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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099182
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】グレモンハンドル
(51)【国際特許分類】
   E05C 1/06 20060101AFI20220627BHJP
   E05B 1/00 20060101ALI20220627BHJP
   E06B 3/36 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
E05C1/06 B
E05B1/00 311H
E06B3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213008
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】深谷 義輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 瑶平
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014AA01
2E014DB03
(57)【要約】
【課題】操作感が向上したグレモンハンドルを提供すること。
【解決手段】枠体3と、枠体3に吊元を軸として回動可能に支持される障子2と、を備える建具に設けられハンドル部11、12を有するグレモンハンドル1であって、ハンドル部12を操作するための操作力の上下限比が0.7以上であるグレモンハンドル1である。ハンドル部12を操作するための操作力のうちの通常操作力の平均値は、0.35N・m以上である。また、ハンドル部12を操作するための操作力の上下限差が0.45N・m以下である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、前記枠体に吊元を軸として回動可能に支持される障子と、を備える建具に設けられハンドル部を有するグレモンハンドルであって、
前記ハンドル部を操作するための操作力の上下限比が0.7以上であるグレモンハンドル。
【請求項2】
前記ハンドル部を操作するための操作力のうちの通常操作力の平均値は、0.35N・m以上である請求項1に記載のグレモンハンドル。
【請求項3】
前記ハンドル部を操作するための操作力の上下限差が0.45N・m以下である請求項1又は請求項2に記載のグレモンハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グレモンハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハンドル部を回転させることにより、施錠/解錠を行うグレモンハンドルが知られている(例えば、特許文献1参照)。グレモンハンドルは、縦辷り出し窓や、横滑り出し窓などにおいては、戸先框に設けられる。グレモンハンドル及びスライドバーと連動する規制ピンが、戸先框側の縦枠に設けられた係止部に係止されることで施錠される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-159194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グレモンハンドルを操作しているときに、ハンドル部の回転運動をスライドバーの上下運動に変換する際や、障子に設けられたグレモンハンドルの規制ピンが、枠体に固定された金具の切り欠き部により構成される係止部にはまる際や、ハンドル部の操作の始点及び終点を、ハンドル部を操作する操作者に認識させるためのクリックボールの解除の際に、ハンドル部の操作力に大きな変動が生じ、この結果、操作者は、操作感が悪いと感じる。
【0005】
本開示は、操作感が向上したグレモンハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、枠体と、前記枠体に吊元を軸として回動可能に支持される障子と、を備える建具に設けられハンドル部を有するグレモンハンドルであって、前記ハンドル部を操作するための操作力の上下限比が0.7以上であるグレモンハンドルに関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態のグレモンハンドルにおいて施錠された様子を示す上方斜視図である。
図2】本実施形態のグレモンハンドルにおいて解錠された様子を示す上方斜視図である。
図3】本実施形態のグレモンハンドルを示す分解斜視図である。
図4】本実施形態のグレモンハンドルのスライダーベースに対する中央ハンドル部の駆動部材の動きを説明するための図である。
図5】本実施形態のグレモンハンドルのボールが貫通孔に係合している様子を示す要部断面図である。
図6】本実施形態のグレモンハンドルのボールが凹部に係合している様子を示す要部断面図である。
図7】本実施形態のグレモンハンドルの中央ハンドル部において粘性の高いグリースが配置されている様子を示す要部断面図である。
図8】本実施形態のグレモンハンドルのピンが係合する金具を示す図である。
図9】本実施形態のグレモンハンドルにおける、中央ハンドル部の回転角度に対する中央ハンドル部を操作する操作力を示すグラフである。
図10】本実施形態のグレモンハンドルの効果を試す試験を行う装置の構成を説明する図である。
