(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099324
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】発酵果汁を含有する柑橘風味アルコール飲料
(51)【国際特許分類】
C12G 3/024 20190101AFI20220627BHJP
C12G 3/04 20190101ALI20220627BHJP
C12G 3/06 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C12G3/024
C12G3/04
C12G3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207233
(22)【出願日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020212614
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】307027577
【氏名又は名称】麒麟麦酒株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】魏 丹丹
(72)【発明者】
【氏名】池田 聡
(72)【発明者】
【氏名】小川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】増崎 瑠里子
(72)【発明者】
【氏名】茶木 香保里
(72)【発明者】
【氏名】小田井 英陽
(72)【発明者】
【氏名】熊田 紀子
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 桂子
(72)【発明者】
【氏名】長谷田 圭亮
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115AG17
4B115LG03
4B115LH01
4B115LH03
4B115LH11
4B115LH12
4B115LP02
4B115MA03
4B115MA04
(57)【要約】
【課題】酸味が緩和された柑橘風味アルコール飲料の提供。
【解決手段】発酵果汁を含んでなる、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵果汁を含んでなる、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料。
【請求項2】
非発酵柑橘果汁を含有するものである、請求項1に記載の柑橘風味アルコール飲料。
【請求項3】
発酵果汁および非発酵柑橘果汁を含んでなる、柑橘風味アルコール飲料。
【請求項4】
前記発酵果汁が、酵母、乳酸菌および酢酸菌からなる群から選択される少なくとも一種の微生物による発酵産物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の柑橘風味アルコール飲料。
【請求項5】
前記発酵果汁が、柑橘果汁およびリンゴ果汁から選択される少なくとも一種の果汁の発酵産物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の柑橘風味アルコール飲料。
【請求項6】
前記発酵果汁のアルコール濃度が、1v/v%未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の柑橘風味アルコール飲料。
【請求項7】
前記発酵果汁の原料として用いられる前記柑橘果汁が、レモン果汁およびグレープフルーツ果汁から選択される少なくとも一種の果汁である、請求項1~6のいずれか一項に記載の柑橘風味アルコール飲料。
【請求項8】
前記発酵果汁に由来するアセトアルデヒドの濃度が0.00244ppm以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の柑橘風味アルコール飲料。
【請求項9】
柑橘の果皮由来成分を含有するものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の柑橘風味アルコール飲料。
【請求項10】
アセトアルデヒドを含んでなる、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料。
【請求項11】
非発酵柑橘果汁を含有するものである、請求項10に記載の柑橘風味アルコール飲料。
【請求項12】
添加するアセトアルデヒドの濃度が、柑橘風味アルコール飲料に対して0.05ppm以上である、請求項10または11に記載の柑橘風味アルコール飲料。
【請求項13】
4-ケトイソホロンを含んでなる、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料。
【請求項14】
非発酵柑橘果汁を含有するものである、請求項13に記載の柑橘風味アルコール飲料。
【請求項15】
添加する4-ケトイソホロンの濃度が、柑橘風味アルコール飲料に対して0.01ppb以上である、請求項13または14に記載の柑橘風味アルコール飲料。
【請求項16】
酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料における酸味を緩和する方法であって、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、発酵果汁を添加することを含んでなる、方法。
【請求項17】
酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料における酸味を緩和する方法であって、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、アセトアルデヒドを添加することを含んでなる、方法。
【請求項18】
酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料における酸味緩和、苦味緩和、またはアルコール感のマスキングに用いるための香味改良剤であって、アセトアルデヒドを含んでなる、香味改良剤。
【請求項19】
酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料における酸味を緩和する方法であって、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、4-ケトイソホロンを添加することを含んでなる、方法。
【請求項20】
酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料における酸味緩和、苦味緩和、またはアルコール感のマスキングに用いるための香味改良剤であって、4-ケトイソホロンを含んでなる、香味改良剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵果汁を含有する柑橘風味アルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、クエン酸はレモン、ミカン等の柑橘類に多く含まれる(例えば、レモン1個あたり1350mg)。柑橘系アルコール含有飲料においては、柑橘系果汁、あるいはクエン酸等の酸味料を使用することにより、香味が調整される。しかしながら、クエン酸自体は酸味が強いため、クエン酸を飲料として摂取する場合、飲用として嗜好的に困難であるという問題がある(特許文献1)。
【0003】
これまで、クエン酸含有飲料において、特定の割合でコハク酸ナトリウムまたはフマル酸ナトリウムを配合させることにより(特許文献1)、炭酸水素ナトリウム(重曹)を配合することにより(特許文献2)、クエン酸の酸味を低減させ、これにより嗜好性の向上を図る方法が報告されている。しかしながら、その効果は十分とはいえず、クエン酸含有飲料の風味が悪くなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-83号公報
【特許文献2】特許第4777916号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、柑橘風味アルコール飲料に発酵果汁を添加することにより、酸味が緩和されることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
【0006】
従って、本発明は、酸味が緩和された柑橘風味アルコール飲料を提供する。
【0007】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)発酵果汁を含んでなる、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料。
(2)非発酵柑橘果汁を含有するものである、前記(1)に記載の柑橘風味アルコール飲料。
(3)発酵果汁および非発酵柑橘果汁を含んでなる、柑橘風味アルコール飲料。
(4)前記発酵果汁が、酵母、乳酸菌および酢酸菌からなる群から選択される少なくとも一種の微生物による発酵産物である、前記(1)~(3)のいずれかに記載の柑橘風味アルコール飲料。
(5)前記発酵果汁が、柑橘果汁およびリンゴ果汁から選択される少なくとも一種の果汁の発酵産物である、前記(1)~(4)のいずれかに記載の柑橘風味アルコール飲料。
(6)前記発酵果汁のアルコール濃度が、1v/v%未満である、前記(1)~(5)のいずれかに記載の柑橘風味アルコール飲料。
(7)前記発酵果汁の原料として用いられる前記柑橘果汁が、レモン果汁およびグレープフルーツ果汁から選択される少なくとも一種の果汁である、前記(1)~(6)のいずれかに記載の柑橘風味アルコール飲料。
(8)前記発酵果汁に由来するアセトアルデヒドの濃度が0.00244ppm以上である、前記(1)~(7)のいずれかに記載の柑橘風味アルコール飲料。
(9)柑橘の果皮由来成分を含有するものである、前記(1)~(8)のいずれかに記載の柑橘風味アルコール飲料。
(10)アセトアルデヒドを含んでなる、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料。
(11)非発酵柑橘果汁を含有するものである、前記(10)に記載の柑橘風味アルコール飲料。
(12)添加するアセトアルデヒドの濃度が、柑橘風味アルコール飲料に対して0.05ppm以上である、前記(10)または(11)に記載の柑橘風味アルコール飲料。
(13)4-ケトイソホロンを含んでなる、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料。
