(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099227
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220627BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20220627BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01L25/04 C
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021135545
(22)【出願日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】10 2020 216 476.2
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】リウ ウェイ
【テーマコード(参考)】
5F136
5H770
【Fターム(参考)】
5F136BA06
5F136DA22
5F136DA27
5F136DA50
5F136FA01
5F136FA51
5F136GA02
5F136GA31
5H770DA46
5H770JA10X
5H770JA11W
5H770KA05W
5H770PA22
5H770PA42
5H770PA43
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA12
5H770QA22
(57)【要約】
【課題】パワーモジュールを開示する。
【解決手段】パワーモジュールは、少なくとも1つのパワー半導体素子と、第1導電層と、パワー半導体素子をそれらの間で挟むように構成された第2導電層と、第1導電層の上に設けられた第1冷却部材と、第2導電層の下に設けられた第2冷却部材と、第1導電層と第2導電層との間の少なくとも1つのスナバコンデンサであって、第1電極と、第2電極と、それらの間のコンデンサコアと、を備えるスナバコンデンサと、第1移行層と、第2移行層と、を備える。この内部のスナバコンデンサの設計では、電圧サージが平滑化される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーモジュールであって、
少なくとも1つのパワー半導体素子と、
第1導電層と、前記パワー半導体素子をそれらの間で挟むように構成された第2導電層と、
前記第1導電層の上に設けられた第1冷却部材と、前記第2導電層の下に設けられた第2冷却部材と、
前記第1導電層と前記第2導電層との間の少なくとも1つのスナバコンデンサであって、第1電極と、第2電極と、それらの間のコンデンサコアと、を備えるスナバコンデンサと、
第1移行層と、
第2移行層と、を備え、
前記第1移行層および前記第2移行層は、導電性であり、
前記第1移行層は、前記第1導電層と前記第1電極との間にあり、前記第2移行層は、前記第2電極と前記第2導電層との間にあり、前記第1移行層の熱膨張係数は、前記第1導電層の熱膨張係数と前記第1電極の熱膨張係数との間であり、前記第2移行層の熱膨張係数は、前記第2電極の熱膨張係数と前記第2導電層の熱膨張係数との間である、パワーモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーモジュールであって、前記パワーモジュールは第3移行層を更に備え、前記第3移行層は導電性であり、
前記第3移行層は、前記第1電極と前記コンデンサコアとの間にあり、前記第3移行層の熱膨張係数は、前記第1電極の熱膨張係数と前記コンデンサコアの熱膨張係数との間である、パワーモジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のパワーモジュールであって、前記パワーモジュールは第4移行層を更に備え、前記第4移行層は導電性であり、
前記第4移行層は、前記コンデンサコアと前記第2電極との間にあり、前記第4移行層の熱膨張係数は、前記コンデンサコアの熱膨張係数と前記第2電極の熱膨張係数との間である、パワーモジュール。
【請求項4】
請求項2または3に記載のパワーモジュールであって、前記第3移行層は導電性の樹脂層である、または、前記第4移行層は導電性の樹脂層である、パワーモジュール。
【請求項5】
請求項4に記載のパワーモジュールであって、前記導電性の樹脂層は、銀粒子がドープされた樹脂層である、パワーモジュール。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のパワーモジュールであって、前記スナバコンデンサはMLCCである、パワーモジュール。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載のパワーモジュールであって、前記第1冷却部材はピンフィン構造を有する、および/または、前記第2冷却部材はピンフィン構造を有する、パワーモジュール。
