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特開2022-99273排水配管部材の施工方法および排水配管部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099273
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】排水配管部材の施工方法および排水配管部材
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20220627BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20220627BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20220627BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20220627BHJP
   F16L 55/033 20060101ALI20220627BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
E03C1/12 Z
E03C1/12 E
F16L1/00 C
F16L5/00 N
F16L5/04
F16L5/00 H
F16L55/033
F16L55/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200126
(22)【出願日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2020212658
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 博史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 琢夢
【テーマコード(参考)】
2D061
3H025
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AB02
2D061AB07
2D061AC06
2D061AC07
2D061AD01
2D061BB05
3H025CA01
3H025CB05
3H025CB39
(57)【要約】
【課題】排水配管継手を、床スラブを貫通する貫通孔に作業性良く施工する。
【解決手段】床スラブの貫通孔に施工される排水配管継手101は、貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバー本体733が設けられ、遮音カバー本体733と排水配管継手の外表面との間に弾性材735を備えるように施工され、遮音カバー本体733の内周面における所定の位置に弾性材735を設けるステップと、弾性材735を設けた後の遮音カバー731を貫通孔に設置するステップと、遮音カバー731の外周面と貫通孔の内周面との間に充填材Mを充填して遮音カバー731が貫通孔に固定された後に、設置された遮音カバー731に遮音カバー731以外の排水配管部材を挿入して、弾性材735を介して遮音カバー731と遮音カバー731以外の排水配管継手とを一体化するステップとを含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の区画を貫通する貫通孔に排水配管部材を施工する施工方法であって、
前記排水配管部材は、前記貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバーが設けられ、前記遮音カバーと前記排水配管部材の外表面との間に弾性材を備えるように施工され、
前記遮音カバーの内周面における所定の位置に前記弾性材を設けるステップと、
前記弾性材を設けた後の前記遮音カバーを前記貫通孔に設置するステップと、
前記遮音カバーが前記貫通孔に設置された後に、設置された遮音カバーに前記排水配管部材を挿入して、前記弾性材を介して前記遮音カバーと前記排水配管部材とを一体化するステップとを含む、排水配管部材の施工方法。
【請求項2】
建築物の区画を貫通する貫通孔に排水配管部材を施工する施工方法であって、
前記排水配管部材は、前記貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバーが設けられ、前記遮音カバーと前記排水配管部材の外表面との間に弾性材を備えるように施工され、
前記排水配管部材の外表面における所定の位置に前記弾性材を設けるステップと、
前記遮音カバーを前記貫通孔に設置するステップと、
前記遮音カバーが前記貫通孔に設置された後に、設置された遮音カバーに前記弾性材を備えた排水配管部材を挿入して、前記弾性材を介して前記遮音カバーと前記排水配管部材とを一体化するステップとを含む、排水配管部材の施工方法。
【請求項3】
前記遮音カバーを前記貫通孔に設置した後であって前記遮音カバーと前記排水配管部材とを一体化する前に、前記遮音カバーの外周面と前記貫通孔の内周面との間に充填材を充填するステップをさらに含む、請求項1または請求項2に記載の施工方法。
【請求項4】
前記区画は、床スラブであって、
前記排水配管部材は、建築物に施工された際に、前記床スラブの貫通孔に配置される管本体と、前記床スラブの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管を接続する上立管接続部と、前記床スラブの下方に突出し下階に排水を流出させる排水管を接続する排水管接続部と、前記床スラブの上方で排水横枝管を接続する横枝管接続部とを備えた排水配管継手であって、
前記弾性材は、前記遮音カバーと前記排水配管継手の外表面との間における、上側の端部のみに、または、上側の端部および下側の端部に、備えるように施工される、請求項1~請求項3のいずれかに記載の施工方法。
【請求項5】
前記遮音カバーと前記排水配管部材とを一体化するステップは、
前記区画に設置された遮音カバーを前記弾性材とともに前記貫通孔に残存させて、前記排水配管部材を前記貫通孔から離脱可能に、
または、
前記区画に設置された遮音カバーを前記貫通孔に残存させて、前記排水配管部材を前記弾性材とともに前記貫通孔から離脱可能に、
一体化する、請求項1~請求項4のいずれかに記載の施工方法。
【請求項6】
前記遮音カバーは、硬質樹脂製である、請求項1~請求項5のいずれかに記載の施工方法。
【請求項7】
前記遮音カバーは、前記排水配管部材の外径に対応したリング状で弾性を備えたリング弾性材を介して、前記排水配管部材の外表面に当接する、請求項1~請求項6のいずれかに記載の施工方法。
【請求項8】
前記遮音カバーに前記弾性材を設けるステップは、前記遮音カバーの内周面におけるくぼみに前記弾性材を設ける、請求項1に記載の施工方法。
【請求項9】
前記遮音カバーと前記排水配管部材との間であって、前記貫通孔内を通る部分の少なくとも一部には振動絶縁体が設けられる、請求項1~請求項8のいずれかに記載の施工方法。
【請求項10】
前記振動絶縁体は、外層側の前記遮音カバーに固着される、請求項9に記載の施工方法。
【請求項11】
前記遮音カバーを前記貫通孔に設置した後において、前記遮音カバーの長さが前記貫通孔の長さ以下である、請求項1~請求項10のいずれかに記載の施工方法。
【請求項12】
前記排水配管部材は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、
前記遮音カバーと前記排水配管部材との間には熱膨張性耐火材が設けられる、請求項1~請求項11のいずれかに記載の施工方法。
【請求項13】
前記熱膨張性耐火材は、前記排水配管部材における所定の外周位置、または、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられる、請求項12に記載の施工方法。
【請求項14】
前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、
前記熱膨張性耐火材は、前記振動絶縁体にめり込むように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられる、請求項13に記載の施工方法。
【請求項15】
前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、
前記熱膨張性耐火材は、前記振動絶縁体に埋め込まれるように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられる、請求項13に記載の施工方法。
【請求項16】
前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、
前記熱膨張性耐火材は、前記振動絶縁体と内周方向の表面高さが略同じになるように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられる、請求項13に記載の施工方法。
【請求項17】
前記遮音カバーは、前記床スラブの厚みに応じて長さ調整可能に構成される、請求項1~請求項16のいずれかに記載の施工方法。
【請求項18】
前記長さ調整は、前記遮音カバーの切断、分割および部品交換の少なくともいずれかによる、請求項17に記載の施工方法。
【請求項19】
前記区画は、最下階の床スラブである、請求項1~請求項18のいずれかに記載の施工方法。
【請求項20】
建築物の区画を貫通する貫通孔に施工される排水配管部材であって、
前記排水配管部材は、
前記貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバーが設けられ、
前記遮音カバーと前記排水配管部材の外表面との間に弾性材を備え、
前記弾性材を介して前記遮音カバーと前記排水配管部材とが一体化され、
前記排水配管部材は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、
前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、
前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、
熱膨張性耐火材が、前記振動絶縁体にめり込むように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられた、排水配管部材。
【請求項21】
建築物の区画を貫通する貫通孔に施工される排水配管部材であって、
前記排水配管部材は、
前記貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバーが設けられ、
前記遮音カバーと前記排水配管部材の外表面との間に弾性材を備え、
前記弾性材を介して前記遮音カバーと前記排水配管部材とが一体化され、
前記排水配管部材は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、
前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、
前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、
熱膨張性耐火材が、前記振動絶縁体に埋め込まれるように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられた、排水配管部材。
【請求項22】
建築物の区画を貫通する貫通孔に施工される排水配管部材であって、
前記排水配管部材は、
前記貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバーが設けられ、
前記遮音カバーと前記排水配管部材の外表面との間に弾性材を備え、
前記弾性材を介して前記遮音カバーと前記排水配管部材とが一体化され、
前記排水配管部材は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、
前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、
前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、
熱膨張性耐火材が、前記振動絶縁体と内周方向の表面高さが略同じになるように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられた、排水配管部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の区画を貫通する貫通孔(一例として建築物の区画である床スラブを貫通する貫通孔)に設けられる排水配管部材の施工方法および排水配管部材に関し、特に、最適な遮音性能等を発現し得る排水配管部材を作業性良く貫通孔に施工することのできる施工方法および排水配管部材に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やオフィスビルなどには、給水設備および排水設備が設けられる。このうちの排水設備は、建築物の各階層を上下に貫く縦管と、各階層内に設置される横管と、これらを接続する排水配管継手とを備えた排水配管構造が代表的なものとして広く知られている。このような排水配管構造においては、排水騒音を低減化するために遮音性を備えた外層部材(遮音カバー)も設けられる。
【0003】
そして、このような排水配管構造が備え付けられた建築物において、階下にて火災等が発生した場合に上層階へ火炎や煤煙、有毒ガスが流出することを防止するために、建築物において貫通孔を備えた床スラブにおける防火区画構造が実現されている。このような防火区画構造は、熱膨張性耐火材を配管材の外周に別途設けることにより実現されることがある。このため、上述した排水配管継手を含めて、建築物の床スラブを貫通して設けられる排水用配管(排水配管継手、立管等を含む)には、遮音性を備えた外層部材や熱膨張材を含む外層部材を管本体の外側に備えるものがある。
【0004】
ところで、建築物の各階層のコンクリート打設床において、配管を階上から階下またはその逆に通すための区画貫通構造を形成する必要がある場合には、具体的には、配管を通すための区画貫通孔をコンクリートに形成するが、従来、コンクリート打設前にボイドまたはスリーブと呼ばれる管を床下地に垂直に立てて設置して固定し、スリーブの周囲にコンクリートを流し込んでコンクリート床を造り、養生し、スリーブの内部に区画形成される空洞を区画貫通孔とし、配管を通していた。そして、スリーブは通常、紙、樹脂または金属でできているため、通常は養生後に引き抜き作業が必要であった。このようにして形成された区画貫通構造に耐火性を与えるためには配管後に熱膨張材を含む外層部材を、騒音低減のためには遮音性を備えた外層部材を別途設置する必要があり、施工が煩雑であった。
