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特開2022-99284エネルギー回収用のエレベータ用カウンターウエイトアセンブリおよび対応するエレベータシステム
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  • 特開-エネルギー回収用のエレベータ用カウンターウエイトアセンブリおよび対応するエレベータシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099284
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】エネルギー回収用のエレベータ用カウンターウエイトアセンブリおよび対応するエレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/34 20060101AFI20220627BHJP
   B66B 11/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
B66B1/34 A
B66B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203108
(22)【出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】20216580
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521548375
【氏名又は名称】エレボルト リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーン ジェイソン
【テーマコード(参考)】
3F306
3F502
【Fターム(参考)】
3F306AA00
3F306DA01
3F502HB20
3F502JA61
3F502JA62
3F502JA63
3F502JA68
3F502NA21
3F502NA31
3F502NA36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エレベータの分野に適用されるエネルギー回収用のシステムおよびデバイスに関する。
【解決手段】エレベータ用カウンターウエイトは、少なくとも1つの発電機22を備え、前記少なくとも1つの発電機22は軸が回転したときに電力を生成する、電気エネルギー発生器モジュールと、該カウンターウエイトの線形運動を、前記少なくとも1つの発電機22の軸を回転させるための回転運動に変換するための少なくとも1つの機構21と、前記電気エネルギー発生器モジュールによって生成された電力を貯蔵するための蓄電器モジュールと、を備えている。。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ用カウンターウエイトアセンブリ(3)であって、
少なくとも1つの発電機(22)を備え、前記少なくとも1つの発電機は軸が回転したときに電力を生成する、電気エネルギー発生器モジュール(11)と、
該アセンブリの線形運動を、前記少なくとも1つの発電機の軸を回転させるための回転運動に変換するための少なくとも1つの機構(21)と、
前記電気エネルギー発生器モジュール(11)によって生成された電力を貯蔵するための蓄電器モジュール(12)と、
前記蓄電器モジュールを前記アセンブリ(3)の外部の少なくとも1つの電力シンク(27)に放電するための電力伝送モジュール(26)と、
電力伝送モジュール(26)に、蓄電器充電レベルが閾値を下回る場合は前記蓄電器モジュールを前記エレベータのモーターに対して放電させ、前記蓄電器充電レベルが前記閾値を上回る場合は前記蓄電器モジュールを別のシンクに対して放電させるための電池管理ユニット(23)と、を備えるエレベータ用カウンターウエイトアセンブリ。
【請求項2】
線形運動を回転運動に変換するための前記少なくとも1つの機構(21)は、ベベルギヤ(42、43)またはウォームギヤ(62、63)のうちの1つを備え、前記ベベルギヤまたは前記ウォームギヤの第1の軸(41、61)は、当該第1の軸が回転するときに前記少なくとも1つの発電機の心棒の回転運動を誘発するように、前記少なくとも1つの発電機(22)の前記心棒に機械的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記ベベルギヤまたはウォームギヤの第2の軸(44、64)は、ホイール(40、60)に接続し、前記ホイールの回転が前記第2の軸の回転を誘発するようにされており、前記ホイールは前記アセンブリの移動する方向と平行な面と接触するようにされており、前記アセンブリの移動中に前記ホイールが回転することを特徴とする請