(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099056
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220627BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220627BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20220627BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20220627BHJP
C01B 33/141 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H01L21/304 622B
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
C01B33/141
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212807
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 智基
【テーマコード(参考)】
3C158
4G072
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA02
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3C158ED26
4G072AA28
4G072CC01
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4G072SS09
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4G072UU30
5F057AA03
5F057AA28
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5F057EA32
(57)【要約】
【課題】Siウェーハの研磨において表面粗さを低減する。
【解決手段】Siウェーハ研磨用組成物は、Siウェーハを研磨対象とする。前記Siウェーハ研磨用組成物は、シリカと、pH調整剤と、水とを含む。pHが、1.0~6.9であり、前記シリカの表面のシラノール基がアミノ基又はカルボキシ基を含む官能基に置換されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siウェーハを研磨対象とするSiウェーハ研磨用組成物であって、
シリカと、
pH調整剤と、
水とを含み、
pHが、1.0~6.9であり、
前記シリカの表面のシラノール基が、アミノ基又はカルボキシ基を含む官能基に置換されている、Siウェーハ研磨用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Siウェーハ研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品の製造において超精密加工は極めて重要な技術である。近年のLSIデバイスの微細化に伴い、精密研磨後のウェーハ表面粗さや平坦性への要求はますます厳しくなる傾向にある。精密研磨には、化学機械研磨(CMP)が採用される。CMPに用いられる研磨用組成物の砥粒として、種々のものが提案されている。
【0003】
特開2005-262413号公報には、研磨液組成物の研磨材として、一次粒子の平均粒径が1nm以上40nm未満、ゼータ電位が-15~30mVであるコロイダルシリカを用いることが記載されている。この研磨液組成物は、ナノスクラッチを低減でき、メモリーハードディスク基板や半導体基板等の精密部品基板の研磨に好適に用いられる。
【0004】
特開2017-197590号公報には、酸化膜と窒化膜とを備える研磨対象物を研磨する研磨用組成物が開示されている。この研磨用組成物は、pH2.0以上であり、且つ、正のゼータ電位を示すシリカを含む。この研磨用組成物は、窒化膜の研磨速度を抑制しつつ酸化膜の研磨速度を向上させうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-262413号公報
【特許文献2】特開2017-197590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は、Siウェーハの研磨に用いられる研磨用組成物の構成について検討した。検討において、発明者は、研磨用組成物をSiウェーハの研磨に特有の構成とすることで、表面粗さを低減できることを見出した。
【0007】
本発明の目的は、Siウェーハの研磨において表面粗さを低減できる研磨用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によるSiウェーハ研磨用組成物は、Siウェーハを研磨対象とする。前記Siウェーハ研磨用組成物は、シリカと、pH調整剤と、水とを含む。pHが、1.0~6.9であり、前記シリカの表面のシラノール基が、アミノ基又はカルボキシ基を含む官能基に置換されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、Siウェーハの研磨において表面粗さを低減できるSiウェーハ研磨用組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、表面のシラノール基がアミノ基を含む官能基に置換されたシリカの例を示す図である。