【請求項8】
請求項1~5の何れか一項に記載のパワーモジュールであって、前記第1移行層は、前記第1導電層および前記第1電極にはんだ付け/焼結されている、および/または、前記第2移行層は、前記第2電極および前記第2導電層にはんだ付け/焼結されている、パワーモジュール。
【請求項9】
請求項8に記載のパワーモジュールであって、前記第1移行層は、前記第1導電層および前記第1電極に超音波はんだ付けされている、および/または、前記第2移行層は、前記第2電極および前記第2導電層に超音波はんだ付けされている、パワーモジュール。
【請求項10】
請求項8に記載のパワーモジュールであって、前記第1移行層は、前記第1導電層および前記第1電極に銀によって焼結されている、および/または、前記第2移行層は、前記第2電極および前記第2導電層に銀によって焼結されている、パワーモジュール。
【請求項11】
請求項1~5の何れか一項に記載のパワーモジュールであって、前記パワー半導体素子はSiCMOSFETである、パワーモジュール。
【請求項12】
請求項1~5の何れか一項に記載のパワーモジュールであって、前記スナバコンデンサは前記パワー半導体素子に隣接して配置されている、パワーモジュール。
【請求項13】
請求項1~5の何れか一項に記載のパワーモジュールであって、
前記パワーモジュールの動作温度は、-40℃~150℃であり、および/または、
前記第1導電層と前記第2導電層との間の電圧は、300V~800Vであり、および/または、
前記第1導電層と前記第2導電層との間の電流は、100A~1000Aである、パワーモジュール。
【請求項14】
パワーモジュールであって、
少なくとも1つのパワー半導体素子と、
第1導電層と、前記パワー半導体素子をそれらの間で挟むように構成された第2導電層と、
前記第1導電層の上に設けられた第1冷却部材と、前記第2導電層の下に設けられた第2冷却部材と、
前記第1導電層と前記第2導電層との間の少なくとも1つのスナバコンデンサであって、第1電極と、第2電極と、それらの間のコンデンサコアと、を備え、前記第1電極は前記第1導電層に結合され、前記第2電極は前記第2導電層に結合されているスナバコンデンサと、
第1移行層と、
第2移行層と、を備え、
前記第1移行層は、前記第1電極と前記コンデンサコアとの間にあり、前記第2移行層は、前記コンデンサコアと前記第2電極との間にあり、前記第1移行層の熱膨張係数は、前記第1電極の熱膨張係数と前記コンデンサコアの熱膨張係数との間であり、前記第2移行層の熱膨張係数は、前記コンデンサコアの熱膨張係数と前記第2電極の熱膨張係数との間である、パワーモジュール。
【請求項15】
請求項14に記載のパワーモジュールであって、前記パワーモジュールは第3移行層を更に備え、前記第3移行層は導電性であり、
前記第3移行層は、前記第1導電層と前記第1電極との間にあり、前記第3移行層の熱膨張係数は、前記第1導電層の熱膨張係数と前記第1電極の熱膨張係数との間である、パワーモジュール。
【請求項16】
請求項14に記載のパワーモジュールであって、前記パワーモジュールは第4移行層を更に備え、前記第4移行層は導電性であり、
前記第4移行層は、前記第2電極と前記第2導電層との間にあり、前記第4移行層の熱膨張係数は、前記第2電極の熱膨張係数と前記第2導電層の熱膨張係数との間である、パワーモジュール。
【請求項17】
請求項14に記載のパワーモジュールであって、前記第1移行層は導電性の樹脂層である、または、前記第2移行層は導電性の樹脂層である、パワーモジュール。
【請求項18】
請求項17に記載のパワーモジュールであって、前記導電性の樹脂層は、銀粒子がドープされた樹脂層である、パワーモジュール。
【請求項19】
請求項14~18の何れか一項に記載のパワーモジュールであって、前記スナバコンデンサはMLCCである、パワーモジュール。
【請求項20】
請求項14~18の何れか一項に記載のパワーモジュールであって、前記第1冷却部材はピンフィン構造を有する、および/または、前記第2冷却部材はピンフィン構造を有する、パワーモジュール。
【請求項21】
請求項15または16に記載のパワーモジュールであって、前記第3移行層は、前記第1導電層および前記第1電極にはんだ付け/焼結されている、および/または、前記第4移行層は、前記第2電極および前記第2導電層にはんだ付け/焼結されている、パワーモジュール。
【請求項22】
請求項21に記載のパワーモジュールであって、前記第3移行層は、前記第1導電層および前記第1電極に超音波はんだ付けされている、および/または、前記第4移行層は、前記第2電極および前記第2導電層に超音波はんだ付けされている、パワーモジュール。
【請求項23】
請求項21に記載のパワーモジュールであって、前記第3移行層は、前記第1導電層および前記第1電極に銀によって焼結されている、および/または、前記第4移行層は、前記第2電極および前記第2導電層に銀によって焼結されている、パワーモジュール。
