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特開2022-99319有機親水性ナノろ過における可変的な自己制御型透過液再循環
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099319
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】有機親水性ナノろ過における可変的な自己制御型透過液再循環
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/58 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
B01D61/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021206853
(22)【出願日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】20216292.1
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】トマス クエル
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス クノッサーラ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト フランケ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ドレース
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック グルス
(72)【発明者】
【氏名】マルク シャペルトンス
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ホッケルマン
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006HA61
4D006JA53Z
4D006KA16
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA56
4D006KE02Q
4D006KE03Q
4D006KE07Q
4D006KE08Q
4D006KE16Q
4D006MA03
4D006MA06
4D006MC03
4D006MC12
4D006MC16
4D006MC18
4D006MC23
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC39
4D006MC47
4D006MC49
4D006MC53
4D006MC54
4D006MC57
4D006MC58
4D006MC62
4D006MC63
4D006MC65
4D006PA01
4D006PB20
4D006PB70
(57)【要約】      (修正有)
【課題】膜ユニットを用いて、触媒を含む液体混合物から1つの成分を連続的に分離する改良されたプロセスの制御及びプロセス技術を提供する。
【解決手段】得られた全透過液F-4流の少なくとも部分が、供給容器B-1及び/又は供給容器を介して、搬送装置の上流に再循環されることである。特に、均一に溶解された触媒を液体反応混合物からの分離に用いることができる。供給容器は、膜ステージF-1へ混合液を供給する。供給容器から、混合液は供給ポンプP-1によって、膜モジュールM-1に導かれ、そこで膜分離が行われる。その後、膜モジュールから、排出バルブV1及び全透過液を介して保持液F-3を取り出す。その後、全透過液は、膜ステージ及び膜ユニットから排出バルブV2を介して全体の透過液の部分を排出F-5することによって分割され、透過液F-6の他の部分は、再循環バルブV3を介して供給容器に再循環される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜ユニットを用いて、1つの液体混合物から1つの成分を連続的に分離するプロセスであって、少なくとも1つの膜ステージを含み、かつ前記混合物をフィードとして供給するプロセスであって、以下の:
1つの膜ステージは、少なくとも、搬送装置、1つ以上の膜モジュール、及び前記搬送装置の上流に接続された供給容器からなり、かつ、前記供給容器からの前記混合物は、前記搬送装置によって前記1つ又は複数の膜モジュールに供給され、それにより、分離される成分は、各前記膜モジュールに供給される混合物と比較して、前記各膜モジュールの結果として生じる透過液流では枯渇し、前記各膜モジュールの結果として生じる保持液流においては濃縮されるか、又はその逆であり、
最後の膜ステージで得られた全透過液流を分割し、かつ、前記全透過液流の1つの部分である、再循環透過液は前記供給容器及び/又は前記供給容器の下流であって前記搬送装置の上流に再循環され、かつ、前記全透過液流の他の部分である排出透過液は最後の膜ステージから透過側の膜ユニット外に排出され、ここで、前記再循環透過液の前記供給容器への再循環及び/又は前記供給容器の下流であって前記搬送装置の上流は前記搬送装置ではなく油圧式に、すなわち前記膜ユニットの透過液側と前記搬送装置又は前記供給容器の吸引側との間に存在する圧力差によって、前記供給容器及び/又は前記供給容器の下流で前記搬送装置の上流に再循環される、
プロセス。
【請求項2】
膜ユニットへの供給、排出される透過液、及び膜ユニットからの保持液から選択される3つの流れのうちの1つの質量流量は、先行する流れ又は下流のプロセス工程によって予め決定され、3つの流れのうちの他の流れが、目標値に制御される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
再循環される透過液の質量流量は、排出される透過液の質量流量の関数として、変動し、かつ、調節される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
保持液側の圧力及び/又は透過液側の圧力、あるいは得られる膜透過圧(TMP)かつ、場合によっては、膜モジュール温度を制御して、全透過液流量の所定量を得る、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
