(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099149
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】移動制限装置及び建具
(51)【国際特許分類】
E05C 1/10 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
E05C1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212934
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 隆介
(57)【要約】 (修正有)
【課題】枠体に対する障子の移動をより確実に制限することのできる移動制限装置及び建具を提供する。
【解決手段】枠体の右枠材に取り付けられる操作係合部材41と、枠体に対して移動可能に配設された網戸の右框材に取り付けられる受部材51とを備え、操作係合部材41の係合面部41kと、受部材51の受面部51dとを互いに係合させることにより、枠体に対する網戸の移動を制限する移動制限装置であって、操作係合部材41及び受部材51は、右枠材及び右框材の延在方向Bに沿って相対的に移動可能となるように配設され、係合面部41kの先端部側及び受面部51dの先端部側には、個々の基端部側よりも相手側に突出した突出部41n,51fがそれぞれ設けられている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体を構成する枠材及び前記枠体に対して移動可能に配設された障子を構成する框材のいずれか一方に取り付けられる係合部材と、前記枠材及び前記框材のいずれか他方に取り付けられる受部材とを備え、前記係合部材の係合面部と、前記受部材の受面部とを互いに係合させることにより、前記枠体に対する前記障子の移動を制限する移動制限装置であって、
前記係合部材及び前記受部材は、前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って相対的に移動可能となるように配設され、
前記係合面部の先端部側及び前記受面部の先端部側には、個々の基端部側よりも相手側に突出した部分がそれぞれ設けられていることを特徴とする移動制限装置。
【請求項2】
前記係合面部には、係合面及び前記係合面よりも先端部側において相手側に向けて突出する突出部が設けられ、
前記受面部には、受面及び前記受面よりも先端部側において相手側に向けて突出する突出部が設けられ、
前記係合面部の突出部が前記受面部の受面に対向した状態で前記係合面部と前記受面部とが互いに係合されることを特徴とする請求項1に記載の移動制限装置。
【請求項3】
前記係合面部の突出部及び前記受面部の突出部の少なくとも一方には、先端側に導入ガイド面が設けられ、
前記導入ガイド面は、前記係合部材及び前記受部材が前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って互いに近接する方向に移動した場合に相手側に当接し、前記係合面部及び前記受面部が互いに離隔する方向に向けて前記係合部材及び前記受部材を相対移動させるように傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の移動制限装置。
【請求項4】
前記枠材及び前記框材は、それぞれが上下方向に沿って延在するものであり、
前記係合面部は前記係合部材から下方に向けて突出するように設けられ、前記受面部は前記受部材から上方に向けて突出するように設けられており、
前記導入ガイド面は、前記受面部の突出部において上方となる部分に設けられ、下方に向けて漸次突出するように傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の移動制限装置。
【請求項5】
前記係合面部の突出部及び前記受面部の突出部の少なくとも一方には、基端側に解除ガイド面が設けられ、
前記解除ガイド面は、前記係合面部と前記受面部とが互いに係合された状態から前記係合部材及び前記受部材が前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って互いに離隔する方向に移動した場合に相手側に当接し、前記係合部材及び前記受部材を相互間隔が広がる方向に向けて相対移動させるように傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の移動制限装置。
【請求項6】
前記枠材及び前記框材は、それぞれが上下方向に沿って延在するものであり、
前記係合面部は前記係合部材から下方に向けて突出するように設けられ、前記受面部は前記受部材から上方に向けて突出するように設けられており、
前記解除ガイド面は、前記係合面部の突出部において上方となる部分及び前記受面部の突出部において下方となる部分にそれぞれ設けられ、
前記係合面部の解除ガイド面は、下方に向けて漸次突出するように傾斜し、
前記受面部の解除ガイド面は、上方に向けて漸次突出するように傾斜していることを特徴とする請求項5に記載の移動制限装置。
【請求項7】
前記係合面部及び前記受面部には、それぞれ先端側に向けて漸次相手側に突出するように、前記枠材及び前記框材の延在方向に対して傾斜した当接面が設けられ、
前記係合面部及び前記受面部は、前記当接面を互いに当接した状態で相互に係合されることを特徴とする請求項1に記載の移動制限装置。
【請求項8】
前記係合部材及び前記受部材の少なくとも一方には、これら係合部材及び受部材を前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って互いに近接させる方向に付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の移動制限装置。
【請求項9】
枠体を構成する枠材及び前記枠体に対して移動可能に配設された障子を構成する框材のいずれか一方に取り付けられる係合部材と、前記枠材及び前記框材のいずれか他方に取り付けられる受部材とを備え、前記係合部材の係合面部と、前記受部材の受面部とを互いに係合させることにより、前記枠体に対する前記障子の移動を制限する移動制限装置であって、
前記係合部材及び前記受部材は、前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って相対的に移動可能となるように配設され、
前記係合面部の先端部側及び前記受面部の先端部側の少なくとも一方には、先端側に向けて漸次相手側に突出するように、前記枠材及び前記框材の延在方向に対して傾斜した当接面が設けられ、
前記係合面部及び前記受面部は、前記当接面を相手側に当接した状態で相互に係合されることを特徴とする移動制限装置。
【請求項10】
