(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098935
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】船外機の取付構造
(51)【国際特許分類】
B63H 20/02 20060101AFI20220627BHJP
B63H 20/08 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B63H20/02 100
B63H20/08 100
B63H20/08 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212621
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】田村 慎吾
(57)【要約】
【課題】船体に船外機を容易に取り付け可能な船外機の取付構造を提供する。
【解決手段】本発明の取付構造7は、船体3に対する船外機5の取り付けを行う。この取付構造7は、アウトブラケット13と船外機ブラケット11とを備えている。アウトブラケット13は、船体3の後部に固定されている。船外機ブラケット11は、船外機5に固定されている。また、アウトブラケット13には、第1~4取付溝33a~33dが設けられている。第1~4取付溝33a~33dは、船体3の上方から船外機ブラケット11を内部に進入させることにより、アウトブラケット13に船外機ブラケット11を取り付ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に船外機を取り付けるための船外機の取付構造であって、
前記船体の後部に固定されたアウトブラケットと、
前記船外機に固定された船外機ブラケットとを備え、
前記アウトブラケットには、前記船体の上方から前記船外機ブラケットを内部に進入させることにより、前記アウトブラケットに前記船外機ブラケットを取り付ける取付溝が設けられていることを特徴とする船外機の取付構造。
【請求項2】
前記アウトブラケットには、前記取付溝の内部に前記船外機ブラケットを固定する固定具が設けられている請求項1記載の船外機の取付構造。
【請求項3】
前記アウトブラケットは、前記船体の後部に固定された固定ブラケットと、
前記取付溝が設けられたマウントブラケットと、
前記固定ブラケットに対して前記マウントブラケットを前記船体の前後方向に揺動可能に取り付ける連結機構とを有している請求項1又は2記載の船外機の取付構造。
【請求項4】
前記取付溝は複数であり、
各取付溝は、前記船体の前後方向に配置されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の船外機の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船外機の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の船外機の取付構造(以下、単に取付構造という。)が開示されている。この取付構造は、アウトブラケットと、クランプ具とを備えている。アウトブラケットは船体の後部に固定されている。アウトブラケットは、上部が開口する矩形の箱状をなしている。クランプ具は船外機に取り付けられている。クランプ具は、アウトブラケットの後端縁を挟持しつつ、アウトブラケットの後端縁に締結可能である。
【0003】
この取付構造を用いて船体に船外機を取り付けるに当たっては、クレーン等によって船外機を吊り下げつつ船外機をアウトブラケットに接近させ、クランプ具とアウトブラケットとの位置決めを行う。そして、船外機を吊り下げた状態において、クランプ具をアウトブラケットの後端縁に挟持させて、クランプ具をアウトブラケットの後端縁に締結する。こうして、クランプ具がアウトブラケットの後端縁に固定されることにより、この取付構造では、船体の後部に船外機が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の取付構造では、船外機をクレーン等によって吊り下げた状態において、クランプ具とアウトブラケットとの位置決めを行い、さらに、クランプ具をアウトブラケットの後端縁に締結する必要がある。このため、この取付構造では、船体に船外機を容易に取り付け難い。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、船体に船外機を容易に取り付け可能な船外機の取付構造を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の船外機の取付構造は、船体に船外機を取り付けるための船外機の取付構造であって、
前記船体の後部に固定されたアウトブラケットと、
前記船外機に固定された船外機ブラケットとを備え、
