(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099114
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220627BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B41J2/165 203
B41J2/01 207
B41J2/165 211
B41J2/165 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212886
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新藤 達也
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA25
2C056EB27
2C056EB32
2C056EB40
2C056EC24
2C056EC36
2C056EC38
2C056EC39
2C056EC41
2C056EC54
2C056EC57
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA58
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】異常ノズルを回復させるための液体の排出量を極力抑える。」
【解決手段】異常ノズルであるか否かをチェックするためのチェックパターンの記録を指示する指示信号を受信したときに、インクジェットヘッドに検査用駆動を行わせ(S202)、このときに判定回路から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に(S203:YES)、インクジェットヘッドに第2フラッシングを行わせて異常ノズルからインクを排出させる(S204)。その後、チェックパターンを記録させ(S209)、チェックパターンの記録結果が、異常ノズルが存在することを示しており(S212:YES)、且つ、回復不能ノズル以外の異常ノズルが存在する場合には(S215:NO)、吸引パージを行わせる(S217)。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを示す判定用信号を出力する信号出力部と、
前記異常ノズルから液体を排出させて前記異常ノズルを回復させる回復動作を行う回復手段と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かをチェックするためのチェックパターンを被記録媒体に記録することを指示する指示信号を受信したときに、
前記ノズルが異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせ、
前記検査用駆動時に前記信号出力部から出力された前記判定用信号が、前記異常ノズルが存在することを示している場合に、前記回復手段に前記回復動作として第1回復動作を行わせてから、前記液体吐出ヘッドに前記チェックパターンを記録させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
入力部をさらに備え、
前記制御装置は、
被記録媒体への前記チェックパターンの記録後、前記入力部にて前記異常ノズルが存在することを示している操作が行われた場合に、前記回復手段に前記回復動作として第2回復動作を行わせることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
被記録媒体上の前記チェックパターンを読み取る読取部、をさらに備え、
前記制御装置は、
被記録媒体への前記チェックパターンの記録後、前記読取部に前記チェックパターンを読み取らせることによって、前記チェックパターンの記録結果を取得し、
前記取得した前記記録結果が、前記異常ノズルが存在することを示している場合に、前記回復手段に、前記回復動作として第2回復動作を行わせることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1回復動作における液体の排出量が、前記第2回復動作における液体の排出量よりも少ないことを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1回復動作に必要な時間が、前記第2回復動作に必要な時間よりも短いことを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記回復手段が、
前記液体吐出ヘッドと接続可能なポンプを有し、前記回復動作として、前記ポンプを駆動させて前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させるパージを行うパージ手段、を含み、
前記第2回復動作が前記パージであることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記回復手段が、前記液体吐出ヘッドを含み、
前記第1回復動作が、前記液体吐出ヘッドに前記異常ノズルから液体を排出させるフラッシングであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記フラッシングとして、
前記液体吐出ヘッドに、第1時間間隔で前記ノズルから液体を排出させる第1フラッシングと、
前記液体吐出ヘッドに、前記第1時間間隔よりも長い第2時間間隔で前記ノズルから液体を排出させる第2フラッシングと、のいずれかを選択的に行わせ、
前記第1回復動作が前記第2フラッシングであることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッドが、
前記ノズルと連通する圧力室と、
前記圧力室内の液体に圧力を付与する駆動素子と、を有し、
前記駆動素子に電位を付与するドライバIC、を備え、
前記制御装置は、前記フラッシングとして
前記ドライバICを制御して前記駆動素子に第1電位を付与することによって、前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから液体を排出させる第1フラッシングと、
前記ドライバICを制御して前記駆動素子に前記第1電位よりも高い第2電位を付与することによって、前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから液体を排出させる第2フラッシングと、のうちいずれかを選択的に行わせ、
前記第1回復動作が前記第2フラッシングであることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記液体吐出ヘッドが、前記ノズルとして、
第1ノズルと、
前記第1ノズルが吐出する液体よりも増粘しやすい液体を吐出する第2ノズルと、を有し、
前記制御装置は、
前記第1回復動作として行わせる前記フラッシングにおいて、前記液体吐出ヘッドに、前記第2ノズルから液体を排出させる回数を、前記第1ノズルから液体を排出させる回数よりも多くすることを特徴とする請求項7~9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記液体吐出ヘッドが、複数の前記ノズルを有し、
前記制御装置は、
前記第1回復動作としての前記フラッシングにおいて、前記液体吐出ヘッドに、複数の前記ノズルのうち前記異常ノズルのみから液体を排出させることを特徴とする請求項7~10のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記液体吐出ヘッドが、複数の前記ノズルを有し、
前記制御装置は、
前記第1回復動作としての前記フラッシングにおいて、前記液体吐出ヘッドに、複数の記ノズル全てから液体を排出させることを特徴とする請求項7~10のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記制御装置は、
前記回復手段に前記第1回復動作を行わせた後、再度、前記液体吐出ヘッドに前記検査用駆動を行わせ、
