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特開2022-99219情報提供システム、情報提供方法、及び情報提供プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099219
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】情報提供システム、情報提供方法、及び情報提供プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/06 20120101AFI20220627BHJP
【FI】
G06Q40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079940
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2020212206の分割
【原出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】520505674
【氏名又は名称】ニュー・フロンティア・キャピタル・マネジメント・インターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 繁樹
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB55
(57)【要約】
【課題】戦略的投資家、資金調達や事業提携を希望する企業、及びVC/PEファンドの全てにメリットがあるファンド・オブ・ファンズを運営する。
【解決手段】投資案件データベース12aは、複数の個別ファンドのGP(GeneralPartner)に出資している資産運用会社MCにより管理される。取得部11aは、各個別ファンドが収集した投資案件情報を取得して、投資案件データベース12aに蓄積する。受付部11bは、複数の個別ファンドにLP(LimitedPartnership)投資するマスターファンドにLP投資している戦略投資家が使用する端末装置30から、検索条件が指定された投資案件情報の検索依頼を受け付ける。検索照合部11cは、受け付けられた検索条件に基づき、投資案件データベース12aを検索し、検索条件に合致する投資案件情報を抽出する。提供部11dは、抽出された投資案件情報を端末装置30に提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタートアップ企業、ベンチャー企業、グロース企業の少なくともいずれかを投資対象に含む複数の個別ファンドのGP(General Partner)に出資している資産運用会社により管理される投資案件データベースと、
各個別ファンドまたは前記資産運用会社が使用する端末装置から入力された、各個別ファンドが収集した投資案件情報を取得して、前記投資案件データベースに蓄積する取得部と、
前記資産運用会社の投資判断に基づき前記複数の個別ファンドにLP(Limited Partnership)投資するマスターファンドにLP投資している、前記マスターファンドの戦略投資家が使用する端末装置から、検索条件が指定された投資案件情報の検索依頼を受け付ける受付部と、
受け付けられた検索条件に基づき、前記投資案件データベースを検索し、前記検索条件に合致する投資案件情報を抽出する検索照合部と、
抽出された投資案件情報を、前記戦略投資家が使用している端末装置に提供する提供部と、
を備えることを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
前記投資案件データベースには、各個別ファンドが投資を見送った企業の投資案件情報も含まれることを特徴とする請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記投資案件データベースには、各個別ファンドが投資を検討中の企業の投資案件情報も含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記検索照合部は、抽出した投資案件情報の前記戦略投資家への情報開示にあたり、コンプライアンス上の問題がないか否か判定し、
コンプライアンス上の問題がない場合、前記提供部は、抽出された投資案件情報を、前記戦略投資家が使用している端末装置に提供することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項5】
コンプライアンス上の問題がある場合、前記提供部は、コンプライアンス上の問題のない範囲での情報開示に限定して、抽出された投資案件情報を、前記戦略投資家が使用している端末装置に提供することを特徴とする請求項4に記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記複数の個別ファンドは、それぞれ異なる地域に設立されたファンドであり、
前記コンプライアンス上の問題は、現地法令への適合性の問題を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の情報提供システム。
【請求項7】
スタートアップ企業、ベンチャー企業、グロース企業の少なくともいずれかを投資対象に含む複数の個別ファンドのGPに出資している資産運用会社により管理される投資案件データベースに、各個別ファンドまたは前記資産運用会社が使用する端末装置から入力された、各個別ファンドが収集した投資案件情報を取得して蓄積するステップと、
前記資産運用会社の投資判断に基づき前記複数の個別ファンドにLP投資するマスターファンドにLP投資している、前記マスターファンドの戦略投資家が使用する端末装置から、検索条件が指定された投資案件情報の検索依頼を受け付けるステップと、
受け付けられた検索条件に基づき、前記投資案件データベースを検索し、前記検索条件に合致する投資案件情報を抽出するステップと、
抽出された投資案件情報を、前記戦略投資家が使用している端末装置に提供するステップと、
