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特開2022-99105電子血圧計、および、電子血圧計における心房細動判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099105
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】電子血圧計、および、電子血圧計における心房細動判定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20220627BHJP
   A61B 5/0225 20060101ALI20220627BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
A61B5/022 100A
A61B5/022 400F
A61B5/0225 F
A61B10/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212869
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】澤野井 幸哉
(72)【発明者】
【氏名】内藤 晃誠
(72)【発明者】
【氏名】神田 寛行
(72)【発明者】
【氏名】工藤 優汰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達則
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA10
4C017AB01
4C017AC01
4C017AD01
4C017AD11
4C017BB01
4C017BC11
4C017BC16
4C017BC21
4C017BD06
4C017DE01
4C017DE05
(57)【要約】
【課題】電子血圧計において、1測定機会当たり比較的短時間で、心房細動が発生した可能性が有るか否かを精度良く判定すること。
【解決手段】電子血圧計は、カフの圧力を加圧し又は減圧する制御を行うカフ圧制御部と、カフ圧信号を検出する圧力検出部と、カフ圧信号に重畳された脈波を表す脈波信号を取り出し、この脈波信号に基づいて血圧を測定する血圧測定部とを備える。脈波間隔算出部は、或る被験者について1測定機会ごとに、1加圧過程または1減圧過程のみで得られた脈波信号に基づいて、脈波間隔を表すデータ群を求める(S102)。判定部は、その被験者の3測定機会以上についてのデータ群を集計して、脈波間隔の平均値を求めるとともに、集計されたデータ群の中に、平均値に対して予め定められた許容範囲を超える不規則脈波のデータが存在するか否かに基づいて、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定する(S104)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定部位を通る動脈の脈波に基づいて血圧を測定する電子血圧計であって、
被測定部位に装着されたカフの圧力を加圧し又は減圧する制御を行うカフ圧制御部と、
上記カフ圧制御部による加圧過程または減圧過程で、上記カフの圧力を表すカフ圧信号を検出する圧力検出部と、
上記カフ圧信号に重畳された脈波を表す脈波信号を取り出し、この脈波信号に基づいて血圧を測定する血圧測定部と、
或る被験者について1測定機会ごとに、1加圧過程または1減圧過程のみで得られた上記脈波信号に基づいて、脈波間隔を表すデータ群を求める脈波間隔算出部と、
上記被験者の3測定機会以上についての上記データ群を集計して、上記脈波間隔の平均値を求めるとともに、集計された上記データ群の中に、上記平均値に対して予め定められた許容範囲を超える不規則脈波のデータが存在するか否かに基づいて、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定する判定部と
を備えたことを特徴とする電子血圧計。
【請求項2】
請求項1に記載の電子血圧計において、
上記判定部は、
上記1測定機会ごとの上記データ群の各々について、上記脈波間隔の平均値を求めるとともに、そのデータ群の中に上記不規則脈波のデータが存在するか否かを判定して、上記1測定機会ごとに不規則脈波が発生したか否かを表す個別判定結果を求め、
上記3測定機会のうち2測定機会以上について、上記不規則脈波が発生したとの上記個別判定結果が得られたときに限り、心房細動が発生した可能性が有ると判定する
ことを特徴とする電子血圧計。
【請求項3】
請求項2に記載の電子血圧計において、
上記3測定機会をなす測定機会同士の時間間隔は、予め定められた許容期間内であることを特徴とする電子血圧計。
【請求項4】
請求項3に記載の電子血圧計において、
上記1測定機会ごとの上記個別判定結果を測定日時と対応付けて記憶する記憶部を備え、
上記判定部は、上記記憶部に記憶されている上記個別判定結果を最新のものから遡って探索して、測定機会同士の時間間隔が上記許容期間内であるという条件を満たして上記3測定機会以上についての上記個別判定結果が揃っているときに限り、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定することを特徴とする電子血圧計。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の電子血圧計において、
上記カフ圧制御部、上記圧力検出部および上記血圧測定部によって、1測定機会当たり1回のみの血圧測定を行う通常の血圧測定モードと、1測定機会当たり3回以上の血圧測定を繰り返す心房細動スクリーニングモードとを有し、
上記通常の血圧測定モードで、上記判定部は、上記集計された上記脈波間隔を表すデータ群の中で、上記不規則脈波のデータが、予め定められた頻発条件を満たすか否かを判定し、
上記頻発条件が満たされたとき、上記通常の血圧測定モードから上記心房細動スクリーニングモードへ切り替えることを促す報知を行う報知部を備えたことを特徴とする電子血圧計。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の電子血圧計において、
上記カフ圧制御部、上記圧力検出部および上記血圧測定部によって、1測定機会当たり1回のみの血圧測定を行う通常の血圧測定モードと、1測定機会当たり3回以上の血圧測定を繰り返す心房細動スクリーニングモードとを有し、
上記通常の血圧測定モードで、上記判定部は、上記集計された上記脈波間隔を表すデータ群の中で、上記不規則脈波のデータが、予め定められた頻発条件を満たすか否かを判定し、
上記頻発条件が満たされたとき、上記通常の血圧測定モードから上記心房細動スクリーニングモードへ切り替える制御を行うモード制御部を備えたことを特徴とする電子血圧計。
【請求項7】
被測定部位を通る動脈の脈波に基づいて血圧を測定する電子血圧計における心房細動判定方法であって、
上記電子血圧計は、
被測定部位に装着されたカフの圧力を加圧し又は減圧する制御を行うカフ圧制御部と、
上記カフ圧制御部による加圧過程または減圧過程で、上記カフの圧力を表すカフ圧信号を検出する圧力検出部と、
上記カフ圧信号に重畳された脈波を表す脈波信号を取り出し、この脈波信号に基づいて血圧を測定する血圧測定部とを備え、
上記心房細動判定方法は、
或る被験者について1測定機会ごとに、1加圧過程または1減圧過程のみで得られた上記脈波信号に基づいて、脈波間隔を表すデータ群を求め、
上記被験者の3測定機会以上についての上記データ群を集計して、上記脈波間隔の平均値を求めるとともに、集計された上記データ群の中に、上記平均値に対して予め定められた許容範囲を超える不規則脈波のデータが存在するか否かに基づいて、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定する
ことを特徴とする、電子血圧計における心房細動判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電子血圧計に関し、より詳しくは、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定できる電子血圧計に関する。また、この発明は、電子血圧計において心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定する心房細動判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭向け電子血圧計として、取得された脈波情報に基づいて心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定する機能を搭載したものがある(例えば、オムロンヘルスケア株式会社製の自動電子血圧計;M7 Intelli IT)。例えば、そのような血圧計を用いて被験者が1測定機会に連続して複数回(例えば、3回)の血圧測定を行うものとする。すると、各回の血圧測定において取得された脈波信号の間隔である脈波間隔が算出され、その脈波間隔とその血圧測定における平均的な脈波間隔とが比較される。そして、予め設定された例えば±25%などの許容値を超える脈波間隔が不規則脈波であると判定されて、その不規則脈波の発生回数がカウントされる。連続した複数回の血圧測定において、不規則脈波が所定回数以上発生した測定が何回発生したかに応じて、心房細動が発生した可能性が有るか否かが判定される。
【0003】
例えば、非特許文献1(M. Ishizawa et al. “Development of a Novel Algorithm to Detect Atrial Fibrillation Using an Automated Blood Pressure Monitor With an Irregular Heartbeat Detector”、Circulation Journal、一般社団法人日本循環器学会、2019年9月、83巻、12号、p.2416-2417)では、連続した3回の血圧測定中、1回以上不規則脈波が発生した測定回が2回以上あった場合を、心房細動が発生した可能性が有ると判定した結果が報告されている。その結果では、感度(心房細動患者を正しく心房細動として検出した割合)が95.5%、特異度(心房細動でない患者を正しく心房細動でないと検出した割合)が96.5%と非常に精度良く判定できている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M. Ishizawa et al.(石澤真ら)、“Development of a Novel Algorithm to Detect Atrial Fibrillation Using an Automated Blood Pressure Monitor With an Irregular Heartbeat Detector(不規則脈波検出器付き自動血圧計を用いた心房細動検出のための新アルゴリズムの開発)”、Circulation Journal(サーキュレーション・ジャーナル)、一般社団法人日本循環器学会、2019年9月、83巻、12号、p.2416-2417