前記検査用駆動時に前記信号出力部から出力された前記判定用信号が、前記第1回復動作の前よりも前記異常ノズルの数が減っていることを示しているときには、前記回復手段に、前記回復動作として第3回復動作を行わせてから、前記液体吐出ヘッドに前記チェックパターンを記録させることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記回復手段に前記第3回復動作を行わせた後、前記液体吐出ヘッドに前記検査用駆動を行わせ、前記検査用駆動時に前記信号出力部から出力された前記判定用信号が、当該第3回復動作の前よりも前記異常ノズルの数が減っていることを示しているときには、
前記検査用駆動時に前記信号出力部から出力される前記判定用信号が示す前記異常ノズルの数が減らなくなるまで前記第3回復動作と前記検査用駆動とを繰り返し行わせてから、前記液体吐出ヘッドに前記チェックパターンを記録させることを特徴とする請求項13に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記制御装置は、
前記第3回復動作と、前記検査用駆動とを所定回数繰り返し行わせた後に、前記検査用駆動時に前記信号出力部から出力された前記判定用信号が前記異常ノズルの数が減っていることを示していても、前記液体吐出ヘッドに前記チェックパターンを記録させることを特徴とする請求項14に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記液体吐出ヘッドが、複数の前記ノズルを有し、
複数の前記ノズルのうち、回復できない回復不能ノズルの情報を記憶する記憶部、を備え、
前記制御装置は、
前記チェックパターンを記録媒体に記録した後、前記読取部に前記チェックパターンを読み取らせて、前記チェックパターンの記録結果を取得し、
取得した前記記録結果が前記異常ノズルであることを示している前記ノズルが、前記回復不能ノズルのみである場合には、前記回復手段に前記第2回復動作を行わせないことを特徴とする請求項2~6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置として、特許文献1には、記録ヘッドのノズルからインクを吐出して記録を行う印刷装置が記載されている。特許文献1に記載の印刷装置では、記録ヘッドにノズルの異常を検査するためのテストパターンを記録させ、スキャナに記録されたテストパターンを読み取らせ、テストパターンの読み取り結果に基づいて、ノズルに異常があるか否かを判定する。ノズルの異常を検出したときに、クリーニング部でノズルのクリーニングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の印刷装置では、テストパターンの読み取り結果に基づいて異常があると判定されたノズルの中に、クリーニング部によるクリーニングを行わなくても、記録ヘッドを駆動させてインクを排出させるフラッシングを行うだけで回復可能なものが存在することがある。
【0005】
そのため、ノズルの異常を検出したときに、一律に、テストパターンの読み取り結果が示す異常ノズルの数等に応じて、クリーニング部にクリーニングを行わせると、クリーニングにおいて必要以上にインクが排出されてしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、液体の吐出に異常のある異常ノズルを回復させるための液体の排出量を極力抑えることが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを示す判定用信号を出力する信号出力部と、前記異常ノズルから液体を排出させて前記異常ノズルを回復させる回復動作を行う回復手段と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かをチェックするためのチェックパターンを被記録媒体に記録することを指示する指示信号を受信したときに、前記ノズルから液体が異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせ、前記検査用駆動時に前記信号出力部から出力された前記判定用信号が、前記異常ノズルが存在することを示している場合に、前記回復手段に前記回復動作として第1回復動作を行わせてから、前記液体吐出ヘッドに前記チェックパターンを記録させる。
【発明の効果】
【0008】
チェックパターンの記録を指示する指示信号を受信したときに、検査用駆動を行わせ、異常ノズルが存在する場合に、第1回復動作を行わせてからチェックパターンを記録させる。これにより、チェックパターンは、第1回復動作で回復可能な異常ノズルが回復した状態で記録されたものとなる。そのため、全ての異常ノズルが第1回復動作で回復した場合には、チェックパターンの記録結果に基づいて回復動作を行わせる必要がない。また、一部の異常ノズルが第1回復動作で回復した場合には、チェックパターンの記録結果に基づいて行わせる回復動作を、液体の排出量の少ないものとすることができる。これらのことから、本発明では、異常ノズルを回復させるための液体の排出量を極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
【
図3】(a)はノズルからインクが吐出された場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図であり、(b)はノズルからインクが吐出されなかった場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図である。
【
図5】(a)は
図4のVA部拡大図であり、(b)は(a)のVB-VB線断面図である。
【
図6】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】記録時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】チェックパターンの記録指示を受信したときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】(a)は第1、第2フラッシングにおいてノズルからインクを吐出させる時間間隔を説明するための図であり、(b)は第2フラッシングにおけるカラー及びブラックノズルからのインクの排出回数を説明するための図である。
【
図10】変形例1に係るプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図11】変形例1においてチェックパターンの記録指示を受信したときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】変形例2においてチェックパターンの記録指示を受信したときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】変形例3の第1、第2フラッシングにおいて個別電極に付与する電位を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8(本発明の「パージ手段」)などを備えている。
【0012】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(
図6参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、
