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特開2022-99093酸化ガス回収装置及び酸化ガス回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099093
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】酸化ガス回収装置及び酸化ガス回収方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/16 20060101AFI20220627BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20220627BHJP
【FI】
H01M8/16
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212854
(22)【出願日】2020-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】390018474
【氏名又は名称】新日本空調株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】520506420
【氏名又は名称】石▲崎▼ 創
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 創
(72)【発明者】
【氏名】高塚 威
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 洋一
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126BB06
5H126BB08
5H126JJ00
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】電力密度が向上された酸化ガスの固定装置及び固定方法を提供する。
【解決手段】課題は、酸化ガスが固定されるエアカソード電極11と、アノード電極26を備えるアノード槽20と、アノード槽20とエアカソード電極11を隔てる陽イオン交換膜30とを有し、アノード槽20は、環境水Sを有するものであり、エアカソード電極11で、酸化ガスを含むガスと水分の供給を受けるものである、ことを特徴とする酸化ガス固定装置及び酸化ガス固定方法によって解決される。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ガスが固定されるエアカソード電極と、アノード電極を備えるアノード槽と、アノード槽とエアカソード電極を隔てる陽イオン交換膜とを有し、
前記アノード槽は、環境水を有するものであり、
前記エアカソード電極は、酸化ガスを含むガスと水分の供給を受けるものである、
ことを特徴とする酸化ガス固定装置。
【請求項2】
前記エアカソード電極に前記ガスを供給するガス供給手段と、
前記エアカソード電極に水分を供給する水分供給手段とを有する、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項3】
前記ガスは、前記水分供給手段から供給される水分と混合された混合ガスである、
請求項2に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項4】
前記エアカソード電極は、酸化ガスを含むガスと水分の供給を受けてアルカリ性溶液が生成され、当該アルカリ性溶液のpHが7以上とされるものである、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項5】
陽イオンは、アノード槽から陽イオン交換膜を透過してエアカソード電極に至るものである、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項6】
前記エアカソード電極は、膜状であり、一方の面が陽イオン交換膜から透過された環境水と接しており、他方の面が前記ガスに接しているものである、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項7】
酸化ガスが二酸化炭素である、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項8】
前記二酸化炭素が0.03%以上含まれるものである、
請求項7に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項9】
酸化ガスがアノード槽から発生した二酸化炭素を含むものである、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項10】
酸化ガスが固定されるエアカソード電極と、アノード電極を備えるアノード槽と、アノード槽とエアカソード電極を隔てる陽イオン交換膜とを有し、
前記アノード槽は、環境水を有するものであり、
前記エアカソード電極に、酸化ガスを含むガスと水分を供給する、
ことを特徴とする酸化ガス固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ガス回収装置及び酸化ガス回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化ガスの放出による地球規模の温暖化が問題となっており、地球環境の保全の立場から酸化ガスを回収する研究がなされている。酸化ガスの回収に関する研究として電池を用いたものがあり、中でも燃料電池が注目されてきている。燃料電池は、発電効率が良く、水素や酸素から発電でき、排出されるものが水であるので環境に優しい等のメリットがある。酸化ガス、例えば二酸化炭素を固定する技術の開発は地球環境の保全の観点からも有益であり、これに関する技術が、例えば以下に示す文献において開示されている。
【0003】
非特許文献1は、藻類を用いて二酸化炭素を固定する技術を開示したものである。この技術は、アノード槽で発生した二酸化炭素をカソードチャンバに送り、カソードチャンバで藻類バイオマスに変換することによって、二酸化炭素の固定を図るものである。また、非特許文献2は、二酸化炭素をメタンに還元して固定する技術を開示している。具体的にはこの技術は、アノード槽内の有機物の酸化により発生する電荷を用いて、カソードで二酸化炭素とプロトンからメタンを生成することによって二酸化炭素の固定を図るものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】微生物炭素捕捉セル中の藻類カソードによる、アノードから排出された二酸化炭素の隔離「バイオセンサーズ アンド バイオエレクトロニクス 25(2010)2639-2643」
【非特許文献2】電気メタン生成法によるメタンへの直接的な電気的生物学的変換「エンバイロンメンタル サイエンス アンド テクノロジー 2009,43,3953-3958」
【非特許文献3】エアカソードMFCの発電力を高めるための外部からの二酸化炭素及び水の供給「エンバイロンメンタル サイエンス アンド テクノロジー 2014,48,11204-11210」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献に記載される燃料電池は、環境保全の観点からは優れたものであるが、出力、特に、電力密度が小さく、さらなる改良の余地があるのではないかと、発明者等は考えている。より電力密度が高まれば、酸化ガスがより多く固定されるものとなり、広い分野においてこの燃料電池を汎用的に用いることができ、より有用性を備えたものとなる。そこで、本発明が解決する課題は、電力密度が向上された酸化ガスの固定装置及び固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を重ね、酸化ガスが供給されていれば、カソード電極の反応が促進され、特に、供給される酸化ガスが湿った状態であればカソード電極の反応がより促進されたものとなるとの知見を得た。この知見をもとに完成させた発明の態様が次に示すものである。
【0007】
酸化ガスが固定されるエアカソード電極と、アノード電極を備えるアノード槽と、アノード槽とエアカソード電極を隔てる陽イオン交換膜とを有し、
前記アノード槽は、環境水を有するものであり、
前記エアカソード電極は、酸化ガスを含むガスと水分の供給を受けるものである、
ことを特徴とする酸化ガス固定装置。
【0008】
酸化ガスが固定されるエアカソード電極と、アノード電極を備えるアノード槽と、アノード槽とエアカソード電極を隔てる陽イオン交換膜とを有し、
前記アノード槽は、環境水を有するものであり、
前記エアカソード電極に、酸化ガスを含むガスと水分を供給する、
ことを特徴とする酸化ガス固定方法。
【0009】
本態様であれば、アノード槽に陽イオンが含まれ、陽イオン交換膜が備わるので、通電により、陽イオンがアノード槽から陽イオン交換膜を透過してエアカソード電極に達することとなる。エアカソード電極では、供給を受けた水分と酸化ガスを含むガスからアルカリ性溶液が生成される。エアカソード電極には、生成されたアルカリ性溶液が付着しているので、陽イオンとアルカリ性溶液が化学反応して析出物が生成する。アルカリ性溶液は酸化ガスがイオン化したものであるので、析出物は酸化ガス由来のものであり、したがって、酸化ガスがエアカソード電極上で固定されることになる。
【0010】
エアカソード電極に酸化ガスを含むガスと水分が供給されると、水分に酸化ガスが溶解して生成されたプロトンが、エアカソード電極における後述する電極反応式(1)の反応物として消費される。従来の、例えば非特許文献1に示される装置では、電極が液体内に浸かった形態となっているので、液体のpHの分布如何により電極反応式(1)が促進されない場合が生じ、電力密度が相対的に低いものとなっている。一方、本態様は、アルカリ性溶液の作用によりエアカソード電極がアルカリ性を呈しているので、電極反応式(1)へのプロトンの供給が促進され、すなわち、電子(e-)の流れが促進される結果、電力密度が向上されたものとなる。なお、カソード電極に二酸化炭素ガスを供給する研究として、非特許文献3がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、電力密度が向上された酸化ガスの固定装置及び固定方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】燃料電池の側面図である。
