(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099365
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】スライダクランク機構及び温度補正装置
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20220628BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20220628BHJP
G01F 15/07 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G01F3/22 Z
G01F1/00 W
G01F15/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213069
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000142425
【氏名又は名称】アズビル金門株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】特許業務法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】布村 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 成広
(72)【発明者】
【氏名】金子 強志
【テーマコード(参考)】
2F030
2F031
【Fターム(参考)】
2F030CC13
2F030CD15
2F030CE04
2F030CE14
2F031AC01
2F031AF04
(57)【要約】
【課題】従来に対してリンクの数を削減可能とする。
【解決手段】一端が回動可能に固定されたリンク11と、軸心方向がリンク11の軸心方向に対して垂直な方向を向き、一端が当該リンク11の他端に連結された関節ピン13と、直動可能に構成され、一端に、関節ピン13の他端が摺動可能な、当該直動方向に垂直な方向に形成された直線状の溝部121を有するスライダ部12とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が回動可能に固定されたリンクと、
軸心方向が前記リンクの軸心方向に対して垂直な方向を向き、一端が当該リンクの他端に連結された関節ピンと、
直動可能に構成され、一端に、前記関節ピンの他端が摺動可能な、当該直動方向に垂直な方向に形成された直線状の溝部を有するスライダ部と
を備えたスライダクランク機構。
【請求項2】
前記スライダ部の軸心方向は、当該軸心方向に垂直な方向における前記関節ピンの稼働範囲の中心に合わせられた
ことを特徴とする請求項1記載のスライダクランク機構。
【請求項3】
前記関節ピンの他端に設けられ、回動しながら前記溝部を摺動可能なブッシュが設けられた
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスライダクランク機構。
【請求項4】
流量計が計測対象とする流体の温度に応じた角度を出力する温度検出部と、
前記温度検出部により出力された角度の変位を直線変位に変換する請求項1から請求項3のうちの何れか1項記載のスライダクランク機構とを備え、
前記スライダクランク機構により変換された直線変位に応じて前記流量計による計測値を補正する
ことを特徴とする温度補正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライダクランク機構、及び、スライダクランク機構を備え、流量計が計測対象とする流体の温度に応じて流量計による計測値を補正する温度補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス等の流体は、温度によって体積が変化する。そのため、流量計を通過する流体の通過体積は、流体の使用温度によって変化する。従って、流量計が流体の流量を正確に計測するためには、流体の使用温度によって計測値を補正する必要がある。
【0003】
そこで、従来の流量計では、機械式の温度補正装置が設けられ、流体の温度変化に応じた補正を自動的且つ連続的に行い、使用温度での体積を基準温度における体積に換算している(例えば特許文献1参照)。このような温度補正装置には、スライダクランク機構が設けられている。
【0004】
従来のスライダクランク機構の構成例を
図6に示す。
図6に示す従来のスライダクランク機構1bは、リンク11b、リンク12b及びスライダ部13bを有している。
リンク11bは、一端が回動可能に固定されている。
リンク12bは、一端がリンク11bの他端に回動可能に連結され、他端がスライダ部13bに回動可能に連結されている。
スライダ部13bは、直動可能に構成されている。
【0005】
このスライダクランク機構1bは、リンク11b及びリンク12bの回動とスライダ部13bの滑りによって、リンク11bの回動移動をスライダ部13bの直動移動に変換する。
図6において、符号601はリンク11bの他端の回動軌跡を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のスライダクランク機構は、リンクが2つ必要であり、また、リンクを滑らかに回動させる必要があるため、組立て及び部品の嵌合い公差において高コストとなりやすい。