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記表面は、前記アセンブリを当該アセンブリの線形運動で案内するために、前記アセンブリの機械的ガイド(7a、7b)の一部を成しているか、当該機械的ガイドに固定されていることを特徴とする請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記蓄電器モジュール(12)は、少なくとも1つのスーパーキャパシタと、少なくとも1つのウルトラキャパシタと、少なくとも1つの電池とのうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記蓄電器モジュールは、少なくとも1つの電池と少なくとも1つのコンデンサとの両方を備え、走行の長さが所与の閾値以下の場合に前記少なくとも1つのコンデンサの使用を優先し、前記走行の長さが前記所与の閾値を超える場合に前記少なくとも1つの電池の使用を優先する電池管理ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記電力伝送モジュール(26)は、
前記アセンブリの外部の対応する接点と電気的接触を行うように適合された接点、または
前記アセンブリの外部の別の誘導マットと協働するように適合された誘導マット(50)のうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記電気エネルギー発生器モジュール(11)および前記蓄電器モジュール(12)を
保持するためのフレームをさらに備え、前記フレーム(10)のサイズは、少なくとも1つの寸法に従って調整可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記電気エネルギー発生器モジュールが少なくとも1つの発電機群(22)を備え、前記少なくとも1つの発電機群のシャフトは、機械的に連結されて配列(31、51)され、1つの発電機の心棒を回転させると前記発電機群の他の発電機の心棒の回転を誘発し、前記配列における前記発電機群の少なくとも1つのシャフトは、前記アセンブリの線形運動を回転運動に変換するための前記少なくとも1つの機構(21)の1つに接続されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記発電機の配列(31、51)は、前記アセンブリ(3)の意図された運動方向に対して平行または直交する方向に沿って配置されることを特徴とする請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
平行および/または直交方向に沿って配置された発電機の複数の配列(31、51)を備えることを特徴とする請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
線形運動を回転運動に変換するためのそれぞれの機構(21)は、発電機の配列(31、51)の各端部の第1シャフトおよび第2のシャフトにそれぞれ提供されることを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記アセンブリの線形運動を回転運動に変換するための前記少なくとも1つの機構の要素を係合および解放するための手段と、前記エネルギー発生器モジュール(11)の発電機の全部または一部と前記蓄電器モジュール(12)とを接続および切断する電気回路を開閉するためのスイッチ(28)とのうちの、少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記アセンブリの線形運動を回転運動に変換するための前記機構(21)は、運動伝達系統の一部として、キネティッフライホイールモジュールと、連続可変伝達モジュールとのうちの少なくとも1つとを備えることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項15】
エレベータシステムであって、
かご(1)と、
請求項1から14のいずれか一項に記載のカウンターウエイトアセンブリ(3)と、
ロープ手段(5)を介して前記かごおよび前記カウンターウエイトアセンブリに機械的に接続された駆動ユニット(2、4、8)と、を備えたエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な例示的な実施形態は、全体的にエネルギー回収用のシステムおよびデバイスに関する。本発明は、特にエレベータの分野に適用される。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムは通常、かごとカウンターウエイトを備え、双方がエレベータシャフト内を反対方向にガイドされる。かごとカウンターウエイトの両方は、1つまたは複数のホイストロープ(たとえば、スチールロープ)によって機械的に接続され、溝付き駆動綱車に掛けられ、その車軸は適切な方向に所望の速度で駆動綱車を回転可能にするために、ギヤボックスと電気モーターに接続されている。カウンターウエイトの質量は、かごの最大荷重の約1/2が載せられたかごの質量と等しい。