前記アウトブラケットには、前記船体の上方から前記船外機ブラケットを内部に進入させることにより、前記アウトブラケットに前記船外機ブラケットを取り付ける取付溝が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の取付構造では、例えばクレーン等によって吊り下げつつ、前記船体の上方からアウトブラケットの取付溝に船外機ブラケットを進入させることによって、アウトブラケットに対する船外機ブラケットの取り付け、ひいては、船体に対する船外機の取り付けが可能となる。
【0009】
したがって、本発明の船外機の取付構造によれば、船体に船外機を容易に取り付け可能である。
【0010】
アウトブラケットには、取付溝の内部に船外機ブラケットを固定する固定具が設けられていることが好ましい。この場合には、固定具によって、取付溝に対する船外機ブラケットの抜け止めが可能となるため、アウトブラケットに船外機ブラケットを強固に取り付けることができる。
【0011】
アウトブラケットは、船体の後部に固定された固定ブラケットと、取付溝が設けられたマウントブラケットと、固定ブラケットに対してマウントブラケットを船体の前後方向に揺動可能に取り付ける連結機構とを有していることが好ましい。
【0012】
この場合には、固定ブラケットに対してマウントブラケットを船体の前後方向に揺動させることにより、取付溝と船外機ブラケットとの位置決めを容易化できるとともに、取付溝に船外機ブラケットを容易に進入させることが可能となる。このため、この取付構造によれば、船体に船外機をより容易に取り付け可能となる。
【0013】
取付溝は複数であり得る。そして、各取付溝は、船体の前後方向に配置されていることが好ましい。この場合には、船外機ブラケットを進入させる取付溝を選択することにより、船体に対する船外機の取付位置を船体の前後方向に調節することが可能となる。これにより、この取付構造では、用途や嗜好等に応じて船外機による船舶の推進性能も容易に調整できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の船外機の取付構造によれば、船体に船外機を容易に取り付け可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例の取付構造によって船体に船外機が取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図2】
図2は、実施例の取付構造に係り、アウトブラケット等を示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施例の取付構造に係り、アウトブラケット等を示す第1面図である。
【
図4】
図4は、実施例の取付構造に係り、
図3のA-A断面を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施例の取付構造によって船体に船外機を取り付ける過程を示す側面図である。
【
図6】
図6は、実施例の取付構造によって船体に船外機を取り付ける過程を示す
図4と同様の第1面図である。
【
図7】
図7は、実施例の取付構造によって船体に船外機が取り付けられた状態を示す
図4と同様の第1面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1に示す船舶1は、船体3と、船外機5と、アウトブラケット13とを有している。そして、この船舶1では、実施例の取付構造7によって、船体3の後部に船外機5が取り付けられている。
【0018】
本実施例では、
図1及び
図2に示す実線矢印によって船体3、ひいては船舶1の上下方向及び前後方向を規定している。また、
図3では、
図1及び
図2に対応して船体3の前後方向を規定している他、船体3の幅方向である左右方向を規定している。そして、
図4以降では、
図1~
図3に対応して船体3の上下方向、前後方向及び左右方向を規定している。これらの上下方向、前後方向及び左右方向は互いに直交する関係にある。
【0019】
図1に示す船体3は、前後方向及び左右方向に延びており、船舶1の操縦者等の乗員が乗船可能となっている。船体3はトランサム3aを有している。詳細な図示を省略するものの、トランサム3aは、船体3の後部に位置しており、上下方向及び左右方向に板状に延びている。また、船体3には、船外機5を操作して船舶1を航行させる操作部が設けられている。なお、乗員及び操作部の図示は省略する。
【0020】
船外機5は、樹脂製のハウジング5aを有している。ハウジング5aの内部には、公知の船舶用エンジン(図示略)が設けられている。また、ハウジング5aの下部には、船舶用エンジンの動力によって回転可能な船外機プロペラ5bが設けられている。
【0021】
また、ハウジング5aには、金属製の固定アーム9が設けられている。固定アーム9は、アーム本体9aと、固定基部9bとで構成されている。アーム本体9aは、略矩形状をなしており、前後方向に延びている。固定基部9bは、アーム本体9aの後端とハウジング5aとの間に位置している。固定基部9bは、アーム本体9aの後端に溶接されることによってアーム本体9aと一体化されている。また、固定基部9bは、図示しないボルトによってハウジング5aに固定されている。これにより、アーム本体9aは、固定基部9b介してハウジング5aの前部に固定されており、ハウジング5a、ひいては船外機5から船体3に向かって前方に延びている。
