(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099299
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】RFプラズマ処理装置からのRF信号を高速感知するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
H05H 1/00 20060101AFI20220627BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20220627BHJP
【FI】
H05H1/00 A
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205805
(22)【出願日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】20216495
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521396983
【氏名又は名称】インペダンズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ホプキンス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スカリン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】レノン,ジェージェー
(72)【発明者】
【氏名】ギルモア,トーマス
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084CC13
2G084DD55
2G084HH02
2G084HH11
2G084HH33
2G084HH34
2G084HH37
2G084HH42
2G084HH43
(57)【要約】
【課題】放射されたRFスペクトルの非侵襲的感知を提供すること。
【解決手段】本教示は、プラズマ処理システムから放出される電磁放射を監視するための感知デバイスであって、(i)時変RF電場を検出するための第1のプローブ、(ii)時変RF磁場を検出するための第2のプローブ、および(iii)変調光発光を検出するための光学プローブのうちの少なくとも2つを備え、各プローブから信号を受信するように、かつ各信号の単一周波数のみに関して電磁放射を監視するように構成された信号処理ユニットをさらに備える、感知デバイスに関する。
【選択図】
図5(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理システムから放出される電磁放射を監視するための感知デバイスであって、
(i)時変RF電場を検出するための第1のプローブ、
(ii)時変RF磁場を検出するための第2のプローブ、および
(iii)変調光発光を検出するための光学プローブのうちの少なくとも2つを備え、
各プローブから信号を受信するように、かつ各信号の単一周波数のみに関して前記電磁放射を監視するように構成された信号処理ユニットをさらに備える、感知デバイス。
【請求項2】
前記信号処理ユニットは、各プローブからの各信号の振幅を連続的に決定して振幅データを生成するようにさらに構成されている、請求項1に記載の感知デバイス。
【請求項3】
前記信号処理ユニットは、前記振幅データを分析して、変化する平均振幅を決定するようにさらに構成されている、請求項2に記載の感知デバイス。
【請求項4】
前記信号処理ユニットは、前記平均振幅に関して所定の限界外の振幅に対応するものとしてイベントを識別するようにさらに構成されている、請求項3に記載の感知デバイス。
【請求項5】
前記信号処理ユニットは、前記識別されたイベントに対応する振幅データを記憶するようにさらに構成されている、請求項4に記載の感知デバイス。
【請求項6】
前記信号処理ユニットは、前記識別されたイベントに対応する所定の期間の振幅データを記憶するようにさらに構成されている、請求項5に記載の感知デバイス。
【請求項7】
前記信号処理ユニットは、識別されたイベントに対応しないと判定された振幅データを破棄するようにさらに構成されている、請求項6に記載の感知デバイス。
【請求項8】
前記信号処理ユニットは、所定の期間にわたる各信号の前記振幅データを平均化するようにさらに構成されている、請求項2~7のいずれか一項に記載の感知デバイス。
【請求項9】
前記信号処理ユニットは、前記所定の期間に対応する前記平均化された振幅データを記憶するようにさらに構成されている、請求項8に記載の感知デバイス。
【請求項10】
前記信号処理ユニットは、直角位相モジュールおよびローカル発振器を含み、前記直角位相モジュールは、前記単一周波数を選択するために、各プローブからの各信号に、前記ローカル発振器からの信号を乗算するように構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の感知デバイス。
【請求項11】
前記信号処理ユニットは、周波数の下限と上限との間の、各プローブからの各信号を追跡するように、前記ローカル発振器を調整するように構成された位相ロックループを含む、請求項10に記載の感知デバイス。
【請求項12】
前記信号処理ユニットは、前記直角位相モジュールからの出力信号を平均値に変換し、前記出力信号から変調を除去して各信号の信号ベクトルを生成するように構成されたフィルタおよび平均化モジュールをさらに含む、請求項10に記載の感知デバイス。
【請求項13】
前記信号処理ユニットは、前記信号ベクトルを一斉に位相回転させて、実軸上にあってゼロ位相を有する電圧信号ベクトルを生成するように構成されたベクトル生成ブロックをさらに含む、請求項12に記載の感知デバイス。
【請求項14】
前記信号処理ユニットは、前記ベクトル生成ブロックによる処理の後、前記信号ベクトルを記憶するように構成された先入れ先出しバッファをさらに含む、請求項13に記載の感知デバイス。
【請求項15】
プラズマプロセスがパルス化されたとき、前記信号処理ユニットは、前記信号のうちの少なくとも1つに関して振幅データを分析し、前記振幅データに基づいてパルスのパラメータを記憶するように構成されている、請求項1に記載の感知デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、RF周波数のプラズマシステムからの交番電磁場の分析に関する。
【背景技術】
【0002】
材料のプラズマ処理は、現代の工業製造業に普通に見られる。一般的な例は、半導体業界において集積回路の製造中にトランジスタを形成するための層のエッチングおよび堆積である。プラズマ処理は、いくつか例を挙げると、ソーラーパネル、フラットパネルディスプレイ、薄膜コーティング、医療機器などの製造にも使用されている。
【0003】
プラズマは、典型的には、真空チャンバ内で形成される。空気が排出されると、ガスレシピが、選択されたガス圧でチャンバに追加される。ガスをプラズマ状態に励起するために、エネルギー、通常は電気エネルギーが真空チャンバに供給される。プラズマ状態は、ワークピースの表面を改質するために必要なイオンを供給する。
【0004】
高周波(RF)帯域の電気エネルギーが、プラズマ反応器に電力供給するために一般的に使用される。RF範囲は、典型的には、数十キロヘルツ~数百メガヘルツである。電波は、電力伝達を最大化するための整合ネットワークを含むRF動力送達サブシステムを通して、RF発生器からプラズマチャンバに結合される。電力は、いくつかの異なる方法でプラズマに結合することができる。1つの構成では、RF動力電極を使用して、動力電極と対電極との間に形成された電場(E場)を介してプラズマを励起することができる。対電極は、別の電極またはチャンバ容器本体であり得、典型的には接地電位に保持される。E場強度が十分であるとき、絶縁破壊が発生し、プラズマが形成される。RF電流は放電を維持し、動力電極と接地との間を流れる。親原子および分子から剥ぎ取られた電子は、RFE場内で前後に振動し、その過程でバックグラウンドガスをイオン化し、したがってプラズマを維持する。