【0003】
かごを上下に動かすためにエレベータシステムが必要とするエネルギーの消費は、とりわけ、カウンターウエイトと同等のかごの相対的な重量およびその負荷(すなわち、その搭乗率)に依存する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一実施形態によれば、エレベータ用カウンターウエイトアセンブリが提供される。このアセンブリは
少なくとも1つの発電機を含み、前記少なくとも1つの発電機は軸が回転したときに電力を生成する、電気エネルギー発生器モジュールと、
該アセンブリの線形運動を、前記少なくとも1つの発電機の軸を回転させるための回転運動に変換するための少なくとも1つの機構と、
前記電気エネルギー発生器モジュールによって生成された電力を貯蔵するための蓄電器モジュールと、
前記蓄電器モジュールを前記アセンブリの外部の少なくとも1つの電力シンクに対して放電するための電力伝送モジュールと、
電力伝送モジュールに、蓄電器充電レベルが閾値を下回る場合に前記蓄電器モジュールを前記エレベータのモーターに対して放電させ、前記蓄電器充電レベルが前記閾値を超える場合に前記蓄電器モジュールを別のシンクに対して放電させるための電池管理ユニット。
【0005】
カウンターウエイトは、カウンターウエイトが移動したときにエネルギーの回収を可能にする機械的および電気的部品を備えている。発電機および蓄電器モジュールはカウンターウエイトに収容されるので、従来のカウンターウエイトで使用されていた不活性のウエイトを置き換える。
【0006】
一実施形態によれば、線形運動を回転運動に変換するための前記少なくとも1つの機構は、ベベルギヤまたはウォームギヤのうちの1つを備え、前記ベベルギヤまたは前記ウォームギヤの第1の軸は、当該第1の軸が回転するときに前記少なくとも1つの発電機の心棒の回転運動を誘発するように、前記少なくとも1つの発電機の前記心棒に機械的に接続されている。
【0007】
一実施形態によれば、前記ベベルギヤまたはウォームギヤの第2の軸は、ホイールに接続し、前記ホイールの回転が前記第2の軸の回転を誘発するようにされている。前記ホイールは前記アセンブリの移動する方向と平行な表面と接触するようにされているので、前
記アセンブリの移動中に前記ホイールが回転する。
【0008】
一実施形態によれば、前記表面は、前記アセンブリを当該アセンブリの線形運動で案内するために、前記アセンブリの機械的ガイドの一部を成しているか、当該機械的ガイドに固定されている。
【0009】
一実施形態によれば、前記蓄電器モジュールは、少なくとも1つのスーパーキャパシタと、少なくとも1つのウルトラキャパシタと、少なくとも1つの電池とのうちの少なくとも1つを備える。
【0010】
一実施形態によれば、前記電力伝送モジュールは、
-前記アセンブリの外部の対応する接点と電気的接触を行うように適合された接点、または
-前記アセンブリの外部の別の誘導マットと協働するように適合された誘導マット
【0011】
一実施形態によれば、アセンブリは、前記電気エネルギー発生器モジュールおよび前記蓄電器モジュールを保持するためのフレームをさらに備え、前記フレームのサイズは、少なくとも1つの寸法に従って調整可能である。
【0012】
一実施形態によれば、前記電気エネルギー発生器モジュールは、少なくとも1つの発電機群を備え、前記少なくとも1つの発電機群のシャフトは、機械的に連結されて配列され、1つの発電機の心棒を回転させると前記発電機群の他の発電機の心棒の回転を誘発し、前記配列における前記発電機群の少なくとも1つのシャフトは、前記アセンブリの線形運動を回転運動に変換するための前記少なくとも1つの機構の1つに接続されている。
【0013】
一実施形態によれば、前記発電機の配列は、前記アセンブリの意図された運動方向に対して平行または直交する方向に沿って配置される。
【0014】
一実施形態によれば、前記アセンブリは、平行および/または直交方向に沿って配置された発電機の複数の配列をさらに備える。
【0015】
一実施形態によれば、線形運動を回転運動に変換するためのそれぞれの機構は、発電機の配列の各端部の第1のシャフトおよび第2のシャフトにそれぞれ提供される。
【0016】
一実施形態によれば、前記アセンブリは、
前記アセンブリの線形運動を回転運動に変換するための前記少なくとも1つの機構の要素を係合および解放するための手段と、前記エネルギー発生器モジュールの発電機の全部または一部と前記蓄電器モジュールとを接続および切断する電気回路を開閉するためのスイッチとのうちの、少なくとも1つをさらに備える。
【0017】
