(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099353
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】暖房便座装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/30 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
A47K13/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213052
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 唯
【テーマコード(参考)】
2D037
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AD03
2D037AD08
2D037AD16
(57)【要約】
【課題】コストを抑えた簡易な構成で便座を迅速且つ適切に昇温する。
【解決手段】便座を加熱する便座ヒータを備える暖房便座装置は、着座センサにより便座への使用者の着座が検知された場合、便座を所定の目標温度とするための必要熱量を、高出力で便座に出力するように便座ヒータを駆動する高出力制御を開始し、高出力制御中に便座とは異なる対象を加熱する加熱ヒータが駆動開始した場合、その駆動開始までに便座ヒータが出力した熱量に基づいて残りの必要熱量を計算し、その必要熱量を低出力で便座に出力するように便座ヒータを駆動する低出力制御に移行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座を加熱する便座ヒータを備える暖房便座装置であって、
前記便座ヒータと同時に駆動可能で前記便座とは異なる対象を加熱する加熱ヒータと、
前記便座への使用者の着座を検知する着座センサと、
前記着座センサにより前記便座への使用者の着座が検知された場合、前記便座を所定の目標温度とするための必要熱量を、高出力で前記便座に出力するように前記便座ヒータを駆動する高出力制御を開始し、前記高出力制御中に前記加熱ヒータが駆動開始した場合、該駆動開始までに前記便座ヒータが出力した熱量に基づいて残りの前記必要熱量を計算し、該必要熱量を低出力で前記便座に出力するように前記便座ヒータを駆動する低出力制御に移行する制御装置と、
を備える暖房便座装置。
【請求項2】
請求項1に記載の暖房便座装置であって、
前記制御装置は、前記低出力制御中に前記加熱ヒータが駆動停止した場合、該駆動停止までに前記便座ヒータが出力した熱量に基づいて残りの前記必要熱量を計算し、該必要熱量を高出力で前記便座に出力するように前記高出力制御に移行する
暖房便座装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の暖房便座装置であって、
前記制御装置は、前記便座ヒータが出力した熱量に基づいて残りの前記必要熱量を計算する場合、該必要熱量を小さくするように補正可能である
暖房便座装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の暖房便座装置であって、
前記便座の温度を検出する温度センサを備え、
前記制御装置は、前記着座センサにより前記便座への使用者の着座が検知された場合、前記温度センサにより検出される前記便座の温度と前記目標温度との差分に基づいて前記必要熱量を計算して前記高出力制御を開始し、前記高出力制御中および前記低出力制御中は前記必要熱量を出力するのに必要な駆動時間が経過した場合に、前記温度センサにより検出される前記便座の温度に基づいて前記目標温度で保温するように前記便座ヒータを駆動するフィードバック制御に移行する
暖房便座装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の暖房便座装置であって、
前記加熱ヒータは、人体の局部洗浄に用いられる洗浄水を瞬間的に加熱可能に構成されている