【0005】
別の構成では、RF動力は、RFアンテナを通してプラズマに結合される。アンテナは、バックグラウンドガスと直接接触している必要はない。アンテナを流れるRF電流は、電流の流れの方向に垂直な時変磁場(H場)を誘導する。H場は、一般的に、誘電体ウィンドウを通してチャンバに結合される。いったん絶縁破壊が発生すると、H場は、RF電流を駆動するE場をプラズマ中に誘導する。自由電子はRF場中で振動し、バックグラウンドガスをイオン化し、したがってプラズマを維持する。多くの他のプラズマ反応器構成およびとプラズマ生成メカニズムが存在する。
【0006】
RF結合メカニズムのタイプに関係なく、電極またはアンテナとプラズマとの間のインターフェース領域は必然的に存在する。この領域は、プラズマシースと呼ばれる。シースは、非線形のRFインピーダンスを有する。その結果、基本波駆動周波数の高調波が励起される。結果として、プラズマの電圧および電流は、豊かな高調波スペクトルを有することができる。プラズマプロセスのRF高調波シグネチャは、基本波プラズマパラメータ、プラズマの化学的性質、チャンバ形状、チャンバ表面状態、チャンバの機械的特性を含む、多くの変数によって決定される。したがって、高調波スペクトルは、プラズマプロセスの正常性およびパフォーマンスに関する重要な情報を含む。
【0007】
プラズマ電子は、RF場中で振動すると、中性ガス粒子をイオン化および/または励起する。電子衝撃励起イベントは、発光を伴う。放出される光の多くは、電磁スペクトルの可視領域から発生する。発光は、使用するガスの種類に応じて特定の波長で発生する。RFプラズマでは、発光強度は、電子の動きによって、RF駆動周波数とその高調波とで変調される。
【0008】
特定のプラズマ反応器構成では、1つ以上の駆動周波数が存在する。これにより、各基本波駆動周波数と相互変調周波数とに対して高調波スペクトルが生成される。RF動力プラズマ反応器内で生成された周波数スペクトルの特性を正確に測定するための感知装置が非常に望ましい。正確に測定された周波数/高調波スペクトルシグネチャを使用して、プロセスのパフォーマンスをリアルタイムで監視することができる。
【0009】
プラズマ処理システムは、その設計の故に、電磁場に対して「漏れやすい」ことがよくある。RFの時変電場および磁場は、シールドされていない領域または不適切に接地された領域を通して放射される。発光は、ビューポートなどの不透明な領域を通して放射される。これにより、a)時変E場センサ、b)時変磁場(Bドット)センサ、およびc)時変光強度センサを使用して、プラズマ処理システムから放射されるRFスペクトルを感知する3つの手段が提供される。
【0010】
RFスペクトルは、典型的には、信号振幅対周波数のグラフとして表される。信号振幅は、時変E場またはB場強度に対応し得る。両方ともプラズマシステム内の電子運動によって駆動されるので、時変光信号振幅は、B場強度に密接に対応する。これらの3つの信号は、実際には、位相成分および振幅を有するベクトル量である。個々のスペクトルの基本波周波数と高調波周波数との間の位相角は、プラズマ内の電子運動の変化に非常に高感度を示すので、測定すべき貴重なデータセットである。また、E場およびB場スペクトルの対応する周波数成分間の位相関係は、プラズマプロセスにおける特定の物理現象に非常に高感度を示すことがわかっている。感知されたRFスペクトルの処理および分析により、プラズマプロセスをリアルタイムで監視することができる。測定されたRFスペクトルの詳細な較正の必要性を回避するために、統計的手法を使用して、特定のプロセス条件のベースラインまたはフィンガープリントを設定することができる。これは、典型的には、既知の「正常な」プロセスに対して行われる。同じ設定点に対して、後続のプロセスをベースラインと比較して、統計的に有意な変化を確認することができる。全体的な変化が、単一のデータチャンネルで容易に検出され、例えば、E場振幅の急な低下または上昇は、RF発生器の問題を示している可能性がある。他の変化はより微妙であり得、それら、例えば、わずかな空気漏れやわずかなウェハの置き違えを検出するために、RFスペクトルからの多くのデータチャンネルを使用して多変量解析を必要とする場合があるが、それでも、これらの問題はワークピースに悪影響を与える可能性がある。さらに、いくつかの変化は、本発明によって提供される位相測定などの高度なデータチャンネルでのみ検出され得る。例えば、位相測定は、例えば、層のエッチングが完了したとき、その層がワークピースの表面積の1%未満を構成している場合でさえ、特定のプロセスエンドポイントに非常に高感度を示す可能性がある。
【0011】
E場およびBドットのプローブペアは、伝送ラインを流れる電圧および電流を測定するためのいわゆるVIセンサで一般的に使用される。公開番号WO2014/016357A2には、VIセンサ装置が記載されている。このセンサは、RF動力供給線と直列に接続するように設計されている。そのため、それは、このタイプのセンサの場合に一般的であるように、伝送ラインのセクションを含む。プラズマに接続されたRFラインの電圧信号を決定するために、広帯域容量性ピックアップ(E場プローブ)が使用される。プラズマに接続されたRFラインのRF電流を決定するために、誘導ループ(Bドットプローブ)が使用される。電圧および電流のピックアップは、VIセンサ構造のRF伝送ラインセクションに組み込まれている。電流および電圧を表す信号は、アナログ-デジタルコンバーター(ADC)に渡され、デジタル化された信号は、フィールドプログラマブルゲートアレイ内で処理される。インラインVIセンサは非常に重要なツールであるが、プラズマシステム構成を大幅に変更せずに設置するのは難しい場合がある。
【0012】
公開番号WO2018/177965A1には、特別に設計された磁気ループアンテナを使用して、プラズマチャンバビューポートの近くを流れるプラズマ電流を外部の場所から感知する装置が、McNallyらによって記載されている。アンテナは、注意深く設計され、較正される。アンテナの出力は、アンテナによって検出された周波数スペクトルを見るためのスペクトルアナライザに結合されている。発明者らは、プラズマの共振特徴を検出するための周波数解析技術を説明している。隔絶された近接場で動作するアンテナは、このアンテナが正しく機能するために重要である。アンテナが、整合ネットワークや他の遠距離場信号源からの信号を検出することを防ぐために、シールドが使用される。
【0013】
公開番号WO2004/006298A2では、Parsonsが、RFアンテナを利用してプラズマシステムからのRF放射を遠隔で感知する発明を記載している。アンテナは、高調波信号を検出することができ、分析のために処理ユニットに結合されている。処理ユニットは、プラズマツールコントローラに結合されており、そこで、感知されたRF信号は、測定された信号レベルに基づいてプラズマプロセスのパラメータを調整および維持するために使用される。
【0014】
公開番号US2007/022766では、Yamazawaらが、プラズマチャンバ壁の平面の内側に位置付けられた2つの磁気ループアンテナからなる装置を記載している。アンテナは、容量結合プラズマ反応器の2つの電極の近くに配置されている。各ループを通り抜ける磁束によって生成された電圧信号は、信号処理ユニットに結合される。したがって、プラズマからチャンバ壁に流れる電流が計算される。
【0015】
公開番号US6,441,620B1では、Scanlanらが、インラインVIセンサからのデータを使用するプラズマ処理における障害確認の方法を記載している。所与のベースラインプラズマプロセスに対して、複数のプロセス入力パラメータの変化に起因する、ベースラインからの複数のフーリエ成分の大きさの変化が決定される。これらの大きさの変化は、参照データとして保存される。その後の生産実行中、プラズマプロセスに障害がないか監視され、障害が見つかった場合は、元のベースライン値と名目上同じ入力パラメータ値を用いて、ベースラインプロセスが繰り返される。元のベースライン値からのフーリエ成分の変化が決定され、参照データと比較される。この比較は、どのプラズマサブシステムが障害を惹起した可能性が最も高いかを判断するために使用される。
