(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099005
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイスおよび核酸増幅方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220627BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220627BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20220627BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12Q1/6844 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212728
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】田邊 英樹
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029BB20
4B029FA15
4B029HA09
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QS25
4B063QS39
(57)【要約】
【課題】出発物質に不良がある場合の悪影響を低減するマイクロ流体デバイスを提供する。
【解決手段】核酸を増幅するためのマイクロ流体デバイス100は、カートリッジ1と、制御部14と、を備え、カートリッジ1は、タンク部15と、複数の第1チャンバ21と、を有し、制御部14は、熱サイクルの実施を制御し、熱サイクルの繰り返し回数を複数の第1チャンバ毎にカウントし、カウント値を記憶し、熱サイクル毎に複数の第1チャンバそれぞれの蛍光強度を取得し、蛍光強度が所定範囲内にない不良チャンバのカウント値をリセットし、不良チャンバから溶液を吐出し、不良チャンバにタンク部から新たな溶液を充填する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を増幅するためのマイクロ流体デバイスであって、
前記核酸を含む溶液を貯めるカートリッジと、
前記カートリッジを制御する制御部と、を備え、
前記カートリッジは、
前記溶液を貯めるタンク部と、
前記タンク部からの溶液を保持する複数の第1チャンバと、を有し、
前記制御部は、
前記複数の第1チャンバの温度を変化させる熱サイクルの実施を制御し、
前記熱サイクルの繰り返し回数を前記複数の第1チャンバ毎にカウントし、カウント値を記憶し、
前記熱サイクル毎に前記複数の第1チャンバそれぞれの蛍光強度を取得し、
取得した前記複数の第1チャンバそれぞれの蛍光強度が、繰り返し回数毎に予め定められた所定範囲内であるか否かを判定し、
蛍光強度が前記所定範囲内にないと判定した場合、当該第1チャンバを不良チャンバと判定し、
前記不良チャンバのカウント値をリセットし、前記不良チャンバから溶液を吐出し、前記不良チャンバに前記タンク部から新たな溶液を充填する、
マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記カートリッジは、
前記複数の第1チャンバと対応する複数の第1ヒータを有する、
請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記カートリッジは、
前記タンク部と前記複数の第1チャンバとを接続する複数の流路部を有し、
前記複数の第1チャンバのそれぞれは、
前記流路部に接続される第1開口と、
第1チャンバに保持された溶液吐出するための第2開口と、を有し、
前記制御部は、前記不良チャンバに対応する前記第1ヒータにより前記不良チャンバ内の溶液にバブルを発生させ、当該バブルの発生によって前記不良チャンバの溶液と前記第2開口から吐出させ、かつ、前記タンク部から前記流路部および前記第1開口を介して前記不良チャンバへの新たな溶液を充填させる
請求項2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記カートリッジは、
前記複数の第1チャンバに対応する複数の第1温度センサを有し、
前記制御部は、前記熱サイクルにおいて前記複数の第1温度センサから温度を示すデータを取得し、前記複数の第1チャンバ毎の温度を管理する
請求項2または3に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記カートリッジは、サーマルヘッド部を有し、
前記サーマルヘッド部は、半導体基板と、前記半導体基板に貼り合わされるヘッドフィルムと、を有し、
前記半導体基板は、前記第1ヒータ、前記流路部とを有し、
前記第1チャンバおよび前記流路部は、前記半導体基板と前記ヘッドフィルムとを貼り合せてできる空隙として形成される
請求項3に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記半導体基板は、基板ヒータを有する
請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記カートリッジは、
複数の第2チャンバと、
前記複数の第2チャンバに対応する複数の第2ヒータと、を有し、
前記複数の第2チャンバのそれぞれは、前記流路部の途中の位置であって、前記タンク部と前記流路部との接続部と、前記第1チャンバの第1開口との間の位置に設けられる
請求項3に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記制御部は、
前記不良チャンバに前記流路部を介して接続される第2チャンバの溶液を、前記不良チャンバを介して吐出し、当該第2チャンバに前記タンク部から新たな溶液を充填する、
請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記第2チャンバの容積は、前記第1チャンバの容積よりも大きい
請求項7または8に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記カートリッジは、
前記複数の第2チャンバに対応する複数の第2温度センサを有し、
前記制御部は、前記熱サイクルにおいて前記複数の第2温度センサから温度を示すデータを取得し、前記複数の第2チャンバ毎の温度を管理する
請求項7~9の何れか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記カートリッジは、
前記サーマルヘッド部を冷却するための放熱フィンを有する
請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
前記カートリッジは、
前記放熱フィンを冷却するためのファンを有する
請求項11に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
前記カートリッジは、
前記放熱フィンを冷却するための電子冷却素子を有する
請求項11または12に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
前記カートリッジは、
前記タンク部と前記サーマルヘッド部との境界面に挿入され、かつ、前記放熱フィンに熱を伝導するための針状の熱伝導部材を有する
請求項11~13の何れか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
さらに、前記複数の第1チャンバを覆うキャップを有する
請求項1~14の何れか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項16】
さらに、前記不良チャンバから吐出される溶液を受け取る廃液トレイを有する
