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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099345
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20220628BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20220628BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H02G3/04 037
H02G11/00
H02G3/04
B60R16/02 620A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213039
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】大塚 竜也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄基
(72)【発明者】
【氏名】丸山 崇
(72)【発明者】
【氏名】小槻 哲也
【テーマコード(参考)】
5G357
5G371
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD06
5G357DE02
5G357DE10
5G357DG01
5G357DG05
5G357DG06
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA01
5G371CA02
5G371CA03
(57)【要約】
【課題】レール部材にケースを固定する際の作業性を向上させることができる給電装置を提供する。
【解決手段】給電装置1は、ワイヤハーネスWHと、給電ケース2と、レール部材7に対して給電ケース2を係止する係止部12を有する。係止部12は、係止状態で、被係止部11の被係止側規制面32に対してスライド方向に対向する係止側規制面25aと、被係止部11を第1スライド方向に案内する案内面25bとを有する。係止状態となる際に、案内面25bが被係止部11に当接し被係止部11を第1スライド方向に案内しながら、係止部12が対向方向の一方に弾性変形しながら第2スライド方向に移動し被係止部11を乗り越えて弾性復帰することで被係止側規制面32に対して係止側規制面25aがスライド方向に対向し給電ケース2とレール部材7とを連結する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対してスライド方向にスライド自在に支持されたシートに設けられた電装部品に少なくとも給電を行う配索材と、
前記配索材の一部を収容するケース本体、及び、前記ケース本体に収容された前記配索材の他の一部を外部に導出する開口部を有するケースと、
前記開口部から導出された前記配索材の他の一部を保持するスライド部材を前記スライド方向にスライド自在に支持するレール部材と、
前記レール部材に対して前記ケースを固定する複数の固定構造と、を備え、
複数の前記固定構造のうちの一つは、
前記ケース本体の開口部及び前記レール部材の前記スライド方向の一方のレール端部のうちの一方に設けられた被係止部と、
前記開口部及び前記レール端部のうちの他方に設けられ、前記被係止部が係止される係止部と、を有し、
前記係止部は、
前記スライド方向と直交する直交方向から見た場合において、
前記被係止部が前記係止部に係止された係止状態で、前記被係止部に設けられた被係止側規制面に対して前記スライド方向に対向する係止側規制面と、
前記係止部の前記スライド方向のうち前記係止側規制面側の第1スライド方向と反対側の第2スライド方向に形成され、前記被係止部を前記第1スライド方向に案内する案内面と、を有し、
前記係止状態となる際に、前記案内面が前記被係止部に当接し前記被係止部を前記第1スライド方向に案内しながら、前記係止部および前記被係止部の一方が、前記直交方向のうち前記係止部と前記被係止部とが対向する対向方向の一方に弾性変形しながら前記スライド方向の一方に移動し前記被係止部及び前記係止部の他方を乗り越えて弾性復帰することで前記被係止側規制面に対して前記係止側規制面が前記スライド方向に対向し前記ケースと前記レール部材とを連結する、
ことを特徴とする給電装置。
【請求項2】
前記係止部は、前記係止状態において、
前記開口部から前記被係止部側に突出し、かつ前記ケース本体の幅方向に間隔を開けて形成される少なくとも一対の第1支持部と、