【請求項24】
請求項14~18の何れか一項に記載のパワーモジュールであって、前記パワー半導体素子はSiCMOSFETである、パワーモジュール。
【請求項25】
請求項14~18の何れか一項に記載のパワーモジュールであって、前記スナバコンデンサは、前記パワー半導体素子に隣接して配置されている、パワーモジュール。
【請求項26】
請求項14~18の何れか一項に記載のパワーモジュールであって、
前記パワーモジュールの動作温度は、-40℃~150℃であり、および/または
前記第1導電層と前記第2導電層との間の電圧は、300V~800Vであり、および/または、
前記第1導電層と前記第2導電層との間の電流は、100A~1000Aである、パワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール、特に内部のスナバコンデンサ(inner subber capacitor)を備えるパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイス(例えばSiC、GaNなどの、WBG(wide bandgap/ワイドバンドギャップ)半導体、)は、電源用途のように高速で効率的なスイッチングが要求される用途において、ますます普及が進んでいる。さらに、パワーデバイスは、通常、パワーモジュールパッケージおよび周囲の回路の浮遊インダクタンスと結合している。パワーデバイスの高速スイッチング能力は、高い「dv/dt」を引き起こす。その結果、スイッチオフ時に、パワーデバイスのドレイン端子とソース端子との間に大きなサージ電圧およびEMI(Electromagnetic Interference/電磁干渉)ノイズが生じる。
【0003】
この電圧サージを平滑化してノイズを低減するために、
図1に示すようにスナバコンデンサCcが追加される。
図2を参照すると、スナバコンデンサがある場合とない場合の、2つの電圧波形が各々示される。破線で示されるように、電圧サージはスナバコンデンサによって平滑化される。したがって、スナバコンデンサは、WBG半導体用途において不可避な素子となる。
【0004】
次に
図3を参照すると、従来のインバータの設計がブロック図で示される。インバータは、ACコネクタ101と、DCコネクタ102と、WBGパワーデバイスなどの複数のパワーデバイス1031を備えるパワーモジュール103と、パワーモジュール103に隣接するスナバコンデンサ104と、を備える。スナバコンデンサ104は、パワーデバイス1031に可及的に近づけて設ける必要がある。従来のインバータでは、スナバコンデンサが、パワーデバイスの一部に隣接して設けられているのみである。そのため、スナバコンデンサの平滑化効果が制限されている。
【0005】
また、MLCC(Multi-layer Ceramic Capacitor/多層セラミックコンデンサ)は、その適切な容量値のために、従来のインバータの設計で一般的に使用されている。MLCCは、2つの外部電極と、誘電体電極および内部電極を備えるコンデンサコアと、を備える。
図4を参照すると、MLCC104は、はんだ材料6によって銅パターン層114上にはんだ付けされている。MLCCの下に、ギャップ118が存在する。熱樹脂112は、銅パターン層114とピンフィン冷却部材110との間に設けられている。(当業者であれば、銅パターンと冷却部材との間には絶縁材料があり、この場合、熱樹脂112が絶縁材料として使用されることを理解されたい。)この設計では、MLCC104によって発生される熱は、はんだ材料6を通してのみ放散することができる。その結果、不所望な熱伝導効率が発生する。場合によっては、スナバコンデンサが、熱状態が悪い場合に焼損さえする。
【発明の概要】
【0006】
スナバコンデンサの熱状態を改善し、平滑化効果を高めるために、パワーモジュールが開示される。パワーモジュールは、少なくとも1つのパワー半導体素子と、第1導電層と、パワー半導体素子をそれらの間で挟むように構成された第2導電層と、第1導電層の上に設けられた第1冷却部材と、第2導電層の下に設けられた第2冷却部材と、第1導電層と第2導電層との間の少なくとも1つのスナバコンデンサであって、第1電極と、第2電極と、それらの間のコンデンサコアと、を備えるスナバコンデンサと、第1移行層と、第2移行層と、を備える。第1移行層および第2移行層は、導電性である。第1移行層は、第1導電層と第1電極との間にある。第2移行層は、第2電極と第2導電層との間にある。第1移行層の熱膨張係数は、第1導電層の熱膨張係数と第1電極の熱膨張係数との間である。第2移行層の熱膨張係数は、第2電極の熱膨張係数と第2導電層の熱膨張係数との間である。この内部のスナバコンデンサの設計では、電圧サージが平滑化される。追加的に、両方の冷却部材から熱を放散できるため、スナバコンデンサの過熱が防止される。さらに、移行層の助けによって、電極からバスバーへの熱移行が十分に緩やかであるため、応力の不均一な分布を回避できる。したがって、スナバコンデンサは、しっかりと固定されている。