【0005】
このような問題に対して、スリーブ(さや管)そのものに熱膨張性があれば引き抜く必要がないという観点から、特開2011-094642号公報(特許文献1)は、以下の構成を備えた区画貫通部における配管構造を開示する。この区画貫通部における配管構造は、合成樹脂に熱膨張性黒鉛を含有させた耐火性樹脂組成物からなるさや管または複層の一層に前記耐火性樹脂組成物からなる耐火膨張層を備えるさや管と、前記さや管の内径よりも外径が小さくされて前記さや管の内側に挿入される内管と、前記さや管と前記内管との間に形成された空隙に挿入されるスペーサと、を備えることを特徴とする(請求項1)。さらに、前記空隙には吸音材が充填されていることを特徴とする(請求項3)。
【0006】
この特許文献1に開示された区画貫通部における配管構造によると、火災時にさや管が熱膨張して貫通部を塞ぐことで耐火性を有するうえに、内管とさや管の間に空隙によって内管で生じた排水騒音を吸収することで固体伝播音を低減できるようになる。さらに、空隙には吸音材が充填されていることで、よりいっそう排水騒音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-094642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された区画貫通部における配管構造においては、耐火性樹脂組成物からなる耐火膨張層を備えるさや管とさや管の内側に挿入される内管との間の空隙に吸音材が充填されているに過ぎない。これでは、特許文献1に開示された区画貫通部に直管が設置されている場合にはそもそも排水騒音が少ないために問題になりにくいと仮にしても、区画貫通部に設けられた(建築物の各階を上下に貫く縦管と各階に設置される横管とを接続して複雑に合流した排水を下階に流下させる)排水配管継手における排水騒音を十分に低減することができない。
【0009】
なお、このような問題点は、建築物の床スラブのみならず垂直壁を含む建築物の区画を貫通する貫通孔に設けられ、遮音性を備えた外層部材や熱膨張材を含む外層部材を管本体の外側に備える、排水配管継手を含む様々な排水配管部材に共通する。
本発明は、上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、最適な遮音性能等を発現し得る排水配管部材を、建築物の区画を貫通する貫通孔(一例として建築物の区画である床スラブを貫通する貫通孔)に作業性良く施工する施工方法および排水配管部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のある局面に係る排水配管部材の施工方法は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のある局面に係る排水配管部材の施工方法は、建築物の区画を貫通する貫通孔に排水配管部材を施工する施工方法であって、前記排水配管部材は、前記貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバーが設けられ、前記遮音カバーと前記排水配管部材の外表面との間に弾性材を備えるように施工され、前記遮音カバーの内周面における所定の位置に前記弾性材を設けるステップと、前記弾性材を設けた後の前記遮音カバーを前記貫通孔に設置するステップと、前記遮音カバーが前記貫通孔に設置された後に、設置された遮音カバーに前記排水配管部材を挿入して、前記弾性材を介して前記遮音カバーと前記排水配管部材とを一体化するステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の局面に係る排水配管部材の施工方法は、建築物の区画を貫通する貫通孔に排水配管部材を施工する施工方法であって、前記排水配管部材は、前記貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバーが設けられ、前記遮音カバーと前記排水配管部材の外表面との間に弾性材を備えるように施工され、前記排水配管部材の外表面における所定の位置に前記弾性材を設けるステップと、前記遮音カバーを前記貫通孔に設置するステップと、前記遮音カバーが前記貫通孔に設置された後に、設置された遮音カバーに前記弾性材を備えた排水配管部材を挿入して、前記弾性材を介して前記遮音カバーと前記排水配管部材とを一体化するステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記遮音カバーを前記貫通孔に設置した後であって前記遮音カバーと前記排水配管部材とを一体化する前に、前記遮音カバーの外周面と前記貫通孔の内周面との間に充填材を充填するステップをさらに含むように構成することができる。
さらに好ましくは、前記区画は、床スラブであって、前記排水配管部材は、建築物に施工された際に、前記床スラブの貫通孔に配置される管本体と、前記床スラブの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管を接続する上立管接続部と、前記床スラブの下方に突出し下階に排水を流出させる排水管を接続する排水管接続部と、前記床スラブの上方で排水横枝管を接続する横枝管接続部とを備えた排水配管継手であって、前記弾性材は、前記遮音カバーと前記排水配管継手の外表面との間における、上側の端部のみに、または、上側の端部および下側の端部に、備えるように施工されるように構成することができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記遮音カバーと前記排水配管部材とを一体化するステップは、前記区画に設置された遮音カバーを前記弾性材とともに前記貫通孔に残存させて、前記排水配管部材を前記貫通孔から離脱可能に、または、前記区画に設置された遮音カバーを前記貫通孔に残存させて、前記排水配管部材を前記弾性材とともに前記貫通孔から離脱可能に、一体化するように構成することができる。
【0014】
さらに好ましくは、前記遮音カバーは、硬質樹脂製であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記遮音カバーは、前記排水配管部材の外径に対応したリング状で弾性を備えたリング弾性材を介して、前記排水配管部材の外表面に当接するように構成することができる。
【0015】
さらに好ましくは、前記遮音カバーに前記弾性材を設けるステップは、前記遮音カバーの内周面におけるくぼみに前記弾性材を設けるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記遮音カバーと前記排水配管部材との間であって、前記貫通孔内を通る部分の少なくとも一部には振動絶縁体が設けられるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記振動絶縁体は、外層側の前記遮音カバーに固着されるように構成することができる。
【0016】
さらに好ましくは、前記遮音カバーを前記貫通孔に設置した後において、前記遮音カバーの長さが前記貫通孔の長さ以下であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記排水配管部材は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、前記遮音カバーと前記排水配管部材との間には熱膨張性耐火材が設けられるように構成することができる。
【0017】
さらに好ましくは、前記熱膨張性耐火材は、前記排水配管部材における所定の外周位置、または、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、前記熱膨張性耐火材は、前記振動絶縁体にめり込むように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられるように構成することができる。
【0018】
さらに好ましくは、前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、前記熱膨張性耐火材は、前記振動絶縁体に埋め込まれるように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、前記熱膨張性耐火材は、前記振動絶縁体と内周方向の表面高さが略同じになるように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられるように構成することができる。
【0019】
さらに好ましくは、前記遮音カバーは、前記床スラブの厚みに応じて長さ調整可能に構成されるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記長さ調整は、前記遮音カバーの切断、分割および部品交換の少なくともいずれかによるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記区画は、最下階の床スラブであるように構成することができる。
また、上記目的を達成するため、本発明のさらに別の局面に係る排水配管部材は以下の技術的手段を講じている。
【0020】
すなわち、本発明のさらに別の局面に係る排水配管部材は、建築物の区画を貫通する貫通孔に施工される排水配管部材であって、前記排水配管部材は、前記貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバーが設けられ、前記遮音カバーと前記排水配管部材の外表面との間に弾性材を備え、前記弾性材を介して前記遮音カバーと前記排水配管部材とが一体化され、前記排水配管部材は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、熱膨張性耐火材が、前記振動絶縁体にめり込むように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明のさらに別の局面に係る排水配管部材は、建築物の区画を貫通する貫通孔に施工される排水配管部材であって、前記排水配管部材は、前記貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバーが設けられ、前記遮音カバーと前記排水配管部材の外表面との間に弾性材を備え、前記弾性材を介して前記遮音カバーと前記排水配管部材とが一体化され、前記排水配管部材は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、熱膨張性耐火材が、前記振動絶縁体に埋め込まれるように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられたことを特徴とする。
【0022】
また、本発明のさらに別の局面に係る排水配管部材は、建築物の区画を貫通する貫通孔に施工される排水配管部材であって、前記排水配管部材は、前記貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバーが設けられ、前記遮音カバーと前記排水配管部材の外表面との間に弾性材を備え、前記弾性材を介して前記遮音カバーと前記排水配管部材とが一体化され、前記排水配管部材は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、前記遮音カバーと前記排水配管部材との間に振動絶縁体が設けられ、前記一体化される前は前記遮音カバー側に前記振動絶縁体が設けられ、熱膨張性耐火材が、前記振動絶縁体と内周方向の表面高さが略同じになるように、前記遮音カバーにおける所定の内周位置に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、最適な遮音性能等を発現し得る排水配管部材を、建築物の区画を貫通する貫通孔(一例として建築物の区画である床スラブを貫通する貫通孔)に作業性良く施工する施工方法および排水配管部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る施工方法で施工される排水配管継手101または第2の実施の形態に係る施工方法で施工される排水配管継手103(排水配管継手101および排水配管継手103は排水配管継手100で代表させる場合がある)が採用された排水配管構造を示す(A)上面図、(B)側面図である。
図2図1の排水配管構造を示す図であって、(A)排水配管継手100に外層部材700が設けられた後の状態を示す斜視図であって、(B)排水配管継手100に外層部材700が設けられる前の状態を示す斜視図である。
図3】排水配管継手100を示す図であって、(A)熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712が設けられた後の状態を示す斜視図であって、(B)熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712が設けられる前の状態を示す斜視図である。
図4】(A)図3(B)に示す排水配管継手100の分解図であって、(B)管壁を透視した管本体110の斜視図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る施工方法で施工された排水配管継手101を含む排水配管構造を示す断面図(完成施工図)である。
図6図5の排水配管継手101において、スラブに埋設された遮音カバーに管本体をセットする本発明の第1の実施の形態に係る施工方法を説明するための図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る施工方法で施工された排水配管継手103を含む排水配管構造を示す断面図(完成施工図)である。
図8図7の排水配管継手103において、スラブに埋設された遮音カバーに管本体をセットする本発明の第2の実施の形態に係る施工方法を説明するための図である。
図9】本発明の第1の実施の形態において熱膨張性耐火シート712を遮音カバー731側に設けた変形例を説明するための、図5に対応する図である。