前記開口部から前記被係止部側に突出し、かつ前記被係止部を、一対の前記第1支持部との間で前記対向方向に挟持する第2支持部と、を有し、
前記第2支持部は、
前記被係止部側の端部から前記係止部側に延在し、前記被係止部側の端部を支点として前記対向方向に弾性変形するアーム部を有し、
前記アーム部は、
前記スライド方向及び前記対向方向と直交する幅方向から見た場合に、前記対向方向のうち前記被係止部側に突出して形成された係止突起を有し、
前記係止突起は、
前記係止部側に前記係止側規制面を有し、
前記被係止部側に前記案内面を有する、
請求項1に記載の給電装置。
【請求項3】
前記第1支持部は、前記係止状態において、
前記被係止部側の端部に形成され、かつ前記第1支持部と前記第2支持部との間の空隙が前記係止部側から前記被係止部側に向けて広がるように傾斜する傾斜面を有する、
請求項2に記載の給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、車体に固定されたスライドレール上をスライド自在に移動するスライドシートが搭載されている。スライドシートに電装部品を設けている場合、車両に搭載されたバッテリ等の電源から当該電装部品に電力を供給するために給電装置が用いられる。給電装置は、例えば、電源と電装部品とを電気的に接続するためのワイヤハーネスと、ワイヤハーネスの一部を収容する給電ケースとを備えている。給電装置は、スライドシートの移動に応じて、ワイヤハーネスが給電ケースに収容されたり、引き出されたりする構造を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-136810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、給電ケースから導出された配索材の一部を保持するスライド部材をスライド方向にスライド自在に支持するレール部材に対して、給電ケースを2箇所でボルト締め固定している。ボルト締め固定される2箇所のうちの一方は、給電ケース内から外部に配索材が挿通される開口部とレール部材のスライド方向の一方の端部との連結部にあり、一般的な締付け工具をボルトヘッドに装着するスペースが足りないことから、専用工具を用いて固定している。そのため、レール部材に給電ケースを固定する際の作業性について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、レール部材にケースを固定する際の作業性を向上させることができる給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る給電装置は、車体に対してスライド方向にスライド自在に支持されたシートに設けられた電装部品に少なくとも給電を行う配索材と、前記配索材の一部を収容するケース本体、及び、前記ケース本体に収容された前記配索材の他の一部を外部に導出する開口部を有するケースと、前記開口部から導出された前記配索材の他の一部を保持するスライド部材を前記スライド方向にスライド自在に支持するレール部材と、前記レール部材に対して前記ケースを固定する複数の固定構造と、を備え、複数の前記固定構造のうちの一つは、前記ケース本体の開口部及び前記レール部材の前記スライド方向の一方のレール端部のうちの一方に設けられた被係止部と、前記開口部及び前記レール端部のうちの他方に設けられ、前記被係止部が係止される係止部と、を有し、前記係止部は、前記スライド方向と直交する直交方向から見た場合において、前記被係止部が前記係止部に係止された係止状態で、前記被係止部に設けられた被係止側規制面に対して前記スライド方向に対向する係止側規制面と、前記係止部の前記スライド方向のうち前記係止側規制面側の第1スライド方向と反対側の第2スライド方向に形成され、前記被係止部を前記第1スライド方向に案内する案内面と、を有し、前記係止状態となる際に、前記案内面が前記被係止部に当接し前記被係止部を前記第1スライド方向に案内しながら、前記係止部および前記被係止部の一方が、前記直交方向のうち前記係止部と前記被係止部とが対向する対向方向の一方に弾性変形しながら前記スライド方向の一方に移動し前記被係止部及び前記係止部の他方を乗り越えて弾性復帰することで前記被係止側規制面に対して前記係止側規制面が前記スライド方向に対向し前記ケースと前記レール部材とを連結する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る給電装置は、レール部材にケースを固定する際の作業性を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る給電装置の概略構成を示す平面図である。
