IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 財團法人工業技術研究院の特許一覧

<>
  • 特開-空冷式燃料電池スタック 図1
  • 特開-空冷式燃料電池スタック 図2
  • 特開-空冷式燃料電池スタック 図3A
  • 特開-空冷式燃料電池スタック 図3B
  • 特開-空冷式燃料電池スタック 図4
  • 特開-空冷式燃料電池スタック 図5
  • 特開-空冷式燃料電池スタック 図6
  • 特開-空冷式燃料電池スタック 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099252
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】空冷式燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/028 20160101AFI20220627BHJP
   H01M 8/0276 20160101ALI20220627BHJP
【FI】
H01M8/028
H01M8/0276
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021178895
(22)【出願日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】109145454
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】張 嵩駿
(72)【発明者】
【氏名】▲ライ▼ 建銘
(72)【発明者】
【氏名】▲フアン▼ 秋萍
(72)【発明者】
【氏名】陳 耿陽
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗端
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA13
5H126BB06
5H126EE21
5H126EE22
5H126EE23
5H126JJ00
5H126JJ03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発電の一貫性を達成するとともに、バッテリーセルの気密性を改善するようにした空冷式燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】アノード側の構造体112の周囲に配置されているとともに、アノードバイポーラプレート104及びイオン導電性の膜116により挟まれているアノードシール部材110と、カソード側の構造体114の周囲に配置されているとともに、カソードバイポーラプレート106及びイオン導電性の膜により挟まれているカソードシール部材110’とを具えているようにした空冷式燃料電池スタック100において、アノードシール部材は第1のシール材118と、第2のシール材120とを有しており、第1のシール材のショア硬さが第2のシール材のショア硬さと異なっており、第1のシール材及び第2のシール材の配置方向を圧縮方向に対し垂直とした構造を持つ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池を有する空冷式燃料電池スタックであって、前記燃料電池の各々が、
アノードバイポーラプレートと、
カソードバイポーラプレートと、
前記アノードバイポーラプレート及び前記カソードバイポーラプレート間に位置する膜電極接合体であって、該膜電極接合体は、アノード側の構造体と、カソード側の構造体と、イオン導電性の膜とを含み、該イオン導電性の膜は前記アノード側の構造体及び前記カソード側の構造体間に挟まれているようにした膜電極接合体と、
前記アノード側の構造体の周囲に配置されているとともに、前記アノードバイポーラプレート及び前記イオン導電性の膜により挟まれているアノードシール部材と、
前記カソード側の構造体の周囲に配置されているとともに、前記カソードバイポーラプレート及び前記イオン導電性の膜により挟まれているカソードシール部材と
を具えているようにした空冷式燃料電池スタックにおいて、