また、例えば、スライダ部の位置精度を高くしようとした場合、部品が多いために、理論上の位置からずれやすい、リンクの隙間により回動の正逆でヒステリシスが発生する等によって、適さない場合がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、従来に対してリンクの数を削減可能なスライダクランク機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るスライダクランク機構は、一端が回動可能に固定されたリンクと、軸心方向がリンクの軸心方向に対して垂直な方向を向き、一端が当該リンクの他端に連結された関節ピンと、直動可能に構成され、一端に、関節ピンの他端が摺動可能な、当該直動方向に垂直な方向に形成された直線状の溝部を有するスライダ部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、上記のように構成したので、従来に対してリンクの数を削減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係るスライダクランク機構の構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1における関節ピンの構成例を示す図である。
【
図3】実施の形態1における関節ピンの別の構成例を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係るスライダクランク機構の別の構成例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係るスライダクランク機構を備えた温度補正装置の構成例を示す図である。
【
図6】従来のスライダクランク機構の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係るスライダクランク機構1の構成例を示す図である。
スライダクランク機構1は、回動移動を直動移動に変換する機構である。このスライダクランク機構1は、
図1に示すように、リンク11及びスライダ部12を備えている。
【0013】
リンク11は一端が回動可能に固定されている。また、リンク11には、他端に孔111が設けられ、当該孔111に関節ピン13が取付けられている。
【0014】
関節ピン13は、
図2に示すように、軸心方向が、リンク11の軸心方向に対して垂直な方向を向いている。この関節ピン13は、一端に固定部131が設けられ、リンク11の他端(孔111)にネジ等の締結部材により固定されている。
図1に示す符号101は関節ピン13の回動軌跡を示している。
【0015】
また、関節ピン13には、他端に、ブッシュ132が設けられていてもよい。
図2に示すブッシュ132は、関節ピン13に対して回動可能に取付けられている。
【0016】
スライダ部12は、直動可能に構成され、一端に溝部121が設けられている。溝部121は、上記直動方向とは垂直な方向に形成された直線状の溝であり、関節ピン13の他端が摺動可能である。この溝部121により、関節ピン13が溝部121を摺動することで、スライダ部12が押し引きされ、スライダ部12が直動する。
【0017】
また、
図1に示すスライダ部12はT字型に構成され、スライダ部12の軸心方向と、当該軸心方向に垂直な方向における関節ピン13の稼働範囲の中心とが合わせられている。
図1において、符号102はスライダ部12の軸心を示している。
【0018】
次に、実施の形態1に係るスライダクランク機構1による効果について説明する。
実施の形態1に係るスライダクランク機構1は、関節ピン13が取付けられたリンク11及び溝部121を有するスライダ部12から構成されている。これにより、このスライダクランク機構1は、従来構成に対して、リンクの数を減らすことが可能となる。その結果、このスライダクランク機構1は、従来構成に対して、コストを低減可能となり、容易に組立て可能となり、また、スライダ部12の位置精度を比較的容易に高くすることが可能となる。
【0019】
また
図1では、スライダクランク機構1は、スライダ部12の軸心方向と当該軸心方向に垂直な方向における関節ピン13の稼働範囲の中心とが合わせられている。これにより、スライダクランク機構1は、軸ずれを軽減可能であり、スライダ部12に加わる余分な荷重を軽減可能となる。
【0020】
また、関節ピン13がスライダ部12に直接連結されると、摩擦による摩耗が発生する可能性がある。そこで、例えば
図2に示すように、関節ピン13の他端にブッシュ132が設けられ、関節ピン13がブッシュ132を介してスライダ部12に連結されるように構成されてもよい。これにより、スライダクランク機構1は、関節ピン13の回動に伴ってブッシュ132が回動しながらスライダ部12の溝部121を移動することになり、摩擦の低減及び接触部の分散により摩耗を軽減可能となる。
【0021】
なお
図2では、関節ピン13に対してブッシュ132が回動可能に構成された場合を示した。しかしながら、これに限らず、例えば
図3に示すように、ブッシュ132及び関節ピン13が回動可能に構成されていてもよく、上記と同様の効果が得られる。
【0022】
また
図1では、関節ピン13の回動軌跡が円である場合を示した。しかしながら、これに限らず、例えば
図4に示すように、関節ピン13の回動軌跡は任意の円弧であってもよい。
図4において、符号401はスライダ部12の軸心を示し、符号402は関節ピン13の回動軌跡を示している。
【0023】
最後に、実施の形態1に係るスライダクランク機構1の適用例について説明する。
図5では、実施の形態1に係るスライダクランク機構1が、流量計2に設けられた温度補正装置3に適用された場合を示している。