図2図2は、実施形態に係る給電装置の概略構成を示す側面図である。
図3図3は、実施形態に係る給電装置の概略構成を示す部分分解平面図である。
図4図4は、給電装置におけるケース本体の開口部とレール部材の端部との連結部の概略構成を示す部分斜視図である。
図5図5は、給電装置におけるケース本体の開口部とレール部材の端部との連結部の部分断面図である。
図6図6(A)~図6(C)は、レール部材側の被係止部に対してケース本体側の係止部が係止する係止過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る給電装置の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1及び図2に示す給電装置1は、例えば、自動車等の車両(不図示)に対してスライドレールユニット3と共に固定され、車両のスライドシート100に設けられた電装部品101に給電するものである。スライドレールユニット3は、車体とスライドシート100との間に介在し、車体に対してスライドシート100をスライド方向にスライド自在に支持するものである。スライド方向は、例えば、車両の前後方向である。電装部品101は、例えば、シートヒータ、スピーカ、液晶モニタ等で構成される。スライドレールユニット3は、一般的には、車両の幅方向に間隔をあけて一対で設けられる。なお、本実施形態では、一対のスライドレールユニット3における一方のみを説明し、他方のスライドレールユニット3についてはその説明を省略する。スライドシート100は、一対のスライドレールユニット3により支持される。本実施形態のスライドレールユニット3は、シート側スライド部材5と、レール部材7とを含んで構成される。
【0011】
ここで、図示のX方向は、スライドシート100及びシート側スライド部材5のスライド方向であり、かつ給電装置1のスライド方向とする。X方向のうち、X1方向を第1スライド方向、X2方向を第2スライド方向とする。Y方向は、本実施形態における給電装置1の幅方向とし、スライド方向と直交する方向である。Z方向は、給電装置1の上下方向とし、スライド方向および幅方向と直交する方向である。なお、スライド方向は、例えば、給電装置1が車体に固定された状態で、車両の前後方向に沿うものである。上下方向は、例えば、給電装置1が車体に固定された状態で、鉛直方向に沿うものである。
【0012】
シート側スライド部材5は、レール部材7に対してスライド方向にスライド自在に支持されており、レール部材7が車体に固定された状態で車両の前後方向にスライド移動する。シート側スライド部材5は、スライドシート100を支持しており、当該スライドシート100と共に、レール部材7上をスライド方向にスライド移動する。シート側スライド部材5は、レール部材7に組み付けられた状態で、スライド方向のいずれか一方に外力が加わると、外力の加圧方向側に移動する。シート側スライド部材5は、例えば、ロック機構(不図示)により、レール部材7の長手方向(スライド方向)における任意の位置での固定が可能となる。なお、図5に示すシート側スライド部材5は、簡略化されたものである。
【0013】
レール部材7は、スライド方向に延在して形成され、シート側スライド部材5をスライド方向にスライド自在に支持する。また、レール部材7は、スライド方向と直交する幅方向の移動を規制する。レール部材7は、例えば、鉄、ステンレス等の金属材料により構成される。レール部材7は、スライド方向から見た断面形状が、凹状に形成されている。レール部材7は、スライド方向の両端がそれぞれ開口し、一方の開口からシート側スライド部材5、及び、給電側スライド部材6が挿入される。レール部材7は、当該レール部材7のスライド方向の一方のレール端部30に形成された係止孔31を有する。
【0014】
係止孔31は、レール部材7の上下方向における下方側底面に形成され、上下方向(または厚み方向)に貫通している。係止孔31は、スライド方向と直交する上下方向から見た場合、図3図4に示すように、矩形状に形成されている。係止孔31は、被係止部11の一例であり、ケース本体20側の係止部12に係止される。係止孔31は、被係止部11が係止部12に係止された係止状態で、ケース本体20に設けられた係止部12の係止突起25が挿入される。係止孔31は、被係止部11が係止部12に係止された係止状態で、ケース本体20側に被係止側規制面32を有する。被係止側規制面32は、被係止部11が係止部12に係止された係止状態で、係止部12に設けられた係止側規制面25aに対してスライド方向に対向する。
【0015】