前記アノードシール部材が、第1のシール材と、第2のシール材とを含み、前記第1のシール材のショア硬さが前記第2のシール材のショア硬さと異なっており、前記第1のシール材及び前記第2のシール材の配置方向を、前記複数の燃料電池の圧縮方向に対し垂直とした空冷式燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第1のシール材が前記第2のシール材及び前記アノード側の構造体間に介在されているようにした空冷式燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第2のシール材が前記第1のシール材及び前記アノード側の構造体間に介在されているようにした空冷式燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第1のシール材の前記ショア硬さをA70以下とし、前記第2のシール材の前記ショア硬さをA90以上とした空冷式燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第1のシール材のヤング率を0.2GPa以下とした空冷式燃料電池スタック。
【請求項6】
請求項1に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第2のシール材と前記アノードバイポーラプレートとを同じ材料から形成した空冷式燃料電池スタック。
【請求項7】
請求項6に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第2のシール材と前記アノードバイポーラプレートとを一体構造とした空冷式燃料電池スタック。
【請求項8】
請求項1に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第1のシール材の幅対前記第2のシール材の高さの比を20%以上とした空冷式燃料電池スタック。
【請求項9】
請求項1に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、
前記カソードシール部材が、第3のシール材と、第4のシール材とを含み、前記第3のシール材のショア硬さが前記第4のシール材のショア硬さと異なっており、前記第3のシール材及び前記第4のシール材の配置方向を、前記複数の燃料電池の圧縮方向に対し垂直とした空冷式燃料電池スタック。
【請求項10】
請求項9に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第3のシール材が前記第4のシール材及び前記カソード側の構造体間に介在されているようにした空冷式燃料電池スタック。
【請求項11】
請求項9に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第4のシール材が前記第3のシール材及び前記カソード側の構造体間に介在されているようにした空冷式燃料電池スタック。
【請求項12】
請求項9に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第3のシール材の前記ショア硬さをA70以下とし、前記第4のシール材の前記ショア硬さをA90以上とした空冷式燃料電池スタック。
【請求項13】
請求項9に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第3のシール材のヤング率を0.2GPa以下とした空冷式燃料電池スタック。
【請求項14】
請求項9に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第4のシール材と前記カソードバイポーラプレートとを同じ材料から形成した空冷式燃料電池スタック。
【請求項15】
請求項14に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第4のシール材と前記カソードバイポーラプレートとを一体構造とした空冷式燃料電池スタック。
【請求項16】
請求項9に記載の空冷式燃料電池スタックにおいて、前記第3のシール材の幅対前記第4のシール材の高さの比を20%以上とした空冷式燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空冷式燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空冷式燃料電池スタックは複数の燃料電池により構成されており、これらの燃料電池の各々のバイポーラプレートには、反応チャネルと放熱チャネルとの双方が設けられている。アノード燃料とカソード燃料との相互連結や、燃料の漏洩のような問題を回避するために、通常、弾性シール材を用いて燃料電池の反応領域の外縁部を封止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、圧縮接合処理(アセンブリ)に際しては、圧力/捻転の非一貫性又は(電極プレートの縁部における隅部を消失するような)構造上の欠陥により、電極の厚さ/圧縮量に変化を生ぜしめるおそれがある。