枠体を構成する枠材と、枠体に対して移動可能に配設された網戸を構成する框材との間に、請求項1~請求項9のいずれか一つに記載した移動制限装置が設けられていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体に対する網戸等の障子の移動を制限する移動制限装置及び建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
障子を備える建具には、障子が枠体のレールに沿って移動するのを制限するために移動制限装置を備えるものがある。この種の移動制限装置としては、枠体を構成する縦枠に取り付けられた下向きのL字状を成す係合部材と、障子を構成する縦框に取り付けられた上向きのL字状を成す受部材とを備えたもの多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。この移動制限装置では、例えば障子の縦框を枠体の縦枠に当接させた状態で、係合部材の係合面と受部材の受面とを互いに当接させれば、縦枠に対して縦框を離隔する方向の移動を制限することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した移動制限装置では、人が障子に操作力を加える高さ位置と、係合部材及び受部材が取り付けられた高さ位置とがほぼ一致している場合、障子を引き操作した際にも係合面と受面との当接状態が維持されるため、障子の移動を制限することが可能である。これに対して、係合部材及び受部材が取り付けられた高さ位置と、人が障子に操作力を加える高さ位置とが互いにずれている場合には、障子を引き操作した際に枠体の縦枠に対して障子の縦框が傾斜した状態となり得る。このため、移動制限装置にあっては、縦枠に取り付けられた係合部材の係合面に対して縦框に取り付けられた受部材の受面が傾斜した状態となる懸念がある。係合部材と受部材との当接状態は、係合部材及び受部材を縦枠及び縦框の延在方向に沿って配置されたバネの付勢力によってこれを維持するようにしている。しかしながら、受部材の受面が傾斜した状態にあっては、障子を引き操作する際の操作力によってバネの付勢力に抗する力が発生することになり、係合部材と受部材とが互いに離隔する方向に移動して相互の当接状態が解除されるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、枠体に対する障子の移動をより確実に制限することのできる移動制限装置及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る移動制限装置は、枠体を構成する枠材及び前記枠体に対して移動可能に配設された障子を構成する框材のいずれか一方に取り付けられる係合部材と、前記枠材及び前記框材のいずれか他方に取り付けられる受部材とを備え、前記係合部材の係合面部と、前記受部材の受面部とを互いに係合させることにより、前記枠体に対する前記障子の移動を制限する移動制限装置であって、前記係合部材及び前記受部材は、前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って相対的に移動可能となるように配設され、前記係合面部の先端部側及び前記受面部の先端部側には、個々の基端部側よりも相手側に突出した部分がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0007】
また本発明に係る移動制限装置は、
枠体を構成する枠材及び前記枠体に対して移動可能に配設された障子を構成する框材のいずれか一方に取り付けられる係合部材と、前記枠材及び前記框材のいずれか他方に取り付けられる受部材とを備え、前記係合部材の係合面部と、前記受部材の受面部とを互いに係合させることにより、前記枠体に対する前記障子の移動を制限する移動制限装置であって、前記係合部材及び前記受部材は、前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って相対的に移動可能となるように配設され、前記係合面部の先端部側及び前記受面部の先端部側の少なくとも一方には、先端側に向けて漸次相手側に突出するように、前記枠材及び前記框材の延在方向に対して傾斜した当接面が設けられ、前記係合面部及び前記受面部は、前記当接面を相手側に当接した状態で相互に係合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、係合面部の先端部及び受面部の先端部が、互いに対向した場合に個々の基端部よりも相手側に突出した状態で互いに係合しているため、枠材に対して框材が傾斜した状態となった場合にも、係合面部と受面部との係合状態が維持されることになり、障子が移動する事態を防止することが可能となる。
【0009】
また、本発明によれば、係合面部の先端部及び受面部の先端部の少なくとも一方が、互いに対向した場合に基端部よりも相手側に突出するように傾斜しているため、枠体に対して網戸が傾斜した姿勢となった場合にも、係合面部と受面部との係合状態が維持されることになり、網戸が不用意に移動する事態を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1である移動制限装置を適用した建具を示すもので、係合部材の係合面部と受部材の受面部とが互いに係合した状態の横断面図である。
【
図2】
図1に示した建具において係合部材の係合面部と受部材の受面部との係合状態が解除した横断面図である。
【
図3】
図1に示した状態の建具の要部を室内側から見た斜視図である。
【
図4】
図2に示した状態の建具の要部を室内側から見た斜視図である。
【
図5】
図2に示した状態の建具の要部を室外側から見た斜視図である。
【
図6】移動制限装置の操作ユニットを室内側から見た分解斜視図である。
【
図7】移動制限装置の操作ユニットを室外側から見た分解斜視図である。
【
図8】建具に取り付けた状態の移動制限装置の操作ユニットを室外側から見たもので、(a)は外観斜視図、(b)は内部構成を示す斜視図である。
【
図9】建具に取り付けた状態の移動制限装置のラッチユニットを室外側から見た斜視図である。
【
図10】移動制限装置のラッチユニットを枠体の内周側から見た斜視図である。
【
図11】移動制限装置のラッチユニットを室外側から見た分解斜視図である。
【
図12】
図1に示した移動制限装置の係合部材及び受部材を示すもので、(a)はそれぞれの要部を示す拡大図、(b)は係合部材の突出部と受部材の突出部とが当接した状態の要部拡大図、(c)は係合部材の係合面部と受部材の受面部とが互いに当接した状態の要部拡大図、(d)は係合部材に対して受部材が傾斜した状態の要部拡大図、(e)係合部材の解除ガイド面と受部材の解除ガイド面とが互いに当接した状態の要部拡大図である。
【
図13】枠体に対して障子を移動させた場合の係合部材と受部材との動作状態を(a)から(d)に順次示した図である。
【