図11】本実施形態のグレモンハンドルのトルク値の求め方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、グレモンハンドル1において施錠された様子を示す上方斜視図である。図2は、グレモンハンドル1において解錠された様子を示す上方斜視図である。
図1に示すように、グレモンハンドル1は、建具としてのサッシの枠体に対して開閉する障子の戸先側の縦框2に設けられている。グレモンハンドル1のハンドル部把持部12を回動させて、図1の状態とすることで施錠された状態となり、図2の状態とすることで解錠された状態となる。
【0009】
グレモンハンドル1は、図3等に示すように、中央ハンドル部11と、ハンドル部把持部12と、スライダーベース13と、第1ベースフレーム14と、第2ベースフレーム15と、ハンドルベース16と、を備えている。図3は、グレモンハンドル1を示す分解斜視図である。図4は、グレモンハンドル1のスライダーベース13に対する中央ハンドル部12の駆動部材113の動きを説明するための図である。図5は、グレモンハンドル1のボール301が貫通孔153に係合している様子を示す要部断面図である。図6は、グレモンハンドル1のボール301が凹部2261に係合している様子を示す要部断面図である。図7は、グレモンハンドル1の中央ハンドル部12において粘性の高いグリースGが配置されている様子を示す要部断面図である。図8は、グレモンハンドル1のピンが係合する金具5を示す図である。
【0010】
ハンドルベース16は、縦框2に形成された上下方向に延びる中空部の開口に固定されている。ハンドルベース16は、上下方向に長い長方形状に形成されており、上下方向における中央部には、長方形状の貫通孔161が形成されている。貫通孔161には、中央ハンドル部11が貫通している。
【0011】
中央ハンドル部11は、円筒形状に形成された円筒形状中央部111を有している。円筒形状中央部111には、同軸的な位置値関係で、中央ハンドル部11の中央部分の外郭を構成する部分が一体成形されており、その部分から一方側へ延びる把持部被接続部112と、当該一方側に対する他方側へ延びて先端部に円柱形状の駆動部材113を有する他方側の部分と、が一体成形されて構成されている。把持部被接続部112の端面には、ハンドル部把持部12が中央ハンドル部11と一体で、円筒形状中央部111の軸心を中心として回転可能に固定されている。
【0012】
中央ハンドル部11の円筒形状中央部111と同軸的な位置関係を有する円筒形状中央部111の周囲の中央ハンドル部11の部分には、円筒形状中央部111の軸心を中心として90°の位置関係で配置された一対の貫通孔が形成されており、当該貫通孔には、図3図5に示すように、ボール31と、圧縮バネ302と、ネジ303とにより構成されるクリックボールが収容されている。ボール301の一部は、図5に示すように、当該貫通孔から第2ベースフレーム15の方向かって突出している。
【0013】
また、中央ハンドル部11の中心である円筒形状中央部111から駆動部材113へ向かう方向に対して、図6の反時計回り方向に135°程度回転させた位置には、貫通孔が形成されており、当該貫通孔には、図6に示すように、ボール31と、圧縮バネ302と、ネジ303とにより構成されるクリックボールが収容されている。ボール301の一部は、中央ハンドル部11へ向かって突出している。
【0014】
第1ベースフレーム14は、第1ベースフレーム14に形成された貫通孔にネジ235(図3参照)が貫通してハンドルベース16に螺合することにより、ハンドルベース16に固定されている。第2ベースフレーム15は、第2ベースフレーム15に形成された貫通孔にネジ235(図3参照)が貫通してハンドルベース16に螺合することにより、ハンドルベース16に固定されている。中央ハンドル部11は、第1ベースフレーム14と第2ベースフレーム15とにより挟まれるようにして、ハンドルベース16と、第1ベースフレーム14と、第2ベースフレーム15とにより囲まれる空間に収容されている。
【0015】
第2ベースフレーム15には、円筒形状中央部111の軸心に平行に圧縮バネ302が延びるクリックボールを構成するボール301(図3における上側の2つのクリックボールのボール301)が係合する貫通孔153が形成されている(図5参照)。ボール301が係合する貫通孔153の開口は、小さく構成されており、貫通孔153の開口からボール301は容易に外れやすく構成されている。これにより、ハンドル部把持部12を回動操作しているときに、ボール301が貫通孔153の開口から外れるときの操作力が抑えられている。
【0016】
また、第2ベースフレーム15には、第2ベースフレーム15に形成された孔部に、ピン部材211、212(図3参照)の一端部が挿入されて固定されている。第2ベースフレーム15に固定されたピン部材211は、シムリング221を介して、円筒形状中央部111の内周面により囲まれる空間に、円筒形状中央部111と同軸的に挿入されており、中央ハンドル部11を第2ベースフレーム15に対して回動可能に支持している。ピン部材211の先端部には、第1ベースフレーム14に形成された貫通孔を貫通するネジ231(図3参照)が螺合している。また、ピン部材212の先端部には、第1ベースフレーム14に形成された貫通孔を貫通するネジ235が螺合している。
【0017】
また、円筒形状中央部111は、それぞれ環状に形成された、シムリング222、ウェブワッシャー223、シムリング224、支持円盤部225、回動規制円筒部226、をこの順で貫通している。支持円盤部225は、環状の板状部材により構成されている。支持円盤部225の、ウェブワッシャー223の側に対する反対の側には、支持円盤部225の周方向に等間隔で配置された3つの円柱部が、ウェブワッシャー223の側とは反対の側へ突出しており、その先端部は、回動規制円筒部226に当接している。