燃料電池の各々の電極の厚さ/圧縮量が異なると、燃料電池の各々の圧縮量における非一貫性の問題が生じ、従って、発電(電力発生)性能に影響を及ぼすことになる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の空冷式燃料電池スタックには複数の燃料電池を設ける。これらの燃料電池の各々には、アノードバイポーラプレートと、カソードバイポーラプレートと、膜電極接合体(MEA)と、アノードシール部材と、カソードシール部材とを設ける。膜電極接合体は、アノードバイポーラプレートとカソードバイポーラプレートとの間に位置させており、この場合この膜電極接合体はアノード側の構造体と、カソード側の構造体と、イオン導電性の膜とを有するようにし、このイオン導電性の膜はアノード側の構造体とカソード側の構造体との間に挟まれているようにする。アノードシール部材はアノード側の構造体の周囲に配置するとともに、アノードバイポーラプレートとイオン導電性の膜とにより挟まれているようにする。このアノードシール部材は、第1のシール材と第2のシール材とを有し、第1のシール材のショア硬さは第2のシール材のショア硬さと相違させ、第1のシール材と第2のシール材との配置方向は、複数の燃料電池の圧縮方向に対して垂直となるようにする。
【発明の効果】
【0005】
上記に基づくに、本発明の空冷式燃料電池スタックは、バッテリーセルの各々を厚さ方向に圧縮する量を固定する気密部材を以って設計して、発電の一貫性を達成するようにするとともに、バッテリーセルの気密性を改善するようにもし、従って、利用率及び安全性の問題を低減させる燃料の漏洩を回避させるものである。
【0006】
添付図面を有する幾つかの代表的な実施形態を以下で詳細に説明して本発明を更に詳細に説明する。
【0007】
これら添付図面は本発明を更に理解するために含めるものであり、本明細書の一部に組み込んで本明細書の一部を構成するようにする。これらの図面は代表的な実施形態を示すものであり、本発明の説明と相俟って本発明の原理を説明する作用をするものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1実施形態による空冷式燃料電池スタックを示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態による空冷式燃料電池スタックを示す断面図である。
図3A図3Aは、本発明の第3実施形態による空冷式燃料電池スタックを示す断面図である。
図3B図3Bは、接合処理後の図3Aの空冷式燃料電池スタックを示す断面図である。
図4図4は、本発明の第4実施形態による空冷式燃料電池スタックを示す断面図である。
図5図5は、本発明の第5実施形態による空冷式燃料電池スタックを示す断面図である。
図6図6は、本発明の第6実施形態による空冷式燃料電池スタックを示す断面図である。
図7図7は、本発明の第7実施形態による空冷式燃料電池スタックを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、図面を参照して本発明の代表的な実施形態を包括的に説明するが、本発明は種々の異なる形態で実施することもできるものであり、明細書の実施形態に限定されるものとして解釈すべきものではない。図面において、明瞭の為には、各々の領域、部分及び層の大きさ及び厚さを実際のスケール(比率)に示す必要があるものではない。
【0010】
本発明は、発電の一貫性を達成しうるとともに、燃料の漏洩により生ぜしめられる利用率及び安全性の低減のような問題を回避しうる空冷式燃料電池スタックを提供するものである。
【0011】
図1は、本発明の第1実施形態による空冷式燃料電池スタックを示す断面図である。
【0012】
図1を参照するに、第1実施形態の空冷式燃料電池スタック100は複数の燃料電池(“セル”とも称する)102を有しており、これら複数の燃料電池102が直列又は並列で電気的且つ構造的に結合されている。これら燃料電池102の各々は、アノードバイポーラプレート104と、カソードバイポーラプレート106と、膜電極接合体108と、アノードシール部材110と、カソードシール部材110’とを有している。膜電極接合体108はアノードバイポーラプレート104とカソードバイポーラプレート106との間に位置しており、この場合膜電極接合体108はアノード側の構造体112と、カソード側の構造体114と、イオン導電性の膜116とを有している。イオン導電性の膜116はアノード側の構造体112とカソード側の構造体114との間に挟まれている。