請求項1~15の何れか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項17】
さらに、所定回数の熱サイクルの終了後に、前記不良チャンバを除く第1チャンバから吐出される溶液を受け取る複数のウェルを持つプレートを有する
請求項1~16の何れか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項18】
さらに、前記カートリッジを、少なくとも1次元的に移動させる移動制御部を有する
請求項1~17の何れか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項19】
マイクロ流体デバイスにおける核酸増幅方法であって、
前記マイクロ流体デバイスは、
前記核酸を含む溶液を貯めるカートリッジと、
前記カートリッジを制御する制御部と、を備え、
前記カートリッジは、
前記溶液を貯めるタンク部と、
前記タンク部からの溶液を保持する複数の第1チャンバと、を有し、
前記核酸増幅方法において、
前記複数の第1チャンバの温度を変化させる熱サイクルを制御し、
前記熱サイクルの繰り返し回数を前記複数の第1チャンバ毎にカウントし、カウント値を記憶し、
前記熱サイクル毎に前記複数の第1チャンバそれぞれの蛍光強度を取得し、
取得した前記複数の第1チャンバそれぞれの蛍光強度が、繰り返し回数毎に予め定められた所定範囲内であるか否かを判定し、
蛍光強度が前記所定範囲内にないと判定した場合、当該第1チャンバを不良チャンバと判定し、
前記不良チャンバのカウント値をリセットし、前記不良チャンバから溶液を吐出し、前記不良チャンバに前記タンク部から新たな溶液を充填する、
核酸増幅方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイスおよび核酸増幅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸を増幅する手法のひとつとして、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)がある。PCRは検査ターゲットに定められたDNAの断片を、適合するプライマーや、酵素などの専用薬品と混ぜ合わせ、PCR検査機の中で加熱と冷却とを含む熱サイクルを繰り返し、対象となるDNAサンプルの特定領域を増幅する手法である。最近ではDNAが指数関数的に増加する過程での反応を直接蛍光観測することで解析するqPCR(定量PCR ; quantitative PCR),Real-time PCRという方法も利用されている。このような、PCRのための装置および方法は、例えば特許文献1から3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000-511435号公報
【特許文献2】特表2018-512882号公報
【特許文献3】特表2017-510796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、背景技術によれば、qPCRにおいて、出発物質に不良がある場合、例えば、出発物質中の検査ターゲットとしてのDNA断片が想定値よりも少ない場合、出発物質が想定値通りにある場合に比べて、DNA増幅に対する蛍光強度が弱くなり所望の結果が得られず、結果に悪影響する。悪影響は、例えば、本来は得られる量のDNA断片を得られなくないという問題が生じる。
【0005】
出発物質の不良には、このような、検査ターゲットとしてのDNA断片の量的な不良以外に、質的な不良も生じ得る。質的な不良は、想定しているDNA断片と異なる箇所のDNA断片が含まれる場合などである。この場合も、本来は得られるはずのDNA断片が得られないという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、出発物質に不良がある場合の悪影響を低減するマイクロ流体デバイスおよび核酸増幅方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るマイクロ流体デバイスは、核酸を増幅するためのマイクロ流体デバイスであって、前記核酸を含む溶液(30)を貯めるカートリッジ(1)と、前記カートリッジを制御する制御部(14)と、を備え、前記カートリッジ(1)は、前記溶液(30)を貯めるタンク部(15)と、前記タンク部(15)からの溶液(30)を保持する複数の第1チャンバ(21)と、を有し、前記制御部(14)は、前記複数の第1チャンバ(21)の温度を変化させる熱サイクルの実施を制御し、前記熱サイクルの繰り返し回数を前記複数の第1チャンバ毎にカウントし、カウント値を記憶し、前記熱サイクル毎に前記複数の第1チャンバそれぞれの蛍光強度を取得し、取得した前記複数の第1チャンバ(21)それぞれの蛍光強度が、繰り返し回数毎に予め定められた所定範囲内であるか否かを判定し、蛍光強度が前記所定範囲内にないと判定した場合、当該第1チャンバ(21)を不良チャンバと判定し、前記不良チャンバのカウント値をリセットし、前記不良チャンバから溶液を吐出し、前記不良チャンバに前記タンク部から新たな溶液を充填する。
【0008】
これによれば、第1チャンバ21に保持される溶液に含まれる出発物質に量的な不良または質的な不良が存在する場合の悪影響を低減することができる。言い換えれば、出発物質に量的な不良または質的な不良が存在する場合には、制御部(14)が不良チャンバを判別して、不良チャンバの溶液を新しい溶液に入れ替える。つまり、出発物質に量的な不良または質的な不良が存在する第1チャンバ(21)は、新たな溶液で熱サイクルを新たに開始する。それゆえ、複数の第1チャンバ(21)の、悪影響を与える第1チェンバーを0にする、または、減少させることができる。
【0009】
例えば、前記カートリッジ(1)は、前記複数の第1チャンバ(21)と対応する複数の第1ヒータ(24)を有していてもよい。
【0010】
これによれば、1つの第1チャンバ(21)に1つの第1ヒータ(24)が対応するので、熱サイクルにおいて第1チャンバ(21)を加熱して目標温度に到達するまでの時間を短縮することができ、熱サイクルに要するトータルの時間を短縮することができる。
【0011】
例えば、前記カートリッジ(1)は、前記タンク部(15)と前記複数の第1チャンバ(21)とを接続する複数の流路部(20)を有し、前記複数の第1チャンバ(21)のそれぞれは、前記流路部(20)に接続される第1開口(21b)と、第1チャンバ(21)に保持された溶液吐出するための第2開口(21a)と、を有し前記制御部(14)は、前記不良チャンバに対応する前記第1ヒータ(24)により前記不良チャンバ内の溶液にバブルを発生させ、当該バブルの発生によって前記不良チャンバの溶液と前記第2開口から吐出させ、かつ、前記タンク部(15)から前記流路部(20)および前記第1開口(21a)を介して前記不良チャンバへの新たな溶液を充填させてもよい。
【0012】
これによれば、第1ヒータ(24)と第1チャンバ(21)との組は、次の2つの機能を兼用することができる。1つは、熱サイクルにおいて,対応する第1チャンバ(21)の溶液を加熱することである。他の1つは、不良チャンバの溶液を吐出し、かつ、不良チャンバに新たな溶液を充填することである。
【0013】
例えば、前記カートリッジ(1)は、前記複数の第1チャンバ(21)に対応する複数の第1温度センサ(25)を有し、前記制御部(14)は、前記熱サイクルにおいて前記複数の第1温度センサ(25)から温度を示すデータを取得し、前記複数の第1チャンバ(21)毎の温度を管理してもよい。
【0014】
これによれば、第1チャンバ(21)毎に熱サイクルにおける温度制御の速度および精度を向上させることができる。
【0015】
