(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099077
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/70 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
C02F1/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212835
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】刑部 次功
(72)【発明者】
【氏名】西村 康雄
(72)【発明者】
【氏名】増田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】菅 剛
(72)【発明者】
【氏名】原 耕太
【テーマコード(参考)】
4D050
【Fターム(参考)】
4D050AA06
4D050AA12
4D050AB45
4D050AB46
4D050BA06
4D050BC06
4D050BC10
(57)【要約】
【課題】塩素系殺菌剤で処理した水を、亜硫酸塩で中和する方法において、塩素系殺菌剤の中和を効率的に行うことができる方法を提供する。
【解決手段】水処理方法が、塩素系殺菌剤で処理した処理水中の残留塩素を、亜硫酸塩で中和することを含み、この中和反応を、亜硫酸塩の酸化抑制剤の共存下で行う。好ましい亜硫酸塩の酸化抑制剤は、金属捕捉剤、ラジカル捕捉剤、及び還元剤の少なくとも1種である。好ましい塩素系殺菌剤は次亜塩素酸塩である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素系殺菌剤で処理した処理水中の残留塩素を、亜硫酸塩で中和することを含む水処理方法であって、
前記中和反応を、前記亜硫酸塩の酸化抑制剤の共存下で行う、水処理方法。
【請求項2】
前記の亜硫酸塩の酸化抑制剤が、金属捕捉剤、ラジカル捕捉剤、及び還元剤の少なくとも1種である、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記の亜硫酸塩の酸化抑制剤が、金属捕捉剤、アスコルビン酸又はその塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素、L-システイン、L-アラニン、硫化ナトリウム、エリソルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、メトキシフェノール、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、及びトコフェロールの少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記の亜硫酸塩の酸化抑制剤が、L-システイン、エリソルビン酸、及びエリソルビン酸塩から選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記塩素系殺菌剤が次亜塩素酸塩である、請求項1~4のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記処理水が、塩化物イオン及び金属イオンを含む、請求項1~5のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項7】
前記処理水が、15~25g/Lの塩化物イオンを含む、請求項1~6のいずれかに記載の水の処理方法。
【請求項8】
前記水処理方法が、バラスト水の処理方法であって、
前記処理水が、海水を塩素系殺菌剤で処理したものである、請求項1~7のいずれかに記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法に関する。より詳細には、塩素系殺菌剤で処理した処理水中の残留塩素を亜硫酸塩で中和することを含む水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水生生物がその自然分布域を越えた水域に人為的に運ばれて定着し、新たな水域の生態系を乱している事例が、各国で報告され問題となっている。このような水生生物は外来侵入生物と呼ばれ、その多くは二枚貝、ヒトデ、フジツボ類、海藻等の、底生生物・付着生物である。このような水生生物は、船体に付着したり、バラスト水中に混入したりして、船舶を介して移動し、定着することがある。
