(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099211
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】横型振動乾燥機
(51)【国際特許分類】
F26B 9/08 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
F26B9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020220049
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】390008084
【氏名又は名称】中央化工機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千賀 昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿紀
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 孝嘉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 新吉
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB08
3L113AC19
3L113AC63
3L113AC69
3L113AC75
3L113AC76
3L113BA02
3L113CB11
3L113DA14
3L113DA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】処理容器と振動台との間に高度の結合一体性が得られるとともに、脱着作業性も良好である小型の横型振動乾燥機を提供すること。
【解決手段】横型の処理容器12と、処理容器12を加振する加振手段14とを備えている小型の横型振動乾燥機。処理容器12及び加振手段14間の脱着手段を、処理容器12の両側底部に両外方に伸びる1対以上の係合爪対42と、前記加振手段14の振動台32の上面の一対の受け係合条44と、該受け係合条44と係合爪42とで重合して形成される凸テーパ断面と該凸テーパ断面が楔的に嵌合する凹テーパ断面溝46cを有するクランプ条材46と、該クランプ条材46を前進させるロック手段52とで形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横型の処理容器と、該処理容器を加振する加振手段とを備え、
前記処理容器は、前記加振手段からの脱着が可能とされ、
前記加振手段は、振動台と、該振動台の底部側に一体化された発振機と、前記振動台を架台上に支持する弾性部材とを有する構成である小型の横型振動乾燥機であって、
前記処理容器と前記加振手段間の脱着手段は、
前記処理容器の両側底部に両外方に伸びて形成される1個以上の係合爪対と、前記振動台の上面に前記係合爪に対応して形成される一対の受け係合条と、該受け係合条と前記係合爪とを上下から嵌合締結する一対のクランプ条材と、該クランプ条材を前進させるロック手段とを備え、さらに、
前記係合爪と前記受け係合条の各断面は、重合させて凸テーパ断面を形成するとともに、前記クランプ条材は前記凸テーパ断面が楔的に嵌合可能な凹テーパ断面のテーパ溝を有するものである、
ことを特徴とする横型振動乾燥機。
【請求項2】
前記ロック手段が、「く字」型レバーの屈曲部を軸心として一端を引っ張ることにより、他端が回動して前記クランプ条材を前進させて、該クランプ条材の凹テーパ断面に前記凸テーパ断面を嵌合させるものであることを特徴とする請求項1記載の横型振動乾燥機。
【請求項3】
前記係合爪が2個以上とされるとともに、前記クランプ条材の上面に前記係合爪が通過可能な幅の切り欠き部が形成され、前記係合爪の数に対応した上クランプ部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の横型振動乾燥機。
【請求項4】