を有することを特徴とする情報提供方法。
【請求項8】
スタートアップ企業、ベンチャー企業、グロース企業の少なくともいずれかを投資対象に含む複数の個別ファンドのGPに出資している資産運用会社により管理される投資案件データベースに、各個別ファンドまたは前記資産運用会社が使用する端末装置から入力された、各個別ファンドが収集した投資案件情報を取得して蓄積する処理と、
前記資産運用会社の投資判断に基づき前記複数の個別ファンドにLP投資するマスターファンドにLP投資している、前記マスターファンドの戦略投資家が使用する端末装置から、検索条件が指定された投資案件情報の検索依頼を受け付ける処理と、
受け付けられた検索条件に基づき、前記投資案件データベースを検索し、前記検索条件に合致する投資案件情報を抽出する処理と、
抽出された投資案件情報を、前記戦略投資家が使用している端末装置に提供する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする情報提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投資家に投資案件情報を提供する情報提供システム、情報提供方法、及び情報提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大手事業会社を中心とした国内外の戦略的投資家は、イノベーション・新技術にかかる自社ビジネスとのシナジー、新規事業分野への進出等を検討するのに必要な投資判断情報を取得するべく、直接投資や自社のCVC(Corporate Venture Capital)等を通じ、市場調査と戦略的投資を推進している。
【0003】
戦略的投資家が情報収集の質・量の拡充を図るべく、社外のVCファンドやPE(Private Equity)ファンドへ投資することは、単体での投資と比較して有効な手段である。一般的に外部のVC/PEファンドへの投資は、投資先へのアクセス機会の向上や、自社のネットワークを通じて得られる以上の情報の入手を可能とする。とりわけ、複数のVC/PEファンドに投資するファンド・オブ・ファンズ(FoF)は、各ファンドからの定期レポート等により、効率的で広範な情報収集を可能とするスキームである。
【0004】
ファンド・オブ・ファンズのポートフォリオに含まれるVC/PEファンドが実際に投資に至った企業の企業情報へのアクセスは、定期レポートや運用報告書等(例えば、特許文献1参照)を通じて一定程度可能である。しかしながら、戦略的投資家の観点からの投資判断に必要な情報へのアクセスは困難である。また、各VC/PEファンドが実際に投資に至らなかった投資候補先企業の情報へのアクセスは事実上不可能である。
【0005】
このように、戦略投資家の直接投資や自社CVC等を通じた市場調査や戦略的投資に加え、外部のVC/PEファンドへ投資を行うことは、戦略投資家の投資機会と情報収集機会の増加に貢献する。更にファンド・オブ・ファンズへ投資を行うことは、効率的でより広範囲な情報収集を可能とする。しかしながら、戦略的投資家の観点からの投資判断に必要な情報へのアクセス、投資機会は十分とはいえず、制約を受けていると考えられる。
【0006】
VC/PEファンドから投資を受ける側のスタートアップ企業やベンチャー企業の情報は、VC/PEファンドからの投資が見送られれば、VC/PEファンドまたはファンド・オブ・ファンズに投資している戦略的投資家の目に触れる可能性は低い。また、当該企業への投資が実行された場合でも、当該企業の資金調達ニーズや事業提携ニーズが、戦略的投資家に伝わる可能性は低い。
【0007】
自社事業とのシナジーも考慮する戦略的投資家の投資判断と、純粋な投資リターンを追求するVC/PEファンドの投資判断は、必ずしも一致するものではない。VC/PEファンドが投資を見送った案件でも、特定の戦略的投資家にとっては魅力的な投資案件である場合がある。このように、VC/PEファンドから投資を受ける側のスタートアップ企業やベンチャー企業が、潜在的な投資需要を有する戦略的投資家からの出資や提携の機会を逸している状況が存在する。このような状況は、VC/PEファンドから投資を受けることに成功した企業にも失敗した企業にもいえることである。
【0008】
また、スタートアップ企業やベンチャー企業に投資しているファンドにとっても、当該企業と戦略的投資家との間の提携により当該企業の企業価値が上昇すれば、ファンド自体の価値も上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-132913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、戦略的投資家、資金調達や事業提携を希望する企業、及びVC/PEファンドの全てにメリットがあるファンド・オブ・ファンズを運営する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の情報提供システムは、スタートアップ企業、ベンチャー企業、グロース企業の少なくともいずれかを投資対象に含む複数の個別ファンドのGP(General Partner)に出資している資産運用会社により管理される投資案件データベースと、各個別ファンドまたは前記資産運用会社が使用する端末装置から入力された、各個別ファンドが収集した投資案件情報を取得して、前記投資案件データベースに蓄積する取得部と、前記資産運用会社の投資判断に基づき前記複数の個別ファンドにLP(Limited Partnership)投資するマスターファンドにLP投資している、前記マスターファンドの戦略投資家が使用する端末装置から、検索条件が指定された投資案件情報の検索依頼を受け付ける受付部と、受け付けられた検索条件に基づき、前記投資案件データベースを検索し、前記検索条件に合致する投資案件情報を抽出する検索照合部と、抽出された投資案件情報を、前記戦略投資家が使用している端末装置に提供する提供部を備える。
【0012】