この実施形態では、アノードバイポーラプレート104の平面積とカソードバイポーラプレート106の平面積との双方を、イオン導電性の膜116の平面積とほぼ同じとし、アノード側の構造体112の平面積とカソード側の構造体114の平面積との双方を、イオン導電性の膜116の平面積よりも小さくする。従って、アノードシール部材110をアノード側の構造体112の周囲に配置するとともに、アノードバイポーラプレート104とイオン導電性の膜116とにより挟まれるようにする。具体的には、アノードシール部材110をアノード側の構造体112の周囲に配置し、アノード側の構造体112とアノードシール部材110との合計の平面積が、アノードバイポーラプレート104の平面積と、カソードバイポーラプレート106の平面積と、イオン導電性の膜116の平面積とそれぞれ同じとなるようにする。特に、アノードシール部材110は第1のシール材118と第2のシール材120とを有している。これら第1のシール材118と第2のシール材120とは実質的に弾性率が異なる材料とする。例えば、第1のシール材118のショア硬さは第2のシール材120のショア硬さと相違させ、第1のシール材118と第2のシール材120との配置方向は、燃料電池102の圧縮方向に対して垂直とする。図1は断面図である為、アノードシール部材110はアノード側の構造体112の両側に示されている。しかし、空冷式燃料電池スタック100は一般的に方形のシート状接合構造体であり、従って、アノードシール部材110が実際にアノード側の構造体112の全周囲に沿ってこのアノード側の構造体112を封止していることを理解すべきである。
【0013】
引き続き図1を参照する。この実施形態における第2のシール材120を第1のシール材118とアノード側の構造体112との間に介在させる、すなわち、第1のシール材118により第2のシール材120の周囲を覆い、この第2のシール材120が内側に位置するようにする。第1のシール材118のショア硬さは、例えばA70以下とする。一実施形態では、第1のシール材118が0.2GPa以下のヤング率を有するようにしうる。従って、空冷式燃料電池スタック100の接合処理に際しては、燃料電池102(バッテリーセル)の各々の気密性を保ち、利用率及び安全性の問題を低減させる燃料の漏洩を回避させるようにすることができる。第2のシール材120のショア硬さは、例えばA90以下とし、従って、その厚さが接合処理の前後で変化しないようにするとともに、燃料電池102(バッテリーセル)の各々の厚さ方向の圧縮量を固定して、燃料電池102の各々の発電の一貫性を達成するようにすることができる。第1のシール材118の材料の例はゴム又はシリコーンとすることができるが、これらに限定されるものではなく、第2のシール材120の材料の例は金属、又はプラスチック、又はセラミックとすることができるが、これらに限定されるものではない。更に、気密性の視点からするに、第1のシール材118の幅w対第2のシール材120の高さh(すなわち、第1のシール材118を圧縮した後に期待される高さ)の比は約20%以上とし、第1実施形態では、第1のシール材118の幅w対第2のシール材120の高さhの比は30%以上とする。
【0014】
空冷式燃料電池スタック100には、直接空冷又は間接空冷を採用しうる。一実施形態では、空冷式燃料電池スタック100が発電反応に対して直接空冷を採用する場合、アノード側の密閉性がこの時点での燃料電池102の性能に直接影響を及ぼす為、本発明のアノードシール部材110を用いて燃料の漏洩を阻止するようにしうる。カソード側を開放設計(オープンデザイン)とすることにより密閉性に対する特別な条件は存在せず、従って、カソード側に弾性シール部材を設ける必要があるか否かに関して制限がない。しかし、他の実施形態では、空冷式燃料電池スタック100が発電反応に対して間接空冷を採用する場合、カソード側の密閉性に対して条件があり、同様なシール部材を用いて気密効果を達成するようにもすることができる。詳細については以下の説明を参照されたい。
【0015】
図1を参照するに、燃料電池102の各々には更にカソードシール部材110’を設けることができる。このカソードシール部材110’はカソード側の構造体114の周囲に配置するとともに、カソードバイポーラプレート106とイオン導電性の膜116とにより挟まれるようにする。具体的には、カソードシール部材110’をカソード側の構造体114の周囲に配置し、カソード側の構造体114とカソードシール部材110’との合計の平面積が、アノードバイポーラプレート104の平面積と、カソードバイポーラプレート106の平面積と、イオン導電性の膜116の平面積とそれぞれ同じとなるようにする。特に、カソードシール部材110’は第3のシール材118’と第4のシール材120’とを有している。