図14】変形例1である移動制限装置の係合部材及び受部材を示すもので、(a)はそれぞれの要部を示す拡大図、(b)は係合部材の係合面部と受部材の受面部とが互いに対向した状態の要部拡大図、(c)は係合部材の係合面部と受部材の受面部とが互いに当接した状態の要部拡大図、(d)は係合部材に対して受部材が傾斜した状態の要部拡大図、である。
【
図15】変形例2である移動制限装置の係合部材及び受部材を示すもので、(a)はそれぞれの要部を示す拡大図、(b)は係合部材の係合面部と受部材の受面部とが互いに対向した状態の要部拡大図、(c)は係合部材の係合面部と受部材の受面部とが互いに当接した状態の要部拡大図、(d)は係合部材に対して受部材が傾斜した状態の要部拡大図、である。
【
図16】変形例3である移動制限装置の係合部材及び受部材を示すもので、(a)はそれぞれの要部を示す拡大図、(b)は係合部材の係合面部と受部材の受面部とが互いに当接した状態の要部拡大図、(c)は係合部材に対して受部材が傾斜した状態の要部拡大図、である。
【
図17】本発明の実施の形態2である移動制限装置の係合部材及び受部材を示すもので、(a)はそれぞれの要部を示す拡大図、(b)は係合部材の係合面部と受部材の受面部とが互いに当接した状態の要部拡大図、(c)は係合部材に対して受部材が傾斜した状態の要部拡大図、である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る移動制限装置及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、横枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0012】
(実施の形態1)
図1及び
図2は、本発明の実施の形態1である移動制限装置を適用した建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10に室内側の内障子20A及び室外側の外障子20Bを備えるとともに、外障子20Bよりもさらに室外側となる部分に網戸(障子)30を備えた引き違い窓と称されるものである。枠体10は、上下の横枠11(但し、上方の横枠は不図示)及び左右の縦枠12,13を四周枠組みすることによって構成したものである。内障子20A及び外障子20Bは、それぞれ四角形状を成す複層ガラス等の面材21の四周に上下の横框22(但し、上方の横框22は不図示)及び左右の縦框23,24を装着することによって構成したもので、横枠11の延在方向に沿って移動可能に配設してある。図示の例では、室内側から見て外障子20Bが左側に配置され、かつ内障子20Aが右側に配置された場合に枠体10の開口を閉塞することができるように枠体10、内障子20A、外障子20Bが構成してある。
【0013】
網戸30は、四角形状を成す網材31の四周に上下の網戸横框32(但し、上方の網戸横框は不図示))及び左右の網戸縦框33,34を装着することによって構成したもので、外障子20Bとほぼ同じ大きさを有している。この網戸30は、図には明示していないが、上下の横枠11に設けた網戸用ガイドレール11aに対して、上下の網戸横框32に設けたレールガイド32aを係合させることで移動可能に支持してあり、内障子20A及び外障子20Bと同様、横枠11の延在方向に沿って移動することが可能である。
【0014】
上記の構成を有する建具には、枠体10と網戸30との間に移動制限装置1が設けてある。より具体的に説明すると、
図1~
図5に示すように、枠体10において室内側から見て右側に位置する縦枠(以下、右枠材13という)と、網戸30において室内側から見て右側に位置する網戸縦框(以下、右框材34という)との間に、網戸30の自走を防止するための移動制限装置1が構成してある。以下、右枠材13及び右框材34の詳細構成を含めて移動制限装置1の構成について説明する。なお、以下の説明においては便宜上、右枠材13及び右框材34に取り付けられた姿勢で、移動制限装置1の構成要素についてそれぞれの方向を特定することとする。
【0015】
枠体10の右枠材13及び網戸30の右框材34は、アルミニウム合金等の金属や樹脂によって成形した押し出し形材であり、それぞれが長手方向(上下方向)に沿った全長にわたってほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。右枠材13は、見込み方向に沿って延在する平板状の枠基板部13aと、枠基板部13aの室外側に位置する縁部から見付け方向に沿って延在する平板状の見付け枠板部13bとを有したものである。見付け枠板部13bは、見込み方向の位置が横枠11に設けた網戸用ガイドレール11aと同じとなるように設けたもので、枠基板部13aから内周側に向けて突出する部分を有している。右框材34は、中空の筒状を成す框基部34aと、框基部34aの外周側に位置する両隅部からそれぞれ外周側に向けて延在した2つの見付け框板部34bとを有したものである。見付け框板部34bには、互いに対向する部分に係止面34cが構成してある。係止面34cは、見付け框板部34bの互いに対向する内表面に突部を設けることにより、框基部34aに対向するように形成したものである。
図2に示すように、本実施の形態1では、網戸横框32のレールガイド32aを横枠11の網戸用ガイドレール11aに係合させた場合、框基部34aが右枠材13の見付け枠板部13bよりも室外側に配置されるように枠体10及び網戸30が構成してある。
【0016】
移動制限装置1は、
図3~
図5に示すように、操作ユニット40と、ラッチユニット50とを備えて構成したものである。本実施の形態1では、右枠材13の見付け枠板部13bにおいて内周側となる部分に操作ユニット40が取り付けてあるとともに、右框材34の框基部34aにおいて2つの見付け框板部34bの間に位置する部分にラッチユニット50が取り付けてある。操作ユニット40は、操作係合部材(係合部材)41、裏板42、操作ベース43及び裏板カバー44を備えて構成してあり、ラッチユニット50は、受部材51、保護キャップ52及びラッチベース53を備えて構成してある。
【0017】
操作係合部材41は、
図6~
図8に示すように、金属板を適宜折り曲げることによって構成したもので、見付け枠板部13bの室内に臨む見付け面に配設するスライドガイド板部41aと、見付け枠板部13bよりも室外側に配設するカバー板部41b及び係合板部41cとを有している。
【0018】
スライドガイド板部41aは、右枠材13の長手に沿って見付け方向に延在する縦長の平板状を成すもので、上下両端部にそれぞれガイド孔41d及び嵌合板部41eを有している。ガイド孔41dは、右枠材13の長手に沿って延在する長孔状を成すもので、スライドガイド板部41aの外周側となる縁部に並設してある。嵌合板部41eは、スライドガイド板部41aの端部から室内側に向けて突出するように設けた段状の平板状部分である。
【0019】