【0007】
本発明の別の態様によれば、パワーモジュールは第3移行層を更に備える。第3移行層は導電性である。第3移行層は、第1電極とコンデンサコアとの間にある。第3移行層の熱膨張係数は、第1電極の熱膨張係数とコンデンサコアの熱膨張係数との間である。
【0008】
本発明の別の態様によれば、パワーモジュールは第4移行層を更に備える。第4移行層は導電性である。第4移行層は、コンデンサコアと第2電極との間にある。第4移行層の熱膨張係数は、コンデンサコアの熱膨張係数と第2電極の熱膨張係数との間である。
【0009】
本発明の別の態様によれば、第3移行層は導電性の樹脂層である、または、第4移行層は導電性の樹脂層である。
【0010】
本発明の別の態様によれば、導電性の樹脂層は、銀粒子がドープされた樹脂層である。
【0011】
本発明の別の態様によれば、スナバコンデンサはMLCCである。
【0012】
本発明の別の態様によれば、第1冷却部材はピンフィン構造を有する、および/または、第2冷却部材はピンフィン構造を有する。
【0013】
本発明の別の態様によれば、第1移行層は、第1導電層および第1電極にはんだ付け/焼結されている、および/または、第2移行層は、第2電極および第2導電層にはんだ付け/焼結されている。
【0014】
本発明の別の態様によれば、第1移行層は、第1導電層および第1電極に銀によって焼結されている、および/または、第2移行層は、第2電極および第2導電層に銀によって焼結されている。
【0015】
本発明の別の態様によれば、パワー半導体素子は、SiCMOSFETである。
【0016】
本発明の別の態様によれば、スナバコンデンサは、パワー半導体素子に隣接して配置されている。
【0017】
本発明の別の態様によれば、パワーモジュールの動作温度は、-40℃~150℃である。第1導電層と第2導電層との間の電圧は、300V~800Vである。第1導電層と第2導電層との間の電流は、100A~1000Aである。
【0018】
本発明の別の態様によれば、別のパワーモジュールも開示される。パワーモジュールは、少なくとも1つのパワー半導体素子と、第1導電層と、パワー半導体素子をそれらの間で挟むように構成された第2導電層と、第1導電層の上に設けられた第1冷却部材と、第2導電層の下に設けられた第2冷却部材と、第1導電層と第2導電層との間の少なくとも1つのスナバコンデンサであって、第1電極と、第2電極と、それらの間のコンデンサコアと、を備え、第1電極は第1導電層に結合され、第2電極は第2導電層に結合されているスナバコンデンサと、第1移行層と、第2移行層と、を備える。第1移行層は、第1電極とコンデンサコアとの間にある。第2移行層は、コンデンサコアと第2電極との間にある。第1移行層の熱膨張係数は、第1電極の熱膨張係数とコンデンサコアの熱膨張係数との間である。第2移行層の熱膨張係数は、コンデンサコアの熱膨張係数と第2電極の熱膨張係数との間である。
【0019】
本発明の別の態様によれば、パワーモジュールは第3移行層を更に備える。第3移行層は導電性である。第3移行層は、第1導電層と第1電極との間にある。第3移行層の熱膨張係数は、第1導電層の熱膨張係数と第1電極の熱膨張係数との間である。
【0020】
本発明の別の態様によれば、パワーモジュールは第4移行層を更に備える。第4移行層は導電性である。第4移行層は、第2電極と第2導電層との間にある。第4移行層の熱膨張係数は、第2電極の熱膨張係数と第2導電層の熱膨張係数との間である。
【0021】
本発明の別の態様によれば、第1移行層は導電性の樹脂層である、または、第2移行層は導電性の樹脂層である。
【0022】
本発明の別の態様によれば、導電性の樹脂層は、銀粒子がドープされた樹脂層である。
【0023】
本発明の別の態様によれば、スナバコンデンサはMLCCである。
【0024】
本発明の別の態様によれば、第1冷却部材はピンフィン構造を有する、および/または、第2冷却部材はピンフィン構造を有する。
【0025】
本発明の別の態様によれば、第3移行層は、第1導電層および第1電極にはんだ付け/焼結されている、および/または、第4移行層は、第2電極および第2導電層にはんだ付け/焼結されている。
【0026】
本発明の別の態様によれば、第3移行層は、第1導電層および第1電極に銀によって焼結されている、および/または、第4移行層は、第2電極および第2導電層に銀によって焼結されている。
【0027】
本発明の別の態様によれば、パワー半導体素子はSiCMOSFETである。
【0028】
本発明の別の態様によれば、スナバコンデンサは、パワー半導体素子に隣接して配置されている。
【0029】