一実施形態によれば、前記アセンブリの線形運動を回転運動に変換するための前記機構は、運動伝達系統の一部として、キネティックフライホイールモジュールと、連続可変伝達モジュールとのうちの少なくとも1つを備える。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、エレベータシステムが提供される。エレベータシステムは、
かごと、
前記定義済みのカウンターウエイトアセンブリと、
ロープ手段を介して前記かごおよび前記カウンターウエイトアセンブリに機械的に接続された駆動ユニットと、を備える。
【0019】
ロープ手段は、1つまたは複数のロープ、1つまたは複数のベルト、1つまたは複数のケーブル、1つまたは複数のチェーンのうちの1つまたは複数を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
例示的な実施形態は、以下に与えられる詳細な説明および付随する図面から、より十分に理解されるであろう。これらは、例示としてのみ提供するものであって、本開示を限定するものではない。
【0021】
図1】本発明の一実施形態にかかるエレベータシステムの概要の概略図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるエネルギー回収モジュールおよび蓄電器モジュールの概要を提供する概略図である。
図3】カウンターウエイトの第1の例示的な実施形態の概略図である。
図4】線形運動を回転運動に変換するために使用される機構の第1の例示的な実施形態の概略図である。
図5】カウンターウエイトの第2の例示的な実施形態の概略図である。
図6】線形運動を回転運動に変換するために使用される機構の第2の例示的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、いくつかの例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照して、様々な例示的な実施形態を、より十分に説明する。
【0023】
詳細な実施例を本明細書に開示する。ただし、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、例示的な実施形態を説明する目的のための典型に過ぎない。例示的な実施形態は、多くの代替形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態のみに限定されると解釈されるべきではない。したがって、例示的な実施形態は様々な変形および代替の形態が可能であるが、実施形態を例示として図面に示し、本明細書で詳細に説明する。しかしながら、例示的な実施形態を、開示された特定の形態に限定する意図はないことを理解されたい。
【0024】
図1は、例示的な実施形態にかかるエレベータシステムを示している。この実施形態によるシステムは、かご1、駆動綱車2、カウンターウエイト3、モーター4、ロープ5またはロープ5のセット、制御ユニット6、カウンターウエイトガイド部材7aおよび7b、ならびに任意選択でギヤボックス8を備える。かごとカウンターウエイトは、駆動綱車2上に吊るされたスチールロープ5のセット(図1には1本のロープのみが示されている)に取り付けられ、駆動綱車2の適切に形成された溝によって滑らないようになっている。「ロープ」という用語は、ロープの機能、すなわち、モーターがかごとカウンターウエイトを反対方向に移動できるようにすることに対するすべての可能な代替案を網羅するために使用される。代替案には、たとえば、1つまたは複数のベルト、1つまたは複数のケーブル、1つまたは複数のチェーンが含まれていてもよい。駆動綱車2の軸はギヤボックス8に接続され、ギヤボックス8はモーター4の軸に接続される。モーター4、ギヤボックス8(存在する場合)および駆動綱車2は、かご1とカウンターウエイト3を反対方向に移動するための駆動ユニットを形成する。他の実装では、駆動ユニットを異なる構成にすることができる(たとえば、2個以上の綱車を備える)。プロセッサ、メモリ、ソフトウェア、通信バス、および適切な制御インターフェースを備え得る制御ユニット6は、制御、状態監視、および障害処理を可能にするために、システムの異なる部品に接続されている。制御ユニット6は中央ユニットとして示されているが、異なる部品はそれら自身の制御ユニットを備え、中央制御ユニット6の機能を部分的に、または完全に置き換えてもよい。エレベータシステムシャフトの下部の輪郭9も示しておく。カウンターウエイト3