例えば、前記カートリッジ(1)は、サーマルヘッド部(16)を有し、前記サーマルヘッド部(16)は、半導体基板(17)と、前記半導体基板(17)に貼り合わされるヘッドフィルム(18)と、を有し、前記半導体基板(17)は、前記第1ヒータ(24)、前記流路部(20)とを有し、前記第1チャンバ(21)および前記流路部(20)は、前記半導体基板(17)と前記ヘッドフィルム(18)とを貼り合せてできる空隙として形成されてもよい。
【0016】
これによれば、カートリッジ(1)は、サーマル方式のインクジェットプリンターのカートリッジと同様の構成なので、製造コストを低減し、第1チャンバ(21)に対してピコリットルからマイクロリットルオーダーで溶液を吐出および充填することが容易にできる。
【0017】
例えば、前記半導体基板(17)は、基板ヒータ(23)を有していてもよい。
【0018】
これによれば、半導体基板(17)を加熱することにより、前記複数の第1チャンバ(21)を周囲からも加熱できるので、熱サイクルにおいて溶液を加熱して目標温度に到達するまでの時間を短縮することができ、熱サイクルに要するトータルの時間を短縮することができる。
【0019】
例えば、前記カートリッジ(1)は、複数の第2チャンバ(22)と、前記複数の第2チャンバ(22)に対応する複数の第2ヒータ(26)と、を有し、前記複数の第2チャンバ(22)のそれぞれは、前記流路部(20)の途中の位置であって、前記タンク部(15)と前記流路部(20)との接続部と、前記第1チャンバ(21)の第1開口(21a)との間の位置に設けられてもよい。
【0020】
これによれば、前記複数の第1チャンバ(21)と同様に前記複数の第2チャンバ(22)も熱サイクルを実施されるので、熱サイクルの対象となる溶液の量を、例えば2倍以上に増大させることができる。
【0021】
例えば、前記制御部(14)は、前記不良チャンバに前記流路部(20)を介して接続される第2チャンバ(22)の溶液を、前記不良チャンバを介して吐出し、当該第2チャンバ(22)に前記ンク部(15)から新たな溶液を充填してもよい。
【0022】
これによれば、不良チャンバに接続されたる第2チャンバ(22)も、新たな溶液で熱サイクルを新たに開始するので、例えば、前記第2チャンバ(22)の容積は、前記第1チャンバ(21)の容積よりも大きくてもよい。
【0023】
これによれば、処理対象および処理結果の溶液量を大きく増加させることができる。
【0024】
例えば、前記カートリッジ(1)は、前記複数の第2チャンバ(22)に対応する複数の第2温度センサ(27)を有し、前記制御部(14)は、前記熱サイクルにおいて前記複数の第2温度センサ(27)から温度を示すデータを取得し、前記複数の第2チャンバ(27)毎の温度を管理してもよい。
【0025】
これによれば、第2チャンバ(22)毎に熱サイクルにおける温度制御の速度および精度を向上させることができる。
【0026】
例えば、前記カートリッジ(1)は、前記サーマルヘッド部(16)を冷却するための放熱フィン(34)を有していてもよい。
【0027】
これによれば、熱サイクルにおいて第1チャンバ(21)を冷却して目標温度に到達するまでの時間を短縮することができ、熱サイクルに要するトータルの時間をさらに短縮することができる。
【0028】
例えば、前記カートリッジ(1)は、前記放熱フィン(34)を冷却するためのファン(37)を有していてもよい。
【0029】
これによれば、冷却効率を高めることができ、その結果、熱サイクルに要するトータルの時間をさらに短縮することができる。
【0030】
例えば、前記カートリッジ(1)は、前記放熱フィン(34)を冷却するための電子冷却素子(35)を有していてもよい。
【0031】
これによれば、冷却効率を高めることができ、その結果、熱サイクルに要するトータルの時間をさらに短縮することができる。
【0032】
例えば、前記カートリッジ(1)は、前記タンク部(15)と前記サーマルヘッド部16との境界面に挿入され、かつ、前記放熱フィン(34)に熱を伝導するための針状の熱伝導部材(36)を有していてもよい。
【0033】
これによれば、冷却効率をさらに高めることができ、その結果、熱サイクルに要するトータルの時間を大きく短縮することができる。
【0034】
例えば、さらに、前記複数の第1チャンバ(21)を覆うキャップ(10)を有していてもよい。
【0035】
これによれば、前記複数の第1チャンバ(21)の開口から溶液が自然乾燥することを防止または抑制することができる。
【0036】
例えば、さらに、前記不良チャンバから吐出される溶液を受け取る廃液トレイ(11)を有していてもよい。
【0037】
これによれば、前記不良チャンバから吐出される溶液を適切に破棄することができる。
【0038】
例えば、さらに、所定回数の熱サイクルの終了後に、前記不良チャンバを除く第1チャンバ(21)から吐出される溶液を受け取る複数のウェルを持つプレートを有していてもよい。
【0039】
これによれば、複数の第1チャンバ21のうち、不良でない第1チャンバ21の溶液をプレートの複数のウェルに分注することができる。
【0040】
例えば、さらに、前記カートリッジ(1)を、少なくとも1次元的に移動させる移動制御部を有していてもよい。
【0041】
これによれば、カートリッジ(1)を、自由に移動させることができる。例えば、1次元的に配置された、キャップ(10)、廃液トレイ(11)、プレート(12)、光源(5)、受光センサ(6)等のそれぞれの位置にカートリッジ(1)を移動させることができる。
【0042】
また、本発明の一態様に係る核酸増幅方法は、マイクロ流体デバイスにおける核酸増幅方法であって、前記マイクロ流体デバイス(100)は、前記核酸を含む溶液(30)を貯めるカートリッジ(1)と、前記カートリッジを制御する制御部(14)と、を備え、前記カートリッジ(1)は、前記溶液(30)を貯めるタンク部(15)と、前記タンク部(15)からの溶液(30)を保持する複数の第1チャンバ(21)と、を有し、前記核酸増幅方法において、前記複数の第1チャンバ(21)の温度を変化させる熱サイクルを制御し、前記熱サイクルの繰り返し回数を前記複数の第1チャンバ毎にカウントし、カウント値を記憶し、前記熱サイクル毎に前記複数の第1チャンバそれぞれの蛍光強度を取得し、取得した前記複数の第1チャンバ(21)それぞれの蛍光強度が、繰り返し回数毎に予め定められた所定範囲内であるか否かを判定し、蛍光強度が前記所定範囲内にないと判定した場合、当該第1チャンバ(21)を不良チャンバと判定し、前記不良チャンバのカウント値をリセットし、前記不良チャンバから溶液を吐出し、前記不良チャンバに前記タンク部から新たな溶液を充填する。
【0043】
これによれば、第1チャンバ(21)に保持される溶液に含まれる出発物質に量的な不良または質的な不良が存在する場合の悪影響を低減することができる。言い換えれば、出発物質に量的な不良または質的な不良が存在する場合には、制御部(14)が不良チャンバを判別して、不良チャンバの溶液を新しい溶液に入れ替える。つまり、出発物質に量的な不良または質的な不良が存在する第1チャンバ(21)は、新たな溶液で熱サイクルを新たに開始する。それゆえ、複数の第1チャンバ(21)の、悪影響を与える第1チェンバーを0にする、または、減少させることができる。
【0044】
なお、上の記載中の括弧書きの符号は、実施の形態における対応する構成要素を理解の便宜上参考までに記しているのであって、上記の構成要素を実施の形態の符号付き構成要素に限定するものではない。
【0045】
なお、これらの全般包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0046】