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に1回の血圧測定の際に取得される脈波数は10拍前後である。そのため、1回の血圧測定で取得される脈波数で心房細動のスクリーニングを行った場合、安定して判定できない、と考えられる。
【0006】
しかし、測定機会のたびに常に3回血圧測定することは、1測定機会に要するトータル時間が長くなることや、収縮期血圧以上に繰り返しカフで圧迫される拘束感を受けることなどから、被験者にとって非常に煩わしいと言える。例えば、一般的に1回の血圧測定には40秒~60秒程度の時間を要する。また、測定と測定との間に30秒間~1分間の時間間隔をあけることが推奨されている。このため、3回連続血圧測定するには、図14に示すように、少なくとも180秒以上(1回目測定40秒+間隔30秒+2回目測定40秒+間隔30秒+3回目測定40秒)のトータル時間を要することになる。
【0007】
そこで、この発明の課題は、1測定機会当たり比較的短時間で、心房細動が発生した可能性が有るか否かを精度良く判定できる電子血圧計、および、電子血圧計における心房細動判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この開示の電子血圧計は、
被測定部位を通る動脈の脈波に基づいてオシロメトリック法により血圧を測定する電子血圧計であって、
被測定部位に装着されたカフの圧力を加圧し又は減圧する制御を行うカフ圧制御部と、
上記カフ圧制御部による加圧過程または減圧過程で、上記カフの圧力を表すカフ圧信号を検出する圧力検出部と、
上記カフ圧信号に重畳された脈波を表す脈波信号を取り出し、この脈波信号に基づいて血圧を測定する血圧測定部と、
或る被験者について1測定機会ごとに、1加圧過程または1減圧過程のみで得られた上記脈波信号に基づいて、脈波間隔を表すデータ群を求める脈波間隔算出部と、
上記被験者の3測定機会以上についての上記データ群を集計して、上記脈波間隔の平均値を求めるとともに、集計された上記データ群の中に、上記平均値に対して予め定められた許容範囲を超える不規則脈波のデータが存在するか否かに基づいて、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定する判定部と
を備えたことを特徴とする。
【0009】
「1測定機会」とは、被験者がカフを一旦装着した血圧測定のための機会を意味する。本発明では、1測定機会当たり1回の血圧測定が行われることが予定されている。
【0010】
「1加圧過程または1減圧過程のみ」とは、1測定機会における1回の血圧測定のみであることを意味する。1データ群に含まれるデータ数としては、典型的には10個程度が想定される。
【0011】
「3測定機会」としては、例えば、或る日の朝1回、昼1回、夜1回のような3回の測定機会、または、或る日の朝1回、翌日の朝1回、さらに翌日の朝1回のような3回の測定機会などが想定される。
【0012】
「脈波間隔」とは、脈波のピーク・ツゥ・ピークの間隔(または、それに相当するボトム・ツゥ・ボトムの間隔)を意味する。
【0013】
「不規則脈波」とは、脈波間隔が平均値に対して予め定められた許容範囲を超える脈波を指す。「予め定められた許容範囲」とは、例えば平均値に対して±25%の範囲内を指す。
【0014】
この開示の電子血圧計では、被測定部位を通る動脈の脈波に基づいて、次のようにして血圧が測定される。まず、被験者がカフを被測定部位に装着して測定機会を迎えるものとする。カフ圧制御部は、被測定部位に装着されたカフの圧力を、加圧過程または減圧過程に置く。上記カフ圧制御部による上記加圧過程または上記減圧過程で、圧力検出部は、上記カフの圧力を表すカフ圧信号を検出する。血圧測定部は、上記カフ圧信号に重畳された脈波を表す脈波信号を取り出し、この脈波信号に基づいて血圧を測定する。このようにして、1測定機会当たり1回の血圧測定が行われる。
【0015】
ここで、脈波間隔算出部は、或る被験者について1測定機会ごとに、1加圧過程または1減圧過程のみで得られた上記脈波信号に基づいて、脈波間隔を表すデータ群を求める。1データ群に含まれるデータ数としては、典型的には10個程度が想定される。既述のように、データ数10個程度では、心房細動が発生した可能性が有るか否かを、精度良く判定できない、と考えられる。そこで、この電子血圧計では、判定部は、上記被験者の3測定機会以上についての上記データ群を集計して、上記脈波間隔の平均値を求めるとともに、集計された上記データ群の中に、上記平均値に対して予め定められた許容範囲を超える不規則脈波のデータが存在するか否かに基づいて、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定する。このようにした場合、上記判定の基礎となるデータ数は、従来方式(非特許文献1に記載の、1測定機会当たり連続して3回血圧測定する方式を指す。以下同様。)における連続した3回の血圧測定のデータ数と同程度か、またはそれ以上になる。したがって、この電子血圧計によれば、心房細動が発生した可能性が有るか否かを精度良く判定できる。
【0016】
また、この電子血圧計では、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定するために、1測定機会当たり1回の血圧測定が行われば足りるので、1測定機会当たりに要する時間が比較的短時間で済む。なお、1測定機会当たり複数回の血圧測定が行われてもよい。
【0017】
一実施形態の電子血圧計では、
上記判定部は、
上記1測定機会ごとの上記データ群の各々について、上記脈波間隔の平均値を求めるとともに、そのデータ群の中に上記不規則脈波のデータが存在するか否かを判定して、上記1測定機会ごとに不規則脈波が発生したか否かを表す個別判定結果を求め、
上記3測定機会のうち2測定機会以上について、上記不規則脈波が発生したとの上記個別判定結果が得られたときに限り、心房細動が発生した可能性が有ると判定する
ことを特徴とする。
【0018】
この一実施形態の電子血圧計では、上記判定部は、上記1測定機会ごとの上記データ群の各々について、上記脈波間隔の平均値を求めるとともに、そのデータ群の中に、上記不規則脈波のデータが存在するか否かを判定して、上記1測定機会ごとに不規則脈波が発生したか否かについての個別判定結果を求める。さらに、上記判定部は、上記3測定機会のうち2測定機会以上について、上記不規則脈波が発生したとの上記個別判定結果が得られたときに限り、心房細動が発生した可能性が有ると判定する。これにより、心房細動が発生した可能性が有るか否かを、簡易なアルゴリズムで判定できる。
【0019】
一実施形態の電子血圧計では、
上記3測定機会をなす測定機会同士の時間間隔は、予め定められた許容期間内であることを特徴とする。
【0020】
「予め定められた許容期間」とは、例えば1日間を意味する。
【0021】
この一実施形態の電子血圧計では、上記3測定機会をなす測定機会同士の時間間隔は、予め定められた許容期間内であることから、上記判定の信頼性を向上できる。
【0022】
一実施形態の電子血圧計では、
上記1測定機会ごとの上記個別判定結果を測定日時と対応付けて記憶する記憶部を備え、
上記判定部は、上記記憶部に記憶されている上記個別判定結果を最新のものから遡って探索して、測定機会同士の時間間隔が上記許容期間内であるという条件を満たして上記3測定機会以上についての上記個別判定結果が揃っているときに限り、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定することを特徴とする。
【0023】
この一実施形態の電子血圧計では、記憶部は、上記1測定機会ごとの上記個別判定結果を測定日時と対応付けて記憶する。上記判定部は、上記記憶部に記憶されている上記個別判定結果を最新のものから遡って探索して、測定機会同士の時間間隔が上記許容期間内であるという条件を満たして上記3測定機会以上についての上記個別判定結果が揃っているときに限り、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定する。逆に言えば、測定機会同士の時間間隔が上記許容期間を超えているような古い個別判定結果は、上記判定部による判定の基礎として用いられることはない。したがって、上記判定の信頼性を向上できる。
【0024】
一実施形態の電子血圧計では、
上記カフ圧制御部、上記圧力検出部および上記血圧測定部によって、1測定機会当たり1回のみの血圧測定を行う通常の血圧測定モードと、1測定機会当たり3回以上の血圧測定を繰り返す心房細動スクリーニングモードとを有し、
上記通常の血圧測定モードで、上記判定部は、上記集計された上記脈波間隔を表すデータ群の中で、上記不規則脈波のデータが、予め定められた頻発条件を満たすか否かを判定し、
上記頻発条件が満たされたとき、上記通常の血圧測定モードから上記心房細動スクリーニングモードへ切り替えることを促す報知を行う報知部を備えたことを特徴とする。
【0025】
「予め定められた頻発条件」としては、
i) 最新の2測定機会についての上記脈波間隔を表すデータ群に、それぞれ上記不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件、
ii) 最新の5測定機会についての上記脈波間隔を表すデータ群のうち過半数(つまり、3測定機会以上についてのデータ群)に、それぞれ上記不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件、
iii) 毎日の同じ時間帯(朝、昼、晩など)の最新の2測定機会についての上記脈波間隔を表すデータ群に、それぞれ上記不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件、