これら第3のシール材118’と第4のシール材120’とは実質的に弾性率が異なる材料とする。例えば、第3のシール材118’のショア硬さは第4のシール材120’のショア硬さと相違させ、第3のシール材118’と第4のシール材120’との配置方向は、燃料電池102の圧縮方向に対して垂直とする。図1は断面図である為、カソードシール部材110’はカソード側の構造体114の両側に示されている。しかし、空冷式燃料電池スタック100は一般的に方形のシート状接合構造体であり、従って、カソードシール部材110’が実際にカソード側の構造体114の全周囲に沿ってこのカソード側の構造体114を封止していることを理解すべきである。
【0016】
この実施形態における第4のシール材120’は第3のシール材118’とカソード側の構造体114との間に介在されており、すなわち、第3のシール材118’が第4のシール材120’の周囲を覆っており、この第4のシール材120’が内側に位置するものである。特に、第3のシール材118’としてはアノードシール部材110の第1のシール材118と同じ特性を有する材料を採用することができ、第4のシール材120’としてはアノードシール部材110の第2のシール材120と同じ特性を有する材料を採用することができ、これらの特性及び材料の種類は上述した通りであり、ここで反復しない。
【0017】
この第1実施形態の膜電極接合体108においては、アノード側の構造体112にアノード電極層122及びアノードガス拡散層124を設けることができ、このアノードガス拡散層124はアノードバイポーラプレート104と接触させる。カソード側構造体114にはカソード電極層126及びカソードガス拡散層128を設けることができ、このカソードガス拡散層128はカソードバイポーラプレート106と接触させる。一実施形態では、アノード電極層122及びカソード電極層126はそれぞれ、ナノ粒子触媒と、イオン導電性重合体と、高表面積の活性炭担体とにより形成する。ナノ粒子触媒は活性炭担体の表面上に分布させるとともにある種の構造でイオン導電性重合体に接続させて反応構造を形成するようにする。アノードガス拡散層124及びカソードガス拡散層128はそれぞれ、多孔質材料により、通常は高導電性の炭素繊維と樹脂バインダとより成る機械的強度のある多孔質三次元構造体により形成し、ガス/液体燃料及び生成物が発電中に膜電極接合体108に対し出入りするようにするとともに、ある程度の導電性を保つように、すなわち三相反応物/生成物の円滑な物質移動を達成するようにする。炭素紙/炭素布/炭素フェルトのような炭素系材料以外に、発泡金属又は金属網のような他の導電性多孔質材料によりアノードガス拡散層124及びカソードガス拡散層128を形成することもできる。更に、空冷式燃料電池スタック100はガスにより冷却される為、カソードバイポーラプレート106は一般に、互いに相補的な形とした反応チャネル106a及び放熱チャネル106bを有するようにする。反応チャネル106aは反応ガスを通すことができ、放熱チャネル106bは燃料電池102(バッテリーセル)の各々により発生された熱を除去するための流動ガスを有する。アノードバイポーラプレート104とカソードバイポーラプレート106とは、単一材料又は複合材料としうる導電材料により形成する。反応チャネル106a及び放熱チャネル106bの設計は、スネーク形状、直線形状、分割(パーティション)形状、格子形状のような種々の形状とする。更に、接合処理した空冷式燃料電池スタック100は、結合体の全体をより一層安定にするエンドプレート(端板)を採用することができる。
【0018】
図2は、本発明の第2実施形態による空冷式燃料電池スタックを示す断面図である。第1実施形態におけるのと同じ参照符号は第1実施形態におけるのと同じ又は類似の部材を表すのに用いており、これらの同じ又は類似の部材の内容は第1実施形態の関連する説明において与えたものと同様であり、ここで反復しない。
【0019】
図2を参照するに、この第2実施形態の空冷式燃料電池スタックの構造は図1のものに類似する為に、ただ1つの燃料電池200(すなわち、バッテリーセル)のみを示している。この実施形態の燃料電池200においては、アノードシール部材110の第1のシール材118を第2のシール材120とアノード側の構造体112との間に介在させる。すなわち、第2のシール材120は第1のシール材118の周囲を覆っており、この第1のシール材118が内側に位置するものである。カソードシール部材110’の第3のシール材118’は第4のシール材120’とカソード側の構造体114との間に介在させる。すなわち、第4のシール材120’が第3のシール材118’の周囲を覆っており、第3のシール材118’が内側に位置するものである。アノードシール部材110とカソードシール部材110’との配置によりバッテリーセルの各々の気密性をも保つことができるとともに、バッテリーセルの各々の厚さ方向の圧縮量を固定して、燃料電池102の各々の発電の一貫性を達成するようにすることができる。