は、たとえば、エレベータシステムシャフトの垂直壁に固定された横方向ガイド部材7aおよび7b(鋼棒またはレールなど)によってガイドされる。本実施形態によれば、カウンターウエイト3は、電気エネルギー発生器モジュール11、蓄電器モジュール12、および1つまたは複数のウエイト13を収容するフレーム10を備える。図1は、カウンターウエイト3に設置されるいくつかの部品の概要を簡単に提供する。フレーム10、発電機モジュール11、蓄電器モジュール、ウエイト13、および場合によってはカウンターウエイトに配置された他の部品の合計重量が、エレベータシステム内で必要とされるカウンターウエイトの総重量を計算するために考慮される。変形実施形態によれば、発電機モジュール、蓄電器モジュール、およびウエイトは、モジュール方式で構築されている。たとえば、追加の蓄電容量のために蓄電器要素を追加することによって蓄電器モジュールを拡張することができ、その結果、カウンターウエイトの適切な全体重量を維持するためにいくつかのウエイトを取り除くことができる。同様に、追加のジェネレータを設けることができる。
【0025】
図2は、エネルギー発生器モジュール11、蓄電器モジュール12、および1つの例示的な実施形態にかかるさらなる使用に備えて電気エネルギーがどのように回収、貯蔵および伝送されるかを概略的に説明するための追加の部品の概略ブロック図である。エネルギー発生器モジュール11は、発電機22の軸に接続された線形運動-回転運動変換機構21を備える。機構21の機能は、カウンターウエイト3の線形運動を、発電機22の軸をダイレクトに、または1つまたは複数の中間モジュールを介して回転させることができる回転運動に変換することである。発電機22の機能は、蓄電器モジュール12に供給するための電力を生成することである。エネルギー発生器モジュール11は、1つまたは複数の機構21および1つまたは複数の発電機22を備えてもよい。いくつかの例示的な実施形態を後述する。
【0026】
変形実施形態によれば、エネルギー発生器モジュールは、追加のサブモジュールを備えてもよい。たとえば、線形運動-回転運動変換機構21を増速ギヤボックスに接続し、線形運動-回転運動変換機構21の出力と比較して発電機の心棒の回転速度を上げてもよい。別の変形実施形態によれば、線形運動-回転運動変換機構21はまた、或いは上記の構成に加えて、無段変速機を介して発電機の心棒に接続し、発電機の心棒に実質的に一定の回転速度を提供してもよい。上記の他の実施形態と併せて使用可能なさらに別の変形実施形態によれば、キネティッフライホイールは、発電機に回転運動を提供する要素系統に配置される。フライホイールの機能は、機構21の別の要素(たとえば、図4および図6に関連して後述するベベルギヤまたはウォームギヤの出力軸)によって回転させられたときにエネルギーを蓄積することであり、カウンターウエイトの動きが止まったときに、フライホイールの慣性で発電機の心棒を回転させ続けることによってそのエネルギーを返還する。上記のいずれかと組み合わせて使用可能なさらに別の変形実施形態によれば、エネルギー発生器モジュールは、その要素系統の要素の機械的解放および再係合を可能にするアクチュエータ手段を備える。これにより、必要に応じて、カウンターウエイトの動きに対するブレーキ効果を低減または排除することができる。
【0027】
蓄電器モジュールは、蓄電器要素の充電および放電を制御する電池管理ユニット23を備える。図1の例示的な実施形態によれば、図2に示されるように、これらの蓄電器要素は、少なくとも1つのコンデンサ(要素24によって示される)および/または少なくとも1つの電池(要素25によって示される)を備える。コンデンサ24は、たとえば、スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタでもよい。電池管理ユニット23は、異なる蓄電器要素の充電レベルを監視し、発電機22から受け取った電力を必要に応じて蓄電器要素に切り替える。電池管理ユニット23はまた、特定の条件が満たされたときに、蓄電器モジュールを全体的にまたは要素ごとに発電機モジュール22から電気的に切断するように構成されており、これは、スイッチ28によって概略的に示されている。逆に、特定
の条件が満たされたとき、発電機は部分的にまたは全体的に切断または再接続され得る。このような条件には、たとえば、蓄電器要素が満充電の場合、またはカウンターウエイト3の動きからエネルギーを回収することが望ましくない場合の1つ以上を含んでもよい。他の条件を適用してもよい。
【0028】
変形実施形態によれば、蓄電器は、コンデンサと電池の両方を備える。
【0029】
電池管理ユニット23は、コンデンサおよび/または電池を制御するためのソフトウェアを実行するプロセッサを備える。電池管理ユニット23は利用可能な蓄電器要素を決定し、要求されたニーズに関して各要素の効率レベルを評価する。たとえば、両方のタイプの要素が利用可能なとき、コンデンサは通常、電池よりも急速に充放電し得る。そのため、電池管理システムは、電池と比較して、コンデンサを主要な充電・放電要素として優先的に使用することを決定し、コンデンサが完全に充電・放電された場合にのみ、電池に依存するようにしてもよい。
