(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099202
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20220627BHJP
B01J 7/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B60R21/264
B01J7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213030
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】鹿浦 健司
【テーマコード(参考)】
3D054
4G068
【Fターム(参考)】
3D054AA13
3D054BB01
3D054DD04
3D054DD11
3D054DD19
3D054DD21
3D054DD28
3D054FF15
4G068DA08
4G068DB12
4G068DD11
(57)【要約】
【課題】従来よりも簡便な構成であるにもかかわらず、出力および内圧の制御を従来と同等以上に容易に行うことができるガス発生器を得る。
【解決手段】ガス発生器100は、軸方向の両端が閉塞された短尺略円筒状に形成され、下部側シェル10および上部側シェル20により構成されるハウジングを有する。このハウジングの内部に設けられた収容空間には、例えば樹脂材料により形成され且つ上記ハウジング内に配設される部分と当該ハウジング外に配設される部分とで一体的に構成される保持部36、仕切部材30、点火器40、ガス発生剤61、シールテープ24、およびフィルタ70等が収容されている。また、上記収容空間を仕切部材30によって軸方向に仕切ることによって、フィルタ室50が上部側シェル20側に形成され、ガス発生剤収容室60(燃焼室)が下部側シェル10側に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガス噴出口が配設されたディスク型のハウジングと、
前記ガス噴出口を前記ハウジングの内側において閉塞するシール状の閉塞部材と、
前記ハウジングの内部を仕切って、ガス発生剤が充填された燃焼室と、フィルタが設けられたフィルタ室とを形成している仕切部材と、
前記ガス発生剤を前記燃焼室内で燃焼させる点火部と、
を備え、
前記仕切部材には、
前記燃焼室と前記フィルタ室とを連通可能な複数の貫通孔と、
前記燃焼室側において初期状態で前記複数の貫通孔を閉塞し、前記ガス発生剤が燃焼してガスが発生した場合に前記ガスの圧力によって破断する破断部材と、
が設けられ、
前記フィルタが、前記ハウジングの内壁と前記仕切部材とに挟み込まれて前記フィルタ室内に固定されているものであり、
前記複数のガス噴出口が、前記フィルタ室と連通しており、前記燃焼室の内部で発生したガスを前記フィルタ室および前記フィルタを介して外部に噴出するものであることを特徴とするガス発生器。
【請求項2】
前記複数の貫通孔には、2種類以上の異なる径を有した孔が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記ハウジングが、溶接によって形成された接合部において接続された下部側シェルと上部側シェルとを有し、前記上部側シェルに前記複数のガス噴出口が配設された金属製のものであり、
前記接合部が形成されている前記下部側シェルの周壁部の一部と、前記周壁部の一部に対向する前記仕切部材との間に空間が形成された状態で、前記仕切部材の前記下部側シェル側の端部が、前記下部側シェルの内側に圧入または遊嵌されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記仕切部材が、
前記複数の貫通孔が中央部に形成された円盤状の第1部材と、
一端部が前記下部側シェルの内側に圧入または遊嵌されている筒状部材であって、前記第1部材の前記下部側シェル側に他端部が固定された第2部材と、
を含み、
前記第2部材において、前記他端部から前記接合部に対向する部分までの径が、前記他端部から前記接合部に対向する部分以外の径より小さい、または、
前記下部側シェルにおいて、少なくとも前記下部側シェルの前記周壁部の前記接合部に関わる部分から前記上部側シェル側の端部までの径が、少なくとも前記下部側シェルの底部から前記下部側シェルの前記周壁部の前記接合部に関わらない途中部分までの径よりも大きく形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員保護装置に組み込まれるガス発生器に関し、より特定的には、自動車のステアリングホイール等に装備されるエアバッグ装置に組み込まれるディスク型ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、エアバッグがクッションとなって乗員の体を受け止めるものである。ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時にコントロールユニットからの通電によって点火器を発火し、点火器において生じる火炎によりガス発生剤を燃焼させて多量のガスを瞬時に発生させ、これによりエアバッグを膨張および展開させる機器である。なお、エアバッグ装置は、たとえば自動車のステアリングホイールまたはインストゥルメントパネル等に装備される。
