IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ステータ 図1
  • 特開-ステータ 図2
  • 特開-ステータ 図3
  • 特開-ステータ 図4
  • 特開-ステータ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099103
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
H02K3/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212867
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】サハ スブラタ
(72)【発明者】
【氏名】古賀 清隆
(72)【発明者】
【氏名】村上 聡
(72)【発明者】
【氏名】長永 解人
(72)【発明者】
【氏名】乙守 正樹
(72)【発明者】
【氏名】津田 哲平
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA01
5H603BB01
5H603BB02
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CD11
5H603CD22
5H603CE02
5H603CE05
5H603CE13
5H603CE14
5H603CE16
(57)【要約】
【課題】コイル部の損失が大きくなるのを防止することが可能なステータを提供する。
【解決手段】このステータ100のコイル部20は、複数のスロット12の各々においてステータコア10の径方向に複数並んで配置されているとともにスロット収容部21を構成する第1導体部分31を含む。また、コイル部20は、ステータコア10に対して軸方向の両側において互いに異なるスロット12に配置されている第1導体部分31同士を接続するとともにコイルエンド部22を構成する複数の第2導体部分32を含む。また、複数のスロット12の各々に配置される複数の第1導体部分31の単位長さ当たりの電気的な抵抗は、第2導体部分32の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも大きい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる複数のスロットが設けられているステータコアと、
前記ステータコアに配置され、スロット収容部とコイルエンド部とを含むコイル部と、を備え、
前記コイル部は、前記複数のスロットの各々において前記ステータコアの径方向に複数並んで配置されているとともに前記スロット収容部を構成する第1導体部分と、前記ステータコアに対して前記軸方向の少なくとも一方側において互いに異なる前記スロットに配置されている前記第1導体部分同士を接続するとともに前記コイルエンド部を構成する複数の第2導体部分と、を含み、
前記複数のスロットの各々に配置される前記複数の第1導体部分のうち少なくとも一部の単位長さ当たりの電気的な抵抗は、前記第2導体部分の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも大きい、ステータ。
【請求項2】
前記複数のスロットの各々に配置される前記複数の第1導体部分のうち少なくとも一部は、アルミニウムまたはアルミ合金により構成されており、
前記第2導体部分は、銅または銅合金により構成されている、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記第2導体部分は、前記ステータコアに対して前記軸方向の両側に設けられている、請求項1または2に記載のステータ。
【請求項4】
前記第1導体部分および前記第2導体部分の各々は、平角導線により構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項5】
前記複数のスロットの各々における前記複数の第1導体部分のうち、径方向内側に配置されている前記第1導体部分の単位長さ当たりの電気的な抵抗は、径方向外側に配置されている前記第1導体部分の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スロット収容部とコイルエンド部とを含むコイル部を備えるステータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の電動機は、磁石が設けられたロータコアを備える。また、上記電動機は、ロータコアに対して径方向に間隔を隔てて配置され、周方向に複数のスロットが形成された円環状のステータコアと、複数のスロット内に挿入されてステータコアに巻き付けられたステータコイルと、を有するステータを備える。ステータコイルは、アルミニウム材からなる第1導線と、第1導線よりも導電率が高い銅材からなる第2導線とによって構成されている。第2導線は、スロット内に配置されている。第1導線は、スロットの外においてコイルエンド部を構成している。上記特許文献1に記載の電動機では、比重が比較的小さいアルミニウムを用いることにより、ステータコイルの軽量化を図っている。
【0004】