(14)非発酵柑橘果汁を含有するものである、前記(13)に記載の柑橘風味アルコール飲料。
(15)添加する4-ケトイソホロンの濃度が、柑橘風味アルコール飲料に対して0.01ppb以上である、前記(13)または(14)に記載の柑橘風味アルコール飲料。
(16)酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料における酸味を緩和する方法であって、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、発酵果汁を添加することを含んでなる、方法。
(17)酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料における酸味を緩和する方法であって、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、アセトアルデヒドを添加することを含んでなる、方法。
(18)酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料における酸味緩和、苦味緩和、またはアルコール感のマスキングに用いるための香味改良剤であって、アセトアルデヒドを含んでなる、香味改良剤。
(19)酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料における酸味を緩和する方法であって、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、4-ケトイソホロンを添加することを含んでなる、方法。
(20)酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料における酸味緩和、苦味緩和、またはアルコール感のマスキングに用いるための香味改良剤であって、4-ケトイソホロンを含んでなる、香味改良剤。
【0008】
本発明によれば、柑橘風味アルコール飲料における酸味が緩和される。例えば、本発明によれば、発酵果汁の使用により、柑橘風味アルコール飲料において、果汁もしくは酸味料由来の鋭い酸味を緩和し、まろやかさとボディ感を付与することが可能である。さらに、本発明によれば、発酵果汁の使用により、果皮由来の苦味や、果汁含有量が低い場合におけるアルコールの辛さ・バーニング感のマスキング効果も得ることが可能である。また、本発明によれば、発酵果汁の使用により、柑橘風味アルコール飲料を飲用したときに果実の自然な味わいや深みが感じられ、食事との相性がよくなるという効果を得ることも可能である。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明において「アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度以上の飲料を意味する。
【0010】
本明細書において、「ppm」は「mg/L」と同義であり、「ppb」は「μg/L」と同義である。
【0011】
本発明に用いられる発酵果汁は、果汁を微生物による発酵に供して得られるものであればよく、特に制限されるものではない。発酵処理に用いられる微生物としては、好ましくは酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae)、乳酸菌および酢酸菌からなる群から選択される少なくとも一種の微生物とされる。本発明の好ましい実施態様によれば、本発明に用いられる発酵果汁は、好ましくは柑橘果汁またはリンゴ果汁の発酵産物とされる。柑橘果汁の発酵産物は、好ましくはレモン果汁および/またはグレープフルーツ果汁の発酵産物とされる。
【0012】
このような発酵果汁は、例えば、特開平9-191861号公報の記載に従って製造することができる。
【0013】
本発明に用いる発酵果汁のアルコール濃度は、好ましくは1v/v%未満とされる。発酵度合を制御して、アルコール濃度を1v/v%未満とすることにより、本発明の効果をより発揮することができる。
【0014】
本発明の柑橘風味アルコール飲料は、上述の発酵果汁を含むものであり、これにより、酸味が緩和される。このような飲料は、柑橘風味アルコール飲料の原料に上述の発酵果汁を添加することにより製造することができる。本発明のさらに別の態様によれば、柑橘風味アルコール飲料における酸味を緩和する方法が提供され、該方法は、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、発酵果汁を添加することを含む。
【0015】
柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量(つまり添加量)は、特に制限されるものではなく、その飲料の種類や、所望の効果の程度に応じて、当業者により適宜決定される。例えば、当業者であれば、様々な濃度で発酵果汁を含有する飲料のサンプルを実際に調製し、各サンプルについて所望の効果を確認することにより、その飲料に最適な発酵果汁の量を見出すことができる。
【0016】