【
図2】
図2は、表面のシラノール基がカルボキシ基を含む官能基に置換されたシリカの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明者は、Siウェーハの研磨に適した研磨用組成物の構成を検討した。検討において、発明者は、砥粒にシリカを採用し、シリカの表面のシラノール基を官能基で置換する表面修飾することを試みた。発明者はさらに検討を重ねた結果、研磨用組成物を、酸性とし、アミノ基又はカルボキシ基を含む官能基により表面修飾されたシリカを砥粒として含むよう構成することで、表面粗さを低減できることを見出した。
【0012】
本発明の一実施形態によるSiウェーハ研磨用組成物は、Siウェーハを研磨対象とする。前記Siウェーハ研磨用組成物は、シリカと、pH調整剤と、水とを含む。前記Siウェーハ研磨用組成物は、pHが、1.0~6.9であり、前記シリカの表面のシラノール基が、アミノ基又はカルボキシ基を含む官能基に置換されている。このように、研磨用組成物を酸性とし、シリカの表面のシラノール基をアミノ基又はカルボキシ基を含む官能基で置換した構成とすることで、Siウェーハの表面粗さを低減することができる。
【0013】
前記Siウェーハ研磨用組成物において、シリカの表面のシラノール基がアミノ基を含む官能基に置換されていてもよい。又は、シリカの表面のシラノール基がカルボキシ基を含む官能基に置換されていてもよい。
【0014】
上記のSiウェーハの表面粗さを低減するメカニズムは明らかではないが、下記のように考察される。研磨用組成物を酸性とし、シリカの表面のシラノール基をアミノ基又はカルボキシ基を含む官能基で置換した構成とすることで、シリカの表面のシラノール基が、酸性下において、正の電荷を帯びる官能基に置換される。これにより、シリカのゼータ電位が、表面粗さ低減の観点から適切な範囲になりやすくなると考えらえる。その結果として、Siウェーハの表面粗さが低減すると考えられる。
【0015】
Siウェーハの研磨方法及び研磨方法を含むSiウェーハの製造方法も、本発明の実施形態に含まれる。Siウェーハの研磨方法は、前記Siウェーハと研磨パッドの間に研磨用組成物を配置した状態で前記Siウェーハを研磨する工程を有する。前記研磨用組成物は、砥粒、pH調整剤、及び水、を含み、pHが1.0~6.9の範囲である。前記砥粒は、pHが1.0~6.9の条件下において正のゼータ電位を持つ。前記砥粒のゼータ電位と、前記Siウェーハの表面ゼータ電位との積(パラメータA)が負であり(A<0)、前記砥粒のゼータ電位と前記研磨パッドの表面ゼータ電位との積(パラメータB)が-50以上である(B≧-50)。この研磨方法によれば、Siウェーハの表面粗さを低減することができる。
【0016】
上記研磨方法において、前記砥粒は、シリカであり、前記シリカの表面のシラノール基が、アミノ基又はカルボキシ基を含む官能基に置換されていてもよい。これにより、簡素な構成により、砥粒のゼータ電位、砥粒とSiウェーハのゼータ電位の関係(A)、及び砥粒と研磨パッドの関係(B)を上記の範囲に設定することができる。
【0017】
上記研磨パッドは、ポリウレタン製であってもよい。これにより、砥粒と研磨パッドの関係(B)を上記の範囲に設定するのが容易になる。
【0018】
(シリカ)
本実施形態における研磨用組成物に含まれる砥粒としてのシリカは、例えば、コロイダルシリカとしてもよい。シリカの各粒子において、表面のシラノール基の少なくとも一部が、アミノ基又はカルボキシ基を含む官能基に置換されている。言い換えれば、シリカは、アミノ基又はカルボキシ基を含む官能基で表面修飾されている。研磨用組成物において、官能基はシリカに固定された状態である。
【0019】
シリカの表面のシラノール基に置換される官能基は、酸性下すなわちpHが1.0~6.9の条件下で、正電荷を帯びる。これにより、酸性の研磨用組成物におけるシリカのゼータ電位を初めとする砥粒としての特性を、研磨性能の観点から好ましいものにすることができると考えられる。
【0020】
図1は、表面のシラノール基がアミノ基を含む官能基に置換されたシリカの例を示す図である。
図1に示す例では、シリカの表面のシラノール基の一部が、官能基10に置換されている。官能基10は、アミノ基11を含む。アミノ基11は、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンから水素を除去した官能基である。
図1中のR1はSiとアミノ基20の間の結合鎖である。R1は、例えば、アルキレン基、若しくは、ジアルキルアミノ基又はその誘導体であってもよい。例えば、官能基10は、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、又は、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチル基であってよい。R2、R3は、水素又は、アミノ基の置換基である。一例として、アミノ基11は、-NH3