図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0013】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1は、カートリッジホルダ13を備えており、カートリッジホルダ13に4つのインクカートリッジ14が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ14は、走査方向に並んでおり、走査方向の右側に配置されたものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインク(本発明の「液体」)を貯留している。サブタンク3は、4本のチューブ15を介してカートリッジホルダ13に装着された4つのインクカートリッジ14と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ14からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0014】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面4aにおいて、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0015】
ここで、インクの成分の違いにより、ブラックインクは、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタインク)よりもインクが増粘しやすい。なお、本実施形態では、カラーインクを吐出する、左側3列のノズル列9を構成するノズル10が、本発明の「第1ノズル」に相当し、ブラックインクを吐出する、最も右側のノズル列9を構成するノズル10が、本発明の「第2ノズル」に相当する。
【0016】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙P(本発明の「被吐出媒体」)の全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(
図6参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0017】
メンテナンスユニット8は、キャップ71と、吸引ポンプ72と、廃液タンク73とを備えている。キャップ71は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ71と対向する。
【0018】
また、キャップ71は、キャップ昇降機構88(
図6参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ71とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ71を上昇させると、キャップ71の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ71に覆われる。なお、キャップ71はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ71は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0019】
吸引ポンプ72はチューブポンプなどであり、キャップ71及び廃液タンク73と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上述したように複数のノズル10がキャップ71によって覆われた状態で吸引ポンプ72を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク73に貯留される。
【0020】
また、本実施形態では、インクの排出量の異なる複数種類の吸引パージのいずれかを選択的に行わせることができる。複数種類の吸引パージ間では、例えば、吸引ポンプ72の駆動時間及び吸引ポンプ72の回転速度の少なくとも一方が異なっていることにより、インクの排出量が異なる。
【0021】
なお、ここでは、便宜上、キャップ71が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ71が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ71が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0022】
また、
図2に示すように、キャップ71内には、矩形の平面形状を有する検出用電極76が配置されている。検出用電極76は、抵抗79を介して高電圧電源回路77に接続されている。そして、検出用電極76には、後述する吐出判定の際に、高電圧電源回路77により所定の正の電位(例えば600V程度)が付与される。一方で、インクジェットヘッド4は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用電極76との間に所定の電位差が生じる。検出用電極76には、判定回路78が接続されている。判定回路78は、検出用電極76から出力された信号の電位と、閾値Vtとを比較し、その結果に応じた信号を出力する。
【0023】
より詳細に説明すると、インクジェットヘッド4と、検出用電極76との間には電位差が生じているため、ノズル10から吐出されたインクは帯電している。キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させると、
図3(a)に示すように、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が、インクジェットヘッド4が駆動されていないときの電位Vaから低下し、電位Vaよりも低い電位Vbに達する。そして、帯電したインクが検出用電極76に着弾した後、検出用電極76の電位が徐々に上昇して電位Vaに戻る。すなわち、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76の電位が変化する。
【0024】
一方で、ノズル10からインクが吐出されていない場合には、
図3(b)に示すように、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76の電位は、電位Vaからほとんど変化しない。そこで、判定回路78は、これらを区別するために閾値Vt(Vb<Vt<Va)が設定されている。そして、判定回路78は、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76から出力される電圧信号の最大の電位と閾値Vtとを比較し、その判定結果に応じた判定用信号を出力する。なお、本実施形態では、検出用電極76と、高電圧電源回路77と抵抗79と判定回路78とを合わせたものが、本発明の「信号出力部」に相当する。そして、この信号出力部は、ノズル10が、インクが吐出されない異常ノズルであるか否かに応じた判定用信号を出力する。
【0025】
また、ここでは、高電圧電源回路77により、検出用電極76に正の電位が付与されているが、高電圧電源回路77により、検出用電極76に負の電位(例えば-600V程度)が付与されていてもよい。この場合には、上述したのとは逆に、キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させると、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が電位Vaから上昇し、検出用電極76にインクが着弾した後、検出用電極76の電位が徐々に低下して電位Vaに戻る。
【0026】
<インクジェットヘッド>
次に、インクジェットヘッド4の構造について詳細に説明する。
図4、
図5(a)、(b)に示すように、インクジェットヘッド4は、流路ユニット21と、圧電アクチュエータ22とを有する。
【0027】
流路ユニット21は、プレート31~35が下方からこの順に鉛直方向に積層されることによって形成されている。流路ユニット21は、ノズル10をそれぞれ含む複数の個別流路41と、4つの共通流路42とを備えている。
【0028】
上記のように複数のノズル10が4列のノズル列9を形成しているのに対応して、複数の個別流路41は、搬送方向に配列されることによって個別流路列29を形成しており、流路ユニット21は、走査方向に並んだ4列の個別流路列29を有する。
【0029】