【0016】
上記から、先行技術には多くの欠点があることは明らかである。これらの欠点に対処する必要がある。
【発明の概要】
【0017】
本明細書では、プラズマ処理システムから放出される電磁放射を監視するための感知デバイスであって、(i)時変RF電場を検出するための第1のプローブ、(ii)時変RF磁場を検出するための第2のプローブ、および(iii)変調光発光を検出するための光学プローブのうちの少なくとも2つを備え、各プローブから信号を受信するように、かつ各信号の単一周波数のみに関して電磁放射を監視するように構成された信号処理ユニットをさらに備える、感知デバイスが開示される。
【0018】
信号処理ユニットは、各プローブからの各信号の振幅を決定して、振幅データを生成するようにさらに構成され得る。
【0019】
信号処理ユニットは、振幅データを分析して、変化する平均振幅を決定するようにさらに構成され得る。
【0020】
信号処理ユニットは、平均振幅に関して所定の限界外の振幅に対応するものとしてイベントを識別するようにさらに構成され構成され得る。
【0021】
任意選択的に、信号処理ユニットは、識別されたイベントに対応する振幅データを記憶するようにさらに構成される。
【0022】
任意選択的に、信号処理ユニットは、識別されたイベントに対応する所定の期間の振幅データを記憶するようにさらに構成される。
【0023】
信号処理ユニットは、識別されたイベントに対応しないと判定された振幅データを破棄するようにさらに構成され構成され得る。
【0024】
信号処理ユニットは、所定の期間にわたる各信号の振幅データを平均化するようにさらに構成され得る。
【0025】
任意選択的に、信号処理ユニットは、所定の期間に対応する平均振幅データを記憶するようにさらに構成される。
【0026】
信号処理ユニットは、直角位相モジュールおよびローカル発振器を含み得、直角位相モジュールは、単一周波数を選択するために、各プローブからの各信号に、ローカル発振器からの信号を乗算するように構成されている。
【0027】
信号処理ユニットは、周波数の下限と上限との間の、各プローブからの各信号を追跡するように、ローカル発振器を調整するように構成された位相ロックループを含み得る。
【0028】
信号処理ユニットは、直角位相モジュールからの出力信号を平均値に変換し、出力信号から変調を除去して各信号の信号ベクトルを生成するように構成されたフィルタおよび平均化モジュールを含み得る。
【0029】
信号処理ユニットは、信号ベクトルを一斉に位相回転させて、実軸上にあって、ゼロ位相を有する電圧信号ベクトルを生成するように構成されたベクトル生成ブロックをさらに含み得る。
【0030】
任意選択的に、信号処理ユニットは、ベクトル生成ブロックによる処理後に信号ベクトルを記憶するように構成された先入れ先出しバッファをさらに含む。
【0031】
任意選択的に、プラズマプロセスがパルス化されると、信号処理ユニットは、信号のうちの少なくとも1つに関して振幅データを分析し、振幅データに基づいてパルスのパラメータを記憶するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
ここで、添付の図面を参照して、本出願を説明する。
【0033】
【
図1】電気的および光学的電磁放射を検出することができる様々な領域を示すプラズマ処理システムを示す。
【
図2】個々の感知要素が単一モジュール内、本教示による感知デバイスを示す。
【
図3】個々の感知要素がプラズマ処理システムの周りに分散配置されている、本教示による感知デバイスを示す。
【
図4】共同設置された感知要素を有する
図2の感知デバイスをより詳細に示す。
【
図5(a)】高速検出モードで動作しているときの感知デバイスのADCからメモリへのデータの流れを示す。
【
図5(b)】高速検出モードで動作しているときの感知デバイスのFPGAのロジックを示す。
【
図6】本教示による感知デバイスを使用して生成することができる障害スコアスペクトルフィンガープリントの図を示す。
【
図7】本教示による感知デバイスを使用して生成することができるチャンバ洗浄の障害スコア監視の図を示す。
【
図8】本教示による感知デバイスを使用する低オープンエリアエンドポイント検出の例を示すチャートを示す。
【
図9】本教示による感知デバイスが、プラズマ処理システム内の圧力、ガス流、およびガス濃度をどのように検出することができるかを示すいくつかのチャートを示す。
【
図10】本教示による感知デバイスが、プラズマ処理システム内の変位したウェハをどのように検出することができるかを示すいくつかのチャートを示す。
【
図11】本教示による感知デバイスが、プラズマプロセス内のアークの検出をどのように可能にするかを示すいくつかのチャートを示す。
【
図12】本教示による感知デバイスが、プラズマプロセス内のパルスの検出をどのように可能にするかを示すチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(図面の詳細な説明)
本教示により、プラズマ処理システムから放射される電磁信号を感知し、感知されたデータをRFスペクトルの形態で処理し、スペクトルを分析して統計的に有意なプラズマプロセス変化を検出して、障害状態を識別するための装置/デバイスおよび方法が提供される。
【0035】
感知デバイスのセンサは、以下の3つの感知要素のうちの2つ以上を含み得る:時変電場を感知するための第1のプローブ、時変磁場を感知するための第2のプローブ、およびRF変調光発光を検出するための光学プローブ(例えば、高周波フォトダイオード)。第2のプローブと光学プローブとは、プラズマシステム内のRF電流の流れを感知する。第1のプローブは、2つの場間の位相変化を検出するために、他の2つのプローブのうちの一方と一緒に使用することができる。同時にかつ同期して測定されると、電場および磁場のスペクトル成分間の位相角の決定が可能になる。すなわち、本教示による感知デバイスは、信号間の周波数と高調波との間の位相データを保存するような方法で、信号を同期的にサンプリングする。この位相測定値は、プラズマのRFインピーダンス変化に特に高感度を示す。感知デバイスはまた、信号処理ユニットを含む。このユニットは、個々のスペクトルごとに、基本波周波数とその高調波との間の位相角を監視するように設計されている。これらの位相測定値は、プラズマ内の化学的性質の変化に特に高感度を示す。
【0036】
本教示では、遠隔E場およびBドットプローブを使用して、プラズマシステムから放出されたRF場を検出し得る。追加感度のために、フォトダイオードまたは他の光学センサを追加することができる。以降、本教示によるこの3要素センサは、VIOセンサと称され得る。本教示によるVIOセンサの特定の構成を以下に説明する。
【0037】
本明細書ではBドットプローブおよびE場プローブという用語が使用されるが、これらの用語は、感知デバイスを、B軸に沿った変化のみを測定する「完全な」Bドットプローブ、またはE軸に沿った変化のみを測定する「完全な」E場プローブに限定することを意図するものではないことを理解されたい。実際には、本教示の感知デバイスは、プローブが電磁場平面から十分に独立している限り、E軸またはB軸と整列していないプローブとともに機能する。本教示では、各プローブは、ある程度の他方の場の影響を受けやすく、つまり、E場プローブは、時変RF磁場を検出し、Bドットプローブは、時変RF電場を検出する。本教示のプローブは、より一般的には、各々が他方とは異なるベクトル平面にある2つの異なる電磁場プローブとして説明することができる。
【0038】
3つのVIOセンサ信号のうちの1つが、位相測定のために他のものが同期される基準として選択される。最適な構成では、E場は、B場および/または光学RFスペクトルが同期される基準として使用される。しかしながら、3つのプローブのうちのいずれかからの任意の信号を選択することができる。同期の理由は、E場スペクトル、B場スペクトル、およびRFスペクトルの対応する周波数成分間の位相関係を決定することを可能にするためである。