カバー板部41bは、スライドガイド板部41aにおいて上下方向のほぼ中央となる部分から室外に向けて見込み方向に延在したもので、右框材34の見込み方向に沿った寸法よりも大きな幅の平板状を成している。本実施の形態1では、見付け枠板部13bの内周側を迂回するように設けた連結板部41fを介してスライドガイド板部41aとカバー板部41bとの間が互いに連結してある。すなわち、連結板部41fは、スライドガイド板部41aの内周側に位置する縁部のほぼ中央となる部分から見付け枠板部13bを越えて室外側に向けて突出した後、スライドガイド板部41aとほぼ平行となるように外周側に向けて延在したものである。カバー板部41bは、連結板部41fの外周側となる縁部から室外に向けて突出するように延在している。カバー板部41bの室外側に位置する縁部には、ガイドカバー板部41gが設けてある。ガイドカバー板部41gは、室外に向けて漸次内周側となるように、スライドガイド板部41aに対して傾斜したものである。
【0020】
係合板部41cは、カバー板部41bにおいてスライドガイド板部41aとガイドカバー板部41gとの間のほぼ中間となる部分から内周側に向けて延在した平板状を成すもので、スライドガイド板部41aとほぼ平行となるように設けてある。この係合板部41cの延在縁部には、下方に向けて突出するように下方係合突片部41hが設けてある。
【0021】
下方係合突片部41hは、係合板部41cと同じ平板状となるように設けたもので、
図12(a)に示すように、内周側となる縁部に係合ガイド面41jを有し、かつ外周側となる縁部に係合面部41kを有している。係合ガイド面41jは、下方に向けて漸次外周側となるように鉛直方向に対して傾斜したものである。係合面部41kは、基端側となる上方部に係合面41mを有するとともに、係合面41mよりも先端側となる下方部に係合側突出部41nを有して構成してある。図示の例では、係合面部41kの中間部に凹部を形成することによって係合面41m及び係合側突出部41nが設けてある。係合面41mは、ほぼ鉛直方向に沿って見込み方向に延在する平面である。係合側突出部41nは、係合面41mよりも外周側に向けて突出するように形成したもので、下方部分が円弧状に湾曲している。係合側突出部41nの上方部分において係合面41mとの間となる部分には、係合側解除ガイド面41pが設けてある。係合側解除ガイド面41pは、下方に向けて漸次外周側に突出するように係合面41mに対して傾斜した平面である。なお、係合板部41cの延在縁部には、下方係合突片部41hと対称形状となるように上方に向けて上方係合突片部41qが設けてある。この上方係合突片部41qは、室内側から見て枠体10の左側に位置する縦枠12に操作係合部材41を設けた場合に上下が逆となり、後述の下方係合突片部41hとして機能するためのものである。
【0022】
裏板42は、
図6~
図8に示すように、見付け枠板部13bの室外に臨む見付け面と操作係合部材41の連結板部41fとの間に配設するもので、操作係合部材41のスライドガイド板部41aとほぼ同じ上下寸法を有した板状部材を成している。この裏板42の上下両端部には、それぞれネジ孔42a及び嵌合溝42bが設けてある。ネジ孔42aは、スライドガイド板部41aのガイド孔41dを通過した取付ネジ45の軸部45aが螺合可能となるもので、ガイド孔41dとほぼ同じピッチで上下に並設してある。嵌合溝42bは、裏板42の上下両端面から上下方向に沿って形成した溝状の切欠である。
【0023】
操作ベース43は、操作係合部材41のスライドガイド板部41aを覆う状態で見付け枠板部13bの室内に臨む見付け面に配設するものである。この操作ベース43には、上下両端部にネジ挿通孔43a及び嵌合凹部43bが設けてあるとともに、上下方向のほぼ中央となる部分に上方係止フック部43cが設けてある。ネジ挿通孔43aは、操作係合部材41のガイド孔41dに対応する部分に設けた長孔状を成す貫通孔である。嵌合凹部43bは、ネジ挿通孔43aをガイド孔41dに対向させた状態で操作ベース43をスライドガイド板部41aに対向させた場合にスライドガイド板部41aの嵌合板部41eが嵌合される凹所である。上方係止フック部43cは、操作ベース43の室外に臨む表面において内周側となる部分から室外に向けて見込み方向に突出した後、上下に屈曲したものである。
【0024】
裏板カバー44は、カバー板部41bよりも内周側において裏板42を覆った状態で見付け枠板部13bの室外に臨む見付け面に配設するものである。この裏板カバー44には、下方係止フック部44aが設けてあるとともに、上下両端部に嵌合突条44bが設けてある。下方係止フック部44aは、裏板カバー44の室内に臨む表面において内周側となる部分から室内に向けて見込み方向に突出した後に下方に向けて屈曲したもので、操作ベース43の上方係止フック部43cよりも下方となる部分に形成してある。嵌合突条44bは、裏板42に重ね合わせた場合に裏板42の嵌合溝42bに嵌合することにより、裏板カバー44を裏板42に支持させるものである。なお、裏板カバー44には、下方係止フック部44aと対称位置となる上方部分にも下方係止フック部44aが設けてある。この上方に設けた下方係止フック部44aは、室内側から見て枠体10の左側に位置する縦枠12に操作ユニット40を設けた場合に機能させるものである。
【0025】
上記の構成を有した操作ユニット40を右枠材13に取り付けるには、予め見付け枠板部13bにおいて操作ユニット40を取り付ける位置に上下2つのネジ貫通孔13cを形成しておく。ネジ貫通孔13cは、裏板42のネジ孔42aに螺合する取付ネジ45の軸部45aを貫通させる大きさを有したもので、ネジ孔42aと同じピッチで見付け枠板部13bの内周側となる縁部に設けておく。
【0026】
この見付け枠板部13bに対しては、まず室外に臨む見付け面に裏板42を重ね合わせ、さらにスライドガイド板部41aと連結板部41fとの間に見付け枠板部13b及び裏板42を配置する状態で操作係合部材41を右枠材13に配置する。この状態から操作ベース43のネジ挿通孔43a、スライドガイド板部41aのガイド孔41d及び見付け枠板部13bのネジ貫通孔13cを介して裏板42のネジ孔42aに取付ネジ45を螺合すれば、操作係合部材41及び操作ベース43を右枠材13の見付け枠板部13bに取り付けることが可能となる。これら操作係合部材41及び操作ベース43は、取付ネジ45に対してネジ挿通孔43a及びガイド孔41dの範囲で上下に移動することが可能である。すなわち、操作係合部材41及び操作ベース43は、右枠材13に対して上下に移動させることが可能である。本実施の形態1では、裏板42に装着した裏板カバー44の下方係止フック部44aと、操作ベース43の上方係止フック部43cとの間に引張コイルバネ(付勢部材)46を介在させることにより、操作係合部材41及び操作ベース43が引張コイルバネ46のバネ力によって常時下方に付勢された状態を維持するようにしている。裏板42に対して裏板カバー44を装着するには、嵌合溝42bにそれぞれ嵌合突条44bを嵌合させれば良い。上記のようにして右枠材13に取り付けた操作ユニット40では、右枠材13に近接するように網戸30を移動させた場合に、係合板部41cが右框材34の2つの見付け框板部34bの相互間に配置されることになる。
