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特開2022-9900心筋応答を増進させるためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009900
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】心筋応答を増進させるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/295 20210101AFI20220106BHJP
   A61M 60/17 20210101ALI20220106BHJP
   A61M 60/497 20210101ALI20220106BHJP
   A61M 60/531 20210101ALI20220106BHJP
   A61M 60/843 20210101ALI20220106BHJP
【FI】
A61M60/295
A61M60/17
A61M60/497
A61M60/531
A61M60/843
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179293
(22)【出願日】2021-11-02
(62)【分割の表示】P 2018553976の分割
【原出願日】2017-02-08
(31)【優先権主張番号】15/099,975
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514215309
【氏名又は名称】ザ ガイ ピー.カーティス アンド フランセス エル.カーティス トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーティス、ガイ ピー.
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD09
4C077EE01
4C077EE05
(57)【要約】
【課題】心筋のポンピング・サイクルにおける前駆出期の間の心筋応答を増進させるためのシステム。
【解決手段】本発明のシステムは、近位端と遠位端とを有するカテーテルと、カテーテル上にその遠位端において取り付けられた、カテーテルの遠位端がポンピング・チャンバに挿入されているときに心筋のポンピング・チャンバ内の血液の圧力を測定するための圧力トランスデューサと、カテーテル上にその遠位端において取り付けられ、完全に膨張したときに2cc~7ccの範囲の体積を有する、膨張可能バルーンと、膨張可能バルーンと流体連通してカテーテルの近位端に連結されているポンプと、圧力トランスデューサ及びポンプに接続されたコンピュータとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心筋のポンピング・サイクルにおける前駆出期の間の心筋応答を増進させるためのシステムであって、
近位端と遠位端とを有するカテーテルと、
前記カテーテル上にその前記遠位端において取り付けられた、前記カテーテルの前記遠位端がポンピング・チャンバに挿入されているときに前記心筋の前記ポンピング・チャンバ内の血液の圧力を測定するための圧力トランスデューサと、
前記カテーテル上にその前記遠位端において取り付けられ、完全に膨張したときに2cc~7ccの範囲の体積を有する、膨張可能バルーンと、
前記膨張可能バルーンと流体連通して前記カテーテルの前記近位端に連結されているポンプと、
前記圧力トランスデューサ及び前記ポンプに接続されたコンピュータであって、前記前駆出期の後における心筋の直列弾性要素によるその後の前記ポンピング・チャンバからの血液の駆出の準備のために、前記心筋の収縮要素を支援して前記ポンピング・チャンバ内の等尺性圧力を生じさせるように、前記圧力トランスデューサからの所定の信号に応答して前記ポンプを作動させ、前記ポンピング・チャンバが等容である前記前駆出期の所定の時間間隔Δtの間に、前記膨張可能バルーンを完全に膨張させて流体の所定の体積だけ前記ポンピング・チャンバ内の流体体積を増加させる、コンピュータと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記膨張可能バルーンは、コンプライアント材料から作られる、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、心筋機能を増進させるためのシステム及び方法に関する。より詳細には、本発明は、心臓の左心室のポンピング動作を増進させるシステム及び方法に関する。本発明は、特に、排他的ではないが、心臓ポンピング・サイクルの前駆出期の間の左心室のポンピング・チャンバ内部の等尺性圧力(isometric pressure)を機械的に補うことで心筋機能を増進させ、それによってチャンバから血液を駆出する心臓の能力を増進させることに有用である。