海洋調査等の研究の進展に伴い、外来侵入生物として渦鞭毛藻類、カイアシ類、クシクラゲ等のプランクトンがバラスト水によって運ばれることが明らかとなり、また、底生・付着生物も幼生のプランクトン時にバラスト水によって大量に運ばれていることが認識されるようになってきた。生態圏の撹乱を防ぐために、バラスト水による水生生物の移動を防ぐことの重要性が指摘され、バラスト水管理条約の付属書のD-1規則においては陸地から200海里以遠かつ水深200m以上の海域においてバラスト水を交換することが規定され、また、D-2規則においてはバラスト水排出基準が規定されている。
【0003】
上記バラスト水排出基準では、船舶から排出されるバラスト水中の動物プランクトン、植物プランクトン、及び菌類の数を制御することが求められ、そのため船舶にはバラスト水処理システムの搭載が必要となる。
一般的なバラスト水の処理方法として、次亜塩素酸塩等を用いてバラスト水を殺菌処理することが知られている。バラスト水の処理水を排出するに当たっては、残留塩素を還元して、中和・無害化することが求められる。例えば、特許文献1には、次亜塩素酸塩を用いてバラスト水中の細菌、微生物又は生物を死滅させた後、亜硫酸塩でバラスト水中の残留塩素を中和し、除去するバラスト水処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討を重ねた結果、引用文献1に記載されたバラスト水の処理方法では、残留塩素の中和処理効率の向上には制約があり、殺菌処理後に排出されるバラスト水中に、塩素が一定程度残留してしまうことがわかってきた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、塩素系殺菌剤で処理した水中に残留する塩素を、亜硫酸塩で中和するに当たり、残留塩素の中和効率を十分に高めることができる、水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、処理水中の残留塩素を亜硫酸塩により中和するに当たり、この中和反応を、亜硫酸塩の酸化抑制剤の共存下で行うことにより、残留塩素を高効率に中和できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記の課題は下記の手段により解決された。
[1]
塩素系殺菌剤で処理した処理水中の残留塩素を、亜硫酸塩で中和することを含む水処理方法であって、
上記中和反応を、上記亜硫酸塩の酸化抑制剤の共存下で行う、水処理方法。
[2]
上記の亜硫酸塩の酸化抑制剤が、金属捕捉剤、ラジカル捕捉剤、及び還元剤の少なくとも1種である、[1]に記載の水処理方法。
[3]
上記の亜硫酸塩の酸化抑制剤が、金属捕捉剤、アスコルビン酸又はその塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素、L-システイン、L-アラニン、硫化ナトリウム、エリソルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、メトキシフェノール、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、及びトコフェロールの少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の水処理方法。
[4]
上記の亜硫酸塩の酸化抑制剤が、L-システイン、エリソルビン酸、及びエリソルビン酸塩から選択される1種以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の水処理方法。
[5]
前記塩素系殺菌剤が次亜塩素酸塩である、[1]~[4]のいずれかに記載の水処理方法。
[6]
上記処理水が、塩化物イオン及び金属イオンを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の水処理方法。
[7]
上記処理水が、15~25g/Lの塩化物イオンを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の水の処理方法。
[8]
上記水処理方法が、バラスト水の処理方法であって、