本発明のマイクロ流体デバイスおよび核酸増幅方法によれば、出発物質に量的な不良または質的な不良が存在する場合の悪影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、実施の形態におけるマイクロ流体デバイスの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態におけるカートリッジの断面および下面の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態におけるカートリッジの寸法例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施の形態の第1の変形例におけるカートリッジの断面および下面の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態におけるカートリッジの回路構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施の形態における第1ヒータとその周辺の構成例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、実施の形態における第1チャンバの溶液を加熱する動作例を示すタイムチャートである。
【
図8】
図8は、実施の形態における第1チャンバの溶液を吐出する動作例を示すタイムチャートである。
【
図9】
図9は、実施の形態におけるカートリッジの移動先の位置を説明するための図である。
【
図11】
図11は、実施の形態におけるマイクロ流体デバイスを用いた核酸増幅動作を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施の形態の第2の変形例におけるカートリッジの断面構成例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施の形態の第3の変形例におけるカートリッジの断面構成例を示す図である。
【
図15】
図15は、実施の形態の第4の変形例におけるカートリッジの断面構成例を示す図である。
【
図16】
図16は、実施の形態の第5の変形例におけるカートリッジの断面および下面の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。各図は、必ずしも各寸法または各寸法比等を厳密に図示したものではない。
【0049】
(実施の形態)
図1は、実施の形態におけるマイクロ流体デバイス100の構成例を示すブロック図である。同図のマイクロ流体デバイス100は、カートリッジ1、モータ2、モータ3、位置コントローラ4、光源5、受光センサ6、光源コントローラ7、蛍光処理部8、温度コントローラ9、キャップ10、廃液トレイ11、プレート12、システムコントローラ13および制御部14を備える。図中、カートリッジ1が2つ描かれているのは、カートリッジ1が移動可能なことを示すためであって、2つのカートリッジ1が存在するわけではない。
【0050】
カートリッジ1は、PCRの検査ターゲットに定められたDNAの断片を、適合するプライマーや、酵素などの専用薬品と混ぜ合わせ溶液30を貯める容器である。このカートリッジ1は、少なくとも1次元的(X軸方向)に移動可能なように構成されている。設置されているプレート12に対してはX-Y軸方向に相対移動可能である。
【0051】
ここで、カートリッジ1の構成について
図2を用いて説明する。
【0052】
図2は、実施の形態におけるカートリッジ1の断面および下面の構成例を示す図である。同図の(a)は、カートリッジ1をX-Z平面で切った断面であって、同図の(b)に一点鎖線で示したII-II線における断面を示す。同図の(b)は、同図(a)の流路部20を横切るX-Y平面で切った断面を示す。
【0053】
図2に示すように、カートリッジ1は、タンク部15とサーマルヘッド部16とを備える。
【0054】
タンク部15は、溶液30を貯めるタンク室を有し、タンク部15の底面にサーマルヘッド部16に接続される開口部19を有する。開口部19は、Y軸に沿って伸びる帯状の細長い矩形状である。
【0055】
サーマルヘッド部16は、半導体基板17と、半導体基板17と貼り合わされたヘッドフィルム18とを有する。前記半導体基板17と前記ヘッドフィルム18とを貼り合せてできる空隙により、流路部20、第1チャンバ21、および第2チャンバ22が形成される。なお、ヘッドフィルム18は、光源5の照射光および第2チャンバ22の蛍光を透過する特性を有していてもよい。この場合、第2チャンバ22の蛍光強度も測定することができる。
【0056】
流路部20は、タンク部15の開口部19と第1チャンバ21とを接続する。流路部20の一端は、開口部19に接続される第3開口20aである。流路部20の他端は、第1チャンバ21の第1開口21aに接続される。また、流路部20の途中には、流路の断面積を拡大することにより第2チャンバ22が設けられている。
【0057】
第1チャンバ21は、タンク部15から開口部19、流路部20を介して流入する溶液30を保持する。第1チャンバ21は、流路部20に接続された第1開口21aと、下面に露出された第2開口21bとを有する。第2開口21bは、吐出ノズルでもある。
【0058】
第2チャンバ22は、タンク部15から開口部19を介して流入する溶液30を保持する。第2チャンバ22は、流路部20の途中に設けられ、第1チャンバ21に溶液30を運ぶ流路としての機能も有する。第2チャンバ22は、タンク部15からの溶液30を流入させる第4開口22aと、第1チャンバ21側に溶液30を流出させる第5開口22bとを有する。カートリッジ1に含まれる第1チャンバ21の総数は、カートリッジ1のサイズにも依存するが、例えば32個から640個程度でよい。
【0059】
半導体基板17は、基板ヒータ23、第1ヒータ24、第1温度センサ25、第2ヒータ26、および第2温度センサ27を有する。
【0060】
基板ヒータ23は、温度コントローラ9の制御の下で半導体基板17を加熱する。同図の例では、基板ヒータ23は、半導体基板17のY方向に沿う2辺に配置された帯状の細長い抵抗体である。
【0061】
第1ヒータ24は、第1チャンバ21のZ方向に隣接して設けられ、温度コントローラ9の制御の下で第1チャンバ21の溶液30を加熱する。
【0062】
第1温度センサ25は、第1チャンバ21の-Y方向に隣接または直近に配置され、第1チャンバ21に保持された溶液30の温度を検知し、温度コントローラ9に通知する。
【0063】
第2ヒータ26は、第2チャンバ22のZ方向に隣接して設けられ、温度コントローラ9の制御の下で第2チャンバ22の溶液30を加熱する。
【0064】
第2温度センサ27は、第2チャンバ22の-Y方向に隣接または直近に配置され、第2チャンバ22に保持された溶液30の温度を検知し、温度コントローラ9に通知する。
【0065】
続いて、
図1に戻ってカートリッジ1の構成について説明する。
【0066】
モータ2は、カートリッジ1をY方向に移動させる。
【0067】
モータ3は、カートリッジ1をX方向に移動させる。
【0068】
位置コントローラ4は、カートリッジ1をX方向およびY方向の任意の位置に移動させるようにモータ2およびモータ3を制御する。
【0069】
光源5は、第1チャンバ21または第2チャンバ22に光を照射する。光源のピーク波長は例えば488nmである。溶液30は、光の照射により蛍光するように予め蛍光物質により染色していてもよい。蛍光の波長は例えば522nmである。
【0070】
受光センサ6は、第1チャンバ21または第2チャンバ22の蛍光強度を測定し、開口部19に通知する。光源5および受光センサ6は、1ユニットとして形成され、カートリッジ1に対して相対移動可能である。
【0071】
光源コントローラ7は、熱サイクル毎に第1チャンバ21または第2チャンバ22を照射するように光源5を制御する。
蛍光強度を測定する制御を行う。
【0072】
蛍光処理部8は、熱サイクル毎に第1チャンバ21または第2チャンバ22の蛍光強度を測定する制御を行う。
【0073】