【0018】
図7においてGで示される部分、即ち、シムリング222、ウェブワッシャー223、シムリング224、支持円盤部225、回動規制円筒部226、が配置されている部分Gには、粘性の高いグリースが充填される。これにより、中央ハンドル部11と一体でハンドル部把持部12を通常操作力で回動操作しているときに、グリースの粘性により回動しにくくされており、中央ハンドル部11と一体でハンドル部把持部12を通常操作力で回動操作しているときの当該通常操作力として、より強い力が必要な構成とされる。
【0019】
ここで、通常操作力とは、図1に示すハンドル部把持部12が施錠の状態の位置から、図2に示すハンドル部把持部12が解錠の状態の位置にいたるまで回動する間の、図1に示すハンドル部把持部12が施錠の状態の位置から30°以上50°以下の範囲で回動されているときの操作力を意味する。この範囲内においては、クリックボールのボール301が後述の凹部2261、2262に対して係合したり離脱したりしておらず、また、クリックボールのボール301が第2ベースフレーム15の貫通孔153に対して、係合したり離脱したりしない等、ハンドル部把持部12及び中央ハンドル部11を一体で回動させるために必要な操作力が大きく変化しない。
【0020】
図3に示すように、回動規制円筒部226の周面には、2つの凹部2261、2262が形成されている。凹部2261、2262は、回動規制円筒部226の周方向において、回動規制円筒部226の軸心を中心として90°の位置関係で配置されている。凹部2261、2262は、回動規制円筒部226の軸心に平行な方向視では、円弧形状に形成されている。
【0021】
凹部2261、2262には、円筒形状中央部111の軸心に直交する方向に圧縮バネ302が延びるクリックボールを構成するボール301(図3における一番下のクリックボールのボール301)が係合する(図6参照)。ボール301が係合する凹部2261、2262の開口は、小さく構成されており、凹部2261、2262の開口からボール301は容易に外れやすく構成されている。これにより、ハンドル部把持部12を回動操作しているときに、ボール301が貫通孔153の開口から外れるときの操作力が抑えられている。
【0022】
回動規制円筒部226の軸方向における端面には、回動規制円筒部226の周方向に等間隔で6つの穴部が形成されており、6つの穴部には、3つの円柱状の樹脂製のスペーサ227(図3参照)と、第1ベースフレーム14に形成された貫通孔を貫通するイモネジ232(図3参照)とが交互に配置されている。イモネジ232は、当該貫通孔を貫通し、イモネジ232の先端は、回動規制円筒部226に当接している。
【0023】
イモネジ232を締め付けることにより、シムリング222、ウェブワッシャー223、シムリング224、支持円盤部225、回動規制円筒部226、中央ハンドル部11、及び、シムリング221を、第2ベースフレーム15に押し付けている。このため、中央ハンドル部11と一体でハンドル部把持部12を通常操作力で回動操作しているときに、当該押し付けている力により回動しにくくされており、中央ハンドル部11と一体でハンドル部把持部12を通常操作力で回動操作しているときの当該通常操作力として、より強い力が必要な構成とされる。
【0024】
スペーサ227は、回動規制円筒部226と第1ベースフレーム14とにそれぞれ当接しており、これにより、シムリング222、ウェブワッシャー223、シムリング224、中央ハンドル部11、及び、シムリング221を、第2ベースフレーム15に押し付けている。このため、中央ハンドル部11と一体でハンドル部把持部12を通常操作力で回動操作しているときに、当該押し付けている力により、回動しにくくされており、中央ハンドル部11と一体でハンドル部把持部12を通常操作力で回動操作しているときの、当該通常操作力として、より強い力が必要な構成とされる。
【0025】
スライダーベース13には、第1ベースフレーム14に形成された上下方向に長い長孔を貫通するネジ235(図3参照)の先端が螺合している。これにより、スライダーベース13は、第1ベースフレーム14に対して、上下方向に摺動可能である。スライダーベース13の中央ハンドル部11側の部分には、図6に示すように、中央ハンドル部11から離れる方向に延びる長孔部133が形成されている。長孔部133は、図4に示すように、ハンドル部把持部12を回動させるときに、駆動部材113が長孔部133内において移動可能である。これにより、中央ハンドル部11及びハンドル部把持部12の回動を、スライダーベース13の直線運動に変換する際に、ハンドル部把持部12を回動させるのに必要な操作力が大きく変化しないようにすることが可能である。また、この部分において遊びが発生してガタつくことを抑えることが可能である。
【0026】
スライダーベース13には、図示しないピンが設けられており、ピンは、図1に示すように、グレモンハンドル1が施錠されている状態のときに、図8に示すように、枠体を構成する縦枠3に固定された係止部としてのフック状の金具5に係合する。具体的には、ピンの先端部が金具5に形成されたフック状の開口6に図8の右側から左側へ入り、更に上側へピンの先端部がスライダーベース13と一体で移動することにより、施錠状態となる。
【0027】