各個別流路41は、ノズル10と、圧力室51と、ディセンダ52と、絞り流路53とを有する。ノズル10と、圧力室51の走査方向における左側の端部とが、ディセンダ52を介して接続され、圧力室51の走査方向における右側の端部に絞り流路53が接続されている。なお、ノズル10、圧力室51、ディセンダ52及び絞り流路53の構造や位置関係については、従来と同様であるので、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0030】
4つの共通流路42は、4列の個別流路列29に対応しており、搬送方向に延びて、対応する個別流路列29を構成する複数の個別流路41の走査方向における右側の部分と鉛直方向に重なっている。そして、共通流路42は、これらの個別流路41を構成する絞り流路53の走査方向の右側の端部と接続されている。また、各共通流路42は、搬送方向の上流側の端部に設けられた供給口42aからインクが供給される。
【0031】
圧電アクチュエータ22は、振動板61と、圧電層62と、共通電極63と、複数の個別電極64とを有する。振動板61は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛の混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、流路ユニット21の上面(プレート35の上面)に配置され、複数の圧力室51を覆っている。圧電層62は、上述の圧電材料からなり、振動板61の上面に配置され、複数の圧力室51にわたって連続的に延びている。なお、本実施形態では、振動板61及び圧電層62が圧電材料からなるが、振動板61については、例えば合成樹脂材料など、圧電材料以外の絶縁性材料からなるものであってもよい。
【0032】
共通電極63は、振動板61と圧電層62との間に配置され、その全域にわたって延びている。共通電極63は、図示しない配線を介して図示しない電源に接続され、グランド電位に保持されている。複数の個別電極64は、圧電層62の上面に配置されている。複数の個別電極64は、複数の圧力室51に個別のものであり、対応する圧力室51の中央部と鉛直方向に重なっている。複数の個別電極64は、それぞれ、図示しない配線を介してドライバIC89(
図6参照)に接続されている。そして、ドライバIC89から各個別電極64にグランド電位及び駆動電位(例えば20~30V程度)のいずれかが選択的に付与される。また、共通電極63及び複数の個別電極64がこのように配置されているのに対応して、圧電層62の共通電極63と各個別電極64とに挟まれた部分が、ぞれぞれ、厚み方向に分極されている。
【0033】
圧電アクチュエータ22では、各圧力室51と鉛直方向に重なる部分が、圧力室51内のインクに圧力を付与するための駆動素子22aとなっている。そして、ドライバIC89により個別電極64の電位をグランド電位と駆動電位とで切り換えることによって駆動素子22aを駆動させることができる。駆動素子22aを駆動させると、個別電極64と共通電極63との電位差が変化することで、圧電層62及び振動板61の圧力室51と鉛直方向に重なる部分が変形する。この変形により、圧力室51内のインクの圧力が変動し、圧力室51に連通するノズル10からインクを吐出させることができる。
【0034】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。
図6に示すように、プリンタ1は、制御装置80を備えている。制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなる。制御装置80は、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド4、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72、高電圧電源回路77、ドライバIC89等の動作を制御する。なお、本実施形態では、制御装置80は、ドライバIC89を制御することによって、インクジェットヘッド4を制御している。また、制御装置80には、判定回路78から判定用信号が入力される。
【0035】
また、プリンタ1は、以上で説明した構成のほかに、表示部69と操作部70(本発明の「入力部」)とを備えている。表示部69は、例えば、プリンタ1の筐体に設けられた液晶ディスプレイなどである。制御装置80は、表示部69を制御して、プリンタ1の動作に必要な情報等を表示する。操作部70は、例えば、プリンタ1の筐体に設け設けられたボタン、表示部69に設けられたタッチパネルなどである。ユーザが操作部70を操作することによって、制御装置80に対する信号の入力を行うことができる。
【0036】
なお、制御装置80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0037】
<記録時の制御>
次に、プリンタ1において記録用紙Pへの画像の記録を行うときの制御装置80の処理について説明する。制御装置80は、記録用紙への画像の記録を行うことを指示する記録指令を受信したときに、
図7のフローに沿って処理を行う。
【0038】
図7のフローが開始されると、制御装置80は、まず、変数J,Mの値を0にリセットする(S101)。変数Jは、記録が開始されてからの、後述する記録パスが行われた回数に対応している。変数Mは、値が0にリセットされてからの、後述する記録パスが行われた回数に対応している。
【0039】
続いて、制御装置80は、給紙処理を実行する(S102)。給紙処理では、制御装置80は、図示しない給紙機構、及び、搬送モータ87を制御して、給紙機構に記録用紙Pを供給させるとともに、搬送ローラ6、7に、記録用紙Pを、記録用紙Pの最初の記録パスで画像が記録される領域がインクジェットヘッド4の複数のノズル10と対向する位置まで搬送させる。
【0040】
続いて、制御装置80は、記録パス処理を実行し(S103)、変数J,Mの値を1増加させる(S104)。S103の記録パス処理では、制御装置80は、キャリッジモータ86を制御してキャリッジ2を走査方向に移動させつつ、ドライバIC89を制御して複数の駆動素子22aを駆動させることによってインクジェットヘッド3に複数のノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出させる記録パス、を行わせる。
【0041】
続いて、制御装置80は、1枚の記録用紙Pへの記録が完了していない場合には(S105:NO)、搬送処理を実行する(S106)。搬送処理では、制御装置80は、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ6,7に記録用紙Pを所定距離搬送させる。
【0042】
続いて、変数Mの値が所定値Mt未満の場合(S107:NO)には、S103に戻る。また、変数Mの値が所定値Mt以上で(S107:YES)、且つ、変数Jが奇数である(偶数でない)場合には(S108:NO)、S103に戻る。ここで、変数Jが奇数である場合とは、最後に行われた記録パスにおいてキャリッジ2を走査方向の右側から左側に移動させており、当該記録パス後に、キャリッジ2がプラテン5よりも走査方向の左側に位置している場合である。
【0043】
一方、変数Mの値が所定値Mt以上で(S107:YES)、且つ、変数Jが偶数である場合には(S108:YES)、制御装置80は、第1フラッシング処理を実行し(S109)、変数Mをリセットして(S110)、S103に戻る。ここで、変数Jが偶数である場合とは、最後に行われた記録パスにおいてキャリッジ2を走査方向の左側から右側に移動させており、当該記録パス後に、キャリッジ2がプラテン5よりも走査方向の右側位置している場合である。そして、この場合、キャリッジ2は、メンテナンス位置又はメンテナンス位置の近傍に位置している。
【0044】
S109の第1フラッシング処理では、制御装置80は、キャリッジ2をメンテナンス位置に位置させた状態で、ドライバIC89を制御して複数の駆動素子22aを駆動させることによって、インクジェットヘッド4に、複数のノズル10からキャップ71に向けてインクを排出させる第1フラッシングを行わせる。また、第1フラッシング処理では、制御装置80は、