【0027】
受部材51は、
図9~
図11に示すように、上下に沿って延在する略四角柱のブロック状を成すもので、室内側に位置する側面部及び室外側に位置する側面部にそれぞれガイドピン部51aを有するとともに、下面部にバネ支持ピン部51bを有している。ガイドピン部51aは、それぞれ見込み方向に沿って延在した円柱状を成し、互いに同一の軸心上となる部分に設けたもので、室内側の側面部及び室外側の側面部からそれぞれ突出している。ガイドピン部51aは、ほぼ鉛直方向に沿って下方に延在した円柱状を成すものである。また、受部材51には、上面部に受突部51cが設けてある。受突部51cは、
図12(a)に示すように、受部材51の外周側に位置する縁部から上方に突出したもので、内周側となる部分に受面部51dを有している。受面部51dは、基端側となる下方部に受面51eを有するとともに、受面51eよりも先端側となる上方部に受側突出部51fを有して構成してある。受面51eは、ほぼ鉛直方向に沿って見込み方向に延在する平面である。受側突出部51fは、受面51eよりも内周側に向けて突出したもので、突出寸法が係合板部41cの係合側突出部41nとほぼ同じとなるように構成してある。受側突出部51fには、導入ガイド面51g及び受側解除ガイド面51hが設けてある。導入ガイド面51gは、受側突出部51fの上方部分に設けたもので、下方に向けて漸次内周側に突出するように受面51eに対して傾斜している。受側解除ガイド面51hは、受側突出部51fの下方において受面51eとの間となる部分に設けたもので、上方に向けて漸次内周側に突出するように受面51eに対して傾斜している。なお、本実施の形態1の受部材51は、アルミニウム合金等の金属を材料としたダイカストによって一体に成形してある。
【0028】
保護キャップ52は、
図9~
図11に示すように、受部材51の外表面を覆うように設けた樹脂製の部材である。図示の例では、ガイドピン部51a、バネ支持ピン部51b及び受面部51dを外部に露出させるように保護キャップ52が構成してある。保護キャップ52には、受突部51cの外周側を覆う部分に受側ガイド面52aが設けてある。受側ガイド面52aは、上方に向けて漸次内周側となるように右框材34の延在方向Bに対して傾斜した平面である。
【0029】
ラッチベース53は、保護キャップ52を装着した状態の受部材51を上下方向に沿って移動可能に収容するものである。本実施の形態1では、外周基板部53a、2つの側板部53b、2つの周囲板部53c及び底板部53dを有してラッチベース53が構成してある。外周基板部53aは、略四角形の平板状を成すもので、上下方向に沿って見込み方向に延在している。側板部53bは、外周基板部53aの両側縁部から内周側に向けて互いにほぼ平行となるように延在したもので、外周基板部53aとの間に受部材51の収容空間を構成している。本実施の形態1の側板部53bは、上下方向に沿った寸法が外周基板部53aのほぼ2倍となるように構成してあり、外周基板部53aの上端から上方に突出するように延在している。これら2つの側板部53bは、右框材34の2つの見付け框板部34bの間に嵌まることができるように外表面の相互間距離が設定してある。側板部53bには、それぞれ上下に沿ったガイド溝53eが形成してあるとともに、それぞれの外表面に係止突起53fが形成してある。ガイド溝53eは、受部材51のガイドピン部51aが挿通可能となる幅に形成したもので、ガイドピン部51aとの協働により、側板部53bに対する受部材51の上下に沿った移動をガイドするように機能する。係止突起53fは、ラッチベース53を右框材34の2つの見付け框板部34bの間に配置した場合に、側板部53bに設けた係止面34cに当接するものである。周囲板部53cは、外周基板部53aにおいて側板部53bよりも下方となる部分から外周側に向けて互いに漸次近接するように湾曲して延在するもので、側板部53bの間に受部材51を配設した場合にバネ支持ピン部51bの軸心を中心とした円周上に配設してある。底板部53dは、外周基板部53aの下縁から内周側に向けてほぼ水平に延在した後、下方に向けてほぼ鉛直に屈曲したもので、下方に延在した部分にネジ挿通孔53gを有している。
【0030】
上記の構成を有したラッチユニット50を右框材34に取り付けるには、予め受部材51に保護キャップ52を装着した状態でラッチベース53の側板部53bの間に収容し、ガイドピン部51aをそれぞれガイド溝53eに配置することにより、ラッチベース53に対して上下方向に移動可能に配設しておく。本実施の形態1では、受部材51の下面とラッチベース53の底板部53dとの間に圧縮コイルバネ(付勢部材)54を介在させることにより、受部材51が圧縮コイルバネ54のバネ力により、ラッチベース53に対して常時上方に付勢された状態を維持するようにしている。圧縮コイルバネ54は、上端部に受部材51のバネ支持ピン部51bを配置するとともに、下端部をラッチベース53の周囲板部53cと外周基板部53aとの間に配置することにより、脱落することなく受部材51を付勢することが可能となる。この状態からラッチベース53を右框材34の2つの見付け框板部34bの間に配置し、さらに底板部53dのネジ挿通孔53gを介して框基部34aに取付ネジ55を螺合すれば、ラッチユニット50を右框材34に取り付けることが可能となる。この状態においては、側板部53bに設けた係止突起53fが側板部53bの係止面34cに当接することになり、右框材34に対するラッチベース53の外周側への移動が阻止されている。ラッチユニット50を取り付ける位置は、右枠材13に近接するように網戸30を移動させた場合に、係合板部41cに設けた下方係合突片部41hの係合ガイド面41jが、保護キャップ52の受側ガイド面52aに当接するように設定してある。
【0031】
上述の移動制限装置1を設けた建具によれば、
図13(a)に示す状態から、右枠材13に近接する方向に向けて網戸30を移動させると、
図13(b)に示すように、係合板部41cに設けた下方係合突片部41hの係合ガイド面41jが、保護キャップ52の受側ガイド面52aに当接した状態となる。この状態から網戸30をさらに右枠材13に近接させると、
図13(c)に示すように、係合ガイド面41j及び受側ガイド面52aの傾斜作用により、引張コイルバネ46や圧縮コイルバネ54のバネ力に抗して操作係合部材41及び受部材51が相対的に離隔するように上下方向に適宜移動することになる。本実施の形態1では、引張コイルバネ46に対して圧縮コイルバネ54のバネ定数が大きく設定してあるため、操作ユニット40の操作係合部材41が上方に移動する。
【0032】
網戸30の移動が進行して係合ガイド面41j及び受側ガイド面52aの当接状態が解除されると、