縦枠3には、図8に示すように、グレモンハンドル1が施錠されている状態のときに、縦框2に当接して押圧されるパッキン4が設けられている。パッキン4としては、柔らかな素材のものが用いられており、本実施形態では、ソリッド形状のエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が用いられる。これにより、中央ハンドル部11及びハンドル部把持部12の回動により、ピンが金具5に係合して縦框2をパッキン4に押圧する際に必要なハンドル部把持部12の操作力を、パッキン4の柔らかさより、低く抑えることが可能となり、この際の操作力と通常操作力との差が大きくなることを抑えることが可能となる。
【0028】
グレモンハンドル1においては、ハンドル部としてのハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限比が0.7以上である。即ち、図1に示すようにハンドル部把持部12が施錠の状態の位置から、図2に示すようにハンドル部把持部12が解錠の状態の位置にいたるまで回動する間に、最も強い操作力が必要とされたときの操作力を、操作力の上限とし、最も弱い操作力が必要とされたときの操作力を、操作力の下限としたときの、上限の値と下限の値との比は、0.7以上である。
【0029】
また、グレモンハンドル1においては、ハンドル部としてのハンドル部把持部12を操作するための操作力のうちの通常操作力の平均値は、前述のように、グリースの粘性の高さや、イモネジ232による押し付けにより、0.35N・m以上である。また、グレモンハンドル1においては、ハンドル部としてのハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限差は、0.45N・m以下である。即ち、図1に示すようにハンドル部把持部12が施錠の状態の位置から、図2に示すようにハンドル部把持部12が解錠の状態の位置にいたるまで回動する間に、最も強い操作力が必要とされたときの操作力を、操作力の上限とし、最も弱い操作力が必要とされたときの操作力を、操作力の下限としたときの、上限の値と下限の値との差は、0.45N・m以下である。
【0030】
次に、上記のような実施形態によるグレモンハンドル1による効果を試す試験を行った。
試験においては、図10に示す治具を用いて、グレモンハンドルの操作力に必要な操作力を測定するとともに、当該操作をした16人の被験者から感想を聞き、5点満点で採点をしてもらうことにより行った。図10は、グレモンハンドルの効果を試す試験を行う装置の構成を説明する図である。
【0031】
試験において用いたグレモンハンドルとしては、比較例1として、図9のグラフで示す試験体Aと、比較例2として、図9のグラフで示す試験体Dと、比較例3として、図9のグラフで示す試験体Eと、を用意した。また、本実施例1として、図9のグラフで示す試験体Bと、本実施例2として、図9のグラフで示す試験体Cと、のグレモンハンドルを用意した。図9は、グレモンハンドルにおける、中央ハンドル部の回転角度に対する中央ハンドル部を操作する操作力を示すグラフである。
【0032】
比較例は、いずれもハンドル部としてのハンドル部把持部を操作するための操作力の上下限比が0.7未満である。これに対して、本実施例は、いずれも、グレモンハンドルにおいて、ハンドル部としてのハンドル部把持部を操作するための操作力の上下限比が0.7以上である。本実施例、比較例のいずれも、グレモンハンドルを構成する部材は同じであり、イモネジ232の締め付け具合や、グリースの粘性を調整することにより、ハンドル部把持部を操作するために必要とされる操作力が異なる。このため、ハンドル部把持部を操作するために必要とされる操作力の上限値、下限値が異なり、また、通常操作力の値が異なる。
【0033】
また、被験者からの感想の項目としては、「ぎこちない-なめらか」、「ぐらつく-ぐらつかない」、「うるさい-静か」、「ノイズがある-ノイズがない」、「不安定である-安定している」、「精度が悪い-精度が良い」、「操作しにくい-操作しやすい」、「操作感が悪い-操作感が良い」、「嫌い-好き」の各項目について、5点満点で採点してもらい、その結果を集計した。
【0034】
また、試験に用いた治具については、図10に示すように、グレモンハンドルのハンドル部把持部12に対して2枚の板状部材908、909で、蝶番906の一端側部分9062を挟み、蝶番906の他方側部分9061に四角柱形状の角柱905を固定し、被験者が、ハンドル部把持部12と共に角柱905を把持して回動させることを可能とする構成とした。
【0035】
角柱905とハンドル部把持部12との間には、ロードセル901を配置し、また、中央ハンドル部11に接続されているハンドル部把持部12の基部の部分には、加速度計及びジャイロセンサ902を固定した。これを用いて、被験者にハンドル部把持部12に及び角柱905を把持させて回転させ、そのときに必要とされた操作力をロードセル901により測定するとともに、共和電業製の数値解析ソフト「DAS-200A」を使用して、ジャイロセンサで測定した角速度を時間で積分することで、回転角度を算出した。ロードセル901としては、共和電業製LMA-A-50Nを用い、加速度計としては、共和電業製の三軸加速度計LMA-A-5を用い、ジャイロセンサとしては、共和電業製の三軸ジャイロセンサGSAT-A-900を用いた。
【0036】
また、ロードセル901により測定した操作力の値については、単位をN(ニュートン)からトルク(N・m)へ変換して求めた。変換の方法については、以下のとおりである。
【0037】
円筒形状中央部111の軸心から作用点までの最短距離を求めると、104mm(図11参照)である。円筒形状中央部111の軸心から作用点までの最短距離を示す仮想直線と、作用点におけるハンドル部把持部12の部分の長手方向と、のなす角は23.12°である。これにより弱まる係数cos(23.12°)は、
cos(23.12°)=0.919684