暖房便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の暖房便座装置としては、便座に設けられた加熱手段(ヒータ)と、便座への着座を検知する着座検知手段と、加熱手段の通電を制御する制御部とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この暖房便座装置では、着座検知手段とは別に人体検知手段を備えており、人体検知手段により人体を検知すると、予め決められた時間だけ加熱手段への電力供給量を人体を検知する前より増やして着座可能温度まで便座を昇温し、その後に着座部の温度を適温に到達させるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した暖房便座装置は、人体検知手段を備えるためコストの増加を招いてしまう。一方で、人体検知手段を備えずに、着座検知手段により着座を検知した際に加熱手段への電力供給量を増やして便座を迅速に昇温させることが考えられる。ただし、通常このような暖房便座装置は、局部洗浄時に噴出される洗浄水の加熱手段など他の加熱手段を備えており、便座の昇温中に他の加熱手段が駆動開始すると、電力消費が過大となりブレーカが落ちるなどの問題が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、コストを抑えた簡易な構成で便座を迅速且つ適切に昇温することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の暖房便座装置は、
便座を加熱する便座ヒータを備える暖房便座装置であって、
前記便座ヒータと同時に駆動可能で前記便座とは異なる対象を加熱する加熱ヒータと、
前記便座への使用者の着座を検知する着座センサと、
前記着座センサにより前記便座への使用者の着座が検知された場合、前記便座を所定の目標温度とするための必要熱量を、高出力で前記便座に出力するように前記便座ヒータを駆動する高出力制御を開始し、前記高出力制御中に前記加熱ヒータが駆動開始した場合、該駆動開始までに前記便座ヒータが出力した熱量に基づいて残りの前記必要熱量を計算し、該必要熱量を低出力で前記便座に出力するように前記便座ヒータを駆動する低出力制御に移行する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の暖房便座装置では、着座センサにより便座への使用者の着座が検知された場合、便座を所定の目標温度とするための必要熱量を、高出力で便座に出力するように便座ヒータを駆動する高出力制御を開始する。このため、着座センサ以外に使用者を検知する人体センサを備えない簡易な構成としても、暖房便座装置が使用される際に便座の温度を目標温度まで迅速に昇温することができる。また、高出力制御中に加熱ヒータが駆動開始した場合、駆動開始までに便座ヒータが出力した熱量に基づいて残りの必要熱量を計算し、必要熱量を低出力で便座に出力するように便座ヒータを駆動する低出力制御に移行する。このため、便座ヒータと加熱ヒータとの同時駆動により電力消費が過大となるのを抑制しつつ、便座を目標温度まで適切に昇温することができる。したがって、コストを抑えた簡易な構成で便座を迅速且つ適切に昇温することができる。
【0009】
本発明の暖房便座装置において、前記制御装置は、前記低出力制御中に前記加熱ヒータが駆動停止した場合、該駆動停止までに前記便座ヒータが出力した熱量に基づいて残りの前記必要熱量を計算し、該必要熱量を高出力で前記便座に出力するように前記高出力制御に移行するものとしてもよい。こうすれば、加熱ヒータとの同時駆動が終了すれば、便座の温度を迅速に目標温度まで昇温することができる。
【0010】
本発明の暖房便座装置において、前記制御装置は、前記便座ヒータが出力した熱量に基づいて残りの前記必要熱量を計算する場合、該必要熱量を小さくするように補正可能であるものとしてもよい。こうすれば、着座している使用者から便座に付与される熱量を考慮して、便座ヒータから出力させる熱量を小さくするから、便座の温度がオーバーシュートするのを抑制して適切に昇温することができる。なお、再計算を複数行う場合、少なくとも1回は必要熱量を小さくするように補正するものなどとすることができる。
【0011】