本発明の別の態様によれば、パワーモジュールの動作温度は、-40℃~150℃である。第1導電層と第2導電層との間の電圧は、300V~800Vである。第1導電層と第2導電層との間の電流は、100A~1000Aである。
【0030】
実施形態の他の態様および利点は、説明される実施形態の原理を例として示す添付の図面と併せて解釈される以下の詳細な説明から明らかになる。
【0031】
記載される実施形態およびその利点は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することによって最もよく理解することができる。これらの図面は、記載される実施形態の精神および範囲から逸脱することなく、記載される実施形態に対して当業者が行うことができる形態および詳細のいかなる変更をも、決して制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】パワーデバイスを使用する電源回路を示す図である。
【
図2】スナバコンデンサの有無による2つの電圧波形の各々を示す図である。
【
図3】スナバコンデンサがパワーモジュールに隣接して設けられている従来のインバータを示す図である。
【
図4】ピンフィン冷却部材を備えるスナバコンデンサ装置の断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態によるパワーモジュールの断面図である。
【
図6】スナバコンデンサのみを示す、本発明の第2実施形態によるパワーモジュールの断面図である。
【
図7】スナバコンデンサのみを示す、本発明の第3実施形態によるパワーモジュールの断面図である。
【
図8】スナバコンデンサのみを示す、本発明の第4実施形態によるパワーモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここで図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明では、PCB用途とは異なり、異なる実施形態のパワーモジュールは、主に、自動車産業で使用される。本発明におけるパワーモジュールの動作条件は、はるかにより厳しい。例えば、パワーモジュールの動作温度は、-40℃~150℃である。第1導電層と第2導電層との間の電圧は、300V~800Vである。第1導電層と第2導電層との間の電流は、100A~1000Aである。したがって、上記の要求を満たすためには、コンデンサに対する温度の影響を考慮する必要がある。
【0034】
最初に、
図5を参照すると、本発明の第1実施形態によるパワーモジュールが開示される。パワーモジュールは、SiCデバイスなどの少なくとも1つのパワー半導体素子1と、第1導電層21と、パワー半導体素子1をそれらの間で挟むように構成された第2導電層22と、第1導電層21の上に設けられた第1冷却部材31と、第2導電層22の下に設けられた第2冷却部材32と、を備える。第1導電層および第2導電層は各々、インバータの第1バスバーおよび第2バスバーに結合されている。このインバータは、パワーモジュールを含む。第1冷却部材31および第2冷却部材32は両方とも、ピンフィン構造を有する。当業者は、冷却部材は各々、その間の絶縁材料(図示せず)によって、導電層に対して絶縁性であることを理解されたい。ピンフィン構造は各々、ベースプレート311、321と、ベースプレート311、321の上のフィン312、322と、を備える。パワー半導体素子1は、はんだ材料6によって、第1導電層21および第2導電層22にはんだ付けされている。通常、パワー半導体素子1は、極めて薄い。パワー半導体素子1が電極間で短絡することを防ぐために、ガスケット7がパワー半導体素子1に設けられている。
【0035】
パワーモジュールは、第1導電層21と第2導電層22との間に少なくとも1つのスナバコンデンサ4を更に備える。スナバコンデンサ4は、第1電極41と、第2電極42と、その間のコンデンサコア40と、を備える。スナバコンデンサ4は、MLCCであり、パワー半導体素子1に隣接して設けられている。そのため、パワー半導体素子のスイッチオンおよびオフ時の、電圧サージが平滑化される。
【0036】
スナバコンデンサ4は、はんだ材料6によって、第1導電層および第2導電層にはんだ付けされている。第1電極41は第1導電層21に結合されている。第2電極42は第2導電層22に結合されている。通常、電極の材料は2本のバスバーの材料と異なる。したがって、熱膨張係数が異なることに起因する、応力の不均一な分布が存在する。そして、パワー半導体素子のスイッチオンおよびオフによる加熱と冷却が交互に繰り返された後で、スナバコンデンサが緩んでしまう可能性がある。これに鑑み、パワーモジュールは、共に導電性である第1移行層51と第2移行層52と、を更に備える。第1移行層51は、第1導電層21と第1電極41との間にある。一方、第2移行層52は、第2電極42と第2導電層22との間にある。第1移行層51の熱膨張係数は、第1導電層21の熱膨張係数と第1電極41の熱膨張係数との間である。第2移行層52の熱膨張係数は、第2電極42の熱膨張係数と第2導電層22の熱膨張係数との間である。第1移行層51は、はんだ材料6によって、第1導電層21および第1電極41にはんだ付けされている。第2移行層52は、はんだ材料6によって、第2電極42および第2導電層22にはんだ付けされている。(