排出される透過液の質量流量及び透過液圧力がともに、調節可能なフロー抵抗器によって各々制御される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
排出される透過液の質量流量は、供給容器の充填レベルに直接的又は間接的に依存するか、好ましくは連続的な制御を受け、ここで、前記制御は、前記供給容器の充填レベルに対する所定の設定値を基準にすると、前記供給容器の充填レベルが増加すると排出される前記透過液の質量流量が増大し、前記供給容器の充填レベルが減少すると前記排出される透過液の質量流量が減少する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
保持液側圧力(retentate pressure)が、フィードが1つ以上の膜モジュールに供給されるフィード装置、及び場合によっては、さらなるアクチュエータ、例えば前圧レギュレータ、又は圧力計と調節可能なフロー抵抗器の組み合わせ、特に保持液側のバルブによって制御される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
保持液側質量流量(retentate mass flow)が、少なくとも質量流量計と調節可能なフロー抵抗器、好ましくはバルブからなる補助役側質量流量制御装置を介して、又は質量流量計と搬送装置の組み合わせによって制御される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
成分は、反応混合物から分離された均一系触媒である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
搬送装置はポンプである、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
膜ユニットを用いて、液体反応混合物から均一系触媒を連続的に分離するプロセスであって、少なくとも1つの膜ステージを含み、かつ、反応ゾーンから由来する均一系触媒を含む反応混合物がフィードとして供給され、ここで、
1つの膜ステージは、少なくとも、搬送装置、1つ以上の膜モジュール、及び搬送装置の上流に接続された供給容器からなり、ここで、前記供給容器からの反応混合物は、前記搬送装置によって前記1つ又は複数の膜モジュールに供給され、それにより、前記均一系触媒は、各前記膜モジュールに供給される混合物と比較して、前記各膜モジュールの結果として生じる透過液流では枯渇し、前記各膜モジュールの結果として生じる保持液流において濃縮され、
得られた全透過液流を分割し、かつ、前記全透過液流の1つの部分である再循環透過液は前記供給容器及び/又は前記供給容器の下流であって前記搬送装置の上流に再循環され、かつ、前記全透過液流の他の部分である排出透過液は少なくとも1つの前記膜ステージから透過側の膜ユニット外に排出される、
プロセス。
【請求項12】
反応混合物は、均一系触媒反応が行われる反応ゾーンから採取される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
均一系触媒反応は、酸化、エポキシ化、ヒドロホルミル化、ヒドロアミノ化、ヒドロアミノメチル化、ヒドロシアン化、ヒドロカルボキシル化、ヒドロキシカルボニル化、ヒドロカルボキシアルキル化、アルコキシカルボニル化、アルコキシカルボニル化、アミノ化、アンモノキシ化、オキシメーション、ヒドロシリル化、エトキシ化、プロポキシル化、カルボニル化、テロメライズ、メタセス、鈴木カップリング及び水素化の反応の群から選択される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
均一系触媒反応は、ヒドロホルミル化である、請求項13に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜ユニットを用いて、1つの液体混合物から1つの成分を連続的に分離するプロセスの制御及びプロセス技術に関する改良に関する。当該改良は、得られた全透過液流の少なくとも部分が、供給容器及び/又は供給容器を介して、搬送装置の上流に再循環されることである。本開示のプロセスは、特に、均一に溶解された触媒を液体反応混合物からの分離に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
例えば、均一に溶解した触媒を反応混合物から分離するための膜分離法の原理は先行技術において公知である。ここでは、例として、特許文献1を例示する。
【0003】
この種の膜分離法の制御技術の改良については、既に報告がある。例えば、特許文献2は、反応混合物から均一に溶解した触媒を分離する膜分離プロセスが開示されており、膜分離ユニットの保持液流量と膜分離ユニットの保持液流量の2つの制御パラメータを制御技術的に一定に維持することで、変動する操作条件、特に反応ゾーンから生じる反応混合物の体積流量の変動が補償される。
【0004】
上記の制御パラメータを一定に保つため、特許文献2では、保持液の流量を調節するための、又は一定に維持するための、フロー抵抗器、及び保持液量を調節するための、又は保持を一定に維持するための、オーバーフロー回路内の温度及び/又は圧力の制御が提案されている。
【0005】
そこで提案されたプロセスの問題点の1つは、膜分離ユニットの保持を一定に保つことはすべてのプロセスにとって好都合ではなく、むしろ、工場の処理能力や既に設置されている膜分離ユニットの膜領域を考慮すると、プロセス中の膜分離ユニットの保持の最適化、しばしば最大化が必要であることである。特許文献2に記載されているようなフロー抵抗器による制御では、既に設置されている膜面が最適な膜透過圧力では操作されず、それより低い圧力で操作される可能性がある。さらに、特許文献2に記載されたプロセスでは、システムの所定の総処理量及び結果として生じる排出された透過液流(透過液流のうち透過液側で膜分離ユニットの外に導かれる部分)において、排出された透過液流を考慮した単純な質量バランスに基づく総透過液流及びそれから生じる再循環透過液流(膜分離ユニットの中に再循環される総透過液流の部分)が可能なもの及び/又は望ましいものよりも小さい場合がありうる。
【0006】