本発明の別の態様は、情報提供方法である。この方法は、スタートアップ企業、ベンチャー企業、グロース企業の少なくともいずれかを投資対象に含む複数の個別ファンドのGPに出資している資産運用会社により管理される投資案件データベースに、各個別ファンドまたは前記資産運用会社が使用する端末装置から入力された、各個別ファンドが収集した投資案件情報を取得して蓄積するステップと、前記資産運用会社の投資判断に基づき前記複数の個別ファンドにLP投資するマスターファンドにLP投資している、前記マスターファンドの戦略投資家が使用する端末装置から、検索条件が指定された投資案件情報の検索依頼を受け付けるステップと、受け付けられた検索条件に基づき、前記投資案件データベースを検索し、前記検索条件に合致する投資案件情報を抽出するステップと、抽出された投資案件情報を、前記戦略投資家が使用している端末装置に提供するステップを有する。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を、装置、システム、方法、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、戦略的投資家、資金調達や事業提携を希望する企業、及びVC/PEファンドの全てにメリットがあるファンド・オブ・ファンズを運営することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るファンド・オブ・ファンズの全体ストラクチャーを示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る、ファンド・オブ・ファンズの投資家に対する情報提供サービスを実現するための全体システム構成を示す図である。
図3】投資案件データベースの概略的なデータ構造の一例を示す図である。
図4】実施の形態に係る情報提供システムによる投資案件情報の提供処理の一例を示すフローチャートである(その1)。
図5】実施の形態に係る情報提供システムによる投資案件情報の提供処理の一例を示すフローチャートである(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態は、投資家に対する投資案件情報の提供サービスが付随したファンド・オブ・ファンズに関する。当該ファンド・オブ・ファンズは、戦略的投資家に適した金融商品である。戦略的投資家は、純投資ではなく、自社の事業戦略にとって有利な企業に投資することを目的とし、投資先企業への経営参加や事業統合等を通じて、自社と投資先企業の価値向上を図るものである。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係るファンド・オブ・ファンズの全体ストラクチャーを示す図である。当該ファンド・オブ・ファンズは、複数のPEファンドに投資するマスターファンド(フィーダーファンドともいう)である。複数のPEファンドは、それぞれ異なる地域に設立されたファンドである。例えば、インド、中国、ロシア、オーストラリア、アフリカ、米国シリコンバレー等に設立される。各地域のPEファンドは、現地の未公開のスタートアップ企業、ベンチャー企業、グロース企業を主な投資対象とする。
【0018】
マスターファンドは、資産運用会社MCにより運営される。資産運用会社MCは、国内外で新規ファンドの企画、設立、運営支援等を行う株式会社である。資産運用会社MCは、後述する情報提供システムの構築と運営も行う。
【0019】
本実施の形態では、当該マスターファンドは投資事業有限責任組合(LPS:Limited Partnership)で組成される。投資事業有限責任組合(LPS)は、無限責任組合員(GP:General Partner)と有限責任組合員(LP:Limited Partner)で構成される。無限責任組合員(GP)は、対外的に無限責任を負う組合員である。有限責任組合員(LP)は、出資の限度で責任を負う組合員である。
【0020】
資産運用会社MCは、当該マスターファンドの無限責任組合員(GP)として当該マスターファンドに参加し、投資対象の選定、並びにポートフォリオの構築・運営を行う。また資産運用会社MCは、第二種金融商品取引業の免許を取得しており、当該マスターファンドへのLP投資を勧誘する。
【0021】
資産運用会社MCは、投資対象の各地域において、有力な現地パートナーと提携してPEファンドを運営する。例えば、現地パートナーと資産運用会社MCが50:50の持分で、PEファンドを運営するための運営会社または運営ファンドを設立する。当該運営会社または当該運営ファンドは、PEファンドの無限責任組合員(GP)として当該PEファンドに参加する。資産運用会社MCは、各運営会社または各運営ファンドに、取締役、ディレクター、投資委員、チームメンバー等を派遣し、各PEファンドの運営に直接関与する。
【0022】
更に資産運用会社MCは、PEファンドの運営会社または運営ファンドにビジネス推進デスク(BDD:Business Development Desk)を設置し、ビジネス推進デスクに担当者を常駐させている。現地パートナーまたはビジネス推進デスクの担当者は、現地の大学、研究機関等から、最新のイノベーションやスタートアップに関する情報を収集する。
【0023】
ビジネス推進デスクは、投資関連情報の収集に加えて、PEファンドの既存投資先及び投資候補先に関する日本や現地のビジネスニーズを発掘する。ビジネス推進デスクは、ビジネスニーズをもとに、ビジネスマッチング、事業提携、M&A等のビジネス機会をアレンジする。その際、ビジネス推進デスクは、他の地域のビジネス推進デスクとのファンドネットワーク、及び投資銀行等の金融機関とのネットワークを活用することができる。
【0024】
このように資産運用会社MCは、各地域のPEファンドにGP出資し、GP出資した運営会社または運営ファンドに人材を送り込むことにより、各PEファンドの投資先情報・パイプライン情報を詳細に把握することができる。投資先情報には、PEファンドが既に投資している企業に関する情報に限らず、投資検討中の企業に関する情報、及び検討の結果、投資を見送った企業に関する情報も含まれる。また資産運用会社MCは、投資先情報・パイプライン情報の周辺情報(例えば、現地の最先端技術情報等)も、現地パートナーまたはビジネス推進デスクを通じて吸い上げることができる。