【0039】
対応するE場RF周波数成分に対するB場RF周波数成分の位相は、チャンバの形状とその機械的構造とに関連する。対応するE場RF周波数成分に対する光学RF周波数成分の位相は、形状よりもむしろガスの化学的性質に高感度を示す。電場中で振動する電子は、ガス原子をより高いエネルギー状態に励起する。原子は、しばらくの時間、励起状態にとどまる。励起された電子が崩壊して基底状態に戻ると、光の光子が放出される。原子が励起された後基底状態に戻るまでの時間は、光学RF周波数成分と対応する電場周波数成分との間の位相シフトと見なされる。このため、プラズマプロセスの正常性およびパフォーマンスを最大限に理解するには、RF磁場およびRF光信号の両方の位相シフトを測定することが重要である。
【0040】
現代のプラズマツールでは、ビューポートを通してのRF漏れを最小限に抑えるために、ビューポートのサイズが小型化され、RFシールドが追加されている。RFシールドは、多くの場合、E場漏れをブロックするのにより効果的であるが、B場漏れにはそれほど効果的ではない。内部チャンバへの見通し線が得られる限り、光学RF放射はRFシールドによって妨げられない。光検出器はビューポートを常に必要とするが、
図1に示すように、プラズマシステムには、電気RF信号を遠隔で検出することができる領域が数多く存在する。放射されたRF信号を検出することができるプラズマ処理システムの領域の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:
(101)インラインで、または接地シールドを通して(またはシールド領域が除去された状態で)に関わらず、RF発生器と整合ネットワーク(ユニット)との間の同軸伝送ライン
(102)整合ユニット/回路の内側、例えば、ハウジング壁で
(103)冷却ファンを通して、整合ユニットの外側
(104)整合ユニットとプラズマチャンバとの間のRFハウジングを通して(スロットが必要となり得る)
(105)ターボポンプを通して
(106)ICPソース領域の内側、例えば、ハウジング壁で
(107)プラズマチャンバの内側
【0041】
電磁放射を監視するためにプラズマ処理システム内の複数の異なる場所を選択することができるとすると、本教示による感知デバイスのセンサは、2つの好ましい物理的構成を有する。1つの構成では、感知要素は「アンテナ」モジュール内に共同設置される。E場プローブ、Bドットプローブ、および高周波フォトダイオードは、モジュールまたはハウジング内に共同設置される。このモジュールは、2つまたは3つすべての信号を同時に検出することができる大きなビューポートに取り付けるのに理想的である。この構成を、
図2に示す。これは、モジュール201内の本教示によるセンサ200を示す。モジュール201は、プラズマ処理システム100のビューポート204に位置する。
【0042】
図2はまた、以下でより詳細に説明されるように、信号結合ケーブルを介して信号処理ユニット202に接続されたセンサ200を示す。センサ200と信号処理ユニットとの組み合わせは、感知デバイスと見なされ得る。
【0043】
別の構成では、センサ200の個々の感知要素は、それらが高感度を示す放射信号に最もよく暴露され得るプラズマ処理システム100の異なる領域に分散配置される。この構成を、
図3に示す。この実施例では、光検出器/センサ301がビューポート(または光ファイバポート)に位置し、Bドットセンサ302がICPプラズマソースハウジング内に取り付けられ、E場プローブ303が、整合ボックスの内壁に取り付けられるか、または発生器と整合ボックスとの間の同軸ケーブルに沿って取り付けられている。発生器と整合ユニットとの間に設置されたとき、高調波信号レベルは整合ユニットによって大幅に減衰されるので、E場プローブ303は、著しく低い高調波信号レベルに暴露される。それにもかかわらず、十分に高感度の信号処理ユニット202を用いて、(E場が基準として選択された場合)Bドットおよび/または光学RFスペクトルの位相変化の正確な測定を可能にするために、安定したE場基準を取得することができる。
【0044】
Bドットプローブ302は、複数の巻線を有する誘導ピックアップループを備える。ループを通り抜ける時変磁束は、ループ出力の両端に電圧を誘導する。ループ電圧は、信号調整回路(本明細書では周波数応答レベリング回路とも称される)に結合されている。信号調整回路は、広い周波数範囲にわたって等しい振幅の磁束が、等しいかまたは同様の電圧レベルを信号調整回路の出力に誘導するように、誘導ループの出力電圧を調節するために使用される。
【0045】
E場プローブ303は、容量性ピックアップを備える。時変電場が、コンデンサを充電し、その両端に電圧を誘導する。容量性ピックアップの出力は、別の信号調整回路(周波数応答レベリング回路)に結合され、Bドットプローブに関して説明したのと同じ周波数レベリング効果を達成する。信号調整回路は、広い周波数範囲にわたって等しい振幅の電束が、等しいかまたは同様の電圧レベルを信号調整回路の出力に誘導するように、容量性ピックアップの出力電圧を調節するために使用される。
【0046】
光検出器301は、フォトダイオードであり得る。光検出器の感光領域に到達する光強度は、ある電圧を出力に誘導する。光検出器301は、典型的には、200nm~1000nmの波長範囲の光に高感度を示すが、必要に応じて他の範囲を使用することもできる。検出器は、指定された光帯域幅内で、波長範囲全体で同じ強度の光に対してフラットな応答を有するように設計されている。言い換えれば、光検出器の出力に生成される電圧は、同じ強度の異なる波長においてほぼ等しい。光検出器は、高周波帯域幅を有する。これは、光検出器の出力が数10kHz~数100MHzの周波数範囲の時変光強度に応答でき、BドットおよびE場センサと同様の方法でフラットな周波数応答を有するように設計されていることを意味する。センサの応答を対象の周波数範囲にわたって調節し続けることは、特定の周波数での共振効果による飽和などの問題を防ぐ。
【0047】
図4に目を向けると、これは、共同設置された感知要素と信号処理ユニットとを有する、本教示による遠隔の非侵襲的感知デバイスを示す。すなわち、
図4は、感知デバイス、つまり
図2のセンサ201および信号処理ユニット202の内部構成を示す。
【0048】
感知要素(光学センサ301、E場センサ303、およびBドットプローブ302)ならびに周波数応答レベリング回路402、402 403は、本教示によるVIOセンサのアナログフロントエンドを構成する。各レベリング回路は、それぞれの感知要素301、302、303によって感知された量に比例するアナログ電圧信号を出力する。アナログ電圧出力は、RF帯域の交流(AC)信号である。有用な方法で分析および視覚化することができる形態で周波数スペクトルを抽出するために、信号処理ユニット202がVIO感知デバイスに組み込まれている。(共通シースに束ねることができる)個々の同軸ケーブルが、AC信号を信号処理ユニット202に運ぶ。マルチチャンネルADCが、感知要素の各々からの信号をサンプリングするために使用される。基準信号(E場センサなどであるが、センサのうちのいずれか1つを基準として選択することができる)は、ADCのチャンネル1に結合される。他の2つのチャンネルは、チャンネル1と同期される。選択された基準信号は、固定することができ、例えば、それは常にE場センサからの信号であるか、または信号処理ユニットが各測定もしくは感知手順を使用して基準信号を動的に選択することができることを理解されたい。最強もしくは最高強度の信号が選択されてもよいし、何らかの他の基準が信号処理ユニットによって使用されて、基準信号を選択してもよい。任意の好適な基準が、当業者によって選択され得る。
【0049】