iv) 毎日の同じ時間帯(朝、昼、晩など)の最新の5測定機会についての上記脈波間隔を表すデータ群のうち過半数(つまり、3測定機会以上についてのデータ群)に、それぞれ上記不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件
などが挙げられる。
【0026】
この一実施形態の電子血圧計では、デフォルトでは、上記カフ圧制御部、上記圧力検出部および上記血圧測定部によって、1測定機会当たり1回のみの血圧測定を行う通常の血圧測定モードとなる。上記通常の血圧測定モードで、上記判定部は、上記集計された上記脈波間隔を表すデータ群の中で、上記不規則脈波のデータが、予め定められた頻発条件を満たすか否かを判定する。上記頻発条件が満たされたとき、報知部は、上記通常の血圧測定モードから上記心房細動スクリーニングモードへ切り替えることを促す報知を行う。この報知によって、ユーザ(上記被験者、医師、看護師などの医療関係者を含む。以下同様。)は、通常の血圧測定モードから心房細動スクリーニングモードへ切り替えることを促される。心房細動スクリーニングモードに切り替えられれば、通常の血圧測定モードに比して、心房細動のスクリーニングがより精度良く行われ得る。
【0027】
一実施形態の電子血圧計では、
上記カフ圧制御部、上記圧力検出部および上記血圧測定部によって、1測定機会当たり1回のみの血圧測定を行う通常の血圧測定モードと、1測定機会当たり3回以上の血圧測定を繰り返す心房細動スクリーニングモードとを有し、
上記通常の血圧測定モードで、上記判定部は、上記集計された上記脈波間隔を表すデータ群の中で、上記不規則脈波のデータが、予め定められた頻発条件を満たすか否かを判定し、
上記頻発条件が満たされたとき、上記通常の血圧測定モードから上記心房細動スクリーニングモードへ切り替える制御を行うモード制御部を備えたことを特徴とする。
【0028】
この一実施形態の電子血圧計では、デフォルトでは、上記カフ圧制御部、上記圧力検出部および上記血圧測定部によって、1測定機会当たり1回のみの血圧測定を行う通常の血圧測定モードとなる。上記通常の血圧測定モードで、上記判定部は、上記集計された上記脈波間隔を表すデータ群の中で、上記不規則脈波のデータが、予め定められた頻発条件を満たすか否かを判定する。上記頻発条件が満たされたとき、モード制御部は、上記通常の血圧測定モードから上記心房細動スクリーニングモードへ切り替える制御を行う。心房細動スクリーニングモードでは、1測定機会当たり3回以上の血圧測定が繰り返される。したがって、この心房細動スクリーニングモードでは、通常の血圧測定モードに比して、心房細動が発生した可能性が有るか否かの判定がより精度良く行われ得る。
【0029】
別の局面では、この発明の電子血圧計における心房細動判定方法は、
被測定部位を通る動脈の脈波に基づいて血圧を測定する電子血圧計における心房細動判定方法であって、
上記電子血圧計は、
被測定部位に装着されたカフの圧力を加圧し又は減圧する制御を行うカフ圧制御部と、
上記カフ圧制御部による加圧過程または減圧過程で、上記カフの圧力を表すカフ圧信号を検出する圧力検出部と、
上記カフ圧信号に重畳された脈波を表す脈波信号を取り出し、この脈波信号に基づいて血圧を測定する血圧測定部とを備え、
上記心房細動判定方法は、
或る被験者について1測定機会ごとに、1加圧過程または1減圧過程のみで得られた上記脈波信号に基づいて、脈波間隔を表すデータ群を求め、
上記被験者の3測定機会以上についての上記データ群を集計して、上記脈波間隔の平均値を求めるとともに、集計された上記データ群の中に、上記平均値に対して予め定められた許容範囲を超える不規則脈波のデータが存在するか否かに基づいて、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定する
ことを特徴とする。
【0030】
この発明の電子血圧計における心房細動判定方法によれば、心房細動が発生した可能性が有るか否かを精度良く判定できる。しかも、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定するために、1測定機会当たり1回の血圧測定が行われば足りるので、1測定機会当たりに要する時間が比較的短時間で済む。
【発明の効果】
【0031】
以上より明らかなように、この開示の電子血圧計、および、電子血圧計における心房細動判定方法によれば、1測定機会当たり比較的短時間で、心房細動が発生した可能性が有るか否かを精度良く判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】この発明の一実施形態の電子血圧計のブロック構成を示す図である。
図2図2(A)は、上記電子血圧計による通常の血圧測定モードにおいて、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定するフローを示す図である。図2(B)は、図2(A)のフローにおいて、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定するための判定対象データを、メモリ内で探索する処理のフローを示す図である。
図3図3(A)は、上記電子血圧計による血圧測定のフローを示す図である。図3(B)は、標準的な脈波間隔を例示する図である。図3(C)は、不規則脈波が発生している脈波間隔を例示する図である。
図4図4(A)は、上記通常の血圧測定モードにおいて心房細動が発生した可能性が有ると判定されたとき、表示器に表示される画面を例示する図である。図4(B)は、上記通常の血圧測定モードにおいて心房細動が発生した可能性(または心房細動に関する情報)が無いとき、表示器に表示される画面を例示する図である。
図5図5(A)は、或る被験者(心房細動患者Aさん)についての従来方式による判定対象データと、心房細動が発生した可能性が有るか否かの判定結果とを例示する図である。図5(B)は、その被験者についての本発明の第1実施形態による判定対象データと、心房細動が発生した可能性が有るか否かの判定結果とを例示する図である。
図6図6(A)は、別の被験者(心房細動患者Bさん)についての従来方式による判定対象データと、心房細動が発生した可能性が有るか否かの判定結果とを例示する図である。図6(B)は、その被験者についての上記第1実施形態による判定対象データと、心房細動が発生した可能性が有るか否かの判定結果とを例示する図である。
図7図7(A)は、さらに別の被験者(健常者Cさん)についての従来方式による判定対象データと、心房細動が発生した可能性が有るか否かの判定結果とを例示する図である。図7(B)は、その被験者についての上記第1実施形態による判定対象データと、心房細動が発生した可能性が有るか否かの判定結果とを例示する図である。
図8】上記被験者(心房細動患者Aさん)についての別の判定対象データを用いて、判定対象データが揃ったか否かの判断の仕方を説明する図である。
図9図9(A)は、上記通常の血圧測定モードにおいて、被験者についての不規則脈波のデータが予め定められた頻発条件を満たすか否かを判定するフローを示す図である。図9(B)は、上記通常の血圧測定モードにおいて、被験者についての不規則脈波のデータが予め定められた頻発条件を満たすか否かを判定する別のフローを示す図である。
図10】上記電子血圧計による心房細動スクリーニングモードのフローを示す図である。
図11図11(A)は、図9(A)のフローによって頻発条件を満たすと判定されたとき、表示器に表示される画面を例示する図である。図11(B)は、図9(B)のフローによって頻発条件を満たすと判定されたとき、表示器に表示される画面を例示する図である。
図12】或る被験者(心房細動患者Aさん)についての図9(A)または図9(B)のフローによる判定対象データと、頻発条件を満たすか否かの判定結果とを例示する図である。
図13】上記被験者(心房細動患者Aさん)についての図9(A)または図9(B)のフローによる別の判定対象データと、頻発条件を満たすか否かの判定結果とを例示する図である。
図14】従来方式によって心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定する場合に、1測定機会当たりに要するトータル時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
(血圧計の構成)
図1は、この発明の一実施形態の電子血圧計1の外観を示している。この血圧計1は、大別して、被験者の棒状の被測定部位(例えば、上腕)を取り巻いて装着される血圧測定用カフ20と、血圧測定のための要素を搭載した本体10とを備えている。
【0035】
上記カフ20は、一般的なものであり、細長い帯状の外布21と内布23との間に流体袋22を挟み、それらの外布21、内布23の周縁部を縫製または溶着して構成されている。
【0036】
本体10は、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)100と、表示器50と、操作部52と、記憶部としてのメモリ51と、電源部53と、圧力センサ31と、発振回路310と、ポンプ32と、ポンプ駆動回路320と、弁33と、弁駆動回路330とを搭載している。この例では、圧力センサ31に接続されたエア配管39aと、ポンプ32に接続されたエア配管39bと、弁33に接続されたエア配管39cとが合流して、1本のエア配管39になって、カフ20内の流体袋22に流体流通可能に接続されている。以下では、上記エア配管39a,39b,39cを含めて、エア配管39として総称する。
【0037】
表示器50は、この例では、LCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)からなり、CPU100からの制御信号に従って所定の情報を表示する。この例では、表示器50は、図4(B)に例示するように、上から順に、収縮期血圧SYS(Systolic Blood Pressure、単位;mmHg)を表示するためのSYS表示領域501と、拡張期血圧DIA(Diastolic Blood Pressure、単位;mmHg)を表示するためのDIA表示領域502と、脈拍数PLS(単位;拍/min)を表示するためのPLS表示領域503と、被験者についての心房細動に関する情報を表示するためのAF表示領域504とを備えている。なお、図4(B)では、便宜上、各表示領域501,502,503,504を破線の枠で図示しているが、実際には破線の枠は表示されない。表示器50は、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイからなっていてもよいし、LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)を含んでいてもよい。