本発明の暖房便座装置において、前記便座の温度を検出する温度センサを備え、前記制御装置は、前記着座センサにより前記便座への使用者の着座が検知された場合、前記温度センサにより検出される前記便座の温度と前記目標温度との差分に基づいて前記必要熱量を計算して前記高出力制御を開始し、前記高出力制御中および前記低出力制御中は前記必要熱量を出力するのに必要な駆動時間が経過した場合に、前記温度センサにより検出される前記便座の温度に基づいて前記目標温度で保温するように前記便座ヒータを駆動するフィードバック制御に移行するものとしてもよい。こうすれば、使用者が便座に着座した際に、必要熱量を適切に計算することができる。また、高出力制御や低出力制御では、必要な駆動時間が経過するとフィードバック制御に移行することで温度センサを用いずに制御が可能となるから、応答性の低い温度センサを用いてコストを抑えることが可能となる。
【0012】
本発明の暖房便座装置において、前記加熱ヒータは、人体の局部洗浄に用いられる洗浄水を瞬間的に加熱可能に構成されているものとしてもよい。このような加熱ヒータは電力消費が大きく、便座ヒータと同時駆動した場合に問題が生じやすいから本発明を適用する意義が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】暖房便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図である。
【
図2】暖房便座装置10の構成の概略を示す構成図である。
【
図3】便座ヒータ制御の一例を示すフローチャートである。
【
図4】着座時ヒータ制御の一例を示すフローチャートである。
【
図5】温水ヒータ22と便座ヒータ26の出力変化の一例を示す説明図である。
【
図6】温水ヒータ22と便座ヒータ26の出力変化の一例を示す説明図である。
【
図7】温水ヒータ22と便座ヒータ26の出力変化の一例を示す説明図である。
【
図8】変形例の着座時ヒータ制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
図1は、暖房便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図であり、
図2は、暖房便座装置10の構成の概略を示す構成図である。暖房便座装置10は、
図1に示すように、便器1の上面に取り付けられ、便座装置本体12と、便座装置本体12に対して開閉可能に支持された便座14および便蓋16と、使用者による各種操作が可能な操作パネル18とを備える。また、暖房便座装置10は、使用者の局部洗浄を行う洗浄ノズル20と、洗浄ノズル20に供給する洗浄水を加熱する温水ヒータ22と、便座14を加熱する便座ヒータ26と、暖房便座装置10の全体を制御する制御装置19とを備える。
【0016】
温水ヒータ22は、洗浄ノズル20に供給する洗浄水を瞬間的に加熱可能なヒータであり、例えば1000Wの定格出力を有する。便座ヒータ26は、所定時間(数秒から十数秒)程度で便座14を速やかに加熱(速暖)可能なヒータとして構成され、例えば400Wの定格出力を有する。
【0017】
操作パネル18には、おしり洗浄を指示するおしり洗浄スイッチ18aやビデ洗浄を指示するビデ洗浄スイッチ18b、洗浄の停止を指示する停止スイッチ18c、洗浄水の温度を設定する水温設定スイッチ18d、洗浄水の洗浄強さ(勢い)を設定する水勢設定スイッチ18e、便座の温度を設定する便座温度設定スイッチ18fなどが設けられている。例えば、水温設定スイッチ18dは、洗浄水の温度を高中低の3段階などの複数段階および暖房オフのうちいずれかに設定可能に構成されている。同様に、便座温度設定スイッチ18fは、便座14の温度を複数段階および暖房オフのうちいずれかに設定可能に構成されている。なお、水温設定スイッチ18dや便座温度設定スイッチ18fが、温度を無段階に設定可能に構成されていてもよい。
【0018】
制御装置19は、図示しないCPUやROM、RAM、タイマなどを備えるマイクロプロセッサとして構成されている。制御装置19には、便座14への使用者の着座を検知する着座センサ17からの検出信号や操作パネル18からの操作信号、洗浄水の温度(水温)を検出する水温センサ24からの検出信号、便座14の温度を検出する便座温度センサ28からの検出信号などが入力される。また、制御装置19は、温水ヒータ22(ヒータスイッチ)や便座ヒータ26(ヒータスイッチ)への駆動信号、洗浄ノズル20に洗浄水を供給する図示しないポンプや流路切替弁への駆動信号などを出力する。