【0030】
変形実施形態によれば、電池管理ユニットは、コンデンサ蓄電器要素を電池要素に対して放電する。
【0031】
図2の図はまた、蓄電器モジュールに接続された電力伝送モジュール26を示している。電力伝送モジュール26の機能は、蓄電器要素を、電力系統運用者の送電網および/またはエレベータシステムを収容する建物の電力システムのシンク27に対して、および/または電池に対して、および/またはエレベータメインモーター4に対して、放電させるためのものである。本実施形態によれば、この伝送は、電池管理システム23の制御下で実行される。伝送モジュール26は、カウンターウエイトが動いておらず、シャフト内の特定の位置、たとえば、極端に上の方の位置や下の方の位置に配置されているときに第2の誘導マット27と協働する第1の誘導マットとして実装されてもよい。伝送モジュール26は、複数の誘導マットを備えてもよい。そのような誘導マットは、カウンターウエイトの異なる位置で自ずとシャフト内の対応する相手側部品27と対向して配置されるよう、カウンターウエイト上のいくつかの位置に配置することができる。
【0032】
電力がエレベータのメインモーター自体に伝送されるとき、電池管理ユニット23は、エレベータの動作に関する情報の関数として、蓄電器要素がどのように使用されるかを決定することができる。このような情報は、応答すべきエレベータの呼び出し回数、呼び出しに応答するためにエレベータが移動する距離、かごの負荷の、1つ以上を含んでもよい。そのような情報は、制御ユニット6によって電池管理ユニット23に提供されてもよい。負荷が制限された短期間の走行では、電池管理がコンデンサ要素を優先する場合があるが、高負荷での長時間の走行では、電池要素が優先される場合がある。したがって、電池とコンデンサの両方の共同使用を最適化することができる。シミュレーションによると、30~50階分の移動では、効率は消費された移動エネルギーの約66%に達するが、20階の建物では、効率は25%に低下する。
【0033】
非限定的な例示的な実施形態によれば、カウンターウエイト蓄電器要素は、NAWA Technologies社によって開発された「NAWACap Power」コンデンサなどのスーパーキャパシタを備える。これらは、短いセッション中に生成された最大のエネルギー(たとえば、連続する上下階の間の移動によって何度も繰り返し生成されるエネルギー)を収集して保存できるため、ここで説明するアプリケーションに適している。それらの多数の充電-放電サイクルは、エレベータシステムに非常に適しており、メンテナンス要件を制限する。
【0034】
変形実施形態によれば、電池管理ユニット23は、蓄電器モジュールの充電レベルの関
数として、電力を蓄電器モジュールからエレベータメインモーターに伝送する。エレベータのメインモーターが優先される。たとえば、蓄電器モジュールの充電レベルが閾値を下回っている場合、電力はエレベータにのみ伝送される。閾値を超えると、電力は電力網などの他のシンクに伝送される。この目的のために、伝送モジュール26およびシンク27は、たとえば、電力をモーターに伝送するためのそれぞれの誘導マット(または接点)の第1の組と、電力を電力網などの他のアプリケーションに伝送するためのそれぞれの誘導マット(または接点)の第2の組とで構成され、電池管理ユニット23は、必要に応じて伝送モジュール側の誘導マットまたは接点のアクティベーションを制御するようにしてもよい。一実施形態によれば、そのような充電レベルは、たとえば、電池の場合、85%でもよい。
【0035】
変形実施形態によれば、蓄電器モジュールは、エレベータのメインモーターに電力を供給するためにのみ使用され、これは「閉ループ」で機能する。
【0036】
エレベータシステムはまた、蓄電器要素によって1つまたは複数のシンク提供されるDC電力を変換するための変換回路を備え、たとえば、蓄電器要素がエレベータメインモーターに電力を供給するとき、変換回路は三相電圧を生成してもよい。この変換回路は図示しない。電力変換回路自体は当業者に知られており、これ以上詳細には説明しない。
【0037】
変形実施形態によれば、伝送モジュール26は、シンク27の電気接点と協働して蓄電器要素を放電する電気接点を備える。
【0038】
非限定的な例示的実施形態によれば、電池に蓄積されたエネルギーは、カウンターウエイトの上部または下部と整列または連動する誘導マットまたはプローブのいずれかを介して放電され、エレベータシャフトの所与の位置での放電を容易にする。別の非限定的な例示的実施形態では、カウンターウエイトは、カウンターウエイトの下側に取り付けられている接続走行ケーブルを通じて電流を放電する。この場合、ケーブルを駆動モーター/駆動盤に接続して、これらの部品に電力を供給することができる。蓄積されたエネルギーは、前記カウンターウエイト上に配置された電池管理システムを介して供給される(別の非限定的な例示的な実施形態によれば、電池管理システムは、シャフトまたはエレベータモーター室内に配置されることに留意されたい)。非限定的な例示的な実施形態によれば、電池に蓄積されたエネルギーは、垂直軌道に沿った様々な位置でホール効果を使用して放電される。