温度コントローラ9は、熱サイクルにおいて、例えば、(a)変性反応、(b)アニーリング、(c)伸長反応の各段階を順番に行う。温度コントローラ9は、(a)および(c)の段階ではヒータ加熱により第1チャンバ21を加温する。(a)から(b)への移行では自然放熱、または、カートリッジ1に放熱素材を取り付けて放熱する。または、電子冷却素子や送風による強制冷却する。なお、(a)の変性反応では、95℃で1分間継続させる。(b)のアニーリングでは、40~55℃で1分間継続させる。(c)の伸長反応では、72℃で1分間継続させる。上記(a)、(b)および(c)のそれぞれの段階を継続する時間および温度は、対象とする核酸、溶液の濃度、種類により適宜適切に設定され得る。
【0074】
キャップ10は、第1チャンバ21保持された溶液30が第2開口21bから蒸発し、乾燥するのを防止または抑制する。
【0075】
廃液トレイ11は、熱サイクル毎の蛍光強度測定の結果、蛍光不良の第1チャンバ21から吐出される溶液30を受け取る。
【0076】
プレート12は、熱サイクルを所定回数完了し、DNA断片の増幅がプラトー領域に至った溶液を受け取る。プレート12は、複数のウェルを有する。
【0077】
システムコントローラ13は、位置コントローラ4、光源コントローラ7、蛍光処理部8および温度コントローラ9を制御する。
【0078】
メモリ13aは、システムコントローラ13としてのCPUが実行するプログラムおよび各種データを記憶する。メモリ13aは、各種データとして、例えば、熱サイクルの繰り返し回数毎の予め定められた基準範囲、第1チャンバ21個別の熱サイクル繰り返し回数であるカウント値、第1チャンバ21個別のカウント値に対応する蛍光強度、第1チャンバ21個別のカウント値および蛍光強度が不良か否かを示すNG_flagの値、を記憶する。
【0079】
制御部14は、位置コントローラ4、光源コントローラ7、蛍光処理部8、温度コントローラ9、およびメモリ13aを含む。
【0080】
次に、カートリッジ1の流路部20、第1チャンバ21および第2チャンバ22の寸法例について説明する。
【0081】
図3は、実施の形態におけるカートリッジ1の寸法例を説明するための図である。
図3は
図2の主要部のみを示している。
【0082】
図3における寸法L1は、Z方向に見た平面視で円形の第1チャンバ21における直径を示す。寸法L1は、数十μmでよく、例えば、40μmでもよい。
【0083】
寸法L2は、Z方向に見た平面視で六角形の第2チャンバ22におけるY方向の長さを示す。寸法L2は、数十μmでよく、例えば、50μmでもよい。同図では、第2チャンバ22の容積は、第1チャンバ21の容積よりも大きくなっている。
【0084】
寸法L3は、流路部20のY方向の幅を示す。流路部20は溶液30を流すことができればよく、寸法L3は、寸法L1および寸法L2よりも小さい値であればよく、例えば、35μmでもよい。
【0085】
寸法L4は、流路部20のZ方向の幅を示す。流路部20は溶液30を流すことができればよい。寸法L4も、寸法L1および寸法L2よりも小さい値であればよく、例えば、18μmでもよい。
【0086】
寸法L5は、開口部19の幅を示す。寸法L5は、数十から数百μmでよく、例えば、240μmでもよい。
【0087】
なお、溶液30は、対象となるDNA断片に蛍光色素(例えば、サイバーグリーン:SYBR(登録商標)Green)、プライマー、DNAポリメラーゼ、バッファーを混合したものである。溶液30は、タンク部15に注入されると、開口部19を経由し、流路部20から第2チャンバ22および第1チャンバ21に至る部分に満たされる。
【0088】
上記の寸法は、以下を満たすように設計すべきである。タンク部15から開口部19、流路部20、第2チャンバ22、第1チャンバ21にまで溶液30が満たされたとき、第1チャンバ21の-Z方向の吐出ノズルとしての開口から溶液30が自然落下しないように気圧のバランスを保つ。
【0089】
なお、
図2の(a)に示したカートリッジ1の断面は、
図4のようにしてもよい。
図4は、実施の形態の第1の変形例におけるカートリッジ1の断面および下面の構成を示す図である。
図4は、
図2と比べて、ヘッドフィルム18に隔壁28が追加されている。これにより、隔壁28を挟む2つの第2チャンバ22の間で断熱性が向上し、熱的な悪影響を抑制することができる。
【0090】
次に、カートリッジ1の回路構成について説明する。
【0091】
図5は、実施の形態におけるカートリッジ1の回路構成例を示すブロック図である。同図には、温度コントローラ9と、温度コントローラ9との間の信号線も図示してある。同図のように、カートリッジ1は、制御回路1a、複数の第1ヒータ24、複数の第2ヒータ26、複数の基板ヒータ23、内部メモリ1c、複数の第1温度センサ25および複数の第2温度センサ27を備える。
【0092】
制御回路1aは、内部に通信処理部1bを有する。
【0093】
通信処理部1bは、温度コントローラ9とSPI(Serial Peripheral Interface)で接続される。SCKは、Serial Clockの略で、クロック信号である。MOSIは、Master Out Slave Inの略で、温度コントローラ9から通信処理部1bへのシリアルデータとして送られるアドレス、コマンド、データ等である。SSは、Slave Selectの略で、チップセレクト信号である。RST_Nは、リセット信号である。MISOは、Master In Slave Outの略で、通信処理部1bから温度コントローラ9へのシリアルデータである。通信処理部1bは、温度コントローラ9から、複数の第1ヒータ24、複数の第2ヒータ26および複数の基板ヒータ23個別に、または、グループ別に加熱を指示するコマンドや、吐出を指示するコマンド等を受信する。また、通信処理部1bは、複数の第1温度センサ25および複数の第2温度センサ27個別に、または、グループ別に、温度データの要求を受信し、要求された温度データを温度コントローラ9に送信する。
【0094】
制御回路1aは、通信処理部1bが加熱を指示するコマンドを受信すると、コマンドに従って、対応する複数の第1ヒータ24、複数の第2ヒータ26および複数の基板ヒータ23に、加熱または吐出をするよう制御する。また、制御回路1aは、通信処理部1bが温度データを要求するコマンドを受信すると、コマンドに従って、対応する複数の第1温度センサ25および複数の第2温度センサ27から、温度データを取得し、取得した温度データをメモリ1cに保存し、さらに、通信処理部1bを介して温度コントローラ9に温度データを送信するよう制御する。図中のFIREは発熱を指示する信号である。R/Wは、内部メモリ1cに読み/書きを指示する信号である。TMPは温度データを示す信号である。
【0095】
なお、温度コントローラ9と通信処理部1bとの間の通信は、SPIに限らず他の通信方式であってもよい。
【0096】
次に、第1チャンバ21および第1ヒータ24による、加熱動作と吐出動作について説明する。
【0097】
図6は、実施の形態における第1ヒータ24とその周辺の構成例を示す回路図である。同図のように、第1ヒータ24は、ヒータ抵抗24aおよびスイッチトランジスタ24bを有する。ヒータ抵抗24aは、スイッチトランジスタ24bがオンのときに発熱する。スイッチトランジスタ24bは、ゲート信号Gxがハイレベルのオン状態で、ローレベルのときオフ状態である。
【0098】
アドレスデコーダ24cは、制御回路1a内の回路であり、アドレス信号Axと、グループを示すアドレス信号Pxとをデコードし、加熱または吐出するように、対象の第1ヒータ24に指示する。なお、アドレス信号Axアドレス信号Pxのそれぞれは、実際には複数ビットの信号であるが、同図では簡単のために1ビットの信号としている。
【0099】