【0022】
また、アーム本体9aの前端には、船外機ブラケット11が固定されている。より具体的には、船外機ブラケット11は金属製であり、上下方向及び左右方向に延びる略矩形の板状をなしている。船外機ブラケット11は、アーム本体9aの前端に溶接されることにより、アーム本体9aの前端に固定されている。これにより、船外機ブラケット11は、固定アーム9を介して船外機5に固定されている。また、船外機ブラケット11は、固定アーム9によって、ハウジング5aから前方に離隔して配置されている。なお、船外機ブラケット11は、ボルト等によってアーム本体9aの前端に固定されていても良い。
【0023】
図5~
図7に示すように、船外機ブラケット11には、船外機ブラケット11を前後方向に貫通する複数の第1ねじ孔11aが形成されている。より具体的には、船外機ブラケット11には4つの第1ねじ孔11aが形成されており、各第1ねじ孔11aは、船外機ブラケット11の四隅にそれぞれ配置されている。ここで、
図5では、4つの第1ねじ孔11aのうち、船外機ブラケット11の上下方向に配置された2つの第1ねじ孔11aを図示している。一方、
図6及び
図7では、4つの第1ねじ孔11aのうち、船外機ブラケット11の左右方向に配置された2つの第1ねじ孔11aを図示している。なお、
図6及び
図7では、説明を容易にするため、ハウジング5a及び固定アーム9の形状を簡略化して図示している。また、船外機ブラケット11に形成される第1ねじ孔11aの個数は適宜設計可能である他、船外機ブラケット11に対する第1ねじ孔11aの形成を省略しても良い。
【0024】
ここで、取付構造7以外の取付構造によって、船体3の後部に船外機5が取り付けられる場合には、船外機ブラケット11に対して、図示しないクランプ具などの船体3に船外機5を固定するための固定部材が取り付けられる。つまり、この船外機ブラケット11は、固定部材の取付ブラケットとしても機能する。なお、船外機ブラケット11は、取付構造7にのみ用いられる専用品であっても良い。
【0025】
取付構造7は、上述の船外機ブラケット11と、アウトブラケット13とによって構成されている。
図2~
図4に示すように、アウトブラケット13は、固定ブラケット21と、マウントブラケット23と、連結機構25とを有している。
【0026】
固定ブラケット21は、立壁部21aと支持部21bとを有している。立壁部21aは、船体3のトランサム3aに沿って上下方向に延びているとともに左右方向に延びている。ここで、立壁部21aにおける上下方向の長さは、トランサム3aの上下方向の長さに比べて短く設定されている。また、立壁部21aにおける左右方向の長さは、トランサム3aの左右方向の長さに比べて短く設定されている。
【0027】
また、
図3に示すように、立壁部21aの上部には、挿通孔210が形成されている。挿通孔210は、立壁部21aを左右方向に貫通している。さらに、立壁部21aには、第1取付フランジ211及び第2取付フランジ212が形成されている。第1取付フランジ211は、立壁部21aの右端に一体に形成されており、立壁部21aから右方に延びつつ、立壁部21a及びトランサム3aに沿って上下方向に延びている。第2取付フランジ212は、立壁部21aの左端に一体に形成されており、立壁部21aから左方に延びつつ、立壁部21a及びトランサム3aに沿って上下方向に延びている。これらの第1取付フランジ211及び第2取付フランジ212には、後述する第1固定ボルト51が挿通される複数の取付孔213が形成されている。
【0028】
図2に示すように、支持部21bは、立壁部21aの下端に一体に形成されており、立壁部21aから後方に向かって略水平に板状に延びている。これらの立壁部21a及び支持部21bにより、固定ブラケット21は、側面視で略L字形状をなしている。また、
図3に示すように、支持部21bは、立壁部21aと等しい長さで左右方向に延びている。
【0029】
図2及び
図4に示すように、支持部21bは第1面214と第2面215とを有している。第1面214は、船体3の上方に面しており、マウントブラケット23と対向している。また、第1面214には、第1凹部21cが形成されている。第1凹部21cは、船体3の上方に臨む略半円形状をなしている。一方、第2面215は、第1面214の反対側に位置しており、船体3の下方に面している。
【0030】
図1~
図3等に示すように、固定ブラケット21では、立壁部21aの第1取付フランジ211及び第2取付フランジ212に、それぞれ複数の第1固定ボルト51が挿通されている。そして、固定ブラケット21は、これらの各第1固定ボルト51によって船体3のトランサム3aに締結されている。これにより、固定ブラケット21は、トランサム3a、すなわち船体3の後部に固定されている。