特許文献2に記載のプロセスのさらなる欠点は、透過液側で定数制御システムを得るために、透過液用の容器及びポンプの両方を提供することである。しかしながら、透過液を透過液用容器からオーバーフロー循環やフィードタンクに送るためのポンプを設けることは、例えば調達又は運転、保守及び修理のためのプラント在庫やコストの増加に関連し、さらにプラントの故障、ひいては生産の損失をもたらす可能性がある。
【0007】
さらに、容器を設置すると、通常、膜分離ステージの透過液側の部分が油圧で満たされないため、特に毒性のある液体を用いる場合には、安全上のリスクが高まる可能性がある。さらに、供給容器のほかに透過液側に容器があると、2つの容器レベルの制御によって反対側の容器が変動する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2014/131623号
【特許文献2】国際公開第2014/183952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、混合物から成分を連続的に分離するための、好ましくは反応混合物から均一系触媒を連続的に分離するための、より費用対効果の高いプロセスを提供することである。さらに、本発明が解決しようとするさらなる課題は、混合物から成分を連続的に分離するプロセス、好ましくは反応混合物から均一系触媒を連続的に分離するプロセスにおいて、設置された膜領域が、負荷条件が異なっても最適に利用され、例えば、保持液量又は収率を最大化できる、自己制御型透過液再循環を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
根本的な課題は、請求項1に記載のプロセスによって解決されうる。好ましい態様及び実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明によるプロセスは、膜ユニットを用いて、1つの液体混合物から1つの成分を連続的に分離するプロセスであって、少なくとも1つの膜ステージを含み、かつ前記混合物をフィードとして供給するプロセスであって:
1つの膜ステージは、少なくとも、搬送装置、1つ以上の膜モジュール、及び搬送装置の上流に接続された供給容器からなり、かつ、前記供給容器からの前記混合物は、前記搬送装置によって前記1つ又は複数の膜モジュールに供給され、それにより、分離される成分は、各前記膜モジュールに供給される混合物と比較して、前記各膜モジュールの結果として生じる透過液流では枯渇し、前記各膜モジュールの結果として生じる保持液流においては濃縮されるか、又はその逆であり、
最後の膜ステージで得られた全透過液流を分割し、かつ、前記全透過液流の1つの部分である、再循環透過液は前記供給容器及び/又は前記供給容器の下流であって前記搬送装置の上流に再循環され、かつ、前記全透過液流の他の部分である排出透過液は最後の膜ステージから透過側の膜ユニット外に排出され、ここで、前記再循環透過液の前記供給容器への再循環及び/又は前記供給容器の下流であって前記搬送装置の上流は前記搬送装置ではなく油圧式に、すなわち前記膜ユニットの透過液側と前記搬送装置又は前記供給容器の吸引側との間に存在する圧力差によって、前記供給容器及び/又は前記供給容器の下流で前記搬送装置の上流に再循環される。
【0012】
本発明の文脈における用語「分離される成分」は、その比率及び/又は透過性に応じてより少なく膜を透過することが意図される成分、すなわち、膜によって保持される成分を意味する。このように、分離される成分には、特定の各膜モジュールに対して正の保持力がある。また、分離される成分は、単一の特定の化学物質及びプロセス技術的な観点から共通の文脈で考えられる化学物質群であってよい。
【0013】
本発明の文脈における「膜ユニット」とは、分離される成分を含む液体混合物が供給される膜分離ユニット全体に関する。膜ユニットは、少なくとも1つの膜ステージからなる。下流の処理工程又は精製工程、及び容器から排出された透過液の保管は、定義上、膜ユニットの一部ではない。
【0014】
用語「膜ステージ」は、膜ユニットの少なくとも1つの部分を意味し、少なくとも1つの搬送装置、例えばポンプ、及び1つ以上の膜モジュールを含む。単一の膜ステージの場合、膜ユニットと膜ステージの用語「膜ユニット」及び「膜ステージ」は同義に理解される。膜ステージには、搬送装置の上流に供給容器があり、そこに液体混合物、例えば均一系触媒反応からの流出物が導入され、そこから1つ以上の膜要素に供給される。また、再循環された透過液を供給容器に供給することもできる。さらに、又は、あるいは、再循環された透過液が供給容器に供給されず、供給容器の下流であって搬送装置の上流、すなわち供給容器と搬送装置との間の導管内のある地点に供給されてもよい。
【0015】
本発明を説明するために用いられる用語「膜モジュール」は、膜ステージの技術的なサブユニットを意味する。
したがって、膜モジュールは、1つ以上の膜要素の相互接続である。膜モジュールは、膜ループ又は膜ラックとして設計することができる。膜ループは、少なくとも1つの膜要素と少なくとも1つの搬送装置が存在し、それによって移動するオーバーフロー循環が形成されるサブユニットを意味する。一方、用語「膜ラック」は、少なくとも1つの膜要素が存在するが、搬送装置がなく、その結果、移動するオーバーフロー循環が発生しないことを特徴とするサブユニットを意味する。
【0016】
本発明の文脈における用語「膜要素(膜エレメント)」は、膜又は膜を含む、物質の所望の分離が実際に行われる構造又は装置を意味し、すなわち、成分が混合物から分離されるか又は均一系触媒が反応溶液から分離される。例えば、工業用膜分離の多くの用途で用いられている、いわゆるスパイラルワインド要素であってよい。
【0017】
本発明は、最後の膜ステージで得られた全透過液流を、のみを、再循環される透過液と排出される透過液に分割することに基づく。膜ステージが1つしかない場合、この1つの膜ステージは最後の膜ステージでもある。膜ステージが2つ以上ある場合、最初の膜ステージでは分割が行われず、全透過液の流れは完全に次の膜ステージに供給される。そして、最後の膜の膜ステージでのみ、上記の分割が行われる。本発明の文脈における用語「分割」は、全透過液の量又は質量流量にのみ関連し、明示的には、全透過液からさらなる成分を除去するいかなる追加の分離工程も意味せず、すなわち、例えば、蒸留も抽出も結晶化もせず、さらなる膜分離工程もないことを意味する。
【0018】