【背景技術】
【0002】
通常約500ミリ秒間続く心筋の1ポンピング・サイクルの間、心臓のポンピング・チャンバ(すなわち左心室)が完全に密閉される期がある。前駆出期として知られるこの期では、チャンバは血液で満たされ、チャンバの入口弁も出口弁も閉じている。したがって、約10ミリ秒間続く前駆出期の間、チャンバ(左心室)は、本質的に等容状態になる。
【0003】
解剖学的に、心筋は、前駆出期の間、根本的に異なる2つの目的のためにチャンバ内部の血液に圧力を掛ける。1つの目的は、まず、チャンバ内部の圧力を、左心室の出口弁が開くポイントまで上昇させることである。本質的に、これは、前駆出期の間にチャンバ内部の血液に等尺性圧力を掛けることになる心筋の収縮要素によって行われる。もう1つの目的は、チャンバの出口弁が開いた後の前駆出期後にチャンバから血液を駆出することである。この血液の駆出は、チャンバから開いた出口弁を通って血液を効果的に押し出すように縮む心筋の直列弾性要素によって行われる。
【0004】
機械的な観点から、それらは、前駆出期の間、必ずいくらかオーバーラップするはずなので、心筋の収縮要素と直列弾性要素の組み合わさった動作が二重になる。それと相前後して、収縮要素が、まず、血液に等尺性圧力を掛ける。これは、次に来る、直列弾性要素によるチャンバからの血液のより効果的な駆出の準備である。この組み合わせにおいて、2つの機能の間には、最も効果的な心筋収縮をもたらすバランスがある。重要なことには、このバランスは、前駆出期の間に確立されその間中維持される必要がある。
【0005】
前駆出期は、チャンバの入口弁と出口弁の両方が閉じられておりチャンバ内部の血液の等尺性圧力が開始するときに始まる。それは、前駆出期の開始の特徴である、等尺性圧力の突然の急激な上昇である。計量的な見地から、前駆出期の開始のときの圧力の突然の急激な上昇は、圧力の不連続性として検出することができる。動作的には、この圧力不連続性は、前駆出期の間の心機能を増進させる機械的な技法を用いるための開始点として使用することができる。
【0006】
いくつもの異なる理由から生じ得る機能が弱った心臓において、前駆出期の間に等尺性圧力を掛ける心臓の能力は、その効率を下げる一番の機能である。心臓のポンピング・チャンバへの力の適用が結果的にアンバランスなることは、心機能に悪影響を与える。したがって、チャンバの出口弁を開けるのに必要な等尺性圧力と、チャンバからの血液の実際の駆出に必要な力の提供との間の動作的なバランスを維持する必要性は、効率的な心臓の動作に不可欠である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を考慮して、本発明の1つ目的は、前駆出期の間の心臓のポンピング・チャンバにおける等尺性圧力と、心臓におけるポンピング・チャンバから血液を駆出するその後の力との間のバランスを確立し維持する心筋機能を増進させるためのシステム及び方法を提供することである。本発明の別の目的は、心筋のポンピング・サイクルの前駆出期の間の心筋の収縮準備を機械的に援助することによって心筋機能を増進させるためのシステム及び方法を提供することである。本発明のさらに別の目的は、製造しやすく、使用が簡単であり、比較的費用対効果の高い、心筋機能を増進させるためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、心筋機能を増進させるためのシステム及び方法が提供される。具体的には、システムは、心筋のポンピング・サイクルの前駆出期の間の左心室のポンピング・チャンバ(すなわち、チャンバ)内部の血液における等尺性圧力を補うシステムが提供される。動作的には、これは、後でチャンバから血液を駆出する心臓の能力の効率を向上させるために行われる。本発明の意図として、チャンバ内部のこの等尺性圧力の補足は、心筋サイクルの継続の間、絶えず繰り返しもたらされることになる。さらに、これは、担当医によって必要であると判断される限り、継続されることになる。本発明について考えられるように、その使用は、集中治療室(ICU)又はカテーテル検査室(Cath Lab)において主に使用される。
【0009】
構造的には、本発明によるシステムは、流体デバイスと圧力トランスデューサとを含むカテーテルを含む。流体デバイス及びトランスデューサはともにカテーテルの遠位端に取り付けられる。システムは、カテーテルの近位端に連結される流体ポンプをも含む。重要なことには、ポンプは、流体デバイスと流体連通して、カテーテルに連結されている。ポンプ及び圧力トランスデューサの両方に接続されるコンピュータも含まれる。