給電側スライド部材6は、給電ケース2から導出されるワイヤハーネスWHの一部を保持し、レール部材7に取り付けられるものである。給電側スライド部材6は、例えば、合成樹脂等により構成される。給電側スライド部材6は、レール部材7に対してスライド自在に支持され、当該レール部材7によりスライド方向と直交する直交方向における移動が規制される。給電側スライド部材6は、当該給電側スライド部材6及びシート側スライド部材5がレール部材7に対してスライド方向にスライド自在に支持された支持状態において、当該シート側スライド部材5に連結される。
【0016】
給電装置1は、図3に示すように、ワイヤハーネスWHと、給電ケース2とを含んで構成される。
【0017】
ワイヤハーネスWHは、配索材の一例であり、スライドシート100に設けられた電装部品101に給電を行うものである。ワイヤハーネスWHは、例えば、電線または複数の電線が束ねられた電線束である。電線は、複数本の導電性の金属素線からなる導体部(芯線)の外側を絶縁性の被覆部によって覆われたものである。ワイヤハーネスWHは、コルゲートチューブ、樹脂テープ、プロテクタ等の外装部材、固定具など種々の構成部品を含んで構成されている。本実施形態のワイヤハーネスWHは、少なくとも給電ケース2内に収容されている部分の断面形状が円形状を有し、当該ワイヤハーネスWHが有する剛性(復元性)によって給電ケース2内でJ字またはU字状に屈曲する。
【0018】
給電ケース2は、ワイヤハーネスWHの一部を収容し、スライドシート100の移動に伴うワイヤハーネスWHのたるみを吸収するものである。本実施形態の給電ケース2は、レール部材7に対して2種類の固定構造により2箇所で固定される。給電ケース2は、一方において、レール部材7のレール端部30に設けられた被係止部11に対して、ケース本体20のスライド方向の一方の端部(例えばX1方向側)から幅方向の一方に突出したオフセット部20aに形成された係止部12が係止することで、レール部材7に固定される。また、給電ケース2は、他方において、レール部材7の幅方向の一方の壁部に設けられたブラケット(不図示)と、ケース本体20のブラケット20bとを、ナットとボルトで締結することで、レール部材7に固定される。
【0019】
給電ケース2は、スライド方向と並行にレール部材に沿って配置され、レール部材7のスライド方向の一方の端部にスライド方向と直交する幅方向の一方にオフセットした状態で連結される。給電ケース2は、例えば、合成樹脂等により構成される。給電ケース2は、スライドレールユニット3に固定された状態で、車体に固定される。給電ケース2は、ケース本体20と、開口部21とを有する。
【0020】
ケース本体20は、内部にワイヤハーネスWHの一部を収容する部分である。例えば、アッパーケースと、ロアケースとで構成される。アッパーケースは、ロアケースに対して係止構造により係止される。アッパーケースおよびロアケースは、係止構造により係止された状態で、収容空間部を形成する。収容空間部は、ワイヤハーネスWHの一部が収容される。
【0021】
開口部21は、ケース本体20に設けられ、ケース本体20に収容されたワイヤハーネスWHの他の一部を外部に導出する部分である。開口部21は、スライドシート100のスライド移動に応じてワイヤハーネスWHの一部が出入りする部分である。開口部21は、ケース本体20のスライド方向の一方の端部(例えばX1方向側)から幅方向の一方に突出したオフセット部20aに形成され、第1スライド方向から第2スライド方向に向けて開口する。開口部21は、レール部材7に対して給電ケース2が固定された固定状態で、レール部材7の内部空間と連通する。開口部21は、一対の第1支持部22と、第2支持部23とを有する。
【0022】
一対の第1支持部22は、係止部12の一例であり、被係止部11が係止部12に係止された係止状態において、開口部21から被係止部11側に突出し、かつケース本体20の幅方向に間隔を開けて形成された部分である。一対の第1支持部22は、ケース本体20のオフセット部20aから第2スライド方向に突出して形成される。一対の第1支持部22は、被係止部11が係止部12に係止された係止状態で、レール部材7のレール端部30を下方向から上方向に支持する。一対の第1支持部22は、図5に示すように、スライド方向から見た断面形状が、上下方向の仮想線に対して略対称に形成される。各第1支持部22は、レール部材7の下方側底板の形状に合わせて段差状に形成される。各第1支持部22は、傾斜面22aを有する。
【0023】