図2】燃料電池の正面図である。
図3図2の点線で囲まれた部位Zの拡大図である。
図4図2においてY-Y方向に見た展開図である。接合剤を省略している。
図5】電子量と固定される二酸化炭素量との関係図である。
図6】抵抗値と固定された二酸化炭素量との関係図である。
図7】FTIR分光法の結果を表す図である。
図8】XPSの結果を表す図である。
図9】炭酸塩、重炭酸塩のSEM画像を表す図である。
図10】外部回路を流れる電子量と生成した炭酸塩の物質量との関係図である。
図11】燃料電池の変形例を示す図である。
図12】酸化ガス固定装置を示す図である。
図13】酸化ガス固定装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0014】
本発明に係る酸化ガス固定装置の実施形態は、アノード電極26と、カソード電極11と、アノード電極26とカソード電極11を隔てる隔膜を有するものであり、カソード電極11は、水分と酸化ガスの供給を受けるものである。また、カソード電極11への水分と酸化ガスの供給手法としては、酸化ガスを含むガスを供給するガス供給手段と、カソード電極に水分を供給する水分供給手段によるものとすることができる。酸化ガスとは、例えば、1気圧、25℃においてガス状の酸化物ということができ、また、水に溶解したときに酸性を呈する気体ということもできる。水に溶解したときに酸性を呈する気体としては、例えばCOx、CHx、Nzx、Syx(ここで、xyzは例えば1~4の整数である。)をいい、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素、二酸化硫黄、三酸化硫黄を例示できる。二酸化炭素は温室効果ガスとして大気中に排出され、また生物の呼吸等でも生成されるので、地球環境の保護の観点から固定するものとして望ましい。
【0015】
(カソード)
カソード電極11の形状は、アルカリ性溶液が付着する形状であれば特に限定されないが、例えば棒形状や面形状、膜状とすることができる。カソード電極11は、アルカリ性溶液を充填したチャンバに含浸された形態であってもよいし、周囲の雰囲気に晒された形態、例えばエアカソード電極であってもよい。特にエアカソード電極だと、エアカソード電極近傍においてpHのばらつきが少ないので好ましく、また、エアカソード電極における電極反応に用いられる酸素を、エアカソード電極近傍の雰囲気から得ることができるので好ましい。カソード電極11の素材は、カソード電極11で起こる電極反応が阻害されないものであれば特に限定されずに用いることができる。カソード電極11の素材としては、例えば炭素、ステンレス鋼等を用いることができ、特に炭素繊維、その中でも白金含有炭素繊維であれば、電極反応の阻害が殆どないので好ましい。白金含有炭素繊維を用いる場合、繊維表面に対する白金の含有量は例えば、4mg-Pt/cm2とすることができる。
【0016】
カソード電極11は、カソード電極11を覆うカソードチャンバ10内に備わるものとすることができる。カソードチャンバ10は、酸化ガスや水分等が流入する流入部13と、酸化ガスや水分等が流出する流出部14と、陽イオン交換膜30を取り付け可能な窓部15を備えるものとなっている。窓部15は、カソード電極11が膜状である場合は、カソード電極11を取り付けることもできるものとなっている。
【0017】
カソード電極11が膜状である場合は、カソード電極11と陽イオン交換膜30が対向して配されている形態が好ましい。具体的には、図2及び図3に示すように、陽イオン交換膜30におけるカソードチャンバ10側の面に、カソード電極11を重ねて配するものとすることができる。この場合、カソード電極11と陽イオン交換膜30とで挟まれた空間は、アノード槽20から陽イオン交換膜30を透過した液体で満たされ、液層31が形成される。陽イオン交換膜30とカソード電極11は接合されていると望ましく、接合には接合剤12等を用いることができる。接合剤12は、イオンの流動が阻害されないように、陽イオン交換膜30の面上に、例えば、格子状、ストライプ状に設けるとよい。図4は燃料電池の一部分を展開したものであり、接合剤12を省略している。
【0018】
カソード電極11が膜状である場合は、カソード電極11は、一方の面が陽イオン交換膜から透過された環境水と接しており、他方の面が前記ガスに接しているものとすることができる。この場合、カソード電極11は、環境水がカソード電極11から透過されて、ガスに接している面から漏れないように構成するとよい。
【0019】
(水分供給手段)
エアカソード電極への水分の供給手段は、エアカソード電極に水分を流す手法、エアカソード電極に水分を噴霧する手法、酸化ガスを含むガスと水分を混合して混合ガス化して、この混合ガスをエアカソード電極に供給する手法を例示できる。混合ガスを供給する手法としては、例えば、水分67を有する水槽66にガスを供給してガスを湿らせ、水分を含む混合ガスを得て、この混合ガスをエアカソード電極に供給する手法とすることができる。
【0020】
(ガス供給手段)
カソード電極11へのガスの供給手段は、例えば、カソード電極11にガスを直接吹き付ける手法、カソードチャンバ10の流入部13にガスを供給する手法、アルカリ性溶液が充填されたチャンバにカソード電極11が含浸されている形態の場合は、アルカリ性溶液中に供給する手法等とすることができる。
【0021】
ガス供給手段の一例を図12を参照しつつ説明すると、酸化ガスを供給する酸化ガス供給装置60と酸化ガス供給装置60と水槽66をつなぐ酸化ガス配管64と、酸化ガス供給装置60から供給された酸化ガスを水槽66に導くガスポンプ62を備えるものとすることができる。これに加え、空気を供給する空気供給装置61と空気供給装置61と水槽66をつなぐ空気配管65と、空気供給装置61から供給された空気を水槽66に導く空気ポンプ63を備えるものとすることができる。酸化ガス供給装置60と空気供給装置61は相互に独立して供給量を調節することができるものとすることができ、この場合、カソード電極11へ供給されるガスに含まれる酸化ガスの比率を調節でき好ましい。なお、水槽66は、上方が閉じられており、ガスが水槽内に流入する流入部と、ガスが水槽外に流出する流出部を備えたものとすることができる。水槽内は、水分76と、当該水分の水面上方の空間、すなわちヘッドスペースにある空気と、で占められている。
【0022】
水槽66に導かれたガスは、水分と共に水槽66から放出され、水槽66と流入部13をつなぐガス配管68,69を通り、カソード電極11へ供給される。図12では、カソードチャンバ10を2つ設けたものを開示しているが、カソードチャンバ10を1つのみ設けたものとすることもできる。この場合、カソードチャンバ10の流入部13と水槽66とをつなぐ配管は一つあればよい。
【0023】
カソード電極11へ供給されたガスのうちの一部は、カソード電極11の化学反応に用いられ、残部は、流出部14から流出される。流出部14には、流出されたガスを導くガス配管70,71を設けることができる。なお、カソードチャンバ10を1つのみ設けた場合は、当該カソードチャンバ10の流出部14にのみガス配管を設けるとよい。
【0024】
カソード電極11へ供給される酸化ガスを含むガスは、特に二酸化炭素であれば0.03%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは50%以上含まれるものとするとよい。ガス中に含まれる二酸化炭素が0.03%未満だとカソード電極11での電極反応が促進されないおそれがある。
【0025】
カソード電極11に供給される酸化ガスを含むガス、又は混合ガスの供給速度は、カソード電極11のガスに接している面が乾かない程度であれば特に限定されないが、例えば、カソード電極の単位面積当たり0.3~2.0L/h/cm2、好ましくは0.6~1.0L/h/cm2であればよい。供給速度が当該範囲を下回ると、プロトンの供給が少なく電極反応が抑制されることとなり、供給速度が当該範囲を上回ると、カソード電極11に付着するアルカリ性溶液を吹き飛ばしてしまうこととなるおそれがある。
【0026】
本実施形態のカソード電極11における、供給されるガスが接する面積は、酸化ガス固定装置のサイズにより適宜調節することができ限定されないが、例えば、アノード電極26の投射面積に対するカソード電極11の面積として、例えば0.01~2cm2-カソード電極面積/cm2-アノード電極面積、好ましくは0.1~1cm2-カソード電極面積/cm2-アノード電極面積とすることができる。
【0027】
(アノード)
アノード電極26は、アノード槽20内に備わり、アノード槽20内に入っている環境水に差し込んだり、環境水中に電極全体を沈めたりして設置することができる。アノード槽20は、環境水を入れておくことができ、環境水を留めておいてもよいし、回分式又は連続式に環境水を流入させるものとしてもよい。アノード槽20は、環境水を流入させる流入部21と、環境水を流出させる流出部22と、外部回路(例えば導線40)を槽内に挿入する導線挿入部23と、陽イオン交換膜30を取り付け可能な窓部25を備えたものとすることができる。回分式又は連続式に環境水Sを流入させる場合は、環境水Sを、流入部21からアノード槽20に流入させ、流出部22から流出させるものとすることができる。アノード槽20における環境水の滞留時間は、特に限定されないが、例えば、1~48時間、好ましくは2~24時間、より好ましくは3~6時間とするとよい。滞留時間が1時間を下回ると、環境水の入れ替わりが早過ぎ、アノード槽内からの微生物の流出が発生するおそれがある。また、滞留時間が48時間を上回ると、微生物の餌となる被酸化物が尽きてしまうおそれがある。ここで、アノード槽20における環境水の滞留時間は、次式で定義することができる。