なお、第1導線および第2導線の断面抵抗が互いに同等となるように、第1導線の断面積が第2導線の断面積よりも大きくされている。これにより、ステータコイルが銅材のみにより構成される場合と同等の電動機の出力性能が得られる。また、この場合、断面積が比較的大きい第1導線がステータ外に配置されることにより、ステータコアが大型化するのが防止されている。すなわち、上記特許文献1の電動機では、比重が比較的小さい第1導線(アルミニウム材)がスロット外に配置されるとともに導電率が比較的大きい第2導線(銅材)がスロット内に配置されることにより、電動機の出力性能の低下およびステータコア(ステータ)の大型化を防止しながら、ステータコイルの軽量化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-22337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記特許文献1に記載の電動機(ステータ)では、スロット内に配置されている第2導線(銅材)は、導電率が比較的高い。すなわち、第2導線は、単位長さ当たりの電気的な抵抗が比較的低い。ここで、コイルにおいて発生する損失に含まれる渦電流損は、導線を鎖交する磁束密度の2乗に比例するとともに、導線の電気的な抵抗に反比例する。また、ステータコアはロータコアと径方向に間隔を隔てて配置されている(すなわち径方向に対向して配置されている)ので、比較的多くのロータコア(永久磁石)からの磁束がスロット内の第2導線を鎖交する。すなわち、上記特許文献1の電動機では、磁束密度が比較的大きいスロットに電気的な抵抗が比較的小さい銅材からなる第2導線が設けられているため、第2導線における損失(渦電流損)が大きくなることに起因してコイルの損失が大きくなることが考えられる。したがって、コイル部の損失が大きくなるのを防止することが可能なステータが望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、コイル部の損失が大きくなるのを防止することが可能なステータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるステータは、軸方向に延びる複数のスロットが設けられているステータコアと、ステータコアに配置され、スロット収容部とコイルエンド部とを含むコイル部と、を備え、コイル部は、複数のスロットの各々においてステータコアの径方向に複数並んで配置されているとともにスロット収容部を構成する第1導体部分と、ステータコアに対して軸方向の少なくとも一方側において互いに異なるスロットに配置されている第1導体部分同士を接続するとともにコイルエンド部を構成する複数の第2導体部分と、を含み、複数のスロットの各々に配置される複数の第1導体部分のうち少なくとも一部の単位長さ当たりの電気的な抵抗は、第2導体部分の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも大きい。
【0009】
この発明の一の局面によるステータでは、上記のように、複数のスロットの各々に配置される複数の第1導体部分のうち少なくとも一部の単位長さ当たりの電気的な抵抗は、コイルエンド部を構成する第2導体部分の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも大きい。これにより、磁束密度が比較的大きいスロットに配置される複数の第1導体部分のうち少なくとも一部の単位長さ当たりの電気的な抵抗がコイルエンド部を構成する第2導体部分の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも大きいことによって、第1導体部分(スロット収容部)の渦電流損が大きくなるのを防止することができる。その結果、コイル部の損失が大きくなるのを防止することができる。
【0010】
また、コイル部において発生する損失に含まれる導体損は導線の電気的な抵抗に比例するので、第2導体部分の単位長さ当たりの電気的な抵抗が第1導体部分の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも小さいことによって、第2導体部分(コイルエンド部)の導体損を比較的小さくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイル部の損失が大きくなるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態による回転電機の構成を示す平面図である。
図2】第1実施形態によるステータのスロットの構成を示す部分拡大平面図である。
図3】第1実施形態によるコイル部の結線構成を示す回路図である。
図4】第1実施形態によるセグメント導体の構成を示す概略図である。
図5】第2実施形態によるステータのスロットの構成を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
[第1実施形態]
[ステータの構造]
図1図4を参照して、第1実施形態によるステータ100の構造について説明する。
【0015】
本願明細書では、「軸方向」とは、図1に示すように、ステータ100の中心軸線C(ロータ101の回転軸線)に沿った方向(Z方向)を意味する。また、「周方向」とは、ステータ100の周方向(A方向)を意味する。また、「径方向」とは、ステータ100の半径方向(R方向)を意味する。
【0016】
ステータ100は、ロータ101と共に、回転電機102の一部を構成する。回転電機102は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成される。ステータ100は、図1に示すように、永久磁石(図示せず)が設けられるロータ101の径方向外側に配置されている。すなわち、第1実施形態では、ステータ100は、インナーロータ型の回転電機102の一部を構成する。