傾斜面22aは、被係止部11が係止部12に係止された係止状態において、各第1支持部22の被係止部11側の端部に形成され、第1支持部22と第2支持部23との間の空隙が係止部12側から被係止部11側に向けて広がるように傾斜する。また、複数の傾斜面22aのうちの少なくとも一部は、被係止部11が係止部12に係止された係止状態となる際に、第1支持部22の被係止部11側の端部において、レール端部30と接触する可能性がある箇所に形成される。
【0024】
第2支持部23は、係止部12の一例であり、被係止部11が係止部12に係止された係止状態において、開口部21から被係止部11側に突出し、被係止部11を、一対の第1支持部22との間で、係止部12と被係止部11とが対向する対向方向に挟持する部分である。第2支持部23は、ケース本体20のオフセット部20aから第2スライド方向に突出して形成される。第2支持部23は、被係止部11が係止部12に係止された係止状態で、レール部材7のレール端部30を上方向から下方向に支持する。つまり、レール部材7は、被係止部11が係止部12に係止された係止状態において、レール端部30が一対の第1支持部22と第2支持部23との間に挟持される。第2支持部23は、一対の第1支持部22の幅方向の間に形成された空間と上下方向に対向して配置される。第2支持部23は、アーム部24を有する。
【0025】
アーム部24は、被係止部11が係止部12に係止された係止状態において、被係止部11側の端部から係止部12側に延在し、被係止部11側の端部を支点Pとして対向方向に弾性変形する部分である(図6の(A)~図6の(B))。アーム部24は、係止突起25を有する。
【0026】
係止突起25は、係止部12の一例であり、ケース本体20の幅方向から見た場合に、係止部12と被係止部11とが対向する対向方向のうち被係止部11側に突出して形成されている。係止突起25は、係止側規制面25aと、案内面25bとを有する。
【0027】
係止側規制面25aは、スライド方向と直交する直交方向から見た場合、被係止部11が係止部12に係止された係止状態において、被係止部11に設けられた被係止側規制面32に対してスライド方向に対向する。係止側規制面25aは、係止突起25の第1スライド方向側に形成されている。係止側規制面25aは、係止突起25の幅方向及び上下方向に平坦な面である。係止側規制面25aは、ケース本体20と第1スライド方向に対向して形成される。係止側規制面25aは、第2スライド方向から見た場合、矩形状を有する。
【0028】
案内面25bは、スライド方向と直交する直交方向から見た場合、被係止部11が係止部12に係止された係止状態において、係止突起25の第1スライド方向側の端部から第2スライド方向側に向けて被係止部11側と反対側に傾斜する傾斜面である。案内面25bは、被係止部11が係止部12に係止された係止状態で、被係止部11側に形成されている。案内面25bは、平坦な面で構成される。
【0029】
次に、レール部材7に対する給電ケース2の固定作業について説明する。給電装置1は、例えば、当該給電装置1の組立工場にて組み立てられ、車両の組立を行う車両工場に納品される。一方、スライドレールユニット3は、スライドレールユニット3の組立工場にて組立てられ、上記車両工場に納品される。なお、従来、給電装置1は、スライドレールユニット3の組立工場に納品され、スライドレールユニット3に組み付けられた後、車両工場に納品されている。そのため、車両工場では、給電装置1とスライドレールユニット3とがアッセンブリーされた状態で、車体に対して固定される。
【0030】
車両工場における組立作業者(以下、単に「作業者」とする)は、図3に示すように、ワイヤハーネスWHの一部を保持した給電側スライド部材6を、レール部材7の第1スライド方向の開口から挿入し、第2スライド方向に向けてスライド移動させる。このとき、シート側スライド部材5は、レール部材7のスライド方向における所定の位置(例えば、中央位置)に固定されているものとする。
【0031】
次に、作業者は、シート側スライド部材5に対して給電側スライド部材6を連結する。このとき、給電側スライド部材6及びシート側スライド部材5は、いずれもレール部材7に組み付けられた状態にある。
【0032】
次に、作業者は、レール部材7に対して給電ケース2を固定する。被係止部11に対して係止部12が係止された係止状態となる際に、まず係止突起25の案内面25bがスライド方向にレール端部30(ここではレール端部30は被係止部11の一例である)に当接しレール端部30を第1スライド方向に案内する(図6の(A))。
【0033】
次に、係止部12は、アーム部24が支点Pを中心に対向方向のうち被係止部11側と反対側に弾性変形しつつ第2スライド方向に移動する(図6の(B))。
【0034】