高速ADCは、アナログフロントエンドによって生成されたAC波形をサンプリングする。データサンプリングは、すべてのチャンネルで同時にまたは同期して実行される。サンプリングは、2つの信号間の周波数と高調波との間の位相データを保存するように同期して行われる。当業者は、位相データおよび高調波が適切に保存されることを保証するための適切な構成要素および特定の技術を選択することができる。典型的には、512個のサンプルのデータブロックが、第1のステップとして記録される。ブロックサイズは任意に選択され、様々な要件を満たすように変化させることができる。データブロックは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)に転送され、そこで高速フーリエ変換(FFT)が実行される。FFTは、時間ドメインのAC波形を周波数スペクトルに変換する。周波数スペクトルは、記憶と、平均化を含むさらなる処理とのために、信号処理ユニットのマイクロプロセッサ(図示せず)に送られる。信号対ノイズ比を低下させるために、複数のFFTが合わせて平均化される。平均化により、チャンネル位相情報も保存される。
【0050】
本教示では、AC波形は、ブロックごとには非同期であるが、チャンネルごとには同期してサンプリングされ、つまり、新しい波形がいずれか1つのチャンネルで記録されるたびに、サンプリングがAC周期の同じポイントで開始することはないが、サンプリングはすべてのチャンネルでまさに同時に起こる。結果として、基本波周波数成分とその高調波との0度に対する位相は、新しいFFTが処理されるたびに変化する。平均化を実行するために、位相回転操作が実行される。第1のADCチャンネルの基本波周波数成分が、基準として選択される。複合基本波周波数成分の位相を、所定の位相角φまで回転させる。複合基本波周波数成分を測定値から所定の値に回転させるために使用された位相シフトΔφが記録される。すべての個々のADCチャンネルからの複合基本波周波数成分もΔφだけ回転させる。すべての高調波周波数成分(N)をN×Δφだけ回転させるが、ここで、Nは高調波番号を示し、N=1は、第1の高調波または基本波周波数である。これは、位相空間内で各FFTを整列させて、連続するサンプル全体の平均化を可能にし、一方で、個々のスペクトル内の高調波間の位相関係と、異なるADCチャンネルからのスペクトルの対応する周波数成分間の位相関係とを保存するという二重の目的を果たす。
【0051】
事前設定された数の平均が完了すると、信号処理ユニット202は、閲覧およびさらなる分析のために、データセットをユーザに出力する。すなわち、データセットは、結果表の形式で、感知デバイスによって、PCなどの外部コンピュータリソースに出力され得る。しかしながら、さらなる分析が、感知デバイスによって(オンボードで)行われてもよい。
【0052】
データセットまたは結果表は、各信号基本波の周波数、各信号の大きさ、選択された基準信号に対する各信号の位相、各信号高調波の大きさ、基準信号上の対応する高調波に対する各信号高調波の位相、および各信号の基準信号基本波に対する基準信号高調波の位相を含む。
【0053】
以下の例示的な結果表は、信号周波数1および信号周波数2の2つの信号にそれぞれ対応する。これらの表は、2つ以上の信号について、第1の信号の結果表が、任意のさらなる信号(信号周波数)に対して本質的に再現されることを示す。
【表1】
【表2】
【0054】
データを出力すると、各センサチャンネルの各周波数成分の振幅および位相の情報が報告される。典型的には、関連する周波数成分間の位相差が計算され、ユーザに出力される。信号処理ユニットは、複数の基本波周波数成分を同時に処理できるように設計されている。これは、2つ以上の周波数によって電力供給されるプラズマプロセスを監視するときに特に有用である。信号処理ユニットは、典型的には、用途の要件に応じて、約1ミリ秒~1秒の範囲の選択可能な速度で完全なデータセットを出力することができる。
【0055】
すべてのRFプラズマプロセスが連続波(CW)モードで動作するわけではない。いくつかは、数ヘルツ~数十キロヘルツの範囲の周波数でパルス化される。このため、信号処理ユニット202は、内蔵された外部同期ポートを有し得る。ユニット202は、プラズマ処理システムのパルスRF発生器から(TTL)信号入力を受け取る。ボックスカー(平均化)技術により、パルスRF周期中の特定の時間におけるRF波形捕捉が可能になる。このシナリオでは、平均化は、複数のパルスにわたって実行される。この技術を使用して、必要に応じて1マイクロ秒の分解能で平均パルスプロファイルを構築することができる。同期化とは別に、信号処理は同じ方法で実行される。パルスRF信号は、繰り返しサイクル中に1つ以上の電力レベルを有し得るが、いったんTTL同期信号が利用可能になると、信号処理ユニットは、妨げられることなく分析を実行することができる。
【0056】
近年、パルスRFプラズマプロセスは、基本波搬送波周波数が固定ではなくてむしろ動的であるように開発されている。これにより、必要な速度における整合位置の機械的な動きが実用的ではない、パルス周期全体にわたる電力整合へのより卓越した制御が可能となる。典型的には、搬送波周波数の前後で+/-10%の動的範囲で十分である。本教示による信号処理ユニットはまた、連続波およびパルスRFプロセス監視のために、動的搬送波周波数が有効化される。スマートFFTプロセスが、基本波周波数が現れると予測されるところに隣接する周波数ビン内の搬送波周波数の動きを追跡する。したがって、搬送波周波数のスペクトルを、その+/-10%の動的同調範囲内の任意のポイントで取得することができる。
【0057】
高速イベント監視のために、別の信号処理方法が、本教示による感知デバイス(センサおよび信号処理ユニット)によって使用され得る。前述の周波数スペクトル分析は、複合波形のサンプリングとさらなるFFT処理とを必要とする。FFTは、比較的遅いプロセスである。したがって、基本波周波数を分離するための狭通過帯域フィルタを用いた、二乗平均平方根(RMS)検出技術が使用され得る。本教示による感知デバイスは、2つのモード、すなわち(i)上記の周波数スペクトルモード、および(i)以下に説明する高速検出モードで動作できることを理解されたい。
【0058】
高速検出モードでは、各データチャンネルの二乗平均平方根(RMS)振幅を、高速(典型的には1マイクロ秒以下のレポートレート)で、リアルタイムで決定することができ、高速振幅データが捕捉される。この高速方法では、高調波スペクトルの測定は可能ではない。しかしながら、リアルタイムの高速処理により、TTL信号との同期を必要とせずに、パルスプロファイルの監視が可能になる。ボックスカー技術で得られた前述の平均パルスプロファイルと比較して、個々のパルスプロファイルを捕捉して分析することができる。デューティサイクル、パルス繰り返し周波数などの重要なパルス特性をパルスごとに確定して、欠陥または障害の相関メトリックを構築することができる。パルスプロファイル監視は、高速検出法を使用することができる1つのタイプの高速測定にすぎない。もう1つの重要なタイプの高速イベントは、RFアークである。アークは、産業用プラズマ処理チャンバにおいて一般的であり、無数の理由で起こる。一般的なタイプは、マイクロアークである。誘電体粒子は、例えば、チャンバ壁にナノ層を形成する。層の外側表面が一定のレベルまで充電されると、層の絶縁破壊が起こる。アークは、層を貫いて燃焼し、背後の接地壁に到達する。その際、粒子が表面から放出され、処理されているウェハに大きなリスクをもたらす可能性がある。これらのアークは、プラズマの電圧および電流に突然の急激な変化を惹起する。変化の重大度は、それが続く時間の長さと、誘発された電圧または電流のレベルの相対的な変化との観点から分類することができる。処理ツールに損傷を惹起する大規模または壊滅的なアークイベントの前兆となることが多いので、マイクロアーク放電の兆候を測定することは非常に重要である。高速検出モードで動作する信号処理ユニットは、そのようなマイクロアーク放電イベントの検出に理想的に適している。
【0059】