【0038】
図1中に示す操作部52は、この例では、血圧の測定開始/停止の指示を受け付けるための測定スイッチ52Aと、記録されている血圧測定等の結果を呼び出すためのメモリスイッチ52Bと、通常の血圧測定モードと心房細動スクリーニングモードとの間でモードを切り替える指示を受け付けるためのモード切替スイッチ52Cとを含み、ユーザの指示に応じた操作信号をCPU100に入力する。
【0039】
ここで、「通常の血圧測定モード」とは、1測定機会当たり1回のみの血圧測定を行い、判定対象データが揃ったとき心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定するモードを指す。「心房細動スクリーニングモード」とは、1測定機会当たり3回以上の血圧測定を繰り返し、判定対象データが揃ったとき心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定するモードを指す。
【0040】
メモリ51は、血圧計1を制御するためのプログラムのデータ、血圧計1の各種機能を設定するための設定データ、血圧値の測定結果のデータなどを記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0041】
CPU100は、メモリ51に記憶された血圧計1を制御するためのプログラムに従って、この血圧計1全体の動作を制御する。具体的な制御については、後述する。
【0042】
圧力センサ31は、この例ではピエゾ抵抗式半導体圧力センサからなる。この圧力センサ31は、エア配管39を通して、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(これを「カフ圧Pc」と呼ぶ。)をピエゾ抵抗効果による電気抵抗として出力する。発振回路310は、圧力センサ31からの電気抵抗に応じた発振周波数で発振する。CPU100は、その発振周波数に応じて、カフ圧Pcを求める。圧力センサ31、発振回路310、CPU100は、全体として、カフ20の圧力を検出する圧力検出部を構成している。後述するように、カフ圧Pcには、被測定部位が示す脈波による圧力変動成分(これを「脈波信号Pm」と呼ぶ。)が重畳されている。
【0043】
ポンプ32は、CPU100から与えられる制御信号に基づいてポンプ駆動回路320によって駆動され、エア配管39を通して、カフ20に内包された流体袋22へ空気を供給する。これにより、流体袋22の圧力(カフ圧Pc)が加圧される。弁33は、常開タイプの電磁弁からなり、CPU100から与えられる制御信号に基づいて弁駆動回路330によって駆動され、エア配管39を通して流体袋22内の空気を排出または封入して、カフ圧Pcを制御するために開閉される。ポンプ32、ポンプ駆動回路320、弁33、弁駆動回路330、CPU100は、全体として、カフ圧Pcを加圧し又は減圧する制御を行うカフ圧制御部を構成している。
【0044】
電源部53は、CPU100、表示器50、メモリ51、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、その他の本体10内の各部に電力を供給する。
【0045】
(第1実施形態)
図2(A)は、血圧計1のCPU100による通常の血圧測定モードにおいて、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定するフローを示している。このフローは、或る被験者の1測定機会での処理(1回の血圧測定を含む)に相当する。この例では、測定機会としては、朝(04:00~10:00)1回、昼(10:00~19:00)1回、夜(19:00~02:00)1回が想定されているものとする。
【0046】
カフ20が被測定部位に装着された装着状態で、被験者が本体10に設けられた測定スイッチ52Aを押し下げると(図2(A)のステップS101)、CPU100は、まず血圧測定の処理を実行する(図2(A)のステップS102)。
【0047】
具体的には、図3(A)のステップS1に示すように、CPU100は、まず初期化を行う。すなわち、CPU100は、処理用メモリ領域を初期化するとともに、ポンプ32を停止し、弁33を開いた状態で、圧力センサ31の0mmHg調整(大気圧を0mmHgに設定する。)を行う。
【0048】
続いて、CPU100は圧力制御部として働いて、弁33を閉じ(ステップS2)、ポンプ32を駆動して、カフ20の加圧を開始する(ステップS3)。すなわち、CPU100は、ポンプ32からエア配管39を通してカフ20に内包された流体袋22に空気を供給する。これとともに、CPU100は圧力検出部として働いて、カフ20(流体袋22)内の圧力(カフ圧Pc)を、エア配管39を通して圧力センサ31によって検出し、カフ圧Pcに基づいて、ポンプ32による加圧速度を制御する。これにより、カフ20が加圧され、被測定部位を通る動脈が圧迫される。ここで、圧力センサ31によって検出されるカフ圧Pcには、滑らかに変化する成分(直流成分)に加えて、脈波による圧力変動成分(脈波信号Pm)が重畳されている。
【0049】
次に、CPU100は、カフ圧Pcが予め定められた値(この例では、被験者の想定される血圧値を十分上回るように、例えば200mmHgに設定されているものとする。)に達すると(ステップS4でYes)、ポンプ32を停止する(ステップS5)。
【0050】
続いて、CPU100は圧力制御部として働いて、弁33を徐々に開く(ステップS6)。これにより、カフ圧Pcを略一定速度で減圧してゆく。この減圧過程で、CPU100は、フィルタリングを行ってカフ圧Pcから脈波信号Pmを抽出する。そして、ステップS7で、CPU100は血圧測定部として働いて、この時点で取得されている脈波信号Pmに基づいて、公知のオシロメトリック法により血圧値(収縮期血圧SYS(Systolic Blood Pressure)と拡張期血圧DIA(Diastolic Blood Pressure))の算出を試みる。また、CPU100は、上記脈波信号Pmに基づいて、脈拍数PLS[拍/min]を算出する。さらに、CPU100は脈波間隔算出部として働いて、現在の測定機会(この第1実施形態では、測定機会は測定回と同義である。)についての上記脈波信号Pmに基づいて、脈波間隔(これを「Δt」で表す。)を表すデータ群を求める。さらに、CPU100は判定部として働いて、上記脈波間隔Δtを表すデータ群について、脈波間隔の平均値(これを「Δtave」で表す。)を求めるとともに、そのデータ群の中に不規則脈波のデータが存在するか否かを判定する。
【0051】
この例では、図3(B)(横軸を時間t、縦軸を脈波信号Pmとして、脈波波形を表すグラフ)に例示するように、脈波間隔Δtは、脈波Pwのピーク・ツゥ・ピークの間隔として定められている。不規則脈波とは、脈波間隔の平均値Δtaveに対して予め定められた許容範囲(この例では、±25%)を超える脈波を指す。例えば、図3(C)中に示す脈波Pw1では、前に隣り合う脈波との間隔Δt1、または、後に隣り合う脈波との間隔Δt2が、脈波間隔の平均値Δtaveに対して許容範囲±25%を超えている。したがって、脈波Pw1は不規則脈波として判定される。
【0052】
この例では、CPU100は、現在の測定機会についてのデータ群の中で、不規則脈波が発生した回数(これを「不規則脈波発生回数n」と呼ぶ。)を、個別判定結果として算出する。不規則脈波発生回数nが0であれば、現在の測定機会について不規則脈波が発生しなかったことを表す。また、不規則脈波発生回数nが1以上であれば、現在の測定機会について不規則脈波が発生したことを表す。
【0053】
CPU100は、データ不足のために未だ血圧値SYS,DIAと脈拍数PLSと不規則脈波発生回数nを算出できない場合は(図3(A)のステップS8でNO)、算出できるまでステップS6~S8の処理を繰り返す。
【0054】
このようにして血圧値SYS,DIAと脈拍数PLSと不規則脈波発生回数nの算出ができたら(ステップS8でYes)、CPU100は圧力制御部として働いて、弁33を開いて、カフ20(流体袋22)内の空気を急速排気する制御を行う(ステップS9)。
【0055】
この後、図3(A)のステップS10で、CPU100は、血圧値SYS,DIAと脈拍数PLSを、表示器50に表示する制御を行う。これにより、図4(B)に示すように、表示器50内のSYS表示領域501,DIA表示領域502,PLS表示領域503に、それぞれ、例えば収縮期血圧SYS=130mmHg、拡張期血圧DIA=72mmHg、脈拍数PLS=66拍/minが表示される。なお、図3(A)のステップS7では、心房細動が発生した可能性が有るか否かは未だ判定されていないため、AF表示領域504には、何も表示されていない。しかし、現在の測定機会についての不規則脈波発生回数nが1以上であれば、AF表示領域504に、「不規則脈波」が発生したことを表すマーク、メッセージなどを表示してもよい。
【0056】
さらに、図3(A)のステップS10で、CPU100は、上記被験者の現在の測定機会について、測定日時と、血圧値SYS,DIAと、脈拍数PLSと、不規則脈波発生回数nとを、互いに対応付けて、メモリ51に保存する制御を行う。これにより、図5(B)に例示するように、メモリ51内のテーブルとして、上記被験者(この例では、心房細動患者Aさん)の現在の測定機会について、この例では図5(B)のテーブルの1段目(表頭直下の段数を意味する。以下同様。)に、測定日付が09/22、測定時刻が21:17、血圧値SYS,DIAおよび脈拍数PLSが130/72/66、不規則脈波発生回数nが0というように、互いに対応付けて保存される。なお、血圧値SYS,DIAおよび脈拍数PLSの単位は、簡単のため図示が省略されているが、既述のように、血圧値SYS,DIAについてはmmHg、脈拍数PLSについては拍/minである(以下同様。)。このようにして、1測定機会当たり1回の血圧測定が行われる。この後、図2(A)のフローへ戻る。
【0057】
なお、上の例では、カフ20(流体袋22)の減圧過程で血圧値と脈拍数PLSと不規則脈波発生回数nを算出したが、これに限られるものではなく、カフ20(流体袋22)の加圧過程で算出してもよい。
【0058】
次に、図2(A)のステップS103で、CPU100は判定部として働いて、メモリ51に記憶されている個別判定結果を最新のもの(現在の測定機会)から遡って探索して、判定対象データが揃っているか否かを判断する。
