のコントローラ(内部機器の一例)が含まれてもよい。
【0249】
また、例えば、上述の実施形態や変形・変更の例では、射出成形機1における内部通信について、第1通信モードや第2通信モードが適用されるが、射出成形機1と外部機器との間の通信に適用されてもよい。具体的には、自機(射出成形機1)と他の射出成形機1(外部機器の一例)との間の通信や、射出成形機1と管理装置2(外部機器の一例)との間の通信に対して、第1通信モードや第2通信モードが適用されてよい。
【0250】
また、例えば、上述の実施形態やその変形・変更の例では、周期的に送信されるデータについて、第1通信モードや第2通信モードが適用されるが、所定のイベントの発生に応じて、送信されるデータについて適用されてもよい。
【0251】
また、例えば、上述の実施形態やその変形・変更の例では、第1通信モード及び第2通信モードが切り替えられるが、常時、第2通信モードで通信が行われてもよい。
【0252】
[作用]
次に、本実施形態に係る射出成形機1やコントローラ700の作用について説明する。
【0253】
本実施形態では、射出成形機1は、型締装置100と、射出装置300と、エジェクタ装置200とを備える。具体的には、型締装置100は、金型装置10を型締する。また、射出装置300は、型締装置100により型締された金型装置10に成形材料を充填する。また、エジェクタ装置200は、射出装置300により充填された成形材料が冷却固化した後、金型装置10から成形品を取り出す。そして、射出成形機1は、内部機器同士の間、及び自機と外部機器との間の少なくとも一方で、送信側が、受信側に対して、同じデータを複数回送信する。
【0254】
また、本実施形態では、コントローラ700は、内部機器同士の間、及び自機と外部機器の間の少なくとも一方で、送信側が、受信側に対して、同じデータを複数回送信する。
【0255】
これにより、射出成形機1やコントローラ700(以下、「射出成形機1等」)は、仮に、1回目のパケットのデータに誤りがある場合でも、2回目以降のパケットの受信により、誤りのないデータを正常に取得できる機会を得ることができる。そのため、射出成形機1等は、受信側において、正しいデータを取得することができる。
【0256】
また、本実施形態では、送信側は、受信側からデータの受信に関する応答信号が受信されるまでの間(即ち、応答時間RTが経過する前)に、受信側に対して、同じデータを連続して複数回送信してよい。
【0257】
これにより、射出成形機1等は、上述の如く、送信側から受信側への全てのデータ送信に要する時間を相対的に短くすることができる。
【0258】
また、本実施形態では、送信側は、受信側に対して、同じデータを連続して複数回送信してよい。
【0259】
これにより、射出成形機1等は、上述の如く、送信側から受信側への全てのデータ送信に要する時間を更に短くすることができる。
【0260】
また、本実施形態では、送信側は、受信側に対して、データを1回送信し、通信エラーが発生したときに同じデータを再送信する第1通信モードと、通信エラーの有無に依らず、同じデータを複数回送信する第2通信モードとを有してよい。
【0261】
これにより、射出成形機1等は、第1通信モード及び第2通信モードを切り替えることで、処理負荷の軽減と、送信側から受信側への全てのデータ送信に要する時間の短縮とのバランスを図ることができる。
【0262】
また、本実施形態では、送信側は、送信対象のデータに応じて、第1通信モードと、第2通信モードとを切り替えてよい。
【0263】
これにより、射出成形機1等は、送信対象のデータに関する条件に合わせて、第1通信モードと第2通信モードとを切り替えることができる。
【0264】
また、本実施形態では、送信側は、送信対象のデータの送信周期が相対的に長い場合、第1通信モードを選択し、送信対象のデータの送信周期が相対的に短い場合、第2通信モードを選択してよい。
【0265】
これにより、射出成形機1等は、送信対象のデータの送信周期が相対的に長く、送信側から受信側への全てのデータの送信に利用可能な時間に比較的余裕がある場合には、処理負荷の軽減を優先することができる。一方、射出成形機1等は、送信対象のデータの送信周期が相対的に短く、送信側から受信側への全てのデータの送信に利用可能な時間に比較的余裕がない場合には、全てのデータ送信に要する時間の短縮を優先することができる。
【0266】
また、本実施形態では、送信対象のデータは、センサ800Xの出力データであってよい。そして、送信側は、センサ800A~800Cのうち、測定対象の物理量の変化速度が相対的に小さいセンサ800X(第1のセンサ)の出力データが送信対象である場合、第1通信モードを選択してよい。一方、送信側は、センサ800A~800Cのうち、測定対象の物理量の変化速度が相対的に大きいセンサ800X(第2のセンサ)の出力データが送信対象である場合、第2通信モードを選択してよい。
【0267】
これにより、射出成形機1等は、センサ800Xの測定対象の物理量の変化速度が相対的に小さく、仮に、センサ800Xの出力データを送信周期内で送信完了できなくても、外挿等により制御性能を確保可能な場合には、処理負荷の軽減を優先することができる。一方、射出成形機1等は、センサ800Xの測定対象の物理量の変化速度が相対的に大きく、仮に、センサ800Xの出力データを送信周期内で送信完了できないと、制御性能の確保が難しい場合には、全てのデータ送信に要する時間の短縮を優先することができる。
【0268】
また、本実施形態では、第1のセンサは、温度センサを含んでよく、第2のセンサは、電圧センサ、電流センサ、圧力センサ、及び回転状態センサ(例えば、エンコーダ等)の少なくとも一つを含んでよい。
【0269】
これにより、射出成形機1等は、センサ800の種類に合わせて、具体的に、第1通信モードと第2通信モードとを切り替えることができる。
【0270】
また、本実施形態では、送信側は、送信側から受信側へのデータ送信時における通信エラーの発生頻度に応じて、第1通信モードと、第2通信モードとを切り替えてよい。
【0271】
これにより、射出成形機1等は、例えば、通信エラーの発生頻度が相対的に小さい状況では、データの再送による遅延もある程度小さくなることから、第1通信モードを選択して、処理負荷の軽減を優先することができる。一方、射出成形機1等は、例えば、通信エラーの発生頻度が相対的に大きい状況では、データの再送による遅延がある程度大きくなることから、第2通信モードを選択して、全てのデータ送信に要する時間の短縮を優先することができる。
【0272】
[変形、変更]
以上、射出成形機管理システムSYS等の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0273】
例えば、上述した実施形態では、射出成形機1の内部機器同士や射出成形機1と外部機器との間のデータのやり取りに関する構成を説明したが、同様の内容は、他の機械の内部機器同士や当該機械と外部機器との間のデータのやり取りに適用されてもよい。他の機械は、例えば、工場で利用される産業機械や産業ロボットである。また、他の機械は、例えば、作業現場で利用される作業機械(例えば、ショベル、ブルドーザ、クレーン等)であってもよい。即ち、射出成形機1の内部機器同士や射出成形機1と外部機器との間のデータのやり取りに関する構成は、データのやり取りを行う送信部及び受信部と、受信部が受信するデータを使用する制御部とを含む任意の制御システムに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0274】
1 射出成形機
2 管理装置(外部機器)
100 型締装置
200 エジェクタ装置
300 射出装置
400 移動装置
700 コントローラ
701 CPU(内部機器)
702 メモリ装置
703 補助記憶装置
704 インタフェース装置
710 FPGA(内部機器)
750 操作装置
760 表示装置
SYS 射出成形機管理システム