図10】本発明の第1の実施の形態において熱膨張性耐火シート712を遮音カバー731側に設けた変形例を説明するための、図6に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下において、本発明の実施の形態に係る排水配管部材の施工方法(第1の実施の形態に係る施工方法および第2の実施の形態に係る施工方法ならびに変形例)および排水配管部材について図を用いて詳しく説明する。なお、本発明に係る排水配管部材の施工方法は、建築物の区画を貫通する貫通孔に設けられ、遮音性能等を備えた外層部材や熱膨張材を含む外層部材を管本体の外側に備える排水配管部材(継手、集合管、直管、縮径管等)に広く好適に適用することができる。以下の実施の形態においては、この排水配管部材は排水配管継手であるとして説明するが、本発明に係る施工方法が好適に適用される排水配管部材は、建築物の区画を貫通する貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバーが設けられ、遮音カバーと排水配管部材の外表面との間に弾性材を備えるように施工される排水配管部材であれば排水配管継手に限定されるものではなく、建築物の区画は床スラブのみならず垂直壁等を含む建築物の区画であれば構わない。ここで、本発明は、このような施工方法のみならず、排水配管部材(本実施の形態においては排水配管継手)自体を含むものである。すなわち、図5に示す排水配管継手101、図7に示す排水配管継手103および図9に示す(熱膨張性耐火シート712が遮音カバー731側である点で図5に示す排水配管継手101と異なる)排水配管継手105は、全て本発明に係る排水配管部材(排水配管継手)である。なお、以下において排水配管継手105は排水配管継手101と後述する変形例において説明する部分のみが異なるために、排水配管継手105については排水配管継手101で代表させて説明する場合がある。
【0026】
本発明の第1の実施の形態に係る(排水配管継手101の)施工方法を図5および図6を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る(排水配管継手103の)施工方法を図7および図8を参照して詳しく説明する。なお、図6に示して説明する施工方法により(完成施工図である)図5に示すように排水配管継手101が採用された排水配管構造を(建築物において貫通孔を有する)床スラブSに施工することができて、図8に示して説明する施工方法により(完成施工図である)図7に示すように排水配管継手103が採用された排水配管構造を(建築物において貫通孔を有する)床スラブSに施工することができる。
【0027】
これら2つの実施の形態に係る施工方法を説明する前に、本発明に係る排水配管継手101と排水配管継手103とで共通する構造について排水配管継手100で代表させて図1図4を参照して、さらに排水配管継手101における3層の外層部材701について図5を参照して、排水配管継手103における3層の外層部材703について図7を参照して、それぞれ詳しく説明する。ここで、排水配管継手100と排水配管継手101および排水配管継手103とでは、排水配管継手100における最外層の外層部材700の遮音カバー730が伸縮性を備えた軟質の遮音カバー本体(のみの一体成形品)で構成されていることに対して、排水配管継手101における最外層の外層部材701の遮音カバー731および排水配管継手103における最外層の外層部材703の遮音カバー741は、伸縮性を備えない硬質の遮音カバー本体とその硬質の遮音カバー本体とは別部材の弾性材(ゴムパッキン)とで構成されている点が大きく異なる。これら以外の構造は基本的には共通するために、遮音カバー731および遮音カバー741を遮音カバー730で代表させて、外層部材701および外層部材703を外層部材700で代表させて、排水配管継手101および排水配管継手103を排水配管継手100で代表させて、説明する場合がある。
【0028】
さらに詳しくは、排水配管継手101の外層部材701における最外層の遮音カバー731と排水配管継手103の外層部材703における最外層の遮音カバー741とでは、弾性材(ゴムパッキン)が設けられている部位の差異により以下の点が(特に施工方法に関係して)異なる。排水配管継手101においては、外層部材701を構成する最外層の遮音カバー731が硬質の遮音カバー本体733に弾性材(ゴムパッキン)735が設けられた状態で貫通孔に設置され、貫通孔に設置された遮音カバー731(遮音カバー本体733+弾性材(ゴムパッキン)735:さらに任意的ではあるが中間層の振動絶縁体720)にこれら以外の排水配管継手を構成する部材が装着されて施工されるのに対して、排水配管継手103においては、外層部材703を構成する最外層の遮音カバー741が遮音カバー本体743に弾性材(ゴムパッキン)745が設けられない状態(弾性材(ゴムパッキン)745が管本体110側へ設けられた状態)で貫通孔に設置され、貫通孔に設置された遮音カバー741(遮音カバー本体743のみ)にこれら以外の排水配管継手を構成する部材が装着されて施工される点が異なるが、施工後においては図5および図7に示すように、基本的に同じ構造を備える。
【0029】
[2つの実施の形態に係る施工方法に共通する事項:ただし、軟質遮音カバー]
以下において、本発明の2つの実施の形態に共通する排水配管継手100を図1図4を参照して、詳しく説明する。ここで、図2図4に示す斜視図は模式的に記載されたものであって、その他の図(たとえば図5図8)との整合性が完全には一致していない場合(たとえば、排水配管継手100に接続される排水管の有無、上立管接続部120の受口部分以外および横枝管接続部140の受口部分以外に設けられた制振材714の有無、旋回羽根114の形状)がある。また、以下の説明において、外周面と外表面と外側、外層側と外周側と外側、内層側と内周側と内側、とは、明確に区別して記載していない場合がある。
【0030】
<概要>
図1図5および図7に示すように、排水配管継手100を用いた排水配管構造は、建築物における床スラブSを上下に貫通する貫通孔に設けられる排水配管継手100と、床スラブSの上方でこれらの排水配管継手100に接続され上階からの排水を流入させる上階側の排水立管520と、床スラブSの上方でこれらの排水配管継手100に接続される(ここでは3本の)排水横枝管510と、床スラブSの下方でこれらの排水配管継手100に接続され下階に排水を流出させる下階側の排水立管530とを有している。なお、これらの排水配管構造は一例であって、例示した排水配管構造に限定して本発明に係る施工方法が採用されるものではない。
【0031】
ここで、これらの排水配管構造に採用される排水配管継手100およびこの排水配管継手100に接続される排水管は、非耐火性の樹脂製が採用される。しかしながら、本発明に係る排水配管継手は、このような非耐火性の樹脂製に限定される場合と樹脂製に限定されることなく鋳鉄等の樹脂製以外を含む場合とが混在する。このため、以下においては、排水配管継手100およびこの排水配管継手に接続される排水管は非耐火性の樹脂製であるとして説明して、樹脂製に限定されない場合については、説明の中において随時記載する。ここで、「非耐火性」とは、建築物内で火災が生じたときに、これによる熱によって変形、溶融または燃焼可能な性質をいい、たとえば樹脂製のものが該当する。また、樹脂製が採用される場合、たとえば塩化ビニル、ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレンあるいはナイロン等によって、排水配管継手100、これに接続される配管(排水横枝管510、上階側の排水立管520、下階側の排水立管530)は成形されている。なお、排水立管には、たとえばいわゆる耐火2層管を用いてもよい。
【0032】
排水配管継手100は、図4(A)、図5および図7に示すように、ひとつまたは複数(ここでは一例ではあるが7つ)の樹脂製の射出成形品で形成されている。そして、排水配管継手100は、図1図4(A)、図5および図7に示すように、建築物に施工された際に、床スラブSの貫通孔に配置される管本体110と、その床スラブSの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管520を接続する上立管接続部120と、その床スラブSの下方に突出し下階に排水を流出させる排水管(ここでは排水立管530)を接続する排水管接続部130と、その床スラブSの上方で排水横枝管510を接続する横枝管接続部140とを備える。
【0033】
これらの図に示すように、排水配管継手100においては、横枝管接続部140は、平面視で90°間隔で3箇所に開口部を備えた集水室142と、その開口部の位置に対応して排水横枝管を接続するための第1の横枝管接続部材144と、第2の横枝管接続部材146と、第3の横枝管接続部材148とで構成されている。ここで、限定されるものではないが、第1の横枝管接続部材144、第2の横枝管接続部材146および第3の横枝管接続部材148は、いずれも縮径等せずに排水横枝管510を接続しているが、管径が変化するものであっても構わない。
【0034】
排水配管継手100が備える管本体110は、管本体110における横枝管接続部140と排水管接続部130との間における管本体110の内面に突出する突出部としての旋回羽根114を備える。そして、管本体110の外面にはこの突出部(ここでは旋回羽根114)に対応するくぼみ112が形成され、図3に示すようにこのくぼみ112の部分にパテ状の熱膨張性耐火材612が充填されている。
【0035】
ここで、くぼみ112の部分に充填される熱膨張性耐火材612について説明する。熱膨張性耐火材612は、たとえば、ブチルゴムを主成分とする樹脂分、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、含水無機物及び金属炭酸塩を含有する樹脂組成物、または、エポキシ樹脂、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛および無機充填剤を含有する樹脂組成物等から形成される。この熱膨張性耐火材612には、たとえば積水化学工業株式会社製の商品名「フィブロック」(反応温度200℃で5~40倍に膨張)が使用される。また、この他に、因幡電機産業株式会社製の商品名「熱膨張性耐熱シール材IP」(120℃から膨張を開始し、体積が4倍以上に膨張する)や、株式会社古河テクノマテリアル製の商品名「ヒートメル」(膨張開始温度120℃、顕著な膨張温度260℃、4~8倍に膨張する)等を熱膨張性耐火材612として使用できる。
【0036】
なお、熱膨張性耐火材612は、上記したものに限らず、反応温度、膨張率の異なる多種多様のものを使用でき、したがって建築物内の施工場所に応じて要求される反応温度、管径等の諸条件を満たす最適なものを選択して使用できる。
この熱膨張性耐火材612は、非硬化の不乾性のパテ状に形成されており、排水配管継手100の管本体110の外面のくぼみ112が、管本体110の外径程度まで埋まるように(後述する熱膨張性耐火シート712とともにまたは熱膨張性耐火シート712を備えることなく所望の耐火性を十分に実現できる量が)充填されている。
【0037】
ここで、管本体110が備える突出部は、排水配管継手100内の排水の流れを変化させる部分であれば、旋回羽根114に限定されるものではなく、偏流板等であっても構わず、管本体110の外面に対応するくぼみ112が形成されるものであれば、旋回羽根にも偏流板にも限定されない。熱膨張性耐火材612はこの排水配管継手100が備える外周面のくぼみに充填される。
【0038】
さらに、管本体110の床スラブSに対応する高さ位置に対応して、図3図5に示すようにシート状の熱膨張性耐火シート712が管本体110の外周面に巻き付けるようにして設けられている。これらの熱膨張性耐火材612と熱膨張性耐火シート712とは、管本体110では上下方向に離隔している。なお、図3における一点鎖線は取り外すことを意味している。
【0039】
このような排水配管構造を採用した建築物において、排水配管継手100等が燃焼した場合に、その熱によって熱膨張性耐火材612と熱膨張性耐火シート712とが径方向の内側に膨張し、排水配管継手100の本体がその中空部を押しつぶして排水配管継手100を閉塞するようになっている。これによって、これらの排水配管継手100を用いた排水配管構造は、火災時に火炎、煙等が流通しないように管路を遮断できるようになっている。
【0040】
ここで、このような熱膨張性耐火物(熱膨張性耐火材612、熱膨張性耐火シート712)が設けられるのは上述したように樹脂製に限定され、後述するように、このような熱膨張性耐火物のうちの熱膨張性耐火シート712が(理由の如何にかかわらずこの部分に)設けられない場合には熱膨張性耐火シート712に替えて制振材714が設けられることが好ましい。
【0041】
図5および図7を参照して排水配管継手100について、管本体110の外周に巻き付けるように設けてある外層部材700について説明する。なお、より詳しくは、図5を参照して排水配管継手101の外層部材701について、図7を参照して排水配管継手103の外層部材703について説明するものであるが、ここでは、排水配管継手101の外層部材701(遮音カバー731)および排水配管継手103の外層部材703(遮音カバー741)を、排水配管継手100の外層部材700(遮音カバー730)で代表させて説明する。そのため、文章中の外層部材700(遮音カバー730)は、図5における外層部材701(遮音カバー731)、図7における外層部材703(遮音カバー741)に対応する。これらの図に示すように、この外層部材700は、3層構造を備え、排水配管継手100の外表面から、制振材714(または熱膨張性耐火シート712)、耐火性無機繊維によって形成された振動絶縁体720、遮音カバー730の順に、管本体110の外面に設けられている。
【0042】
くぼみ112の部分には熱膨張性耐火材612が充填されており、耐火性能(延焼防止機能)を発現するとともに、空洞部であるくぼみ112がパテ状の熱膨張性耐火材612により充填されていることにより制振性能および遮音性能も発現している。
そして、排水配管継手100においては、制振材714は、くぼみ112の部分に充填された熱膨張性耐火材612を覆うように、管本体110の外面(の全面にたとえば接着剤または粘着剤等で)に貼り付けられている。そして、耐火性能に関して、熱膨張性耐火材612が充填されたくぼみ112の部分よりも上方の管本体110の位置において、制振材714に替えて熱膨張性耐火シート712が管本体110の外面に貼り付けられている。このように管本体110の外面に貼り付けられた熱膨張性耐火シート712も制振材714と同様に(性能は同等でない可能性があるが)制振性能を発現する。
【0043】