さらに、高速モードは、センサ/プローブからの信号の完全な「時間カバレージ」を提供する。周知の方法は、杭柵を通して見るのと同じように、信号の時間の部分を監視するブロック技術を使用し、100%カバレージを得ることなく、背後にあるものを確認することが可能である。すなわち、先行技術は離散サンプリングに依拠しているが、本教示は連続的な監視を提供する。イベントを見逃さないように、イベント検出では信号の100%時間カバレージを有することが重要である。すなわち、プラズマプロセス全体の連続的な監視を提供することができ、プロセス全体の振幅データが取得される。信号処理ユニットは、各プローブからの各信号の振幅を連続的に決定して、振幅データを(連続的に)生成するように構成されている。
【0060】
図5(a)は、高速動作モードに関するADCからメモリへのデータの流れを示す。これはすべて、VIO感知デバイス内で起こり、信号処理ユニット202内のFPGAとオンボードCPUとの組み合わせによって実行される。この例示的な実施形態では、すべての高速振幅データが、1マイクロ秒の分解能でFPGAからCPUにブロックで転送される。すなわち、高速振幅データは、前処理済みデータメモリ501から、CPUのイベント検出および分類モジュール502、パルス測定モジュール503、およびデータ平均化モジュール504に転送される。CPUは、イベントをチェックし、検出されたイベントごとに最大5msのデータをRAM(イベントデータメモリ505)にローカルに記憶する。任意の長さの時間を適宜選択することができ、5msは単に例にすぎないことが理解されよう。イベント検出技術では、最新値と比較するために、移動(変化)平均が使用される。例示的な実施形態では、移動平均は、単に最後の1000個の値、つまり最後の1ミリ秒の平均である。イベントは、移動平均に関してユーザ定義の限界外の振幅に対応するものとして分類される。
【0061】
CPUはまた、測定されたRMS信号レベルを平均化し、平均化されたデータを100ミリ秒ごとに(コンテキストデータメモリ506内に)記憶する。ここでも、100ミリ秒の選択は任意であり、任意の期間を選択することができる。この「コンテキスト」平均は、前述の移動平均とは異なり、例示的な実施形態では、各100ミリ秒ブロック内のポイントの平均である。
【0062】
CPUは、アークおよびRFパルスイベントをチェックし、各イベントのアークおよび/またはパルススナップショットをイベントデータメモリ505内に記憶する。すなわち、CPUは、先入れ先出しバッファ(FIFO)509内のすべてのデータを処理し、イベントに対応するデータのみをイベントデータメモリ内に記憶する。平均「コンテキスト」データは、信号処理ユニットが平均rms値を記録するように記憶される(つまり、100ミリ秒ごとに1つのデータポイント)。
【0063】
パルス(プロファイル)測定モジュール503に関して、それは、イベントデータメモリ505内に記憶するための仕様外パルスの高分解能捕捉を提供する。パルス測定モジュール503は、100ミリ秒ごとにパルス統計を提供する。(つまり、周期、デューティサイクル、平均「オン」値、最大および最小「オン」値)コンテキストデータメモリへ。
【0064】
接続されたPCで実行されているソフトウェアは、センサのイベントデータメモリおよびコンテキストデータメモリからデータを取り出し、接続されたPC上のファイルに保存し得る。
【0065】
信号処理ユニットは、イベントデータおよびコンテキストデータの両方を捕捉して記憶する必要はないことを理解されたい。ユーザの要件に従って、これらのプロセスのうちの1つだけが実行されてもよい。しかしながら、イベントデータとともにコンテキストデータを捕捉することは有利である。「コンテキスト」データを有することで、イベントが発生したときに他に何が起こっていたか、つまり、電力が印加された直後にイベントが発生したかを判断する方法が提供される。(以前に実行されたプラズマプロセスと比較して)イベントの前後で電圧および電流が通常と異なっていたか。
【0066】
メモリ501内に記憶された高速振幅データが、ADC506、RMS検出器507、ならびにフィルタおよび平均化ブロック508を使用してどのように捕捉および処理されるかを、
図5(b)に関してより詳細に概説する。
【0067】
感知デバイスにはまた、通信インターフェースが設けられ得る。これは、外部コンピューティングリソース(例えば、PC)にデータをストリーミングするために使用することができる。このインターフェースにより、コンピューティングリソースは、データをストリーミングしてもらうのではなく、むしろデータを要求することも可能になる。
【0068】
図5(b)に示されたブロック図は、前述の高速(RMS)に使用されるFPGAロジックを示す。RMS検出に使用される、
図5(b)に示されたFPGAロジックは、高調波スペクトル検出(スペクトルモード)に使用されるロジックとは非常に異なる。本明細書に記載の構成は単なる例示であり、当業者は、本教示による感知デバイスの同じ高速検出モードを達成するために、代替の論理構成を使用し得ることが理解されよう。
【0069】
図5(b)に関して、高速モードの感知デバイスの信号処理ユニットは、ただ1つの基本波周波数を追跡し、1マイクロ秒以上の速さの更新レートでセンサ信号の振幅および位相を決定する。このデータは、CPUによる取り出しの準備ができている先入れ先出し(FIFO)バッファ509内に記憶される。CPUインターフェースにより、FPGAレジスタはCPUメモリスペース内にマップされたメモリであることが可能になる。CPUは、FPGAのFIFOから直接メモリへの、ダイレクトメモリアクセス(DMA)転送を設定する。
【0070】
RMS FPGAロジックは2つのクロックドメインを有し、一方はADCクロックサンプリングレートに関連し、他方のクロックドメインはCPUインターフェースに関連する。
図5(b)に示された高レベルの図は、ADC506からFIFOメモリ509への信号経路を示す。直角位相(IQ)ブロック510は、V、I、またはO信号(個々の感知要素からの信号)に、監視すべき周波数を効果的に選択するローカル発振器信号を乗算する。
【0071】
位相ロックループ(PLL)制御ロジック511が、周波数の下限と上限との間の到来信号を追跡するようにローカル発振器を調整するために使用される。フィルタおよび平均化ブロック508は、瞬間IQ信号を平均値に変換する。IQ出力は、必要な「DC」信号に加えて、サンプリング周波数および信号周波数に関連する変調信号を含む。フィルタおよび平均化ロジック508は、IQ出力信号から変調を除去して、VIO信号ベクトルを生成する。次いで、VIO信号ベクトルは、マイクロ秒ごとにベクトル生成ブロック512に渡され、そこで、VIO信号ベクトルは、V信号が実数であるように、つまりベクトルが実軸上にあってゼロ位相を有するように、一斉に位相回転される。次いで、Vと、IrおよびIiならびに/またはOrおよびOi(下付き文字rおよびiはそれぞれ実数成分および虚数成分を表す)とが、信号処理ユニットのCPUが読み取る準備ができているFIFO509内に記憶される。
【0072】
当業者は、本明細書に記載の高速(RMS)検出技術を、本教示のVIO感知デバイスに限定されず、前述のVIセンサデバイス、または適切な信号を供給することができる任意のセンサなど、周知の先行技術センサとともに使用できることが分かるであろう。この高速検出技術には、すべての信号(V、I、およびO)が必要なわけではない。
【0073】
本教示によるVIO遠隔感知デバイスは、E場、Bドット場、および変調光強度の絶対測定値を与えるように較正することができるが、本明細書に記載のタイプの用途には必須ではない。以下の説明では、相対的な信号強度のみに依拠する、既知の正常なプロセスのベースラインを設定する方法を提示する。既知の正常なプロセスからの一連のプロセス実行を使用して、許容可能なプロセスウィンドウが確定される。正常なプロセスウィンドウは、測定された変数の正規分布に従う。ベースライン設定プロセスには、すべての変数の分布のサンプルの測定が関与する。新しいプロセスの実行が許容可能なプロセスウィンドウ内にあるかどうかを確定するために、統計的手法が使用される。統計分析を容易にするために、後で取り出すように、各測定値にタイムスタンプが付けられ、記憶されるデータベースが採用される。この統計分析は、オンボードまたは外部コンピュータで実行することができる。