【0031】
図2及び
図4に示すようにマウントブラケット23は、上下方向及び左右方向に延びる略矩形の箱状に形成されている。ここで、マウントブラケット23における上下方向の長さは、船外機ブラケット11の上下方向の長さよりも長く設定されている。また、マウントブラケット23における左右方向の長さは、船外機ブラケット11の左右方向の長さよりも長く設定されている。また、マウントブラケット23の上部には、開口230が形成されている。これにより、マウントブラケット23は、上部が開口した略矩形の箱状をなしている。
【0032】
図3に示すように、マウントブラケット23は、前壁23aと、後壁23bと、右壁23cと、左壁23dと、下壁23eとを有している。前壁23aは、マウントブラケット23の前端に位置しており、上下方向及び左右方向に延びている。より具体的には、
図4に示すように、前壁23aは、上方から下方に向かうにつれて、後方から前方に所定の角度で傾斜している。ここで、前壁23aは、立壁部21a及びトランサム3aと平行となる角度で傾斜している。前壁23aは、マウントブラケット23の前部を構成している。
【0033】
後壁23bは、マウントブラケット23の後端に位置しており、上下方向及び左右方向に延びている。これにより、後壁23bは、前壁23aから後方に離隔して配置されており、前壁23aと対向している。そして、後壁23bは、マウントブラケット23の後部を構成している。ここで、後壁23bは、前壁23aと平行となっている。つまり、後壁23bについても、上方から下方に向かうにつれて、後方から前方に所定の角度で傾斜している。また、後壁23bには、進入口231が形成されている。
【0034】
進入口231は、後壁23bにおける左右方向の中央に位置しており、開口230と連通しつつ、後壁23bの上端から下方に向かって延びている。ここで、進入口231における上下方向の長さは、後壁23bにおける上下方向の長さに比べて短く設定されている。これにより、後壁23bの上部を含め、後壁23bにおいて進入口231が形成されている個所では、進入口231によって左右に分断されている。一方、後壁23bにおいて進入口231よりも下方となる個所では、左右が繋がった状態となっている。
【0035】
図3に示すように、右壁23cは、前壁23aと後壁23bとの間に位置しており、上下方向及び前後方向に延びている。右壁23cは、前壁23aの右端と後壁23bの右端とに接続することにより、マウントブラケット23の右部を構成している。左壁23dは、右壁23cから左方に離隔して配置されており、前壁23aと後壁23bとの間に位置した状態で右壁23cと対向している。左壁23dは、右壁23cと平行で上下方向及び前後方向に延びることにより、前壁23aの左端と後壁23bの左端とに接続している。こうして、左壁23dは、マウントブラケット23の左部を構成している。
【0036】
また、右壁23cには第1連結軸25aが固定されている。第1連結軸25aは、右壁23cから右方に向かって延びている。第1連結軸25aには、第1ねじ部251が形成されている。一方、左壁23dには第2連結軸25bが固定されている。第2連結軸25bは、第1連結軸25aと左右対称の形状であり、左壁23dから左方に向かって延びている。第2連結軸25bには、第2ねじ部252が形成されている。
【0037】
図4に示すように、下壁23eは、前壁23a、後壁23b、右壁23c及び左壁23dの下方に位置しており、左右方向及び前後方向に延びている。下壁23eは、前壁23a、後壁23b、右壁23c及び左壁23dの各下端と接続している。これにより、下壁23eは、マウントブラケット23の下部、すなわち底部を構成している。下壁23eには、第2凹部23gが形成されている。第2凹部23gは、固定ブラケット21の支持部21b、すなわち、船体3の下方に臨む略半円形状をなしている。
【0038】
また、
図3に示すように、このマウントブラケット23では、右壁23cに対して第1~3仕切壁31a~31cが形成されており、左壁23dに対して第4~6仕切壁31d~31fが形成されている。
【0039】
図4に示すように、第1~3仕切壁31a~31cは、前壁23aと後壁23bとの間に位置している。第1~3仕切壁31a~31cは、それぞれ板状をなしており、前壁23a及び後壁23bと平行で上下方向に延びている。つまり、第1~3仕切壁31a~31cについても、上方から下方に向かうにつれて、後方から前方に所定の角度で傾斜している。
【0040】
また、
図3に示すように、第1~3仕切壁31a~31cは、左壁23dに向かって左方に延びている。ここで、第1~3仕切壁31a~31cが右壁23cから左方に延びる長さ、すなわち、第1~3仕切壁31a~31cにおける左右方向の長さは、互いに等しくなっている。また、このマウントブラケット23では、第1~3仕切壁31a~31cが進入口231と前後方向で重なることがないように、第1~3仕切壁31a~31cにおける左右方向の長さが設定されている。