【0025】
資産運用会社MCが無限責任組合員(GP)として参加するマスターファンドには、複数の投資家がLP投資する。マスターファンドにLP投資する投資家は、主に戦略的投資家である。
【0026】
各地域のPEファンドにはそれぞれ複数の投資家がLP投資している。マスターファンドは、各PEファンドのLP投資家の一人として、各PEファンドにLP投資する。各PEファンドの運営会社または運営ファンドは、各PEファンドにコミットメントとして一定の金額を出資することが通常である。例えば、ファンド総額の1%の金額を、運営するPEファンドに出資する。
【0027】
PEファンドの運営会社または運営ファンドは、当該PEファンドのLP投資家から、ファンドの管理報酬を受け取る。ファンドの管理報酬は、投資額の1~2%に設定されることが多い。また、PEファンドの運営会社または運営ファンドは、当該PEファンドが超過収益を上げた場合、当該PEファンドの超過収益から成功報酬を受け取る。成功報酬は、超過収益の20%に設定されることが多い。その場合、残りの80%が、各LP投資家に持分に応じて分配される。運営会社または運営ファンドがコミットメントしている場合は、運営会社または運営ファンドも成功報酬と別に、持分に応じた分配を受ける。
【0028】
マスターファンドは、各PEファンドの運営会社または運営ファンドに、他のLP投資家と同様に、投資額の1~2%の管理報酬を支払う。各PEファンドにおいて超過収益が発生した場合、マスターファンドは、各PEファンドへの投資比率に応じた分配金を受け取る。
【0029】
マスターファンドを運営する資産運用会社MCは、当該マスターファンドのLP投資家から、ファンドの管理報酬を受け取る。マスターファンドは、各PEファンドの運営会社または運営ファンドに投資額の1~2%の管理報酬を支払っているため、当該マスターファンドのLP投資家からは、投資額の1~2+α%の管理報酬を受け取る。αは例えば、0.1~2.0の間に設定される。
【0030】
マスターファンドを運営する資産運用会社MCは、当該マスターファンドが超過収益を上げた場合、当該マスターファンドの超過収益から成功報酬を受け取る契約を、当該マスターファンドにLP投資する投資家と締結することができる。なお資産運用会社MCは、各PEファンドの運営会社または運営ファンドを通じて、各PEファンドの超過収益に対する成功報酬を一定の比率で受け取ることができるため、当該マスターファンドの超過収益から成功報酬を受け取らない契約としてもよい。また資産運用会社MCが当該マスターファンドの超過収益から成功報酬を受け取る契約とした場合も、通常より低率の成功報酬としてもよい。
【0031】
また資産運用会社MCは、各PEファンドの運営会社または運営ファンドを通じて各PEファンドにコミットメントしているため、マスターファンドには基本的に出資する必要はない。なお、よりコミットメントを強めるために、資産運用会社MCからマスターファンドに一定の金額を出資してもよい。
【0032】
以上に説明したファンド・オブ・ファンズの全体ストラクチャーは、資産運用会社MCがマスターファンドの無限責任組合員(GP)となり自己運用するストラクチャーである。この点、マスターファンドと、当該マスターファンドをGPとして運営する運営会社または運営ファンドを、日本より税率が低い国に設立し、当該運営会社または当該運営ファンドと、資産運用会社MCとの間で投資一任契約を締結するストラクチャーでもよい。いずれのストラクチャーでも、資産運用会社MCの投資判断に基づきマスターファンドが運用される。
【0033】
以上の説明では、マスターファンドがPEファンドに投資する例を想定した。この点、マスターファンドが投資するファンドは、必ずしもPEファンドに限定されるものではない。マスターファンドは、上場株式を投資対象とするファンドに投資することも可能である。新興国の企業の場合、上場していても当該企業の情報開示が不十分な場合がある。特に上場間もない規模の小さな企業の場合、情報開示が不十分な場合が多い。
【0034】
またマスターファンドは、地域や国単位ではなく、業種単位で分類された複数のPEファンドに投資してもよい。資産運用会社MCは、業種ごとに最適なパートナーと提携することにより、業種ごとに設立されたPEファンドのパフォーマンス向上を目指すことができる。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態に係る、ファンド・オブ・ファンズの投資家に対する情報提供サービスを実現するための全体システム構成を示す図である。資産運用会社MCは、情報提供システム10を運営・管理する。ファンド・オブ・ファンズに投資した投資家(以下適宜、FoF投資家と表記する)A-Cはそれぞれ、自身の端末装置30a-30cから情報提供システム10にアクセスすることができる。
【0036】
ファンド・オブ・ファンズから投資されたPEファンドA-Cのオフィスには、端末装置20a-20cがそれぞれ設置され、現地パートナーA-Cまたはビジネス推進デスクA-Cの担当者により使用される。なお端末装置20a-20cは、現地パートナーA-Cまたはビジネス推進デスクA-Cの担当者により携帯される端末装置であってもよい。図2では、FoF投資家の数、及びPEファンドの数を便宜的にそれぞれ3としているが、それぞれの数が3に限定されるものではない。
【0037】
FoF投資家A-Cが使用する複数の端末装置30a-30cと、PEファンドA-Cが使用する複数の端末装置20a-20cには、汎用のデスクトップPC、ノートPC、タブレットPC、スマートフォン等を使用することができる。
【0038】