+であってもよい。
【0021】
図2は、表面のシラノール基がカルボキシ基を含む官能基に置換されたシリカの例を示す図である。
図2に示す例では、シリカの表面のシラノール基の一部が、官能基10に置換されている。官能基10は、カルボキシ基12を含む。
図2中のR4は、Siとカルボキシ基12との間の結合鎖である。R4は、例えば、プロピレン基等のアルキレン基であってもよい。例えば、官能基10は、ギ酸(メタン酸)基、酢酸基(エタン酸基)、プロピオン酸基(プロパン酸基)、又は、酪酸基(ブタン酸基)であってもよい。
【0022】
シリカの表面のシラノール基の官能基への置換は、例えば、シランカップリング剤によって置換することができる。官能基の種類は1つ又は2つ以上でもよい。例えば、シランカップリング処理により、シラノール基を1種の官能基に置換する単層処理がシリカに施されてもよい。或いは、シランカップリングの単層処理後に、再度、シランカップリング処理を行なう複層処理により、シラノール基を官能基に置換してもよい。
【0023】
砥粒であるシリカの含有量は、特に限定されないが、例えば、研磨用組成物全体の0.10~20質量%である。砥粒の含有量は、研磨後のシリコンウェーハの研磨傷や異物残りを低減するという観点からは、できるだけ少なくする方が好ましい。一方、研磨用組成物が砥粒を全く含まない場合には、例えば、シリコンウェーハ表面の酸化膜を除去することができなくなる。研磨用組成物は、研磨時に10~45倍に希釈されて使用される。本実施形態による研磨用組成物は、砥粒の濃度が20~20000ppm(質量ppm。以下同じ。)になるように希釈して用いることが好ましい。砥粒の濃度が高いほど、微小欠陥やヘイズが低減する傾向がある。希釈後の砥粒の濃度の下限は、好ましくは1000ppmであり、さらに好ましくは2000ppmである。希釈後の砥粒の濃度の上限は、好ましくは15000ppmであり、さらに好ましくは10000ppmである。
【0024】
(pH調整剤)
研磨用組成物に含まれるpH調整剤により、研磨用組成物のpHが、1.0~6.9になるよう調整される。研磨用組成物のpHは、1.0~6.0が好ましく、1.0~5.5がより好ましい。pH調整剤は、酸性のものが用いられる。pH調整剤は、特定のものに限定されないが、例えば、無機酸、及び、有機酸から選ばれる少なくとも1種の酸であってもよい。
【0025】
無機酸は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸及び硝酸から選ばれる少なくとも1種の酸とすることができる。有機酸としては、例えば、カルボン酸、アスコルビン酸、スルホン酸、酸性リン酸エステル、ホスホン酸、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物、多価アルコール部分エステル、カルボン酸アミド等が挙げられる。
【0026】
カルボン酸としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0027】
カルボン酸アミドとしては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
ホスホン酸としては、例えば、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1,-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸等が挙げられる。
【0029】
本実施形態による研磨用組成物は、上記の他、研磨用組成物の分野で一般に知られた配合剤を任意に配合することができる。例えば、研磨用組成物は、水溶性高分子、界面活性剤、及び、キレート剤の少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0030】
水溶性高分子は、半導体ウェーハ等のワークの表面に吸着して、ワークの表面を改質する。これによって研磨の均一性が向上し、表面粗さを低減することができる。水溶性高分子は、これに限定されないが、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA(ポリビニルアルコール誘導体)、ポリビニルピロリドン(PVP)等のビニルポリマー、配糖体(グリコシド)、その他の多価アルコール等を用いることができる。多価アルコールは、1分子中に2以上のヒドロキシ基を含むアルコールである。配糖体としては、例えば、メチルグルコシドのアルキレンオキシド誘導体等が挙げられる。メチルグルコシドのアルキレンオキシド誘導体としては、例えば、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド等が挙げられる。
【0031】
本実施形態による研磨用組成物は、シリカ、pH調整剤その他の配合材料を適宜混合して水を加えることによって作製される。本実施形態による研磨用組成物は、あるいは、砥粒、pH調整剤その他の配合材料を、順次、水に混合することによって作製される。これらの成分を混合する手段としては、ホモジナイザー、超音波等、研磨用組成物の技術分野において常用される手段が用いられる。