(滞留時間)=(アノード槽20への環境水Sの流入量(cm3/h))/(アノード槽における最大滞水量(cm3))
【0028】
環境水とは、公共用水域にある水、地下水、下水ということができ、特に下水ということができる。環境水中には、陽イオンや被酸化物、微生物が含まれる。環境水はアルカリ度を有する。このアルカリ度は、例えば、JIS K 0400-15-10:1998で測定することができる。
【0029】
被酸化物とは、酸化反応により電子を放出して酸化されるものをいい、特に限定されないが、例えば、カルボン酸や、炭水化物、炭水化物を構成する単糖類、多糖類をいい、単糖類としては、アルドース、ケトース等、多糖類としては、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等、カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸、カルボン酸誘導体等を挙げることができる。
【0030】
被酸化物は、微生物により酸化分解される。この微生物は、環境水中に含まれる生物であり、環境水中に浮遊していたりアノード電極26に付着していたりしてアノード槽内に保持される。この微生物としては、電気エネルギーを産生させる微生物を例示でき、具体的には、サッカロミケス属(Saccharomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、カンジタ(Candida)、マイクロコッカス(Micrococcus)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、レンサ球菌(Streptococcus)、ロイコノストック(Leuconostoa)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、アースロバクター(Arthrobacter)、バシラス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、ナイセリア属(Neisseria)、大腸菌属(Escherichia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、セラチア菌(Serratia)、グラム陰性菌(Achromobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、アセトバクタ―属(Acetobacter)、モラクセラ(Moraxella)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、ニトロバクター属(Nitorobacter)、チオバシラス属(Thiobacillus)、酢酸菌(Gluconobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、キサントモナス属(Xanthomonas)、ビブリオ属(Vibrio)、コマモナス属(Comamonas)、プロテウス菌(Proteus(Proteus vulgaris))、シェワネラ属(Shewannell)、ゲオバクタ―属(Geobacter)に属する細菌、糸状菌等を挙げることができる。仮に、アノード槽20に保持される液体を人工的に調製する場合は、これらの微生物を当該液体に植種して環境水としてもよい。
【0031】
アノード電極における電極反応は、電子を産生するものであり、酸素があると産生された電子が酸素と反応して消費されてしまうので、アノード槽20に保持される環境水は嫌気的であるのが望ましい。溶存酸素濃度で嫌気の程度を調整することができ、例えば、環境水の溶存酸素濃度が4.0mg/l以下、好ましくは2.0mg/l以下、さらに好ましくは1.0mg/l以下であるとよい。なお、溶存酸素濃度は、JIS K0102:2016に準拠して測定される。
【0032】
アノード槽20とカソード電極11は、陽イオン交換膜30で隔てられて隣接しており、アノード槽内の環境水に含まれる陽イオンが、窓部25から流出し、陽イオン交換膜30を透過して、カソード電極11に到達するものとなっている。
【0033】
カソード電極11がカソードチャンバ10に備わる場合は、アノード槽20とカソードチャンバ10は、窓部25と窓部15が陽イオン交換膜30で隔てられ、対向して隣接しており、アノード槽内の環境水に含まれる陽イオンが、窓部25から流出し、陽イオン交換膜30を透過して、窓部15からカソードチャンバ10に流入するものとなっている。
【0034】
アノード槽内の環境水は陽イオンを含むものであり、陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、プロトン(H+)、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン等を例示でき、具体的には、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン等を例示できる。
【0035】
アノード電極26とカソード電極11とは外部回路を介して接続され、電流が流れるものとなっている。
【0036】
(隔膜)
アノード電極26とカソード電極11を隔てる隔膜は、陽イオンを透過する膜であれば、特に限定されないが、例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンやポリビニルアルコールを基とした電解質膜からなるものを用いることができる。市販されているものとしてはNafion117を用いることができる。
【0037】
以上、アノード電極26、アノード槽20、隔膜、カソード電極11、カソードチャンバ10、外部回路、環境水、水分、ガスを含めて燃料電池50ということができる。
【0038】
(アルカリ性溶液)
本実施形態を起動させると、水と酸化ガスを含むガスの供給を受けたエアカソード電極は、その表面にアルカリ性溶液が生成する。アルカリ性溶液が生成されているかは、例えば、エアカソード電極に液滴が付着しているかどうかによって確認することができる。水と酸化ガスを含むガスの供給量を多くすれば、液滴を多数確認でき、同供給量を少なくすれば、液滴が減り又は確認できなくなる。アルカリ性溶液は、主に水酸化物イオンや酸化ガスが溶け込んで発生した炭酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン等を有するものである。
【0039】
(反応等)
本実施形態を起動させると、カソード電極11では、次に示す電極反応、式(1)が生じる。
[式(1)]
2 + 4H+ + 4e- → 2H2
この電極反応により、プロトンが消費される。従来の燃料電池では、プロトンは、(ア)アノード側から陽イオン交換膜30を透過して供給される手段(イオン交換手段)のほか、(イ)水の電離により供給される手段(電離手段)により供給されるものであった。しかしながら、これらによるプロトンの供給速度が、上記電極反応によるプロトンの消費速度よりも小さいため、プロトンの供給速度が律速となり、カソード電極ではプロトン不足が生じていると推測される。本実施形態では、前記プロトンの供給手段に加え、(ウ)水分と酸化ガスとの化学反応により発生するプロトンをカソード電極に供給する手段が備わったものとなっている。(ウ)の手段が加わることで、カソード電極でのプロトン不足が解消され、プロトンの消費速度が大きくなり、上記電極反応が促進され、結果として酸化ガスが、液体や固体(塩)の形態でカソード電極に固定されることになる。
【0040】
本実施形態では、酸化ガスは、水分と反応してイオン化して固定されるものと考えられるが、例えば、二酸化炭素は、次記の化学反応により固定されるものと推測される。第1に二酸化炭素が水分を得て炭酸イオンとなり、プロトンを生成する化学反応が起こる。この化学反応を次に示す。
CO2(g) + H2O → CO2(aq)
CO2(aq) → H2CO3
2CO3 → CO3 2- + 2H+
【0041】
第2に、アノード槽20から陽イオン交換膜30を透過してカソード電極に到達した陽イオン(Mn+)と炭酸イオンから炭酸塩が生成される化学反応が起こる。この化学反応を次に示す。
Y・CO3 2- +X・Mn+ → MX(CO3Y
ここで、n,X,Yは正の整数である。
【0042】
二酸化炭素は、固定されてカソード電極表面に炭酸塩、重炭酸塩の結晶Cとして析出される(図9参照)。この結晶に対してFTIR(フーリエ変換赤外分光法)による計測(図7参照)、XPS(X線光電分光法)による計測(図8参照)を行うことで、炭酸イオン、重炭酸イオンの存在、炭酸塩の存在を確認することができる。例えば、図7に示す2344cm-1、712cm-1の透過率TrのピークはCO3 2-イオン、図8に示す292eVの強度StのピークはK(カリウム)の存在を表す。
【0043】
カソードに固定される二酸化炭素量(μmol)と外部回路を流れる電子量(μmol)は、図5に示すように正の相関性を有し、この図から二酸化炭素の固定量を増加させるためには、電子量、すなわち電力密度(W/m3)を増加させると良いことがわかる。
【0044】
カソード電極は、水分への酸化ガスの溶解により発生するプロトンの供給を受ければ、上記電極反応、式(1)が促進されるが、この場合、カソード電極にアルカリ性溶液が付着されていると、酸化ガスがアルカリ性溶液に溶解されて固定化し易くなるので好ましい。
【0045】
カソード電極におけるアルカリ性溶液のpHは、次のように変動する。カソード電極が水分と酸化ガスの供給を受けると、水分から電離したプロトン(水素イオン)が前述の電極反応、式(1)によって消費される。また、水分から電離した水酸化物イオンや酸化ガスは、アルカリ性溶液としてカソード電極に付着した状態になる。水分と酸化ガスの供給を続けると、カソード電極上のプロトン量が増加するので、pHが小さくなり、電力密度が相対的に大きく、酸化ガスの固定化が促進される。一方で、水分と酸化ガスの供給を抑制すると、カソード電極上のプロトン量が減少するので、pHが大きくなり、電力密度が相対的に小さく、酸化ガスの固定化が抑制される。