【0017】
ステータ100は、ステータコア10と、ステータコア10に配置されるコイル部20とを備える。
【0018】
(ステータコアの構造)
ステータコア10は、中心軸線C(図1参照)を中心軸とした円筒形状を有する。また、ステータコア10は、たとえば、複数枚の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)が軸方向に積層されることにより、形成されている。図2に示すように、ステータコア10は、軸方向に見て円環状を有するバックヨーク11と、バックヨーク11の径方向内側に設けられ、軸方向に延びる複数のスロット12とが設けられている。そして、ステータコア10には、スロット12の周方向両側に複数のティース13が設けられている。ティース13は、バックヨーク11から径方向内側に突出するように形成されている。
【0019】
スロット12には、径方向内側に開口する開口部12aが設けられている。また、スロット12は、軸方向両側のそれぞれが開口している。スロット12は、開口部12aの周方向の幅W1が、コイル部20が配置される部分の幅W2よりも小さいセミオープン型のスロットとして構成されている。
【0020】
(コイル部の構造)
図2に示すように、コイル部20は、スロット12に収容(配置)されているスロット収容部21と、ステータコア10(スロット12)の軸方向の外側に配置されているコイルエンド部22(図1参照)と、を含む。
【0021】
コイル部20は、たとえば、波巻きコイルとして構成されている。また、コイル部20は、4ターンのコイルとして構成されている。すなわち、複数のスロット12の各々において、4つの後述する第1導体部分31が径方向に並んで配置されている。なお、上記のコイル部20のターン数はあくまで一例であり、上記のターン数に限られない。また、スロット12内の4つの第1導体部分31の横断面の形状および大きさ(面積)は、互いに略同一である。
【0022】
図3に示すように、コイル部20は、電源部(図示せず)から3相交流の電力が供給されることにより、磁束を発生させるように構成されている。具体的には、コイル部20は、3相のY結線により接続(結線)されている。すなわち、コイル部20は、U相コイル部20Uと、V相コイル部20Vと、W相コイル部20Wとを含む。そして、コイル部20には、複数(たとえば、2つ)の中性点Nが設けられている。詳細には、コイル部20は、4並列結線(スター結線)されている。すなわち、U相コイル部20Uには、4つの中性点接続端部NtUと、4つの動力線接続端部PtUとが設けられている。V相コイル部20Vには、4つの中性点接続端部NtVと、4つの動力線接続端部PtVとが設けられている。W相コイル部20Wには、4つの中性点接続端部NtWと、4つの動力線接続端部PtWとが設けられている。
【0023】
また、図4に示すように、コイル部20は、複数のスロット12の各々においてステータコア10の径方向に複数並んで配置されているとともにスロット収容部21を構成する第1導体部分31を含む。また、コイル部20は、ステータコア10に対して軸方向の少なくとも一方側において互いに異なるスロット12に配置されている第1導体部分31同士を接続するとともにコイルエンド部22を構成する複数の第2導体部分32を含む。具体的には、コイル部20は、第1導体部分31および第2導体部分32により構成されている複数のセグメント導体30により構成されている。複数のセグメント導体30の各々は、一対の第1導体部分31を含む。一対の第1導体部分31の各々は、スロット12に沿って軸方向に直線状に延びるように構成されている。
【0024】
なお、コイル部20は、セグメント導体30としての複数(たとえば、3つ)の動力セグメント導体40(図1参照)と、セグメント導体30としての複数(たとえば、2つ)の中性点セグメント導体50(図1参照)とを含む。
【0025】
ここで、導体の横断面(導体が延びる方向と直交する断面)の面積をS[m]、導体の長さをL[m]、導体の抵抗率(単位長さ当たりの電気的な抵抗)をρ[Ω・m]、導体を流れる電流値をI[A]、損失係数をKe、磁束が流れる方向の導体の厚みをt[m]、導体を鎖交する磁束密度をB[T]、周波数をf[Hz]とすると、コイル部20の損失[W]は下記の式(1)で表される。
【数1】
【0026】
上記式(1)の第1項は導体損を表し、第2項は渦電流損を表している。上記式(1)を見れば分かるように、導体損は導体の横断面の面積(S)に反比例する一方、渦電流損は導体の横断面の面積(S)に比例する。したがって、導体の横断面の面積(S)が比較的大きい場合には、渦電流損がコイルの損失の主となる場合がある。特に、渦電流損は周波数(f)の2乗に比例するので、回転電機(電動機)が高速動作する場合(周波数が大きい場合)において、渦電流損が増加(悪化)する。また、渦電流損は、磁束密度(B)の2乗に比例するので、磁束密度が大きい程大きくなる。なお、導体損の大きさは、磁束密度とは相関がない。
【0027】
また、磁束を発生させるロータ101(磁石)がステータコア10の径方向内側に設けられているので、スロット12において径方向に並ぶ複数の第1導体部分31のうち径方向内側の第1導体部分31ほど、鎖交する磁束密度(B)が大きくなる。すなわち、径方向内側の第1導体部分31ほど渦電流損は大きくなる。