情報提供システム10と、投資家A-Cが使用する複数の端末装置30a-30cと、PEファンドA-Cが使用する複数の端末装置20a-20cは、ネットワーク5を介して接続される。ネットワーク5は、インターネットや専用線などの通信路の総称であり、その通信媒体やプロトコルは問わない。通信媒体として例えば、光ファイバー網、ADSL網、CATV網、携帯電話網、有線LAN、無線LAN、等を使用することができる。通信プロトコルとして例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)、イーサネット(登録商標)等を使用することができる。セキュリティを強化するために、PEファンドA-Cのオフィスに設置された複数の端末装置20a-20cと、情報提供システム10間が専用線で接続されていてもよい。
【0039】
情報提供システム10は、少なくとも一つの情報処理装置(例えば、サーバー、PC)で構成される。情報提供システム10を構成する情報処理装置は、資産運用会社MCの自社内に設置されてもよいし、データセンタ内に設置されてもよい。後者の場合、クラウドサービス契約に基づき、情報提供システム10がクラウドサーバー上に構築される。
【0040】
情報提供システム10は、処理部11及び記憶部12を備える。図2には示していないが、ネットワーク5と処理部11との間には、通信機器(例えば、ルータ)が設置されている。処理部11は、取得部11a、受付部11b、検索照合部11c及び提供部11dを含む。
【0041】
処理部11の機能は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、又はハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源として、CPU、ROM、RAM、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System on a Chip)、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、ミドルウェア、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0042】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性の記録媒体を含み、各種のプログラム及びデータを記録する。本実施の形態では記憶部12に、投資案件データベース12aが構築される。
【0043】
コンソール端末装置13は、情報提供システム10のユーザーインタフェースとして使用される。コンソール端末装置13が処理部11に直接接続されている場合、コンソール端末装置13は操作部と表示部で構成される。操作部は、キーボード、マウス、タッチパネル等を備え、ユーザから受け付けた操作に基づく操作信号を処理部11に出力する。表示部は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイを備え、処理部11により生成された画像を表示する。
【0044】
コンソール端末装置13と処理部11が社内LANを経由して接続される場合、コンソール端末装置13は、操作部と表示部を含むPCで構成される。なお、情報提供システム10が社外に設置されている場合、コンソール端末装置13と処理部11は、社内LANとインターネット(または専用線)を経由して接続される。
【0045】
PEファンドの現地パートナーまたはビジネス推進デスクの担当者(以下適宜、現地担当者と表記する)は、現地で収集した投資案件情報を端末装置20に入力する。情報提供システム10の取得部11aは、端末装置20に入力された投資案件情報をネットワーク5を介して取得する。取得部11aは、取得した投資案件情報を投資案件データベース12aに蓄積する。
【0046】
なおPEファンドの現地担当者が、現地で収集した投資案件情報を資産運用会社MCの担当者に、電話、電子メール、ビジネスチャット、郵便等で伝達した場合、資産運用会社MCの担当者は、受領した投資案件情報をコンソール端末装置13に入力する。取得部11aは、コンソール端末装置13に入力された投資案件情報を取得し、取得した投資案件情報を投資案件データベース12aに蓄積する。
【0047】
投資案件データベース12aは、ファンド・オブ・ファンズのポートフォリオに含まれる全てのPEファンドから収集した投資案件情報を一括して管理するデータベースである。投資案件データベース12aで管理される投資案件情報は、各PEファンドが投資実行に至った案件、検討したが投資に至らなかった案件、及び検討中の案件の全ての案件情報が含まれる。
【0048】
図3は、投資案件データベース12aの概略的なデータ構造の一例を示す図である。図3に示す投資案件データベース12aでは、各企業の投資案件情報として、企業紹介情報、及び戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報が登録される。例えば、企業紹介情報の基本情報として、所在地、設立年、資本金、役員、従業員数、事業内容の概略などが登録される。更に企業紹介情報の付加情報として、現地担当者が収集した情報が登録されてもよい。例えば、商品や技術の特徴や強みに関する情報や、詳細な財務情報が登録されてもよい。これらの情報は、当該企業自身から得た情報であってもよいし、大学、研究機関、専門メディア、同業他社等から得た情報であってもよい。
【0049】
戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報は、現地担当者が当該企業にヒアリングした結果を踏まえた、当該企業が戦略投資家に希望する関係構築ニーズをまとめた情報である。戦略投資家に対する関係構築ニーズには、資金調達ニーズにとどまらず、ビジネスシナジーを求めた提携ニーズも含まれる。戦略投資家に対する関係構築ニーズには、戦略投資家からの出資を伴うものと、出資を伴わないものに大別される。
【0050】
戦略投資家からの出資を伴う関係構築ニーズとしては、主に、M&A、出資を伴う業務提携、出資を伴う共同開発(共同研究を含む)が挙げられる。戦略投資家からの出資を伴わない関係構築ニーズとしては、主に、出資を伴わない業務提携、出資を伴わない共同開発、融資、商材斡旋が挙げられる。