本発明の好ましい実施態様によれば、柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量は、該発酵果汁に含まれるアセトアルデヒド濃度に換算した場合に、アセトアルデヒド濃度として0.00244ppm以上とされる。ここで、発酵果汁の含有量・添加量をアセトアルデヒドの量に換算する理由は、発酵果汁の原料となる発酵原料と溶媒との量の比率によって有効成分の濃度が異なり、このような濃度の違いにかかわらず有効成分の量を反映した指標を定義するためである。つまり、発酵原料の量と発酵度合いに比例すると考えられるアセトアルデヒドの濃度は、有効成分の量に比例するものと考えられる。従って、本発明においては、発酵果汁の含有量・添加量を、該発酵果汁に含まれるアセトアルデヒドの量に換算して示す。本発明のさらに好ましい実施態様によれば、柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量は、該発酵果汁に含まれるアセトアルデヒドの量に換算して、0.00261ppm以上、さらに好ましくは0.00413ppm以上、さらに好ましくは0.0261ppm以上、さらに好ましくは0.0488ppm以上、さらに好ましくは0.0522ppm以上、さらに好ましくは1.305ppm以上、さらに好ましくは2.065ppm以上とされる。本発明の柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量の上限は特に制限されるものではなく、添加量が多ければそれだけ強い効果が得られる。しかし、あえて上限を設けるとすれば、柑橘風味アルコール飲料の香味のバランスに鑑み、発酵果汁に含まれるアセトアルデヒドの量に換算して50ppmとしてもよく、好ましくは30ppm、より好ましくは20ppmとされる。
【0017】
本発明の柑橘風味アルコール飲料中のアセトアルデヒドの濃度は、n-ブタノールを内部標準物質として用いるGC分析により測定することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。GC条件の例を下記表1に示す。
【0018】
【0019】
本発明の好ましい別の実施態様によれば、柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量は、該発酵果汁に含まれる2-フェノキシエタノール濃度に換算した場合に、2-フェノキシエタノール濃度として0.0466ppm以上となる量とされる。ここで、発酵果汁の含有量・添加量を2-フェノキシエタノールの量に換算する理由は上述のアセトアルデヒドと同様である。つまり、発酵原料の量と発酵度合いに比例すると考えられる2-フェノキシエタノールの濃度は、有効成分の量に比例するものと考えられる。従って、本発明においては、発酵果汁の含有量・添加量を、該発酵果汁に含まれる2-フェノキシエタノールの量に換算して示す。本発明のさらに好ましい別の実施態様によれば、柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量は、該発酵果汁に含まれる2-フェノキシエタノールの量に換算して、0.06ppm以上、さらに好ましくは0.08ppm以上とされる。本発明の柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量の上限は特に制限されるものではなく、添加量が多ければそれだけ強い効果が得られる。しかし、あえて上限を設けるとすれば、柑橘風味アルコール飲料の香味のバランスに鑑み、発酵果汁に含まれる2-フェノキシエタノールの量に換算して23ppmとしてもよく、好ましくは5ppm、より好ましくは1ppmとされる。
【0020】
本発明の好ましい別の実施態様によれば、柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量は、該発酵果汁に含まれるシトロプテン濃度に換算した場合に、シトロプテン濃度として0.5133ppm以上となる量とされる。ここで、発酵果汁の含有量・添加量をシトロプテンの量に換算する理由は上述のアセトアルデヒドと同様である。つまり、発酵原料の量と発酵度合いに比例すると考えられるシトロプテンの濃度は、有効成分の量に比例するものと考えられる。従って、本発明においては、発酵果汁の含有量・添加量を、該発酵果汁に含まれるシトロプテンの量に換算して示す。本発明のさらに好ましい別の実施態様によれば、柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量は、該発酵果汁に含まれるシトロプテンの量に換算して、0.6733ppm以上、さらに好ましくは0.7133ppm以上、さらに好ましくは0.7666ppm以上とされる。本発明の柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量の上限は特に制限されるものではなく、添加量が多ければそれだけ強い効果が得られる。しかし、あえて上限を設けるとすれば、柑橘風味アルコール飲料の香味のバランスに鑑み、発酵果汁に含まれるシトロプテンの量に換算して1000ppmとしてもよく、好ましくは500ppm、より好ましくは200ppmとされる。
【0021】