【0028】
複数のスロット12の各々に配置される複数の第1導体部分31のうち少なくとも一部の単位長さ当たりの電気的な抵抗は、第2導体部分32の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも大きい。
【0029】
これにより、磁束密度が比較的大きいスロット12に配置される複数の第1導体部分31のうち少なくとも一部の単位長さ当たりの電気的な抵抗がコイルエンド部22を構成する第2導体部分32の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも大きいことによって、第1導体部分31(スロット収容部21)の渦電流損が大きくなるのを防止することができる。その結果、コイル部20の損失が大きくなるのを防止することができる。特に、周波数が大きくなることに起因して渦電流損が大きくなる回転電機102の高速動作時において、コイル部20の損失(渦電流損)の改善に有効である。
【0030】
また、コイル部20において発生する損失に含まれる導体損は導線の電気的な抵抗に比例するので、第2導体部分32の単位長さ当たりの電気的な抵抗が第1導体部分31の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも小さいことによって、第2導体部分32(コイルエンド部22)の導体損を比較的小さくすることができる。なお、導体損は、周波数に依存しないので、回転電機102の高速動作時および低速動作時の両方における導体損を比較的小さくすることができる。
【0031】
また、複数のスロット12の各々に配置される複数の第1導体部分31の全ての単位長さ当たりの電気的な抵抗は、第2導体部分32の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも大きい。
【0032】
具体的には、複数のスロット12の各々に配置される複数の第1導体部分31の全ては、アルミニウムにより構成されている。また、第2導体部分32は、銅により構成されている。なお、アルミニウムの単位長さ当たりの電気的な抵抗は、約2.8×10-8(Ω・m)である。銅の単位長さ当たりの電気的な抵抗は、約1.7×10-8(Ω・m)である。
【0033】
これにより、スロット12内の複数の第1導体部分31の全てが、電気的な抵抗が銅よりも大きいアルミニウムにより構成されるので、スロット12内の複数の第1導体部分31の少なくとも一部が銅により構成される場合に比べて、コイル部20(スロット収容部21)の渦電流損を小さくすることができる。また、アルミニウムは銅にくらべて比重が小さいので、スロット12内の複数の第1導体部分31の少なくとも一部が銅により構成される場合に比べて、コイル部20を軽量化することができる。すなわち、コイル部20の軽量化を図りながら、コイル部20の損失が大きくなるのを防止することができる。
【0034】
また、第2導体部分32は、ステータコア10に対して軸方向の両側に設けられている。
【0035】
これにより、ステータコア10に対して軸方向の両側におけるコイル部20(コイルエンド部22)の導体損を比較的小さくすることができるので、コイル部20の損失が大きくなるのをより一層確実に防止することができる。
【0036】
具体的には、第2導体部分32は、Z1側に配置される導体部分32aを含む。導体部分32aは、セグメント導体30の一対の第1導体部分31同士を接続するように構成されているとともに、径方向から見てV字状に折れ曲がっているような形状を有している。また、第2導体部分32は、Z2側に配置される導体部分32bを含む。導体部分32bは、一対の第1導体部分31の各々からZ2側に延びるように設けられており、他のセグメント導体30のZ2側の導体部分32bとスロット12外において接続される。なお、図4では、Z2側の導体部分32b同士が接続される前のセグメント導体30の状態が図示されている。また、以下では、第2導体部分32とのみ記載されている場合は、導体部分32aおよび導体部分32bの両方に当てはまる内容であるとする。
【0037】
また、第1導体部分31は、少なくとも、ステータコア10の軸方向の一方側(Z1側)の端面10aから軸方向の他方側(Z2側)の端面10bまで延びるように設けられている。具体的には、第1導体部分31の軸方向の両側の端部31aは、ステータコア10(スロット12)からステータコア10の外側に突出している。すなわち、第1導体部分31と第2導体部分32との接続部分は、ステータコア10の外側に設けられている。
【0038】
また、第1導体部分31および第2導体部分32の各々は、平角導線により構成されている。具体的には、第1導体部分31は、横断面(第1導体部分31が延びる方向と直交する断面)が矩形形状(図2参照)を有するように構成されている。また、簡略化のため図示は省略されているが、第2導体部分32は、横断面(第2導体部分32が延びる方向と直交する断面)が矩形形状を有するように構成されている。
【0039】
これにより、第1導体部分31の横断面が矩形形状を有することにより、第1導体部分31の横断面が円形形状を有する場合に比べて、スロット12内における第1導体部分31の占積率を大きくすることができる。また、第2導体部分32の横断面が矩形形状を有することにより、第2導体部分32の横断面が円形形状を有する場合に比べて、コイルエンド部22において複数の第2導体部分32同士をより密に配置することができる。