詳しくは後述するが、熱膨張性耐火材612と熱膨張性耐火シート712とでは熱膨張率が異なる。ここで、一般的に、熱膨張性耐火材料は、熱膨張率が高いと膨張後の形状保持性が低く、熱膨張率が低いと膨張後の形状保持性が高いとされている。熱膨張率が低いと十分な耐火性能を発現できない可能性があり、形状保持性が低いと熱膨張材が落下してしまう可能性がある。このトレードオフの特性、および、熱膨張率(さらにはその差の絶対値等)を勘案して、それぞれの位置、重量、形状、反応速度、および、膨張開始温度等に対応させて熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712に含有される熱膨張性材料が選択される。
【0044】
このように、この3層構造における最内層710は、熱膨張性耐火シート712および制振材714のいずれかである。
制振材714は、ブチル系(ブチルゴム等)またはアスファルト系(ゴムアスファルト、改質アスファルト等)の材料を含んで形成され、遮音カバー730は、ゴム系(EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等)、エラストマー系またはオレフィン系(ポリエチレン樹脂等)の材料を含んで形成され、耐火性無機繊維によって形成された振動絶縁体720は、耐火性を備えた無機繊維の集合体(多孔質材料)からなる。なお、後述するように、遮音カバー731を構成する遮音カバー本体733および遮音カバー741を構成する遮音カバー本体743は、このような軟質ゴム製の遮音カバー730とは異なり、硬質樹脂製である。
【0045】
ここで、無機繊維としては、人造鉱物繊維が挙げられ、たとえば、グラスウール、ロックウールまたはセラミックファイバー等であって、これらは振動絶縁性能が高い点に加えて吸音性能が高い点でも好ましい。管本体110を流下する排水による振動(たとえば旋回羽根114に当たって発生する振動)を、制振材714で抑制した上で、さらに、このロックウール等で形成された振動絶縁体720により振動を遮断して(および/または振動に伴う騒音を吸収して)、さらに、EPDM製等のゴムカバーで形成された遮音カバー730により振動に伴う騒音の伝搬を遮断する。なお、遮音カバーによる振動に伴う騒音の伝搬の遮断については、硬質樹脂製の遮音カバー本体に弾性材(ゴムパッキン)を備えた遮音カバー731および遮音カバー741によっても実現することができる。ここで、ロックウールとは天然岩石または高炉スラグなど鉄鋼スラグなどを主原料として製造されたものの総称であって、グラスウールとはガラス繊維で構成された綿状のものの総称であって、ともに耐火性および遮炎性を有する。
【0046】
なお、以下においては、制振材714としてブチルゴムを採用し、振動絶縁体720としてロックウールを採用し、遮音カバー730としてEPDM製のゴムカバーを採用した場合について説明する場合があるが、(遮音カバー731および遮音カバー741は遮音カバー730のような軟質ゴム製ではなく硬質樹脂製であることからも)これらの材料は一例に過ぎない。
【0047】
振動絶縁体720として、このロックウールを採用する場合には、抄造により製造されたシート状のロックウールを、火災時に落下してしまうことがないように(たとえば展開形状が工夫されたロックウールシートを振動絶縁体720として3層構造における最内層710の外側に巻き付けて用いることが好ましい。
さらに、このロックウールが採用された振動絶縁体720は、内層側の制振材714または熱膨張性耐火シート712に対して共鳴による騒音伝搬を抑制するために、緩く、かつ、全周に亘って固定するのではなく周方向の数か所で固定するようにして、設けられている。特に、ロックウールを固定する(より詳しくは遮音カバー730としてのEPDM製のゴムカバーにロックウールを固定する)この周方向の数か所の固定位置についての高さ位置については、熱膨張材(熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712)よりも上方であって、火災発生時にロックウールが落下することを防止している。また、この落下することを防止する取付方法は、接着剤、両面テープ等による接合がその一例として挙げられる。
【0048】
以下において、この3層構造の外層部材700を備えた排水配管継手100の(施工方法ではない)製造方法であって、外層部材700の取付手順について説明する。
まず、くぼみ112にパテ状の熱膨張性耐火材612を充填する。そして、熱膨張性耐火シート712を貼る。排水配管継手100においては、熱膨張性耐火シート712は、パテ状の熱膨張性耐火材612から離隔している。さらに、制振材714を管本体110の外周面に接着剤または粘着剤で貼り付ける。このとき、この3層構造における最内層710は、熱膨張性耐火シート712および制振材714のいずれかが存在する。なお、層状ではないが、熱膨張性耐火シート712のさらに内層側に、くぼみ112に充填された熱膨張性耐火材612が存在する。
【0049】
熱膨張性耐火シート712および制振材714を設けた上から、振動絶縁体720としてのロックウールシートを巻く。さらに、その上から遮音カバー730としてのEPDM製のゴムカバーで被覆する。ここで、この遮音カバー730としてのEPDM製のゴムカバーは、止水性と遮音性と振動絶縁性とを発現させる。また、硬質樹脂製の遮音カバー本体に弾性材(ゴムパッキン)を備えた遮音カバー731および遮音カバー741によっても止水性と遮音性と振動絶縁性とを発現させることができる。なお、この遮音カバー730としてのEPDM製のゴムカバーは、一体成形して、排水配管継手100に接着して止水性を発現するようにしても構わないし、接着しないで(ゴムの有する伸縮性により発現する)テンションのみで止水性を発現するようにしても構わない。
【0050】
上述のように概要を説明したこれらの排水配管継手100によると、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、建築物の床スラブSを貫通して設けられ、耐火性能を十分に発揮させ、排水振動を抑制することができる。特に、3層構造の外層部材700における、最内層710としてブチルゴムを一例とする制振材714を管本体110の外表面に密着させて設けて振動を極めて効果的に抑制して、中間層としてロックウールシートを一例とする振動絶縁体720を緩くかつ数か所で固定して設けて吸音性と耐火性と遮音性と振動絶縁性とを発現させ、最外層としてEPDM製のゴムカバーを一例とする遮音カバー730を設けて止水性と遮音性と振動絶縁性とを発現させて(硬質樹脂製の遮音カバー本体に弾性材(ゴムパッキン)を設けた遮音カバー731または遮音カバー741でも発現させて)、管本体110を流下する排水による(たとえば旋回羽根114に当たって発生する)振動を、制振材714により抑制した上で、振動絶縁体720により振動をさらに遮断して、さらに、遮音カバー730により振動に伴う騒音の発生を遮断するために、排水振動を極めて効果的に抑制することができる。また、2つの熱膨張性耐火材(熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712)を設けるとともに、それらの外側には耐火性能を発現する層を含む複数の層で覆うように構成されているために、耐火性能を十分に発揮させることができる。
以下において、排水配管継手100について、さらに詳しく説明する。
【0051】
<制振材:基本的に排水配管継手が樹脂製に限定されない>
排水配管継手100の外層部材700を構成する最内層710の制振材714は、管本体110における少なくとも床スラブSの貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に一体的に設けられている。なお、管本体110の外周面の全体に設けられているものに限定されず、管本体110の外周面の一部のみに設けられているものであっても(その位置が床スラブSにかかっていれば)構わない。
【0052】
そして、この制振材714は、この制振材714が設けられている外周面においては、その面全体に粘着または接着されて一体的に設けられていることが好ましい。さらに、この制振材714は、シート状に形成され、外周面に巻着されていることが好ましい。
このように最内層710としてブチルゴムを一例とする制振材714を、管本体110の外周面(外表面)の少なくとも一部に密着させて排水配管継手と一体化させて設けることにより、排水配管継手に発生する振動を極めて効果的に抑制することができる。
【0053】
また、この制振材714のさらに外周にロックウールを一例とする振動絶縁体720を設けた2層構造の外層部材とすることも好ましく、さらに、振動絶縁体720のさらに外周にEPDM製のゴムカバーを一例とする遮音カバー730を設けた3層構造の外層部材とすることも好ましい。この3層構造を採用する場合において、振動絶縁体720は、内層側の制振材714ではなく外層側の遮音カバー730に固着されているように設けることが好ましい。
【0054】
さらに詳しくは、排水配管継手100においては、管本体110は直管部116とこの直管部116の下方の縮径部118とを少なくとも備えるものであって、この場合には、振動絶縁体720は、直管部116に対応する高さ範囲において、遮音カバー730の周方向に断続的に固定されているように設けることが好ましい。また、排水配管継手100においては、振動絶縁体720は、外層側の遮音カバー730の周方向2箇所~4箇所において点付けで固定されているように設けることが好ましい。
【0055】
このように中間層としてロックウールシートを一例とする振動絶縁体720を緩くかつ数か所で内層側の制振材714ではなく外層側の遮音カバー730に固定して設けることにより吸音性と耐火性(制振材714に替えて/加えて熱膨張性耐火材を設ける場合)と遮音性と振動絶縁性とを発現させて、最外層としてEPDM製のゴムカバーを一例とする遮音カバー730を設けて止水性と遮音性と振動絶縁性とを発現させることにより、排水配管継手に発生する振動を極めて効果的に抑制することができる。
【0056】
なお、上述したように、これらの排水配管継手100が、ひとつまたは複数(ここでは7つ)の樹脂製の射出成形品(非耐火性)で形成されている場合(排水配管継手が樹脂製に限定される場合)においては、制振材714の少なくとも一部に替えてシート状の熱膨張性耐火シート712が管本体110における少なくとも床スラブSの貫通孔内を通る部分の外周面に設けられている(貼り付けられている)部分を備えることも好ましい。この場合において、排水配管継手100においては、管本体110に設けられた制振材714の一部に替えてシート状の熱膨張性耐火シート712が管本体110に設けられる。
【0057】
このようにすると、排水配管継手100等が燃焼した場合に、その熱によって熱膨張性耐火シート712が径方向の内側に膨張し、排水配管継手100の中空部を押しつぶして排水配管継手100を閉塞することによって、これらの排水配管継手100を用いた排水配管構造は、火災時に火炎、煙等が流通しないように管路を遮断することができる。
また、排水配管継手100においては、管本体110は直管部116とこの直管部116の下方の縮径部118とを少なくとも備えるものであって、この場合には、振動絶縁体720の内層側に制振材714の一部に替えて熱膨張性耐火シート712が設けられ、その熱膨張性耐火シート712よりも上方の位置であって直管部116に対応する高さ位置において振動絶縁体720が外層側の遮音カバー730に固定されていることも好ましい。
【0058】
このようにすると、排水配管継手100等が燃焼した場合であっても、熱膨張性耐火シート712により閉塞される排水配管継手100の高さ位置よりも上方の位置であって直管部116に対応する高さ位置において振動絶縁体720が外層側の遮音カバー730に固定されているために、火災時において振動絶縁体720が落下することを防止することができる。
【0059】
<遮音カバー:基本的に排水配管継手が樹脂製に限定されない>
排水配管継手100の外層部材700を構成する最外層の遮音カバー730は、管本体110における少なくとも床スラブSの貫通孔内を通る部分の外周の少なくとも一部に設けられた振動絶縁体720の上下方向の全長に亘って振動絶縁体720の外周に設けられている。
【0060】
EPDM製のゴムカバーを一例とする遮音カバー730を振動絶縁体720の上下方向の全長に亘ってそれらの外周に設けることにより、高い遮音性能を発現することができる。
EPDM製のゴムカバーを一例とする、この遮音カバー730は、止水効果、遮音効果および振動絶縁効果を備えるものである。このため、上述した遮音性能に加えて、高い止水性能および高い振動絶縁性能を発現することができる。
【0061】
また、この遮音カバー730は、上側の端部のみに上端止水部を、または、上側の端部に上端止水部および下側の端部に下端止水部を、備えることが好ましい。遮音カバー本体が伸縮性を備えない硬質樹脂製である場合には、後述するように、これらの上端止水部または下端止水部としては、排水配管継手100の外表面に当接するように設けられている(遮音カバー本体とは別部材で遮音カバー本体とともに遮音カバーを構成する)弾性材(ゴムパッキン)735または弾性材(ゴムパッキン)745が該当する。これらの弾性材(ゴムパッキン)により、高い止水性能等を発現することができる。
【0062】
なお、遮音カバー730が伸縮性を備えたEPDM製のゴムカバーである場合には、上端止水部および下端止水部を含んで振動絶縁体720の上下方向の全長に対応した長さを備えたカバー本体とともに一体成形されており、遮音カバー730自体が伸縮性を備えることが好ましい。
このように遮音カバー730自体が伸縮性を備えると、遮音カバー730自体が備える伸縮性を用いて、振動絶縁体720における上下方向の全長に亘ってそれらの外周に設けることができる。なお、硬質樹脂製の遮音カバー本体に弾性材(ゴムパッキン)を設けた遮音カバー731および遮音カバー741は、このような伸縮性を備えない。
【0063】
<熱膨張性耐火材:基本的に排水配管継手が樹脂製に限定される>
排水配管継手100においては、熱膨張性耐火材612と熱膨張性耐火シート712との、熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材が設けられている。
まず、これらの排水配管継手100において、径方向の異なる位置に2種類の熱膨張性耐火材が設けられる場合には、内層側に設けられる熱膨張性耐火材が外層側に設けられる熱膨張性耐火材よりも熱膨張率が高いことが好ましい。
【0064】
次に、これらの排水配管継手100において、上下方向の異なる位置に2種類の熱膨張性耐火材が設けられる場合には、上側に設けられる熱膨張性耐火材が下側に設けられる熱膨張性耐火材よりも熱膨張率が高いことが好ましい。なお、この上下方向の熱膨張率の関係が成立しない場合もある。