本発明の好ましい別の実施態様によれば、柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量は、該発酵果汁に含まれる4-ケトイソホロン濃度に換算した場合に、4-ケトイソホロン濃度として0.0000116ppb以上となる量とされる。ここで、発酵果汁の含有量・添加量を4-ケトイソホロンの量に換算する理由は上述のアセトアルデヒドと同様である。つまり、発酵原料の量と発酵度合いに比例すると考えられる4-ケトイソホロンの濃度は、有効成分の量に比例するものと考えられる。従って、本発明においては、発酵果汁の含有量・添加量を、該発酵果汁に含まれる4-ケトイソホロンの量に換算して示す。本発明のさらに好ましい別の実施態様によれば、柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量は、該発酵果汁に含まれる4-ケトイソホロンの量に換算して、0.000232ppb以上、さらに好ましくは0.01ppb以上、さらに好ましくは0.02ppb以上、さらに好ましくは0.03ppb以上とされる。本発明の柑橘風味アルコール飲料における発酵果汁の含有量・添加量の上限は特に制限されるものではなく、添加量が多ければそれだけ強い効果が得られる。しかし、あえて上限を設けるとすれば、柑橘風味アルコール飲料の香味のバランスに鑑み、発酵果汁に含まれる4-ケトイソホロンの量に換算して1ppmとしてもよい。
【0022】
本発明の柑橘風味アルコール飲料中の2-フェノキシエタノールおよびシトロプテンの濃度は、GC x GC-TOFMS分析により測定することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。GC x GC-TOFMS分析条件の例を下記表2に示す。本発明の柑橘風味アルコール飲料中の4-ケトイソホロンの濃度も同じ方法によって測定することができる。
【0023】
【0024】
本発明の別の態様によれば、アセトアルデヒドを含んでなる、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または、アセトアルデヒドおよび非発酵柑橘果汁を含んでなる、柑橘風味アルコール飲料が提供される。かかる柑橘風味アルコール飲料は、アセトアルデヒドを所定の濃度となるように添加することにより、柑橘風味アルコール飲料における酸味が緩和される。さらに、かかる柑橘風味アルコール飲料は、アセトアルデヒドを所定の濃度となるように添加することにより、果皮由来の苦味が緩和され、および/またはアルコール感(アルコールの辛さ・バーニング感)がマスキングされる。このような飲料は、アセトアルデヒドの添加量を調整することにより製造することができる。アセトアルデヒドの添加量調整は、アセトアルデヒドを柑橘風味アルコール飲料に添加することにより行ってもよいし、あるいは、アセトアルデヒドを含有する原料を柑橘風味アルコール飲料に配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。
【0025】
上述の、アセトアルデヒドを含んでなる、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または、アセトアルデヒドおよび非発酵柑橘果汁を含んでなる、柑橘風味アルコール飲料において、添加するアセトアルデヒドの濃度は、柑橘風味アルコール飲料に対して、好ましくは0.05ppm以上とされ、より好ましくは0.5ppm以上とされ、さらに好ましくは3ppm以上とされ、さらに好ましくは5ppm以上とされ、さらに好ましくは50ppm以上とされる。また、アセトアルデヒドの濃度の上限値は特に限定されるものではないが、柑橘風味飲料の嗜好性の観点から、例えば、アセトアルデヒドについては100ppmとすることができる。
【0026】
本発明の別の態様によれば、4-ケトイソホロンを含んでなる、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または、4-ケトイソホロンおよび非発酵柑橘果汁を含んでなる、柑橘風味アルコール飲料が提供される。かかる柑橘風味アルコール飲料は、4-ケトイソホロンを所定の濃度となるように添加することにより、柑橘風味アルコール飲料における酸味が緩和される。さらに、かかる柑橘風味アルコール飲料は、4-ケトイソホロンを所定の濃度となるように添加することにより、果皮由来の苦味が緩和され、および/またはアルコール感(アルコールの辛さ・バーニング感)がマスキングされる。このような飲料は、4-ケトイソホロンの添加量を調整することにより製造することができる。4-ケトイソホロンの添加量調整は、4-ケトイソホロンを柑橘風味アルコール飲料に添加することにより行ってもよいし、あるいは、4-ケトイソホロンを含有する原料を柑橘風味アルコール飲料に配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。
【0027】
上述の、4-ケトイソホロンを含んでなる、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または、4-ケトイソホロンおよび非発酵柑橘果汁を含んでなる、柑橘風味アルコール飲料において、添加する4-ケトイソホロンの濃度は、柑橘風味アルコール飲料に対して、好ましくは0.01ppb以上とされ、より好ましくは0.03ppb以上とされ、さらに好ましくは0.1ppb以上とされ、さらに好ましくは0.5ppb以上とされる。また、4-ケトイソホロンの濃度の上限値は特に限定されるものではないが、柑橘風味飲料の嗜好性の観点から、例えば、4-ケトイソホロンについては1ppmとすることができる。