【0041】
第1~3仕切壁31a~31cと同様、第4~6仕切壁31d~31fは、前壁23aと後壁23bとの間に位置している。第4~6仕切壁31d~31fも板状をなしており、前壁23a及び後壁23bと平行に延びている。つまり、第4~6仕切壁31d~31fについても、上方から下方に向かうにつれて、後方から前方に所定の角度で傾斜している。
【0042】
また、第4~6仕切壁31d~31fは、第1~3仕切壁31a~31c、ひいては右壁23cに向かって右方に延びている。ここで、第4~6仕切壁31d~31fにおける左右方向の長さは、第1~3仕切壁31a~31cにおける左右方向の長さと等しくなっている。これにより、第4~6仕切壁31d~31fについても、進入口231と前後方向で重ならないようになっている。
【0043】
これらの第1~3仕切壁31a~31cと、第4~6仕切壁31d~31fとは左右方向で対向している。より具体的には、第1仕切壁31aと第4仕切壁31dとが左右方向で対向しており、第2仕切壁31bと第5仕切壁31eとが左右方向で対向しており、第3仕切壁31cと第6仕切壁31fとが左右方向で対向している。
【0044】
また、第1~3仕切壁31a~31cのうち、第1仕切壁31aは最も前方に位置しており、第4~6仕切壁31d~31fのうち、第4仕切壁31dは最も前方に位置している。これにより、第1仕切壁31a及び第4仕切壁31dは、前壁23aと前後方向で対向している。一方、第1~3仕切壁31a~31cのうち、第3仕切壁31cは最も後方に位置しており、第4~6仕切壁31d~31fのうち、第6仕切壁31fは最も後方に位置している。これにより、第3仕切壁31c及び第6仕切壁31fは、後壁23bと前後方向で対向している。
【0045】
ここで、第1~3仕切壁31a~31c同士は、前後方向に等間隔で配置されている。また、第4~6仕切壁31d~31f同士についても、前後方向に等間隔で配置されている。そして、このマウントブラケット23では、前壁23aと第1仕切壁31aとの前後方向の間隔と、後壁23bと第3仕切壁31cとの前後方向の間隔と、第1仕切壁31aと第2仕切壁31bとの前後方向の間隔と、第2仕切壁31bと第3仕切壁31cとの前後方向の間隔とがいずれも等しくなっている。同様に、前壁23aと第4仕切壁31dとの前後方向の間隔と、後壁23bと第6仕切壁31fとの前後方向の間隔と、第4仕切壁31dと第5仕切壁31eとの前後方向の間隔と、第5仕切壁31eと第6仕切壁31fとの前後方向の間隔とがいずれも等しくなっている。
【0046】
こうして、このマウントブラケット23では、第1、4仕切壁31a、31dと前壁23aとによって第1取付溝33aが形成されている。また、第1、4仕切壁31a、31dと第2、5仕切壁31b、31eとによって第2取付溝33bが形成されている。さらに、第2、5仕切壁31b、31eと第3、6仕切壁31c、31fとによって第3取付溝33cが形成されている。そして、第3、6仕切壁31c、31fと後壁23bとによって第4取付溝33dが形成されている。
【0047】
これらの第1~4取付溝33a~33dは、このマウントブラケット23の内部において、前後方向に整列して配置されている。つまり、第1~4取付溝33a~33dのうち、第1取付溝33aが最も前方に位置しており、第4取付溝33dが最も後方に位置している。また、各第1~4取付溝33a~33dにおける前後方向の幅は、
図1等に示す船外機ブラケット11の前後方向の幅、すなわち、船外機ブラケット11の板厚よりも大きく設定されている。これにより、各第1~4取付溝33a~33dに対して、船外機ブラケット11が進入可能となっている。
【0048】
また、
図3及び
図4に示すように、マウントブラケット23には、複数の第2ねじ孔35が形成されている。より具体的には、前壁23a、後壁23b及び第1~6仕切壁31a~31fに対して、複数の第2ねじ孔35が形成されている。各第2ねじ孔35は、前壁23a、後壁23b及び第1~6仕切壁31a~31fの四隅にそれぞれ配置されている。ここで、
図3では、4つの第2ねじ孔35のうち、前壁23a、後壁23b及び第1~6仕切壁31a~31fの左右方向に配置された2つの第2ねじ孔35を図示している。ここで、左右方向に配置された第2ねじ孔35同士は、進入口231を挟んで配置されている。また、
図4では、4つの第2ねじ孔35のうち、前壁23a、後壁23b及び第1~3仕切壁31a~31cの上下方向に配置された2つの第2ねじ孔35を図示している。なお、マウントブラケット23に形成される第2ねじ孔35の個数は、船外機ブラケット11に形成される第1ねじ孔11aの個数に応じて適宜設計可能である。また、船外機ブラケット11に対する第1ねじ孔11aの形成を省略することにより、マウントブラケット23に対する第2ねじ孔35の形成を省略することができる。
【0049】