図5では、移行層とバスバーとを結合するはんだ材料6のみを示す)。簡単に説明すると、これらの2つの移行層によって、電極からバスバーへの緩やかな熱移行が提供され、応力の不均一な分布が回避される。したがって、スナバコンデンサ4は、しっかりと固定される。
【0037】
はんだ材料6ではんだ付けする以外に、第1移行層と第2移行層の両方を、銀焼結などで、導電層および電極に焼結することもできる。
【0038】
次に、
図6を参照すると、本発明の第2実施形態によるパワーモジュールの断面図が示される。この実施形態において、パワー半導体素子の配置は、第1実施形態と同じである。そのため、スナバコンデンサ4のみを示し、パワー半導体素子と2つの冷却部材が省略されている。
図6に示すように、スナバコンデンサ4の第1電極41は、はんだ材料6によって第1導電層21に結合されている。スナバコンデンサ4の第2電極42も、同様に第2導電層22に結合されている。第1実施形態と異なるのは、第1移行層と第2移行層の配置である。
図6において、第1移行層51は、第1電極41とコンデンサコア40との間にある。第2移行層52は、コンデンサコア40と第2電極42との間にある。第1移行層51の熱膨張係数は、第1電極41の熱膨張係数とコンデンサコア40の熱膨張係数の間である。第2移行層52の熱膨張係数は、コンデンサコア40の熱膨張係数と第2電極42の熱膨張係数との間である。この設計では、異なる熱影響に起因するスナバコンデンサ4における応力の不均一な分布が回避される。したがって、スナバコンデンサの寿命が延びる。
【0039】
第1移行層51および第2移行層52は、導電性の樹脂層、特に銀粒子がドープされた樹脂層である。
【0040】
次に、スナバコンデンサのみを示す、本発明の第3実施形態によるパワーモジュールの断面図である
図7を参照する。スナバコンデンサ4の基本的な配置は、第1実施形態と同じである。異なるのは、パワーモジュールが第3移行層71および第4移行層72を更に備える点である。第3移行層71は、第1電極41とコンデンサコア40との間の導電層である。第3移行層71の熱膨張係数は、第1電極41の熱膨張係数とコンデンサコア40の熱膨張係数との間である。第4移行層72は、コンデンサコア40と第2電極42との間の導電層である。第4移行層72の熱膨張係数は、コンデンサコア40の熱膨張係数と第2電極42の熱膨張係数との間である。同様に、第3移行層71および第4移行層72の配置によって、スナバコンデンサへの熱影響が、更に改善される。
【0041】
次に、スナバコンデンサ4のみを示す、本発明の第4実施形態によるパワーモジュールの断面図である
図8を参照する。スナバコンデンサ4の基本的な配置は、第2実施形態と同じである。異なるのは、パワーモジュールが第3移行層71および第4移行層72を更に備える点である。第3移行層71は、第1導電層21と第1電極41との間の導電層である。第3移行層71の熱膨張係数は、第1導電層21の熱膨張係数と第1電極41の熱膨張係数との間である。第4移行層72は、第2電極42と第2導電層22との間の導電層である。第4移行層72の熱膨張係数は、第2電極42の熱膨張係数と第2導電層22の熱膨張係数との間である。この実施形態において、第3移行層71は、第1導電層21および第1電極41に焼結されている。一方、第4移行層72は、第2導電層22および第2電極42に焼結されている。第3移行層71および第4移行層72の配置によって、スナバコンデンサとバスバーとの間の熱影響がさらに改善され、応力の不均一な分布に起因してスナバコンデンサが緩むことを防止する。
【0042】
追加的に、別の好適な実施形態において、第3移行層71または第4移行層72の両方に関して、いずれか一方を省略することができる。例えば、第3移行層71が省略され、第1導電層21が第1電極41に直接結合されている。その場合、第1導電層21は、第1電極41に超音波はんだ付けされている。別の好適な実施形態において、1つのスナバコンデンサは、1つを超えるパワー半導体素子に対応し、電圧サージを平滑化する。
【0043】
いくつかの代替的な構造素子および処理ステップが、好適な実施形態のために提案されている。したがって、本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、この説明は、本発明を例示するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、当業者は、種々の変形および応用を想到することができる。
【外国語明細書】