【0039】
変形実施形態によれば、カウンターウエイト3のフレーム10は、少なくとも一方向に従ってサイズが調整可能である。フレーム10は、スリングと呼ばれることもある。サイズの調整により、エネルギー発生器モジュール、蓄電器モジュール、およびウエイトの様々な組み合わせを考慮することが可能になる。
【0040】
変形実施形態によれば、フレームは、カウンターウエイト3の運動方向に沿って調整可能である。この目的のために、一例によれば、フレームは、上部フレーム要素および下部フレーム要素を備えてもよい。上部フレーム要素は、作動位置にあるときに逆U字形を形成するように、上部バーと上部バーの各端部にそれぞれ固定された2つの横方向バーとを備える。上部バーはロープ5に取り付けられるようになっている。下部フレーム要素は、作動位置にあるときにUを形成するように、下部バーと下部バーの各端部にそれぞれ固定された2つの横方向バーとを備える。上部および下部フレーム要素のそれぞれのそれぞれの横方向バーは、長方形のフレームを形成するように固定されることが定められている。互いに固定される前に、対応する一対の横方向バーが互いに対してスライドして、意図された運動方向に沿って調整可能なサイズの長方形のフレームを形成してもよい。対応する横方向バーを、適切な手段を使用して固定してもよい。たとえば、フレーム10の異なる
長さに対応する異なる位置で、下部フレーム要素の横方向バーの長さに沿って穴を形成してもよい。上部バーから離れた上部フレーム要素の横方向バーの先端に向かって穴も設けられている。上部フレーム要素の横方向バーおよび下部フレーム要素の横方向バーは、適切な長さのフレーム10が得られるように位置決めされた後、ボルトやナットなどの固定手段を使用して固定される。ボルトは一対の対応する横方向バーの対応する穴を通じて配置される。対応する横方向バーの間に他の連動手段を設けてもよい。
【0041】
別の変形実施形態によれば、フレーム10は、たとえば、カウンターウエイトガイド7aおよび7bの異なるシャフト幅および/または異なる間隔に対応するために、幅を調整可能である。
【0042】
図3は、カウンターウエイト3の第1の実施形態の概略図である。この実施形態によれば、カウンターウエイトは、その心棒に沿って垂直に整列され、かつ心棒によって接続された複数の発電機22の少なくとも1つのスタック31を備える。図3は、2つのそのようなスタックを備えたカウンターウエイトを図示しており、各スタックは、カウンターウエイトのそれぞれの側縁に沿って配置されている。各スタックは、1つまたは複数の線形運動-回転運動変換機構21に接続されている。図3において、スタックの各端部の発電機の心棒は、対応する線形運動-回転運動変換機構21に接続されている。発電機を積層すると、そのような機構の必要な数が削減される。カウンターウエイトは、蓄電器要素の2つの列に分割された蓄電器モジュール12をさらに備える。これらの列と電池管理ユニットとの相互接続は、図3には示されていない。発電機22は、適切な配線30を介して蓄電器モジュールに接続されている。カウンターウエイトが所与の位置(たとえば、最も低い位置)にあり、電力シンクに接続されたカウンターウエイトの外部の対応する接点(図示せず)に接点32が接触するとき、蓄電器モジュールは接点32に接続され、電池管理ユニット23の制御下で蓄電器要素の放電を可能にする。カウンターウエイトはまた、1つまたは複数のウエイトバーのセットの形態のウエイト13を備える。
【0043】
エネルギー発生器モジュールと蓄電器モジュールをカウンターウエイトに配置すると、後者の機能が増加する。不活性重量は、エレベータシステムのフレーム内の実利をもたらす部品の重量と置き換えられる。
【0044】
図4は、図3の例示的な実施形態と併せて使用することができる線形運動-回転運動変換機構21の第1の実施形態の概略図である。機構21は、軸41を備えたホイールまたはローラー40を備える。作動位置にあるとき、ローラー40は、ガイド7a(または7b)に対して配置されて接触し、カウンターウエイトが移動するとき、ガイドとローラーとの間の摩擦により、ローラーが軸41の周りを回転する。ベベルギヤアセンブリの第1のギヤ42は、軸41に固定されている。第1のギヤ42の回転は、軸44の周りのベベルギヤアセンブリの第2のギヤ43を回転させる。軸44は、発電機の心棒に固定されている(または、変形実施形態では、キネティッフライホイール、無段変速機、ギヤボックスなどの中間モジュールに固定されている)。図3の例示的な実施形態によれば、ギヤの軸は90°に配置されているが、電気エネルギー発生器モジュール11の他の要素の位置および向きに応じて角度が異なってもよい。変形実施形態によれば、機構21は、ベベルギヤアセンブリのギヤ42および43を係合および解放するためのアクチュエータ(図示せず)を備える。別の変形実施形態によれば、機構21は、ホイール40をガイド7aまたは7bから分離するか、またはガイド7aまたは7bと再接触させるためのアクチュエータを備える。アクチュエータは、電池管理ユニット23(たとえば、蓄電器モジュール要素が完全に充電されている場合)または中央制御ユニット6(カウンターウエイトの制動が望ましくない場合)の制御下あってもよい。