【0003】
このようなガス発生器には、種々の構造のものが存在するが、特にステアリングホイール等に装備される運転席側エアバッグ装置に好適に利用されるガス発生器として、いわゆるディスク型ガス発生器がある。一般に、ディスク型ガス発生器は、軸方向の端部が閉塞された短尺円筒状のハウジングを有し、ハウジングの周壁にガス噴出口が設けられるとともにハウジングの内部にガス発生剤や点火器、フィルタ等が収容されてなるものである。
【0004】
また、下記特許文献1におけるディスク型ガス発生器では、低温環境下における出力および内圧の制御を比較的容易に行うことを目的として、ガス噴出口を多段階開裂させるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1においては、ガス噴出口がエアバッグ内部と連通しているものであるので、当該エアバッグに合わせた設計のガス噴出口にする必要があるため、非常に複雑な設計が必要になる。
【0007】
そこで、本発明は、従来よりも簡便な構成であるにもかかわらず、出力および内圧の制御を従来と同等以上に容易に行うことができるガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 複数のガス噴出口が配設されたディスク型のハウジングと、前記ガス噴出口を前記ハウジングの内側において閉塞するシール状の閉塞部材と、前記ハウジングの内部を仕切って、ガス発生剤が充填された燃焼室と、フィルタが設けられたフィルタ室とを形成している仕切部材と、前記ガス発生剤を前記燃焼室内で燃焼させる点火部と、を備え、前記仕切部材には、前記燃焼室と前記フィルタ室とを連通可能な複数の貫通孔と、前記燃焼室側において初期状態で前記複数の貫通孔を閉塞し、前記ガス発生剤が燃焼してガスが発生した場合に前記ガスの圧力によって破断する破断部材と、が設けられ、前記フィルタが、前記ハウジングの内壁と前記仕切部材とに挟み込まれて前記フィルタ室内に固定されているものであり、前記複数のガス噴出口が、前記フィルタ室と連通しており、前記燃焼室の内部で発生したガスを前記フィルタ室および前記フィルタを介して外部に噴出するものであることを特徴とする。
【0009】
(2) 上記(1)のガス発生器においては、前記複数の貫通孔には、2種類以上の異なる径を有した孔が含まれていることが好ましい。
【0010】
(3) 上記(1)または(2)のガス発生器においては、前記ハウジングが、溶接によって形成された接合部において接続された下部側シェルと上部側シェルとを有し、前記上部側シェルに前記複数のガス噴出口が配設された金属製のものであり、前記接合部が形成されている前記下部側シェルの周壁部の一部と、前記周壁部の一部に対向する前記仕切部材との間に空間が形成された状態で、前記仕切部材の前記下部側シェル側の端部が、前記下部側シェルの内側に圧入または遊嵌されていることが好ましい。
【0011】
(4) 上記(3)のガス発生器においては、前記仕切部材が、前記複数の貫通孔が中央部に形成された円盤状の第1部材と、一端部が前記下部側シェルの内側に圧入または遊嵌されている筒状部材であって、前記第1部材の前記下部側シェル側に他端部が固定された第2部材と、
を含み、前記第2部材において、前記他端部から前記接合部に対向する部分までの径が、前記他端部から前記接合部に対向する部分以外の径より小さく形成されている、または、前記下部側シェルにおいて、少なくとも前記下部側シェルの前記周壁部の前記接合部に関わる部分から前記上部側シェル側の端部までの径が、少なくとも前記下部側シェルの底部から前記下部側シェルの前記周壁部の前記接合部に関わらない途中部分までの径よりも大きく形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来よりも簡便な構成であるにもかかわらず、出力および内圧の制御を従来と同等以上に容易に行うことができるガス発生器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガス発生器を示す断面図である。
【
図2】(a)が
図1のガス発生器に用いられる仕切部材の第1部材の平面図、(b)が(a)の矢視断面図、である。
【
図3】