上記処理水が、海水を塩素系殺菌剤で処理したものである、[1]~[7]のいずれかに記載の水処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水処理方法によれば、塩素系殺菌剤で処理した処理水中に残留する塩素を、亜硫酸塩で中和するに当たり、残留塩素の中和効率を十分に高めることができる。これにより、バラスト水等の処理を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、塩素系殺菌剤で処理した処理水中の残留塩素を亜硫酸塩で中和することを含む水の処理方法である。本発明において上記中和反応は、亜硫酸塩(以下、中和剤とも称す。)の酸化抑制剤の共存下で行われる。亜硫酸塩の酸化を抑えながら残留塩素の中和反応を行うことにより、亜硫酸塩の酸化反応を伴う次亜塩素酸塩の生成反応(以下、副反応とも称す。)が抑えられ、上記中和反応によって、処理水中の残留塩素濃度を効果的に低減することができる。
本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0010】
本発明の水処理方法における残留塩素の中和反応、及び上記副反応について詳しく説明する。
亜硫酸塩による処理水中の残留塩素の中和反応は、次亜塩素酸ナトリウムを亜硫酸ナトリウムで中和する場合を例にとると、下記反応式(1)で表すことができる。
NaClO+Na2SO3→Na2SO4+NaCl (1)
他方、上記副反応は、亜硫酸塩が亜硫酸ナトリウムである場合を例にとると、次の反応式(2)によるものと推定される。反応式(2)から、亜硫酸塩の酸化反応と共に塩化ナトリウムの酸化反応が生じ、次亜塩素酸ナトリウムが生成することがわかる。
Na2SO3+NaCl+O2→Na2SO4+NaClO (2)
【0011】
上記反応式(2)では、水中に存在する金属(M)イオン等が触媒として作用し、ラジカル連鎖反応を伴う次の反応(2a)~(2d)が生じているものと推定される。
SO3
2-+Mn+→・SO3
-+M(n-1)+ (2a)
・SO3
-+O2→・SO5
- (2b)
・SO5
-+SO3
2-→SO5
2-+・SO3
- (2c)
SO5
2-+Cl-→SO4
2-+ClO- (2d)
上記の通り、ラジカル連鎖反応によって塩化物イオンが酸化されて次亜塩素酸イオンが生じる。上記反応式(2a)において、nは2以上の整数である。
塩化物イオンや金属イオンは一般的な水中に存在する成分であり、本発明の水処理方法は、淡水、海水を問わず適用することができる。なかでも塩化物イオンやミネラル類の豊富な海水に適用した場合、本発明の水処理方法による残留塩素の中和効率向上効果は、より顕在化し得る。
【0012】
続いて、本発明の水処理方法に用いる各薬剤について説明する。
【0013】
<塩素系殺菌剤>
本発明の水処理方法に用いる塩素系殺菌剤は、水中で次亜塩素酸ないしその塩を生じる化合物である。例えば、次亜塩素酸塩、ジクロロイソシアヌル酸塩などが挙げられる。これらの塩の形態としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。塩素系殺菌剤は次亜塩素酸塩が好ましく、次亜塩素酸ナトリウムがより好ましい。
【0014】
塩素系殺菌剤で処理した処理水は、その残留塩素濃度が好ましくは1~1000ppm、より好ましくは2~100ppm、更に好ましくは2~30ppmとなるように調整される。すなわち、塩素系殺菌剤による殺菌処理が、上記残留塩素濃度の範囲で行われる。本明細書における残留塩素は、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、クロラミン(アンモニア系化合物と次亜塩素酸との反応物)等の化合物に由来する。残留塩素濃度はこれら化合物を塩素原子量に換算して求められる値である。残留塩素濃度は、酸性条件下でヨウ化カリウム(KI)を残留塩素成分と反応させてヨウ素を発生させ、この遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、この滴定量から残留塩素量を算出することにより求めることができる。残留塩素濃度は、具体的には実施例に記載の方法により測定される。
【0015】
<亜硫酸塩(主剤)>
本発明の水処理方法に使用される亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウムなどが挙げられ、好ましくは亜硫酸ナトリウムである。
亜硫酸塩の使用量は、残留塩素濃度に応じて、また目的に応じて、適宜に設定される。
例えば、処理水中の残留塩素に対して物質量(mol)基準で好ましくは0.1~10倍、より好ましくは0.5~5倍、更に好ましくは1~3倍の亜硫酸塩を使用する。
【0016】
<亜硫酸塩の酸化抑制剤(助剤)>