本発明によるプロセスの1つの利点は、最後の膜ステージの全透過液流の1つの部分、すなわち再循環される透過液が、膜ステージ及び/又は膜ユニットを離れず、その後、例えば透過液容器を介して戻されるだけで、少なくとも一つの膜ステージ及び/又は膜ユニット内に留まり、そこから供給容器に戻されるか、及び/又は供給容器の下流だが搬送装置の上流に再循環という点である。負荷に応じて透過液の再循環を制御しているため、透過液をオーバーフロー循環や供給容器に戻す下流ポンプが不要である。透過液の供給容器への再循環、及び/又は供給容器の下流かつ供給装置の上流への再循環は、したがって供給装置によってではなく、油圧式、すなわち膜ユニットの透過液側と供給装置又は供給容器の吸引側との間に存在する圧力差によって行われる。換言すれば、透過液側と供給容器との間には、さらなる搬送装置、特にポンプがない。
【0019】
透過液の流出を制御するために、透過液側に少なくとも1つの調節可能なフロー抵抗器が存在し、それを介して透過液の質量流量を制御することができる。本発明でいう「フロー抵抗器」とは、流れの質量流量を制御することができるアクチュエータのことで、例えばバルブがこれに該当する。さらに好ましい実施形態では、少なくとも2つの調節可能なフロー抵抗器、好ましくは正確に2つの調節可能なフロー抵抗器が透過液側に存在し、この抵抗器によって、排出される透過液の質量流量、ならびに透過液圧力、特に母線の圧力を調節することができる。フロー抵抗器は特にバルブである。
【0020】
最後の膜ステージの全透過液流のうち、透過液側の膜ステージと膜ユニットの外に排出される部分、すなわち排出される透過液は、後続のプロセス工程に供給しうる。本発明の文脈における用語「プロセス工程」は、いかなる後続のプロセス、例えば、さらなる処理又は精製プロセス工程又はそれらの組み合わせを意味すると理解することができる。これには、特に分離された成分の(さらなる)反応、蒸留、蒸発等の公知のプロセスによる精製が含まれる。また、その後の充填工程や搬送工程であってよい。その後の処理工程の前に、適当な容器、例えば透過液容器にあらかじめ保存されてもよい。透過液容器が存在する場合、本発明による全透過液の分割は、透過容器の上流で行われ、排出された透過液のみが透過液容器に到達する。場合によっては、事前の保存を介したいくつかのプロセス工程、例えば精製、次いで精製成分の反応、反応生成物の追加精製を連続して行いうることが理解される。
【0021】
本発明の膜分離プロセスによれば、膜ユニットへの供給物の質量流量は、膜ユニットから導出された透過液流及び/又は保持液流の質量流量に対応する安定した外部質量バランスが得られる。この状況を利用することができる。本発明の好ましい実施形態では、膜ユニットへの供給、透過液の除去、及び膜ユニットからの保持液から選択される3つの流れのうちの1つの流れの質量流量は、上流又は下流のプロセス工程によって予め決定され、前記3つの流れのうちの他の流れは、例えば、例えば一定の保持液流量、一定の保持液に対する供給量の比率等の目標値にむけて制御される。また、この結果、外部質量バランスにより、上記3つのフローのうち3つ目のフローとなる。膜モジュールのサイズや数によって、スケール、つまり絶対質量流量を場合によっては、幅広く調節しうる。好ましい実施形態では、供給質量流量に対する保持液質量流量の比率は、1~99%、好ましくは10~90%、特に好ましくは15~80%である。さらに好ましい実施形態では、全透過液の質量流量に対する排出される透過液の質量流量の比率は、1~99%、好ましくは30~98%、特に好ましくは60~97%である。本発明の文脈における「プロセス工程」は、プラント又はプロセスユニット、例えば透過液/保持液が用いられる上流又は下流の化学反応、さらなる分離工程、例えば薄膜蒸発又は蒸留等の熱分離、又は物流、すなわち特に上流又は下流のタンク貯蔵あるいは充填を意味する。上流工程は、特に連続的に行われ、この工程を介して、本膜分離プロセスに液体混合物が連続的に提供される。好ましくは、これらは連続的な化学反応、例えばヒドロホルミル化又はアルコキシカルボニル化であり、これらは以下に詳細に説明される。
【0022】
さらに、特に、バランスのとれた内部質量バランス(全透過液の質量流量は、再循環される透過液と排出される透過液の質量流量の合計に等しい)も存在する。本発明によれば、内部質量バランスは、好ましくは、外部質量バランスからほぼ独立しており、すなわち、外部質量バランスは、基本的に、内部質量バランスに対する下限を表すのみである。したがって、本発明によれば、再循環される透過液の質量流量は変動しうるため、排出される透過液の質量流量の関数として、好ましくは直接関数として、すなわち中間透過液容器がない状態で設定されることが好ましい。
これはまた、全透過液の質量流量が排出される透過液の質量流量より大きい場合、(ポンプ、フロー抵抗器、膜表面等に起因する)技術的制約にかかわらず、全透過液の質量流量を上記の外部質量バランスとは無関係に制御できることを意味する。
【0023】
そのため、全透過液の質量流量は、例えば(膜モジュールの)温度や混合物中の成分の濃度等の様々なパラメータに依存する。したがって、本発明の好ましい実施形態では、保持液側の圧力及び/又は透過液側の圧力、又は得られる膜透過圧(TMP=透過液側と保持液側の圧力差)及び、場合によっては、膜モジュール温度を制御することにより、全透過液流量を最適化するか、又は全透過液流量の所望の量を得る。
【0024】
本発明による膜分離プロセスは、制御技術の観点から、制御される各変数、制御される変数に影響を与えるのに利用しうるアクチュエータ、及び制御優先順位に応じて、異なるプロセスで制御することができる。
本プロセスでは、様々な制御変数が存在し、例えば供給容器の充填レベル、保持液側及び透過液側の圧力、その差がもたらす膜透過圧(TMP)、保持液及び透過液の質量流量があり、これらは例えば搬送装置や1つ以上の調節可能なフロー抵抗器など、様々なアクチュエータによる影響をうけうる。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明による膜分離プロセスは、保持液及びTMPの質量流量が一定になるような制御技術の観点から調節される。この2つのパラメータには、制御優先度の正確な順序は希望に応じて設定することができ、結果として最も高い制御優先である。すなわち、保持液の質量流量は、最高の制御優先順位であり、TMPは、第2制御優先順位である。
【0026】