温度補正装置3は、流量計2に設けられ、流量計2が計測対象とする流体の温度に応じて流量計2による計測値を補正する。
図5に示す温度補正装置3は、従動軸31、円板32、温度検出部(温度エレメント)33、スライダクランク機構1、リング34及び駆動軸35を備えている。
【0024】
円板32は、例えばステンレス等の金属部材から成り、従動軸31を軸心として回転可能に構成されている。この円板32は、流量計2を通過する流体により回転する回転力が伝達されることで回転される。また、流量計2の回転は非補正積算カウンタ(不図示)にも伝達されて流量計測が行われる。
【0025】
温度検出部33は、流量計2が計測対象とする流体の温度に応じて出力軸の角度が変位する。
図5に示す温度検出部33は、直線変位部331、直線変位部(第2の直線変位部)332及びリンク機構333を備えている。
【0026】
直線変位部331は、流量計2が計測対象とする流体の温度に応じて直線変位する。この直線変位部331としては、ひずみ変位機構が用いられる。ひずみ変位機構は、密閉容器に封入された溶媒の熱膨張及び熱収縮による体積変化を密閉容器の一端の膜変位に変換する機構である。上記膜の材質としては金属ベローズ、ダイヤフラム又は合成樹脂等が用いられる。
図5に示す直線変位部331では、ひずみ変位機構の密閉容器がプレート等の固定部材に固定され、密閉容器の一端(出力端)が上記流体の温度に応じて直線変位する。
【0027】
直線変位部332は、温度補正装置3の周囲の温度(大気)に応じて直線変位する。この直線変位部332としては、ひずみ変位機構が用いられる。ひずみ変位機構は、密閉容器に封入された溶媒の熱膨張及び熱収縮による体積変化を密閉容器の一端の膜変位に変換する機構である。上記膜の材質としては金属ベローズ、ダイヤフラム又は合成樹脂等が用いられる。
図5に示す直線変位部332では、ひずみ変位機構の密閉容器が固定部材に固定され、密閉容器の一端(出力端)が上記周囲の温度に応じて直線変位する。
【0028】
リンク機構333は、直線変位部331による直線変位を角度変位に変換する。なお、
図5に示すリンク機構333では、直線変位部331による直線変位の量から直線変位部332による直線変位の量を差し引いた直線変位の量に応じた角度変位に変換する。なお、
図5に示すリンク機構333は、出力端(温度検出部23の出力軸)が回動可能(角度変位可能)に固定部材に固定されている。
【0029】
なお、
図5では、温度検出部33として、ひずみ変位機構を有する構成を示した。しかしながら、これに限らず、温度検出部33は、流量計2が計測対象とする流体の温度に応じた角度を出力可能な構成であればよい。例えば、温度検出部33として、ブルドン管が用いられていてもよい。
【0030】
スライダクランク機構1は、温度検出部33の出力軸における角度変位を直線変位に変換する。このスライダクランク機構1は実施の形態1に係るスライダクランク機構1である。
この場合、リンク11は一端が温度検出部33の出力軸に連結されている。そして、リンク11は、温度検出部33の出力軸の角度変位に伴って角度が変位する。
【0031】
リング34は、軸心方向が円板32の軸心方向に対して垂直な方向を向き、当該円板32の上面に当接している。リング34は、円板32の回転に伴って回転する。また、このリング34は、円板32に対して軸心から径方向に移動可能に構成されており、円板32の軸心からの径方向における位置により周速度が変わることで回転速度が増減する。このリング34は、スライダクランク機構1(スライダ部12)に連結されており、スライダクランク機構1(スライダ部12)の直動に伴って軸心方向に移動される。
【0032】
駆動軸35は、リング34に連結され、当該リング34の回転に伴って回転する。この駆動軸35の回転は、流量計2の回転に対して温度補正された回転に相当し、これにより流量計2が計測する計測値の補正を行うことができる。すなわち、この駆動軸35の回転(温度補正された回転)は補正積算カウンタ(不図示)に伝達され、補正積算カウンタは、使用温度での体積を基準温度における体積に換算して流量計測が行われる。
【0033】
このように、温度補正装置3では、リング34の位置に応じて温度補正を行う。よって、リング34を移動するためのスライダ部12の位置精度が求められる。これに対し、実施の形態1に係るスライダクランク機構1では、従来に対してリンクの数を削減することで、スライダ部12の位置精度を比較的容易に高めることが可能であり、温度補正装置3への適用が有効である。
【0034】
以上のように、この実施の形態1によれば、スライダクランク機構1は、一端が回動可能に固定されたリンク11と、軸心方向がリンク11の軸心方向に対して垂直な方向を向き、一端が当該リンク11の他端に連結された関節ピン13と、直動可能に構成され、一端に、関節ピン13の他端が摺動可能な、当該直動方向に垂直な方向に形成された直線状の溝部121を有するスライダ部12とを備えた。これにより、実施の形態1に係るスライダクランク機構1は、従来に対してリンクの数を削減可能となる。
【0035】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 スライダクランク機構
2 流量計
3 温度補正装置
11 リンク
12 スライダ部
13 関節ピン
31 従動軸
32 円板
33 温度検出部(温度エレメント)
34 リング
35 駆動軸
111 孔
121 溝部
131 固定部
132 ブッシュ
331 直線変位部
332 直線変位部(第2の直線変位部)
333 リンク機構