【0032】
以上で説明した研磨用組成物は、適当な濃度となるように水で希釈した後、半導体ウェーハの研磨に用いられる。研磨用組成物は、Siウェーハ(シリコン基板)の研磨に好適に用いることができる。
【実施例0033】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0034】
下記表1に示す砥粒とpH調整剤と水を含むスラリーを準備した。これらのスラリーを用いて、下記条件で研磨を行った。各スラリーの研磨について、スラリーのpH、砥粒、Siウェーハ及び研磨パッドのゼータ電位、パラメータA及びB、並びに、表面粗さSaを測定した。
【0035】
【0036】
(スラリー(研磨用組成物))
表1における砥粒A、B、C及びDは、下記の通りである。
砥粒Aは、表面のシラノール基を、アミノ基を含む官能基(プロピルアミノ基)で置換したコロイダルシリカ(製品名:クォートロン PL-3-C(扶桑化学工業株式会社))である。砥粒Aにおけるシラノール基を置換したプロピルアミノ基は、酸性下で正電荷を帯びる官能基である。
砥粒Bは、表面のシラノール基を官能基で置換していないコロイダルシリカ(製品名:クォートロン PL-3(扶桑化学工業株式会社))である。
砥粒Cは、表面のシラノール基をアミノ基及びカルボキシ基のいずれも含まない官能基で置換したコロイダルシリカ(製品名:クォートロン PL-3-D(扶桑化学工業株式会社))である。砥粒Cにおけるシラノール基を置換した官能基は、酸性下で負電荷を帯びる官能基である。
砥粒Dは、表面のシラノール基を、カルボキシ基を含む官能基(酢酸基)で置換したコロイダルシリカ(製品名:クォートロン PL-3-P(扶桑化学工業株式会社))である。砥粒Dにおけるシラノール基を置換した酢酸基は、酸性下で正電荷を帯びる官能基である。
【0037】
(研磨条件)
研磨装置:片面研磨機
研磨パッド:ポリウレタン製パッド(物性代表値 硬度83; JIS-A、圧縮率2.2%、密度0.40g/cm3)(ニッタ・デュポン株式会社製)
流量:300mL/min
面圧:150(gf/cm2)
被研磨ウェーハ: 8”シリコンウェーハ
【0038】
(ゼータ電位の測定)
スラリーのゼータ電位測定には、測定装置として、ZETASIZER NANO(Malvern社製)を用いた。
Siウェーハ及びパッドのゼータ電位測定には、測定装置として、ELSZ-2(大塚電子社製)を用いた。
【0039】
(パラメータの計算)
パラメータA:砥粒のゼータ電位×シリコンウェーハのゼータ電位
パラメータB:砥粒のゼータ電位×研磨パッドのゼータ電位
【0040】
(表面粗さSaの測定条件)
測定装置:Contour GT-X(Bruker社製)
測定視野角:177μm×133μm
Saは、算術平均高さ(ISO 25178)で算出。
【0041】
(評価(スラリー構成))
表1に示す結果では、表面のシラノール基をアミノ基又はカルボキシ基を含む官能基で置換したシリカを砥粒として有し、且つ、pHが1.0~6.9すなわち酸性である実施例1~3は、表面のシラノール基が置換されていない、又は、アミノ基又はカルボキシ基をいずれも含まない官能基で置換したシリカを砥粒とし、pHが酸性である比較例1、2に比べて、表面粗さが低減している。また、表面のシラノール基を、アミノ基を含む官能基で置換したシリカを砥粒として有するが、pHが7.0以上すなわちアルカリ性である比較例3、4に比べて、実施例1~3は、表面粗さが低減している。これらのことから、スラリーが、表面のシラノール基をアミノ基又はカルボキシ基を含む官能基で置換したシリカを砥粒として有し、且つ、pHが酸性とするよう構成することで、Siウェーハの表面粗さを低減できることがわかった。また、砥粒A、及び砥粒Dは、表面のシラノール基が、酸性下で正電荷を帯びる官能基で置換されており、砥粒Cは、表面のシラノール基が、酸性下で負電荷を帯びる官能基で置換されている。このことから、スラリーが、表面のシラノール基を酸性下で正に帯電する官能基で置換したシリカを砥粒として有し、且つ、pHが酸性とするよう構成することで、Siウェーハの表面粗さを低減できることがわかった。
【0042】
(評価(ゼータ電位構成))
また、表1に示す結果では、表面粗さが低減している実施例1~3は、いずれも、砥粒のゼータ電位が正、A<0、且つ、B≧-50の条件を全て満たしている。これに対して、表面粗さが比較的大きい、比較例1~4は、上記の3つの条件のうち1つ以上を満たしていない。このことから、砥粒は、pHが1.0~6.9で正のゼータ電位を持ち、砥粒のゼータ電位とSiウェーハの表面ゼータ電位との積が負であり(A<0)、且つ、砥粒のゼータ電位と研磨パッドの表面ゼータ電位との積が-50以上である(B≧-50)場合に、表面粗さを低減できることがわかった。また、表面のシラノール基をアミノ基又はカルボキシ基を含む官能基で置換したシリカを砥粒として有し、pHを酸性とすることで、上記のゼータ電位の条件を満たしやすくなることがわかった。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。