【0059】
具体的には、図2(B)に示すように、現在の測定機会から遡って許容期間(この例では、1日間)内に前回の測定機会のデータが有るか否かを判定し(図2(B)のステップS131)、もし有れば(ステップS131でYes)、さらに、前回の測定機会から遡って許容期間(この例では、1日間)内に、前々回の測定機会のデータが有るか否かを判定する(ステップS132)。いずれかのデータが無ければ(ステップS131またはS132でNo)、この通常の血圧測定モードの処理を終了する。
【0060】
例えば、現在の測定機会が図5(B)中の1段目(測定日付が09/22、測定時刻が21:17)に相当し、前回の測定機会のデータが無ければ(ステップS131でNo)、この通常の血圧測定モードの処理を終了する。
【0061】
次の測定機会に、カフ20が被測定部位に装着された装着状態で、上記被験者が本体10に設けられた測定スイッチ52Aを押し下げると(図2(A)のステップS101)、CPU100は再び血圧測定の処理を開始する(図2(A)のステップS102)。この血圧測定の処理によって、図5(B)中の2段目に示すように、測定日付が09/23、測定時刻が08:39、血圧値SYS,DIAおよび脈拍数PLSが124/78/76、不規則脈波発生回数nが5というデータが保存されたものとする。この測定機会でも、前々回の測定機会のデータが無いから(ステップS132でNo)、この通常の血圧測定モードの処理を終了する。
【0062】
さらに次の測定機会に、カフ20が被測定部位に装着された装着状態で、上記被験者が本体10に設けられた測定スイッチ52Aを押し下げると(図2(A)のステップS101)、CPU100は再び血圧測定の処理を開始する(図2(A)のステップS102)。この血圧測定の処理によって、図5(B)中の3段目に示すように、測定日付が09/23、測定時刻が16:14、血圧値SYS,DIAおよび脈拍数PLSが117/72/59、不規則脈波発生回数nが5というデータが保存されたものとする。この測定機会では、測定機会同士の時間間隔が上記許容期間内であるという条件を満たして3測定機会以上についての個別判定結果(不規則脈波発生回数nのデータ)D1が揃っている(図2(B)のステップS131およびS132でYes)。したがって、CPU100は、判定対象データD1が揃っていると判断する(図2(A)のステップS103でYes)。なお、上記許容期間は、1日間以内であれば、日をまたいでもよい。
【0063】
このとき、CPU100は、さらに判定部として働いて、3測定機会のうち2測定機会以上について、不規則脈波が発生したとの個別判定結果(不規則脈波発生回数n)が得られているか否かを判定する(図2(A)のステップS104)。図5(B)の例では、1段目の測定機会(前々回の測定機会;測定日付が09/22、測定時刻が21:17)について不規則脈波発生無し(不規則脈波発生回数n=0)、2段目の測定機会(前回の測定機会;測定日付が09/23、測定時刻が08:39)について不規則脈波発生有り(不規則脈波発生回数n=5)、3段目の測定機会(現在の測定機会;測定日付が09/23、測定時刻が16:14)について不規則脈波発生有り(不規則脈波発生回数n=5)になっている。この例では、3測定機会のうち2測定機会について不規則脈波が発生しているから、心房細動が発生した可能性が有ると判定される。理解の容易のため、図5(B)の最右欄に、判定対象データD1の範囲を示すとともに、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」を表している。なお、心房細動が発生した可能性が無いとの判定結果は、「Non-AF」で表される。
【0064】
続いて、CPU100は、現在の測定機会についての血圧値SYS,DIAと脈拍数PLSに加えて、心房細動が発生した可能性が有る旨を表す情報を、表示器50に表示する制御を行う。この例では、図4(A)に示すように、表示器50のAF表示領域504に、「心房細動の可能性があります」というメッセージが表示される。なお、メッセージに代えて、または、メッセージに加えて、心房細動が発生した可能性が有ることを表すマークを表示してもよい。
【0065】
この後、さらに次の測定機会に、カフ20が被測定部位に装着された装着状態で、上記被験者が本体10に設けられた測定スイッチ52Aを押し下げると(図2(A)のステップS101)、CPU100は再び血圧測定の処理を開始する(図2(A)のステップS102)。この血圧測定の処理によって、図5(B)中の4段目に示すように、測定日付が09/23、測定時刻が21:52、血圧値SYS,DIAおよび脈拍数PLSが112/70/61、不規則脈波発生回数nが3というデータが保存されたものとする。この場合、図2(A)のステップS103で、図5(B)中の2段目~4段目に示す判定対象データD2が揃っていると判断される。この例では、3測定機会のうち3測定機会すべてで不規則脈波が発生しているから、図2(A)のステップS104で、心房細動が発生した可能性が有ると判定される。
【0066】
以降は同様に、上記被験者が朝1回、昼1回、夜1回の測定機会に血圧測定を繰り返す限り、測定機会ごとに心房細動が発生した可能性が有るか否かが判定される。
【0067】
このようにした場合、CPU100による上記判定の基礎となるデータ数は、従来方式における連続した3回の血圧測定のデータ数と同程度か、またはそれ以上になる。したがって、この血圧計1によれば、心房細動が発生した可能性が有るか否かを精度良く判定できる。また、心房細動が発生した可能性が有るか否かを、簡易なアルゴリズムで判定できる。
【0068】
また、この血圧計1では、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定するために、1測定機会当たり1回の血圧測定が行われば足りるので、1測定機会当たりに要する時間が比較的短時間で済む。なお、1測定機会当たり複数回の血圧測定が行われてもよい。
【0069】
なお、図2(A)のステップS103で、3測定機会以上についての個別判定結果(不規則脈波発生回数nのデータ)が得られていたとしても、測定機会同士の時間間隔が上記許容期間を外れていれば(図2(B)のステップS131またはS132でNo、したがって、図2(A)のステップS103でNo)、CPU100は、心房細動が発生した可能性が有るか否かの判定を行わず、この通常の血圧測定モードの処理を終了する。例えば、図8のテーブルの1段目~3段目では、上記被験者の3測定機会について、不規則脈波が発生したとの個別判定結果(不規則脈波発生回数n)のデータD7が得られている。具体的には、1段目の測定機会(前々回の測定機会;測定日付が09/17、測定時刻が11:10)について不規則脈波発生無し(不規則脈波発生回数n=0)、2段目の測定機会(前回の測定機会;測定日付が09/20、測定時刻が08:36)について不規則脈波発生無し(不規則脈波発生回数n=0)、3段目の測定機会(現在の測定機会;測定日付が09/21、測定時刻が07:40)について不規則脈波発生有り(不規則脈波発生回数n=1)になっている。この例では、3段目の測定機会(現在の測定機会)から2段目の測定機会(前回の測定機会)までは、1日間以内であるから、許容期間内になっている(図2(B)のステップS131でYes)。しかし、2段目の測定機会(前回の測定機会)から1段目の測定機会(前々回の測定機会)までは、2日間を超えて遡るから、許容期間を外れている(図2(B)のステップS132でNo、したがって、図2(A)のステップS103でNo)。このため、心房細動が発生した可能性が有るか否かの判定(図2(A)のステップS104)は行われない。なお、図8の最右欄に、このことが「D7;許容期間外」として表されている。
【0070】
このように、測定機会同士の時間間隔が上記許容期間を超えているような古い個別判定結果(不規則脈波発生回数nのデータ)は、CPU100による上記判定の基礎として用いられることはない。したがって、判定の信頼性を向上できる。
【0071】
(従来方式と本発明との比較検証)
例えば、図5(A)は、従来方式に従って、上記被験者(この例では、心房細動患者Aさん)が1測定機会当たり連続して3回血圧測定を行ったときのデータを示している。この例では、図5(A)のテーブルの1段目~3段目に示すように、測定日付09/22の21時台(夜)の測定機会に連続して3回血圧測定が行われている。測定時刻21:17、21:18、21:19の血圧測定では、不規則脈波発生回数nはいずれも0であった。これらを判定対象データとして、従来方式(連続した3回の血圧測定中、1回以上不規則脈波が発生した測定回が2回以上あった場合を、心房細動が発生した可能性が有ると判定する)に従って判定した場合、心房細動が発生した可能性が無いとの判定結果「Non-AF」が得られた。次に、図5(A)中の4段目~6段目に示すように、測定日付09/23の8時台(朝)の測定機会に連続して3回血圧測定が行われている。測定時刻08:39、08:40、08:42の血圧測定では、不規則脈波発生回数nはそれぞれ5、2、7であった。これらを判定対象データとして、従来方式に従って判定した場合、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られた。以下同様に、図5(A)中の7段目~9段目に示す測定日付09/23の16時台(昼)の測定機会についても、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られた。また、図5(A)中の10段目~12段目に示す測定日付09/23の21時台(夜)の測定機会についても、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られた。このように、従来方式によれば、上記被験者の1測定機会ごとに心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定しているため、心房細動患者Aさんのデータであっても、その測定機会の際の不規則脈波発生状況に依存して、判定結果が「Non-AF」と「AF」とに分かれた。この理由は、心房細動患者であっても、常にその症状が出ているのではなく、飲酒、ストレス、睡眠不足などの環境要因によって、一時的にだけ症状が出る場合もあるからである、と考えられる。
【0072】