本発明のプロセスにおける(第1の)膜モジュールの質量流量は、例えば(第1の)膜ステージに用いられる搬送装置を介して、当業者に公知のプロセスで調節することができる。(第1の)膜ステージへの供給質量流量を調節するための正確な実施形態は可変であり、通常、技術的制約、例えば、選択されたポンプの型、供給速度、供給圧力等に依存する。例えば、速度によって直接制御されるポンプ、例えば、ギアポンプ、ピストンポンプ、ピストン透析ポンプ、又は場合によっては、多段遠心ポンプを用いて、供給質量流量の制御を実施しうるであろう。供給質量流量を制御する他の選択肢として、遠心ポンプと(制御)弁等の調節可能なフロー抵抗器を用いることもできる。さらなる選択肢としては、ポンプ、例えばギアポンプ、ピストンポンプ、ピストン透析ポンプ、遠心ポンプを、例えばポンプの吐出側から吸入側への調節しうる再循環流量ラインとの併用であろう。
【0027】
保持液側の圧力(保持液圧力)は、搬送装置及び/又は場合によっては、他のアクチュエータ、例えば供給圧力レギュレータによって制御することができる。本発明のプロセスにおける保持液圧力は、1~100バール、好ましくは10~80バール、より好ましくは30~60バールであってよい。保持液圧力はここでは透過側の圧力(透過圧)より大きい。ここで、浸透圧は、0~50バール、好ましくは0~10バール、より好ましくは1~5バールであってよい。好ましい実施形態では、存在するすべての膜モジュールにおける浸透圧は、近似(相互分散が10%以下)するか、又は同一である。
【0028】
本発明のプロセスにおける保持液圧力及び浸透圧の差によって形成される膜透過圧は、1~90バール、好ましくは10~80バール、さらに好ましくは30~60バールであってよい。膜ユニット又は個々の膜ステージは、少なくとも搬送装置及び圧力計を含む、保持液側の圧力制御を含むのが好ましく、保持液圧力は、圧力計に応じて調節することができる。ここで、保持液圧力は、例えば、搬送装置の搬送量を調節することにより、また、場合によっては、他のアクチュエータ、例えば、供給圧力レギュレータ、を用いて、測定された保持液圧力に応じて(圧力計によって)制御することができ、保持液圧力に対して予め設定された目標値に基づいて、保持液圧力が増加及び/又は上昇する場合に搬送装置の搬送量は減少し、保持液圧力が減少及び/又は低下する場合に搬送装置の搬送量は増加する。
【0029】
あるいは、保持液圧力は、圧力計と調節可能なフロー抵抗器、特に保持液側のバルブとの併用を介して制御されてよい。保持液圧力は、例えば、測定された保持液圧力(圧力計による)に応じて、バルブ位置により制御することができ、ここで、保持液圧力のために予め設定された目標値に基づいて、保持液圧力が増加及び/又は上昇する場合にバルブを開き、保持液圧力が減少及び/又は低下する場合にバルブをさらに閉じる。
【0030】
本発明によるプロセスでは、保持液の質量流量(保持液質量流量)は、好ましくは、少なくとも1つの質量流量計と、調節可能なフロー抵抗器、好ましくはバルブを備える保持液側の質量流量調節器によって制御される。保持液質量流量は、ここでは、測定した保持液質量流量の関数として質量流量コントローラーを調節することによって制御することができ、保持液質量流量について予め設定された目標値を参照して、保持液質量流量は、保持液質量流量が増加及び/又は上昇する場合、保持液質量流量レギュレータのバルブをさらに閉じ、保持液質量流量が減少及び/又は低下する場合、保持液質量レギュレータのバルブをさらに開く。そのため、保持液圧力は、膜ステージにかかる最小限の必要負荷と最大限の可能負荷の範囲内で自由に選択することができる。
【0031】
他の実施形態では、しかしながら、保持液質量流量は、質量流量計と搬送装置との併用によって制御されてよい。これにより、保持液質量流量は、例えば、保持液質量流量の測定値に応じて搬送装置の搬送量を調節することにより制御することができ、保持液質量流量の予め定められた目標値に基づいて、保持液質量流量が増加及び/又は上昇する場合には搬送装置の搬送量が減少し、保持液質量流量が減少及び/又は低下する場合には、搬送装置の搬送量が増加する。
【0032】
少なくとも搬送装置、又は調節可能なフロー抵抗器及び質量流量計を備える保持液側の質量流量制御用のセンサ及びアクチュエータ、並びに少なくとも搬送装置、又は調節可能なフロー抵抗器及び圧力計を備える保持液側の圧力制御用のセンサ及びアクチュエータは、保持液質量流量及び保持液圧力の2つの制御される変数を制御するため、制御技術の観点から、いかなる所望の方法で互いに接続することができる。保持液質量流量及び保持液圧力の2つの制御された変数の相互の優先順位は、本発明のプロセスにおいていかなる所望の選択をすることができる。保持液質量流量と保持液圧力(従ってTMP)の2つの制御された変数の優先度は、膜分離ステージにおける他のすべての制御された変数の優先度よりも高いことが好ましく、すなわち、最も速い応答挙動を示す。
【0033】
(最後の膜ステージから)排出された透過液の質量流量は、供給容器の充填レベルに直接的又は間接的に依存し、好ましくは、連続制御を受けることができるが、これは、供給容器の充填レベルについて予め設定された目標値に基づいて、好ましくは、最大可能な充填レベルの20%~80%、より好ましくは30%~70%である。排出された透過液の質量流量は、供給容器の充填レベルの上昇とともに増加し、供給容器の充填レベルの低下とともに減少する。このタイプの制御では、供給容器は完全には充填されないが、そうでなければ充填レベルが測定範囲の上端かそれ以上になることにより不明になるため、その結果、目標値に対する制御ができなくなるからである。排出された透過液の質量流量は、少なくとも1つの調節可能なフロー抵抗器を介して特に調節される。連続制御の場合、好ましくは、供給容器の充填レベルはそれによって一定に保たれる。供給容器の充填レベルに基づく制御原理は、例えば、供給容器内が低レベルになると、排出される透過液の質量流量はさらに減少し、場合によっては、それ以上透過液は排出されないという効果をもたらすであろう。
【0034】
供給物、保持液及び透過液の3つの流れの温度は、広範囲にわたって変化させることができる。供給物、保持液及び透過液の3つの流れの各温度は、互いに独立して、好ましくは-30~150℃、より好ましくは0~100℃、最も好ましくは20~80℃である。
【0035】