【0010】
本発明の目的のため、流体デバイスは、好ましくは、コンプライアント材料から作られた膨張可能バルーンであり、膨張可能バルーンは、完全に膨張されたときに2ccから7ccのおよその範囲内の膨張体積を有する。バルーンの膨張及び収縮には、溶液(例えば、生理食塩水)が使用される。本発明の場合、バルーンの膨張及び収縮は、コンピュータ制御動作で行われる。本発明の他の構成要素である圧力トランスデューサは、好ましくは、関連技術で周知のタイプの、例えばMillar Mikro-Tip(登録商標)圧力トランスデューサである。
【0011】
本発明の一代替実施例では、膨張可能バルーンの代わりに、流体デバイスは、注入チューブとすることができる。この代替実施例の場合、注入チューブは、エンド・キャップ付きで形成される細長い中空針である。針の長さに沿って、複数の側面ポートが形成されており、好ましい実施例と同様に、注入チューブからの流体の注入は(バルーンの膨張のように)、コンピュータ制御動作で行われる。
【0012】
本発明の動作について、カテーテルの遠位端は、流体デバイス(膨張可能バルーンか注入チューブのどちらか)及び圧力トランスデューサとともに、心臓のポンピング・チャンバ内に挿入される。好ましい実施例の場合、バルーンは最初はつぶれている。そして、圧力トランスデューサと接続しているコンピュータが、チャンバ内の血液の圧力を監視する。前駆出期の開始を示す、圧力トランスデューサからの所定の信号に応答して、コンピュータがポンプを作動させ、それによってバルーンが加圧される、又は注入チューブから流体が放出される。具体的には、圧力トランスデューサからの所定の信号は、心臓ポンピング・サイクルの前駆出期の開始の特徴である、ポンピング・チャンバ内の血液に掛かる圧力の突然の急激な自然な上昇である。上述したように、前駆出期において、心臓のポンピング・チャンバは、本質的に、等容のままである。
【0013】
本発明の好ましい実施例の場合、コンピュータは、圧力トランスデューサから信号を受信するやいなや、バルーンの加圧を開始し、それは少なくとも所定の時間間隔Δtの間継続される。ポンピング・チャンバは、前駆出期の間、すなわち時間間隔Δtの間、等容にあるので、バルーンは、ポンピング・チャンバ内の血液に等尺性力を掛けることになる。具体的には、これは、前駆出期の間にチャンバ内に自然と起こる等尺性圧力を補うために行われる。結局、補足される等尺性圧力が特定の圧力レベルに達すると、心臓のポンピング・チャンバの出口弁が開き、血液がチャンバから駆出され始める。したがって、前駆出期の終わりでは、バルーンは収縮することができる。
【0014】
上述したように、本発明の好ましい一実施例についてのコンピュータ制御動作の動作シーケンスは、1)チャンバ内の血液に掛かる圧力を監視することと、2)所定の信号に応答してバルーンを加圧することと、3)チャンバからの血液の駆出前においてバルーン内の圧力を維持することと、4)ポンプからの血液の駆出開始後にバルーンを収縮させることと、を含む。このサイクルは、その後、繰り返され得る。実際は、動作シーケンスは、心筋機能を増進させるのに必要なだけ繰り返され得る。
【0015】
本発明の代替実施例の場合、コンピュータは、所定の信号を圧力トランスデューサから受信すると、ポンプに、注入チューブから所定の量の流体を心筋のポンピング・チャンバ内に直接注入させる。好ましい実施例と同様に、この流体の注入は、心臓の前駆出期の開始のときに行われる。
【0016】
本発明の新規な特徴及び本発明自体は、その構造及びその動作の両方に関して、添付の説明と併せて、同様の参照文字が同様の部分を指す添付の図面から、最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】所期の手術環境に示されている、本発明のシステムの概略図である。
図2】本発明によるカテーテルの遠位先端の平面図である。
図3図2の線3-3に沿ったカテーテルの断面図である。
図4】心筋ポンピング・サイクルの前駆出期の間における体積と圧力の変化を示す、バルーン体積及びバルーン圧力の時間グラフである。
図5A】カテーテルが心臓の左心室のポンピング・チャンバに挿入され、心筋のポンピング・サイクルの前駆出期の間にそのポンピング・チャンバ内で等尺性圧力を生成しているときの、カテーテルの遠位先端の図である。
図5B】心筋のポンピング・サイクルの前駆出期後の、図5Aに示されるカテーテルの遠位先端の図である。