本発明(第1実施形態)の説明に用いた図5(B)中の、心房細動患者Aさんについての血圧値SYS,DIA、脈拍数PLS、不規則脈波発生回数nのデータは、図5(A)中の各測定機会のうち1回目の血圧測定のデータを抜粋したものに相当する。具体的には、図5(A)中の1段目~3段目に示された測定日付09/22の21時台(夜)のデータのうち1段目(測定日付が09/22、測定時刻が21:17)のデータが、図5(B)中の1段目のデータとして採用されている。また、図5(A)中の4段目~6段目に示された測定日付09/23の8時台(朝)のデータのうち4段目(測定日付が09/23、測定時刻が08:39)のデータが、図5(B)中の2段目のデータとして採用されている。以下同様に、図5(A)中の7段目~9段目に示された測定日付09/23の16時台(昼)のデータのうち7段目(測定日付が09/23、測定時刻が16:14)のデータが、図5(B)中の3段目のデータとして採用されている。また、図5(A)中の10段目~12段目に示された測定日付09/23の21時台(夜)のデータのうち10段目(測定日付が09/23、測定時刻が21:52)のデータが、図5(B)中の4段目のデータとして採用されている。既述のように、上記第1実施形態によれば、図5(B)中の3段目(測定日付が09/23、測定時刻が16:14)のデータが得られた測定機会で、判定対象データD1が揃って、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られた。また、図5(B)中の4段目(測定日付が09/23、測定時刻が21:52)のデータが得られた測定機会で、判定対象データD2が揃って、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られた。このように、上記第1実施形態によれば、3測定機会のうち2測定機会以上について、不規則脈波が発生したとの個別判定結果が得られたときに限り、心房細動が発生した可能性が有ると判定しているので、従来方式に比して特定の測定機会の不規則脈波発生状況に対する依存性が緩和され、その結果、心房細動が発生した可能性が有るか否かについて妥当な(精度が良い)判定結果が得られた、と考えられる。
【0073】
図6(A)は、従来方式に従って、別の被験者(この例では、心房細動患者Bさん)が1測定機会当たり連続して3回血圧測定を行ったときのデータを示している。この例では、図6(A)のテーブルの1段目~3段目に示すように、測定日付09/16の19時台(夜)の測定機会に連続して3回血圧測定が行われている。測定時刻19:32、19:35、19:36の血圧測定では、不規則脈波発生回数nはそれぞれ6、2、3であった。これらを判定対象データとして、従来方式(連続した3回の血圧測定中、1回以上不規則脈波が発生した測定回が2回以上あった場合を、心房細動が発生した可能性が有ると判定する)に従って判定した場合、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られた。次に、図6(A)中の4段目~5段目に示すように、測定日付09/17の6時台(朝)の測定機会に連続して2回血圧測定が行われている。測定時刻06:08、06:11の血圧測定では、不規則脈波発生回数nはそれぞれ3、4であった。この場合、2回の血圧測定に止まったので、従来方式では、判定対象データが揃わず、「測定回数不足」の結果となった。次に、図6(A)中の6段目~8段目に示すように、測定日付09/17の12時台(昼)の測定機会に連続して3回血圧測定が行われている。測定時刻12:49、12:50、12:51の血圧測定では、不規則脈波発生回数nはそれぞれ2、4、6であった。これらを判定対象データとして、従来方式に従って判定した場合、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られた。以下同様に、図6(A)中の9段目~11段目に示す測定日付09/17の19時台(夜)の測定機会についても、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られた。このように、従来方式によれば、上記被験者の或る測定機会について、何らかの理由(被験者による測定回数の間違い、血圧計の故障など)により血圧測定が3回未満であった場合、測定回数不足となって、心房細動が発生した可能性が有るか否かの判定が行われない。
【0074】
図6(B)に示す心房細動患者Bさんについての血圧値SYS,DIA、脈拍数PLS、不規則脈波発生回数nのデータは、本発明の第1実施形態を実行するために、図6(A)中の各測定機会のうち1回目の血圧測定のデータを抜粋したものに相当する。具体的には、図6(A)のテーブルの1段目~3段目に示された測定日付09/16の19時台(夜)のデータのうち1段目(測定日付が09/16、測定時刻が19:32)のデータが、図6(B)のテーブルの1段目のデータとして採用されている。また、図6(A)中の4段目~5段目に示された測定日付09/17の6時台(朝)のデータのうち4段目(測定日付が09/17、測定時刻が06:08)のデータが、図6(B)中の2段目のデータとして採用されている。以下同様に、図6(A)中の6段目~8段目に示された測定日付09/17の12時台(昼)のデータのうち6段目(測定日付が09/17、測定時刻が12:49)のデータが、図6(B)中の3段目のデータとして採用されている。また、図6(A)中の9段目~11段目に示された測定日付09/17の19時台(夜)のデータのうち9段目(測定日付が09/17、測定時刻が19:35)のデータが、図6(B)中の4段目のデータとして採用されている。上記第1実施形態によれば、図6(B)中の3段目(測定日付が09/17、測定時刻が12:49)のデータが得られた測定機会で、判定対象データD3が揃って、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られた。また、図6(B)中の4段目(測定日付が09/17、測定時刻が19:35)のデータが得られた測定機会で、判定対象データD4が揃って、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られた。このように、上記第1実施形態によれば、1測定機会当たり1回の血圧測定のデータのみを用いているので、心房細動患者Bさんについて判定対象データが揃った3段目(測定日付が09/17、測定時刻が12:49)の測定機会以降は、測定機会の都度、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られた。したがって、上記第1実施形態によれば、被験者がカフ20を一旦被測定部位に装着した1測定機会当たり1回の血圧測定が行われば足りるので、1測定機会当たりの測定回数不足が生じ難い、と言える。
【0075】
図7(A)は、従来方式に従って、さらに別の被験者(この例では、健常者Cさん)が1測定機会当たり連続して3回血圧測定を行ったときのデータを示している。この例では、図7(A)のテーブルの1段目~3段目に示すように、測定日付08/01の4時台(朝)の測定機会に連続して3回血圧測定が行われている。測定時刻04:51、04:52、04:53の血圧測定では、不規則脈波発生回数nはいずれも0であった。これらを判定対象データとして、従来方式に従って判定した場合、心房細動が発生した可能性が無いとの判定結果「Non-AF」が得られた。次に、図7(A)中の4段目~6段目に示すように、測定日付08/01の13時台(昼)の測定機会に連続して3回血圧測定が行われている。測定時刻13:35、13:36、13:37の血圧測定では、不規則脈波発生回数nはいずれも0であった。これらを判定対象データとして、従来方式に従って判定した場合、心房細動が発生した可能性が無いとの判定結果「Non-AF」が得られた。以下同様に、図7(A)中の7段目~9段目に示す測定日付08/01の22時台(夜)の測定機会についても、心房細動が発生した可能性が無いとの判定結果「Non-AF」が得られた。また、図7(A)中の10段目~12段目に示す測定日付08/02の5時台(朝)の測定機会についても、心房細動が発生した可能性が無いとの判定結果「Non-AF」が得られた。このように、従来方式によれば、健常者Cさんについて、測定機会の都度、心房細動が発生した可能性が無いとの判定結果「Non-AF」が得られた。
【0076】
図7(B)に示す健常者Cさんについての血圧値SYS,DIA、脈拍数PLS、不規則脈波発生回数nのデータは、本発明の第1実施形態を実行するために、図7(A)中の各測定機会のうち1回目の血圧測定のデータを抜粋したものに相当する。具体的には、図7(A)のテーブルの1段目~3段目に示された測定日付08/01の4時台(朝)のデータのうち1段目(測定日付が08/01、測定時刻が04:51)のデータが、図7(B)のテーブルの1段目のデータとして採用されている。また、図7(A)中の4段目~6段目に示された測定日付08/01の13時台(昼)のデータのうち4段目(測定日付が08/01、測定時刻が13:35)のデータが、図7(B)中の2段目のデータとして採用されている。以下同様に、図7(A)中の7段目~9段目に示された測定日付08/01の22時台(夜)のデータのうち7段目(測定日付が08/01、測定時刻が22:53)のデータが、図7(B)中の3段目のデータとして採用されている。また、図7(A)中の10段目~12段目に示された測定日付08/02の5時台(朝)のデータのうち10段目(測定日付が08/02、測定時刻が05:00)のデータが、図7(B)中の4段目のデータとして採用されている。上記第1実施形態によれば、図7(B)中の3段目(測定日付が08/01、測定時刻が22:53)のデータが得られた測定機会で、判定対象データD5が揃って、心房細動が発生した可能性が無いとの判定結果「Non-AF」が得られた。また、図6(B)中の4段目(測定日付が08/02、測定時刻が05:00)のデータが得られた測定機会で、判定対象データD6が揃って、心房細動が発生した可能性が無いとの判定結果「Non-AF」が得られた。このように、上記第1実施形態によれば、健常者Cさんについて、判定対象データが揃った3段目(測定日付が08/01、測定時刻が22:53)の測定機会以降は、測定機会の都度、心房細動が発生した可能性が無いとの判定結果「Non-AF」が得られた。
【0077】
このように、図5(A)の判定結果と図5(B)の判定結果との比較、図6(A)の判定結果と図6(B)の判定結果との比較、図7(A)の判定結果と図7(B)の判定結果との比較から、本発明の第1実施形態によれば、心房細動が発生した可能性が有るか否かを、精度良く判定できることを検証できた。また、図6(A)の判定結果と図6(B)の判定結果との比較から、本発明の第1実施形態では、被験者がカフ20を一旦被測定部位に装着した1測定機会当たり1回の血圧測定が行われば足りるので、1測定機会当たりの測定回数不足が生じ難い、と言える。