以下により詳細に説明する膜ユニットの構造も、本発明によるプロセスの上記制御工学的実施形態の実現に寄与する。
【0036】
混合物から成分を分離する本発明のプロセスで用いられる膜ユニットは、少なくとも1つの膜ステージを含む。あるいは、膜ユニットは、互いに直列に接続された複数の膜ステージを含んでよい。この場合、全透過液流は最後の膜ステージでのみ分割される。
【0037】
本発明のプロセスにおける膜ユニットの膜ステージは、上記定義によれば、搬送装置を備える。混合物が供給物として1つ以上の膜モジュールへ供給される搬送装置は、好ましくは、その供給量に関して調節可能である。1つ以上の膜モジュールへの供給の圧力は、1~100バール、好ましくは10~80バール、より好ましくは30~60バールであってよい。適当な搬送装置は、例えば、遠心ポンプ、ピストンポンプ、ピストン透析ポンプ、回転ピストンポンプ又はギアポンプ等の当業者に公知のポンプである。
【0038】
本発明による膜ユニットの膜ステージは、1つ以上の膜モジュールをさらに含む。理論的には、膜モジュールの数に上限はないが、一般的なプロセスパラメータと望ましい膜面積に依存する。好ましい実施形態では、膜ステージは複数の膜モジュールからなり、それらはさらに好ましくは直列に接続される。膜ユニットに到達した混合物は、(第1の)膜ステージに供給され、そこで搬送装置を用いて供給される1つ以上の膜モジュールに供給される。膜ステージでは、透過液と保持液に分離され、各膜モジュールから透過液が取り出される。
【0039】
膜モジュールが複数ある場合、膜モジュールの数に応じた数の透過液流が生成される。膜モジュールは、好ましくは、例えば、バスバーを介して、透過液側で互いに接続される。しかし、特に直列接続の場合、第1の膜モジュールからの保持液が次の膜モジュールに供給され、保持液からさらに透過液が分離され、次に、第2の膜モジュールの保持液が次の膜モジュールに供給されるか、膜モジュールが2つしかない場合は膜ステージ及び/又は膜ユニットの外に排出されるため、透過液の流れはただ1つしか得られない。
【0040】
本発明のプロセスによる膜ステージは、搬送装置の上流に供給容器を備え、当該供給容器から、供給物が、搬送装置によって、少なくとも2つの膜モジュールに供給される。膜ステージが1つの場合、膜ステージへの供給と膜ステージからの再循環された透過液がともに、少なくとも2つの膜モジュールへの供給として搬送装置により供給される前に、供給容器に導入され、そこで回収されてよい。膜ステージが複数ある場合、膜ステージへの供給及び次のステージの1つの保持液を、第1ステージの供給容器に回収することができる一方で、前の膜ステージの透過液を、次のステージの保持液又は、最後の膜ステージでは、再循環された透過液を、次のステージの供給容器に回収することができる。このような供給容器の構造及び仕様は、当業者に公知である。供給容器は、好ましくは、充填レベルの測定ユニットを備える。また、両変形例では、再循環された流れが各々、供給容器中に供給されず、むしろ供給容器を越えて、搬送装置の上流に供給されてもよい。
【0041】
膜ステージは、上記の、好ましい制御仕様を満たすことができるように、センサ及び/又はアクチュエータをさらに含んでよい。これらは、特に、温度、圧力、質量流量等のパラメータ用の測定及び/又は制御ユニットを含む。対応する測定ユニット及び制御ユニットは、当業者に公知である。
【0042】
本発明による膜モジュールは、そのうちの1つ又は複数が膜ステージに存在してもよく、1つ以上の膜要素を含んでいてよい。膜モジュールは、原則として、膜ループ又は膜ラックのいずれかとして設計されることができる。好ましくは、本発明による1つ又はそれ以上の膜ステージに存在する膜モジュールは、膜ループである。
【0043】
膜ループは、1つ以上の膜要素及び少なくとも1つの搬送装置を含む。好ましくは、膜ループは、ただ1つの搬送装置を含む。この搬送装置は、対応する膜ステージの搬送装置と同一ではなく、システム全体として少なくとも2つの搬送装置がある。膜ループの搬送装置は、通常、膜ループの循環に関与し、膜ステージの搬送装置は、通常、膜モジュール又は膜ループの加圧に関与する。用いられる搬送装置は、いかなる適当なポンプであってよい。このようなポンプは、当業者に公知である。膜ループ内の搬送装置として用いられるポンプは、好ましくは、遠心ポンプである。搬送装置により、移動するオーバーフロー循環が発生する。オーバーフロー循環は、理想的には、物質移動、従って膜の分離性能を改善する。オーバーフロー循環は、全体の制御概念及び外部及び内部質量バランスとは無関係に、設定することができる。
【0044】
膜ループは、また、温度、圧力差(軸方向の圧力損失)、循環速度等のパラメータの測定及び/又は制御ユニット、例えば、温度を調節するための加熱又は冷却システムを含むことができる。当業者には、当該測定及び制御ユニットは公知である。好ましい実施形態では、膜ステージに存在するすべての膜グループの圧力は、近似している(分散<10%)か、又は同一である。この少なくとも同程度の圧力は、特定の制御ユニットが存在しなくても設定することができるが、圧力レギュレータによって設定することもできる。透過液圧力の圧力調節器は、好ましくは、他のアクチュエータ、すなわち、透過液側の質量流の制御、保持液側の質量流の制御、及び保持液側の圧力の制御と比較して最も応答が遅い。
【0045】
上記の膜ループとは対照的に、膜ラックとして設計された膜モジュールには、搬送装置がなく、1つ以上の膜要素と、場合によっては、さらなる測定及び制御ユニットがあってよい。
【0046】
膜モジュール、好ましくは膜ループに存在する1又はそれ以上の膜要素は、工業利用用の予備製造された要素であり、膜を含み、それ以上は分割できない本発明による膜分離法の基本ユニットとみなすことができる。膜要素は、膜モジュール内でそのまま用いられてよく、あるいは、圧力ハウジング、例えば、圧力管内に配置されてもよい。個別に考慮される圧力管は、1つ以上の膜要素、好ましくは最大で5つの膜要素を含むことができる。膜要素が圧力ハウジング、好ましくは圧力管内に配置される場合、膜モジュールは、複数の圧力管を含んでよい。好ましくは、流れは、圧力管内に配置された膜要素を通って、供給物側又は保持液側で連続的に通過し、それらは、好ましくは、透過液側で接続される。膜要素として用いられうる基本ユニットは、当業者に公知のスパイラルワインド要素であってもよい。次いで、1つ以上のスパイラルワインド要素を圧力ハウジング、好ましくは圧力管内に存在させることができる。