図6】エンド・キャップと複数の側面流体放出ポートとを有する中空針が、心筋のポンピング・サイクルの前駆出期の間に流体を左心室に注入することに使用される、心臓の左心室内に位置決めされているカテーテルの遠位先端の一代替実施例の図である。
図7】本発明の臨床使用の間におけるコンピュータの動作の論理フロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
初めに、図1を参照すると、本発明による心筋応答を増進させるためのシステムが全体的に10で示されている。図示のように、システム10は、コンピュータ12と、ポンプ14と、カテーテル16とを含む。さらに、カテーテル16の近位端20には、コンピュータ12及びポンプ14をカテーテル16に連結するためのコネクタ18が設けられている。
【0019】
図2に全体的に示されるように、カテーテル16の遠位端22は、膨張可能バルーン24と、圧力トランスデューサ26とを含む。本発明の場合、バルーン24は、ノンコンプライアント材料か、好ましくはコンプライアント材料のどちらかから作られ得る。さらに、バルーン24の体積は、完全に膨張されたときに2ccから7ccの範囲内となる。図2は、さらに、カテーテル16の遠位端22に圧力トランスデューサ26が配置されていることを示している。システム10の場合、圧力トランスデューサ26は、Millar Mikro-Tip(登録商標)圧力トランスデューサのような、流体の圧力を検出することができるタイプのものである。
【0020】
システム10についての構成要素の組み合わせにおいて、バルーン24は、カテーテル16のルーメン28を介してポンプ14と流体連通するように連結されている(図3参照)。さらに、圧力トランスデューサ26は、カテーテル16に含まれるワイヤ30を介してコンピュータ12に電気的に接続されている(やはり図3参照)。それに加えて、コンピュータ12は、ポンプ14に電気的に接続されていることに留意されたい。
【0021】
システム10の動作について、カテーテル16の遠位端22は、患者34の心筋32の左心室に挿入される。図4を参照すると、バルーン24の膨張体積及び圧力トランスデューサ26によって検出される血液の圧力の両方は、同時に検出され、コンピュータ12によってそれぞれ制御/監視されると理解されたい。当然のことながら、これらすべては、カテーテル16の遠位端22が心筋32の左心室内に位置決めされている間に行われる。カテーテル16の遠位端22がそのように位置決めされた状態で、コンピュータ12による患者34の心機能の制御及び監視は、心筋32によるポンピング・サイクルの長期の遷移にわたって継続されると考えられよう。
【0022】
上記を考慮して図4を参照すると、図面には、時間の関数としてバルーン24の体積の変化を示すグラフ線36が示されている。図4は、さらに、時間の関数としての、圧力トランスデューサ26により感知された圧力の変化を示すグラフ線38を含む。図面には、時間間隔Δtの間の、心筋32サイクルの前駆出期に対する、バルーンの体積変化(線36)及び圧力変化(線38)が一緒に示されている。典型的には、Δtは、約10ミリ秒(Δt=10ミリ秒)間続く。この文脈において、心筋32についての完全な1ポンピング・サイクルは、約500ミリ秒間続く。
【0023】
図4を参照すると、心筋32の前駆出期の所定の間隔Δtは、時間tから始まり、時間tで終わることが分かるであろう。重要なことは、Δtの間、ポンピング・チャンバ40は、血液で満たされており、密閉されている(すなわち流体密にある)ことである。さらに、tで、心筋32は、収縮し始め、自然に、ポンピング・チャンバ40内部の血液に等尺性圧力を掛けるということが起こる。
【0024】
時間tから始まるポンピング・チャンバ40内部の血液に掛かる等尺性圧力によって、ポンピング・チャンバ40内部の圧力の急激な上昇が起こることが、本発明の重要な態様である(図4の線38参照)。この圧力は、圧力トランスデューサ26によって感知され、圧力の上昇は、所定の信号としてコンピュータ12に送信され、それによってポンプ14が作動されてバルーン24が膨張される。ポンプ14の作動により、バルーン24’の体積増加も非常に迅速になる(図4の線36及び図5Aのバルーン24’参照)。こうして、収縮しているバルーン24’(図5A)から完全に膨張したバルーン24(図5B)への移行は、ほぼ瞬時に行われる。この結果、前駆出期の時間間隔Δtの間、バルーン24’-24に対するポンプ14からの圧力は、追加の等尺性圧力を生成し、それがポンピング・チャンバ40内部の血液に対する心筋32からの自然な等尺性圧力を補う。
【0025】