【0074】
ベースライン設定シーケンスの1つの実施例では、選択されたサンプルサイズ(n)について、変数ごとに、平均(μ)と標準偏差(s)とを計算する必要がある。これらのパラメータは、メモリ内に記憶される。標準偏差で測定された平均からの距離は、新しい測定値ごとに決定することができる。他の方法を使用することもできる。
【0075】
個々の変数は、特定のタイプのプロセス変動に高感度を示さない場合がある。各周波数スペクトルは、基本波周波数ごとに、15の関連位相とともに15の高調波振幅を含むことができる。3つのADCデータチャンネルを用いて、そしてスペクトル間位相パラメータを用いて、各測定で数百の変数が取得される。したがって、最適な感度を得るために多変数モデルが実装される。平均分析からの距離を使用するアプローチは、ベースラインサンプルと比較したときに、多変量データセット内の偏差を確定するために使用することができる多くの方法のうちの1つにすぎない。主成分分析技術およびニューラルネットワークを使用してもよい。測定されたデータセットの導関数を使用して、感度をさらに改善することもできる。
【0076】
VIO感知デバイスが生成できる多数の変数により、最も高感度の変数のみを最適な感度を得るための計算に含めることが、ときには有用であり得る。あるいは、測定されたすべての変数を含めることができる。
図6に、スペクトルフィンガープリントを示す。この例では、プラズマ処理チャンバのベースラインを設定してから、5枚で一組のウェハを処理チャンバに順次通した。X軸は、スペクトル成分番号を示し、1~15は、基本波周波とそれに続く14の高調波とのE場振幅であり、16~30は、同じ周波数成分のBドット振幅であり、31~45は、周波数成分ごとのチャンネル間の位相角である。このスペクトルの要素46は、各ウェハの平均計算からの多変量距離の結果である。計算値は、5枚のウェハすべてについて約1の標準偏差であり、プロセスが全体を通して正常な状態にあったことを示す。誤警報を防ぐために、閾値を実装することができ、例えば、6シグマを超える平均からの距離のみが障害と見なされる(障害スコア)。
【0077】
図6に示されたスペクトルは、45のスペクトル成分(および障害スコア計算の結果)を有する。光学RFスペクトルを含めると、スペクトル成分の数は75になる。さらに、基本波周波数に対する高調波位相測定値を追加すると、ライブデータチャンネルごとにさらに14のスペクトル成分が追加される。これにより、プラズマ処理中に受ける可能性のある障害の大部分に非常に高感度なデータセットが提供される。障害スコア法により、大きなデータセットが統計的有意性を有する単一の障害スコアに凝縮される比較的単純な障害検出技術が提供される。しかしながら、異なる障害が同じスコアを返し得るということも可能である。障害の分類が必要な場合は、より精巧なアプローチが必要である。障害分類のためには、特定の障害シグネチャまたはフィンガープリントを認識するように知的アルゴリズムをトレーニングすることができるように、スペクトルパターン認識技術を使用することができる。
【0078】
これまでに説明した感知デバイスおよび方法を使用して、以下を含む様々なプロセス障害およびイベントを検出することができる。
a)チャンバ壁の状態
b)プロセスエンドポイント
c)圧力制御バルブの誤動作、ガス流の問題、漏れ
d)ウェハの変位
e)RFアークイベント
f)非定型RFパルスイベント
【0079】
本明細書に記載の技術は、感知デバイスによって、または感知デバイスに接続された外部コンピュータによって、感知デバイスからのデータを使用して実行することができる。
【0080】
上記のe)およびf)のカテゴリは、前述の同じベースライン設定プロセスを必要としないことに留意されたい。チャンバ壁の状態は、多くのプラズマプロセスにとって重要な考慮事項である。ウェハ製造における材料のエッチングまたは堆積中に、層がチャンバ壁上に形成される。これらの層は、特に非導電性の場合、プラズマインピーダンスを大幅に変化させる可能性がある。これにより、プラズマの特性が変化し、プロセス条件が許容可能なプロセスウィンドウを超えてしまう可能性がある。チャンバ壁が清浄であることがわかっているとき、前述の方法を使用してプロセスのベースラインを設定することができる。チャンバ壁が所定の汚染レベルに達したとき、チャンバ洗浄プロセスが実行される。チャンバが十分に清浄であるときについての正確なフィードバックは、非常に望ましい。
図7は、洗浄プロセス中のチャンバに対して計算された障害スコアを示す。2σのスコアが、十分に清浄なチャンバを表すと判定された。この技術は、チャンバが清浄な状態に達したときにユーザに警告するために使用される。
図7に示された例では、チャンバは、約800秒後に清浄な状態に達した。
【0081】
プラズマ処理には、多くの場合、基板表面に特徴部および構造を作成するための複数のエッチングおよび堆積のステップが関与する。エッチングステップは、通常、下層をなす材料を露出させるために、1つの材料層を完全に除去する必要がある。エッチングプロセス持続時間は、特徴部が寸法仕様の許容範囲内で作成されるように、慎重に選択されねばならない。エッチングプロセスが十分に長く実行されない場合、層は、エッチング不足となり、つまり、層は、下層を露出させるのに完全に除去されない。エッチングプロセスの実行が長すぎる場合、層は過剰エッチングとなり、つまり、対象の層は完全に除去されたがエッチングプロセスが続行されたとき、下層が損傷する可能性がある。エッチングエンドポイントという用語は、エッチングプロセスが対象の層を完全に除去した時点を定義するために使用される。層が完全に除去された直後に、プラズマプロセスが開始して、下層の材料をエッチングする。プラズマ組成を監視し、下層をなす材料からの粒子の存在を探すために、発光分光法(OES)技術がよく使用される。いったんこれらの粒子が検出されると、対象の層のエッチングが完了し、プロセスを正しく終了できると見なすことができる。異物粒子濃度が非常に低いと、OESは、常に機能するとは限らない。本教示によるVIO感知デバイスを使用する障害スコア技術は、OES技術と比較して、低いオープンエリアエッチングエンドポイントに対してより高感度を示すことができることが示されている。
図8は、エッチングエンドポイントの例を示す。プロセスの最初からのデータを使用して、プロセスのベースラインが設定された。4σスコアが、プロセスを終了するのに最適な時間であることが確定された。(基本波に対する)RF高調波スペクトル、特に高調波位相成分は、エッチングのエンドポイントで見られるプラズマの化学的性質の小さな変化に非常に高感度を示す。プロセスに入る新しい材料によるプラズマ組成の変化は、RFスペクトルと、すでに説明したTスコア法とを使用して、非常に低いレベルまで検出することができる。本発明の光学RFスペクトル検出器は、言及された標準的なOES技術と混同されるべきではない。本発明では、高周波帯域幅のフォトダイオードを使用して、光強度の変調を測定することによってRFスペクトルを捕捉する。標準OESシステムは、プラズマプロセスから放出される時間平均光強度を監視し、それを光波長のスペクトルに分割する。特定の波長を使用して、様々な原子種または分子種を識別する。したがって、OESは、プラズマプロセスの化学的組成を決定するのに有用である。しかしながら、種の濃度が低いと、分解能の限界が問題になる。
【0082】
多くのプラズマ処理チャンバは、真空下で稼働される。チャンバ圧力は、厳密に調節される。ガス流およびガス濃度もまた、厳密に制御される。圧力および/またはガス制御システムの障害は、処理されている基板に壊滅的な結果をもたらす可能性がある。ガス流の問題の検出に対する本教示による感知デバイスの感度を試験するために、シリコン堆積用途のためのシランプラズマを実行するプラズマ処理チャンバで、制御実験を実施した。ベースラインスペクトルを記録した。シラン濃度を、ベースライン条件に対して、10%増加、および10%減少させたが、他のすべてのパラメータは一定に保った。両条件に対して、RFフィンガープリントを記録した。45のチャンネルのRFスペクトルのフィンガープリント障害スコアスペースを