【0019】
次に、こうして構成された暖房便座装置10の動作、特に便座ヒータ26の温度制御について説明する。
図3は、便座ヒータ制御の一例を示すフローチャートである。制御装置19は、便座14が暖房オンの状態でこの制御を実行する。
【0020】
図3の便座ヒータ制御では、制御装置19は、着座センサ17からの検出信号に基づいて、便座14への使用者の着座を検知したか否かを判定し(S100)、着座を検知していないと判定すると、所定の待機温度で便座14を保温するように便座ヒータ26のフィードバック制御(待機保温制御)を行って(S110)、S100に戻る。なお、所定の待機温度は、使用者が着座した際に冷たさを感じない程度の温度としつつ、使用者が着座した際に目標温度(設定温度)まで上述した所定時間で迅速に昇温(速暖)可能な温度とすることができる。また、制御装置19は、S110では、便座温度センサ28により検出された便座14の温度が所定の待機温度となるように、フィードバック制御により駆動信号を生成して便座ヒータ26を駆動する。例えばフィードバック制御では、待機温度となるように、便座ヒータ26を低出力(例えば20%など)でオンオフを繰り返す。一方、S100で便座14への使用者の着座を検知したと判定すると、着座時ヒータ制御を行って(S120)、S100に戻る。
図4は、着座時ヒータ制御の一例を示すフローチャートである。
【0021】
図4の着座時ヒータ制御では、制御装置19は、便座温度設定スイッチ18fにより設定された便座14の目標温度(設定温度)と便座温度センサ28により検出された便座14の現在の温度との差分に基づいて便座14の迅速な昇温に必要な必要熱量Q(初期必要熱量Q0)を算出する(S200)。なお、例えばS110の待機保温制御の実行により便座14が待機温度で保持されていることが明らかな場合、S200で必要熱量Qを算出することなく、目標温度に応じて予め定められた必要熱量Qを導出してもよい。次に、制御装置19は、便座ヒータ26の高出力(例えば最大出力)の駆動により便座14に必要熱量Qを出力(供給)するのに必要な駆動時間である高出力駆動時間を導出する(S205)。制御装置19は、例えば必要熱量Qと高出力駆動時間との関係を予め求めてマップとしてROMに記憶しておき、算出した必要熱量Qに基づいてマップから対応する高出力駆動時間を導出する。勿論、マップを用いることなく、高出力時の単位時間当たりの熱量と必要熱量Qとから高出力駆動時間を計算により導出してもよい。
【0022】
こうして高出力駆動時間を導出すると、制御装置19は、便座ヒータ26を高出力で駆動させることにより便座14を加熱する高出力制御を行いながら(S210)、おしり洗浄スイッチ18aやビデ洗浄スイッチ18bの操作により温水洗浄が開始されたか否か(S215)、高出力駆動時間が経過したか否か(S220)、をそれぞれ判定する。制御装置19は、S215で温水洗浄が開始されたと判定することなく、S220で高出力駆動時間が経過したと判定すると、高出力制御を終了して、目標温度で便座14を保温するように便座ヒータ26のフィードバック制御を行い(S225)、着座センサ17からの検出信号に基づいて便座14からの使用者の脱座を検知したか否かを判定する(S230)。制御装置19は、S225では、便座温度センサ28により検出された便座温度が目標温度となるように、フィードバック制御により駆動信号を生成して便座ヒータ26を駆動する。そして、制御装置19は、S230で使用者の脱座を検知したと判定すると、着座時ヒータ制御を終了する。制御装置19は、着座時ヒータ制御を終了すると
図3の便座ヒータ制御のS100に戻って着座を検知していないと判定し、S110で待機温度でのフィードバック制御を行う。
【0023】