【0028】
本発明のさらに別の態様によれば、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または非発酵柑橘果汁を含んでなる柑橘風味アルコール飲料における酸味を緩和する方法が提供され、該方法は、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、アセトアルデヒドを添加することを含む。
【0029】
本発明のさらに別の態様によれば、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または、非発酵柑橘果汁を含んでなる柑橘風味アルコール飲料における苦味を緩和する方法が提供され、該方法は、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、アセトアルデヒドを添加することを含む。
【0030】
本発明のさらに別の態様によれば、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または、非発酵柑橘果汁を含有する柑橘風味アルコール飲料におけるアルコール感をマスキングする方法が提供され、該方法は、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、アセトアルデヒドを添加することを含む。
【0031】
本発明のさらに別の態様によれば、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または非発酵柑橘果汁を含んでなる柑橘風味アルコール飲料における酸味を緩和する方法が提供され、該方法は、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、4-ケトイソホロンを添加することを含む。
【0032】
本発明のさらに別の態様によれば、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または、非発酵柑橘果汁を含んでなる柑橘風味アルコール飲料における苦味を緩和する方法が提供され、該方法は、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、4-ケトイソホロンを添加することを含む。
【0033】
本発明のさらに別の態様によれば、酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または、非発酵柑橘果汁を含有する柑橘風味アルコール飲料におけるアルコール感をマスキングする方法が提供され、該方法は、該柑橘風味アルコール飲料の製造過程において、4-ケトイソホロンを添加することを含む。
【0034】
本発明のさらに別の態様によれば、酸度が0.1%以上であるか、または、非発酵柑橘果汁を含有する柑橘風味アルコール飲料における酸味緩和、苦味緩和、またはアルコール感のマスキングに用いるための香味改良剤が提供され、該香味改良剤はアセトアルデヒドを含んでなる。本発明の香味改良剤は、酸度が0.1%以上であるか、または、非発酵柑橘果汁を含有する柑橘風味アルコール飲料に添加することにより、該柑橘風味アルコール飲料の酸味もしくは苦味を緩和し、またはアルコール感をマスキングすることができる。酸度が0.1%以上であるか、または、非発酵柑橘果汁を含有する柑橘風味アルコール飲料における本発明の香味改良剤の添加量は、上述の、アセトアルデヒドを含んでなる酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または、アセトアルデヒドおよび非発酵柑橘果汁を含んでなる柑橘風味アルコール飲料と同様である。
【0035】
本発明のさらに別の態様によれば、酸度が0.1%以上であるか、または、非発酵柑橘果汁を含有する柑橘風味アルコール飲料における酸味緩和、苦味緩和、またはアルコール感のマスキングに用いるための香味改良剤が提供され、該香味改良剤は4-ケトイソホロンを含んでなる。本発明の香味改良剤は、酸度が0.1%以上であるか、または、非発酵柑橘果汁を含有する柑橘風味アルコール飲料に添加することにより、該柑橘風味アルコール飲料の酸味もしくは苦味を緩和し、またはアルコール感をマスキングすることができる。酸度が0.1%以上であるか、または、非発酵柑橘果汁を含有する柑橘風味アルコール飲料における本発明の香味改良剤の添加量は、上述の、4-ケトイソホロンを含んでなる酸度が0.1%以上である柑橘風味アルコール飲料、または、4-ケトイソホロンおよび非発酵柑橘果汁を含んでなる柑橘風味アルコール飲料と同様である。
【0036】
本発明の飲料は柑橘風味飲料である。ここで「柑橘風味飲料」とは、飲用したときに柑橘類の風味を感じる飲料を意味する。柑橘風味飲料は、柑橘系フレーバーや柑橘果汁などの柑橘系香味成分を添加することによって得ることができる。ここでいう柑橘果汁は、上述の発酵果汁とは異なり、発酵処理されていない通常の果汁である。よって、このような通常の果汁を、以下「非発酵」果汁という。好ましい柑橘類の例としては、例えば、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、マンダリン、シークヮーサー、イヨカン、ブンダン、キンカン、ベルガモット、ライム、スダチ、カボス等が挙げられ、好ましくはレモンおよびグレープフルーツ、さらに好ましくはレモンとされる。本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の柑橘風味アルコール飲料はレモン風味アルコール飲料とされ、より好ましくは非発酵レモン果汁を含有する飲料とされる。また、本発明の柑橘風味アルコール飲料は、好ましくは柑橘の果皮由来成分を含有するものとされ、より好ましくはレモンの果皮由来成分を含有するものとされる。