図9(a)に示すように、インクジェットヘッド4に、複数のノズル10から第1時間間隔ΔT1で所定回数インクを排出させる。
【0045】
一方、1枚の記録用紙Pへの画像の記録が完了している場合には(S105:YES)、制御装置80は、排紙処理を実行する(S111)。排紙処理では、制御装置80は、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ6,7に記録が完了した記録用紙Pを排出させる。
【0046】
そして、次の記録用紙Pに記録を行うための記録データがある場合には(S112:YES)、S102に戻る。上記記録データがない場合には(S112:NO)、処理を終了する。
【0047】
<チェックパターン記録時の処理>
次に、プリンタ1において、制御装置80が不吐出ノズルであるか否かを確認するためのチェックパターンを記録することを指示する指示信号を受信したときの、制御装置80の処理について説明する。制御装置80は、上記指示信号を受信したときに、
図8のフローに沿って処理を行う。
【0048】
図8のフローについてより詳細に説明すると、制御装置80は、まず、変数Nの値を0にリセットする(S201)。変数Nは、後述するS204で第2フラッシングを行わせた回数に対応している。
【0049】
続いて、制御装置80は、検査用駆動処理を実行する(S202)。検査用駆動処理では、制御装置80は、ドライバIC89を制御して、インクジェットヘッド4に複数のノズル10の各々について、ノズル10が異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を行わせる。検査用駆動とは、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させた状態で、複数の駆動素子22aの各々を、順に対応するノズル10からインクを吐出させるように駆動させる動作である。検査用駆動を行わせると、上述したように、判定回路78から、複数のノズル10の各々について順に、インクが吐出されたか否か、すなわち、異常ノズルであるか否かを示す判定用信号が出力される。
【0050】
続いて、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中に異常ノズルが存在しないことを示している場合には、(S203:NO)、S209に進む。
【0051】
検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中に異常ノズルが存在することを示している場合には、(S203:YES)、制御装置80は、第2フラッシング処理を実行し(S204)、変数Nを1増加させる(S205)。
【0052】
S204の第2フラッシング処理では、制御装置80は、ドライバIC89を制御して駆動素子22aを駆動させることによって、インクジェットヘッド4に、複数のノズル10のうち異常ノズルのみからキャップ71に向けてインクを排出させる第2フラッシングを行わせる。
【0053】
また、第2フラッシング処理では、制御装置80は、
図9(a)に示すように、インクジェットヘッド4に、複数のノズル10から第1時間間隔ΔT1よりも長い第2時間間隔ΔT2でインクを排出させる。
【0054】
また、第2フラッシング処理では、制御装置80は、
図9(b)に示すように、カラーインクを吐出するカラーノズル(左側3列のノズル列9を構成するノズル10)からインクを排出させる回数を第1回数K1とし、ブラックインクを吐出するブラックノズル(最も右側のノズル列9を構成するノズル10)からインクを排出させる回数を第1回数K1よりも多い第2回数K2とする。
【0055】
なお、第2フラッシング及び上述の第1フラッシングのいずれも、上述の複数種類の吸引パージよりもインクの排出量が少なく、必要な時間も短い。
【0056】
続いて、制御装置80は、再度、S202と同様の検査用駆動処理を実行する(S206)。続いて、制御装置80は、S206の検査用駆動処理によって行われた検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が異常ノズルの数が減っていることを示しており(S207:YES)、且つ、変数Nの値が所定値Ntに達していない場合には(S208:NO)S204に戻る。
【0057】
S206の検査用駆動処理によって行われた検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が異常ノズルの数が減っていることを示しており、且つ、変数Nの値が所定値Ntに達している場合には(S208:YES)S209に進む。また、S206の検査用駆動処理によって行われた検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が異常ノズルの数が減っていないことを示している場合にも(S207:NO)、S209に進む。
【0058】
なお、本実施形態では、S202で行わせた検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、S204で行わせる第2フラッシングが、本発明の「第1回復動作」に相当する。また、その後、S206で行わせた検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルの数が減っていることを示している場合に、S204で行わせる第2フラッシングが、本発明の「第3回復動作」に相当する。
【0059】
S209では、制御装置80は、パターン記録処理を実行する。パターン記録処理では、制御装置80は、S102と同様の給紙処理によって記録用紙Pの供給を行わせ、S103と同様の記録パス処理と、S106と同様の搬送処理とを繰り返すことによって、記録用紙Pに、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について、異常ノズルであるか否かをチェックするためのチェックパターンを記録させる。チェックパターンが記録された記録用紙Pは、S111と同様の排紙処理によって排出される。なお、チェックパターンの記録自体は公知ものであるので、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0060】
続いて、制御装置80は、表示部69に、チェックパターンの記録結果の入力を促すメッセージを表示させる(S210)。そして、制御装置80は、ユーザによって操作部70が操作されることによって、チェックパターンの記録結果の信号が入力されるまで待機する(S211:NO)。
【0061】
ユーザによって操作部70が操作されることによって、チェックパターンの記録結果の信号が入力されたときに(S211:YES)、制御装置80は、チェックパターンの記録結果が、異常ノズルが存在しないことを示している場合、すなわち、操作部70において異常ノズルが存在することを示している操作が行われなかった場合には(S212:NO)、そのまま処理を終了する。
【0062】
チェックパターンの記録結果が、異常ノズルが存在することを示している場合、すなわち、操作部70において異常ノズルが存在することを示している操作が行われた場合には(S212:YES)、制御装置80は、チェックパターンの記録結果に基づいて、異常ノズルの情報をフラッシュメモリ84に記憶させる(S213)。続いて、制御装置80は、これまでに記憶させた異常ノズルの情報に基づいて、回復不能情報を更新する(S214)。
【0063】
ここで、フラッシュメモリ84には、どのノズル10が、フラッシング及び吸引パージによっても回復が不可能な回復不能ノズルであるかを示す回復不能情報が記憶されている。S214では、制御装置80は、例えば、後から記憶されたものから数えて連続する所定回数分の異常ノズルの情報のいずれにおいても異常ノズルであることを示しているノズルが、回復不能ノズルであることを示すように、記憶されている回復不能ノズル情報を更新する。
【0064】