ここで、上述したように、一般的に、熱膨張性耐火材料は、熱膨張率が高いと膨張後の形状保持性が低く、熱膨張率が低いと膨張後の形状保持性が高いとされているので、熱膨張率が低いと十分な耐火性能を発現できない可能性があり、形状保持性が低いと熱膨張材が落下してしまう可能性があるというトレードオフの特性を備えた関係が成立する。このような特性を勘案し(特性を利用し)、さらには、それぞれの位置、重量、形状、反応速度、および、膨張開始温度等に対応させて2種類の熱膨張性耐火材が選択される。
【0065】
熱膨張性耐火材の形状による特性として、本実施の形態で採用したパテ状とシート状とでは、一般的に、パテ状の熱膨張性耐火材の方がシート状の熱膨張性耐火材よりも熱膨張率が高い。
熱膨張性耐火材の配置を排水配管継手(床スラブSの貫通孔に施工されるが縮径部の有無は不問)に採用される可能性がある4つの例を説明する。
【0066】
まず、高さ方向の位置が同じであるが(ここでの同じとは熱膨張性耐火材の配置を検討するほどの高さ方向の差がないという意味である)、径方向の位置が異なる場合には、径方向の内層側の熱膨張性耐火材の熱膨張率が外層側の熱膨張性耐火材の熱膨張率よりも高い。パテ状のほうがシート状よりも熱膨張率が高いために、内層側の熱膨張性耐火材612が外層側の熱膨張性耐火シート712よりも熱膨張率が高い。
【0067】
次に、径方向の位置が同じであるが(ここでの同じとは熱膨張性耐火材の配置を検討するほどの径方向の差がないという意味である)、高さ方向の位置が異なる場合には、高さ方向の上側の熱膨張性耐火材の熱膨張率が下側の熱膨張性耐火材の熱膨張率よりも高い。
さらに径方向の位置も高さ方向の位置もともに異なる場合には、高さ方向が上側で径方向の内層側に熱膨張率の高い熱膨張性耐火材が配置され、高さ方向が下側で径方向の外層側に熱膨張率の低い熱膨張性耐火材が配置される。
【0068】
最後に、上下方向に異なる位置に2種類の熱膨張性耐火材が設けられる場合であるために、通常であれば(上述したように)高さ位置の上側に熱膨張率の高い熱膨張性耐火材が
配置され、高さ位置の下側に熱膨張率の低い熱膨張性耐火材が配置されることになるが、排水配管継手100においては、下側の熱膨張性耐火材として、くぼみ112に充填されたパテ状の熱膨張性耐火材612が採用され、上側の熱膨張性耐火材として、シート状の熱膨張性耐火シート712が採用されている。パテ状のほうがシート状よりも熱膨張率が高いために、下側の熱膨張性耐火材612が上側の熱膨張性耐火シート712よりも熱膨張率が高いことになる。
【0069】
これは、排水配管継手100において、管本体110は、直管部116の下方に縮径部118を備え、その縮径部118にパテ状の熱膨張率が高い熱膨張性耐火材612を採用して管径の小さい縮径部118を高い熱膨張率のパテ状の熱膨張性耐火材612で速やかに閉塞させる。一方、形態安定性が低くなるために(落下しやすくなるために)、熱膨張性耐火材612の外層側を耐火性および遮炎性をも有するロックウールに代表される振動絶縁体720で被覆するとともに、管径が次第に小さくなっている縮径部118の形状により保持することにより、このパテ状の熱膨張性耐火材612が落下することを防止して、形態安定性が低いことを補っている。
【0070】
このように、熱膨張率に基づく熱膨張性耐火材の配置における、高さ方向については例外があり得る。なお、熱膨張性耐火材は、シート状とシート状の組み合わせ、パテ状とパテ状の組み合わせ、シート状とパテ状との組み合わせのいずれであっても構わないし、熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材が採用されていれば、2箇所に限らず3箇所目に3種類目の熱膨張性耐火材が採用されているものも本発明の範囲である。
【0071】
また、上述した熱膨張性耐火材の配置の例に加えて、管本体110のように、直管部116とこの直管部116の下方の縮径部118とを少なくとも備える場合においては、直管部116の高さ範囲において、径方向の異なる位置に2種類の熱膨張性耐火材が設けられていることが他の例として挙げられる。
さらに、これらの直管部116と縮径部118とに、熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材がそれぞれ設けられていることが他の例として挙げられる。たとえば、排水配管継手100がこのような例である。
【0072】
また、このような熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材は、互いに重なった部分を備えるように設けられていることが他の例として挙げられる。
また、このような熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材のうちの少なくとも1つは床スラブSに対応する位置に設けられていることが他の例として挙げられる。たとえば、排水配管継手100がこのような例であって、熱膨張性耐火シート712が床スラブSに阻害されて外層側へ膨張できずに径方向の内層側に膨張するしかなく、排水配管継手100の中空部を速やかに押しつぶして閉塞することができる。
【0073】
上述したように、このような熱膨張率が異なる熱膨張性耐火材は、シート状であって排水配管継手100が備える直管部116の周りに環状に設けられる環状形態、または、パテ状であって排水配管継手100が備えるくぼみ112に充填されて設けられる充填形態のいずれかの形態で設けられていることが好ましい。そして、このように、環状形態で設けられたシート状の熱膨張性耐火材、および、充填形態で設けられたパテ状の熱膨張性耐火材により、制振性を発現させることができる。
【0074】
<排水配管継手100の施工方法:基本的に排水配管継手が樹脂製に限定される>
排水配管継手100を、建築物の床スラブSの貫通孔に配置して施工する施工方法について以下に説明する。
この施工方法に好適に採用される排水配管継手100は、さらに以下の構造上の特徴を備える。
【0075】
この排水配管継手100は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品でその全体が形成されて、建築物に施工された際に、床スラブSの貫通孔に配置される管本体110と、その床スラブSの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管520を接続する上立管接続部120と、その床スラブSの下方に突出し下階に排水を流出させる排水管(ここでは排水立管530)を接続する排水管接続部130と、その床スラブSの上方で排水横枝管510を接続する横枝管接続部140とを備えた排水配管継手であって、さらなる構造上の特徴として、上立管接続部120または横枝管接続部140は透明樹脂で形成され、管本体110の外周面の少なくとも一部に制振材714が管本体110と一体的に設けられ、上立管接続部120の受口部分または横枝管接続部140の受口部分は、その透明樹脂が目視できなくなる遮蔽物を備えない。このように、この排水配管継手100は、その施工前において、管本体110における少なくとも床スラブSの貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に制振材714が管本体110と一体的に設けられ、上立管接続部120または横枝管接続部140は透明樹脂で形成され、上立管接続部120の受口部分または横枝管接続部140の受口部分は、その透明樹脂が目視できなくなる遮蔽物を備えない。
【0076】
この排水配管継手100は、上立管接続部120または横枝管接続部140は透明(無色透明も有色透明も含む)樹脂で形成され、施工前において上立管接続部120の受口部分または横枝管接続部140の受口部分にはその透明樹脂が目視できなくなる遮蔽物を備えていない。なお、ここでは、施工前において、上立管接続部120の受口部分以外または横枝管接続部140の受口部分以外には制振材714が設けられているが、これらの制振材714が全く設けられていなくて施工後に後付けで設けるようにしてもかまわない。
【0077】
このような構造上の特徴をさらに備えた排水配管継手100を、建築物の床スラブSの貫通孔に配置して施工する施工方法は、上立管接続部120と排水立管520との嵌合状態を上立管接続部120の透明樹脂を介して目視で認識して(認識しながら)排水立管520を上立管接続部120に接続したり、横枝管接続部140と排水横枝管510との嵌合状態を横枝管接続部140の透明樹脂を介して目視で認識して(認識しながら)、排水横枝管510を横枝管接続部140に接続したりする。
【0078】
そして、このように透明樹脂の受口部分を目視で確認して(認識しながら)、排水立管520を上立管接続部120に接続したり排水横枝管510を横枝管接続部140に接続したりして、さらに、排水配管継手100を床スラブSの貫通孔に配置が完了した後に、床スラブSの貫通孔と排水配管継手100との隙間にモルタルMを充填する。
さらに、このモルタルMを充填した後に、上立管接続部120の外周または横枝管接続部140の外周に、遮音部材を設ける。この遮音部材は上述してきた遮音カバー730とは(同じである場合も含むが基本的には)異なるものであって、名称通りの遮音性に加えて制振性および/または振動絶縁性を備える一般的な名称として記載されるものである。このような遮音部材の一例として、上述した制振材714を受口部分に設けたり、この制振材714に替えて/加えて上述したロックウールに代表される振動絶縁体720および/またはEPDM製等のゴムカバーで形成された遮音カバー730を設けたり、この制振材714に替えて/加えてロックウールとは異なるグラスウールの振動絶縁体および/または塩化ビニル製等のカバーで形成された遮音カバーを設けたりする。また、この場合において、上立管接続部120または横枝管接続部140の受口部分に(施工前に受口部分以外に制振材714が設けられていない場合には受口部分を含めて他の部分にも)制振材714を、この遮音部材の内層側に設けることも好ましい。
【0079】
この場合において、この遮音部材を排水配管継手100の外周側から被せるようにして設けるようにして施工されたり、この遮音部材に吸音材としてのグラスウールと遮音カバーとしての塩化ビニル製の遮音シートとを含むようにしてこのグラスウールからなる吸音材を(内層側の制振材714ではなく)外層側の塩化ビニル製の遮音カバーに固着(縫製、接着剤等で固定されている場合を含む)されるようにして施工されたりする。
【0080】
このように、排水配管継手100の施工前には透明樹脂で形成された上立管接続部120または横枝管接続部140の受口部分がその透明樹脂が目視できなくなる遮蔽物を備えていないために、上立管接続部120と排水立管520との嵌合状態または横枝管接続部140と排水横枝管510との嵌合状態を、その透明樹脂を介して目視で認識して排水管を接続することができるので、施工ミスを抑制することができる。また、ロックウールやグラスウール等を吸音材として含む遮音部材は、モルタルMの埋め戻し後に排水配管継手100に取り付けられるために、モルタルMの埋め戻し時に排水配管継手100の外径が大きくならずモルタルMを埋め戻しやすく、また、モルタルMの水分がロックウールやグラスウール等に飛散してこれらを濡らしてしまう可能性を排除することができる。
【0081】
以上のようにして、排水配管継手100の排水管の接続部を透明樹脂で形成するとともに施工前において、それらの接続部における受口部分の透明樹脂を目視できる状態(受口部分の透明樹脂が目視できなくなる遮蔽物を備えていない状態)で排水配管継手100の施工を開始するために、目視で排水配管継手100と他の排水管との接続状態を目視で確認しながら接続できるので、施工ミスを抑制することができたり、モルタル埋め戻し後にロックウールやグラスウール等を吸音材として含む遮音部材が設けられるためにモルタルMを埋め戻しやすく、また、モルタルMの水分によりロックウールやグラスウール等を濡らしてしまう可能性を排除することができる。そして、この排水配管継手100の施工後は、上述したように、排水振動を極めて効果的に抑制することができたり、耐火性能を十分に発揮させることができたり、高い止水性能を発現できたりする。
【0082】
[2つの実施の形態に係る施工方法に共通する事項:ただし、硬質遮音カバー]
上述した実施の形態においては、遮音カバー730は、ゴム系(EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等)、エラストマー系またはオレフィン系(ポリエチレン樹脂等)の材料を含んで形成されたものであって弾性(伸縮性)を備えるが、以下において説明する本発明の実施の形態に係る施工方法(第1の実施の形態に係る施工方法および第2の実施の形態に係る施工方法)においては、この遮音カバーが、硬質樹脂製の遮音カバー本体と、この遮音カバー本体とは別部材の弾性材(ゴムパッキン)とで構成される点が異なる。
【0083】
上述した実施の形態における排水配管継手における3層構造の外層部材の最外層を構成する遮音カバー730はゴム系、エラストマー系またはオレフィン系の材料を含んで形成されて伸縮性(弾性)を備え、防振性能、遮音性能、止水性能を発現している。この遮音カバー730を排水配管継手にセットする場合には(より正確には管本体に設けられた制振材714および振動絶縁体720の2層がセットされた排水配管継手の本体側にこの遮音カバー730をセットする場合には)本体側と遮音カバーとの止水のために接着剤で接合している。この遮音カバー730をセットする作業の作業性が好ましくない可能性がある。
【0084】
上述した実施の形態に係る排水配管継手の大きな問題点ではないのであるが、この遮音カバー730をセットする場合においては、たとえば、接着剤を塗布して、遮音カバーの伸縮性を用いて引き延ばすようにして(内径を大きくして)遮音カバー730以外を備えた排水配管継手に遮音カバー730を被せるようにしてセットして、はみ出した接着剤を拭き取って、接着剤が固化して遮音カバーが本体側へ接合されたことを確認する、という手順で行なわれる。このため、手順が煩雑である場合、または、接着剤の固化に時間を要する場合には、このセット作業に時間を必要とする可能性がある。
【0085】
これに対して、本実施の形態に係る施工方法が好適に採用される排水配管継手の遮音カバーは(その遮音カバー本体が)伸縮性(弾性)を備えないために形状が固定しており、遮音カバー以外を備えた排水配管継手に遮音カバーを(伸縮性(弾性)備えないので引き延ばすことは不可能で引き延ばさないで)被せるように、かつ、遮音カバーの内周面と排水配管継手の外表面との間に弾性材(ゴムパッキン)を備えるようにしてセットされる。遮音カバーは、この弾性材(ゴムパッキン)を介して排水配管継手に(接着剤等を用いることなく)接合される。このように、硬質樹脂製の遮音カバー本体にこの弾性材(ゴムパッキン)を組み合わせて遮音カバーとすることにより、作業性を向上させることができるとともに、止水性と遮音性と振動絶縁性とを発現させることができる。