【0046】
アルカリ性溶液のpHは、7以上、好ましくは7~12、より好ましくは8~10であるとよい。アルカリ性溶液のpHが7より小さいと、酸化ガスの供給量が過大であり、エネルギー効率が良くない。
【0047】
アノード槽内に認められる微生物の作用により、アノード電極26では、次に示す電極反応が生じる。例えば、被酸化物がアルドースに分類されるグルコースであれば、アノード電極における電極反応は、
6126 → C6106(グルコノラクトン) +2H+ + 2e-
となり、被酸化物が酢酸であれば、アノード電極における電極反応は、
CH3COOH + 2H2O → 2CO2 + 8H+ + 8e-
CH3COO- + 2H2O → 2CO2 + 7H+ + 8e-
となる。
【0048】
アノード槽内の環境水中に含まれる微生物は呼吸により二酸化炭素を発生させるので、この二酸化炭素を固定するようにすれば、本実施形態の系外への二酸化炭素の排出が抑制され、より環境保全に寄与する形態となる。そこで、エアカソード電極に供給する酸化ガスがアノード槽から発生した二酸化炭素を含むものとする形態とすると好ましい。
【0049】
(電力密度)
本実施形態によれば、出力される電力密度は15~80W/m3、好ましくは60~80W/m3になる。非特許文献1や非特許文献2に開示される従来型の燃料電池の電力密度は高くても10W/m3程度であり、本実施形態は、従来型の燃料電池に比べ、電力密度が向上されたものとなっている。
【0050】
(固定量)
本実施形態の酸化ガス固定装置及び酸化ガス固定方法で、固定される酸化ガスの固定量は、カソード電極単位面積当たり0.066~0.172mоl/日/m2、好ましくは0.106~0.172mоl/日/m2となる。なお、酸化ガスが固定されることで、例えば、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩等が析出される。
【0051】
(抵抗値)
本実施形態は、抵抗値が100Ω(オーム)以下、好ましくは100Ω(オーム)以下、より好ましくは10Ω(オーム)以下で起動させるとよい。100Ω(オーム)を上回ると、酸化ガスを固定する効率が悪化するおそれがある。図6は、本実施形態を用いて、抵抗を3種用意して抵抗値を3段階に変化させ、固定された二酸化炭素の量を測定した結果を表すものである。カソード電極に供給された二酸化炭素量は、アノード槽の微生物の呼吸により発生した二酸化炭素量と二酸化炭素の供給装置から供給された二酸化炭素量の合計である。同図に示される結果は棒グラフで表されており、固定された二酸化炭素の総量を「Ct」で示し、カソード電極に供給された二酸化炭素量のうちの、二酸化炭素の供給装置から供給された二酸化炭素量を「Cm」で示している。測定回数は、抵抗各々に対して3回であった。抵抗値が小さいほど、固定された二酸化炭素の量が増加しているのが分かる。
【0052】
本実施形態は、電流が0.1~4mA、電圧が0.1~0.6V、電力が0.01~2.4mWとなるものとなっている。
【0053】
(変形例)
本実施形態では、酸化ガスの固定量は、酸化ガスを含むガスと水分の供給を受けるカソード電極11の面積に依存するものとなっている。カソード電極11の面積を大きくすれば、酸化ガスの固定量が増加する。そこで、アノード槽20に設ける窓部25を複数個備えた別の実施形態を開示することができる。この実施形態にすれば、カソード電極11の面積を稼ぐことができる。例えば、アノード槽20に窓部25を2つ設けた燃料電池150を有する別の実施形態について、図11を参照しつつ次に説明する。
【0054】
図11では、カソード電極(11,11)を2つ有し、第1のカソード電極11とアノード槽20の第1の窓部25は、第1の陽イオン交換膜30で隔てられて隣接しており、第2のカソード電極11とアノード槽20の第2の窓部25は、第2の陽イオン交換膜30で隔てられて隣接しており、アノード槽内の環境水に含まれる陽イオンが第1の窓部25と第2の窓部25から流出し、第1のイオン交換膜30と第2のイオン交換膜30を透過して、第1のカソード電極11と第2のカソード電極11に至るものとなっている。
【0055】
カソード電極(11,11)がカソードチャンバ(10,10)に備わる場合は、アノード槽20と第1のカソードチャンバ10は、第1の窓部25と第1の窓部15が第1の陽イオン交換膜30で隔てられ、対向して隣接しており、アノード槽20と第2のカソードチャンバ10は、第2の窓部25と第2の窓部15が第2の陽イオン交換膜30で隔てられ、対向して隣接しているものとなっている。アノード槽内の環境水に含まれる陽イオンが、第1の窓部25から流出し、第1の陽イオン交換膜30を透過して、第1の窓部15から第1のカソードチャンバ10に流入し、及び第2の窓部25から流出し、第2の陽イオン交換膜30を透過して、第2の窓部15から第2のカソードチャンバ10に流入するものとなっている。第1のカソード電極11と第2のカソード電極11各々は、酸化ガスを含むガスと水分の供給を受けてアルカリ性溶液が発生する。
【0056】
第1のカソードチャンバ10と第2のカソードチャンバ10には、それぞれ、酸化ガスや水分等を、流入させる流入部13と流出させる流出部14が備わる。
【0057】
ガス供給手段と水分供給手段についても、別の実施形態を開示することができる。この別の実施形態を図13を参照しつつ説明する。ガス供給手段は、酸化ガスを供給する酸化ガス供給装置60と、酸化ガス供給装置60と流入部13とをつなぐ配管64′と、配管64′に備わり、酸化ガス供給装置60から流入部13に酸化ガスを導くガスポンプ62と、空気を供給する空気供給装置61と、空気供給装置61と流入部13とをつなぐ配管65′と、配管65′に備わり、空気供給装置61から流入部13に空気を導く空気ポンプ63とを有する。水分供給手段は、水分供給装置80と、水分供給装置80と流入部13とをつなぐ配管82(流入部が2つある場合は、配管82,83)と、水分供給装置80から流入部13に水分を導く水ポンプ81とを有する。水分供給手段によりカソードチャンバ10に導入された水分は、カソード電極11に直接吹き付けられてもよいし、ガス供給手段によりカソードチャンバ10に導入されたガスと混合されてカソード電極11に供給されてもよい。
【0058】
(その他)
理論的には、酸化ガスの固定量は陽イオン交換膜を透過されてカソード電極に至る陽イオンの量に比例する。しかしながら、カソード電極の状態により酸化ガスの固定量が理論的に算出される量に達しない場合がある。図10を参照しつつ説明すると、理論的に算出される固定された炭酸塩の物質量は、線R0で表される。例えば、カソード電極に供給される流体が乾燥処理を施した空気である場合、固定された炭酸塩の物質量は、線R4で表される。また、カソード電極に供給される流体が乾燥処理を施さない空気である場合、固定された炭酸塩の物質量は、線R3で表される。カソード電極に供給される流体が、水中を通過させて得られた空気、すなわち湿潤空気である場合、固定された炭酸塩の物質量は、線R2で表される。カソード電極に供給される流体が、空気と二酸化炭素の比率を1:1として混合されたガスであって、水中を通過させて得られたものである場合、固定された炭酸塩の物質量は、線R1で表される。このことから、乾燥した空気よりも、湿潤空気の方が酸化ガスを塩として固定することができ、また、カソード電極に供給される流体に占める酸化ガスの濃度が高いほど、酸化ガスを塩としてより多く固定することができることが分かる。
【実施例0059】
図12に示した実施形態に係る酸化ガス固定装置を使用して、酸化ガス、特に二酸化炭素の固定を行った。酸化ガス固定装置の構成を次に示す。エアカソード電極として、繊維表面に対する白金の含有量を4mg-Pt/cm2とする白金含有炭素繊維を用いた。カソード電極の投射面積に対するカソード電極の面積は、1cm2-カソード電極面積/cm2-アノード電極面積とした。隔膜として、Nafiоn117を用いた。アノード電極として、炭素フェルトを用いた。アノード槽に入れる液体は、溶媒を蒸留水として、表1に示す試薬を、同表の濃度になるように混合した後、高圧蒸気滅菌処理して調製した。
【0060】
【表1】
【0061】
操作手順は次のとおりである。
(1)調製した液体と種汚泥をアノード槽に投入して環境水とし、アノード電極とエアカソード電極を外部回路でつないで閉回路状態にして、1週間バッチ状態で静置させた。1週間後電流、電圧値を計測して安定したのを確認した後、調製した液体をアノード槽に滞留時間が3時間となるように連続的に供給した。外部回路に抵抗値10Ωの外部抵抗を接続した。
【0062】
(2)開回路状態にして、エアカソード電極の表面を蒸留水で洗浄した後、再び閉回路状態にして、6時間、ガスをエアカソード電極表面に供給速度を0.167L/h/cm2として供給し続けた。当該ガスは、組成を変化させたものそれぞれを供給した。具体的には、ガスの組成が、空気のみからなるものを試験例1、水分を含む空気を試験例2、二酸化炭素と空気が1:1に混合されたもの(以下、「濃CO2ガス」ともいう。)を試験例3、水分を含む濃CO2ガスを試験例4として、それぞれのガスをエアカソード電極に供給した。
【0063】
ここで、水分を含む空気とは、水槽66内の水中に導かれて、水中から水面上方、すなわちヘッドスペースに移動して得られた空気、ということができる。
【0064】
試験例1~試験例4それぞれについて、電流、電圧等を計測して電力密度を計算した。
【0065】
(3)上記(2)の操作後、開回路状態にして、エアカソード電極表面に生成したアルカリ性溶液及び析出物に、既知量の蒸留水を滴下し、混合して均一な濃度の液体を得た。
【0066】
(4)得られた液体を高速液体クロマトグラフィー法、及びICP発光分光分析法で計測した。高速液体クロマトグラフィー法(JIS K 0124:2011に規定される試験方法)により炭酸イオン、酢酸イオンを計測し、ICP発光分光分析法(JIS K 0101:1998に規定される試験方法)によりカリウムイオン、ナトリウムイオンを計測して、エアカソード電極表面に固定された二酸化炭素量を計算した。結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