前駆出期の終わりの時間tにおいて、ポンピング・チャンバ40からの出口弁(図示せず)が開く。次いで、血液が、心筋32によってポンピング・チャンバ40から駆出される。さらに、時間tにおいて、血液がポンピング・チャンバ40から駆出されると、バルーン24’は、それ以上拘束されなくなり、図5Bに見られるように完全に膨張されるようになる。図4の線36によって示されるように、前駆出期がtで終わった後しばらくたって、バルーン24は、時間tで収縮する。そして、このプロセス全体が、次の心臓ポンピング・サイクルにおいて、前駆出期の間に繰り返される。
【0026】
システム10の一代替実施例の場合、前駆出期の時間Δtの間、心筋32のポンピング・チャンバ40内部の等尺性圧力を増加させることに、バルーン24の代わりに、図6に全体的に60で示される注入チューブが使用される。構造的には、注入チューブ60は、本質的に、遠位端にエンド・キャップ64を有する中空針62を含む。それに加えて、中空針62は、中空針62の長さに沿って位置決めされている、中空針62から流体を放出するための複数の側面ポート66付きで形成される。
【0027】
本発明の代替実施例の動作では、時間tにおいて、圧力トランスデューサ26からコンピュータ12への所定の信号によって、ポンプ14が作動されて流体が注入チューブ60から心筋32のポンピング・チャンバ40内へと注入される。システム10によるこの動作は、上記で開示された膨張可能バルーン24の場合と類似しており、ある流体体積をポンピング・チャンバ40へと導入し、等尺性圧力を補足的に増加させる。本発明について考えられるように、注入される流体の体積は、典型的には、2ccから7ccの範囲内となる。実際、代替実施例(すなわち、流体注入)の場合、Δtの間、図4に示される体積及び圧力の変化は、上記で開示された好ましい実施例(すなわち、バルーン膨張)と本質的に同じである。
【0028】
代替実施例の場合、使用される注入流体68は、標準的な生理食塩水、血漿又は低張液のいずれかであってよい。医療有資格者には周知のように、各可能な流体68は、「プロ(pro)」及び「コン(con)」特性を有する。しかし、どちらの場合も、前駆出期の時間Δtの間に注入されるべき流体68の量は、約2ccとなる。したがって、使用する流体68に応じて、心臓ポンピング・サイクルの2回に1度の間だけ、又は心臓ポンピング・サイクルの3回若しくは4回に1度の間だけ、流体68を注入チューブ60から注入する必要があり得る。
【0029】
システム10の動作は、図7に示される論理フロー・チャート42を参照すると最もよく理解されるであろう。図7において、動作ブロック44は、システム10の動作には心筋32のポンピング・チャンバ40内部の血液に掛かる圧力の監視が必要であることを示している。実際には、動作は、各サイクルが、圧力トランスデューサ26がポンピング・チャンバ40内部の血液に掛かる圧力の急激な突然の上昇を感知した時間tから始まるかたちで、自然に循環する。機械的な観点から、この圧力上昇(すなわち、圧力の不連続性)は、ポンピング・チャンバ40が血液で満たされ、ポンピング・チャンバ40の入口弁(図示せず)も出口弁(図示せず)も閉じている時間tに起こる。tでこの状況に心筋32があるとき、心筋32は、収縮しようとしてポンピング・チャンバ40内部の血液に等尺性圧力を掛ける。調査ブロック46によって示されるように、tにおけるこの圧力上昇によって、圧力トランスデューサ26からコンピュータ12に信号が送られる。その信号に応答して、動作ブロック48に示されるように、コンピュータ12がポンプ14を作動させ、それによって前駆出期の間にバルーン24が膨張される。
【0030】
時間t、すなわち前駆出期の終わりに、バルーン24からの等尺性圧力によって補われた心筋32からの等尺性圧力によって、心筋32の出口弁(図示せず)が開く。そして、血液がポンピング・チャンバ40から駆出される。次いで、調査ブロック50が、コンピュータ12に、バルーン24の収縮を指示する(動作ブロック52参照)。本発明について考えられるように、システム10の動作は、心臓ポンピング・サイクルの遷移の間、担当臨床医によって決定される延長期間、繰り返される。
【0031】
本明細書に詳細に示される及び開示される心筋応答を増進させるための特定のシステム及び方法は、目的を達成すること及び本明細書に以前に記載した利点を提供することが十分に可能であるが、それは、本発明の現在好ましい実施例の例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲に記載される以外、本明細書に示される構成又は設計の詳細に対する制限は意図されないことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7