【0086】
以下において、本実施の形態に係る施工方法が好適に採用される排水配管継手(より詳しくは第1の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される弾性材(ゴムパッキン)が遮音カバー側に設けられた排水配管継手101および第2の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される弾性材(ゴムパッキン)が排水配管継手(本体)側に設けられた排水配管継手103)の概要について説明する。排水配管継手101の遮音カバー731と排水配管継手103の遮音カバー741とに共通する事項を説明する場合には、上述した実施の形態と同じ遮音カバー730で代表させて記載する場合がある。
本発明の実施の形態に係る施工方法において、排水配管継手は以下の構成を備えるように施工される。
【0087】
これらの排水配管継手(排水配管継手101または排水配管継手103)の遮音カバー(遮音カバー731または遮音カバー741)は、振動絶縁体720の上下方向の全長に対応した長さ(貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部を覆う長さであれば構わない)を備えた硬質のカバー本体(より詳しくは遮音カバー本体733または遮音カバー本体743)を含み、カバー本体と排水配管継手の外表面との間における、上側の端部のみに、または、上側の端部および下側の端部に(ここでは上側の端部のみではなく上側の端部および下側の端部に)、弾性材(ゴムパッキン)(より詳しくは、弾性材(ゴムパッキン)735または、弾性材(ゴムパッキン)745)を備えるように施工される。ここで、上述したように、上側の端部に設けられた弾性材(ゴムパッキン)は上端止水部として、下側の端部に設けられた弾性材(ゴムパッキン)は下端止水部として、それぞれ機能して、弾性材(ゴムパッキン)を介して排水配管継手の外表面に遮音カバーが当接して遮音カバーにより止水性を発現させているとともに、弾性材(ゴムパッキン)を伸縮性を備えない遮音カバー本体に組み合わせたことにより、遮音カバーに止水性に加えて遮音性および振動絶縁性を発現させている。
【0088】
ここで、弾性材(ゴムパッキン)は、遮音カバー本体(遮音カバー本体733)の内周面(第1の実施の形態に係る施工方法の場合)または排水配管継手(横枝管接続部140の集水室下部905)の外表面(第2の実施の形態に係る施工方法の場合)に設けられるように施工される。ここで、弾性材(ゴムパッキン)735が遮音カバー本体733に設けられて遮音カバー731を構成する場合においては、さらに詳しくは、遮音カバー731(遮音カバー本体733+弾性材(ゴムパッキン)735:さらに任意的に振動絶縁体720)を貫通孔にセット(設置)してから排水配管継手(本体)を設置(遮音カバーに挿入)する第1の実施の形態に係る施工方法を採用する場合においては、遮音カバーの遮音カバー本体733の内周面におけるくぼみ(より詳しくは上側くぼみ733DUおよび下側くぼみ733DD)に弾性材(ゴムパッキン)735が(くぼみに嵌め込まれるように)設けられるように施工される。
【0089】
また、上述したように、伸縮性を備えないカバー本体(遮音カバー本体733または遮音カバー本体743)は、硬質樹脂製が採用されて施工される。
また、図5および図6に示すように、遮音カバー(遮音カバー731)は、排水配管継手101の外径(より詳しくは横枝管接続部140の集水室下部905の外径)に対応したリング状で弾性を備えたリング弾性材(ゴムリング)900を介して、排水配管継手101の外表面に当接するように施工される。なお、このような態様は、図7および図8に示す排水配管継手103への適用も可能である(図5および図6で図示して図7および図8で図示していないだけである)。
【0090】
また、遮音カバー(遮音カバー731または遮音カバー741)と排水配管継手(排水配管継手101または排水配管継手103)との間であって、貫通孔内を通る部分の少なくとも一部には振動絶縁体720が設けられ、その振動絶縁体720は、外層側の遮音カバー(遮音カバー731または遮音カバー741)に固着されるように施工される。
ここで、上述したように、振動絶縁体720は、直管部116に対応する高さ範囲において、遮音カバー730(この段落において、遮音カバー731または遮音カバー741を含む)の周方向に断続的に固定されているように設けることが好ましく、また、振動絶縁体720は、外層側の遮音カバー730の周方向2箇所~4箇所において点付けで固定されているように設けることが好ましいと説明したが、これに替えて以下のように固定することも好ましい。振動絶縁体720は、外層側の遮音カバー730の高さ方向の少なくとも1箇所において振動絶縁体720の外側の1周分が連続または断続して固定されることにより、外層側の遮音カバーに固着されるように施工されることが好ましい。
【0091】
以下において、遮音カバーおよび弾性材等の材質ならびに排水配管継手の施工方法を含めて(第1の実施の形態と第2の実施の形態とに分けて)さらに詳しく説明する。
ここで、弾性材(ゴムパッキン)は、遮音カバー側に設けられる場合(後述する第1の実施の形態)も、排水配管継手(本体)側に設けられる場合(後述する第2の実施の形態)もあるが、これらの差異に関わらず、弾性材(ゴムパッキン)は遮音カバーの一部を構成している。この詳細については後述するが、第1の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手101における遮音カバー731は、遮音カバー本体733と弾性材(ゴムパッキン)735で構成されるとともに弾性材(ゴムパッキン)735が遮音カバー本体733の内周面に設けられ、第2の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手103における遮音カバー741は、遮音カバー本体743と弾性材(ゴムパッキン)745で構成されるとともに弾性材(ゴムパッキン)745が排水配管継手103の外周面に設けられている。さらに、この弾性材(ゴムパッキン)は、これら2つの実施の形態(第1の実施の形態および第2の実施の形態)において、カバー本体と排水配管継手の外表面との間における、上側の端部のみに、または、上側の端部および下側の端部に、設けられて、上述した止水機能等を発現している。そして、これら2つの実施の形態においてこのように遮音カバーが構成されることにより(すなわち、遮音カバーが弾性材(ゴムパッキン)を含めて構成されることにより)、上述した実施の形態に係る遮音カバー730と同様に、これら2つの実施の形態においても、遮音カバー731または遮音カバー741が止水性と遮音性と振動絶縁性とを発現するように施工される。
【0092】
ここで、以下において詳しく説明する施工方法についての実施の形態(第1の実施の形態および第2の実施の形態)に好適に適用される排水配管継手101および排水配管継手103の遮音カバーは、上述した実施の形態に係る排水配管継手100の遮音カバーが弾性(伸縮性)を備えたゴム系の材料で形成されていたことに対して、硬質樹脂製の材料で形成されるものに変更された点が相違点である。なお、上述したようにリング弾性材(ゴムリング)900を備える点も相違点ではあるが、このリング弾性材(ゴムリング)900については上述した上述した実施の形態に係る排水配管継手100においても採用できる。それ以外の構造であって上述した排水配管継手100と同じ構造については、上述した排水配管継手100と同じ符号を付している。それらについての説明は、上述した説明と重複するために、ここでは繰り返して説明しない。
【0093】
ここで、施工方法についての実施の形態(第1の実施の形態および第2の実施の形態)に好適に適用される排水配管継手101および排水配管継手103において遮音カバーのカバー本体(遮音カバー本体733および遮音カバー本体743)として採用される硬質樹脂としては、代表的に、塩化ビニルやポリエチレンを挙げることができる。さらに、このような硬質樹脂として、たとえば、オレフィン系材料(オレフィン系樹脂100重量部に対して、無機フィラーを300~600重量部含有する樹脂組成物)等といった樹脂材料により形成することも好ましい。
【0094】
無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。
【0095】
これらのうち、重量とコストのバランスから炭酸カルシウムを無機フィラーとして用いることが好ましい。なお、これらは、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
オレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリαオレフィンが挙げられる。
【0096】
さらに、オレフィン系材料とは異なる材料で形成されていてもよく、たとえば、(上述した)ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、エラストマー材料等を用いても構わない。
以下の施工方法についての実施の形態(第1の実施の形態および第2の実施の形態)においては、遮音カバーのカバー本体として採用される硬質樹脂は、塩化ビニルであるとして説明する。
【0097】
ここで、施工方法についての実施の形態(第1の実施の形態および第2の実施の形態)に好適に適用される排水配管継手101および排水配管継手103において遮音カバーの一部を構成する弾性材(ゴムパッキン)として採用される素材としては、一般的にいわゆるパッキンとして使用できるゴム材料であって、代表的に、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)が挙げられる。これらの他に、熱可塑性エラストマーやポリエチレン発泡フォーム等も採用することができる。
【0098】
以下の施工方法についての実施の形態(第1の実施の形態および第2の実施の形態)においては、遮音カバーの弾性材(ゴムパッキン)として採用されるゴム材料は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)であるとして説明する。
また、リング弾性材(ゴムリング)900として採用される素材としては、限定されるものではないが、上述した弾性材(ゴムパッキン)と同様の素材を採用することができる。
【0099】
[第1の実施の形態に係る施工方法:弾性材(ゴムパッキン)が遮音カバー側]
図5および図6を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る施工方法およびこの第1の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手101について、以下に詳しく説明する。図5は第1の実施の形態に係る施工方法により施工された後の排水配管継手101を含む排水配管構造を示す断面図(完成施工図)であって、図6は排水配管継手101において遮音カバー731(より正確には遮音カバー本体733と弾性材(ゴムパッキン)735とからなる遮音カバー731、さらに任意的ではあるが振動絶縁体720)を、排水配管継手の施工現場である建築物の床スラブSに開けられた貫通孔に排水配管継手101を施工する施工方法(第1の実施の形態に係る施工方法)を説明するための図である。
【0100】
これらの図に示すように、排水配管継手101が備える遮音カバー731は、振動絶縁体720の上下方向の全長に対応した長さ(貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部を覆う長さであれば構わない点は上述した通り)を備えた硬質の遮音カバー本体733を含み、遮音カバー本体733と排水配管継手101の外表面との間における、上側の端部のみに、または、上側の端部および下側の端部に、弾性材(ゴムパッキン)735を備える。これらの図においては、弾性材(ゴムパッキン)735は、遮音カバー本体733と排水配管継手101の外表面との間における上側の端部および下側の端部の両側の端部に設けられているが、上側の端部のみに設けるようにしても構わない。この弾性材(ゴムパッキン)735により排水配管継手101の止水性と遮音性と振動絶縁性とを(上述した実施の形態と遮音カバー730の材質は異なるものの上述した実施の形態と同じく)発現することができる。ここで、上述したように、弾性材(ゴムパッキン)735が遮音カバー本体733に設けられて遮音カバー731を構成する場合においては、さらに詳しくは、遮音カバー731(遮音カバー本体733+弾性材(ゴムパッキン)735)を貫通孔にセット(設置)してから排水配管継手(本体)を設置(遮音カバーに挿入)する第1の実施の形態に係る施工方法を採用する場合においては、遮音カバーの遮音カバー本体733の内周面におけるくぼみ(より詳しくは上側くぼみ733DUおよび下側くぼみ733DD)に弾性材(ゴムパッキン)735が(くぼみに嵌め込まれるように)設けられるように施工される。ここで、これらの2つのくぼみに関しては、上側にしか弾性材(ゴムパッキン)735を備えない場合には、遮音カバー本体733に下側くぼみ733DDを備えないで構わない。なお、この弾性材(ゴムパッキン)735は、図6に示すように、遮音カバー731の上方から遮音カバー731以外の排水配管継手101を挿入しやすく挿入途中で戻らないように挿入するため、断面レ字形状の返し部分を備えている。なお、図8に示すように、後述する第2の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手103の弾性材(ゴムパッキン)745も同じように返し部分を備える(くぼみは備えない)。
【0101】
第1の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手101においては、この弾性材(ゴムパッキン)735は遮音カバー本体733の内周面に設けられており、この点が、排水配管継手の外周面に設けられている第2の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手103と異なる。
上述したように、遮音カバー本体733は、硬質樹脂製である。
【0102】