図1のガス発生器の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るガス発生器について図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、ガス発生器の型の一例として、ディスク型のガス発生器について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、ガス発生器100は、軸方向の両端が閉塞された短尺略円筒状に形成され、下部側シェル(イニシエータシェル)10および上部側シェル(クロージャシェル)20により構成されるハウジングを有する。このハウジングの内部に設けられた収容空間には、例えば樹脂材料により形成され且つ上記ハウジング内に配設される部分と当該ハウジング外に配設される部分とで一体的に構成される保持部36、仕切部材30、点火器40、ガス発生剤61、シールテープ(閉塞部材)24、およびフィルタ70等が収容されている。また、上記収容空間を仕切部材30によって軸方向(
図1上下方向)に仕切ることによって、フィルタ室50が上部側シェル20側に形成され、ガス発生剤収容室60(燃焼室)が下部側シェル10側に形成されている。
【0016】
下部側シェル10および上部側シェル20は、圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品である。具体的には、下部側シェル10および上部側シェル20は、例えば上型および下型からなる一対の金型を用いて、圧延された一枚の金属製の板状部材を上下方向からプレスすることにより、図示するような形状に成形される。
【0017】
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによって上記ハウジングが構成される。下部側シェル10は底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は天板部21と周壁部22とを有している。すなわち、ハウジングの軸方向の各端部は、天板部21と底板部11とによって閉塞されている。なお、下部側シェル10と上部側シェル20との接合部26の接合には、例えば電子ビーム溶接、レーザー溶接、又は摩擦圧接等の方法が好適に利用できる。
【0018】
上部側シェル20は、周壁部22の下端から連続して外側に向けて突出した固定部25を有している。この固定部25は、ハウジングを外部の部材(図示略)に対して固定するための部位であり、これにより設置後にガス発生器100が固定部25を介して当該外部の部材によって支持されることになる。なお、上部側シェル20の厚みは、2.0mm以下であることが好ましいが、より好ましくは1.8mm以下である。
【0019】
また、下部側シェル10の底板部11の中央部には、天板部21側に向かって突出する突状筒部13が設けられている。これにより、底板部11の中央部には、突状筒部13の外壁によって窪み部14が形成される。突状筒部13は、金属製の下部側シェル10の一部であり、保持部36のうちハウジング内に配設された部分を介して点火器40が固定される部位である。突状筒部13は、有底略円筒状に形成されており、その天板部21側に位置する軸方向端部には、平面視で円形状の開口部15が設けられている。この開口部15は、点火器40の一対の鉄、アルミ、ステンレス鋼等の金属材料で構成された端子ピン42、43が挿通される部位である。端子ピン42、43は、開口部15を介して窪み部14からハウジング外側(下部側シェル10側)に向けて突出して配置されている。開口部15の大きさは、点火器40の最大外形部分である点火部の外形よりも小さくなっている。これにより、万一、保持部36に予期せぬ破損が生じた場合であっても、ハウジング内部の圧力上昇を受けて点火器40が開口部15を通過してハウジングの外部に飛び出てしまうことが防止される。下部側シェル10の厚みは、2.0mm以下であることが好ましいが、より好ましくは1.8mm以下である。なお、端子ピン42、43の固定方法については後述する。
【0020】
保持部36は、点火器40の端子ピン42、43を部分的に露出させた状態で保持すると共に、端子ピン42、43とコントロールユニット(図示略)とを電気的に接続するためのハーネスの雄型コネクタ(図示略)を接続するための雌型コネクタ部36aを有している。保持部36は例えば樹脂材料を用いたインサート成形によって形成される。詳しくは、下部側シェル10の開口部15を介して点火器40を差し込む。次に、下金型(図示略)で下部側シェル10を固定し、上金型(図示略)で点火器40を固定する。上金型から樹脂材料を流し込み、保持部36を形成する。
【0021】
