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特開2022-99209牡蠣養殖時に使用される採苗連用のスペーサー
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  • 特開-牡蠣養殖時に使用される採苗連用のスペーサー 図1
  • 特開-牡蠣養殖時に使用される採苗連用のスペーサー 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099209
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】牡蠣養殖時に使用される採苗連用のスペーサー
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/54 20170101AFI20220627BHJP
【FI】
A01K61/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020220047
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】520458196
【氏名又は名称】南部 千代徳
(72)【発明者】
【氏名】南部 千代徳
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA26
2B104DA11
2B104DC02
(57)【要約】
【課題】本発明は、現在使用されているプラスチック製スペーサーに代えて使用することができる耐久性と安全性を備え、環境にもやさしい天然素材からなる養殖牡蠣の採苗連に用いられるスペーサーを提供する。
【解決手段】本発明は、維管束又は繊維の伸びる方向を長辺とする中実の直方体形状の天然素材からなる養殖牡蠣の採苗連に用いられるスペーサーであって、前記直方体の長辺と隣接の短辺で形成される上下2つの長方形平面の略中央に針金用の貫通孔を設け、前記長方形面を貝殻の接触面となし、前記二つの長方形面間の距離を貝殻間の距離とすることを特徴とする天然素材からなる養殖牡蠣の採苗連に用いられるスペーサーに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
維管束又は繊維の伸びる方向を長辺とする中実の直方体形状の天然素材からなる養殖牡蠣の採苗連に用いられるスペーサーであって、前記直方体の長辺と隣接の短辺で形成される上下2つの長方形平面の略中央にワイヤー通し用の貫通孔を設け、前記長方形面を貝殻の接触面となし、前記二つの長方形面間の距離を貝殻間の距離とすることを特徴とする天然素材からなる養殖牡蠣の採苗連に用いられるスペーサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牡蠣養殖時に使用されている採苗連用のスペーサーの材料と形状の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、脱プラスチックと海洋プラスチック汚染への関心が高まっている。
プラスチック製造時には、地球温暖化の要因とされる二酸化炭素が工場より排出される。プラスチック自体にも可塑剤などの有害な物質が使用されている。
又、海洋プラスチックがマイクロプラスチック化して有害物質を吸着し生物が食し、それを人間が食べる事での人体への悪影響が懸念されている。
牡蠣幼生付着用の採苗連の形状は、ホタテ貝の殻の中央に穴を開け高さ15mmの円筒状のプラスチックスペーサーを2枚のホタテ貝間に挟み込みながら70枚程が連なるようにワイヤーで通した形状である。牡蠣の成長と共に15mmのプラスチックスペーサーを240~270mmのプラスチックパイプに差し替えるが、その作業を海上の牡蠣筏で行う為にこの工程にてプラスチックスペーサーが海に流出している。アンケートでは、作業者の64%が流出させたことがあるというデータがある
また、大型台風等の自然災害や船舶の衝突事故で、牡蠣養殖施設が毎年破損しており海に流出している。1999年9月の台風18号では、11,284台の筏のうち3,380台で破損、流出する被害が出た。筏1台あたりのスペーサーの使用量は、約24,000個であり、広島県内では現在約2億5000万~3億個、全国では5億個程度のプラスチックスペーサーが使用されている。
ICC(国際海岸クリーンアップ)の調査によると、瀬戸内海の海岸において最も多く回収された海ゴミがこのプラスチックスペーサーである。自然災害や事故が発生した場合、スペーサーの流出は避けられない為、環境にやさしい素材への変更が早急に求められているのが現状である。
【0003】