図13(d)に示すように、引張コイルバネ46や圧縮コイルバネ54のバネ力により操作係合部材41及び受部材51が上下方向に沿って相対的に近接する方向に移動し、係合面部41kと受面部51dとが互いに対向した状態となる。この間、操作係合部材41及び受部材51が相対的に近接する方向に移動すると、
図12(b)に示すように、操作係合部材41の係合側突出部41nが受部材51の導入ガイド面51gに当接する。このため、導入ガイド面51gの傾斜作用によって操作係合部材41及び受部材51が水平方向に沿って互いに離隔する方向に適宜移動することになり、
図12(c)に示すように、操作係合部材41の係合側突出部41nが受部材51の受側突出部51fを越えて受面51eに対向するとともに、受部材51の受側突出部51fが操作係合部材41の係合面41mに対向した状態となる。これにより、右枠材13に対して網戸30を離隔するように移動させようとしても、操作係合部材41の係合面部41kと、受部材51の受面部51dとが係合状態を維持することになり、網戸30の移動が制限される。
【0033】
ここで、例えば移動制限装置1が右枠材13及び右框材34の全高に対して上から1/3程度の高さ位置に配置されているものとする。この状態から室内側から見て左側に位置する網戸縦框33の下から1/3以下の高さに操作力を加えて網戸30を左側に移動させようとすると、枠体10に対して網戸30が室内側から見て時計回りに回転して傾斜姿勢となる。このため、移動制限装置1においても、
図12(d)に示すように、右枠材13に設けた操作係合部材41に対して、右框材34に設けた受部材51が時計回りに回転するように傾斜する事態が生じ得る。しかしながら、上記の建具に設けた移動制限装置1では、上述したように、係合面部41kの先端部に設けた係合側突出部41nと受面部51dの先端部に設けた受側突出部51fとが互いに乗り越えた位置で係合している。換言すれば、係合面部41k及び受面部51dは、互いに対向した場合に、個々の基端部よりも相手側に突出した状態で互いに係合している。従って、枠体10に対して網戸30が傾斜した姿勢となった場合にも、操作係合部材41及び受部材51が右枠材13や右框材34の延在方向Bに沿って互いに離隔する方向に移動するおそれがなく、両者の係合状態が維持されることになる。これにより、枠体10に対する網戸30の移動が制限された状態が維持されることになり、網戸30が不用意に移動する事態を防止することが可能となる。
【0034】
因に、上述の状態から網戸30を移動させるには、引張コイルバネ46のバネ力に抗して操作ベース43を右枠材13に対して上方に移動させれば、受部材51に対して操作係合部材41が上方に移動することによって受部材51の受面部51dと操作係合部材41の係合面部41kとが非対向状態となる。従って、この状態のまま網戸30に操作力を加えれば、枠体10に対して網戸30を移動させることが可能となる。
【0035】
このとき、上記の移動制限装置1によれば、
図12(e)に示すように、操作係合部材41の上方への移動に伴って係合面部41kに設けた係合側解除ガイド面41pと、受面部51dに設けた受側解除ガイド面51hとが互いに当接することになる。このため、単に操作ベース43を上方に移動させれば、係合側解除ガイド面41p及び受側解除ガイド面51hの傾斜作用によって操作係合部材41及び受部材51が水平方向に沿って互いに離隔する方向に適宜移動し、操作係合部材41の係合側突出部41nが受部材51の受側突出部51fを越えて上方に移動することになるため、操作が容易となる。操作ベース43に加えていた操作力を除去すれば、引張コイルバネ46のバネ力によって操作係合部材41が下方に移動する。従って、再び網戸30を右枠材13に近接させる方向に移動させれば、網戸30の移動を制限することが可能となる。
【0036】
なお、上述した実施の形態1では、受部材51にのみ導入ガイド面51gを設けているが、本発明は必ずしもこれに限定されず、操作係合部材41にのみ導入ガイド面を設けても良いし、受部材51及び操作係合部材41の双方に導入ガイド面を設けても構わない。また、操作係合部材41及び受部材51の双方に解除ガイド面41p,51hを設けているが、操作係合部材41及び受部材51のいずれか一方にのみ解除ガイド面を設けるようにしても良い。但し、導入ガイド面51g及び解除ガイド面41p,51hは、必ずしも設ける必要はなく、例えば
図14に示す変形例1や
図15に示す変形例2のように、導入ガイド面51g及び解除ガイド面の双方を省略して移動制限装置を構成することも可能である。
【0037】
すなわち、
図14に示す変形例1では、操作係合部材141の係合側突出部41nと係合面41mとの間に水平方向に沿った境界面141aを構成するようにしている。同様に、受部材151の受側突出部51fとしては、上方部及び下方部にそれぞれ水平方向に沿った境界面151a,151bを構成するようにしている。なお、変形例1において実施の形態1と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0038】
また、
図15に示す変形例2では、操作係合部材241の係合側突出部41nと係合面41mとの間に水平方向に沿った境界面241aを構成するようにしている。また、係合面41mを下方係合突片部41hの上端まで延長している。受部材251の受側突出部51fとしては、受突部51cの上端までそのまま延長し、その下方部に水平方向に沿った境界面251aを構成するようにしている。なお、変形例2において実施の形態1と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0039】
これら変形例1や変形例2の移動制限装置を備える建具では、引張コイルバネ46や圧縮コイルバネ54のバネ力により操作係合部材141,241及び受部材151,251が互いに近接する方向に移動した場合にも、操作係合部材141,241の先端部が受側突出部51fや受突部51cの上端に当接した状態に維持されて操作係合部材141,241の係合面部41kと受部材151,251の受面部51dとが互いに対向した状態とならない状態が生じ得る。しかしながら、上述の状態が発生したとしても、網戸30をさらに右枠材13に近接する方向(
図14及び
図15においては図の右側))に移動させれば、
図14(b)及び
図15(b)に示すように、操作係合部材141,241の先端部と受側突出部51fの上端との当接状態が解除され、引張コイルバネ46や圧縮コイルバネ54のバネ力によって操作係合部材141,241及び受部材151,251が相互に近接する方向に移動することになり、操作係合部材141,241の係合面部41kと受部材151,251の受面部51dとが互いに対向した状態となる。従って、この状態からは、右枠材13に対して網戸30を離隔するように移動させれば、
図14(c)及び