非特許文献1や非特許文献2に開示される燃料電池の電力密度は高くても10W/m3程度であったのに対して、試験例1~試験例4は、電力密度が向上されたものとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、酸化ガス固定装置及び酸化ガス固定方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 カソードチャンバ
11 カソード電極
13 流入部
14 流出部
20 アノード槽
21 流入部
22 流出部
26 アノード電極
30 陽イオン交換膜
31 液層
40 外部回路
50 燃料電池
60 酸化ガス供給装置
66 水槽
67 水分
61 空気供給装置
80 水分供給装置
150 燃料電池
S 環境水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2021-02-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ガス回収装置及び酸化ガス回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化ガスの放出による地球規模の温暖化が問題となっており、地球環境の保全の立場から酸化ガスを回収する研究がなされている。酸化ガスの回収に関する研究として電池を用いたものがあり、中でも燃料電池が注目されてきている。燃料電池は、発電効率が良く、水素や酸素から発電でき、排出されるものが水であるので環境に優しい等のメリットがある。酸化ガス、例えば二酸化炭素を固定する技術の開発は地球環境の保全の観点からも有益であり、これに関する技術が、例えば以下に示す文献において開示されている。
【0003】
非特許文献1は、藻類を用いて二酸化炭素を固定する技術を開示したものである。この技術は、アノード槽で発生した二酸化炭素をカソードチャンバに送り、カソードチャンバで藻類バイオマスに変換することによって、二酸化炭素の固定を図るものである。また、非特許文献2は、二酸化炭素をメタンに還元して固定する技術を開示している。具体的にはこの技術は、アノード槽内の有機物の酸化により発生する電荷を用いて、カソードで二酸化炭素とプロトンからメタンを生成することによって二酸化炭素の固定を図るものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】微生物炭素捕捉セル中の藻類カソードによる、アノードから排出された二酸化炭素の隔離「バイオセンサーズ アンド バイオエレクトロニクス 25(2010)2639-2643」
【非特許文献2】電気メタン生成法によるメタンへの直接的な電気的生物学的変換「エンバイロンメンタル サイエンス アンド テクノロジー 2009,43,3953-3958」
【非特許文献3】エアカソードMFCの発電力を高めるための外部からの二酸化炭素及び水の供給「エンバイロンメンタル サイエンス アンド テクノロジー 2014,48,11204-11210」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献に記載される燃料電池は、環境保全の観点からは優れたものであるが、出力、特に、電力密度が小さく、さらなる改良の余地があるのではないかと、発明者等は考えている。より電力密度が高まれば、酸化ガスがより多く固定されるものとなり、広い分野においてこの燃料電池を汎用的に用いることができ、より有用性を備えたものとなる。そこで、本発明が解決する課題は、電力密度が向上された酸化ガスの固定装置及び固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を重ね、酸化ガスが供給されていれば、カソード電極の反応が促進され、特に、供給される酸化ガスが湿った状態であればカソード電極の反応がより促進されたものとなるとの知見を得た。この知見をもとに完成させた発明の態様が次に示すものである。
【0007】
酸化ガスが固定されるエアカソード電極と、アノード電極を備えるアノード槽と、アノード槽とエアカソード電極を隔てる陽イオン交換膜とを有し、
前記アノード槽は、環境水を有するものであり、
前記エアカソード電極は、酸化ガスを含むガスと水分の供給を受けるものである、
ことを特徴とする酸化ガス固定装置。
【0008】
酸化ガスが固定されるエアカソード電極と、アノード電極を備えるアノード槽と、アノード槽とエアカソード電極を隔てる陽イオン交換膜とを有し、
前記アノード槽は、環境水を有するものであり、
前記エアカソード電極に、酸化ガスを含むガスと水分を供給する、
ことを特徴とする酸化ガス固定方法。
【0009】
本態様であれば、アノード槽に陽イオンが含まれ、陽イオン交換膜が備わるので、通電により、陽イオンがアノード槽から陽イオン交換膜を透過してエアカソード電極に達することとなる。エアカソード電極では、供給を受けた水分と酸化ガスを含むガスからアルカリ性溶液が生成される。エアカソード電極には、生成されたアルカリ性溶液が付着しているので、陽イオンとアルカリ性溶液が化学反応して析出物が生成する。アルカリ性溶液は酸化ガスがイオン化したものであるので、析出物は酸化ガス由来のものであり、したがって、酸化ガスがエアカソード電極上で固定されることになる。
【0010】
エアカソード電極に酸化ガスを含むガスと水分が供給されると、水分に酸化ガスが溶解して生成されたプロトンが、エアカソード電極における後述する電極反応式(1)の反応物として消費される。従来の、例えば非特許文献1に示される装置では、電極が液体内に浸かった形態となっているので、液体のpHの分布如何により電極反応式(1)が促進されない場合が生じ、電力密度が相対的に低いものとなっている。一方、本態様は、アルカリ性溶液の作用によりエアカソード電極がアルカリ性を呈しているので、電極反応式(1)へのプロトンの供給が促進され、すなわち、電子(e-)の流れが促進される結果、電力密度が向上されたものとなる。なお、カソード電極に二酸化炭素ガスを供給する研究として、非特許文献3がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、電力密度が向上された酸化ガスの固定装置及び固定方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】燃料電池の側面図である。
図2】燃料電池の正面図である。
図3図2の点線で囲まれた部位Zの拡大図である。
図4図2においてY-Y方向に見た展開図である。接合剤を省略している。
図5】電子量と固定される二酸化炭素量との関係図である。
図6】抵抗値と固定された二酸化炭素量との関係図である。
図7】FTIR分光法の結果を表す図である。
図8】XPSの結果を表す図である。
図9】炭酸塩、重炭酸塩のSEM画像を表す図である。
図10】外部回路を流れる電子量と生成した炭酸塩の物質量との関係図である。
図11】燃料電池の変形例を示す図である。
図12】酸化ガス固定装置を示す図である。
図13】酸化ガス固定装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0014】
本発明に係る酸化ガス固定装置の実施形態は、アノード電極26と、カソード電極11と、アノード電極26とカソード電極11を隔てる隔膜を有するものであり、カソード電極11は、水分と酸化ガスの供給を受けるものである。また、カソード電極11への水分と酸化ガスの供給手法としては、酸化ガスを含むガスを供給するガス供給手段と、カソード電極に水分を供給する水分供給手段によるものとすることができる。酸化ガスとは、例えば、1気圧、25℃においてガス状の酸化物ということができ、また、水に溶解したときに酸性を呈する気体ということもできる。水に溶解したときに酸性を呈する気体としては、例えばCOx、CHx、Nzx、Syx(ここで、xyzは例えば1~4の整数である。)をいい、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素、二酸化硫黄、三酸化硫黄を例示できる。二酸化炭素は温室効果ガスとして大気中に排出され、また生物の呼吸等でも生成されるので、地球環境の保護の観点から固定するものとして望ましい。
【0015】
(カソード)
カソード電極11の形状は、アルカリ性溶液が付着する形状であれば特に限定されないが、例えば棒形状や面形状、膜状とすることができる。カソード電極11は、アルカリ性溶液を充填したチャンバに含浸された形態であってもよいし、周囲の雰囲気に晒された形態、例えばエアカソード電極であってもよい。特にエアカソード電極だと、エアカソード電極近傍においてpHのばらつきが少ないので好ましく、また、エアカソード電極における電極反応に用いられる酸素を、エアカソード電極近傍の雰囲気から得ることができるので好ましい。カソード電極11の素材は、カソード電極11で起こる電極反応が阻害されないものであれば特に限定されずに用いることができる。カソード電極11の素材としては、例えば炭素、ステンレス鋼等を用いることができ、特に炭素繊維、その中でも白金含有炭素繊維であれば、電極反応の阻害が殆どないので好ましい。白金含有炭素繊維を用いる場合、繊維表面に対する白金の含有量は例えば、4mg-Pt/cm2とすることができる。
【0016】
カソード電極11は、カソード電極11を覆うカソードチャンバ10内に備わるものとすることができる。カソードチャンバ10は、酸化ガスや水分等が流入する流入部13と、酸化ガスや水分等が流出する流出部14と、陽イオン交換膜30を取り付け可能な窓部15を備えるものとなっている。窓部15は、カソード電極11が膜状である場合は、カソード電極11を取り付けることもできるものとなっている。
【0017】