本発明の水処理方法で使用される亜硫酸塩の酸化抑制剤は、亜硫酸塩の酸化を抑制する化合物(換言すれば、亜硫酸イオンの酸化を抑制する化合物であり、塩化物イオンの酸化を抑制する物質であり、いわば、亜硫酸塩を主剤とすれば助剤ということができる。上記亜硫酸塩の酸化抑制剤としては、上記反応式(2a)~(2d)の少なくともいずれかの反応を抑制するものである。
したがって、反応式(2a)における金属イオンをトラップする金属捕捉剤は、亜硫酸塩の酸化抑制剤としても作用する。また、ラジカル捕捉剤は反応式(2a)~(2c)のラジカル連鎖反応を抑えるため、亜硫酸塩の酸化抑制剤としても作用する。さらに、自らが酸化されて亜硫酸塩の酸化を抑制する還元剤もまた、亜硫酸塩の酸化抑制剤としても作用する。
上記金属捕捉剤としては、イミノジ酢酸型キレート樹脂、活性白土等が挙げられる。
上記ラジカル捕捉剤としては、ハイドロキノン、メトキシフェノール、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)、及びトコフェロール(ビタミンE)等が挙げられる。
上記還元剤としては、アスコルビン酸(ビタミンC)又はその塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素、L-システイン、L-アラニン、硫化ナトリウム、及びエリソルビン酸又はその塩等が挙げられる。本発明において「アスコルビン酸」や「エリソルビン酸」を塩で使用する場合、例えば、アルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属塩等の金属塩が好ましく、アルカリ金属塩であるナトリウム塩がより好ましい。
本発明の水処理方法では、上記の亜硫酸塩の酸化抑制剤の1種又は2種以上を用いることができる。本発明に用いる亜硫酸塩の酸化抑制剤は、使用量、実施の容易性、環境影響の観点から、L-システイン及び/又はエリソルビン酸が好ましい。
【0017】
上記の亜硫酸塩の酸化抑制剤の使用量は、亜硫酸塩の使用量等に応じて適宜に設定される。下記に一例を示すが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
上記の亜硫酸塩の酸化抑制剤が使用環境において固体である場合、処理水1Lに対して0.1~30gを添加することができる。
上記の亜硫酸塩の酸化抑制剤が使用環境において液体である場合、酸化抑制剤の濃度が0.1~10ppm(体積基準)となるように処理水中に添加することができる。
また、上記の亜硫酸塩の酸化抑制剤が使用環境において固体であるか、液体であるかに関わらず、亜硫酸塩に対し、物質量(mol)基準で好ましくは0.001~1倍、より好ましくは0.001~0.5倍、更に好ましくは0.001~0.2倍の上記の亜硫酸塩の酸化抑制剤を使用してもよい。
【0018】
本発明の水処理方法における処理水中の残留塩素の中和反応に当たり、亜硫酸塩と、亜硫酸塩の酸化抑制剤との処理水中への添加のタイミングは特に制限されない。例えば、亜硫酸塩と、亜硫酸塩の酸化抑制剤とを混合してから処理水に配合してもよく、両者を別々に、かつ同時に添加してもよく、酸化抑制剤を予め処理水に添加してから、亜硫酸塩を処理水に添加してもよい。亜硫酸塩の酸化抑制剤として金属捕捉剤を用いる場合は、亜硫酸塩を処理水中に添加する前に、当該処理水中に金属捕捉剤を添加し、処理水中の金属イオンを捕捉しておくことが好ましい。
【0019】
本発明において、塩素系殺菌剤で処理される水は特定の水に限定されない。例えば、河川水、湖沼水、地下水等の淡水、海水、汽水等が挙げられる。塩素系殺菌剤で処理した処理水は、上述の通り、通常は塩化物イオン及び上記金属イオンを含んでいる。海水を処理した場合、処理水中の塩化物イオンの濃度は、例えば15~25g/Lである。
【0020】
本発明において、上記中和反応の温度は、通常0~40℃、好ましくは5~35℃、より好ましくは5~25℃、更に好ましくは5~20℃である。
本発明において、塩素系殺菌剤による処理に付される水、及び上記中和反応により得られる水のpH(25℃)は、好ましくは5~9、より好ましくは5.8~8.6、更に好ましくは6.0~8.5、特に好ましくは6.5~8.0である。上記pHがこのような範囲であると、水生生物の殺滅・殺菌を効率的に行える。
【0021】
本発明の水処理方法は、バラスト水へ適用することができる。すなわち、本発明の処理方法によりバラスト水などを塩素系殺菌剤で処理した処理水中の残留塩素を、亜硫酸塩と、亜硫酸塩の酸化抑制剤の共存下で中和して無毒化処理した上で、海水に放出することができる。
【0022】