前記弾性部材が、ばね定数(Kz):40~80の椀状体要素2個以上を用いて、椀状体の凸側相互又は開口側相互で結合させ、周面に1個以上のリング状溝を有する中空柱体で形成されていることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の横型振動乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉体乃至超微粉体である粉粒状の希少化学物質(希少金属、医薬品等)や実験室で試料を乾燥処理するのに好適な小型の横型振動乾燥機に関する。
さらに詳しくは、グローブボックス内等に搬入して製品を取り出し処理可能な小型の横型振動乾燥機に係る発明である。
ここで「微粉体乃至超微粉体」とは、化学工学の分野でそれぞれ「100メッシュ(147μm)以下」及び「数μm以下」の粒径のものをいう(化学工学協会編「化学工学辞典」(昭和49年5月30日)丸善、p410の「粉砕機」の項参照)。
【背景技術】
【0002】
昨今のファインケミストリーの研究開発の活発化に伴い、容器本体の取り扱い性(被処理物の投入、取り出し、洗浄性、衛生性)に優れた小型の振動乾燥機の出現が、要望されるようになってきている(特許文献1、段落0032)。特に加振手段から取り外した処理容器内の製品をグローブボックス内等に搬入して取り出し処理可能な小型のものが要望されるようになってきている。
これらの要望に応えることを目的(課題)として(同文献、段落0034)、本願出願人は、同文献の請求項等に記載に係る小型の竪型振動乾燥機を提案した。
【0003】
当該特許文献1に係る竪型振動乾燥機は、本願出願人により「VU15型」や「まめかんVU型」等の商品名で上市されヒットしている。
【0004】
上記振動乾燥機は、竪型(VU型)であり、処理容器の脱着は、ジャケット付きの場合、製品投入・排出口の蓋体及びジャケットとの環状密閉体はフェルールクランプでロックされている(特許文献1、
図2、図符号36参照)。そして、このフェルールクランプは処理容器の加振手段(具体的には同ジャケット本体32)からの脱着クランプを兼ねている。なお、フェルールは、蓋体等の密閉部材の取り外しが容易・異物混入がないとの理由等で、サニタリー分野で多用されている。
【0005】
しかし、このフェルールクランプを、横型振動乾燥機の処理容器の脱着ロック構造を兼ねることはできない。すなわち、横型の処理容器は製品排出口22のフェルールクランプ24は、処理容器12の長手方向一端に位置するためである(
図3参照)。
【0006】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、処理容器を加振手段からの脱着は、処理容器の底部に振動台取り付け座を一体化し、該取り付け座と振動台とを、長手方向両側の複数個所でねじ結合や汎用ばねクランプ結合することが考えられる。
しかし、取り付け座(処理容器)と振動台との間には、振動時における強固な結合一体性が要求される。したがって、汎用ばねクランプでは強固な結合一体性を得難く、また、ねじ結合箇所を多くしなければならず、脱着作業性も良好でないと考えられる。
本発明は、上記にかんがみて、処理容器と振動台との間に強固な結合一体性が得られるとともに、脱着作業性も良好である小型の横型振動乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をした結果下記構成の小型の横型振動乾燥機に想到した。
【0010】
横型の処理容器と、該処理容器を加振する加振手段とを備え、
前記処理容器は、前記加振手段からの脱着が可能とされ、
前記加振手段は、振動台と、該振動台の底部側に一体化された発振機と、前記振動台と前記発振機とを架台上に支持する弾性部材とを有する構成である小型の横型振動乾燥機であって、
前記処理容器の両側底部に両外方に伸びて形成される1個以上の係合爪対と、前記振動台の上面に前記係合爪に対応して形成される一対の受け係合条と、該受け係合条を前記係合爪とを上下から嵌合締結する一対のクランプ条材と、該クランプ条材をロック位置に固定するロック部材とを備え、さらに、
前記係合爪と前記受け係合条の各断面は合わせて凸テーパ断面を形成するものとされるとともに、前記クランプ条材は前記凸テーパ断面が楔的に嵌合可能な凹テーパ断面溝を有する、ことを特徴とする。
【0011】
上記構成において、前記ロック部材が、「く字」型レバーの屈曲部を軸心として一端を引っ張ることにより、他端が回動して前記クランプ条材を前進させて、該クランプ条材の凹テーパ断面溝に前記凸テーパ断面を嵌合させるものであることが望ましい。楔作用を確実に得られるためである。