カソード電極11が膜状である場合は、カソード電極11と陽イオン交換膜30が対向して配されている形態が好ましい。具体的には、図2及び図3に示すように、陽イオン交換膜30におけるカソードチャンバ10側の面に、カソード電極11を重ねて配するものとすることができる。この場合、カソード電極11と陽イオン交換膜30とで挟まれた空間は、アノード槽20から陽イオン交換膜30を透過した液体で満たされ、液層31が形成される。陽イオン交換膜30とカソード電極11は接合されていると望ましく、接合には接合剤12等を用いることができる。接合剤12は、イオンの流動が阻害されないように、陽イオン交換膜30の面上に、例えば、格子状、ストライプ状に設けるとよい。図4は燃料電池の一部分を展開したものであり、接合剤12を省略している。
【0018】
カソード電極11が膜状である場合は、カソード電極11は、一方の面が陽イオン交換膜から透過された環境水と接しており、他方の面が前記ガスに接しているものとすることができる。この場合、カソード電極11は、環境水がカソード電極11から透過されて、ガスに接している面から漏れないように構成するとよい。
【0019】
(水分供給手段)
エアカソード電極への水分の供給手段は、エアカソード電極に水分を流す手法、エアカソード電極に水分を噴霧する手法、酸化ガスを含むガスと水分を混合して混合ガス化して、この混合ガスをエアカソード電極に供給する手法を例示できる。混合ガスを供給する手法としては、例えば、水分67を有する水槽66にガスを供給してガスを湿らせ、水分を含む混合ガスを得て、この混合ガスをエアカソード電極に供給する手法とすることができる。
【0020】
(ガス供給手段)
カソード電極11へのガスの供給手段は、例えば、カソード電極11にガスを直接吹き付ける手法、カソードチャンバ10の流入部13にガスを供給する手法、アルカリ性溶液が充填されたチャンバにカソード電極11が含浸されている形態の場合は、アルカリ性溶液中に供給する手法等とすることができる。
【0021】
ガス供給手段の一例を図12を参照しつつ説明すると、酸化ガスを供給する酸化ガス供給装置60と酸化ガス供給装置60と水槽66をつなぐ酸化ガス配管64と、酸化ガス供給装置60から供給された酸化ガスを水槽66に導くガスポンプ62を備えるものとすることができる。これに加え、空気を供給する空気供給装置61と空気供給装置61と水槽66をつなぐ空気配管65と、空気供給装置61から供給された空気を水槽66に導く空気ポンプ63を備えるものとすることができる。酸化ガス供給装置60と空気供給装置61は相互に独立して供給量を調節することができるものとすることができ、この場合、カソード電極11へ供給されるガスに含まれる酸化ガスの比率を調節でき好ましい。なお、水槽66は、上方が閉じられており、ガスが水槽内に流入する流入部と、ガスが水槽外に流出する流出部を備えたものとすることができる。水槽内は、水分76と、当該水分の水面上方の空間、すなわちヘッドスペースにある空気と、で占められている。
【0022】
水槽66に導かれたガスは、水分と共に水槽66から放出され、水槽66と流入部13をつなぐガス配管68,69を通り、カソード電極11へ供給される。図12では、カソードチャンバ10を2つ設けたものを開示しているが、カソードチャンバ10を1つのみ設けたものとすることもできる。この場合、カソードチャンバ10の流入部13と水槽66とをつなぐ配管は一つあればよい。
【0023】
カソード電極11へ供給されたガスのうちの一部は、カソード電極11の化学反応に用いられ、残部は、流出部14から流出される。流出部14には、流出されたガスを導くガス配管70,71を設けることができる。なお、カソードチャンバ10を1つのみ設けた場合は、当該カソードチャンバ10の流出部14にのみガス配管を設けるとよい。
【0024】
カソード電極11へ供給される酸化ガスを含むガスは、特に二酸化炭素であれば0.03%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは50%以上含まれるものとするとよい。ガス中に含まれる二酸化炭素が0.03%未満だとカソード電極11での電極反応が促進されないおそれがある。
【0025】
カソード電極11に供給される酸化ガスを含むガス、又は混合ガスの供給速度は、カソード電極11のガスに接している面が乾かない程度であれば特に限定されないが、例えば、カソード電極の単位面積当たり0.3~2.0L/h/cm2、好ましくは0.6~1.0L/h/cm2であればよい。供給速度が当該範囲を下回ると、プロトンの供給が少なく電極反応が抑制されることとなり、供給速度が当該範囲を上回ると、カソード電極11に付着するアルカリ性溶液を吹き飛ばしてしまうこととなるおそれがある。
【0026】
本実施形態のカソード電極11における、供給されるガスが接する面積は、酸化ガス固定装置のサイズにより適宜調節することができ限定されないが、例えば、アノード電極26の投射面積に対するカソード電極11の面積として、例えば0.01~2cm2-カソード電極面積/cm2-アノード電極面積、好ましくは0.1~1cm2-カソード電極面積/cm2-アノード電極面積とすることができる。
【0027】
(アノード)
アノード電極26は、アノード槽20内に備わり、アノード槽20内に入っている環境水に差し込んだり、環境水中に電極全体を沈めたりして設置することができる。アノード槽20は、環境水を入れておくことができ、環境水を留めておいてもよいし、回分式又は連続式に環境水を流入させるものとしてもよい。アノード槽20は、環境水を流入させる流入部21と、環境水を流出させる流出部22と、外部回路(例えば導線40)を槽内に挿入する導線挿入部23と、陽イオン交換膜30を取り付け可能な窓部25を備えたものとすることができる。回分式又は連続式に環境水Sを流入させる場合は、環境水Sを、流入部21からアノード槽20に流入させ、流出部22から流出させるものとすることができる。アノード槽20における環境水の滞留時間は、特に限定されないが、例えば、1~48時間、好ましくは2~24時間、より好ましくは3~6時間とするとよい。滞留時間が1時間を下回ると、環境水の入れ替わりが早過ぎ、アノード槽内からの微生物の流出が発生するおそれがある。また、滞留時間が48時間を上回ると、微生物の餌となる被酸化物が尽きてしまうおそれがある。ここで、アノード槽20における環境水の滞留時間は、次式で定義することができる。
(滞留時間)=(アノード槽20への環境水Sの流入量(cm3/h))/(アノード槽における最大滞水量(cm3))
【0028】
環境水とは、公共用水域にある水、地下水、下水ということができ、特に下水ということができる。環境水中には、陽イオンや被酸化物、微生物が含まれる。環境水はアルカリ度を有する。このアルカリ度は、例えば、JIS K 0400-15-10:1998で測定することができる。
【0029】
被酸化物とは、酸化反応により電子を放出して酸化されるものをいい、特に限定されないが、例えば、カルボン酸や、炭水化物、炭水化物を構成する単糖類、多糖類をいい、単糖類としては、アルドース、ケトース等、多糖類としては、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等、カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸、カルボン酸誘導体等を挙げることができる。
【0030】
被酸化物は、微生物により酸化分解される。この微生物は、環境水中に含まれる生物であり、環境水中に浮遊していたりアノード電極26に付着していたりしてアノード槽内に保持される。この微生物としては、電気エネルギーを産生させる微生物を例示でき、具体的には、サッカロミケス属(Saccharomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、カンジタ(Candida)、マイクロコッカス(Micrococcus)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、レンサ球菌(Streptococcus)、ロイコノストック(Leuconostoa)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、アースロバクター(Arthrobacter)、バシラス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、ナイセリア属(Neisseria)、大腸菌属(Escherichia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、セラチア菌(Serratia)、グラム陰性菌(Achromobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、アセトバクタ―属(Acetobacter)、モラクセラ(Moraxella)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、ニトロバクター属(Nitorobacter)、チオバシラス属(Thiobacillus)、酢酸菌(Gluconobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、キサントモナス属(Xanthomonas)、ビブリオ属(Vibrio)、コマモナス属(Comamonas)、プロテウス菌(Proteus(Proteus vulgaris))、シェワネラ属(Shewannell)、ゲオバクタ―属(Geobacter)に属する細菌、糸状菌等を挙げることができる。仮に、アノード槽20に保持される液体を人工的に調製する場合は、これらの微生物を当該液体に植種して環境水としてもよい。
【0031】
アノード電極における電極反応は、電子を産生するものであり、酸素があると産生された電子が酸素と反応して消費されてしまうので、アノード槽20に保持される環境水は嫌気的であるのが望ましい。溶存酸素濃度で嫌気の程度を調整することができ、例えば、環境水の溶存酸素濃度が4.0mg/l以下、好ましくは2.0mg/l以下、さらに好ましくは1.0mg/l以下であるとよい。なお、溶存酸素濃度は、JIS K0102:2016に準拠して測定される。