【0040】
また、近年、回転電機において大電流(大電圧)が用いられる傾向があるので、導体損を小さくするために導線の横断面の面積(S)を大きくすることが望まれている。そこで、上記のように、第1導体部分31および第2導体部分32の各々が平角導線により構成されていることにより、第1導体部分31および第2導体部分32の各々の横断面が円形形状を有する場合に比べて、第1導体部分31および第2導体部分32の各々の横断面の面積を容易に大きくすることができる。その結果、第1導体部分31および第2導体部分32の各々の導体損を容易に小さくすることができる。
【0041】
なお、導体損を小さくするために第1導体部分31および第2導体部分32の各々の横断面の面積を大きくすることによって渦電流損が大きくなる。そこで、渦電流損を小さくするために、上記のように、コイルエンド部22を構成する第2導体部分32の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも単位長さ当たりの電気的な抵抗が大きい第1導体部分31がスロット12に配置されている。
【0042】
また、第1導体部分31および第2導体部分32は、一体的に形成されている。言い換えると、複数のセグメント導体30の各々において、第1導体部分31と第2導体部分32とは分離不可能に設けられている。なお、複数のセグメント導体30の各々は、3Dプリンティング(3Dプリンターを用いて立体物を形成すること)により形成されている。
【0043】
[第2実施形態]
次に、図5を参照して、第2実施形態によるステータ200について説明する。第2実施形態のステータ200では、スロット12内の複数の第1導体部分31が全てアルミニウムにより構成されている上記第1実施形態とは異なり、スロット12内の複数の第1導体部分131のうち一部がアルミニウム以外により構成されている。なお、上記第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して図示するとともに説明を省略する。
【0044】
図5に示すように、ステータ200は、コイル部120を備える。
【0045】
コイル部120は、スロット12に収容(配置)されているスロット収容部121を含む。なお、コイル部120のコイルエンド部22の構成は上記第1実施形態のコイルエンド部22(第2導体部分32)と同様であるので、詳細な説明および図示は省略されている。
【0046】
また、コイル部120は、複数のスロット12の各々において径方向に複数並んで配置されているとともにスロット収容部121を構成する第1導体部分131を含む。
【0047】
複数のスロット12の各々における複数の第1導体部分131のうち、径方向内側に配置されている第1導体部分131の単位長さ当たりの電気的な抵抗は、径方向外側に配置されている第1導体部分131の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも大きい。
【0048】
ここで、スロット12内において径方向内側の方が径方向外側よりも鎖交する磁束量が多いので、径方向内側に単位長さ当たりの電気的な抵抗が比較的大きい第1導体部分131を配置することによって、径方向内側に配置される第1導体部分131の渦電流損が大きくなるのを防止することができる。また、鎖交する磁束量が比較的小さい径方向外側に、単位長さ当たりの電気的な抵抗が比較的小さい第1導体部分131を配置することによって、径方向外側に配置される第1導体部分131の渦電流損が大きくなるのを防止しながら導体損が大きくなるのを防止することができる。したがって、これらの結果、コイル部120の損失が大きくなるのを効果的に防止することができる。
【0049】
具体的には、複数のスロット12の各々における複数の第1導体部分131は、第1導体部分131の単位長さ当たりの電気的な抵抗が径方向内側から径方向外側に向かって徐々に小さくなるように径方向に並んで設けられている。
【0050】
詳細には、第1導体部分131は、アルミ合金により構成されている導体部分131aと、アルミニウムにより構成されている導体部分131bと、銅合金により構成されている導体部分131cと、銅により構成されている導体部分131dとを含む。そして、ステータ200は、複数のスロット12の各々において、径方向内側から、導体部分131a、導体部分131b、導体部分131c、導体部分131dの順に並んで配置されるように構成されている。なお、アルミ合金は、シリコンと、マグネシウムと、アルミニウムとの合金(AlSi10Mg)である。銅合金は、クロムと、ジルコニウムと、銅との合金(CuCrZr)である。アルミ合金の単位長さ当たりの電気的な抵抗は、約4.3×10-8(Ω・m)である。銅合金の単位長さ当たりの電気的な抵抗は、約2.2×10-8(Ω・m)である。
【0051】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0052】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0053】
たとえば、上記第1実施形態では、スロット12内の複数の第1導体部分31が全てアルミニウムにより構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、スロット12内の複数の第1導体部分31が全てアルミ合金により構成されていてもよい。