また、S215で温水洗浄が開始されたと判定すると、温水ヒータ22が駆動開始されるため、便座ヒータ26と温水ヒータ22とが同時駆動すると判断し、高出力制御を終了して次のように便座ヒータ26の低出力制御に移行して電力消費を低減させる。まず、制御装置19は、前回(ここではS205)計算した必要熱量Qから高出力制御中の高出力熱量QHを減じることで必要熱量Qを再計算する(S235)。即ち、温水ヒータ22が駆動開始するまでに出力された高出力熱量QHを除いて残りの必要熱量Qを計算する。次に、再計算した必要熱量Qを便座ヒータ26の低出力で便座14に出力するのに必要な駆動時間である低出力駆動時間を導出する(S240)。低出力駆動時間は、高出力駆動時間と同様にマップから導出してもよいし、計算により導出してもよい。そして、制御装置19は、便座ヒータ26を低出力で駆動させることにより便座14を加熱する低出力制御を行いながら(S245)、停止スイッチ18cの操作により温水洗浄が終了されたか否か(S250)、低出力駆動時間が経過したか否か(S255)、をそれぞれ判定する。
【0024】
そして、制御装置19は、S250で温水洗浄が終了されたと判定することなく、S255で低出力駆動時間が経過したと判定すると、低出力制御を終了して、目標温度で保温するようにフィードバック制御を行い(S225)、便座14からの使用者の脱座を検知したと判定すると(S230)、着座時ヒータ制御を終了する。
【0025】
一方、制御装置19は、S250で温水洗浄が終了されたと判定すると、温水ヒータ22が駆動停止されるため同時駆動が終了すると判断し、低出力制御を終了して次のように便座ヒータ26の高出力制御に移行する。まず、制御装置19は、前回(ここではS235)計算した必要熱量Qから低出力制御中の低出力熱量QLを減じることで必要熱量Qを再計算する(S260)。即ち、温水ヒータ22が駆動停止するまでに出力された低出力熱量QLを除いて残りの必要熱量Qを計算する。次に、制御装置19は、再計算した必要熱量Qに基づいて高出力駆動時間を導出し(S265)、S210に戻り高出力制御を行いながら、温水洗浄が開始されたか否か(S215)、高出力駆動時間が経過したか否か(S220)、をそれぞれ判定する。制御装置19は、S215で再び温水洗浄が開始されたと判定すると、S235に進んで低出力制御に再移行する。S235では、前回即ちS260で計算した必要熱量Qから高出力制御中の高出力熱量QHを減じることで必要熱量Qを再計算することになる。また、制御装置19は、高出力駆動時間が経過したと判定すると、目標温度で保温するようにフィードバック制御を行い(S225)、便座14からの使用者の脱座を検知したと判定すると(S230)、着座時ヒータ制御を終了する。
【0026】
ここで、
図5~
図7は、温水ヒータ22と便座ヒータ26の出力変化の一例を示す説明図である。
図5は、便座ヒータ26の速暖中に温水洗浄が開始されず、温水ヒータ22がオフのままの場合を例示する。図示するように、待機温度でフィードバック制御中に着座センサ17がオンとなり使用者の着座を検知すると(時刻t1)、高出力で便座ヒータ26の高出力制御を開始して便座14の速暖を行う。なお、高出力は、例えば100%(最大出力)とするが、これに限られるものではない。そして、温水ヒータ22が同時駆動することなく高出力駆動時間が経過した時刻t2で初期必要熱量Q0の出力が完了するから、高出力制御を終了して目標温度でのフィードバック制御に移行する。
【0027】
また、
図6は、便座ヒータ26の速暖中に温水洗浄が開始された場合を例示する。図示するように、時刻t1で開始した高出力制御中に温水ヒータ22が駆動開始すると(時刻t12)、それまでの高出力熱量QHに基づいて必要熱量Qを再計算して低出力制御(低速暖)に移行する。高出力熱量QHは、例えば高出力時の単位時間当たりの出力熱量と、時刻t1から時刻t12までの駆動時間とに基づいて算出することができる。低出力は、例えば保温制御と同じ20%とするが、これに限られず、高出力制御の高出力よりも低く、同時駆動で問題が生じない程度の出力であればよい。また、低出力制御中に温水ヒータ22が駆動停止すると(時刻t13)、それまでの低出力熱量QLに基づいて必要熱量Qを再計算して高出力制御(高速暖)に再移行する。なお、低出力熱量QLは、高出力熱量QHと同様に算出することができる。そして、時刻t13で再計算した必要熱量Qに基づく高出力駆動時間が時刻t14で経過すると、初期必要熱量Q0の出力が完了するから、高出力制御を終了して目標温度でのフィードバック制御に移行する。
【0028】