図7は、実施の形態における第1チャンバ21の溶液を加熱する動作例を示すタイムチャートである。同図は、アドレス信号Axおよびアドレス信号Pxに該当する第1ヒータ24における加熱動作例を示す。加熱動作では、ヒータ抵抗24aの電源電圧HPWRが高圧のV1から低圧のV2に下がり、FIRE信号が間欠的な複数のパルス信号になっている。ヒータ抵抗24aは、パルスに従って間欠的に発熱する。これにより、第1ヒータ24は、第1チャンバ21の溶液を吐出させることなく加熱する。加熱動作では、例えば電源電圧HPWRのV2が4V、断続するパルスの期間Tfが500μ秒程度でよい。加熱動作では、温度コントローラ9は、加熱動作と温度取得とを繰り返すフィードバック制御を行う。
【0100】
図8は、実施の形態における第1チャンバ21の溶液を吐出する動作例を示すタイムチャートである。同図の吐出動作では、ヒータ抵抗24aの電源電圧HPWRが高圧のV1を維持され、FIRE信号がハイレベル期間の長い1個のパルスを有する。これにより、ヒータ抵抗24aは、
図7より大きく発熱する。これにより、第1ヒータ24は、第1チャンバ21の溶液にバブルを発生させて吐出させる。吐出動作では、例えば電源電圧HPWRのV1が10V、ハイレベルを維持するパルスの期間Teが100μ秒程度でよい。
【0101】
次に、マイクロ流体デバイス100における、カートリッジ1の移動による位置の変更
について説明する。
【0102】
図9は、実施の形態におけるカートリッジ1の移動先の位置を説明するための図である。同図において、位置P1は、プレート12の位置を示す。位置P2は、光源5と受光センサ6都からなる光学部の位置を示す。位置P3は、キャップ10の位置を示す。位置P4は、廃液トレイ11の位置を示す。位置コントローラ4は、カートリッジ1をこれらの位置に選択的に移動させる。
【0103】
位置コントローラ4は、熱サイクルの繰り返しが完了、つまり、DNA断片の増幅がプラトー状態になったとき、複数の第1チャンバ21および複数の第2チャンバ22に保持された溶液30を、分注するために、カートリッジ1を位置P1に移動する。さらに、位置コントローラ4は、位置P1において位置を微調整することにより、吐出対象の第1チャンバ21または第2チャンバ22をプレート12中の個々のウェルの位置に移動させる。これにより、複数の第1チャンバ21および複数の第2チャンバ22から、個々のウェルに必要な量の溶液30を分注することができる。
【0104】
位置コントローラ4は、熱サイクル毎の蛍光強度を測定するために、カートリッジ1を位置P2に移動し、第1チャンバ21の蛍光強度を測定する。このとき、第2チャンバ22の蛍光強度も測定してもよい。なお、光源5の照射範囲が第1チャンバ21と第2チャンバ22の両方に及ぶ場合は、位置コントローラ4は、第1チャンバ21と第2チャンバ22とを合わせた蛍光強度を測定してもよい。
【0105】
位置コントローラ4は、カートリッジ1が熱サイクルの実施期間では、カートリッジ1を位置P3に移動し、キャップ10を装着させる。これにより、第1チャンバ21の乾燥を防止または抑制する。
【0106】
また、位置コントローラ4は、熱サイクル毎の蛍光強度の測定で不良の第1チャンバ21が存在する場合は、カートリッジ1を位置P4に移動し、第1チャンバ21の溶液30を廃液トレイ11に吐出することにより第1チャンバ21の溶液30の入れ替えを行う。
【0107】
次に、マイクロ流体デバイス100における核酸増幅動作の全体の流れについて説明する。
【0108】
図11は、実施の形態1におけるマイクロ流体デバイス100を用いた核酸増幅のための動作を示すフローチャートである。
図12は、
図11の続きの動作を示すフローチャートである。また、
図10は、
図11中の単位熱サイクル処理例を示すフローチャートである。
【0109】
まず、
図10の単位熱サイクル処理例について説明する。
【0110】
図12に示すように、単位熱サイクル処理において制御部14は、まず、内部のタイマに時間t1をセットし、タイマ動作をスタートさせる(S61)。時間t1は、例えば40秒である。制御部14は、複数の第1チャンバ21および複数の第2チャンバ22のそれぞれについて、保持された溶液30を温度T1℃に制御し、変性反応させる(S62)。温度T1は、例えば、95℃である。さらに、制御部14は、タイマ動作のスタートから時間t1が経過したか否かを判定し(S63)、時間t1が経過していない場合は、ステップS62に戻り、時間t1が経過した場合はステップS64に進む。ステップS61からS63は、単位熱サイクルの第1段階である変性反応を生じさせる。
【0111】
さらに、制御部14は、まず、内部のタイマに時間t2をセットし、タイマ動作をスタートさせる(S64)。時間t2は、例えば60秒である。制御部14は、複数の第1チャンバ21および複数の第2チャンバ22のそれぞれについて、保持された溶液30を温度T2℃に制御し、アニーリングする(S65)。温度T2は、例えば、50℃である。さらに、制御部14は、タイマ動作のスタートから時間t2が経過したか否かを判定し(S66)、時間t2が経過していない場合は、ステップS65に戻り、時間t2が経過した場合はステップS67に進む。ステップS64からS66は、単位熱サイクルの第2段階であるアニーリングである。
【0112】
次に、制御部14は、まず、内部のタイマに時間t3をセットし、タイマ動作をスタートさせる(S67)。時間t3は、例えば60秒である。制御部14は、複数の第1チャンバ21および複数の第2チャンバ22のそれぞれについて、保持された溶液30を温度T3℃に制御し、伸長反動つまり増幅させる(S68)。温度T3は、例えば、72℃である。さらに、制御部14は、タイマ動作のスタートから時間t3が経過したか否かを判定し(S69)、時間t3が経過していない場合は、ステップS68に戻り、時間t3が経過した場合は単位熱処理を終了する。ステップS67からS69は、単位熱サイクルの第2段階である伸長反応をさせる。
【0113】
次に、
図11、
図12を用いて核酸増幅動作例について説明する。この核酸増幅動作は、いわゆるqPCRを含み、さらに、出発物質が不良である場合の悪影響を抑制する処理を含んでいる。
【0114】
図11において、制御部14は、まず、マイクロ流体デバイス100の動作モードを受け付ける(S1)。この例では、ユーザ操作に従って、動作モードとして第1動作モードおよび第2動作モードの何れか一方を受け付ける。第1動作モードは、
図11および
図12の核酸増幅動作によって増幅されたDNA断面を含む溶液30をプレート12に分注する動作モードである。第2動作モードは、
図11および
図12の核酸増幅動作によって増幅されたDNA断面を含む溶液30を破棄し、qPCRで得られたデータのみ保存する動作モードである。例えば、ユーザは、qPCRで検査ターゲットの解析や同定の目的を達成できる場合は第2動作モードを選択し、qPCRで増幅された溶液30をさらに利用する場合は第1動作モードを選択すればよい。
【0115】
さらに、ユーザは、試料となる溶液30をタンク部15に充填する(S2)。溶液30は、対象となるDNA断片、蛍光色素(例:サイバーグリーン)、プライマー、DNAポリメラーゼ、および、バッファーを含む。溶液30は、タンク部15に注入されると、開口部19を経由し、流路部20から第2チャンバ22および第1チャンバ21に至る部分に満たされる。
【0116】
ここまでは、核酸増幅動作のユーザによる準備段階である。準備段階の後、制御部14は、第1チャンバ21毎のカウント値C(n)を1に初期化する(S3)。nは、カートリッジ1に含まれる第1チャンバ21の総数である。nは例えば32~640程度である。さらに、カウント値C(n)は、対応する第1チャンバ21の熱サイクルの繰り返し回数であるカウント値を示す。
【0117】
さらに、制御部14は、n=1~Nの全てのnについて、カウント値C(n)を1だけインクリメントし(S4)、カートリッジ1をキャップ10の位置P3に移動させてキャップ10を装着させる。この状態で、制御部14は、
図10に示した単位熱サイクル処理を実施する(S6)。
【0118】