【0054】
また、上記第1および第2実施形態では、第2導体部分32がステータコア10の軸方向の両側に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。第2導体部分32がステータコア10の軸方向の一方側のみに設けられていてもよい。
【0055】
また、上記第1および第2実施形態では、第1導体部分(31、131)および第2導体部分32の各々が平角導線により構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。第1導体部分(31、131)および第2導体部分32の各々が丸線により構成されていてもよい。
【0056】
また、上記第2実施形態では、複数のスロット12の各々における複数の第1導体部分131が、第1導体部分131の単位長さ当たりの電気的な抵抗が径方向内側から径方向外側に向かって徐々に小さくなるように配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、径方向内側からN番目(たとえば2番目)までの第1導体部分131が所定の材質(たとえばアルミ合金)により構成されているとともに、径方向内側からN+1番目(すなわち3番目)以降の第1導体部分131が上記所定の材質よりも単位長さ当たりの電気的な抵抗が小さい導線(たとえば銅合金)により構成されていてもよい。
【0057】
また、上記第1および第2実施形態では、第2導体部分32が銅により構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第2導体部分32が銅合金により構成されていてもよい。
【0058】
また、上記第1および第2実施形態では、スロット12内における複数の第1導体部分31(131)の横断面の形状および大きさ(面積)が互いに略同一である例を示したが、本発明はこれに限られない。スロット12内の複数の第1導体部分31(131)の横断面同士の大きさ(面積)を互いに同一にしつつ形状を互いに異ならせてもよい。たとえば、径方向内側の第1導体部分31ほど、横断面の径方向の幅を小さくしてもよい。この場合、磁束密度が比較的大きい径方向内側において上記式(1)のt(磁束が流れる方向の導体の厚み)が小さくなるので、径方向内側に配置される第1導体部分31(131)の渦電流損が大きくなるのを防止することが可能である。
【0059】
また、上記第1実施形態では、第1導体部分31および第2導体部分32が3Dプリンティングにより一体的に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1導体部分31と第2導体部分32とが互いに別個に設けられており、第1導体部分31と第2導体部分32とが溶接または銀ナノペースト等により接合されていてもよい。また、第1導体部分31を予め3Dプリンティングの装置にセットした状態で、第2導体部分32のみを(第1導体部分31に付加するように)3Dプリンティングにより形成してもよい。なお、上記第2実施形態においても同様に構成されていてもよい。
【0060】
また、上記第1実施形態では、互いに異なるセグメント導体30(第2導体部分32)同士がスロット12外において接続される例を示したが、本発明はこれに限られない。軸方向の一方側および他方側の各々に設けられたU字状のセグメント導体の端部同士がスロット12内において接続されていてもよい。
【0061】
また、上記第1実施形態では、第1導体部分31がアルミニウムにより構成されているとともに、第2導体部分32が銅により構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1導体部分31が銅合金により構成されているとともに、第2導体部分32が銅により構成されていてもよい。
【0062】
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0063】
複数のスロット(12)の各々に配置される複数の第1導体部分(31)の全ての単位長さ当たりの電気的な抵抗は、第2導体部分(32)の単位長さ当たりの電気的な抵抗よりも大きい。
【0064】
複数のスロット(12)の各々における複数の第1導体部分(131)は、第1導体部分(131)の単位長さ当たりの電気的な抵抗が径方向内側から径方向外側に向かって徐々に小さくなるように径方向に並んで設けられている。
【0065】
ステータ(200)は、複数のスロット(12)の各々において、径方向内側から、アルミ合金により構成されている第1導体部分(131、131a)、アルミニウムにより構成されている第1導体部分(131、131b)、銅合金により構成されている第1導体部分(131、131c)、銅により構成されている第1導体部分(131、131d)の順に並んで配置されるように構成されている。
【0066】
第1導体部分(31、131)は、少なくとも、ステータコア(10)の軸方向の一方側の端面(10a)から軸方向の他方側の端面(10b)まで延びるように設けられている。
【0067】
第1導体部分(31、131)および第2導体部分(32)は、一体的に形成されている。
【符号の説明】
【0068】
10…ステータコア、12…スロット、20、120…コイル部、21、121…スロット収容部、22…コイルエンド部、31、131…第1導体部分、32…第2導体部分、100、200…ステータ
図1
図2
図3
図4
図5