また、
図7は、速暖中に温水洗浄が2回開始された場合を例示する。なお、
図7の時刻t1,t12,t13では、
図6と同じ処理を行うため説明を省略する。図示するように、時刻t13で再移行した高出力制御中に、温水ヒータ22が再度駆動開始すると(時刻t24)、それまで(時刻t13から時刻t24)の高出力熱量QHに基づいて必要熱量Qを再計算して低出力制御に移行する。そして、時刻t24で再計算した必要熱量Qに基づく低出力駆動時間が時刻t25で経過すると、初期必要熱量Q0の出力が完了するから、低出力制御を終了して目標温度でのフィードバック制御に移行する。
【0029】
以上説明した暖房便座装置10では、着座センサ17により便座14への使用者の着座が検知された場合、便座14を目標温度とするための必要熱量Qを、便座ヒータ26が高出力で便座14に出力するように高出力制御を開始する。このため、着座センサ17以外に使用者を検知する人体センサを備えない簡易な構成としても、便座14を迅速に昇温(速暖)することができる。また、高出力制御中に温水ヒータ22が駆動開始した場合、それまでの高出力熱量QHに基づいて必要熱量Qを再計算し、その必要熱量Qを便座ヒータ26が低出力で便座14に出力する低出力制御に移行する。このため、便座ヒータ26と温水ヒータ22との同時駆動により電力消費が過大となるのを抑制しつつ、便座14を目標温度まで適切に昇温することができる。したがって、コストを抑えた簡易な構成で便座14の温度を迅速且つ適切に昇温することができる。
【0030】
また、暖房便座装置10では、低出力制御中に温水ヒータ22が駆動停止した場合、それまでの低出力熱量QLに基づいて必要熱量Qを再計算して高出力制御に移行するから、同時駆動が終了すれば便座14の温度を迅速に目標温度まで昇温することができる。
【0031】
また、暖房便座装置10では、着座センサ17により使用者の着座が検知された場合、便座温度センサ28により検出される便座14の温度と目標温度との差分に基づいて必要熱量Q(初期必要熱量Q0)を適切に計算することができる。また、高出力制御中に高出力駆動時間に到達した場合および低出力制御中に低出力駆動時間に到達した場合にフィードバック制御に移行する。即ち、高出力制御や低出力制御は便座温度センサ28を用いずに制御するから、便座温度センサ28の応答性が低くても適切に昇温することが可能となる。このため、応答性の低い比較的低コストの便座温度センサ28を用いてコストを抑えることができる。
【0032】
上述した実施形態では、便座ヒータ26と同時駆動可能な加熱ヒータとして温水ヒータ22を例示したが、これに限られず、便座とは異なる対象を加熱するヒータであればよく、例えば人体の局部を温風乾燥させるために空気を加熱する温風ヒータなどとしてもよく、温水ヒータや温風ヒータなど複数の加熱ヒータを備えてもよい。
【0033】
実施形態では、便座温度センサ28を用いずに高出力制御や低出力制御を駆動時間(高出力駆動時間や低出力駆動時間)の経過により終了したが、これに限られず、比較低応答性の高い便座温度センサ28を用いて、便座温度センサ28の検出温度に基づいて高出力制御や低出力制御を終了してもよい。
【0034】
実施形態では、低出力制御中に温水ヒータ22が駆動停止すると高出力制御に移行したが、これに限られない。例えば、温水ヒータ22が駆動停止する際に再計算した必要熱量Qが小さい場合など、高出力制御に移行しなくても大きく遅延することなく目標温度に昇温可能であれば低出力制御のままでもよい。即ち、低出力制御中に温水ヒータ22が駆動停止した場合に必要熱量Qを計算し、その必要熱量Qが所定熱量以上の場合には高出力制御に移行し、必要熱量Qが所定熱量未満の場合には低出力制御を維持してもよい。
【0035】
実施形態では、必要熱量Qを再計算する場合、前回計算した必要熱量Qから、それ以降の便座ヒータ26の駆動時間に便座ヒータ26の出力(高出力または低出力)を乗じた出力熱量(高出力熱量QHまたは低出力熱量QL)を減じたが、これに限られない。例えば、必要熱量Qを再計算する場合、毎回初期必要熱量Q0からそれまでの累積の出力熱量を減じてもよい。
【0036】
実施形態では、出力熱量を減じるだけで必要熱量Qを再計算したが、これに限られず、出力熱量を減じた必要熱量Qを補正してもよい。