【0037】
本発明の柑橘風味飲料の酸度は、0.1%以上が挙げられ、好ましくは0.1~2.0%、より好ましくは0.1~1.0%である。本発明の飲料の酸度は、飲料100mL中に含まれる酸の量をクエン酸に換算した場合のグラム数(g/100mLクエン酸換算、w/v%)で表すことができる。かかる酸度は、炭酸ガスを常法によって脱気した上、果実飲料の日本農林規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0038】
本発明の柑橘風味アルコール飲料のアルコール濃度は、特に制限されるものではないが、好ましくは1.0~20.0v/v%、より好ましくは1.0~10.0v/v%、さらに好ましくは3.0~9.0v/v%とすることができる。一つの実施態様によれば、飲料のアルコール濃度は5.0v/v%以上とされ、好ましくは5.0~20.0v/v%、より好ましくは5.0~10.0v/v%、さらに好ましくは5.0~9.0v/v%とされる。
【0039】
本発明の柑橘風味アルコール飲料は、飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、甘味料(例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等)、酸味料(例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、コハク酸またはそれらの塩類等)、色素、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)、穀物発酵エキス等を適宜添加することができる。
【0040】
本発明の柑橘風味アルコール飲料は、二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸飲料とすることができる。炭酸ガス圧は、好みに応じて適宜調整することができ、例えば、0.05~0.4MPa(20℃におけるガス圧)の範囲で調整することができる。
【0041】
本発明の柑橘風味アルコール飲料は、pHを、例えば、2.0~5.0、好ましくは2.3~4.0に調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができる。
【0042】
本発明の柑橘風味アルコール飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。本発明の柑橘風味アルコール飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0043】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明の柑橘風味アルコール飲料は、発酵果汁の添加以外は、通常の柑橘風味アルコール飲料の製造方法に従って製造することができる。例えば、まず、タンク中において、アルコールを含有した水溶液に、糖または甘味料、および柑橘系果汁もしくは柑橘系香料と共に酸味料を加えて香味を調整する。次いで、香味を整えた水溶液に炭酸ガスを加えて、炭酸ガス含有飲料を製造することができる。本発明の柑橘風味アルコール飲料は、このような製造過程のいずれかの段階で、発酵果汁を適宜加えることによって製造することができる。
【実施例0044】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
発酵果汁
発酵果汁としては、発酵レモン果汁A、発酵レモン果汁B、発酵グレープフルーツ(GF)果汁、および発酵りんご果汁を用意した。発酵レモン果汁A、発酵レモン果汁Bおよび発酵GF果汁は酵母発酵により得られた発酵果汁であり、発酵りんご果汁は乳酸菌発酵により得られた発酵果汁である。これら発酵果汁のアルコール濃度は、いずれも1v/v%未満であった。さらに、発酵果汁としては、発酵レモン果汁Cも用意した。発酵レモン果汁Cは酵母発酵により得られた発酵果汁であり、そのアルコール濃度は1v/v%未満であった。
【0046】
試飲サンプル
以下の実施例において、いずれの試飲サンプルも次の条件を満たすものとした:
・レモン果汁を、ストレート果汁に換算して表に示す濃度で添加、あるいは、クエン酸を表に示す濃度で添加;
・上記レモン果汁にはレモン果皮由来成分が含まれる;
・アルコール濃度:7v/v%;
・pH:2.4~3.0;
・炭酸ガス圧:0.18~0.22MPa;
・酸度:0.125%~0.77%。
【0047】
官能評価