【0051】
現地担当者は、当該企業から、戦略投資家に対する関係構築ニーズの項目ごとに希望の有無をヒアリングする。希望する項目については、現地担当者は、その詳細な希望条件をヒアリングする。例えば、出資を伴う関係構築が希望された場合、現地担当者は、出資希望額、戦略投資家とファンド・オブ・ファンズとの共同出資の受け入れを希望するか、戦略投資家との合弁企業の設立を希望するか、等をヒアリングする。また例えば、業務提携や共同開発が希望された場合、現地担当者は、提携を希望する会社の業種、規模、等をヒアリングする。現地担当者は、当該企業からヒアリングした戦略投資家に対する関係構築ニーズを、端末装置20に入力する。
【0052】
投資案件データベース12aに登録される投資案件情報には、現地の規制当局による各種の法令や、当該企業または情報提供元との秘密保持契約に基づく、情報開示に関する制約情報も含まれる。例えば、当該制約情報には、FoF投資家に開示可能な情報の範囲が含まれる。現地担当者は、当該コンプライアンスに関する制約情報を、端末装置20に入力する。
【0053】
投資案件データベース12aに入力された投資案件情報には検索を容易にするために、企業ごとに、業種コード、技術分野コード、資金調達ステージを示すコード、等が付与されてもよい。これらのコードは、資産運用会社MCの担当者により付与される。
【0054】
投資案件データベース12aは、投資案件情報の検索システムとしてFoF投資家に提供される。FoF投資家は、端末装置30から、情報提供システム10の投資案件データベース12aにアクセスすることができる。FoF投資家は、投資案件データベース12a内の投資案件情報を検索する際、端末装置30に検索条件を入力する。
【0055】
例えば、投資案件データベース12a内の投資案件情報が、業種、技術分野、地域、設立年数、資金調達ステージ等の検索項目で分類されている場合、FoF投資家は、少なくとも一つの検索項目に、希望の条件を入力する。また検索項目ごとに複数の条件候補が提示される場合、FoF投資家は、少なくとも一つの検索項目について、複数の条件候補から希望する候補を選択する。またFoF投資家は、端末装置30に検索キーワードを入力することにより、当該キーワードを含む企業紹介の説明文を有する投資案件情報を検索することもできる。
【0056】
FoF投資家により指定される検索条件には、スタートアップ企業、ベンチャー企業、グロース企業(以下適宜、これらを総称して、ベンチャー企業等と表記する)に対する関係構築ニーズが含まれてもよい。当該関係構築ニーズには、投資ニーズにとどまらず、ビジネスシナジーを求めた提携ニーズも含まれる。ベンチャー企業等に対する関係構築ニーズには、ベンチャー企業等への出資を伴うものと、出資を伴わないものに大別される。ベンチャー企業等への出資を伴う関係構築ニーズとしては、主に、M&A、出資を伴う業務提携、出資を伴う共同開発が挙げられる。ベンチャー企業等への出資を伴わない関係構築ニーズとしては、主に、出資を伴わない業務提携、出資を伴わない共同開発、融資、商材斡旋が挙げられる。
【0057】
FoF投資家は、指定する検索条件に、ベンチャー企業への出資を伴う関係構築ニーズを含める場合、出資額の上限または下限の少なくとも一方を指定してもよい。
【0058】
情報提供システム10の受付部11bは、FoF投資家が使用している端末装置30から、検索条件が指定された投資案件情報の検索依頼を受け付ける。検索照合部11cは、受付部11bが受け付けた検索条件に基づき、投資案件データベース12aを検索し、検索条件に合致する投資案件情報を抽出する。抽出の具体例は後述する。提供部11dは、抽出された投資案件情報を、FoF投資家が使用している端末装置30に提供する。
【0059】
当該投資案件情報の提供を受けた端末装置30は、当該投資案件情報を画面に表示して、FoF投資家の閲覧に供する。またFoF投資家が印刷操作をした場合、端末装置30は、当該投資案件情報をプリントアウトする。
【0060】
投資案件情報の内、企業紹介情報は原則として、情報提供システム10にアクセスしたFoF投資家に無条件に提供される。なお、企業紹介情報であっても、現地の法令や秘密保持契約により開示できない部分の情報は、FoF投資家に提供されない。
【0061】
投資案件情報の内、戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報は、投資家間の優先順位に基づき、各FoF投資家に提供可能か否か、その都度、判断される。投資家間の優先順位の基本的な考え方は、下記の通りである。
(a)PEファンドにLP出資している投資家で、当該PEファンドにコミットする時点で、当該GPとの間で「金額の大きい投資家」として、当該PEファンドの他の投資家との間で優先権を有している投資家がいる場合、FoF投資家の本投資案件へのアクセス権は制約を受ける。
(b)PEファンドにLP投資している投資家で、当該PEファンドにコミットする時点で、当該GPとの間で「早期コミットの投資家」として、当該PEファンドの他の投資家との間で優先権を有している投資案件がある場合、FoF投資家の本投資案件へのアクセス権は制約を受ける。
(c)FoF投資家で、当該FoFにコミットする時点で、当該GP(本件運用会社)との間で「金額の大きい投資家」として、当該FoFの他の投資家との間で優先権を有している投資案件がある場合、本FoF投資家の本投資案件へのアクセス権は制約を受ける。(d)FoF投資家で、当該FoFにコミットする時点で、当該GP(本件運用会社)との間で「早期コミットの投資家」として、当該FoFの他の投資家との間で優先権を有している投資案件がある場合、本FoF投資家の本投資案件へのアクセス権は制約を受ける。
【0062】