【0047】
用いられる膜は、好ましくは、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、硝酸セルロース、再生セルロース、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズイミダゾロン、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、ポリプロピレン、末端又は側部が修飾された有機変性シロキサン、ポリジメチルシロキサン、シリコン、シリコンアクリレート、ポリフォスファゼン、ポリフェニルスルフィド、ポリベンズイミダゾール、ナイロン6,6(登録商標)、ポリスルホン、ポリアニリン、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート(PANGMA)、ポリトリメチルシリルプロピン、ポリメチルペンテン、ポリビニルトリメチルシラン、ポリフェニレンオキシド、α-アルミニウム酸化物、γ-アルミニウム酸化物、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、欧州特許第1 603 663に記載のシランで疎水化されたセラミック膜、例えば欧州特許第0 781 166に記載のPIM-1等の固有の微小孔(PIM)があるポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される物質を含む分離活性層を有するものがあげられる。上記物質は、補助剤の添加により分離活性層中で架橋された形態であってよく、又は充填剤、例えば、カーボンナノチューブ、金属有機フレームワーク又は中空球、及び無機酸化物又は無機繊維の粒子、例えば、セラミック繊維又はガラス繊維との混合マトリックス膜の形態であってよい。
【0048】
分離活性層として、特に好ましいのは、PIM-1等の固有の微小孔(PIM)があるポリマーから形成された、末端又は側部が有機修飾されたシロキサン、ポリジメチルシロキサン、シリコンアクリレート、又はポリイミドのポリマー層を有する膜、又は疎水化セラミック膜によって形成された分離活性層を用いることである。末端又は側部が有機修飾されたシロキサン又はポリジメチルシロキサンから形成された膜を用いることが、さらに特に好ましい。このような膜は、市販されている。
【0049】
上記の材料と同様に、膜は、さらなる材料を含んでよい。より詳細には、膜は、分離活性層が適用される支持体又は担体材料を含んでよい。支持体材料の選択は、欧州特許第0 781 166に記載されており、これには明示的な言及がなされている。
【0050】
特に好ましい実施形態では、記載されたプロセスは、均一系触媒の膜分離に用いられる。そして、分離される成分は均一系触媒であり、液体混合物は反応工程から得られた反応混合物である。
【0051】
したがって、本発明による特に好ましいプロセスは、膜ユニットを用いて、液体反応混合物から均一系触媒を連続的に分離するプロセスであって、少なくとも1つの膜ステージを含み、かつ、反応ゾーンから由来する均一系触媒を含む反応混合物がフィードとして供給されるプロセスである。ここで、
1つの膜ステージは、少なくとも、搬送装置、1つ以上の膜モジュール、及び搬送装置の上流に接続された供給容器からなり、ここで、前記供給容器からの反応混合物は、前記搬送装置によって前記1つ又は複数の膜モジュールに供給され、それにより、前記均一系触媒は、各前記膜モジュールに供給される混合物と比較して、前記各膜モジュールの結果として生じる透過液流では枯渇し、前記各膜モジュールの結果として生じる保持液流において濃縮され、
得られた全透過液流を分割し、かつ、前記全透過液流の1つの部分である再循環透過液は前記供給容器及び/又は前記供給容器の下流であって前記搬送装置の上流に再循環され、かつ、前記全透過液流の他の部分である排出透過液は少なくとも1つの前記膜ステージから透過側の膜ユニット外に排出される。
【0052】
反応混合物は、各プロセスに適する反応ゾーン、好ましくは1つ以上の適当な反応容器に由来する。少なくとも大部分の均一系触媒を含有する保持液流は、好ましくは、触媒の事前精製及び/又は後処理の後に、反応ゾーン、特に反応容器に再循環される。反応ゾーンからの質量流量は、製造関連の事情により変化しうるため、上記の制御及びプラント関連の機能は、均一系触媒の分離にも用いることができる。
【0053】
従って、反応ゾーン、好ましくは1又は複数の反応容器において、均一系触媒反応が行われる。当該反応としては、
酸化、エポキシ化、ヒドロホルミル化、ヒドロアミノ化、ヒドロアミノメチル化、ヒドロシアン化、ヒドロカルボキシル化、ヒドロキシカルボニル化、ヒドロカルボキシアルキル化、アルコキシカルボニル化、アルコキシカルボニル化、アミノ化、アンモノキシ化、オキシメーション、ヒドロシリル化、エトキシ化、プロポキシル化、カルボニル化、テロメライズ、メタセス、鈴木カップリング及び水素化があげられる。
【0054】
好ましくは、ヒドロホルミル化である。ヒドロホルミル化が優先される。ヒドロホルミル化は特に、炭素原子が、3~15個、好ましくは8~12個のオレフィンのヒドロホルミル化である。ヒドロホルミル化は、好ましくは、触媒系が反応混合物の液相に(完全に)溶解される均一系触媒ヒドロホルミル化である。ヒドロホルミル化の触媒系は、好ましくは、元素周期律表の第8族又は第9族からの遷移金属及び少なくとも1つの有機リン含有配位子を含む。元素の周期律表(PSE)のグループと少なくとも1つの有機リン含有配位子を有する。好適には、リン含有リガンドは当業者には公知であるが、好ましくは、単座リン含有配位子、例えばトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトである。
【0055】
特に、遷移金属としては、鉄、ルテニウム、イリジウム、コバルト又はロジウム、好ましくはコバルト又はロジウム、特に好ましくはロジウムを用いてよい。触媒活性種としては、通常、金属原子の(配位子)-カルボニル錯体が議論されるが、これは液体反応混合物中高温高圧下で形成される。
【0056】