【0045】
一実施形態によれば、ホイール40の半径は5cmから15cmである。5メートル毎
秒の速度で、ホイール40の回転数は約1000rpmから3000rpmである。例として図3の実施形態を考慮すると、重さ25キログラムの発電機は効率90%で回転速度2500rpmのとき3kW~5kWを発電し、6台の発電機を備えたスタックの重さは約150キログラムとなり、約20kWを発電するであろう。
【0046】
図5は、カウンターウエイト3の第2の実施形態の概略図である。この実施形態によれば、カウンターウエイトは、その心棒に沿って水平に整列され、かつ心棒によって接続された複数の発電機22の少なくとも1つのスタック51を備える。図5は、3つのそのようなカウンターウエイトを図示しており、それらはカウンターウエイト3のフレーム10の上部および下部バーと平行に配置されている。各スタックは、1つまたは複数の線形運動-回転運動変換機構21に接続されている。図5において、スタックの各端部の発電機の心棒は、対応する線形運動-回転運動変換機構21に接続されている。カウンターウエイトは、蓄電器要素の3つのパックに分割された蓄電器モジュール12をさらに備える。これらのパックと電池管理ユニットとの相互接続は、図5には示されていない。発電機22は、適切な配線30を介して蓄電器モジュール12に接続されている。カウンターウエイトはまた、1つまたは複数のウエイトバーのセットの形態のウエイト13を備える。図5の実施形態はまた、適切な配線を介して蓄電器要素のパックに接続される誘導マット50または別のタイプの誘導ベースの電力伝送装置を備える。マットのアクティベーションは、電池制御ユニット23(図示せず)によって制御される。マット50は、カウンターウエイトがエレベータシャフトの最も低い位置にあるときに、マット50の近くに配置された対応する誘導マット(図示せず)と協働する。複数のマットを使用することもできる。図3の実施形態に関して、第1の実施形態に示した接点の代わりに、同様の誘導ベースの電力伝送モジュールを実装することができる。逆に、図5の第2の実施形態の誘導マットの代わりに図3の第1の実施形態の接点を使用することができる。当業者は、電力を蓄電器モジュールから外部シンクに伝送するための他のモジュールを考案することができる。
【0047】
図3および図5は、垂直および水平に整列された発電機スタックを使用する2つの実施形態を提示する。両方のタイプのスタックを使用するハイブリッドの実施形態は、当業者によって容易に考案され得る。また、線形運動-回転運動変換機構21が適切に適合された状態で、発電機またはそのスタックを角度を付けて配置してもよい。
【0048】
図6は、線形運動-回転運動変換機構21の第2の実施形態を示している。機構21は、軸61を備えたホイールまたはローラー60を備える。作動位置にあるとき、ローラー60は、カウンターウエイトガイド(図示せず)の1つに対して配置されて接触し、カウンターウエイトが移動するとき、ガイドとローラーとの間の摩擦により、ローラーが軸61の周りを回転する。ギヤホイール62は軸61に固定されている。ギヤホイール62の回転は、軸64を延ばすねじ山付きウォームシャフト63を回転させる。軸64は、発電機20の心棒または中間モジュールに固定されている。図3の実施形態に関連して言及された同じ変形は、図6の実施形態に適用される。
【0049】
前述の例と比べて非常に軽い発電機を考慮に入れた数値例によると、たとえば、重さ0.5キログラムで、速度を3000rpm、機械効率を90%とすると、発電機はそれぞれ20Wを発電し得る。(図5の実施形態を考慮して)行あたり10個のそのような発電機を使用すると、これは5キログラムの重量を表し、1行につき200Wを生成する。
【0050】
上記の実施形態は、垂直経路に沿って移動するカウンターウエイトに関係する。本明細書に記載の原理は、カウンターウエイトが経路に沿って移動するときに回転するように、機構21のホイールを表面と接触したままにしておくことができるという条件で、垂直ではない経路、たとえば傾斜した経路に容易に適合させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6