【0078】
測定機会同士の時間間隔が許容期間「1日間以内」であるという条件については、厳密な数値ではなく、例えば、小数点以下を四捨五入して1日間以内であればよい(以下同様。)。
【0079】
なお、上の例では、測定機会として、朝(04:00~10:00)1回、昼(10:00~19:00)1回、夜(19:00~02:00)1回が想定されているものとしたが、これに限られるものではない。例えば図8のテーブルの5段目~7段目に示すように、或る日の朝1回、翌日の朝1回、翌々日の朝1回のような3回の測定機会が想定されてもよい。具体的には、図8中の5段目の測定機会(測定日付09/23、測定時刻08:39)が或る日の朝1回に相当し、不規則脈波発生回数nは5になっている。6段目の測定機会(測定日付09/24、測定時刻08:16)が翌日の朝1回に相当し、不規則脈波発生回数nは2になっている。また、7段目の測定機会(測定日付09/25、測定時刻08:32)が翌々日の朝1回に相当し、不規則脈波発生回数nは0になっている。この例では、7段目の測定機会(測定日付09/25、測定時刻08:32)で、判定対象データD8が揃って、心房細動が発生した可能性が有るとの判定結果「AF」が得られる。このように、上記第1実施形態では、或る日の朝1回、翌日の朝1回、さらに翌日の朝1回のような3回の測定機会が想定されてもよい。
【0080】
また、上の例では、3回の測定機会のデータ群を判定対象データとしたが、これに限られるものではない。4回以上の測定機会のデータ群を判定対象データとしてもよい。
【0081】
また、上の例では、図3(A)のステップS7で、1測定機会ごとに不規則脈波が発生したとの個別判定結果(不規則脈波発生回数n)を求めたが、これに限られるものではない。被験者の3測定機会以上についての脈波間隔を表すデータ群を一括して集計して、脈波間隔の平均値を求めるとともに、一括して集計されたデータ群の中に、平均値に対して予め定められた許容範囲を超える不規則脈波のデータが存在するか否かに基づいて、心房細動が発生した可能性が有るか否かを判定してもよい。
【0082】
(第2実施形態)
図9(A)は、上記通常の血圧測定モードにおいて、被験者についての不規則脈波のデータが予め定められた頻発条件を満たすか否かを判定するフローを示している。
【0083】
「予め定められた頻発条件」としては、
i) 最新の2測定機会についての脈波間隔を表すデータ群に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件、
ii) 最新の5測定機会についての脈波間隔を表すデータ群のうち過半数(つまり、3測定機会以上についてのデータ群)に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件、
iii) 毎日の同じ時間帯(朝、昼、晩など)の最新の2測定機会についての脈波間隔を表すデータ群に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件、
iv) 毎日の同じ時間帯(朝、昼、晩など)の最新の5測定機会についての脈波間隔を表すデータ群のうち過半数(つまり、3測定機会以上についてのデータ群)に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件
などが挙げられる。
【0084】
上記i),iii)の頻発条件が定められている場合は、判定対象データとして、許容期間内の2測定機会についての個別判定結果(不規則脈波発生回数nのデータ)が揃っている必要がある。上記ii),iv)の頻発条件が定められている場合は、判定対象データとして、許容期間内の5測定機会についての個別判定結果が揃っている必要がある。このように、予め定められた頻発条件に応じて、判定対象データとして、幾つの測定機会についての個別判定結果が揃っている必要があるかが定まる。
【0085】
最初の例では、頻発条件は、上記i)の「最新の2測定機会についてのデータ群に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件」であるものとする。
【0086】
カフ20が被測定部位に装着された装着状態で、被験者(この例では、心房細動患者Aさん)が本体10に設けられた測定スイッチ52Aを押し下げると(図2(A)のステップS201)、CPU100は、まず血圧測定の処理を実行する(図9(A)のステップS202)。このステップS202では、図2(A)のステップS102におけるのと同様に、CPU100が判定部として働いて、現在の測定機会(この第2実施形態では、通常の血圧測定モードに限り、測定機会は測定回と同義である。)についてのデータ群の中で、個別判定結果としての不規則脈波発生回数nを算出する。
【0087】
ここで、例えば図12のテーブルの1段目~2段目のデータが既に保存されており、現在の測定機会のデータが図12のテーブルの3段目に保存されたものとする。具体的には、図12中の1段目の測定機会(前々回の測定機会;測定日付09/17、測定時刻11:10)では、不規則脈波発生回数nは0になっている。2段目の測定機会(前回の測定機会;測定日付09/18、測定時刻21:41)では、不規則脈波発生回数nは1になっている。3段目の測定機会(現在の測定機会;測定日付09/19、測定時刻17:09)では、不規則脈波発生回数nは1になっている。
【0088】
次に、図9(A)のステップS203で、CPU100は、メモリ51に記憶されている個別判定結果を最新のもの(現在の測定機会)から遡って探索して、判定対象データが揃っているか否かを判断する。図12中の2段目~3段目の例では、2測定機会についての個別判定結果(不規則脈波発生回数nのデータ)が得られている。したがって、CPU100は判定対象データD9が揃っていると判断する(図9(A)のステップS203でYes)。なお、判定対象データが揃っていなければ(ステップS203でNo)、処理を終了して、次回の測定機会を待つ。
【0089】
上記判定対象データが揃っている場合、図9(A)のステップS204で、CPU100は判定部として働いて、不規則脈波のデータが予め定められた頻発条件を満たすか否かを判定する。図12中の2段目~3段目の例では、前回の測定機会(測定日付09/18、測定時刻21:41)と、現在の測定機会(測定日付09/19、測定時刻17:09)とで、それぞれ不規則脈波発生回数nが1以上になっている。したがって、CPU100は、上記i)の「最新の2測定機会についての脈波間隔を表すデータ群に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件」が満たされている、と判定する(図9(A)のステップS204でYes)。理解の容易のため、図12の最右欄に、判定対象データD9の範囲を示すとともに、頻発条件が満たされているとの判定結果「不規則脈波頻発」を表している。なお、頻発条件が満たされていなければ(ステップS204でNo)、処理を終了して、次回の測定機会を待つ。
【0090】
上記頻発条件が満たされている場合、図9(A)のステップS205で、CPU100は報知部として働いて、通常の血圧測定モードから心房細動スクリーニングモードへ切り替えることを促す報知を行う。例えば図11(A)に示すように、表示器50のAF表示領域504に、「心房細動モード測定をおすすめします」というメッセージを表示する。この報知によって、ユーザ(被験者、医師、看護師などの医療関係者を含む。)は、通常の血圧測定モードから心房細動スクリーニングモード(後述)へ切り替えることを促される。ユーザがモード切替スイッチ52C(図1参照)によって心房細動スクリーニングモードに切り替えれば、通常の血圧測定モードに比して、心房細動のスクリーニングがより精度良く行われる。なお、メッセージに代えて、または、メッセージに加えて、心房細動スクリーニングモードへ切り替えることを促すマークを表示してもよい。
【0091】
それに代えて、図9(B)のステップS205′に示すように、CPU100はモード制御部として働いて、通常の血圧測定モードから心房細動スクリーニングモードへ切り替える制御を行ってもよい。この場合、例えば図11(B)に示すように、表示器50のAF表示領域504に、「次回は心房細動モードで測定されます」というメッセージを表示する。なお、図9(B)のステップS201~S204は、図9(A)のステップS201~S204と同じである。
【0092】
図10は、血圧計1のCPU100による心房細動スクリーニングモードのフローを示している。心房細動スクリーニングモードでは、1測定機会当たり3回以上の血圧測定を繰り返すことが予定されている。
【0093】
カフ20が被測定部位に装着された装着状態で、被験者が本体10に設けられた測定スイッチ52Aを押し下げると(図10のステップS301)、CPU100は心房細動スクリーニングモードの処理を開始する。
【0094】
この心房細動スクリーニングモードでは、CPU100は、まず血圧測定の処理を実行する(図10のステップS302)。このステップS302は、図9(A)または図9(B)のステップS202(具体的には、図3(A)のステップS1~S10)と同じである。これにより、上記被験者の現在の測定機会における現在の測定回について、測定日時と、血圧値SYS,DIAと、脈拍数PLSと、不規則脈波発生回数nとが、互いに対応付けられて、メモリ51に保存される。
【0095】
次に、図10のステップS303に示すように、CPU100は、血圧測定(ステップS302)が予め定められた回数(この例では、3回)だけ行われたか否かを判断する。血圧測定が予め定められた回数行われていなければ(ステップS303でNo)、行われるまで繰り返す。これにより、現在の測定機会について連続した3回分の血圧測定のデータ(すなわち、血圧測定の測定日時と、血圧値SYS,DIAと、脈拍数PLSと、不規則脈波発生回数n)が、メモリ51に保存される。
【0096】
次に、図10のステップS304に示すように、CPU100は、メモリ51に保存された連続した3回分の血圧測定のデータを判定対象データとして、例えば従来方式によって、心房細動が発生した可能性があるか否かを判定する。具体的には、連続した3回の血圧測定中、1回以上不規則脈波が発生した測定回が2回以上あった場合を、心房細動が発生した可能性が有ると判定する。1回以上不規則脈波が発生した測定回が1回以下であれば、心房細動が発生した可能性が無いと判定する。