続いて、制御装置80は、入力されたチェックパターンの記録結果が異常ノズルであることを示しているノズル10が、回復不能ノズルのみである場合には(S215:YES)、そのまま処理を終了する。
【0065】
入力されたチェックパターンの記録結果が異常ノズルであることを示しているノズル10が、回復不能ノズル以外のノズル10を含む場合には(S215:NO)、制御装置80は、行わせる吸引パージの種類を決定する(S216)。
【0066】
S216では、例えば、チェックパターンの記録結果が異常ノズルであることを示しているノズル10の数から、回復不能ノズルの数を除いた数が多いときほど、行わせる吸引パージの種類を、インクの排出量の多い吸引パージに決定する。続いて、制御装置80は、パージ処理を実行する(S217)。パージ処理では、制御装置80は、キャリッジ2、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72などを制御して、S216で決定した吸引パージ(本発明の「第2回復動作」)を行わせる。
【0067】
なお、本実施形態では、第1、第2フラッシングを行うインクジェットヘッド4、及び、吸引パージを行うメンテナンスユニット8が、本発明の「回復手段」に相当する。
【0068】
<効果>
本実施形態では、チェックパターンの記録を指示する指示信号を受信したときに、検査用駆動を行わせ、異常ノズルが存在する場合に、第2フラッシングを行わせてからチェックパターンを記録させる。そして、チェックパターンの記録結果に基づいて、ユーザにより、操作部70において異常ノズルが存在することを示している操作が行われたときに、吸引パージを行わせる。
【0069】
これにより、チェックパターンは、第2フラッシングで回復可能な異常ノズルが回復した状態で記録されたものとなる。そのため、全ての異常ノズルが第2フラッシングで回復した場合には、チェックパターンの記録結果に基づいて吸引パージを行わせる必要がない。また、一部の異常ノズルが第2フラッシングで回復した場合には、チェックパターンの記録結果に基づいて行わせる吸引パージを、インクの排出量の少ないものとすることができる。これらのことから、本実施形態では、異常ノズルを回復させるためのインクの排出量を極力抑えることができる。
【0070】
また、本実施形態では、検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、吸引パージよりもインクの排出量の少ない第2フラッシングを行わせる。これにより、異常ノズルがインクの排出量の少ない第2フラッシングで回復させることのできるものである場合に、異常ノズルを回復させるために必要な液体の排出量を抑えることができる。
【0071】
また、本実施形態では、検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、吸引パージよりも必要な時間の短い第2フラッシングを行わせる。これにより、異常ノズルが必要な時間の短い第2フラッシングで回復させることのできるものである場合に、異常ノズルを回復させるために必要な時間を短くすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、チェックパターンの記録結果が、異常ノズルが存在することを示している場合に、吸引パージを行わせることにより、異常ノズルを確実に回復させることができる。
【0073】
また、第2フラッシングによって回復可能な異常ノズルは、インクの増粘によって異常ノズルとなっていることが多い。そこで、本実施形態では、検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に行わせる第2フラッシングを、記録用紙Pへの記録時に行わせる第1フラッシングよりも、ノズル10から液体を排出させる時間間隔の長いものとする。これにより、異常ノズル内の増粘したインクが排出されやすくなり、異常ノズルを回復させやすくすることができる。
【0074】
また、本実施形態では、ブラックインクがカラーインクよりも増粘しやすい。そこで、本実施形態では、検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に行わせる第2フラッシングにおいて、ブラックノズルからのインクの排出回数を、カラーノズルからのインクの排出回数よりも多くする。これにより、ブラックノズルが異常ノズルである場合に、異常ノズルを回復させやすくすることができる。一方で、カラーノズルが異常ノズルである場合に、異常ノズルを回復させるために排出させるインクの量を抑えることができる。
【0075】
また、本実施形態では、検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に行わせる第2フラッシングにおいて、異常ノズルのみからインク液体を排出させている。これにより、インクの排出量を抑えることができる。
【0076】
また、本実施形態では、検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、第2フラッシングを行わせた後、再度、検査用駆動を行わせ、当該再度の検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルの数が減っていることを示している場合に、再度第2フラッシングを行わせる。第2フラッシングによって異常ノズルの数が減る場合に、再度第2フラッシングを行わせることにより、異常ノズルの数がさらに減る可能性がある。そして、再度の第2フラッシングよって異常ノズルの数が減る場合には、チェックパターンの記録結果に基づいて行わせる吸引パージを、インクの排出量のさらに少ないものとすることができる。
【0077】
さらに、本実施形態では、異常ノズルの数が減らなくなるまで、第2フラッシングと検査用駆動とを繰り返すことにより、チェックパターンの記録結果に基づいて行わせる吸引パージを、インクの排出量を最大限少ないものとすることができる。
【0078】
ただし、例えば、異常ノズルが多数あり、第2フラッシングと検査用駆動とを繰り返したときに、異常ノズルの数が少しずつ減っていくような場合、異常ノズルの数が減らなくなるまで第2フラッシングと検査用駆動とを繰り返すと、第2フラッシングと検査用駆動の繰り返し回数が多くなってしまい、指示信号の受信からチェックパターンの記録の開始までの時間が長くなってしまう虞がある。
【0079】
そこで、本実施形態では、第2フラッシングと検査用駆動とをNt回繰り返したときに異常ノズルの数が減っている場合でも、それ以上第2フラッシングと検査用駆動とを繰り返すことはせず、チェックパターンを記録させる。これにより、指示信号の受信からチェックパターンの開始までの時間が長くなってしまうのを防止することができる。
【0080】
また、本実施形態では、チェックパターンの記録結果が異常ノズルであることを示しているノズル10が、回復不能ノズルのみである場合には、吸引パージを行わせない。これにより、異常ノズルを回復できない無駄な吸引パージが行われてインクが排出されてしまうのを防止することができる。
【0081】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0082】
上述の実施形態では、ユーザに操作部70を操作させて、チェックパターンの記録結果を入力させたが、これには限られない。
【0083】
変形例1では、
図10に示すように、プリンタ100が、上述の実施形態のプリンタ1と同様の構成に加えて、読取部101を備えている。読取部101は例えばスキャナである。そして、変形例1では、制御装置80が上記チェックパターンを記録することを指示する指示信号を受信したときに、
図11のフローに沿って処理を行う。
【0084】
図11のフローについてより詳細に説明すると、制御装置80は、上述の実施形態と同様、S201~S209の処理を実行する。そして、S209のパターン記録処理の後、制御装置80は、チェックパターンが記録された記録用紙Pを読取部101にセットしたうえで、操作部70において所定の操作を行うことを促すメッセージを、表示部69に表示させる(S301)。そして、チェックパターンが記録された記録用紙Pが読取部101にセットされる(操作部70において上記所定の操作が行われる)まで待機する(S302:NO)。