【0032】
アノード槽20とカソード電極11は、陽イオン交換膜30で隔てられて隣接しており、アノード槽内の環境水に含まれる陽イオンが、窓部25から流出し、陽イオン交換膜30を透過して、カソード電極11に到達するものとなっている。
【0033】
カソード電極11がカソードチャンバ10に備わる場合は、アノード槽20とカソードチャンバ10は、窓部25と窓部15が陽イオン交換膜30で隔てられ、対向して隣接しており、アノード槽内の環境水に含まれる陽イオンが、窓部25から流出し、陽イオン交換膜30を透過して、窓部15からカソードチャンバ10に流入するものとなっている。
【0034】
アノード槽内の環境水は陽イオンを含むものであり、陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、プロトン(H+)、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン等を例示でき、具体的には、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン等を例示できる。
【0035】
アノード電極26とカソード電極11とは外部回路を介して接続され、電流が流れるものとなっている。
【0036】
(隔膜)
アノード電極26とカソード電極11を隔てる隔膜は、陽イオンを透過する膜であれば、特に限定されないが、例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンやポリビニルアルコールを基とした電解質膜からなるものを用いることができる。市販されているものとしてはNafion117を用いることができる。
【0037】
以上、アノード電極26、アノード槽20、隔膜、カソード電極11、カソードチャンバ10、外部回路、環境水、水分、ガスを含めて燃料電池50ということができる。
【0038】
(アルカリ性溶液)
本実施形態を起動させると、水と酸化ガスを含むガスの供給を受けたエアカソード電極は、その表面にアルカリ性溶液が生成する。アルカリ性溶液が生成されているかは、例えば、エアカソード電極に液滴が付着しているかどうかによって確認することができる。水と酸化ガスを含むガスの供給量を多くすれば、液滴を多数確認でき、同供給量を少なくすれば、液滴が減り又は確認できなくなる。アルカリ性溶液は、主に水酸化物イオンや酸化ガスが溶け込んで発生した炭酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン等を有するものである。
【0039】
(反応等)
本実施形態を起動させると、カソード電極11では、次に示す電極反応、式(1)が生じる。
[式(1)]
2 + 4H+ + 4e- → 2H2
この電極反応により、プロトンが消費される。従来の燃料電池では、プロトンは、(ア)アノード側から陽イオン交換膜30を透過して供給される手段(イオン交換手段)のほか、(イ)水の電離により供給される手段(電離手段)により供給されるものであった。しかしながら、これらによるプロトンの供給速度が、上記電極反応によるプロトンの消費速度よりも小さいため、プロトンの供給速度が律速となり、カソード電極ではプロトン不足が生じていると推測される。本実施形態では、前記プロトンの供給手段に加え、(ウ)水分と酸化ガスとの化学反応により発生するプロトンをカソード電極に供給する手段が備わったものとなっている。(ウ)の手段が加わることで、カソード電極でのプロトン不足が解消され、プロトンの消費速度が大きくなり、上記電極反応が促進され、結果として酸化ガスが、液体や固体(塩)の形態でカソード電極に固定されることになる。
【0040】
本実施形態では、酸化ガスは、水分と反応してイオン化して固定されるものと考えられるが、例えば、二酸化炭素は、次記の化学反応により固定されるものと推測される。第1に二酸化炭素が水分を得て炭酸イオンとなり、プロトンを生成する化学反応が起こる。この化学反応を次に示す。
CO2(g) + H2O → CO2(aq)
CO2(aq) → H2CO3
2CO3 → CO3 2- + 2H+
【0041】
第2に、アノード槽20から陽イオン交換膜30を透過してカソード電極に到達した陽イオン(Mn+)と炭酸イオンから炭酸塩が生成される化学反応が起こる。この化学反応を次に示す。
Y・CO3 2- +X・Mn+ → MX(CO3Y
ここで、n,X,Yは正の整数である。
【0042】
二酸化炭素は、固定されてカソード電極表面に炭酸塩、重炭酸塩の結晶Cとして析出される(図9参照)。この結晶に対してFTIR(フーリエ変換赤外分光法)による計測(図7参照)、XPS(X線光電分光法)による計測(図8参照)を行うことで、炭酸イオン、重炭酸イオンの存在、炭酸塩の存在を確認することができる。例えば、図7に示す2344cm-1、712cm-1の透過率TrのピークはCO3 2-イオン、図8に示す292eVの強度StのピークはK(カリウム)の存在を表す。
【0043】
カソードに固定される二酸化炭素量(μmol)と外部回路を流れる電子量(μmol)は、図5に示すように正の相関性を有し、この図から二酸化炭素の固定量を増加させるためには、電子量、すなわち電力密度(W/m3)を増加させると良いことがわかる。
【0044】
カソード電極は、水分への酸化ガスの溶解により発生するプロトンの供給を受ければ、上記電極反応、式(1)が促進されるが、この場合、カソード電極にアルカリ性溶液が付着されていると、酸化ガスがアルカリ性溶液に溶解されて固定化し易くなるので好ましい。
【0045】
カソード電極におけるアルカリ性溶液のpHは、次のように変動する。カソード電極が水分と酸化ガスの供給を受けると、水分から電離したプロトン(水素イオン)が前述の電極反応、式(1)によって消費される。また、水分から電離した水酸化物イオンや酸化ガスは、アルカリ性溶液としてカソード電極に付着した状態になる。水分と酸化ガスの供給を続けると、カソード電極上のプロトン量が増加するので、pHが小さくなり、電力密度が相対的に大きく、酸化ガスの固定化が促進される。一方で、水分と酸化ガスの供給を抑制すると、カソード電極上のプロトン量が減少するので、pHが大きくなり、電力密度が相対的に小さく、酸化ガスの固定化が抑制される。
【0046】
アルカリ性溶液のpHは、7以上、好ましくは7~12、より好ましくは8~10であるとよい。アルカリ性溶液のpHが7より小さいと、酸化ガスの供給量が過大であり、エネルギー効率が良くない。
【0047】
アノード槽内に認められる微生物の作用により、アノード電極26では、次に示す電極反応が生じる。例えば、被酸化物がアルドースに分類されるグルコースであれば、アノード電極における電極反応は、
6126 → C6106(グルコノラクトン) +2H+ + 2e-
となり、被酸化物が酢酸であれば、アノード電極における電極反応は、
CH3COOH + 2H2O → 2CO2 + 8H+ + 8e-
CH3COO- + 2H2O → 2CO2 + 7H+ + 8e-
となる。
【0048】
アノード槽内の環境水中に含まれる微生物は呼吸により二酸化炭素を発生させるので、この二酸化炭素を固定するようにすれば、本実施形態の系外への二酸化炭素の排出が抑制され、より環境保全に寄与する形態となる。そこで、エアカソード電極に供給する酸化ガスがアノード槽から発生した二酸化炭素を含むものとする形態とすると好ましい。
【0049】
(電力密度)
本実施形態によれば、出力される電力密度は15~80W/m3、好ましくは60~80W/m3になる。非特許文献1や非特許文献2に開示される従来型の燃料電池の電力密度は高くても10W/m3程度であり、本実施形態は、従来型の燃料電池に比べ、電力密度が向上されたものとなっている。
【0050】
(固定量)
本実施形態の酸化ガス固定装置及び酸化ガス固定方法で、固定される酸化ガスの固定量は、カソード電極単位面積当たり0.066~0.172mоl/日/m2、好ましくは0.106~0.172mоl/日/m2となる。なお、酸化ガスが固定されることで、例えば、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩等が析出される。
【0051】
(抵抗値)
本実施形態は、抵抗値が100Ω(オーム)以下、好ましくは100Ω(オーム)以下、より好ましくは10Ω(オーム)以下で起動させるとよい。100Ω(オーム)を上回ると、酸化ガスを固定する効率が悪化するおそれがある。図6は、本実施形態を用いて、抵抗を3種用意して抵抗値を3段階に変化させ、固定された二酸化炭素の量を測定した結果を表すものである。カソード電極に供給された二酸化炭素量は、アノード槽の微生物の呼吸により発生した二酸化炭素量と二酸化炭素の供給装置から供給された二酸化炭素量の合計である。同図に示される結果は棒グラフで表されており、固定された二酸化炭素の総量を「Ct」で示し、カソード電極に供給された二酸化炭素から、アノード槽内の微生物の呼吸により発生した二酸化炭素量を差し引いた正味の二酸化炭素固定量を「Cm」で示している。測定回数は、抵抗各々に対して3回であった。抵抗値が小さいほど、固定された二酸化炭素の量が増加しているのが分かる。
【0052】
本実施形態は、電流が0.1~4mA、電圧が0.1~0.6V、電力が0.01~2.4mWとなるものとなっている。
【0053】
(変形例)
本実施形態では、酸化ガスの固定量は、酸化ガスを含むガスと水分の供給を受けるカソード電極11の面積に依存するものとなっている。カソード電極11の面積を大きくすれば、酸化ガスの固定量が増加する。そこで、アノード槽20に設ける窓部25を複数個備えた別の実施形態を開示することができる。この実施形態にすれば、カソード電極11の面積を稼ぐことができる。例えば、アノード槽20に窓部25を2つ設けた燃料電池150を有する別の実施形態について、図11を参照しつつ次に説明する。
【0054】