点火器40は、保持部36に保持されることによりハウジング内に配置されている。点火器40は、火炎を発生するものであり、内部に設けられた点火部(図示せず)と、上述の端子ピン42、43と、を備えている。この端子ピン42、43は、点火器40のスクイブカップ(有底カップ部材)44内に設けられた金属製(鉄、アルミ、ステンレス鋼等の金属材料)の保持部材(アイレット)(図示せず)に直接又は間接的に保持されている。なお、点火部(図示せず)は、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬(図示せず)と当該点火薬を着火させるための抵抗体(ブリッジワイヤ)(図示せず)とを含んでいる。端子ピン42、43は、上記点火薬を着火させるため上記抵抗体を介して互いに接続されている。上記抵抗体は、端子ピン42、43の先端を連結するように取り付けられ、この抵抗体を取り囲むように又はこの抵抗体に近接するように上記点火薬が上記スクイブカップ44内に装填されている。上記抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、上記点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。
【0022】
衝突を検知した際には、端子ピン42、43を介して上記抵抗体に所定量の電流が流れるようになっている。上記抵抗体に電流が流れることにより、上記抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納している上記スクイブカップ44を破裂させる。上記抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、上記抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
【0023】
仕切部材30は、
図2に示した円盤状の第1部材31と、有底筒状の第2部材32と、を備えている。なお、仕切部材30を、第1部材31と第2部材32とに分離可能な構成としているので、第1部材31と第2部材32とを一体形成した仕切部材30とするよりも、ガス発生器100を組み立てやすくなっている。また、第1部材31と第2部材32とは、接触している箇所において、接着または溶着などがされていても、されていなくてもよい。この接着または溶着などがされていない場合、第1部材31は、フィルタ70と第2部材32とに挟み込まれた状態で固定される。また、第1部材31は、中央部31aと、接続部31bと、環状部31cと、突起部31dと、を有している。
【0024】
中央部31aには、
図1および
図2に示したように、フィルタ室50とガス発生剤収容室60とを連通可能な複数の貫通孔31a1、32a2が設けられている。なお、本実施形態において、これら複数の貫通孔は、
図2に示したように、2種類の異なる径の孔が含まれるものであるが、すべて同一の径であってもよいし、3種類以上の異なる径の孔が含まれるものであってもよい。接続部31bは、中央部31aの外周囲と環状部31cの内周囲とを接続するとともに、中央部31aと環状部31cとを階段状に形成する橋渡しをする部位である。突起部31dは、環状部31cの外周囲において上部側シェル20側に起立し、突出した部位であって、フィルタ70の位置決めに用いられる。
【0025】
第2部材32は、
図1に示したように、底部32aと筒状部32bと筒状部32cとを有している。底部32aの中央部には、第1部材31における中央部31aおよび接続部31bが嵌められる孔32a1が形成されている。また、底部32aの上部側シェル20側は、第1部材31の環状部31cの下部側シェル10側の面に接着または溶接などによって固定されている。筒状部32bは、底部32aの外周囲から下部側シェル10に起立した状態で、底部32aに接続されている。筒状部32cは、筒状部32bの下部側シェル10側の端部から拡径して形成されているとともに、下部側シェル10内に圧入または遊嵌されている。これにより、接合部26と対向する位置における筒状部32bと下部側シェル10の内壁との間には、空間Sが形成されている。この空間Sが形成されていることで、接合部26を溶接などによって形成する際に高熱となる場合に、ガス発生剤収容室60に対して断熱することができる。
【0026】
破断部材33は、初期状態において、複数の貫通孔31a1、32a2を閉塞するように、仕切部材30のガス発生剤収容室60側に設けられている。なお、ガス発生剤61と、複数の貫通孔31a1、32a2の径の大きさと、破断部材33の材質および厚みとを調整することによって、ガス発生剤収容室60の内圧の制御を行うことができる。ここで、ガス発生剤収容室60の内圧を制御すると、ガス発生剤61を安定して持続燃焼させることができる。また、異なる径の貫通孔は燃焼室の圧力上昇に伴い段階的に解放されるため、異なる径の貫通孔を設けることで周囲環境によらず安定した燃焼特性を得ることができる。破断部材33としては、たとえば、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用される。これにより、ガス発生剤収容室60の気密性が確保されている。
【0027】
ガス発生剤収容室60は、下部側シェル10および上部側シェル20からなるハウジングの内部の空間のうち、仕切部材30によって仕切られた下部側シェル10側の空間であるとともに、上述の点火器40が配置された部分を取り巻く空間であって、ガス発生剤61が収容される空間を形成している。