図15(c)に示すように、操作係合部材141,241の係合面部41kと受部材151,251の受面部51dとが係合状態となって網戸30の移動を制限することができる。
【0040】
しかも、この操作係合部材141,241の係合面部41kと受部材151,251の受面部51dとの係合状態においては、係合面部41kの先端部に設けた係合側突出部41nと受面部51dの先端部に設けた受側突出部51fとが互いに乗り越えた位置となる。換言すれば、係合面部41k及び受面部51dは、互いに対向した場合に、個々の基端部よりも相手側に突出した状態で互いに係合している。従って、
図14(d)及び
図15(d)に示すように、網戸30が時計回りに回転して傾斜姿勢となった場合にも、操作係合部材141,241の係合面部41kと、受部材151,251の受面部51dとが係合状態を維持することになり、網戸30の移動が制限された状態を維持することができる。係合面部41kと受面部51dとの係合状態を解除する場合には、網戸30を一旦右枠材13に近接させ、
図14(b)及び
図15(b)に示す状態に戻した後に、操作ベースを介して操作係合部材141,241を上方に移動させれば良い。
【0041】
また、上述した実施の形態1、変形例1、変形例2では、いずれも係合面部41kに係合側突出部41nを設けるとともに、受面部51dに受側突出部51fを設けることによって、それぞれの先端部側を基端部側よりも相手側に突出させるようにしているが、本発明はこれらに限定されない。例えば
図16に示す変形例3のように、操作係合部材341の下方係合突片部341a及び受部材351の受突部351aにそれぞれ右枠材13や右框材34の延在方向Bに対して傾斜する当接面341b,351bを設けて係合面部341c及び受面部351cを構成するようにしても良い。当接面341b,351bの傾斜方向は、互いに対向した場合に、先端側に向けて漸次相手側に突出するように構成したものである。変形例3においては、係合面部341cの当接面341b及び受面部351cの当接面351bは、それぞれ同じ傾斜角度となるように形成してある。
【0042】
この変形例3の移動制限装置を備える建具では、引張コイルバネ46や圧縮コイルバネ54のバネ力により操作係合部材341及び受部材351が互いに近接する方向に移動すれば、
図16(b)に示すように、操作係合部材341の係合面部341cと受部材351の受面部351cとが互いに対向した状態となる。従って、この状態からは、右枠材13に対して網戸30を離隔するように移動させた場合にも、操作係合部材341の係合面部341cと、受部材351の受面部351cとが係合状態を維持することになり、網戸30の移動が制限される。
【0043】
さらに、
図16(c)に示すように、枠体10に対して網戸30が時計回りに回転して傾斜姿勢となった場合にも、予め傾斜した受部材351の当接面351bにあっては、先端側が基端側を越えて内周側に位置するおそれがない。これにより、枠体10に対して網戸30が傾斜姿勢となった場合にも、網戸30に加えた操作力によって操作係合部材341及び受部材351を相互に離隔させる方向に力が生じることはなく、両者が係合状態を維持することになり、網戸30の移動が制限されることになる。
【0044】
(実施の形態2)
変形例3では、係合面部341c及び受面部351cの双方に当接面341b,351bを設けるようにしているが、係合面部の先端部側及び受面部の先端部側の少なくとも一方に、先端側に向けて漸次相手側に突出するように傾斜した当接面を設けるようにしても同様の作用効果を奏することが可能である。
【0045】
すなわち、
図17に示す実施の形態2では、受部材451の受面部451aにのみ、右框材34の延在方向Bに対して傾斜する当接面451bを設けるようにしている。当接面451bの傾斜方向は、変形例3と同じである。操作係合部材441の係合面部441aには、鉛直方向に沿った係合面441bが設けてある。その他の構成については実施の形態1と同様であり、同一の符号が付してある。
【0046】
上記のように構成した移動制限装置を備える建具では、引張コイルバネ46や圧縮コイルバネ54のバネ力により操作係合部材441及び受部材451が互いに近接する方向に移動すれば、
図17(b)に示すように、操作係合部材441の係合面部441aと受部材451の受面部451aとが互いに対向した状態となる。従って、この状態からは、右枠材13に対して網戸30を離隔するように移動させた場合にも、操作係合部材441の係合面部441aと、受部材451の受面部451aとが係合状態を維持することになり、網戸30の移動が制限される。
【0047】
さらに、枠体10に対して網戸30が時計回りに回転して傾斜姿勢となった場合にも、予め傾斜した受部材451の当接面451bにあっては、
図17(c)に示すように、その延在方向が鉛直に近づくことになり、鉛直方向に沿った係合面441bとの当接面451bが増えることになる。これにより、操作係合部材441の係合面部441aと、受部材451の受面部451aとが係合状態を維持することになり、網戸30の移動が制限されることになる。
【0048】
なお、上述した実施の形態1、変形例1~変形例3、実施の形態2では、いずれも障子として網戸30を例示しているが、必ずしも網戸30に限定されず、横枠11の延在方向に沿って移動するものであれば、その他の障子と枠体10間にも適用することが可能である。また、室内側から見て右側の縦枠13との間に移動制限装置を設けるようにしているが、左側の縦枠12との間に移動制限装置を設けてももちろん良い。さらに、操作係合部材及び受部材の双方が枠材及び框材に対してそれぞれの延在方向Bに移動可能に配設してあるが、操作係合部材及び受部材のいずれか一方のみが移動可能であれば十分である。この場合、付勢部材は移動可能となる部材にのみ設ければ良いのはいうまでもない。またさらに、受部材として保護キャップを設けたものを例示しているが、保護キャップは必ずしも設ける必要はない。
【0049】
以上のように、本発明に係る移動制限装置は、枠体を構成する枠材及び前記枠体に対して移動可能に配設された障子を構成する框材のいずれか一方に取り付けられる係合部材と、前記枠材及び前記框材のいずれか他方に取り付けられる受部材とを備え、前記係合部材の係合面部と、前記受部材の受面部とを互いに係合させることにより、前記枠体に対する前記障子の移動を制限する移動制限装置であって、前記係合部材及び前記受部材は、前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って相対的に移動可能となるように配設され、前記係合面部の先端部側及び前記受面部の先端部側には、個々の基端部側よりも相手側に突出した部分がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、係合面部の先端部及び受面部の先端部が、個々の基端部よりも相手側に突出した状態で互いに係合しているため、枠材に対して框材が傾斜した状態となった場合にも、係合面部と受面部との係合状態が維持されることになり、障子が移動する事態を防止することが可能となる。