図3に示すように、連結機構25は、上述の第1連結軸25a及び第2連結軸25bの他、第1連結アーム25c、第2連結アーム25d、連結ロッド25e、締結ナット25f、第1ハンドル25g、第2ハンドル25h及び揺動ボール25iによって構成されている。
【0050】
第1連結アーム25cは、固定ブラケット21及びマウントブラケット23の右方に配置されている。第1連結アーム25cは、前後方向及び上下方向に延びる略矩形の板状をなしている。第1連結アーム25cには、第1ロッド孔253と第1長孔254とが形成されている。第1ロッド孔253は、第1連結アーム25cの後部に形成されており、第1連結アーム25cを左右方向に貫通している。第1ロッド孔253は、連結ロッド25eを挿通可能となっている。第1長孔254は、第1連結アーム25cの前部に形成されており、第1連結アーム25cを左右方向に貫通している。第1長孔254は、長手方向、すなわち前後方向に所定の長さに延びており、内部を第1連結軸25aが摺動可能となっている。
【0051】
第2連結アーム25dは、固定ブラケット21及びマウントブラケット23の左方に配置されている。第2連結アーム25dは、第1連結アーム25cと同形状である。これにより、第2連結アーム25dの後部には、連結ロッド25eを挿通可能な第2ロッド孔255が形成されている。また、第1連結アーム25cの前部には、前後方向に延びる第2長孔256が形成されている。第2長孔256は、内部を第2連結軸25bが摺動可能となっている。
【0052】
連結ロッド25eは、軸方向で固定ブラケット21の左右方向よりも長く延びている。連結ロッド25eは、立壁部21aの挿通孔210、第1連結アーム25cの第1ロッド孔253及び第2連結アーム25dの第2ロッド孔255に挿通可能となっている。また、連結ロッド25eには、第3ねじ部257が形成されている。締結ナット25fは、第1連結アーム25cの右方に位置している。締結ナット25fは、第3ねじ部257と螺合可能となっている。
【0053】
第1ハンドル25gは、第1連結アーム25cの右方に位置している。第1ハンドル25gは、第1連結軸25aよりも大径をなす円盤状に形成されている。第1ハンドル25gは、第1連結軸25aの第1ねじ部251と螺合可能となっている。第2ハンドル25hは、第2連結アーム25dの左方に位置している。第1ハンドル25gと同様、第2ハンドル25hも円盤状に形成されている。第2ハンドル25hは、第2連結軸25bの第2ねじ部252と螺合可能となっている。
図4に示すように、揺動ボール25iは、球状をなしている。揺動ボール25iは、第1凹部21cと第2凹部23gとの間、すなわち、固定ブラケット21と支持部21bとマウントブラケット23との間に配置されている。
【0054】
このアウトブラケット13では、連結機構25によって、固定ブラケット21に対してマウントブラケット23が取り付けられている。具体的には、
図3に示すように、マウントブラケット23の右方に第1連結アーム25cを配置しつつ、第1長孔254内に第1連結軸25aを挿通させる。そして、この状態で第1連結アーム25cの右方から第1連結軸25aの第1ねじ部251に第1ハンドル25gを螺合させる。こうして、第1連結軸25aに第1ハンドル25gを取り付ける。
【0055】
同様に、マウントブラケット23の左方に第2連結アーム25dを配置しつつ、第2長孔256内に第2連結軸25bを挿通させる。そして、この状態で第2連結アーム25dの左方から第2連結軸25bの第2ねじ部252に第2ハンドル25hを螺合させる。こうして、第2連結軸25bに第2ハンドル25hを取り付ける。これらにより、マウントブラケット23の左右に第1連結アーム25c及び第2連結アーム25dがそれぞれ連結された状態となる。
【0056】
そして、マウントブラケット23を固定ブラケット21の支持部21bの上方に配置する。この際、支持部21bの第1凹部21cと、マウントブラケット23の第2凹部23gとを上下方向に対向させるとともに、第1凹部21cと第2凹部23gとの間に揺動ボール25iを配置させる。これにより、揺動ボール25iは、第1凹部21cと点接触するとともに、第2凹部23gと点接触する。つまり、揺動ボール25iは、支持部21b及びアウトブラケット13とそれぞれ上下方向で点接触する。
【0057】
また、第1連結アーム25c及び第2連結アーム25dをそれぞれ固定ブラケット21の立壁部21aの左右に配置させるとともに、第1、2ロッド孔253、255と挿通孔210とを左右方向で整合させる。そして、第2連結アーム25d側から第2ロッド孔255、挿通孔210及び第1ロッド孔253の順に連結ロッド25eを挿通し、第1連結アーム25c側から締結ナット25fを第3ねじ部257に螺合させる。これにより、連結ロッド25eが締結ナット25fに締結されて、第1連結アーム25c及び第2連結アーム25dが立壁部21aの左右にそれぞれ連結される。こうして、固定ブラケット21にマウントブラケット23が取り付けられている。
【0058】