【0020】
図2の実施形態では、互いに同様な特性を有する第1のシール材118及び第3のシール材118’は双方とも内側に位置するものであり、互いに同様な特性を有する第2のシール材120及び第4のシール材120’は双方とも周囲を覆うものである。しかし、他の実施形態では、異なる配置順序を採用することもできる。例えば、第1のシール材118及び第4のシール材120’の双方を内側に位置させ、それぞれアノード側の構造体112及びカソード側の構造体114と接触させる。又、第2のシール材120及び第3のシール材118’を周囲に位置させ、それぞれが第1のシール材118及び第4のシール材120’を覆うようにし、しかもバッテリーセルの各々の気密性をも維持しうるようにするが、本発明は上述した例に限定されるものではない。
【0021】
図3A及び図3Bは、本発明の第3実施形態による接合処理前及び後の空冷式燃料電池スタックをそれぞれ示す断面図である。第1実施形態におけるのと同じ参照符号を用いて第1実施形態におけるのと同じ又は類似の部材を表しており、これらの同じ又は類似の部材の内容は第1実施形態の関連する説明において与えたものと同様であり、ここで反復しない。
【0022】
最初に図3Aを参照するに、第3実施形態の空冷式燃料電池スタックは図1のものに類似する為、ただ1つの燃料電池300(すなわち、バッテリーセル)のみを示している。燃料電池300のアノードバイポーラプレート302がそのエッジに欠陥302aを有するバイポーラプレートであり、第1のシール材304及び第2のシール材306より成るアノードシール部材308が用いられているものと仮定する。第1のシール材304及び第2のシール材306の配置方向は燃料電池300の圧縮方向に対して垂直であり、第1のシール材304の配置位置は欠陥302aに対応して接触している。第1のシール材304のショア硬さは、例えば、A70以下にするか、又は他の実施形態では第1のシール材304が0.2GPa以下のヤング率を有するようにする。第2のシール材306のショア硬さは、例えば、A90以上とする。接合処理前の第1のシール材304の高さは第2のシール材306の高さhよりも高くすることができ、この第2のシール材306の高さhは、燃料電池300を圧縮処理した後のアノード側の構造体112の厚さのような予め決定した高さとしている。一実施形態では、第3のシール材304’と第4のシール材306’とより成るカソードシール部材308’を用いる。第3のシール材304’及び第4のシール材306’の配置方向は燃料電池300の圧縮方向に対して垂直である。第3のシール材304’としては第1のシール材304と同じ特性を有する材料を採用しており、第4のシール材306’としては第2のシール材306と同じ特性を有する材料を採用している。接合処理後の第3のシール材304’の高さは第4のシール材306’の高さh’よりも高くすることができ、この第4のシール材306’の高さh’は、燃料電池300を圧縮処理した後のカソード側の構造体114の厚さのような予め決定した高さとしている。
【0023】
次に図3Bを参照するに、接合処理した第1のシール材304がアノードバイポーラプレート302の欠陥302aの位置に対しギャップを満たして、燃料電池300のアノード側の気密性を確保するとともに、利用率及び安全性の問題を低減させる燃料の漏洩を回避させるものである。第2のシール材306は、燃料電池300を圧縮処理した後のアノード側の構造体112の厚さを固定することができる。同時に、この実施形態では、第3のシール材304’を第4のシール部材306’と同じ高さを有するように圧縮させて、燃料電池300のカソード側の気密性を確保するようにすることができる。特に、反応チャネル106a及び放熱チャネル106bを有するカソードバイポーラプレート106を圧縮且つ接合処理した後に、容易に圧縮する一般的なシール材を用いる場合には、異なる部分(例えば、部分310a及び310b)に異なる力が加わる為、異なる位置における膜電極接合体108の圧縮量が固定されず、その結果発電性能が低くなるおそれがある。この時点で、硬度がより大きく且つ変形性がより小さい第4のシール材306’をカソードバイポーラプレート106と直接接触させる。従って、圧縮及び接合処理後の燃料電池300の膜電極接合体108の厚さは、第2のシール材306の厚さhと第4のシール材306’の厚さh’との合計(すなわち、h+h’)にカソードバイポーラプレート106の厚さを加えた値に等しくなる。その結果、単一の燃料電池300は圧縮処理後に同じ厚さを有し、燃料電池300の各々の発電が一貫性となるようにしうる。