図8は、変形例の着座時ヒータ制御を示すフローチャートである。なお、変形例では、実施形態と同じ処理には同じステップ番号を付して説明を省略する。この着座時ヒータ制御では、S235で必要熱量Qを再計算すると、その必要熱量Qに係数α(α<1)を乗じて補正する(S270)。ここで、その後の低出力制御(S245)では、高出力制御(S210)に比べて便座ヒータ26の駆動時間が長くなり、便座14に着座している使用者から便座14に付与される熱量も増えるため、熱量が過大となって便座14の温度がオーバーシュートするおそれがある。この変形例では、使用者から便座14に付与される熱量を考慮して、便座ヒータ26の出力熱量を抑えるために係数αを乗じて必要熱量Qが小さくなるように補正するのである。これにより、S240で導出される低出力駆動時間が短くなるから、S245の低出力制御中に便座14の温度がオーバーシュートするのを抑制して適切に昇温することができる。
【0037】
また、変形例のフローチャートでは、低出力制御に移行した場合に必要熱量Qを補正したが、これに代えて、高出力制御に移行した場合に必要熱量Qを補正してもよい。即ち、S260の後に、S270の処理を行ってもよい。これにより、S265で導出される高出力駆動時間が短くなるから、続いて行われるS210の高出力制御中に便座14の温度がオーバーシュートするのを抑制して適切に昇温することができる。なお、便座ヒータ26が高出力で駆動する方が低出力で駆動するよりもオーバーシュートしやすくなるから、S260の後に補正する意義がある。また、再計算を複数行う場合、少なくとも1回は必要熱量Qを小さくするように補正するものとすればよい。あるいは、再計算を行う度に補正するもの、即ちS235で必要熱量Qを再計算する場合およびS260で必要熱量Qを再計算する場合に必要熱量Qを毎回補正してもよい。また、必要熱量Qを再計算する場合、それまでの駆動時間または予想される駆動時間が、長い場合(所定時間以上の場合)には使用者からの熱量が大きいと判断して補正を行い、短い場合(所定時間未満の場合)には補正を行わないものとしてもよい。なお、必要熱量Qを補正するものに限られず、必要熱量Qに基づいて導出した便座ヒータ26の駆動時間(低出力駆動時間,高出力駆動時間)が短くなるように補正してもよい。
【0038】
実施形態では、低出力制御における低出力を一定値(固定)としたが、これに限られず、低出力を変化させてもよい。例えば、同時駆動する温水ヒータ22の温度設定や実際の出力(電力消費)が高いほど便座ヒータ26の低出力が低くなる傾向に変化させてもよい。その場合、低出力を段階的に変化させてもよいし、無段階に変化させてもよい。
【0039】
本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。本実施形態では、暖房便座装置10が「暖房便座装置」に相当し、便座ヒータ26が「便座ヒータ」に相当し、温水ヒータ22が「加熱ヒータ」に相当し、着座センサ17が「着座センサ」に相当し、制御装置19が「制御装置」に相当する。また、便座温度センサ28が「温度センサ」に相当する。
【0040】
なお、本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、本実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、本実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0041】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、暖房便座装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 便器、10 暖房便座装置、12 便座装置本体、14 便座、16 便蓋、17 着座センサ、18 操作パネル、18a おしり洗浄スイッチ、18b ビデ洗浄スイッチ、18c 停止スイッチ、18d 水温設定スイッチ、18e 水勢設定スイッチ、18f 便座温度設定スイッチ、19 制御装置、20 洗浄ノズル、22 温水ヒータ、24 水温センサ、26 便座ヒータ、28 便座温度センサ。