次に、係止突起25がレール端部30を乗り越えて係止孔31に挿入されて被係止部11側に弾性復帰する(図6の(C))。このとき、被係止側規制面32に対して係止側規制面25aがスライド方向に対向し、被係止部11と係止部12が係止状態になることで、給電ケース2とレール部材7とが連結される。
【0035】
次に、作業者は、レール部材7のブラケットに対して給電ケース2のブラケット20bをボルト・ナットで締結して、給電ケース2とレール部材7とを連結する。作業者は、給電装置1とスライドレールユニット3とを組み合わせた後、これらをアッセンブリーした状態で車体に取り付ける。
【0036】
以上のように、本実施形態における給電装置1は、ワイヤハーネスWHと、給電ケース2と、レール部材7に対して給電ケース2を係止する係止部12を有する。係止部12は、係止状態で、被係止部11の被係止側規制面32に対してスライド方向に対向する係止側規制面25aと、被係止部11を第1スライド方向に案内する案内面25bとを有する。係止状態となる際に、案内面25bが被係止部11に当接し被係止部11を第1スライド方向に案内しながら、係止部12が対向方向の一方に弾性変形しながら第2スライド方向に移動し被係止部11を乗り越えて弾性復帰することで被係止側規制面32に対して係止側規制面25aがスライド方向に対向し給電ケース2とレール部材7とを連結する。
【0037】
上記構成により、従来、レール部材7に給電ケース2を2箇所で固定する固定作業において、1箇所を専用工具で固定しなければならなかったが、当該箇所を簡易な固定構造に置き換えることで、レール部材7に給電ケース2を固定する際の固定作業を簡略化し作業性を向上させることができる。この結果、作業コストを削減することができる。また、レール部材7と給電ケース2を固定するために使用していたインサートナットとボルトを削減することができ、部品コストを削減することができる。また、専用工具を用意することなく、一般的な工具で固定作業が可能になることから、作業を行う場所が限定されず、組立部品を集約することが可能となり、輸送コストを削減することができる。
【0038】
また、給電装置1は、係止部12が、被係止部11を、一対の第1支持部22と第2支持部23とで対向方向に挟持するので、レール部材7に給電ケース2が固定された状態を維持しつつそれらを車体に取り付けることが可能となる。また、第2支持部23は、被係止部11側の端部を支点Pとして対向方向に弾性変形するアーム部24と、対向方向のうち被係止部11側に突出して形成された係止突起25とを有する。これにより、係止部12と被係止部11が係止状態となる際に、被係止部11が係止突起25を介してアーム部24を押し上げて係止突起25の係止孔31への挿入を容易にする。
【0039】
また、給電装置1は、第1支持部22が、被係止部11側の端部に傾斜面22aを有するので、係止部12と被係止部11が係止状態となる際に、第1支持部22と第2支持部23との間の空隙に対する被係止部11の挿入が容易になる。第1支持部22と第2支持部23との間への被係止部11の挿入が容易になることから、そのまま給電ケース2(またはレール部材7)を押し込むことで係止部12と被係止部11とが容易に係止状態となる。この結果、レール部材7に給電ケース2を固定する際の作業性を向上させることができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、係止部12は、ケース本体20側に設けられ、被係止部11は、レール部材7側に設けられているが、これらに限定されるものではない。例えば、係止部12がレール部材7側に設けられ、被係止部11がケース本体20側に設けられていてもよい。
【0041】
また、第1支持部22は、別体で形成されているが、これに限定されず、一体的に形成されていてもよい。また、第2支持部23は、係止部12を有し、アーム部24及び係止突起25を有するが、これに限定されず、第1支持部22がこれらを有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 給電装置
2 給電ケース
3 スライドレールユニット
5 シート側スライド部材
6 給電側スライド部材
7 レール部材
11 被係止部
12 係止部
20 ケース本体
20a オフセット部
20b ブラケット
21 開口部
22 第1支持部
22a 傾斜面
23 第2支持部
24 アーム部
25 係止突起
25a 係止側規制面
25b 案内面
30 レール端部
31 係止孔
32 被係止側規制面
100 スライドシート
WH ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6