ここで、このアウトブラケット13では、連結ロッド25eの軸心を揺動軸心X1として、
図2の破線矢印で示すように、揺動軸心X1周りで第1連結アーム25c及び第2連結アーム25dが立壁部21aに対して上下方向に揺動可能となっている。
【0059】
また、このアウトブラケット13では、
図3及び
図6に示すように、第1、2連結軸25a、25bに対する第1、2ハンドル25g、25hの各取り付けを緩めることにより、つまり、第1、2ねじ部251、252と第1、2ハンドル25g、25hとの各螺合量を少なくすることにより、第1連結アーム25cに対して第1ハンドル25gが右方に離隔するとともに、第2連結アーム25dに対して第2ハンドル25hが左方に離隔する。これにより、第1長孔254の内部を第1連結軸25aが前後方向に摺動することが許容されるとともに、第2長孔256の内部を第2連結軸25bが前後方向に摺動することが許容される。
【0060】
このように、第1、2連結軸25a、25bが第1、2長孔254、256の内部を前後方向に摺動するとともに、揺動軸心X1周りで第1連結アーム25c及び第2連結アーム25dが立壁部21aに対して上下方向に揺動することにより、このアウトブラケット13では、
図2の二点鎖線で示すように、固定ブラケット21に対してマウントブラケット23が前後方向に揺動可能となっている。この際、揺動ボール25iが第1、2凹部21c、23gに点接触しつつ、第1、2凹部21c、23g内を移動する。これにより、揺動ボール25iは、マウントブラケット23を前後方向に好適に揺動させることが可能となっている。
【0061】
一方、第1、2連結軸25a、25bに対する第1、2ハンドル25g、25hの各取り付けを強めることにより、つまり、第1、2ねじ部251、252と第1、2ハンドル25g、25hとの各螺合量を多くすることにより、
図7に示すように、第1連結アーム25cに第1ハンドル25gが当接するとともに、第2連結アーム25dに第2ハンドル25hが当接する。これにより、第1連結アーム25cと第1ハンドル25gとの摩擦により、第1長孔254の内部を第1連結軸25aが前後方向に摺動できなくなる。同様に、第2連結アーム25dと第2ハンドル25hとの摩擦により、第2長孔256の内部を第2連結軸25bが前後方向に摺動できなくなる。この結果、マウントブラケット23は、前後方向の揺動が不可能となる。
【0062】
このように構成された取付構造7では、以下で説明する取付方法によって、船体3の後部に対する船外機5の取り付けを行う。まず初めに、
図5に示すように、クレーン等(図示略)によって船外機5を吊り上げつつ、船外機5を第1~4取付溝33a~33dの上方、ひいては、アウトブラケット13の上方に移動させる。次に、
図6に示すように、第1~4取付溝33a~33dの中から、船外機ブラケット11を進入させる第1~4取付溝33a~33dを一つ選択する。なお、本実施例では、第4取付溝33dを選択した場合を基に説明する。
【0063】
次に、第4取付溝33dと船外機ブラケット11との位置決めを行う。この際、第1、2連結軸25a、25bに対する第1、2ハンドル25g、25hの各取り付けを緩めることにより、マウントブラケット23が前後方向に揺動可能な状態とする。そして、第4取付溝33dと船外機ブラケット11との位置決めが完了することにより、
図5の破線矢印で示すように、第4取付溝33dに向けて船外機5を下降させる。これにより、
図7に示すように、第4取付溝33dに船外機ブラケット11を上方から進入させる。このように、第4取付溝33dに船外機ブラケット11を進入させる過程において、アーム本体9aがマウントブラケット23の進入口231に上方から進入する。
【0064】
そして、第4取付溝33dに船外機ブラケット11の全体が進入し、第4取付溝33dに船外機ブラケット11の全体が収容されることにより、アウトブラケット13に船外機ブラケット11が取り付けられる。なお、アウトブラケット13に対する船外機ブラケット11の取り付けが完了した後には、第1、2連結軸25a、25bに対する第1、2ハンドル25g、25hの各取り付けを強めることにより、マウントブラケット23が前後方向に揺動不可能な状態とする。
【0065】
ここで、この取付構造7では、第4取付溝33dに船外機ブラケット11の全体が収容されることにより、船外機ブラケット11の各第1ねじ孔11aと、マウントブラケット23の各第2ねじ孔35とが整合する。これにより、各第1ねじ孔11a及び各第2ねじ孔35に対して、マウントブラケット23の後壁23b側から第2固定ボルト53をそれぞれ螺合させる。つまり、マウントブラケット23に複数の第2固定ボルト53が設けられる。これらの各第2固定ボルト53は、本発明における「固定具」の一例である。
【0066】
このように、この取付構造7では、複数の第2固定ボルト53によって、第4取付溝33dの内部に船外機ブラケット11を固定する工程を行う。こうして、船体3の後部に対する船外機5の取り付けが完了する。この結果、船舶1では、船外機5の動力によって航行が可能となる。