なおFoF投資家が指定した検索条件に、ベンチャー企業等に対する関係構築ニーズが含まれていない場合、戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報は、FoF投資家に原則として提供されない。なおベンチャー企業等が、戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報の戦略投資家への積極的な開示を希望する場合は、上記優先順位の基準の範囲内で、FoF投資家が指定した検索条件に関わらず、FoF投資家に提供される。なお戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報の内、出資を伴わない関係構築ニーズについては、ベンチャー企業等が希望する場合、上記優先順位に関わらず、FoF投資家に提供される。
【0063】
図4は、実施の形態に係る情報提供システム10による投資案件情報の提供処理の一例を示すフローチャートである(その1)。図5は、実施の形態に係る情報提供システム10による投資案件情報の提供処理の一例を示すフローチャートである(その2)。
【0064】
受付部11bは、FoF投資家Aの端末装置30aから、検索条件が指定された投資案件情報の検索依頼を受け付ける(S10)。当該検索条件には、出資コミット予定金額、コミット予定時期が含まれる。例えば、FoF投資家Aの出資コミット予定金額は2000万円、コミット予定時期は4月1日とする。検索照合部11cは、受付部11bが受け付けた検索条件に基づき、投資案件データベース12aを検索し、検索条件に合致する投資案件情報を抽出する(S11)。
【0065】
検索照合部11cは、抽出した投資案件情報に係る企業に関して、PEファンドにLP投資をしているPE投資家で当該PEファンドにコミットする時点で、当該GPとの間で「金額の大きい投資家」として、当該PEファンドの他の投資家との間で優先権を有している投資家がいるか否か判定する(S12)。現地担当者は、当該企業に係るM&A、出資を伴う業務提携、または出資を伴う共同開発の交渉について優先権を有している投資家が存在する場合には、端末装置20から、当該企業の関係構築ニーズ情報の詳細情報欄に、当該企業の投資案件情報に係る優先権を有するPE投資家が存在することを示すステータス情報を入力する。優先権を有するPE投資家が存在する場合(S12のY)、検索照合部11cは、FoF投資家への情報開示にあたり、現地法令等のコンプライアンス上の問題がないか否か判定する(S18)。問題がない場合(S18のY)、提供部11dは、戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報を含まない投資案件情報を、FoF投資家Aの端末装置30aに提供する(S19)。図3に示す例では、企業A4の投資案件情報の戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報は、FoF投資家Aに提供されない。なお、出資を伴わない関係構築ニーズ情報については、企業A4が希望する場合、FoF投資家Aに提供される。コンプライアンス上の問題がある場合(S18のN)、提供部11dは、コンプライアンス上の問題のない範囲での情報開示に限定して、FoF投資家Aの端末装置30aに投資案件情報を提供する(S20)。
【0066】
ステップS12において、優先権を有するPE投資家が存在しない場合(S12のN)、検索照合部11cは、抽出した投資案件情報に係る企業に関して、PEファンドにLP投資をしているPE投資家で当該PEファンドにコミットする時点で、当該GPとの間で「早期コミットの投資家」として、当該PEファンドの他の投資家との間で優先権を有している投資家がいるか否か判定する(S13)。優先権を有するPE投資家が存在する場合(S13のY)、検索照合部11cは、FoF投資家への情報開示にあたり、現地法令等のコンプライアンス上の問題がないか否か判定する(S18)。問題がない場合(S18のY)、提供部11dは、戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報を含まない投資案件情報を、FoF投資家Aの端末装置30aに提供する(S19)。図3に示す例では、企業A4の投資案件情報の戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報は、FoF投資家Aに提供されない。なお、出資を伴わない関係構築ニーズ情報については、企業A4が希望する場合、FoF投資家Aに提供される。コンプライアンス上の問題がある場合(S18のN)、提供部11dは、コンプライアンス上の問題のない範囲での情報開示に限定して、FoF投資家Aの端末装置30aに投資案件情報を提供する(S20)。
【0067】
ステップS13において、優先権を有するPE投資家が存在しない場合(S13のN)、検索照合部11cは、抽出した投資案件情報に係る企業に関して、FoF投資家で、当該FoFにコミットする時点で、当該GP(本件FoF運用会社)との間で「金額の大きい投資家」として、当該FoFの他の投資家との間で優先権を有している投資家がいるか否か判定する(S14)。即ち、当該企業に関して、FoF投資家Aが入力した出資コミット予定金額より大きい出資コミット金額のFoF投資家が存在するか否か判定する。優先権を有するFoF投資家が存在する場合(S14のY)、検索照合部11cは、FoF投資家への情報開示にあたり、現地法令等のコンプライアンス上の問題がないか否か判定する(S18)。問題がない場合(S18のY)、提供部11dは、戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報を含まない投資案件情報を、FoF投資家Aの端末装置30aに提供する(S19)。図3に示す例では、企業A5の投資案件情報の戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報は、FoF投資家Aに提供されない。なお、出資を伴わない関係構築ニーズ情報については、企業A5が希望する場合、FoF投資家Aに提供される。コンプライアンス上の問題がある場合(S18のN)、提供部11dは、コンプライアンス上の問題のない範囲での情報開示に限定して、FoF投資家Aの端末装置30aに投資案件情報を提供する(S20)。