第1の実施の形態に係る施工方法が好適に適用されて床スラブSの貫通孔に施工された排水配管継手101はこのような構成を備えるために、外層部材701は、3層構造を備え、排水配管継手101の外表面から、制振材714(または熱膨張性耐火シート712)、耐火性無機繊維によって形成された振動絶縁体720、遮音カバー731(遮音カバー本体733および弾性材(ゴムパッキン)735)の順に、管本体110の外面に設けられていることになる。ただし、最外層の遮音カバー731を構成する弾性材(ゴムパッキン)735がこの排水配管継手101の外表面に当接するために遮音カバー731が最内層となる部分を備える点については、弾性材(ゴムパッキン)735の当接面積が小さいことを理由として無視する(排水配管継手100も排水配管継手103も同じ)。
【0103】
このように、この排水配管継手101においては、弾性材(ゴムパッキン)735が遮音カバー731の遮音カバー本体733の内周面(さらに限定的には上側くぼみ733DU、下側くぼみ733DD)に設けられているために、第1の実施の形態に係る施工方法においては、遮音カバー731(より正確には遮音カバー731を構成する遮音カバー本体733および弾性材(ゴムパッキン)735、さらに任意的ではあるが振動絶縁体720)を貫通孔に設置して、貫通孔に設置された遮音カバー731に排水配管継手101(より正確には遮音カバー731を構成する遮音カバー本体733および弾性材(ゴムパッキン)735ならびに振動絶縁体720以外)を挿入することになる。
【0104】
ここで、図5および図6に示すように、この遮音カバー731は、排水配管継手101の外径に対応したリング状で弾性を備えたリング弾性材(ゴムリング)900を介して、排水配管継手101の外表面に当接する。この排水配管継手101における横枝管接続部140と管本体110との接続は、横枝管接続部140が管本体110に内嵌される(管本体110の嵌合部902の内周面と横枝管接続部140の嵌合部904の外周面とが接合される)ために、横枝管接続部140の外周面と管本体110の外周面とでは図6の白抜き三角印で示すように管本体110側が出っ張った段差が生じることになる。この段差が生じた状態で、図17に示すように遮音カバー731(より正確には遮音カバー731に加えて任意的ではあるが振動絶縁体720)を排水配管継手101(より正確には遮音カバー731および振動絶縁体720以外)をセットするときに、この段差があるために遮音カバー731をセットすることが難しい場合がある。このため、この段差を解消させるためにリング弾性材(ゴムリング)900が横枝管接続部140の集水室下部905の外周面に設けられ、黒塗り三角印および白抜き三角印で示されるように段差が解消される。
【0105】
このリング弾性材(ゴムリング)900は、横枝管接続部140の嵌合部904の外径(=集水室下部905の外径)に対応した内径を備えるとともに、その厚み(外径)は管本体110の嵌合部902の外径に対応しており、このリング弾性材(ゴムリング)900を横枝管接続部140の嵌合部904にセットするとリング弾性材(ゴムリング)900の外径が黒塗り三角印で示される位置になり、白抜き三角印で示される管本体110の嵌合部902の外径と略等しくなって、上述した段差が解消されて、遮音カバー731(より正確には遮音カバー731に加えて任意的ではあるが振動絶縁体720)を排水配管継手101(より正確には遮音カバー731および振動絶縁体720以外)をセットする作業性が向上する。
【0106】
このリング弾性材(ゴムリング)900については、第1の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手101だけではなく第2の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手103であっても、遮音カバー本体がEPDM等のゴム系材料である場合(すなわち上述した実施の形態に係る全ての排水配管継手)においても好ましく適用することができる。
【0107】
ここで、上述した実施の形態においては、振動絶縁体720は、外層側の遮音カバー730の周方向2箇所~4箇所において点付けで固定されていたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、上述した実施の形態に係る排水配管継手100においても、排水配管継手101および排水配管継手103においても、振動絶縁体720は、外層側の遮音カバーの高さ方向の少なくとも1箇所において振動絶縁体720の外側の1周分が連続または断続して固定されることにより、外層側の遮音カバーに固定されていても構わない。このように中間層としてロックウールシートを一例とする振動絶縁体720を緩くかつ外側の1周分が連続または断続して内層側の制振材714ではなく外層側の遮音カバーに固定して設けることにより、吸音性と耐火性(制振材714に替えて/加えて熱膨張性耐火材を設ける場合)と遮音性と振動絶縁性とを発現させて、最外層として塩化ビニル製の硬質カバーを一例とする遮音カバー731(遮音カバー本体733および弾性材(ゴムパッキン)735)を設けて止水性と遮音性と振動絶縁性とを発現させることにより、第1の実施の形態に係る施工方法が好適に適用されて床スラブSの貫通孔に施工された排水配管継手101に発生する振動を極めて効果的に抑制することができる。
【0108】
以上のようにして、第1の実施の形態に係る施工方法が好適に適用されて床スラブSの貫通孔に施工された排水配管継手101においても、上述した実施の形態に係る排水配管継手100と同様の作用効果を発現させることができる。
図6を参照して、第1の実施の形態に係る施工方法について、詳しく説明する。この施工方法は、排水配管継手101の施工現場である建築物の床スラブSに開けられた貫通孔に図6に示す手順で排水配管継手101を施工する施工方法であって、この施工方法により図5の完成施工図に示すように施工が完成する。
【0109】
特徴的であるのは、(弾性材(ゴムパッキン)を含む)遮音カバーを床スラブSの貫通孔にセット(設置)してモルタル等の充填剤Mで遮音カバーを床スラブSに埋設した後に、埋設された遮音カバーに遮音カバー以外の排水配管継手をセット(挿入)する施工方法である。なお、モルタル等の充填剤Mで遮音カバーを床スラブSに埋設するステップは、後述のPC板等を考慮すると、本発明に係る施工方法の必須要件ではない。
さらに詳しくは、第1の実施の形態に係る施工方法は、以下の3ステップを備える。
【0110】
(1-1:弾性材セットステップ)遮音カバー731(より正確には遮音カバー本体733)の内周面における所定の位置に弾性材(ゴムパッキン)735を設ける。このとき、遮音カバーの遮音カバー本体733の内周面におけるくぼみ(より詳しくは上側くぼみ733DUおよび下側くぼみ733DD)に弾性材(ゴムパッキン)735が(くぼみに嵌め込まれるように)設けられるように施工される。
【0111】
(1-2:遮音カバー設置ステップ)弾性材(ゴムパッキン)735を設けた後の最外層の遮音カバー731と、限定されるものではないがこの遮音カバー731に固着された振動絶縁体720とを貫通孔に設置する。
(1-3:一体化ステップ)遮音カバー731(より正確には遮音カバー731に加えて任意的ではあるが振動絶縁体720)が貫通孔に設置された後に、設置された遮音カバー731(より正確には遮音カバー731に加えて任意的ではあるが振動絶縁体720)に(遮音カバー731および振動絶縁体720以外の)排水配管継手101を挿入して、弾性材(ゴムパッキン)735を介して遮音カバー731と、(遮音カバー731および振動絶縁体720以外の)排水配管継手101とを一体化する。このときに、リング弾性材(ゴムリング)900により横枝管接続部140の外周面と管本体110の外周面とで管本体110側が出っ張った段差(図6の白抜き三角印)が解消されており、この一体化ステップの作業性が向上する。
【0112】
ここで、この一体化するステップとは、止水処理するステップとほぼ同義であって、より具体的には、遮音カバー本体733が弾性材(ゴムパッキン)735を介して排水配管継手101に(接着剤等を用いることなく)接合されて、この弾性材(ゴムパッキン)735により止水性能および防振性能が発現されるように施工されるステップを意味する。
また、この一体化するステップは、床スラブSに設置された遮音カバー731(より正確には遮音カバー731に加えて任意的ではあるが振動絶縁体720)を弾性材(ゴムパッキン)735とともに貫通孔に残存させて、(遮音カバー731および振動絶縁体720以外の)排水配管継手101を貫通孔から離脱可能に、一体化するステップであることも、排水配管継手の更新処理(遮音カバー731および振動絶縁体720以外を更新、または遮音カバー731以外を更新、または、遮音カバー本体733以外を更新)の点から好ましい。
【0113】
さらに、第1の実施の形態に係る施工方法においては、任意要件として、以下の充填ステップをさらに含めても構わない。
(1-4:充填ステップ)遮音カバー731を貫通孔に設置した後であって遮音カバー731と排水配管継手101とを一体化するステップの前に、遮音カバー731の外周面と貫通孔の内周面との間に充填材Mを充填して、貫通孔内に遮音カバー731を埋設して固定する。
【0114】
すなわち、第1の実施の形態に係る施工方法においては、排水配管継手101に好適に適用され、図6に示すように、遮音カバー731(より正確には遮音カバー本体733と弾性材(ゴムパッキン)735とからなる遮音カバー731に加えて任意的ではあるが振動絶縁体720)を床スラブSの貫通孔に設置した後に、貫通孔に設置された遮音カバー731(より正確には遮音カバー731に加えて任意的ではあるが振動絶縁体720)に排水配管継手101(より正確には遮音カバー731および振動絶縁体720以外)を挿入して一体化する。
【0115】
このように、第1の実施の形態に係る施工方法によると、弾性材(ゴムパッキン)735が遮音カバー本体733の内周面のくぼみに設けられた遮音カバー731(より正確には遮音カバー731に加えて任意的ではあるが振動絶縁体720)を床スラブSの貫通孔に先に設置した後(さらに任意的ではあるが遮音カバー731の外周面と貫通孔の内周面との間に充填材Mを充填した後)に、排水配管継手101(より正確には遮音カバー731および振動絶縁体720以外)を遮音カバー731の上方から挿入して一体化することにより、排水配管継手101を貫通孔に施工することができる。このため、床スラブSのコンクリート打設前にボイド管を床下地に垂直に立てて固定してその周囲にコンクリートを流し込んでコンクリート床を造り、養生し、ボイド管の内部に区画形成される空洞を貫通孔としている場合には、通常、紙、樹脂または金属のボイド管を養生後に引き抜き(金属のボイド管は引き抜かない場合もある)、貫通孔と排水配管継手との隙間を充填材で埋める作業が必要であったが、このようなボイド管の代わりに遮音カバー731(より正確には遮音カバー731に加えて任意的ではあるが振動絶縁体720)を用いることとすると(床スラブSのコンクリート打設前に遮音カバーを床下地に垂直に立てて固定してその周囲にコンクリートを流し込んでコンクリート床を造ることとすると)充填剤で貫通孔と排水配管継手との隙間を埋める作業が不要となる点(とともにそもそもボイド管を用いないためにボイド管の引き抜き作業が不要となる点)で好ましい。この場合において、遮音カバーの長さは、スラブの厚みと同じかそれより短いことが(遮音カバーの周囲にコンクリートを流し込む現場作業の邪魔にならない点で)好ましい。すなわち、遮音カバーを貫通孔に設置した後において、遮音カバーの長さが貫通孔の長さ以下であることになる。
【0116】
また、このように施工する場合において、排水配管継手を更新する場合には、遮音カバー731(より正確には遮音カバー731に加えて任意的ではあるが振動絶縁体720)を床スラブSの貫通孔に残存させて、遮音カバー731以外(より正確には遮音カバー731および振動絶縁体720以外等)を更新することができる点で好ましい。
ここで、工期短縮のために、PC(プレキャストコンクリート)板を製造するPC板製造工場において、排水配管継手を予めPC板に打設しておくことも考えられる。この場合、床スラブSに貫通孔を先に開けておいてその貫通孔に排水配管継手を設置して隙間(貫通孔と排水配管継手との間の隙間)を充填材で埋めるのではなく、PC板製造工場においてPC板に排水配管継手が直接埋められることが想定できる。このような想定に基づくと、上述したボイド管の代わりに遮音カバーを用いることと同様に、遮音カバーをPC板に予め直接埋めておく(打設しておく)ことが考えられる。すなわち、床スラブにおける排水配管継手と貫通孔との隙間を充填材で埋めるのではないものとなるために、本発明の第1の実施の形態に係る施工方法においては、隙間を充填材で埋める(1-4)充填ステップは、上述したように、第1の実施の形態に係る施工方法の必須要件ではないものとして説明した。この場合においても、上述したように、遮音カバーの長さは、スラブの厚み(ここではPC板の厚み)と同じかそれより短いことが(遮音カバーの周囲にコンクリートを流し込むPC板製造作業の邪魔にならない点で)好ましい。すなわち、遮音カバーを貫通孔に設置した後において、遮音カバーの長さが貫通孔の長さ以下であることになる。
【0117】
このように、ボイド管の代わりに遮音カバーを用いる場合であっても、PC板製造工場でPC板を製造する場合であっても、貫通孔の長さより遮音カバーの長さが長いと、貫通孔に遮音カバーを設置してコンクリートを打設する際に貫通孔からはみ出た遮音カバーが邪魔になったり、PC板をPC板製造工場から搬送する際に貫通孔からはみ出た遮音カバーが邪魔になったりするが、遮音カバーの長さが貫通孔の長さ以下であると、このようなことを回避することができる。ここで、遮音カバーの長さが貫通孔の長さより長い場合には、遮音カバーの一部(少なくともはみ出た部分)を切断して長さを揃えるようにしたり、遮音カバーの長さが貫通孔の長さより短い場合には、追加スリーブ材を用いて、遮音カバー+追加スリーブ材の長さが貫通孔の長さとなるように調整したりすることが考えられる。より具体的には、遮音カバーの長さがスラブの厚みより長い場合には、たとえば、スラブより下にはみ出ている部分は切り取られてから遮音カバー以外を構成する排水配管継手が遮音カバーの内部に挿入されることになり、スラブより下の排水配管継手の制振ゴムはむき出しのまま設置されることになる。なお、このように遮音カバーを貫通孔に設置した後において、遮音カバーの長さが貫通孔の長さ以下であることは、後述する第2の実施の形態においても好適に適用されるものである。