であり、求めるトルクは、
トルク=操作力×0.92×0.104(N・m)
により得られる。試験結果は、表1A、表1B、表2、及び、図9に示すとおりである。図11は、グレモンハンドルのトルク値の求め方を説明する図である。
【0038】
【表1A】

【0039】
【表1B】



【0040】
【表2】

【0041】
表1A、表1B、及び、これらの表の結果をまとめた表2に示すとおり、ハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限比が0.7以上の試験体B(本実施例1)、試験体C(本実施例2)では、被験者からの感想の各項目において評価の点数が高く、合格の項目が多く、総合的な評価として「〇」を得ている。
【0042】
これに対してハンドル部把持部を操作するための操作力の上下限比が0.7未満の試験体A(比較例1)、試験体D(比較例2)、試験体E(比較例3)では、被験者からの感想の各項目において評価の点数が低く、合格の項目が少なく、総合的な評価として「△」又は「×」を得ている。以上より、ハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限比が0.7以上のグレモンハンドル1では、良好な操作性を得ることができることがわかる。
【0043】
また、グレモンハンドル1において、ハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限比が0.7以上となるためには、ハンドル部把持部12を操作するための操作力の値が下限値となる通常操作力が低すぎないことが好ましい。図9のグラフより、試験体Bでは、通常操作力の平均値は、0.35N・m以上であり、この値により良好な結果を得ることができたことが分かる。なお、良好な結果を得ることができた試験体C(図9のグラフ参照)においても、通常操作力の平均値は、0.35N・m以上である。
【0044】
また、グレモンハンドル1において、ハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限比が0.7以上となるためには、ハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限差が0.45N・m以下であることが好ましい。図9のグラフより、試験体C(図9のグラフ参照)では、ハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限差が0.45N・m以下であり、この値により良好な結果を得ることができたことが分かる。なお、良好な結果を得ることができた試験体Bにおいても、ハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限差が0.45N・m以下である。
【0045】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態においては、ハンドル部を構成するハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限比が0.7以上である。これにより、ハンドル部把持部12を操作しているときに、ハンドル部把持部12の操作力に大きな変動が生じることを抑えることができ、この結果、操作感が向上したグレモンハンドル1とすることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態においては、ハンドル部把持部12を操作するための操作力のうちの通常操作力の平均値は、0.35N・m以上である。これにより、ハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限比を、容易に0.7以上とすることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態においては、ハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限差が0.45N・m以下である。これにより、ハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限比を、容易に0.7以上とすることが可能となる。
【0048】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。例えば、本実施形態においては、ハンドル部を構成するハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限比を0.7以上とするために、イモネジ232を締め付けたり、粘性の高いグリースを用いたりして、ハンドル部把持部12の通常操作力を高めたり、クリックボールのボール301が、凹部2261、2262の開口や貫通孔153から容易に外れやすくしたり、パッキン4を柔らかくしたりして、これらに関する操作力と通常操作力との差が大きくなることを抑えたりしたが、これらの構成に限定されない。これらの構成の全てを用いずに、これらのうちの少なくともいずれか1つを用いればよく、また、ハンドル部を構成するハンドル部把持部12を操作するための操作力の上下限比を0.7以上とするために、他の構成を用いてもよい。
また、グレモンハンドルの構成は、本実施形態によるグレモンハンドル1の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0049】
1…グレモンハンドル
2…縦框
3…縦枠
11…中央ハンドル部
12…ハンドル部把持部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11