官能評価は、十分に訓練された6名のパネラーによって行った。評価項目は、酸味の緩和効果、果皮由来の苦味の緩和効果およびアルコール感(すなわち、アルコールの辛さ・バーニング感)のマスキング効果の3項目とした。試飲サンプルの特徴として酸味が口内に蓄積しやすいため、試飲の際には、1つのサンプルを試飲した後、水で口直ししてから次のサンプルの試飲を行った。官能評価は、1(対照と同等)~5(非常に高い効果を感じる)の5段階のスコアで行い、評価結果は、6名のスコアの平均値±標準偏差として示した。
【0048】
実施例1:レモン果汁含有アルコール飲料における発酵レモン果汁の効果の確認
発酵レモン果汁Aおよび発酵レモン果汁Bをそれぞれ添加した、レモン果汁を含有する試飲サンプルを用意し、官能評価を行った。対照サンプルとしては、発酵果汁を添加しないサンプルを用意した。発酵果汁中のアセトアルデヒド濃度を、n-ブタノールを内部標準物質として用いる上記表1に示す条件でのGC分析により測定したところ、発酵レモン果汁A中のアセトアルデヒド濃度は26.1ppm、発酵レモン果汁B中のアセトアルデヒド濃度は41.3ppmであった。発酵レモン果汁Cについても同様に試験した。発酵レモン果汁C中のアセトアルデヒド濃度は24.4ppmであり、上記表2に記載の条件によるGCxGC TOFMSにより測定した4-ケトイソホロンの濃度は0.116ppbであった。結果を表3に示す。
【0049】
【0050】
表3から、2.5~10w/v%の広範囲のレモン果汁濃度を有するアルコール飲料サンプルにおいて、発酵レモン果汁は、用量依存的に酸味の緩和効果を示すことが分かった。また、苦味の緩和およびアルコール感のマスキングについても、同様に、発酵レモン果汁は、用量依存的に効果を示すことが分かった。
【0051】
さらに、6名のパネラーの一致したコメントとして、上記の発酵果汁を含有するアルコール飲料は、発酵果汁を含有しないアルコール飲料と比較して、「レモン感がある」、「口当たりがよい」、「自然な味わい」、「味に深みがある」、「からだにやさしい感じ」、「食事との相性がよくなる」などのコメントがなされた。
【0052】
実施例2:レモン果汁含有アルコール飲料における他の発酵果汁の効果の確認
実施例1とは異なる発酵果汁として、発酵グレープフルーツ(GF)果汁および発酵りんご果汁をそれぞれ添加した、レモン果汁を含有する試飲サンプルを用意し、官能評価を行った。上述のように、発酵GF果汁は酵母発酵により得られた発酵果汁であり、発酵りんご果汁は乳酸菌発酵により得られた発酵果汁である。対照サンプルとしては、発酵果汁を添加しないサンプルを用意した。結果を表4に示す。
【0053】
【0054】
表4から、他の発酵果汁についても、実施例1における発酵レモン果汁と同様の効果が認められることが分かった。また、発酵果汁の製造に用いられる微生物は、酵母および乳酸菌のいずれであってもよいことが明らかとなり、よって、広範囲の微生物が利用可能であることが示された。
【0055】
実施例3:レモン果汁含有アルコール飲料におけるアセトアルデヒドの効果の確認
アセトアルデヒドを表に示す濃度で添加したレモン果汁を含有する試飲サンプルを用意し、官能評価を行った。対照サンプルとしては、発酵果汁を添加しないサンプルを用意した。結果を表5に示す。
【0056】
【0057】
表5から、アセトアルデヒドを0.05ppm以上の濃度となるように添加したレモン果汁含有アルコール飲料サンプルにおいて、アセトアルデヒドは、用量依存的に酸味の緩和効果を示すことが分かった。また、苦味の緩和およびアルコール感のマスキングについても、同様に、アセトアルデヒドは、用量依存的に効果を示すことが分かった。
【0058】
実施例4:種々の発酵果汁を含んでなるレモン果汁含有アルコール飲料の成分の確認
発酵レモン果汁A、発酵レモン果汁B、発酵GF果汁、または発酵りんご果汁を、それぞれ0.15%の濃度で添加したレモン果汁を含有する試飲サンプルを用意した。対照サンプルとしては、発酵果汁を添加しないサンプルを用意した。上記表2に記載の条件によるGCxGC TOFMSにより測定したところ、各発酵果汁を含む試飲サンプル中には、シトロプテンおよび2-フェノキシエタノールが表6に示す濃度で含まれていた。
【0059】
【0060】
実施例5:クエン酸含有アルコール飲料における発酵レモン果汁の効果の確認
レモン果汁の代わりにクエン酸を含有するアルコール飲料に、発酵レモン果汁Aを添加した試飲サンプルを用意し、官能評価を行った。対照サンプルとしては、発酵果汁を添加しないサンプルを用意した。結果を表7に示す。
【0061】
【0062】
表7から、レモン果汁の代わりにクエン酸を含有するアルコール飲料においても、実施例1と同様の効果が認められることが分かった。よって、果汁を含まない柑橘風味アルコール飲料においても、発酵果汁の効果が同様に認められることが示された。
【0063】
実施例6:レモン果汁含有アルコール飲料における4-ケトイソホロンの効果の確認
4-ケトイソホロンを表に示す濃度で添加したレモン果汁を含有する試飲サンプルを用意し、官能評価を行った。対照サンプルとしては、発酵果汁を添加しないサンプルを用意した。結果を表8に示す。
【0064】
【0065】
表8から、4-ケトイソホロンを0.01ppb以上の濃度となるように添加したレモン果汁含有アルコール飲料サンプルにおいて、4-ケトイソホロンは、用量依存的に酸味の緩和効果を示すことが分かった。また、苦味の緩和およびアルコール感のマスキングについても、同様に、4-ケトイソホロンは、用量依存的に効果を示すことが分かった。