【0024】
図4は、本発明の第4実施形態による空冷式燃料電池スタックを示す断面図である。第2実施形態におけるのと同じ参照符号は第2実施形態におけるのと同じ又は類似の部材を表すのに用いており、これらの同じ又は類似の部材の内容は第2実施形態の関連する説明において与えたものと同様であり、ここで反復しない。
【0025】
図4を参照するに、この図4は1つの個々の燃料電池400(すなわち、バッテリーセル)を示している為、この第4実施形態の空冷式燃料電池は図1に類似しており、複数の燃料電池400より成っている。燃料電池400においては、アノードバイポーラプレート402の材料と第2のシール材402aの材料とは同じ(例えば、金属)にすることに注意すべきである。この実施形態では、第2のシール材402aとアノードバイポーラプレート402とは一体構造にすることができる。すなわち、第2のシール材402aをアノードバイポーラプレート402の延長構造に相当するようにする。アノードシール部材406における第1のシール材404は、第2のシール材402aとアノード側の構造体112との間に介在されていることに注意すべきである。
【0026】
しかし、本発明は上述したことに限定されるものではない。第2のシール材402aとアノードバイポーラプレート402とが一体構造であり且つ同じ材料で形成されている場合には、第1のシール材404と第2のシール材402aとで位置を交換することができる。更に図5を参照する。この第5実施形態の燃料電池500は図4の燃料電池400に類似する。燃料電池500では、アノードシール部材506における第1のシール材404が外側に配置されており、アノードバイポーラプレート402と一体に且つ同じ材料で構成されている第2のシール材402aは、第1のシール材404とアノード側の電極112との間に介在されていることに注意すべきである。
【0027】
図6を参照するに、カソードシール部材602aの材料はカソードバイポーラプレート602の材料と同じにすることもできる。一実施形態では、第4のシール材602aとカソードバイポーラプレート602とを一体構造とすることができる。カソードシール部材606における第3のシール材604は、第4のシール材602aとカソード側の電極114との間に介在されている。
【0028】
更に、第4のシール材602aとカソードバイポーラプレート602とが一体構造であり且つ同じ材料で形成されている場合には、第3のシール材604と第4のシール材602aとで位置を交換することができる。更に図7を参照する。この第7実施形態の燃料電池700は図6の燃料電池600に類似している。燃料電池700においては、カソードシール部材706における第3のシール材604が外側に配置されており、カソードバイポーラプレート602と一体に且つ同じ材料で構成されている第4のシール材602aは第3のシール材604とカソード側の電極114との間に介在されていることに注意すべきである。
【0029】
本発明の有効性を確認するために以下に幾つかの実験例を記載する。しかし、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
〈実験例〉
【0030】
図1に示す10個の燃料電池102(バッテリーセル)より成る空冷式燃料電池100は接合処理されており、この場合、アノードシール部材110における第1のシール材118のショア硬さはA30とし、そのヤング率は0.1GPaとし、第2のシール材120の平均ショア硬さはA90とした。この実験例は直接空冷式燃料電池とした為、陰極側を開放チャネルとし、気密問題を存在させなかった。従って、カソード側に対して、ショア硬さをA90として圧縮するのを困難とした材料を用いて、カソード側の構造体114の厚さを保つようにすることができる。10個の燃料電池より成るスタックでは、これらの燃料電池の各々の活性化領域を約45cm2とし、圧縮後のアノードシール部材の厚さを約500マイクロメートルとした。完全に活性化した後、水素ガスをアノード内に導入し且つ空気をカソード内に導入して、アノードにおける空気の漏出量を測定し、且つ6.5Vの一定電圧で120分の間放電を実行して、その放電中の電流値を測定した。その結果を以下の表1に示してある。
〈比較例1〉
【0031】