【0085】
チェックパターンが記録された記録用紙Pが読取部101にセットされた(操作部70において上記所定の操作が行われた)ときに(S302:YES)、制御装置80は、パターン読取処理を実行する(S303)。パターン読取処理では、制御装置80は、読取部101に、セットされた記録用紙Pに記録されたチェックパターンを読み取らせ、どのノズル10が異常ノズルであるかの情報を取得する。
【0086】
以下、制御装置80は、上述の実施形態と同様、S212~S217の処理を実行する。ただし、変形例1の場合には、上述の実施形態とは異なり、S212において、S303のパターン読取処理で取得した異常ノズルであるか否かの情報に基づいて、異常ノズルが存在するか否かを判定する。
【0087】
変形例1では、チェックパターンの記録を指示する指示信号を受信したときに、検査用駆動を行わせ、異常ノズルが存在する場合に、第2フラッシングを行わせてからチェックパターンを記録させ、記録されたチェックパターンを読取部101に読み取らせて、チェックパターンの記録結果を取得する。そして、取得した記録結果が、異常ノズルが存在することを示している場合に、吸引パージを行わせる。
【0088】
これにより、チェックパターンは、第2フラッシングで回復可能な異常ノズルが回復した状態で記録されたものとなる。そのため、全ての異常ノズルが第2フラッシングで回復した場合には、チェックパターンの記録結果に基づいて回復動作を行わせる必要がない。また、一部の異常ノズルが第2フラッシングで回復した場合には、チェックパターンの記録結果に基づいて行わせる吸引パージを、インクの排出量の少ないものとすることができる。これらのことから、変形例1では、異常ノズルを回復させるためのインクの排出量を極力抑えることができる。
【0089】
また、上述の実施形態では、S204において、制御装置80が、異常ノズルについてのみ第2フラッシング処理を実行したが、これには限られない。変形例2では、制御装置80が上記チェックパターンを記録することを指示する指示信号を受信したときに、
図12のフローに沿って処理を行う。
【0090】
図12のフローは、
図8のフローにおいて、S204をS401に置き換えたものである。S401では、制御装置80は、第2フラッシング処理を実行する。S401の第2フラッシング処理では、制御装置80は、ドライバIC89を制御して複数の駆動素子22aを駆動させることによって、インクジェットヘッド4に全てのノズル10からキャップ71に向けてインクを排出させる第2フラッシングを行わせる。
【0091】
フラッシングによって回復可能な異常ノズルは、インクの増粘によって異常ノズルとなっている可能性が高い。一方、インクの増粘によって異常ノズルとなっているノズル10が存在する場合、インクジェットヘッド4の異常ノズル以外のノズル10内のインクもある程度増粘している可能性が高い。そのため、検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に行わせる第2フラッシングにおいて、異常ノズルのみからインクを排出させると、この後すぐに他のノズル10が異常ノズルとなってしまう虞がある。
【0092】
そこで、変形例2では、検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に行わせる第2フラッシングにおいて、インクジェットヘッド4の全てのノズル10からインクを排出させる。これにより、インクジェットヘッド4の全てのノズル10内のインクの増粘を解消させることができる。
【0093】
また、上述の実施形態及び変形例2のいずれとも異なり、第2フラッシング処理において、例えば、インクジェットヘッド4の複数のノズル10のうち、異常ノズルと、インクの粘度が高くなっている可能性が高い異常ノズルの周辺のノズル10のみからインクを排出させてもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、第2フラッシングにおいてノズル10からインクを排出させる第2時間間隔ΔT2を、第1フラッシングにおいてノズル10からのインクを排出させる第1時間間隔ΔT1よりも長くしたが、これには限られない。
【0095】
例えば、変形例3では、
図13に示すように、第1フラッシングにおいて、駆動素子22aを駆動させるために個別電極64に付与する駆動電位を、第1電位V1とする。また、第2フラッシングにおいて、駆動素子22aを駆動させるために個別電極64に付与する駆動電位を、第1電位V1よりも高い第2電位V2とする。
【0096】
フラッシングによって回復可能な異常ノズルは、インクの増粘によって異常ノズルとなっていることが多い。そこで、変形例3では、検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が異常ノズルであることを示している場合に行わせる第2フラッシングにおいて、記録時に行わせる第1フラッシングよりも、駆動素子22aを駆動させるために個別電極64に付与する駆動電位を高くする。これにより、異常ノズル内の増粘したインクが排出されやすくなり、異常ノズルを回復させやすくすることができる。
【0097】
また、上述の実施形態と同様に、第2フラッシングにおいてノズル10からインクを排出させる第2時間間隔ΔT2を、第1フラッシングにおいてノズル10からインクを排出させる第1時間間隔ΔT1よりも長くするとともに、変形例3と同様に、第2フラッシングにおいて駆動素子22aを駆動させるために個別電極64に付与する駆動電位(第2電位V2)を、第1フラッシングにおいて駆動素子22aを駆動させるために個別電極64に付与する駆動電位(第1電位V1)よりも高くしてもよい。
【0098】
また、第1フラッシングと第2フラッシングとで、ノズル10からの液体を排出させる時間間隔、駆動素子22aを駆動させるために個別電極64に付与する駆動電位以外の、駆動素子22aの駆動のさせ方を異ならせてもよい。あるいは、第1フラッシングと第2フラッシングとで、駆動素子22aの駆動のさせ方を同じとしてもよい。
【0099】
また、上述の実施形態では、回復不能ノズルの情報を記憶しており、チェックパターンの記録結果が異常ノズルであることを示しているノズル10が回復不能ノズルのみである場合に吸引パージを行わせないようにしたが、これには限られない。回復不能ノズルの情報を記憶しておらず、チェックパターンの記録結果が、異常ノズルが存在することを示しているときに、常に吸引パージを行わせてもよい。
【0100】
また、上述の実施形態では、検査用駆動時の判定回路78からの信号に基づいて異常ノズルが存在すると判定されたときに、第2フラッシングを行わせ、再度、検査用駆動を行わせる。そして、当該再度の検査用駆動時の判定回路78からの信号が異常ノズルの数が減っていることを示しているときに、検査用駆動時の判定回路78からの信号が示す異常ノズルの数が減らなくなるまで、第2フラッシングと検査用駆動とを繰り返す。ただし、第2フラッシングと検査用駆動とを繰り返す回数が所定回数Ntに達したときには、検査用駆動時の判定回路78からの信号が示す異常ノズルの数が減っていても、チェックパターンを記録させる。しかしながら、これには限られない。
【0101】
例えば、第2フラッシングと検査用駆動とを繰り返す回数に関係なく、検査用駆動時の判定回路78からの信号が示す異常ノズルの数が減らなくなるまで、第2フラッシングと検査用駆動とを繰り返してもよい。
【0102】
あるいは、再度の検査用駆動を1度だけ行わせ、再度の検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルの数が減っていることを示している場合に、1度だけ第2フラッシングを行わせ、さらなる検査用駆動を行わせずに、チェックパターンの記録を行わせてもよい。
【0103】