ヒドロホルミル化は、溶媒の存在下で行うことができ、その場合、溶媒はヒドロホルミル化法と相溶性の良いものであればよい。ヒドロホルミル化の溶媒としては、当業者に公知の適当な溶媒を用いることができ、例えばアルカン、芳香族炭化水素、水、エーテル、エステル、ケトン、アルコール、及びアルデヒド及びアルデヒドの縮合物等のヒドロホルミル化の反応又は副生成物等があげられる。
【0057】
さらに、ヒドロホルミル化は10~400バール、好ましくは15~270バールの圧力で行うことができる。ヒドロホルミル化における温度は、70~250℃、好ましくは100~200℃、より好ましくは120~160℃であってよい。
【0058】
本発明は、以下の図によって説明され、特定の実施形態が示される。これらの図は、単なる例示にすぎず、限定的であるとみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】1つの膜ステージを含む膜ユニットの例示的な構造を示す図である。膜ステージは、ここでは、供給容器(B-1)、ポンプ(P-1)及び膜モジュール(M-1)から構成される。供給容器(B-1)は、膜ステージ(F-1)への供給として混合液を供給する。供給容器(B-1)から、液体混合物は、供給ポンプ(P-1)(F-2)によって、膜モジュール(M-1)(例えば、膜ループ)に導かれ、そこで実際の膜分離が行われる。その後、膜モジュール(M-1)から、排出バルブ(V-1)及び全透過液(F-4)を介して保持液(F-3)を取り出す。その後、全透過液(F-4)は、膜ステージ及び膜ユニットから排出バルブ(V-2)を介して全体の透過液の部分を排出する(F-5)ことによって分割され、透過液(F-6)の他の部分は、再循環バルブ(V-3)を介して供給容器(B-1)に再循環される。
図2】1つの膜ステージと複数の膜モジュールを含む膜ユニットの例示的な構造を示す図である。膜ステージは、供給容器(B-1)、ポンプ(P-1)及び2つの膜モジュール(M-1/M-2)から構成される。供給容器(B-1)は、膜ステージ(F-1)への供給として混合液を供給する。供給容器(B-1)から、液体混合物は、供給ポンプ(P-1)(F-2)によって供給され、第1の膜モジュール(M-1)(例えば、膜ループ)に供給される。ここで、この場合、最初の膜分離が起こる。膜モジュール(M-1)から、第1の膜モジュールの保持液(F-3)と第1の膜モジュールの透過液(F-4)が取り出される。保持液(F-3)は第2の膜モジュール(M-2)に供給され、そこでさらに膜分離が起こり、第2の膜モジュール(M-2)から透過液(F-8)と保持液(F-7)が生じる。残留物(F-7)は排出バルブ(V-1)を介して排出される。2つの膜モジュール(M-1/M-2)からの2つの透過液(F-4/F-8)を組み合わせて全透過液(F-14)を得た後、分割する。その結果、全透過液(F-5)の部分を、排出バルブ(V-2)を介して除去し、透過液(F-6)の他の部分を、再循環バルブ(V-3)を介して供給容器(B-1)に再循環させることができる。
図3】2つの膜ステージを含む膜ユニットの例示的な構造を示す図である。膜ステージは各々、供給容器(B-1/B-2)、ポンプ(P-1/P-2)、膜モジュール(M-1/M-2)で構成される。供給容器(B-1)は、膜ステージ(F-1)への供給として混合液を供給する。供給容器(B-1)から、液体混合物(F-2)は、供給ポンプ(P-1)によって、膜モジュール(M-1)(例えば、膜ループ)に供給され、そこで膜分離が行われる。膜モジュール(M-1)から、第1の膜ステージからの全透過液(F-4)と保持液(F-3)は、その後、排出バルブ(V-1)を介して取り出される。第1の膜モジュール(M-1)からの透過液(F-4)は、第2の膜ステージ用の供給容器(B-2)に供給され、それからポンプ(P-2)によって第2の膜ステージ(M-2)の膜モジュール(M-2)に供給(F-9)され、そこでさらに膜分離が行われる。第2の膜ステージの膜モジュール(M-2)から、第2の膜ステージ(M-2)から全透過液(F-11)と保持液(F-10)が除去される。保持液(F-10)はその後、排出バルブ(V-4)を介して第1の膜ステージの供給容器(B-1)に供給される。全体の透過液(F-11)は膜モジュール(M-2)を出た後に分割され、その結果、透過液(F-12)の一部は排出バルブ(V-5)を介して除去され、透過液(F-13)の他の部分は再循環弁バルブ(V-6)を介して第2の膜ステージ(M-2)の供給容器(B-2)に再循環される。
図4】基本的に図1に対応する、すなわち、1つの膜ステージのみを含むが、対象とする質量バランスを説明するための追加のマーキングを含む図である。本明細書における用語「質量バランス」は、2つの基本的な仮定に基づいて用いられる。最初の関連する仮定は、システムが定常状態のシステムであるということである。これは、今回の場合、物質の混合物の蓄積は経時的には膜ユニット内で起こらないが、一時的な変動はせいぜい起こり得ることを意味する。したがって、系内の総質量は時間に関係なく同じままである。同時に、2番目の仮定は、本発明に関する質量バランス回路では反応は起こらないということである。これは、総質量だけでなく、個々の成分の質量も同じままであることを意味する。 外部総合質量バランスは、図4の点線による。原料F-1の質量流量は、残留物F-3の質量流量と透過液F-5の質量流量の合計、すなわちF-1 = F-3 + F-5の合計に等しい。
【0060】
図4の膜ステージM-1のまわりに二つの点線があるボックスに基づく内部総合質量バランスは、対応して定義される:供給F-2の質量フローは、残留物F-3の質量フローと全体の透過液F-4の質量フローの合計、すなわち、F-2 = F-3 + F-4の質量フローの合計に等しい。
【0061】
従って、外部質量バランスの2つのス流れを指定する場合、外部質量バランスをもたらすのは3番目の流れである。従って、3つのス流れのうち2つだけを独立して決定するか、又は外部から制御することができる。ここで注意すべきことは、外部質量バランスは常に内部質量バランスの少なくとも一つの流れを規定するということであるが、内部質量バランスについても状況は同じである。従って、全体としては、外部質量バランスの流れを2つと、内部質量バランスの流れをさらに1つだけ固定することができる。それ以外の流れはすべて、結果として生じる。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】