【0028】
ガス発生剤61は、点火器40によって点火されることによって生じた火炎によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる一体成型物である。ガス発生剤61としては、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成型体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等又はこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば、塩基性硝酸銅や塩基性炭酸銅等の塩基性金属水酸化物、過塩素酸アンモニウム又は過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダ、スラグ形成剤、又は燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばヒドロキシプロピレンメチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダ、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0029】
フィルタ室50には、上部側シェル20の内壁(本実施形態においては天板部21)と仕切部材30の第1部材31とに挟み込まれることによって固定されたフィルタ70が設けられている。これにより、ガスがフィルタ70を経由することなくフィルタ70の上端と天板部21との間の隙間、フィルタ70の下端と仕切部材30の第1部材31との間の隙間から流出してしまうことを防止する。フィルタ70は、円筒状の形状を有しており、その中心軸がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されている。
【0030】
フィルタ70は、気体が通過可能な穴部を複数有した板状金属部材(たとえば、フックメタル、パンチングメタル、または、エキスパンドメタルと称されるもの)を巻き回すことによって形成された筒状のもの、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したもの、もしくは金属線材を折り込むことで形成された鋼剤をプレス加工で押し固めたものが利用される。
【0031】
なお、フィルタ70は、ガス発生剤収容室60内で発生したガスがこのフィルタ70中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却し、かつ残渣が外部に放出されないようにするためには、ガス発生剤収容室60内で発生したガスが確実にフィルタ70中を通過するようにすることが必要である。
【0032】
続いて、上部側シェル20の周壁部22(すなわち、固定部25が設けられた位置よりも天板部21側に位置する部分の周壁部)の部分には、ガス噴出口23が複数設けられている。ガス噴出口23は、フィルタ70を通過したガスをハウジングの外部に排出するためのものである。また、上部側シェル20の周壁部22には、上記ガス噴出口23を閉塞するようにシールテープ24が貼付されている。このシールテープ24としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用される。これにより、ガス発生剤収容室60の気密性が確保されている。なお、ガス発生器100の出力は、前述のガス発生剤収容室60の内圧の制御と、ガス噴出口23の径の大きさと、シールテープ24の材質および厚みとを調整することによって、制御することができる。
【0033】
以上のような構成において、ガス発生器100が搭載された車両が衝突した際には、車両に設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、車両に設けられたコントロールユニットからの端子ピン42、43に対する通電によって点火器40が作動する。点火器40が作動することによって生じた火炎によって、ガス発生剤収容室60に収容されているガス発生剤61が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。ガス発生剤収容室60内で発生したガスは、仕切部材30の第1部材31に設けられた破断部材33を破断させ、フィルタ室50内に進入する。そして、フィルタ70を通過し、その際にフィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてハウジング(上部側シェル20)の外周縁部に流れ込む。そして、ハウジングの内圧の上昇に伴い、ガス噴出口23を閉塞するシールテープ24による封止が破られ、当該ガス噴出口23を介してガスがハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、ガス発生器100に接続されるエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを展開および膨張させるようになっている。