【0097】
次に、図10のステップS305に示すように、CPU100は、最後の測定回の血圧値SYS,DIAと脈拍数PLSに加えて、心房細動が発生した可能性が有る旨を表す情報を、表示器50に表示する制御を行う。例えば、図4(A)中のAF表示領域504に表示したのと同様に、「心房細動の可能性があります」というメッセージを表示する。なお、メッセージに代えて、または、メッセージに加えて、心房細動スクリーニングモードへ切り替えることを促すマークを表示してもよい。
【0098】
このように、心房細動スクリーニングモードでは、1測定機会当たり3回以上の血圧測定が繰り返される。したがって、この心房細動スクリーニングモードでは、通常の血圧測定モードに比して、心房細動が発生した可能性が有るか否かの判定がより精度良く行われ得る。
【0099】
なお、図10の例では、現在の測定機会について連続した3回分の血圧測定のデータ群を判定対象データとしたが、これに限られるものではない。4回以上の測定機会のデータ群を判定対象データとしてもよい。
【0100】
(変形例1)
上記頻発条件として、上記ii)の「最新の5測定機会についての脈波間隔を表すデータ群のうち過半数(つまり、3測定機会以上についてのデータ群)に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件」を採用する例について、説明する。
【0101】
図12のテーブルの5段目~9段目に注目すると、5段目の測定機会(測定日付09/21、測定時刻07:40)では、不規則脈波発生回数nは1になっている。6段目の測定機会(測定日付09/22、測定時刻07:50)では、不規則脈波発生回数nは0になっている。7段目の測定機会(測定日付09/23、測定時刻08:39)では、不規則脈波発生回数nは5になっている。8段目の測定機会(測定日付09/24、測定時刻08:16)では、不規則脈波発生回数nは2になっている。9段目の測定機会(現在の測定機会;測定日付09/25、測定時刻08:32)では、不規則脈波発生回数nは0になっている。
【0102】
この場合、図12中の9段目の測定機会(現在の測定機会)のデータが得られたとき、CPU100は判定対象データD10が揃っていると判断する(図9(A)のステップS203でYes)。そして、図9(A)のステップS204で、CPU100は判定部として働いて、不規則脈波のデータが上記ii)の頻発条件を満たすか否かを判定する。図12中の5段目~9段目の例では、5段目の測定機会(測定日付09/21、測定時刻07:40)と、7段目の測定機会(測定日付09/23、測定時刻08:39)と、8段目の測定機会(測定日付09/24、測定時刻08:16)との3測定機会で、それぞれ不規則脈波発生回数nが1以上になっている。したがって、CPU100は、上記ii)の「最新の5測定機会についての脈波間隔を表すデータ群のうち過半数(つまり、3測定機会以上についてのデータ群)に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件」が満たされている、と判定する(図9(A)のステップS204でYes)。理解の容易のため、図12の最右欄に、判定対象データD10の範囲を示すとともに、頻発条件が満たされているとの判定結果「不規則脈波頻発」を表している。この判定の後、既述のように、図9(A)のステップS205または図9(B)のステップS205′の処理が続く。
【0103】
(変形例2)
上記頻発条件として、上記iii)の「毎日の同じ時間帯(朝、昼、晩など)の最新の2測定機会についての脈波間隔を表すデータ群に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件」を採用する例について、説明する。
【0104】
図13のテーブルは、表頭に測定日付09/19、09/20、…、09/25を表し、表側に「朝(04:00~10:00)」、「昼(10:00~19:00)」、「夜(19:00~02:00)」の測定時間帯を表している。表体の各枠内には、上から順に、測定時刻(例えば、左上隅の枠では、08:07)、その測定時刻で得られた血圧値SYS,DIAおよび脈拍数PLSの値(例えば、左上隅の枠では、124/76/62)、不規則脈波発生回数n(例えば、左上隅の枠では、n=0)が表されている。この例では、図13中で、測定日付09/23の昼時間帯の測定機会(測定日付09/23、測定時刻16:14)と、測定日付09/24の昼時間帯の測定機会(測定日付09/24、測定時刻15:06)とに注目する。後者の測定機会(測定日付09/24、測定時刻15:06)が現在の測定機会であるものする。
【0105】
この場合、上記測定日付09/24の昼時間帯の測定機会(測定日付09/24、測定時刻15:06)のデータが得られたとき、CPU100は判定対象データD11が揃っていると判断する(図9(A)のステップS203でYes)。そして、図9(A)のステップS204で、CPU100は判定部として働いて、不規則脈波のデータが上記iii)の頻発条件を満たすか否かを判定する。上の例では、測定日付09/23の昼時間帯の測定機会(測定日付09/23、測定時刻16:14)と、測定日付09/24の昼時間帯の測定機会(測定日付09/23、測定時刻15:06)とで、いずれも不規則脈波発生回数nが1以上になっている。したがって、CPU100は、上記iii)の「毎日の同じ時間帯(朝、昼、晩など)の最新の2測定機会についての脈波間隔を表すデータ群に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件」が満たされている、と判定する(図9(A)のステップS204でYes)。理解の容易のため、図13中の昼時間帯の欄内に、判定対象データD11の範囲を示すとともに、頻発条件が満たされているとの判定結果「不規則脈波頻発」を表している。この判定の後、既述のように、図9(A)のステップS205または図9(B)のステップS205′の処理が続く。
【0106】
(変形例3)
上記頻発条件として、上記iv)の「毎日の同じ時間帯(朝、昼、晩など)の最新の5測定機会についての脈波間隔を表すデータ群のうち過半数(つまり、3測定機会以上についてのデータ群)に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件」を採用する例について、説明する。
【0107】
この例では、図13中で、測定日付09/20の朝時間帯の測定機会(測定日付09/20、測定時刻08:36)と、測定日付09/21の朝時間帯の測定機会(測定日付09/21、測定時刻07:40)と、測定日付09/22の朝時間帯の測定機会(測定日付09/22、測定時刻07:50)と、測定日付09/23の朝時間帯の測定機会(測定日付09/23、測定時刻08:39)と、測定日付09/24の朝時間帯の測定機会(測定日付09/24、測定時刻08:16)とに注目する。測定日付09/24の朝時間帯の測定機会(測定日付09/24、測定時刻08:16)が現在の測定機会であるものする。
【0108】
この場合、上記測定日付09/24の朝時間帯の測定機会(測定日付09/24、測定時刻08:16)のデータが得られたとき、CPU100は判定対象データD12が揃っていると判断する(図9(A)のステップS203でYes)。そして、図9(A)のステップS204で、CPU100は判定部として働いて、不規則脈波のデータが上記iv)の頻発条件を満たすか否かを判定する。上の例では、測定日付09/21の朝時間帯の測定機会(測定日付09/21、測定時刻07:40)と、測定日付09/23の朝時間帯の測定機会(測定日付09/23、測定時刻08:39)と、測定日付09/24の朝時間帯の測定機会(測定日付09/24、測定時刻08:16)との3測定機会で、それぞれ不規則脈波発生回数nが1以上になっている。したがって、CPU100は、上記iv)の「毎日の同じ時間帯(朝、昼、晩など)の最新の5測定機会についての脈波間隔を表すデータ群のうち過半数(つまり、3測定機会以上についてのデータ群)に、それぞれ不規則脈波のデータが1個以上存在したという条件」が満たされている、と判定する(図9(A)のステップS204でYes)。理解の容易のため、図13中の朝時間帯の欄内に、判定対象データD12の範囲を示すとともに、頻発条件が満たされているとの判定結果「AF頻発」を表している。この判定の後、既述のように、図9(A)のステップS205または図9(B)のステップS205′の処理が続く。
【0109】
なお、上記i)~iv)の頻発条件は、それぞれ単独で採用されてもよいし、それに代えて、それらが同時に併用されてもよい。併用の場合は、現在の測定機会で、上記i)~iv)の頻発条件のうちいずれかの頻発条件が満たされているとき、CPU100は、不規則脈波のデータが頻発条件を満たしている、と判定する(図9(A)のステップS204でYes)。これにより、不規則脈波が頻発しているか否かを精度良く判定できる。
【0110】
また、この第2実施形態における「予め定められた頻発条件」は、上記第1実施形態に関して述べたような、1測定機会当たり1回測定で、3測定機会のうち2測定機会以上について不規則脈波が発生した(不規則脈波発生回数nが1以上)という条件、言い換えれば、3測定機会のうち2測定機会以上についての脈波間隔を表すデータ群の中に、上記不規則脈波のデータが存在するという条件自体であってもよい。
【0111】
上の例では、被測定部位は上腕であるものとしたが、これに限られるものではない。被測定部位は、手首などの上腕以外の上肢、または、足首などの下肢であってもよい。
【0112】
上の例では、本発明による心房細動判定方法が、オシロメトリック法により血圧測定を行う血圧計に適用された。しかしながら、これに限られるものではなく、本発明による心房細動判定方法は、例えば、トノメトリ法(皮膚の上から血管が部分的に扁平になるように押し、脈波信号に基づいて一拍毎に血圧を連続測定する方式)により血圧測定を行う血圧計など、様々なタイプの電子血圧計に適用され得る。
【0113】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 血圧計
10 本体
20 血圧測定用カフ
31 圧力センサ
50 表示器
51 メモリ
52 操作部
100 CPU
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