【0068】
ステップS14において、優先権を有するFoF投資家が存在しない場合(S14のN)、検索照合部11cは、抽出した投資案件情報に係る企業に関して、FoF投資家で、当該FoFにコミットする時点で、当該GP(本件FoF運用会社)との間で「早期コミットの投資家」として、当該FoFの他の投資家との間で優先権を有している投資家がいるか否か判定する(S15)。即ち、当該企業に関して、FoF投資家Aが入力したコミット予定時期より早期のコミット時期を予定しているFoF投資家、または既にコミット済みのFoF投資家が存在するか否か判定する。優先権を有するFoF投資家が存在する場合(S15のY)、検索照合部11cは、FoF投資家への情報開示にあたり、現地法令等のコンプライアンス上の問題がないか否か判定する(S18)。問題がない場合(S18のY)、提供部11dは、戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報を含まない投資案件情報を、FoF投資家Aの端末装置30aに提供する(S19)。図3に示す例では、企業A3の投資案件情報の戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報は、FoF投資家Aに提供されない。なお、出資を伴わない関係構築ニーズ情報については、企業A3が希望する場合、FoF投資家Aに提供される。コンプライアンス上の問題がある場合(S18のN)、提供部11dは、コンプライアンス上の問題のない範囲での情報開示に限定して、FoF投資家Aの端末装置30aに投資案件情報を提供する(S20)。
【0069】
ステップS15において、優先権を有するFoF資家が存在しない場合(S15のN)、検索照合部11cは、FoF投資家への情報開示にあたり、現地法令等のコンプライアンス上の問題がないか否か判定する(S16)。問題がない場合(S16のY)、提供部11dは、戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報を含む投資案件情報を、FoF投資家Aの端末装置30aに提供する(S17)。コンプライアンス上の問題がある場合(S16のN)、提供部11dは、コンプライアンス上の問題のない範囲での情報開示に限定して、FoF投資家Aの端末装置30aに投資案件情報を提供する(S20)。
【0070】
以上説明したように本実施の形態によれば、FoF投資家、ベンチャー企業等、及びVC/PEファンドの全てにメリットがあるファンド・オブ・ファンズを運営することができる。
【0071】
従来、戦略投資家が取得可能な情報は、ファンド・オブ・ファンズのポートフォリオに含まれるVC/PEファンドが投資した企業の案件情報の一部に限定されていた。VC/PEファンドからの情報提供は、戦略投資家目線の戦略投資家のニーズに合致する情報提供ではなかった。また、VC/PEファンドから提供される案件情報には、原則として投資に至らなかった案件情報は含まれていなかった。例外的に提供される場合も、戦略投資家目線からは、限定的で不十分な情報であった。
【0072】
これに対して本実施の形態では、投資に至った案件情報、投資に至らなかった案件情報、投資を検討中の案件情報、現地担当者が入手した情報を含む詳細な投資案件情報に、FoF投資家が容易にアクセス可能な仕組みが構築される。これにより、戦略投資家はファンド・オブ・ファンズへの投資を通じて、戦略的投資家の観点からの投資判断に必要な情報を獲得することができる。
【0073】
またVC/PEファンドから出資を受け入れた企業はもちろん、投資検討はされたが投資に至らなかった企業についても、本実施の形態に係る情報提供システム10を通じて、戦略投資家との関係構築に繋がる可能性がある。具体的には、情報提供システム10を通じて、資金調達機会の増加、資金調達先の多角化、大手企業との提携機会の増加が図れる。戦略投資家との関係構築に至れば、当該企業の企業価値向上に貢献する。
【0074】
またVC/PEファンドにとっても、投資先企業の企業価値が上昇すれば、ファンド自身の価値上昇に繋がる。更にVC/PEファンドの価値が上昇すれば、ファンド・オブ・ファンズ自身の価値上昇に繋がる。
【0075】
またFoF投資家間において、戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報に対するアクセス権に優先順位を付けることにより、投資家とベンチャー企業等との間の出資交渉をスムーズに進めることができる。
【0076】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0077】
例えば、戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報のアクセス権に対するFoF投資家間の優先順位付けにおいて、FoF投資家が資産運用会社MCに支払う管理報酬を考慮してもよい。例えば、図4のステップS15において、他のFoF投資家に対してコミット時期で劣後している場合(S15のY)、検索照合部11cは、検索条件に含まれるFoF投資家Aが資産運用会社MCに支払う管理報酬額が、所定の額以上であるか否か判定する。所定の額以上である場合でコンプライアンス上の問題がなければ(S16のY)、提供部11dは、戦略投資家に対する関係構築ニーズ情報を含む投資案件情報を、FoF投資家Aの端末装置30aに提供する(S17)。なお、管理報酬額ではなく、管理報酬率、またはファンド・オブ・ファンズ全体に対するFoF投資家Aの持分を基準として使用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
MC 資産運用会社、 10 情報提供システム、 11 処理部、 11a 取得部、 11b 受付部、 11c 検索照合部、 11d 提供部、 12 記憶部、 12a 投資案件データベース、 13 コンソール端末装置、 20a,20b,20c,30a,30b,30c 端末装置、 5 ネットワーク。
図1
図2
図3
図4
図5