【0034】
上記構成の本実施形態によれば、従来よりも簡便な構成であるにもかかわらず、出力および内圧の制御を従来と同等以上に容易に行うことができるガス発生器100を提供できる。
【0035】
また、空間Sが形成されているので、接合部26を溶接などによって形成する際に高熱となる場合に、ガス発生剤収容室60に対して断熱することができる。また、空間Sは、ハウジング内部の空間を有効活用してなるものであるので、ガス発生器100の小型化に貢献できる。
【0036】
また、ガス発生剤収容室60について、必要な量のガス発生剤61を充填するのに必要な容積だけとなるように構成することができるので、余分なスペースがない。したがって、ガス発生剤収容室60の所望する内圧値(たとえば、破断部材33が破断する圧力値)までの上昇度が大きくなる。
【0037】
また、仕切部材30における貫通孔31a1、32a2は、ハウジングに設けたガス噴出口23に比べて、設計の自由度が高くなる。すなわち、所望する出力に制御することが従来よりも容易なガス発生器100とすることができる。特に、ガス発生剤収容室60の内圧は、仕切部材30における貫通孔31a1、32a2と破断部材33とによって容易に制御することができるので、ガス噴出口23におけるシールテープ24を破断するための圧力・時間によらずに、ガス発生剤61を安定して燃焼させることができる。
【0038】
また、上記構成の本実施形態によれば、作動中は、必然的に、「ガス発生剤収容室60の内圧値>フィルタ室50の内圧値」となる。このとき、仕切部材30における第1部材31と上部側シェル20の天板部21とにフィルタ70がより挟み込まれることになるので、発生したガスがフィルタ70を経由することなくフィルタ70の上端と天板部21との間の隙間、フィルタ70の下端と仕切部材30の第1部材31との間の隙間から流出してしまうことをより防止する。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。たとえば、以下の変形例が含まれる。
【0040】
上記実施形態においては、筒状部32b、32cを階段状に形成した第2部材32を用いて、第2部材32と下部側シェル10との間に断熱用の空間Sを形成したが、空間Sを形成するための構成は、これに限られない。たとえば、
図3に示したように、下部側シェル110の周壁部112について、筒状部112a、112b(筒状部112aの径>筒状部112bの径)を階段状に形成し、ガス発生剤161が溶接部126から熱の影響を受けないように、断熱用の空間S1を形成してもよい。なお、
図3の変形例において、上記実施形態と同様の部位については、特に説明がない限り、下2桁が同じ符号を用いて示しているので、説明を省略する。
【0041】
また、上記実施形態においては、フィルタ70が、仕切部材30における第1部材31と上部側シェル20の天板部21とにフィルタ70が挟み込まれている構成のものであったが、これに限られない。すなわち、フィルタが、上述のフィルタの機能を発揮する状態で、ハウジングの内壁のいずれかの箇所と仕切部材とに挟持されることによって固定されるのであれば、フィルタ室のどの位置に設けられてもよく、また、形状についても問わない。
【0042】
また、上記実施形態における仕切部材30は、第1部材31と第2部材32とに分離可能な状態のものであったが、これに限られない。たとえば、仕切部材30は、第1部材31と第2部材32とが一体形成された略有底筒状部材であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10、110 下部側シェル
11、111 底板部
12、112 周壁部
13、113 突状筒部
14、114 窪み部
15、115 開口部
20、120 上部側シェル
21、121 天板部
22、122 周壁部
23、123 ガス噴出口
24、124 シールテープ
25、125 固定部
26、126 接合部
30、130 仕切部材
31、131 第1部材
31a、131a 中央部
31a1、131a1 貫通孔
31b、131b 接続部
31c、131c 環状部
31d、131d 突起部
32、132 第2部材
32a、132a 底部
32a1、132a1 孔
32a2、132a2 貫通孔
32b、32c、112a、112b、132b、132c 筒状部
33、133 破断部材
36、136 保持部
36a、136a 雌型コネクタ部
40、140 点火器
42、43、142、143 端子ピン
44、144 スクイブカップ
50、150 フィルタ室
60、160 ガス発生剤収容室
61、161 ガス発生剤
70、170 フィルタ
100、200 ガス発生器
S、S1 空間