【0067】
このように、この取付構造7では、第1~4取付溝33a~33dのいずれかに船外機ブラケット11を進入させることにより、アウトブラケット13に対する船外機ブラケット11の取り付け、ひいては、船体3に対する船外機5の取り付けが可能となっている。
【0068】
したがって、実施例の取付構造7によれば、船体3に船外機5を容易に取り付け可能である。
【0069】
特に、この取付構造7では、各第2固定ボルト53によって、第1~4取付溝33a~33dの内部に船外機ブラケット11を固定する。このため、この取付構造7では、第1~4取付溝33a~33dに対する船外機ブラケット11の抜け止めが可能となるため、アウトブラケット13に船外機ブラケット11を強固に取り付けることができる。この結果、船舶1では、航行時の振動や波等の影響を受けても、船体3から船外機5が脱落し難くなっている。
【0070】
また、アウトブラケット13では、連結機構25によってマウントブラケット23が固定ブラケット21に取り付けられることにより、固定ブラケット21に対してマウントブラケット23が前後に揺動可能となっている。これにより、この取付構造7では、第1~4取付溝33a~33dと船外機ブラケット11との位置決めを行うに当たり、クレーン等によって船外機5を移動させるだけでなく、マウントブラケット23についても前後方向に揺動させることができる。このため、この取付構造7では、第1~4取付溝33a~33dと船外機ブラケット11との位置決めを好適に行うことが可能となっている。また、この取付構造7では、第1~4取付溝33a~33dに船外機ブラケット11を進入させる際にもマウントブラケット23が前後方向に揺動することにより、第1~4取付溝33a~33dに船外機ブラケット11を好適に進入させることが可能となっている。これらの点においても、この取付構造7では、船体3に船外機5を容易に取り付けることが可能となっている。
【0071】
さらに、マウントブラケット23において、第1~4取付溝33a~33dは、前後方向に整列して配置されている。これにより、例えば、第1取付溝33aに船外機ブラケット11を取り付けることにより、この取付構造7では、船体3のトランサム3aに最も接近した位置で船外機5を取り付けることが可能となっている。一方、第4取付溝33dに船外機ブラケット11を取り付けることにより、この取付構造7では、トランサム3aから最も離隔した位置で船外機5を取り付けることが可能となっている。
【0072】
このように、この取付構造7では、船外機ブラケット11進入させる第1~4取付溝33a~33dを選択することにより、船体3に対する船外機5の取付位置を船体3の前後方向に調節することが可能となっている。これにより、この取付構造7では、船舶1の用途や操縦者の嗜好等に応じて船外機5による船舶1の推進性能も容易に調整することが可能となっている。
【0073】
また、船外機ブラケット11には、取付構造7以外の取付構造によって、船体3の後部に船外機5が取り付けられる場合には、クランプ具などの固定部材が取り付けられるようになっている。このように、この取付構造7では、専用品としての船外機ブラケット11を船外機5に設ける必要がない。このため、この取付構造7では、船外機5、ひいては船舶1の低コスト化も可能となっている。
【0074】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0075】
例えば、実施例の取付構造7では、マウントブラケット23に対して、第1~4取付溝33a~33dが設けられているが、これに限らず、マウントブラケット23に対して、第1取付溝33aのみが設けられる構成としても良い。また、マウントブラケット23に対して、第1~4取付溝33a~33d以外に取付溝が設けられても良い。
【0076】
さらに、実施例の取付構造7では、連結機構25が上述の第1、2連結軸25a、25b、第1、2連結アーム25c、25d、連結ロッド25e、締結ナット25f、第1、2ハンドル25g、25h及び揺動ボール25iによって構成されている。しかし、これに限らず、連結機構25を他の構成としても良い。
【0077】
また、実施例の取付構造7では、船外機ブラケット11を矩形の板状に形成している。しかし、これに限らず、第1~4取付溝33a~33dに進入しつつ、第1~4取付溝33a~33dに取り付け可能な形状であれば、船外機ブラケット11を他の形状に形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、レジャーボートや漁船等の船舶に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
3…船体
5…船外機
7…取付構造(船外機の取付構造)
11…船外機ブラケット
13…アウトブラケット
21…固定ブラケット
23…マウントブラケット
25…連結機構
33a~33d…第1~4取付溝(取付溝)
53…第2取付ボルト(固定具)