【0012】
上記各構成において、前記係合爪が2個以上とされるとともに、前記クランプ条材の上面に前記係合爪が挿入可能な幅の切り欠き部が形成され、前記係合爪の数に対応した上クランプ部が形成されていることが望ましい。ロック部材の軽量化および処理容器の脱着作業性が良好となる。
【0013】
上記各構成において、前記弾性部材が、ばね定数(Kz):40~80の椀状要素2個以上を用いて、椀状体の凸側相互又は開口側相互で結合させ、周面に1個以上のリング状溝を有する中空柱体で形成されていることが望ましい。ばね定数が他の中実防振ゴムに比して小さく、振動伝達が良好(水平方向の安定性に優れ)かつ防振効果が大きく(運転停止後の振動減衰速度が相対的に大きく、共振も発生しがたい。)で、配管等のフレキシブル部材に対する負荷を軽減させる。その理由は、弾性部材が中空柱体であるとともに、周面に1個以上のリング状溝を有するためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明における横型振動乾燥機の一例における組み立て状態の縦断面図(断面表示一部省略)である。
【
図2】同じく処理容器を加振手段から取り外した状態の縦断面図(断面表示一部省略)である。
【
図3】
図2における配管等を取り外し状態の処理容器の要部斜視図である。
【
図4】同じく処理容器を取り外した状態の加振手段の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一形態を、図例に基づいて説明する。
【0016】
本発明の小型の横型振動乾燥機は、基本的には、処理容器12と、該処理容器12を加振する加振手段(振動モータ34)14とを備えている。ここで、振動モータ34は、例えば、振動数:10~30Hzで、全振幅:0.2~3mm、好ましく振動数:10~25Hzで、振幅:0.5~3mmの運転条件を満たすものとする。
【0017】
ここで、小型の横型振動乾燥機とは、処理容器12が、グローブボックス内等での取り扱いが可能な重量・大きさで、加振手段14からの脱着が可能なものいう。数量的表示をすれば、例えば、重量:約20kg以下、処理容量:約300~1750cc、望ましくは重量:10~15kgで、処理容量:800~1300ccである。
【0018】
そして、処理容器12は、通常、ジャケット16及び温度検知器18等で構成される温調検知を備えているとともに、排気手段20を備えている。なお、温調手段の構成部品である温調媒体の入出口の図示は省略してある。また、ジャケット16は、特許文献1の構成とは異なり、容器一体型で、処理容器12をジャケット16から取り外しできるものではない。また、処理容器12の上面中央部と長手方向一端にそれぞれ、原料投入口22及び製品排出口24を備えている。原料投入口22及び製品排出口24は、それぞれ、第一蓋体26及び第二蓋体28が第一・第二フェルールクランプ30,31でロックされている。これらの蓋体の脱着容易性および異物混入を可及的に防止できるためである。
【0019】
上記加振手段14は、振動台32、振動モータ(発振機)34、支持架台38及び弾性部材(振動吸収体)40とで構成されている。該振動台32を構成するフレーム36は、中央チャンネル部36aとその両側の反転チャンネル部36bを備えている。そして、中央チャンネル部36aの下面に振動モータ34が取り付けられている。また、反転チャンネル部36bの下面と4本の支持架台38の各上面との間に弾性部材40が介在されている。
【0020】
ここで、弾性部材40は、ばね定数(Kz):40~80(望ましくは:50~70)の椀状要素2個以上を用いて、
図1・2に示す如く、椀状体の凸側相互又は開口側相互で結合(例えば、ねじ手段で)させ、周面に1個以上のリング状溝を有する中空柱体で形成する。ここで椀状要素としては、例えば、倉敷化工株式会社から上市されている「軽量用防振ゴムKQシリーズ」があげられる。当該防振ゴムのカタログには、「1.ばね定数が小さく軽量機器の防振に適している、且つ、継続的な振動や突発的な衝撃に対して効果を発揮する、2.水平方向の安定性に優れている。」旨の記載がある。
すなわち、弾性部材40を上記構成とすることにより、前述の如く、振動伝達が良好かつ防振効果が中実の防振ゴムに比して相対的に大きいため、配管等のフレキシブル部材に対する負荷を軽減できる。