図11では、カソード電極(11,11)を2つ有し、第1のカソード電極11とアノード槽20の第1の窓部25は、第1の陽イオン交換膜30で隔てられて隣接しており、第2のカソード電極11とアノード槽20の第2の窓部25は、第2の陽イオン交換膜30で隔てられて隣接しており、アノード槽内の環境水に含まれる陽イオンが第1の窓部25と第2の窓部25から流出し、第1のイオン交換膜30と第2のイオン交換膜30を透過して、第1のカソード電極11と第2のカソード電極11に至るものとなっている。
【0055】
カソード電極(11,11)がカソードチャンバ(10,10)に備わる場合は、アノード槽20と第1のカソードチャンバ10は、第1の窓部25と第1の窓部15が第1の陽イオン交換膜30で隔てられ、対向して隣接しており、アノード槽20と第2のカソードチャンバ10は、第2の窓部25と第2の窓部15が第2の陽イオン交換膜30で隔てられ、対向して隣接しているものとなっている。アノード槽内の環境水に含まれる陽イオンが、第1の窓部25から流出し、第1の陽イオン交換膜30を透過して、第1の窓部15から第1のカソードチャンバ10に流入し、及び第2の窓部25から流出し、第2の陽イオン交換膜30を透過して、第2の窓部15から第2のカソードチャンバ10に流入するものとなっている。第1のカソード電極11と第2のカソード電極11各々は、酸化ガスを含むガスと水分の供給を受けてアルカリ性溶液が発生する。
【0056】
第1のカソードチャンバ10と第2のカソードチャンバ10には、それぞれ、酸化ガスや水分等を、流入させる流入部13と流出させる流出部14が備わる。
【0057】
ガス供給手段と水分供給手段についても、別の実施形態を開示することができる。この別の実施形態を図13を参照しつつ説明する。ガス供給手段は、酸化ガスを供給する酸化ガス供給装置60と、酸化ガス供給装置60と流入部13とをつなぐ配管64′と、配管64′に備わり、酸化ガス供給装置60から流入部13に酸化ガスを導くガスポンプ62と、空気を供給する空気供給装置61と、空気供給装置61と流入部13とをつなぐ配管65′と、配管65′に備わり、空気供給装置61から流入部13に空気を導く空気ポンプ63とを有する。水分供給手段は、水分供給装置80と、水分供給装置80と流入部13とをつなぐ配管82(流入部が2つある場合は、配管82,83)と、水分供給装置80から流入部13に水分を導く水ポンプ81とを有する。水分供給手段によりカソードチャンバ10に導入された水分は、カソード電極11に直接吹き付けられてもよいし、ガス供給手段によりカソードチャンバ10に導入されたガスと混合されてカソード電極11に供給されてもよい。
【0058】
(その他)
理論的には、酸化ガスの固定量は陽イオン交換膜を透過されてカソード電極に至る陽イオンの量に比例する。しかしながら、カソード電極の状態により酸化ガスの固定量が理論的に算出される量に達しない場合がある。図10を参照しつつ説明すると、理論的に算出される固定された炭酸塩の物質量は、線R0で表される。例えば、カソード電極に供給される流体が乾燥処理を施した空気である場合、固定された炭酸塩の物質量は、線R4で表される。また、カソード電極に供給される流体が乾燥処理を施さない空気である場合、固定された炭酸塩の物質量は、線R3で表される。カソード電極に供給される流体が、水中を通過させて得られた空気、すなわち湿潤空気である場合、固定された炭酸塩の物質量は、線R2で表される。カソード電極に供給される流体が、空気と二酸化炭素の比率を1:1として混合されたガスであって、水中を通過させて得られたものである場合、固定された炭酸塩の物質量は、線R1で表される。このことから、乾燥した空気よりも、湿潤空気の方が酸化ガスを塩として固定することができ、また、カソード電極に供給される流体に占める酸化ガスの濃度が高いほど、酸化ガスを塩としてより多く固定することができることが分かる。
【実施例0059】
図12に示した実施形態に係る酸化ガス固定装置を使用して、酸化ガス、特に二酸化炭素の固定を行った。酸化ガス固定装置の構成を次に示す。エアカソード電極として、繊維表面に対する白金の含有量を4mg-Pt/cm2とする白金含有炭素繊維を用いた。カソード電極の投射面積に対するカソード電極の面積は、1cm2-カソード電極面積/cm2-アノード電極面積とした。隔膜として、Nafiоn117を用いた。アノード電極として、炭素フェルトを用いた。アノード槽に入れる液体は、溶媒を蒸留水として、表1に示す試薬を、同表の濃度になるように混合した後、高圧蒸気滅菌処理して調製した。
【0060】
【表1】
【0061】
操作手順は次のとおりである。
(1)調製した液体と種汚泥をアノード槽に投入して環境水とし、アノード電極とエアカソード電極を外部回路でつないで閉回路状態にして、1週間バッチ状態で静置させた。1週間後電流、電圧値を計測して安定したのを確認した後、調製した液体をアノード槽に滞留時間が3時間となるように連続的に供給した。外部回路に抵抗値10Ωの外部抵抗を接続した。
【0062】
(2)開回路状態にして、エアカソード電極の表面を蒸留水で洗浄した後、再び閉回路状態にして、6時間、ガスをエアカソード電極表面に供給速度を0.167L/h/cm2として供給し続けた。当該ガスは、組成を変化させたものそれぞれを供給した。具体的には、ガスの組成が、空気のみからなるものを試験例1、水分を含む空気を試験例2、二酸化炭素と空気が1:1に混合されたもの(以下、「濃CO2ガス」ともいう。)を試験例3、水分を含む濃CO2ガスを試験例4として、それぞれのガスをエアカソード電極に供給した。
【0063】
ここで、水分を含む空気とは、水槽66内の水中に導かれて、水中から水面上方、すなわちヘッドスペースに移動して得られた空気、ということができる。
【0064】
試験例1~試験例4それぞれについて、電流、電圧等を計測して電力密度を計算した。
【0065】
(3)上記(2)の操作後、開回路状態にして、エアカソード電極表面に生成したアルカリ性溶液及び析出物に、既知量の蒸留水を滴下し、混合して均一な濃度の液体を得た。
【0066】
(4)得られた液体を高速液体クロマトグラフィー法、及びICP発光分光分析法で計測した。高速液体クロマトグラフィー法(JIS K 0124:2011に規定される試験方法)により炭酸イオン、酢酸イオンを計測し、ICP発光分光分析法(JIS K 0101:1998に規定される試験方法)によりカリウムイオン、ナトリウムイオンを計測して、エアカソード電極表面に固定された二酸化炭素量を計算した。結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
非特許文献1や非特許文献2に開示される燃料電池の電力密度は高くても10W/m3程度であったのに対して、試験例1~試験例4は、電力密度が向上されたものとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、酸化ガス固定装置及び酸化ガス固定方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 カソードチャンバ
11 カソード電極
13 流入部
14 流出部
20 アノード槽
21 流入部
22 流出部
26 アノード電極
30 陽イオン交換膜
31 液層
40 外部回路
50 燃料電池
60 酸化ガス供給装置
66 水槽
67 水分
61 空気供給装置
80 水分供給装置
150 燃料電池
S 環境水
【手続補正書】
【提出日】2021-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ガスが固定されるエアカソード電極と、アノード電極を備えるアノード槽と、アノード槽とエアカソード電極を隔てる陽イオン交換膜とを有し、
前記アノード槽は、環境水を有するものであり、
前記エアカソード電極は、酸化ガスを含むガスと水分の供給を受け、前記ガスが前記エアカソード電極表面に直接に吹き付けられるものである、
ことを特徴とする酸化ガス固定装置。
【請求項2】
前記エアカソード電極に前記ガスを供給するガス供給手段と、
前記エアカソード電極に水分を供給する水分供給手段とを有する、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項3】
前記ガスは、前記水分供給手段から供給される水分と混合された混合ガスである、
請求項2に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項4】
前記エアカソード電極は、酸化ガスを含むガスと水分の供給を受けてアルカリ性溶液が生成され、当該アルカリ性溶液のpHが7以上とされるものである、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項5】
陽イオンは、アノード槽から陽イオン交換膜を透過してエアカソード電極に至るものである、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項6】
前記エアカソード電極は、膜状であり、一方の面が陽イオン交換膜から透過された環境水と接しており、他方の面が前記ガスに接しているものである、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項7】
酸化ガスが二酸化炭素である、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項8】
前記二酸化炭素が0.03%以上含まれるものである、
請求項7に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項9】
酸化ガスがアノード槽から発生した二酸化炭素を含むものである、
請求項1に記載の酸化ガス固定装置。
【請求項10】
酸化ガスが固定されるエアカソード電極と、アノード電極を備えるアノード槽と、アノード槽とエアカソード電極を隔てる陽イオン交換膜とを有し、
前記アノード槽は、環境水を有するものであり、
前記エアカソード電極に、酸化ガスを含むガスと水分を供給
前記ガスを前記エアカソード電極表面に直接に吹き付ける、
ことを特徴とする酸化ガス固定方法。