実験例と同じ空冷式燃料電池スタックを接合処理したが、比較例1においては実験例におけるアノードシール部材を第2のシール材に変更した。次に、このスタックを実験例におけるのと同様に検査し、その結果を以下の表1に示した。
〈比較例2〉
【0032】
実験例と同じ空冷式燃料電池スタックを接合処理したが、比較例2においては実験例におけるアノードシール部材を第1のシール材に変更した。次に、このスタックを実験例におけるのと同様に検査し、その結果を以下の表1に示した。
〈比較例3〉
【0033】
実験例と同じ空冷式燃料電池スタックを接合処理しており、且つ第1のシール材と第2のシール材との配置方向を実験例とは異ならせたことを除いて、アノードシール部材に対して全て実験例と同じ材料を採用した。この比較例3においては、第1のシール材と第2のシール材との配置方向を燃料電池の圧縮方向に対し平行とした。このことは、第1のシール材と第2のシール材とが互いに積み重ねられており、且つ同時にアノード側の構造体の周囲を被覆していることを意味している。特に、第1のシール材の厚さを50マイクロメートルとした。次に、このスタックを実験例におけるのと同様に検査し、その結果を以下の表1に示した。
【表1】
【0034】
上記の表1から分かるように、実験例の気密性は最高であり、その出力電流値も高かった。比較例1では、スタックが良好な出力電流を有しているとともに、燃料電池の各々の一貫性のある発電効果達成しうるが、燃料漏洩問題が依然として存在した。比較例2では、気密効果を達成しうるが、燃料電池の各々の非一貫性の圧縮量が燃料電池の各々の非一貫性の発電をもたらし、従ってその結果としてスタックの出力電流を不安定とした。比較例3では、同じアノードシール部材を用いたが、第1のシール部材と第2のシール部材との配置方向を燃料電池の圧縮方向に対し平行とした為、気密性効果を達成しうるが、燃料電池の圧縮量が非一貫性となる問題を完全に解決することができず、燃料電池の各々の発電が非一貫性となる状態が依然として存在した。
【0035】
本発明では、上述したことに基づいて、特定の構造で設計したシール部材を、圧縮するのが容易な弾性シール材と圧縮するのが困難なシール材とにより形成する。これら2つのシール材は、膜電極接合体の周囲に圧縮方向に対し垂直に配置するとともに、アノードバイポーラプレートとカソードバイポーラプレートとの間に挟まれるようにする。圧縮するのが困難なシール材は、バッテリーセルの各々を厚さ方向に圧縮する量を固定して、発電の一貫性を達成するようにするのに重要である。圧縮するのが容易な弾性シール材は、バッテリーセルの各々の気密性を保って、利用率及び安全性の問題を低減させる燃料の漏洩を回避させるものである。
【0036】
上述したことに基づいて、本発明の空冷式燃料電池スタックを、気密部材を以って設計してバッテリーセルの各々の厚さ方向の圧縮量を固定し、発電の一貫性を達成するとともにバッテリーセルの気密性を改善し、従って、利用率及び安全性の問題を低減させる燃料の漏洩を回避させるようにする。
【0037】
当業者にとって明らかなように、本発明の範囲又は精神を逸脱することなく本発明の実施形態の構造に種々の変形及び変更を行うことができるものである。前述した点からして、本発明は、この本発明の変形及び変更が以下の特許請求の範囲及びこれらの同意義の範囲内に入ることを条件としてこれらの変形及び変更を含むことが意図されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の空冷式燃料電池スタックは燃料電池電力システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
100:空冷式燃料電池スタック
102,200,300,400,500,600,700:燃料電池
104,302,402:アノードバイポーラプレート
106:カソードバイポーラプレート
106a:反応チャネル
106b:放熱チャネル
108:膜電極接合体
110,308,406,506:アノードシール部材
110’,308’,606,706:カソードシール部材
112:アノード側の構造体
114:カソード側の構造体
116:イオン導電性の膜
118,304,404:第1のシール材
118’,304’,604:第3のシール材
120,306,402a:第2のシール材
120’,306’,602a:第4のシール材
122:アノード電極層
124:アノードガス拡散層
126:カソード電極層
128:カソードガス拡散層
302a:欠陥
310a,310b:部分
w:幅
h,h’:高さ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】