本発明の水処理方法をバラスト水に適用する場合、亜硫酸塩と、亜硫酸塩の酸化抑制剤の処理水中への添加のタイミングは特に制限されず、バラスト水をバラストタンク等のタンクに取り入れるときであっても、バラスト水をバラストタンクに保存中であっても、バラスト水を放出するときであっても、また、それらの組み合わせであってもよい。
【実施例0023】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下において、特に断らない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。各種物性の評価は以下のとおりに行った。
【0024】
<残留塩素濃度>
日本水道協会規格JWWA K-120-2001の水道用次亜塩素酸ナトリウムの試験方法に準拠して、処理水中の残留塩素濃度(ppm、質量基準)を測定した。
【0025】
<酸化還元電位>
処理水の酸化還元電位(ORP)をハンディORP計(堀場製作所製D-52)で測定した。酸化還元電位は、塩素系殺菌剤で処理した処理水の中和の進行の程度を表す。
【0026】
[実施例1~13]
20Lの海水に有効塩素濃度13%の次亜塩素酸ナトリウムを添加し、残留塩素濃度5ppm(質量基準)の処理水を得た。次亜塩素酸ナトリウムは、東亞合成(株)社製、TGバラストクリーナーを用いた。
この処理水中に、表1に示す、亜硫酸塩の酸化抑制剤を添加した。常温(25℃)で固体であるイミノジ酢酸型キレート樹脂、又は活性白土は、それぞれ処理水1Lに対して約4gの濃度となるよう添加した後、残留塩素濃度に対して物質量(mol)基準で1.6倍となるように亜硫酸ナトリウムを添加した。
室温で液体であるトコフェロール(ビタミンE)、ハイドロキノン、メトキシフェノール、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)は、亜硫酸ナトリウムと混合して、一括して処理水に添加した。この添加後の処理水中の亜硫酸ナトリウム濃度は、当該処理水中の残留塩素に対して物質量(mol)基準で1.6倍となるようにした。また、上記添加後の処理水中のトコフェロール濃度は、2ppmとなるようにした。
以下の還元剤:L-アスコルビン酸(ビタミンC)、チオ硫酸ナトリウム、二酸化チオ尿素、L-システイン、L-アラニン、硫化ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウムは、亜硫酸ナトリウムとこの還元剤とを混合して一括して添加した。なお、亜硫酸ナトリウムの添加量は残留塩素濃度に対して物質量(mol)基準で1.6倍とし、残留塩素濃度に対して物質量(mol)基準で0.25倍の還元剤を添加した。
亜硫酸ナトリウムは、東亞合成(株)社製、TGエンバイロンメンタルガードを用いた。
【0027】
[比較例1]
上記処理水に、残留塩素濃度に対して物質量(mol)基準で1.6倍となるように亜硫酸ナトリウムを添加し、亜硫酸塩の酸化抑制剤については添加しなかった。
【0028】
実施例1~13及び比較例1について、残留塩素の亜硫酸ナトリウムによる中和反応後、処理水中の残留塩素濃度を測定し、下記に示す評価基準に当てはめ評価した。
-評価基準-
A:残留塩素濃度が0ppm
B:残留塩素濃度が0ppmより多く0.2ppm未満
C:残留塩素濃度が0.2ppm以上0.4ppm未満
D:残留塩素濃度が0.4ppm以上0.6ppm未満
E:残留塩素濃度が0.6ppm以上
【0029】
【0030】
イミノジ酢酸型キレート樹脂は三菱ケミカル(株)社製であり、その他の酸化抑制剤は富士フイルム和光純薬(株)社製のものを使用した。なお、富士フイルム和光純薬社製の酸化抑制剤は、いずれも一級又は特級のグレードのものを用いた。
【0031】
亜硫酸塩の酸化抑制剤を処理水に添加しなかった比較例1では、中和後の処理水中には、0.6ppm以上の残留塩素が存在した。一方、各種酸化抑制剤を処理水に添加した実施例1~13では、中和後の処理水中の残留塩素量は0.2ppm未満へと抑えられ、亜硫酸塩の酸化抑制剤を処理水に添加しなかった場合より、格段に残留塩素が少なくなっていた。
【0032】
[実施例14~17]
残留塩素の中和反応において、亜硫酸塩の酸化抑制剤の処理水中濃度を表2に記載のとおり変更したこと以外は、上述した[実施例1~13]に準じて水処理を行った。
【0033】
【0034】
表2はいずれも本発明の結果であるが、エリソルビン酸ナトリウム及びL-システインは、より少ない添加量で、処理水中の残留塩素濃度を効果的に低減できていることがわかる。