図9に示す。チャンネル46は、多変量障害スコアの結果を示す。スペクトルフィンガープリントに明らかな違いがあり、障害スコアは、両ケースで5σを超えており、シラン濃度の変化を容易に検出可能にしている。はるかに低い濃度変動が、広範囲のプラズマガスの化学的性質にわたり、検出可能である。
【0083】
プラズマ処理デバイスのペデスタル(または静電チャック)上でのウェハの位置決めは、ウェハ処理にとって極めて重要である。ウェハがチャック上で変位し得る理由はいくつか存在する。ロボットアームが、誤動作し、それを誤った位置に置く可能性がある。より一般的には、ツールの他の部分からの破片がチャック上に落下する可能性があり、そうすると、その上に配置されたウェハがチャック表面から持ち上げられる可能性がある。原因に関係なく、ウェハの変位が検出されないと、ウェハが誤って処理され、ラインから廃棄される可能性がある。ウェハの変位は、プラズマインピーダンスと、結果として生じる高調波スペクトルとに影響を与える。
図10は、VIOセンサ装置を使用して遠隔で測定されたBドット場への影響を示す。主な図表は、プラズマプロセス中の、基本波Bドット場の大きさ対時間のプロットを示す。正しく配置された6枚のウェハのデータが、変位したウェハのデータとともに示されている。変位したウェハの処理は、短縮された。
図10の差し込み図はまた、正しく配置されたウェハおよび変位したウェハの両方のE場信号およびBドット信号の高調波スペクトルを示す。この例では、統計分析を必要とせずとも、違いが非常に明確である。それにもかかわらず、この例は、本教示によるVIO感知デバイスの、置き違えられたウェハを検出してウェハの廃棄イベントを防ぐ能力を実証した。
【0084】
前述したように、中央信号処理モジュールが高速(RMS)検出用に構成されているとき、短命(RF)イベントを遠隔で検出することができる。
図11は、プラズマプロセスで検出される、そのようなイベント、アークの例を示す。特に、
図11は、上のグラフを示し、典型的なプラズマプロセス内のアークの存在を示す。
図11の下のグラフは、1マイクロ秒の分解能でのアークの高精細度ビューを示す。
【0085】
本明細書に記載のVIO感知デバイスは、RFプラズマアーク検出のための非侵襲的方法を提供することが理解されよう。プラズマ処理チャンバ内のアーク放電を早期に検出することは、是正措置を講じた場合に製品の廃棄を回避することができるので、非常に望ましいことである。アークシグネチャは、E場信号、Bドット信号、および光学RF信号に存在する。したがって、
図3に示したように、1つまたはすべての感知要素を使用して、プラズマシステムの周りの様々な場所でアークを遠隔で検出することができる。
【0086】
パルスRFプラズマプロセスは、先進的な半導体ノードの製造に広く使用されている。プラズマをパルス化することにより、連続波RFモードでは達成できない様々なプラズマの化学的性質へのアクセスが提供される。これらのプラズマは、典型的には、数ヘルツ~数十キロヘルツの周波数範囲でパルス化される。プロセスの歩留まりには、パルスごとに再現性の高いプラズマ条件を達成することが必須である。再現可能なプラズマ条件を達成するために、パルス特性の変動は、特定の閾値内に留めねばならない。ウェハ欠陥の数は、例えば、パルス変動と相関していることが知られている。VIO感知デバイスの高速(RMS)検出モードは、各パルスプロファイルを分析して、主要なパルス特性、例えば、パルス繰り返し周波数、デューティサイクル、パルスオン時間などを抽出するのに理想的に適している。信号処理ユニット(パルスプロファイル測定モジュール503)は、マイクロ秒ごとに到来データ信号をサンプリングし得る(もちろん、他の時間枠も可能である)。これにより、対象のパルス周波数範囲内の各パルスプロファイルの詳細なスナップショットが提供される。各パルスプロファイルはリアルタイムで分析され、重要なパルスパラメータが記憶される。1マイクロ秒のサンプルを含むパルスプロファイルは、ユーザが設定した許容範囲限度内にある場合は破棄される。他方で、パルスが許容範囲外の場合、高精細度パルスプロファイルは、さらなる分析のために記憶される。この「例外」ベースのアプローチは、生成されるデータの量を制限し、つまり、許容範囲基準を満たさないパルスについては、高精細度プロファイルのみが記憶される。
図12は、本教示によるVIO感知デバイスのBドットセンサによって捕捉されたパルスプロファイルを示す。これは、デューティサイクルが容認可能な許容範囲外であると診断された非定型パルスであった。特に、
図12は、5ミリ秒のウィンドウで、1マイクロ秒の分解能で単一パルスプロファイルを捕捉する例を提供している。
【0087】
上記の
図6~
図12に関して説明された検出データまたはRFスペクトルの統計分析および処理は、本教示の感知デバイス上でローカルに、または感知デバイスに接続されたコンピューティングリソース(例えば、PC)において遠隔で、行うことができることを理解されたい。
【0088】
上記を鑑みて、本教示は、プラズマ処理システムから放射されるRF信号を感知し、信号をRFスペクトルの形態で処理し、スペクトルを分析して複数の振幅および位相成分を決定し、統計分析を実行して、振幅および位相成分の変動に基づいてプラズマ処理システムの障害状態を識別するためのデバイスおよび方法を提供することが理解されよう。
【0089】
感知デバイスのセンサは、E場プローブ、Bドットプローブ、および/または光学RF検出器で構成される。E場プローブ(またはプローブのうちのいずれか)は、他のプローブのための基準として使用され得、時変電場を感知するために使用される。Bドットプローブと光学RF検出器とは、反応器内の時変電子の動きまたはプラズマ電流を感知するために使用される。個々のプローブは、プラズマシステムの周りの好適な場所に共同設置してもよいし、または分散配置してもよい。
【0090】
先行技術の設計とは異なり、感知装置は、スペクトルアナライザまたはネットワークアナライザに結合されていない。これらのアナライザは、高価で使用が面倒である。また、それらは、必要とされる先進的な検出機能を可能にしない。代わりに、信号処理ユニットが使用される。信号処理ユニットは、先行技術の遠隔RFプラズマセンサ設計では報告されていない、遠隔感知されたRFスペクトルに関する新しい情報を提供する。新規の測定値は、a)高調波位相、異なるセンサからのスペクトル間の位相、パルスRFおよび周波数調整プラズマプロセスにおけるスペクトル分析、アークのRMS検出、および個々のパルスRFプロファイルのRMS検出である。統計的手法は、既知の「正常な」プラズマプロセス条件のスペクトルフィンガープリントに基づいて説明されている。スペクトル成分の位相および振幅の変動が分析され、障害スコアは、各新しいプロセス測定値によって生じる。したがって、検出されたプロセス障害をユーザに警告するために、閾値を設定することができる。位相測定値は、プラズマの化学的性質およびプラズマのインピーダンスの小さな変化に特に高感度を示す。位相を測定する能力により、説明したように、本教示の感知デバイスは、例えば、標準技術が現在不十分である、低オープンエリアエンドポイント確定中に起こる微妙なプロセス変化を検出するための非常に有用な診断ツールとなる。
【0091】
本明細書には、a)時変E場センサ、b)時変磁場センサ、およびc)時変光強度センサを使用して、プラズマ処理システムから放射されるRFスペクトルを感知する3つの手段が提供されている。本教示による感知デバイスは、同時にかつ同期的に、先行技術の設計によって提供されない追加のデータチャンネルを提供する、これらの3つのメカニズムまたはそれらの対を通して、放射されたRFスペクトルの非侵襲的感知を提供する。
【0092】
発明は、本明細書に記載の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく補正または改変することができる。
【外国語明細書】