特許文献1には採苗連用スペーサーとして長さ15mm~30mmの竹筒が用いれることが記載されている。この文献は平成9年6月10日に公開されているが、現在上述のように円筒状のプラスチックスペーサーが全てに使用されている。これは細竹から所定の形状の竹筒を作製する場合、製造上の課題及びコストの課題に加えて、竹筒を採苗連に使用する際の耐久性に課題があるものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-149741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、現在使用されているプラスチック製スペーサーに代えて使用することのできる耐久性と安全性を備え、環境にやさしい天然素材からなる養殖牡蠣の採苗連に用いられるスペーサーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、維管束又は繊維の伸直方向を長辺とする中実の直方体形状の天然素材からなる養殖牡蠣の採苗連に用いられるスペーサーであって、前記直方体の長辺と隣接の短辺で形成される上下2つの長方形平面の略中央にワイヤー用の貫通孔を設け、前記長方形面を貝殻の接触面となし、前記二つの長方形面間の距離を貝殻間の距離とすることを特徴とする天然素材からなる養殖牡蠣の採苗連に用いられるスペーサーに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明になるスペーサーは天然素材で作られている為、何らかの理由で海に流出しても海中に沈み、自然分解するため、海洋環境に負荷を掛けない特徴を持つ。
また、本発明になるスペーサーは中実の直方体形状であり、かつ維管束又は繊維の方向に対し垂直方向に貫通孔を開けることにより、ワイヤーからの衝撃等に対して海中での強度と耐久性を十分保つことができる。
さらには、本発明になるスペーサーは、直方体で長辺を含む面に貫通孔が設けてあり、目視することなく穴の開いてある方向が分かる為に手作業による採苗連作製時のワイヤー通しの作業性を良好に保つ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明になる牡蠣の採苗連用スペーサーの斜視図である。
図2】本発明になる牡蠣の採苗連用スペーサーの使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明になるスペーサー1は、天然素材の孟宗竹を用いて、長辺1aは20mm、幅辺1bは7mm程度、高さ辺1cは15mmの大きさの直方体に成形されている。長辺1aと幅辺1bとで形成される長方形平面の中央に貫通孔2が設けられている。採苗連は2枚のホタテ貝の貝殻4,4間にスペーサー1を介在させ、該スペーサー1の長辺1aと幅辺1bで形成される長方形平面をホタテ貝に当接させ、該ホタテ貝に設けられた孔とスペーサー1の貫通孔2にワイヤー5を通して二枚の貝殻4,4をスペーサー1により一定の間隔で固定する。これを一つの単位として約70単位を一本のワイヤーに連ねて採苗連を作り、筏や抑制棚に垂下して養殖を行う。
採苗連に用いられるスペーサーの直方体の大きさについては、高さは14mm~16mm、長さは15mm~23mm、幅は6mm~10mmが好ましい。
【0010】
スペーサーは、一例として次のようにして作製する。
スペーサーを製造するには、スペーサーの高さに相当する略15mmの幅を有し10個体が作れる長さの棒状の孟宗竹を用意する。長さ方向に維管束が向いていることとなる。片側から40mmの間隔で5カ所、もう片側から20mmずらして40mmの間隔で5カ所、同時に10カ所にドリルにて穴径3mmの貫通孔を開ける。その後、9枚の回転する鋸で同時に切断して、10個体のスペーサーを作る。貫通孔は、維管束の方向に対して垂直に穿設されており維管束を一部切断することになるが維管束の一部であり、強度を十分保つことができる。このような構造を取ることにより、スペーサーは1年以上の長期間の海中での使用に対する耐久性を備えることができる。
【0011】
竹筒は天然素材の竹材であり内部が空洞となっている。かつ、根元の肉厚は厚いが先に向かうにつれて薄くなる特徴を持つ。竹筒の場合だと、肉厚が薄い先の部分で作ったスペーサーは、該部分に含まれる維管束も少ないうえにワイヤーの方向と維管束の方向が一致している為、ワイヤーの揺動等による衝撃を度々受けると使用中に割れてしまい使用上耐久性に問題がある。
竹筒で作った場合、竹の太さをある程度の範囲(10mm~17mm)を持って作ることになるため、均一な大きさに作ることが出来無い。これは、殻と殻の間隔を均一に揃えられないことになり、採苗時の牡蠣幼生の種付けが不安定になる。
なお、本発明に使用される天然素材としては、竹材のほか木材や草木があげられる。
【0012】
本発明になるスペーサー1の貝殻への装着は手作業で行っており、手の触感で貫通孔2を早く正確に見出して、該貫通孔2にワイヤー5を通して貝殻4,4間に装着して採苗連の1単位を作製する。この作業において、スペーサー1が直方体であると長方形状の面にある貫通孔2を手探りで探しやすく、かつ、手に持ちやすい為に該貫通孔へワイヤー5を通して2枚の貝殻4,4の間にスペーサー1を挟む採苗連の製作作業は比較的容易に行うことができる。
【0013】
本発明になるスペーサーを装着した採苗連を牡蠣養殖が行われる海域において採苗から抑制棚までの11か月の間実験したところ、本発明になるスペーサーは腐食や割れ等が発生する事なく現行のプラスチック製スペーサーと同等の機能と耐久性を保持することが分った。また、スペーサー自体にも牡蠣の幼生、フジツボ等が付着し、馴染んでいるのが確認された。
【0014】
本発明になるスペーサーは、天然素材で作られたスペーサーなので、何らかの原因で海に流出しても海中に沈み或いは海岸に打ち上げられても自然分解するため海洋や海岸の環境に負荷を掛けない特徴を持つ。
【符号の説明】
【0015】
1 スペーサー
1a 長辺
1b 幅辺
1c 高さ辺
2 貫通孔
3 維管束
4 貝殻
5 ワイヤー
図1
図2