以上のようにして、第1の実施の形態に係る施工方法によると、最適な遮音性能等を発現し得る排水配管部材(ここでは排水配管継手101)を、建築物の区画(ここでは床スラブS)を貫通する貫通孔に作業性良く施工することができる。
【0118】
[第2の実施の形態に係る施工方法:弾性材(ゴムパッキン)が排水配管継手側]
図7および図8を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る施工方法およびこの第2の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手103について(第1の実施の形態とで共通する説明は繰り返すことなく)、以下に詳しく説明する。図7は第2の実施の形態に係る施工方法により施工された後の排水配管継手103を含む排水配管構造を示す断面図(完成施工図)であって、図8は排水配管継手103において遮音カバー741(より正確には遮音カバー本体743のみ)を、排水配管継手の施工現場である建築物の床スラブSに開けられた貫通孔に排水配管継手103を施工する施工方法(第2の実施の形態に係る施工方法)を説明するための図である。
【0119】
ここで、第1の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手101と第2の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手103とでは、排水配管継手101においては遮音カバー731の遮音カバー本体733の内周面に弾性材(ゴムパッキン)735が設けられている点に対して、排水配管継手103においては遮音カバー741の遮音カバー本体743ではなく排水配管継手103の外周面(より詳しくは横枝管接続部140の集水室下部905)に弾性材(ゴムパッキン)745が設けられている点が異なる。第2の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手103におけるその他の構成は、上述した第1の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手101と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰り返さない。なお、第2の実施の形態に係る施工方法が好適に適用される排水配管継手103においては、リング弾性材(ゴムリング)900は任意要件(排水配管継手103にリング弾性材(ゴムリング)900は基本的には不要)であるために図7および図8には図示していない。
【0120】
さらに詳しくは、第2の実施の形態に係る施工方法は、以下の3ステップを備える。なお、充填ステップ(1-4)は上述した第1の実施の形態に係る施工方法と同じであって、第2の実施の形態に係る施工方法においても同じく任意要件である。
(2-1:弾性材セットステップ)排水配管継手103(より正確には横枝管接続部140の集水室下部905)の外表面における所定の位置に弾性材(ゴムパッキン)745を設ける。このように、弾性材(ゴムパッキン)745は、排水配管継手101の弾性材(ゴムパッキン)735のように遮音カバー731の内周面に設けられるものではく、排水配管継手103における横枝管接続部140の集水室下部905の外表面に設けられる。ここで、第2の実施の形態に係る施工方法は、第1の実施の形態に係る施工方法のように遮音カバー本体733の内周面におけるくぼみに弾性材(ゴムパッキン)735が(くぼみに嵌め込まれるように)設けられるように施工されるものではない。
【0121】
(2-2:遮音カバー設置ステップ)弾性材(ゴムパッキン)745が設けられていない最外層の遮音カバー741(より正確には遮音カバー741の遮音カバー本体743のみ)を貫通孔に設置する。
(2-3:一体化ステップ)遮音カバー741(より正確には遮音カバー741の遮音カバー本体743のみ)が貫通孔に設置された後に、設置された遮音カバー741(より正確には遮音カバー741の遮音カバー本体743のみ)に(遮音カバー本体743以外の)排水配管継手103を挿入して、弾性材(ゴムパッキン)745を介して遮音カバー741と、(遮音カバー本体743以外の)排水配管継手103とを一体化する。
【0122】
ここで、この一体化するステップとは、止水処理する意味とほぼ同義である点は上述した第1の実施の形態と同じである。より具体的には、遮音カバー本体743が弾性材(ゴムパッキン)745を介して排水配管継手103に(接着剤等を用いることなく)接合されて、この弾性材(ゴムパッキン)745により止水性能および防振性能が発現されるように施工すされるステップを意味する。
【0123】
また、この一体化するステップは、床スラブSに設置された遮音カバー741(より正確には遮音カバー本体743のみ)を貫通孔に残存させて、(遮音カバー本体743以外の)排水配管継手103を貫通孔から離脱可能に、一体化するステップであることも、排水配管継手の更新処理(遮音カバー本体743以外を更新)の点から好ましい。。
すなわち、第2の実施の形態に係る施工方法においては、排水配管継手103に好適に適用され、図8に示すように、遮音カバー741(より正確には遮音カバー本体743のみ)を床スラブSの貫通孔に設置した後に、貫通孔に設置された遮音カバー741(より正確には遮音カバー本体743のみ)に排水配管継手103(より正確には遮音カバー本体743以外)を挿入して一体化する。
【0124】
このように、第2の実施の形態に係る施工方法によると、弾性材(ゴムパッキン)745が遮音カバー本体743の内周面ではなく排水配管継手103(より正確には横枝管接続部140の集水室下部905)の外表面に設けられ、弾性材(ゴムパッキン)745が設けられていない遮音カバー741(より正確には遮音カバー本体743のみ)を床スラブSの貫通孔に先に設置した後(さらに任意的ではあるが遮音カバー741の外周面と貫通孔の内周面との間に充填材Mを充填した後)に、排水配管継手103(より正確には遮音カバー本体743以外)を遮音カバー741の上方から挿入して一体化することにより、排水配管継手103を貫通孔に施工することができる。
【0125】
また、このように施工する場合において、排水配管継手を更新する場合には、遮音カバー741(より正確には遮音カバー本体743のみ)を床スラブSの貫通孔に残存させて、遮音カバー741以外(より正確には遮音カバー本体743以外)を更新することができる点で好ましい。
以上のようにして、第2の実施の形態に係る施工方法によると、最適な遮音性能等を発現し得る排水配管部材(ここでは排水配管継手103)を、建築物の区画(ここでは床スラブS)を貫通する貫通孔に作業性良く施工することができる。
【0126】
[排水配管継手101の変形例]
以下に、上述した第1の実施の形態における排水配管継手101の変形例であって、熱膨張性耐火シート712を遮音カバー731側に設けた排水配管継手105(およびその施工方法)について、図5に対応する図9、および、図6に対応する図10を参照して、排水配管継手105と排水配管継手101との相違点を主として説明する。なお、その相違点以外の構造であって排水配管継手101と同じ構造については排水配管継手105においても同じ符号を付している。それらについての説明は、上述した説明と重複するために、ここでは繰り返して説明しない。特に、施工方法については(遮音カバー731側に設けられる熱膨張性耐火シート712が施工時に引っ掛からないように、遮音カバー731側の表面(内周面)とツライチにして、スムーズに施工する点を除けば)大きな相違点は存在しない。
【0127】
上述したように、この排水配管継手105は、図4(A)に示す排水配管継手100、図5に示す排水配管継手101および図7に示す排水配管継手103と同じく、ひとつまたは複数(ここでは一例ではあるが7つ)の樹脂製の射出成形品で形成されている。そして、上述したように、遮音カバー731と排水配管継手101(より詳しくは管本体110)との間には熱膨張性耐火材(熱膨張性耐火シート712)が設けられている。図9および図10に示すように、限定されるものではないが、熱膨張性耐火材(熱膨張性耐火シート712)と管本体110との間には制振材714を備える。
【0128】
ここで、この熱膨張性耐火シート712は、排水配管継手101(および排水配管継手103)における管本体110(側)の所定の外周位置(図6図8)に、または、排水配管継手105における遮音カバー731(側)の所定の内周位置(図10)に、それぞれ設けられている。すなわち、熱膨張性耐火シート712が管本体110(側)の所定の外周位置に設けられている排水配管継手101(および排水配管継手103)に対して、排水配管継手105は熱膨張性耐火シート712が遮音カバー731(側)における所定の内周位置に設けられている点が相違点である。
【0129】
図10に示すように、この排水配管継手105においては、遮音カバー731と排水配管継手101(より詳しくは管本体110)との間に振動絶縁体720が設けられ、遮音カバー731が排水配管継手101に一体化される前は、遮音カバー731(側)に振動絶縁体720が設けられ、熱膨張性耐火シート712は、振動絶縁体720にめり込むように、振動絶縁体720に埋め込まれるように、または、振動絶縁体720と内周方向の表面高さが略同じになるように、遮音カバー731(側)における所定の内周位置に設けられている。このように、熱膨張性耐火シート712を、振動絶縁体720にめり込むように、振動絶縁体720に埋め込まれるように、または、振動絶縁体720と内周方向の表面高さが略同じ(ツライチ、面一)になるように設けることにより、熱膨張性耐火シート712をめり込ませる等していない場合には熱膨張性耐火シート712が振動絶縁体720より内側(内周側)にはみ出してしまい、図10に示す施工時に(振動絶縁体720から内周側に出っ張った)熱膨張性耐火シート712が引っ掛かって邪魔になり、施工効率を低下させる可能性がある。このため、遮音カバー731側に設けられる熱膨張性耐火シート712が施工時に引っ掛からないように、遮音カバー731側の表面(内周面)とツライチ(このツライチとは、少なくとも振動絶縁体720から熱膨張性耐火シート712が出っ張らないようにしてあればよく、振動絶縁体720に熱膨張性耐火シート712がめり込んでへこんでいることも許容される)にして、スムーズに施工することができる。
【0130】
ここで、遮音カバー731は、床スラブSの厚みに応じて長さ調整可能に構成される。この場合において、この長さ調整は、遮音カバー731の切断、分割および部品交換の少なくともいずれかによるものである(切断、分割および部品交換を適宜2つ以上組み合わせても構わない)。この分割とは、上下方向の2個以上の複数部品に分割されて構成された遮音カバー731の一部部品を取り外すことであって、交換とは、一部の長さまたは全部の長さが異なる部品に交換することを意味するものである。
【0131】
上述した、排水配管継手101および排水配管継手103を含めて本変形例に係る排水配管継手105は、建築物の最下階の床スラブSを貫通する貫通孔に施工されるものである。すなわち、図5図10に示す床スラブSは最下階の床スラブである。
このような特徴を備えた排水配管継手105が、第1の実施の形態において説明した施工方法により、建築物の床スラブSを貫通する貫通孔に施工される。
なお、本発明の対象は、排水配管部材の施工方法のみならず排水配管部材自体でもあるために、本変形例に係る排水配管継手105も本発明の対象としての排水配管部材自体であるので、以下において説明する。
【0132】
図9および図10に示すように、この排水配管継手105は、建築物の区画(床スラブSであって特に最下階の床スラブS)を貫通する貫通孔に施工される。この排水配管継手105は、貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に硬質の遮音カバー731が設けられ、遮音カバー731と排水配管継手101の外表面との間に弾性材(ゴムパッキン)735を備え、弾性材(ゴムパッキン)735を介して遮音カバー731が排水配管継手101に一体化されている。また、上述したように、排水配管継手101は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成されている。遮音カバー731と排水配管継手101(より詳しくは管本体110)との間に振動絶縁体720が設けられ、弾性材(ゴムパッキン)735を介して遮音カバー731が排水配管継手101に一体化される前は遮音カバー731側に振動絶縁体720が設けられている。そして、排水配管継手105自体の構造として特徴的であるのは、熱膨張性耐火シート712は、振動絶縁体720にめり込むように、振動絶縁体720に埋め込まれるように、または、振動絶縁体720と内周方向の表面高さが略同じになるように、遮音カバー731(側)における所定の内周位置に設けられている。このような構造とすることにより、上述したように、このため、遮音カバー731側に設けられる熱膨張性耐火シート712が施工時に引っ掛からないように、遮音カバー731側の表面(内周面)とツライチにして、スムーズに施工することができる。
【0133】
以上のようにして、変形例に係る排水配管継手105の施工方法および排水配管継手105によると、最適な遮音性能等を発現し得る排水配管部材(ここでは排水配管継手105)を、建築物の区画(ここでは床スラブS)を貫通する貫通孔に作業性良く施工することができるとともに、排水配管継手105自体を提供することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、建築物の床スラブSを貫通して設けられる排水配管部材の施工方法および排水配管部材に好ましく、建築物の床スラブを貫通して設けられる排水配管部材の施工方法および排水配管部材であって、最適な制振性能・振動絶縁性能・遮音性能を発現するとともに、これらの性能を発現するための好適な止水性を備える点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0135】
100 排水配管継手
110 管本体
112 くぼみ
114 旋回羽根
120 上立管接続部
130 排水管接続部
140 横枝管接続部
142 集水室
144、146、148 横枝管接続部材
520 (上階側)排水立管
530 (下階側)排水立管
612 熱膨張性耐火材
700 外層部材
710 最内層
712 熱膨張性耐火シート
714 制振材
720 (耐火性無機繊維によって形成された)振動絶縁体
730 遮音カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10