また、上述の実施の形態では、S202の検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルであることを示しているときに行わせる回復動作、及び、S206の検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルの数が減っていることを示しているときに行わせる回復動作を、同じ第2フラッシングとしているが、これには限られない。S206の検査用駆動時の判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルの数が減っていることを示しているときに行わせる回復動作は、例えば、第2フラッシングよりもノズル10からのインクの吐出回数の多いフラッシング、第2フラッシングよりも個別電極64に付与する電位が高いフラッシング等、別の回復動作(本発明の「第3回復動作」)であってもよい。
【0104】
また、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときに、第2フラッシングを行わせ、その後、再度の検査用駆動を行わせずに、チェックパターンを記録させてもよい。
【0105】
また、上述の実施形態では、第2フラッシングにおいて、ブラックノズルからインクを排出させる第2回数K2を、カラーノズルからインクを排出させる第1回数K1よりも多くしたが、これには限られない。第2フラッシングにおいて、ブラックノズルとカラーノズルとでインクを排出させる回数を同じとしてもよい。
【0106】
また、上述の実施形態では、S202の検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときに、第2フラッシングを行わせたが、これには限られない。例えば、S202の検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号にが、異常ノズルが存在することを示しているときに、S217のパージ処理での吸引パージよりも、インクの排出量の少ない吸引パージを行わせてもよい。
【0107】
また、上述の実施形態では、チェックパターンの記録結果が、異常ノズルが存在することを示している場合に、吸引パージを行わせたが、これには限られない。例えば、チェックパターンの記録結果が、異常ノズルが存在することを示している場合に、第2フラッシングよりもノズル10からのインクの吐出回数の多いフラッシング、第2フラッシングよりも駆動素子22aを駆動させるために個別電極64に付与する駆動電位の高いフラッシングなどを行わせてもよい。
【0108】
また、検査用駆動時に判定回路78出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に行わせる第1回復動作は、チェックパターンの記録結果が、異常ノズルが存在することを示している場合に行わせる第2回復動作よりも、インクの排出量が多く、且つ、必要な時間の短いものであったが、これには限られない。第2回復動作は、第1回復動作よりもインクの排出量が多ければ、必要な時間は第1回復動作と同程度であってもよい。あるいは、第2回復動作は、必要な時間が第1回復動作よりも短ければ、インクの排出量は第1回復動作と同程度であってもよい。あるいは、第1回復動作と第2回復動作とで、インクの排出量及び必要な時間の両方が同程度であってもよい。
【0109】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4の全てのノズル10について、検査用駆動を行わせたが、これには限られない。例えば、各ノズル列9における1つおきのノズル10等、インクジェットヘッド4の一部のノズル10についてのみ、検査用駆動を行わせ、それ以外のノズル10については、当該検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを推定してもよい。
【0110】
また、上述の実施形態では、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させたときの検出用電極76の電位に応じて、判定回路78が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力したが、これには限られない。
【0111】
例えば、鉛直方向に延びた検出用電極を配置し、ノズル10から検出用電極と対向する領域を通過するようにインクを吐出させたときの検出用電極の電位に応じて、判定回路から、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。あるいは、ノズル10から吐出されたインクを検出する光センサ(本発明の「信号出力部」)を設け、光センサから、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。
【0112】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路(本発明の「信号出力部」)を接続して、電圧検出回路から制御装置80に、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0113】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子(本発明の「信号出力部」)を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて、ノズル10が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0114】
また、以上の例では、インクが吐出されないノズル10を異常ノズルと判定したが、これには限られない。例えば、ノズル10からのインクの吐出方向が正常であるか否かに応じた信号を出力する信号出力部を設け、この信号出力部からの信号に基づいて、吐出方向に異常のあるノズル10を異常ノズルと判定してもよい。
【0115】
また、以上の例では、パージ処理において吸引パージを行わせたが、これには限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ14とを接続するチューブ15の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。あるいは、プリンタにインクカートリッジと接続された加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ71で覆われた状態で、上記加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。なお、この場合には、キャップ71と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「パージ手段」に相当する。
【0116】
さらには、パージ処理において、吸引ポンプ72による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行わせてもよい。この場合には、メンテナンスユニット8と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「パージ手段」に相当する。
【0117】
また、以上では、キャリッジとともに走査方向に移動しつつ複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0118】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録するプリンタにも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0119】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
8 メンテナンスユニット
10 ノズル
22a 駆動素子
51 圧力室
70 操作部
72 吸引ポンプ
78 判定回路
80 制御装置
89 ドライバIC
100 プリンタ
101 読取部