【0021】
振動モータ34は、通常、汎用振動モータを使用する。たとえば、ユーラステクノ株式会社から上市されている「標準形ユーラスバイブレータKEEシリーズ」から、前記振動特性に合致するものを適宜選択できる。
【0022】
そして、本実施形態では、処理容器12と加振手段14間の脱着手段を下記のものとすることを第一の特徴を有する。
【0023】
当該脱着手段は、処理容器12の両側底部に両外方に伸びて形成される一対以上の係合爪42と、前記フレーム36の中央チャンネル部36aの上面の座部45を介して前記係合爪42に対応して形成される一対の受け係合条44と、該受け係合条44を係合爪42とを上下から嵌合締結する一対のクランプ条材46と、該クランプ条材46を前進させてロック手段52とを備えていることを基本構成とする。
【0024】
そして、係合爪42と受け係合条44の各断面は、合わせて凸テーパ断面を形成するものとされるとともに、クランプ条材46は凸テーパ断面と楔(ラージ当たり)的に嵌合する凹テーパ断面溝46cを有する。このように、クランプ条材46で係合爪42と受け係合条44とをテーパ嵌合による楔作用により強固にロックされる。なお、テーパ大きさは、通常、20/10~3/10、望ましくは12/10~5/10とする。
【0025】
また、図例では、
図3に示すように、係合爪42が3個とされるとともに、クランプ条材46の上側には、
図4に示すように、各係合爪42が挿入可能な幅の切り欠き部46aが2個形成されて、前記係合爪42の数に対応した3個の上クランプ部46bが形成されている。
【0026】
また、図示しないが、座部45上面とクランプ条材46下面との一方又は双方を粗面化させてズレ移動が発生し難いようにすることが望ましい。
【0027】
また、ロック手段は、図例では、一対の「く字」型レバー54の屈曲部を軸心として上揺動端を引っ張ることにより、下揺動端が前記クランプ条材46を前進させるものとされている。具体的には、「く」字型レバー54は、中央チャンネル部36aの両内側に形成されたブラケット56対間に配された揺動軸58に支持されている。そして前記一対のレバー54、54の上端間は駆動梁59で連結され、当該駆動梁59には駆動ねじ60の先端部が結合されている。駆動ねじ60は反転チャンネル部36b間に架橋保持されて後端部(突出部)に操作つまみ62が結合されている。こうして、駆動梁59を駆動ねじ60により引っ張ることにより、レバー54の上端が引っ張られ揺動可能とされている。
【0028】
次に、上記実施形態における処理容器12の振動台32への組付け方法を説明する。
処理容器12を振動台32から取り外した状態で、駆動ねじ60を前死点に位置させ、「く」字形レバー54の揺動下部を後退させておく。この状態でクランプ条材46を振動台32の座部45の外側に寄せてセットする。次に、処理容器12の係合爪42をクランプ条材46の切り欠き部46aに挿通後、長手方向にずらして受け係合条44の上に係合爪42を重合させる。
【0029】
この状態で、操作つまみ62を回動させて駆動ねじ60を後退させてレバー54の揺動上部を引っ張る。すると「く」字形レバー54の揺動下部が前進して、クランプ条材46により、係合爪42と受け係合条44とで形成される凸テーパ断面がクランプ条材46の凹テーパ断面溝46に楔的に嵌合してクランプロックが完了する(
図1)。このクランプロックは、テーパ嵌合による楔作用で強固なものである。
【0030】
こうして処理容器12を振動台32に組付けた後、原料投入口22から原料を投入し、適宜条件で原料を乾燥処理後、前記組付けと逆の順で処理容器12を振動台から取り外す。そして、処理容器12の製品排出口24の第二蓋体28(
図3)を取り外し、人力により、処理容器12の製品排出口24を下側とすれば、製品を容易に排出でき、さらには、そのあとの処理容器の清掃性も高まるとともに、処理容器12はグローブボックス等内での製品排出も可能となり、可及的に製品の酸化防止等も図れる。
【符号の説明】
【0031】
12・・・処理容器、
14・・・加振手段
16・・・ジャケット
32・・・振動台
34・・・発振機(振動モータ)
40・・・弾性部材
42・・・係合爪
44・・・受け係合条
45・・・座部
46・・・クランプ条材
52・・・ロック手段
54・・・「く」字形レバー
60・・・駆動ねじ
62・・・操作つまみ