単位熱サイクル処理完了後に,制御部14は、カートリッジ1からキャップ10を外し(S7)、光源5および受光センサ6からなる光学部の位置P2に移動させて(S8)、光源5の発光を開始させる(S9)。
【0119】
この状態で、制御部14は、N個の第1チャンバ21それぞれについて、蛍光強度を測定および記憶し、不良か否かをチェックする(ループ1)。
【0120】
制御部14は、ループ1において、光学部を、nに対応する第1チャンバ21位置(n)に移動し(S10)、受光センサ6で蛍光強度を測定する。制御部14は、測定された傾向強度値S(n)を取得し、メモリ13aに記憶する(S11)。さらに、制御部14は、C(n)が所定の閾値Cthより小さい場合は、蛍光強度値S(n)にかかわらずS13yに進み、C(n)が所定の閾値Cth以上である場合に、蛍光強度値S(n)が、繰り返し回数に対応付けられて予め定められた所定範囲内であるか否かを判定する(S12)。
【0121】
ここで、所定範囲は、溶液30中の既知のDNA断片についての既知のPCR増幅作用のデータから算出された、繰り返し回数ごとの期待値の範囲を示す。従って、S12は、既知のDNA断片がデータに裏付けられた期待通りに増幅されているかどうかを判定するステップである。よって、蛍光強度値S(n)が所定の範囲内にある場合は,溶液30の出発物質に量的不良または質的不良が存在していなかったことを意味する。
【0122】
逆に、蛍光強度値S(n)が所定の範囲内にない場合は、溶液30の出発物質の量的不良または質的不良が発生していた可能性が高いことを意味する。蛍光強度値S(n)が所定の範囲内にない場場合、対応する第1チャンバ21を不良チャンバと呼ぶことにする。
【0123】
制御部14は、S12において、C(n)が所定の閾値Cthより小さい場合はNG_flag(n)=0に設定する(S13y)。所定の閾値Cthは、例えば、10~20程度である。繰り返し回数が閾値th以下では、蛍光強度が小さく、回数による有意な差異がないので、NG_flag(n)=0に強制している。
【0124】
制御部14は、C(n)が所定の閾値Cth以上であり、かつ、蛍光強度値S(n)が、繰り返し回数に対応付けられて予め定められた所定範囲内である場合には、NG_flag(n)=0に設定する(S13y)。
【0125】
制御部14は、C(n)が所定の閾値Cth以上であり、かつ、蛍光強度値S(n)が、繰り返し回数に対応付けられて予め定められた所定範囲内でない場合には、NG_flag(n)=1に設定する(S13n)。
【0126】
制御部14は、n=1~Nに対応するN個の第1チャンバ21について、ループ1処理を実行する。
【0127】
NG_flag(n)は、カウント値C(n)と対応付けられてメモリ13aに記憶される。
【0128】
つづいて、
図12に示すように,制御部14は、ループ1処理の完了後に光源5の発光を終了させ(S14)、メモリ13aに記憶されたNG_flag(n)=1が存在するか否かを判定する(S15)。制御部14は、NG_flag(n)=1が存在しない場合、S21に進み、NG_flag(n)=1が存在する場合、S16に進む。
【0129】
さらに、制御部14は、カートリッジ1を廃液トレイ11の位置P4に移動させる(S16)。この状態で制御部14は、ループ2処理を実行する。
【0130】
制御部14は、ループ2処理において、NG_flag(i)=1か否かを判定する(S18)。制御部14は、NG_flag(i)=1であると判定した場合(S18でyes)、対応する第1チャンバ21および第2チャンバ22に保持された溶液を破棄させる(S19)。S19では、制御部14は、第1チャンバ21に複数回の吐出動作をさせる。複数回の吐出動作によって、第1チャンバ21内の溶液30と第2チャンバ22内の溶液30と流路部20内の溶液30の合計を廃液トレイ11に排出させる。また、この排出によって、第1チャンバ21、第2チャンバ22、および流路部20にはタンク部15から新たな溶液30が充填される。
【0131】
次に、制御部14は、当該第1チャンバ21に対応するカウント値C(i)を0にリセットする(S20)。
【0132】
ループ2処理では、すべてのNG_flag(n)=1に対応する不良チャンバについて、対応する第2チャンバ22および流路部20の溶液も新たな溶液30に入れ替え、核酸増幅動作を新たにスタートさせることができる。
【0133】
ループ2処理の終了後、制御部14は、例えば、現在の状態が終了条件を満たすか否かを判定する(S21)。ここで、終了条件とは、核酸の増幅がプラトー状態になって停滞していること、蛍光強度S(n)の平均が閾値に達していること、単位熱サイクル処理の実施回数がプラトー状態に対応する所定回数にマージン回数を足した回数に達したこと、の1つ以上でよい。制御部14は、終了条件を満たしていないと判定した場合は、S4に進み、満たしたと判定した場合には、S22に進む。
【0134】
さらに、制御部14は、動作モードが第1動作モードかであるか否かを判定する(S22)。
【0135】
第1モードであると判定した場合、制御部14は、カートリッジ1をプレート12の位置P1に移動させ(S23)、カートリッジ1から溶液30をプレート12の所定のウェルに分注する(S24)。分注されたプレート12は、さらに電気泳動法などの他の試験に供される。
【0136】
一方、第1モードでないと判定した場合、制御部14は、カートリッジ1を廃液トレイ11の位置P4に移動させ(S25)、メモリ13aにカウント値C(n)、蛍光強度値S(n)などのデータを保存し、廃液トレイ11に溶液30を吐出させる(S26)。S26での吐出では、少なくとも第1チャンバ21、第2チャンバ22および流路部20内の溶液30を吐出すればよい。
【0137】
図11および
図12の核酸増幅動作では、第1チャンバ21に保持される溶液30に含まれる出発物質に量的な不良または質的な不良が存在する場合の悪影響を低減することができる。言い換えれば、出発物質に量的な不良または質的な不良が存在する場合には、制御部14が不良チャンバを判別して、不良チャンバの溶液30を新しい溶液に入れ替える。つまり、出発物質に量的な不良または質的な不良が存在する第1チャンバ21は、新たな溶液で熱サイクルを新たに開始する。それゆえ、複数の第1チャンバ21のうち、悪影響を与える第1チェンバーをなくす、または、減少させることができる。
【0138】
また、1つの第1チャンバ21に1つの第1ヒータ24が対応するので、熱サイクルにおいて第1チャンバ21を加熱して目標温度に到達するまでの時間を短縮することができ、熱サイクルに要するトータルの時間を短縮することができる。
【0139】
同様に、1つの第2チャンバ22に1つの第2ヒータ26が対応するので、熱サイクルにおいて第2チャンバ22を加熱して目標温度に到達するまでの時間を短縮することができ、熱サイクルに要するトータルの時間を短縮することができる。
【0140】
また、第1チャンバ21毎に第1温度センサ25を備えるので、熱サイクルにおける温度制御の速度および精度を向上させることができる。
【0141】
同様に、第2チャンバ22毎に第2温度センサ27を備えるので、熱サイクルにおける温度制御の速度および精度を向上させることができる。
【0142】
また、基板ヒータ23を備えるので、例えば、環境温度が低いときに半導体基板17を補助的に加熱することができる。
【0143】
また、上記の実施形態では、溶液30を目標温度に設定するために加熱はヒータにより積極的に行い、冷却は自然冷却によるケースを例示した。しかし、冷却は、自然冷却でなく、積極的に冷却してもよい。次に、溶液を積極的に冷却する構成例について説明する。
【0144】
図13は、実施の形態の第2の変形例におけるカートリッジ1の断面構成例を示す図である。同図は、カートリッジ1において、溶液30の冷却機能を高めるために、カートリッジ1をカートリッジホルダ31に保持させる構成例を示す。
【0145】