【0050】
また本発明は、上述した移動制限装置において、前記係合面部には、係合面及び前記係合面よりも先端部側において相手側に向けて突出する突出部が設けられ、前記受面部には、受面及び前記受面よりも先端部側において相手側に向けて突出する突出部が設けられ、前記係合面部の突出部が前記受面部の受面に対向した状態で前記係合面部と前記受面部とが互いに係合されることを特徴としている。
この発明によれば、係合面部の先端部に設けた突出部と受面部の先端部に設けた突出部とが互いに乗り越えた位置で係合しているため、枠材に対して框材が傾斜した状態となった場合にも、係合面部と受面部との係合状態が維持されることになり、障子が移動する事態を防止することが可能となる。
【0051】
また本発明は、上述した移動制限装置において、前記係合面部の突出部及び前記受面部の突出部の少なくとも一方には、先端側に導入ガイド面が設けられ、前記導入ガイド面は、前記係合部材及び前記受部材が前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って互いに近接する方向に移動した場合に相手側に当接し、前記係合面部及び前記受面部が互いに離隔する方向に向けて前記係合部材及び前記受部材を相対移動させるように傾斜していることを特徴としている。
また本発明は、上述した移動制限装置において、前記枠材及び前記框材は、それぞれが上下方向に沿って延在するものであり、前記係合面部は前記係合部材から下方に向けて突出するように設けられ、前記受面部は前記受部材から上方に向けて突出するように設けられており、前記導入ガイド面は、前記受面部の突出部において上方となる部分に設けられ、下方に向けて漸次突出するように傾斜していることを特徴としている。
これらの発明によれば、導入ガイド面の傾斜作用により、係合部材の突出部及び受部材の突出部が相手側の突出部を乗り越えて基端部側に配置され易くなる。
【0052】
また本発明は、上述した移動制限装置において、前記係合面部の突出部及び前記受面部の突出部の少なくとも一方には、基端側に解除ガイド面が設けられ、前記解除ガイド面は、前記係合面部と前記受面部とが互いに係合された状態から前記係合部材及び前記受部材が前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って互いに離隔する方向に移動した場合に相手側に当接し、前記係合部材及び前記受部材を相互間隔が広がる方向に向けて相対移動させるように傾斜していることを特徴としている。
また本発明は、上述した移動制限装置において、前記枠材及び前記框材は、それぞれが上下方向に沿って延在するものであり、前記係合面部は前記係合部材から下方に向けて突出するように設けられ、前記受面部は前記受部材から上方に向けて突出するように設けられており、前記解除ガイド面は、前記係合面部の突出部において上方となる部分及び前記受面部の突出部において下方となる部分にそれぞれ設けられ、前記係合面部の解除ガイド面は、下方に向けて漸次突出するように傾斜し、前記受面部の解除ガイド面は、上方に向けて漸次突出するように傾斜していることを特徴としている。
これらの発明によれば、解除ガイド面の傾斜作用により、係合部材と受部材との係合状態を解除する際の操作が容易となる。
【0053】
また本発明は、上述した移動制限装置において、前記係合面部及び前記受面部には、それぞれ先端側に向けて漸次相手側に突出するように、前記枠材及び前記框材の延在方向に対して傾斜した当接面が設けられ、前記係合面部及び前記受面部は、前記当接面を互いに当接した状態で相互に係合されることを特徴としている。
この発明によれば、当接面が傾斜しているため、枠体に対して障子が傾斜姿勢となった場合にも、係合面部と受面部との係合状態が解除され難くなり、障子が移動する事態を防止することが可能となる。
【0054】
また本発明は、上述した移動制限装置において、前記係合部材及び前記受部材の少なくとも一方には、これら係合部材及び受部材を前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って互いに近接させる方向に付勢する付勢部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、係合部材及び受部材を互いに係合させる際に操作する必要がなくなり、利便性の点で有利となる。
【0055】
また本発明に係る移動制限装置は、枠体を構成する枠材及び前記枠体に対して移動可能に配設された障子を構成する框材のいずれか一方に取り付けられる係合部材と、前記枠材及び前記框材のいずれか他方に取り付けられる受部材とを備え、前記係合部材の係合面部と、前記受部材の受面部とを互いに係合させることにより、前記枠体に対する前記障子の移動を制限する移動制限装置であって、前記係合部材及び前記受部材は、前記枠材及び前記框材の延在方向に沿って相対的に移動可能となるように配設され、前記係合面部の先端部側及び前記受面部の先端部側の少なくとも一方には、先端側に向けて漸次相手側に突出するように、前記枠材及び前記框材の延在方向に対して傾斜した当接面が設けられ、前記係合面部及び前記受面部は、前記当接面を相手側に当接した状態で相互に係合されることを特徴としている。
この発明によれば、係合面部の先端部及び受面部の先端部の少なくとも一方が、基端部よりも相手側に突出するように傾斜しているため、枠材に対して框材が傾斜した状態となった場合にも、係合面部と受面部との係合状態が維持されることになり、網戸が不用意に移動する事態を防止することが可能となる。
【0056】
また本発明に係る建具は、枠体を構成する枠材と、枠体に対して移動可能に配設された網戸を構成する框材との間に、上述した移動制限装置が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、係合面部の先端部及び受面部の先端部が、個々の基端部よりも相手側に突出した状態で互いに係合しているため、枠材に対して網戸の框材が傾斜した状態となった場合にも、係合面部と受面部との係合状態が維持されることになり、網戸が不用意に移動する事態を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 移動制限装置、10 枠体、13 右枠材、30 網戸、34 右框材、41,141,241,341,441 操作係合部材、41k,341c,441a 係合面部、41m,441b 係合面、41n 係合側突出部、41p 係合側解除ガイド面、46 引張コイルバネ、51,151,251,351,451 受部材、51d,351c,451a 受面部、51f 受側突出部、51e 受面、51g 導入ガイド面、51h 受側解除ガイド面、54 圧縮コイルバネ、341b,351b,451b 当接面