カートリッジホルダ31は、側壁32、放熱板33及び放熱フィン34を備える。
【0146】
側壁32は、カートリッジ1のタンク部15を保持する。
【0147】
放熱板33は、カートリッジ1のタンク部15下部,半導体基板17、およびヘッドフィルム18に当接し、カートリッジ1の熱を放熱フィン34に伝導する。
【0148】
放熱フィン34は、放熱板33から伝導される熱を放熱する。
【0149】
この構成によれば、放熱フィン34がない場合の自然冷却と比べて、単位熱サイクル処理において第1チャンバ21を冷却して目標温度に到達するまでの時間を短縮することができ、単位熱サイクル処理に要するトータルの時間をさらに短縮することができる。
【0150】
図14は、実施の形態の第3の変形例におけるカートリッジ1の断面構成例を示す図である。
図14は、
図13と比べて、放熱板33と放熱フィン34とが対向して接する境界面に電子冷却素子35が挟まれている点が異なっている。
【0151】
電子冷却素子35は、例えば、ペルチェ素子、半導体ヘテロ構造を有する冷却素子等である。ペルチェ素子は、2枚の面状電極を有し、放熱板33側の面状電極か放熱フィン34側の面状電極に熱を移動させる。また、半導体ヘテロ構造を有する冷却素子は、GaAs/AlxGa1-xAsへテロ構造を有し、共鳴トンネル効果と熱電子放出により冷却する素子である。電子冷却素子35は温度コントローラ9の制御により、冷却能力を制御可能である。
【0152】
これにより、
図14の構成は、
図13と比べて高い冷却能力を有している。単位熱サイクル処理に要するトータルの時間をさらにもっと短縮することができる。なお、電子冷却素子35は、ペルチェ素子、半導体ヘテロ構造を有する冷却素子と異なる冷却素子であってもよい。
【0153】
図15は、実施の形態の第4の変形例におけるカートリッジ1の断面構成例を示す図である。
図15は、
図13と比べて、ファン37を備える点が異なっている。ファン37は、放熱フィン34に送風、または、放熱フィン34から吸気する。
【0154】
これにより、
図15の構成は、
図13と比べて高い冷却能力を有している。単位熱サイクル処理に要するトータルの時間をさらにもっと短縮することができる。
【0155】
図16は、実施の形態の第5の変形例におけるカートリッジ1の断面および下面の構成例を示す図である。
図16は、
図14と比べて、熱伝導部材36が追加された点が異なっている。
【0156】
熱伝導部材36は、タンク部15とサーマルヘッド部16との境界面に挿入され、かつ、放熱フィン34に熱を伝導するための針状の部材であって、放熱板33に接触する。
【0157】
これにより、
図16の構成は、
図14と比べて高い冷却能力を有している。単位熱サイクル処理に要するトータルの時間をさらにもっと大きく短縮することができる。
【0158】
なお、
図13~
図16においてカートリッジ1とカートリッジホルダ31とが別体である構成例を示したが、カートリッジホルダ31がカートリッジ1に一体に形成されていてもよい。また、放熱フィン34がカートリッジ1に一体に形成されていてもよい。同様に電子冷却素子35もカートリッジ1に一体に形成されていてもよい。
【0159】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態の画像復号化装置などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0160】
以上、本発明の実施の形態に係るマイクロ流体デバイス100および核酸増幅方法について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0161】
また、上記の各装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムとして構成されても良い。RAMまたはハードディスクドライブには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、各装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0162】
さらに、上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしても良い。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、例えば、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムを含む。この場合、ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0163】
さらにまた、上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしても良い。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしても良い。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしても良い。
【0164】
また、本発明は、上記に示す方法であるとしても良い。また、本発明は、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしても良いし、上記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしても良い。
【0165】
さらに、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしても良い。また、これらの非一時的な記録媒体に記録されている上記デジタル信号であるとしても良い。
【0166】
また、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしても良い。
【0167】
また、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、上記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、上記マイクロプロセッサは、上記コンピュータプログラムに従って動作するとしても良い。
【0168】
また、上記プログラムまたは上記デジタル信号を上記非一時的な記録媒体に記録して移送することにより、または上記プログラムまたは上記デジタル信号を、上記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしても良い。
【0169】
さらに、上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明は、核酸を増幅する機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0171】
1 カートリッジ
1a 制御回路
1b 通信処理部
2、3 モータ
4 位置コントローラ
5 光源
6 受光センサ
7 光源コントローラ
8 蛍光処理部
9 温度コントローラ
10 キャップ
11 廃液トレイ
12 プレート
13 システムコントローラ
14 制御部
15 タンク部
16 サーマルヘッド部
17 半導体基板
18 ヘッドフィルム
19 開口部1
20 流路部
20a 第3開口
21 第1チャンバ
21a 第1開口
21b 第2開口
22a 第4開口
22b 第5開口
22 第2チャンバ
23 基板ヒータ
24 第1ヒータ
24a ヒータ抵抗
24b スイッチトランジスタ
24c アドレスデコーダ
25 第1温度センサ
26 第2ヒータ
27 第2温度センサ
28 隔壁
30 溶液
31 カートリッジホルダ
32 側壁
33 放熱板
34 放熱フィン
35 電子冷却素子
37 ファン
36 熱伝導部材
100 マイクロ流体デバイス
P1、P2、P3、P4 位置