(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099441
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】送風管ユニット
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
A01G9/24 G
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213206
(22)【出願日】2020-12-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(71)【出願人】
【識別番号】596109686
【氏名又は名称】ユメックス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】挽野 佳之
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 幸成
(72)【発明者】
【氏名】世取山 重剛
(72)【発明者】
【氏名】山田 徹郎
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029PA02
2B029PA05
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で送風管本体の長手方向に複数設けられた風の吹出開口から均一に風を吹き出せる構造の送風管ユニットを提供する。
【解決手段】長手方向に中空で、外周面の一部に間隔を開けて複数の吹出開口11aを備える直管状の送風管11と、送風管11の一方の端部11bにダクト13を介して接続される送風ファン12と、送風管11の他方の端部11dに設けられたキャップ14と、送風管内部の長手方向の一部を、長手方向と平行に少なくとも2つ以上の空間に仕切るセパレータ16と、該セパレータ16の送風ファン11と対向する側の端部16dに設けられた整風板18とを備えた送風管ユニット10。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に中空で、外周面の一部に間隔を開けて複数の開口を備える直管状の送風管と、
前記送風管の一端に、ダクトを介して接続される送風ファンと、
前記送風管の他端に設けられたキャップと、
前記送風管内部の長手方向の一部を、該長手方向と平行に少なくとも2つ以上の空間に仕切るセパレータと、
該セパレータの前記送風ファンと対向する側の端部に設けられた整風板、
とを具備する送風管ユニット。
【請求項2】
前記整風板を可動可能としたことを特徴とする請求項1に記載の送風管ユニット。
【請求項3】
前記整風板が、前記セパレータの端部にて回転可動することを特徴とする請求項1、請求項2に記載の送風管ユニット。
【請求項4】
前記整風板が、前記送風管の長手方向に伸縮可動することを特徴とする請求項1、請求項2に記載の送風管ユニット。
【請求項5】
前記セパレータを、前記送風管内部の長手方向に平行に3つ以上の空間に仕切るとともに、前記セパレータの端部に設けられた複数の前記整風板を可動可能としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の送風管ユニット。
【請求項6】
前記送風管が中空円筒であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の送風管ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、特に植物工場のような多段式栽培棚において、温度/湿度を制御する空気流を循環させるために使用する送風管ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物工場のような多段式栽培棚では、植物からの水分の蒸散により湿気や熱がこもる。湿度が高くなり過ぎると蒸散が進まなくなり、水の吸い上げ量が減り生育阻害が起こることになる。このため、こもった湿気や熱を拡散して棚の内部を均一な温度/湿度に保つため、各棚の全ての植物に均一に適切な風を送り、空気流を発生させ、こもる湿気や熱を拡散させ均質な生育を行う必要があった。さらに、特にレタスなどの葉菜類では温度/湿度の制御が不十分であると、カルシュウム不足により葉の先端部が褐色に変色する所謂チップバーンが発生することがあった。また、花芽分化などのタイミングが揃わず生育が一定にならないため、栽培管理や収穫タイミングが異なってしまう問題が発生することもあった。そのため、植物に対して温度/湿度を制御する空気流を循環させ、常に一様な空気流や二酸化炭素を供給する提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、1又は複数の開口が設けられた複数の排出部を有する管本体を備えた送風管において、複数の排出部が管本体の長手方向に間隔をあけて配設され、排出部の開口の総面積を調整可能な開口総面積調整手段を備えている送風管が提案されている。開口の総面積を調整可能としたことで、複数の排出部に設けられた1又は複数の開口の総面積を調整して、複数の排出部において容易に排出される風の量が均一になるように調整することができるようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2では、送風装置は、給気装置と、圧力調整室と、送風管とを備え、植物栽培棚の各段毎の送風管を圧力調整室に直接連結し圧力損失が発生しない構成とした。送風管を通じて植物に向けて空気を送ることで、圧力調整室から離れるにつれて風が減衰するようなこともなく、棚の全ての植物に均一に適切な風を送り、均質な生育を行うことができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-176336号公報
【特許文献2】特開2020-000030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の送風管は、複数の排出部に設けられた1又は複数の開口の総面積を調整して、複数の排出部において容易に排出される風の量が均一にすることは一つ一つスライド蓋等を変化させて開口面積を調整しなくてはならない。1本の送風管だけならば比較的簡単に調整可能だが、植物工場のように多数の送風管の風速を調整することは非常に煩雑でまた難しく、送風管自体もスライド蓋を配管に付ける必要があり非常に構造が複雑になる欠点があった。
【0007】
また、特許文献2の送風装置では、圧力調整室内の圧力は、風が弱い場合には、給気装置の出力を上げて圧力調整室の圧力を高め、反対に風が強すぎる場合には、給気装置の出力を下げて圧力調整室の圧力を下げることとなるが、各棚の全ての植物が均一に生育していない場合には風速を個別に変更できない問題があった。
【0008】
さらに、圧力調整室は植物工場の各棚の高さに合わせて設置されており、棚の段数を増やす場合には簡単に変更できない問題があった。また、送風管の長手方向に長さを増やす場合にも簡単に区域を増やすことができないという拡張性に劣る問題もあった。
【0009】
本願発明は、上記問題点に鑑みその目的は、簡単な構成で送風管本体の長手方向に複数設けられた風の吹出開口から均一に風を吹き出せる構造の送風管ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明に係る手段1は、長手方向に中空で、外周面の一部に間隔を開けて複数の開口を備える直管状の送風管と、送風管の一端に、ダクトを介して接続される送風ファンと、送風管の他端に設けられたキャップと、送風管内部の長手方向の一部を、長手方向と平行に少なくとも2つ以上の空間に仕切るセパレータと、該セパレータの送風ファンと対向する側の端部に設けられた整風板と、を具備した送風管ユニットである。
【0011】
送風管を、セパレータにより送風管内部の長手方向の一部を、長手方向と平行に少なくとも2つ以上の空間に仕切り、セパレータの端部に整風板を設け、送風ファン近傍の空間と、送風ファンから離れた空間に分離し、各空間の風圧を揃えることで、送風ファン近傍の吹出開口から吹き出す風速と、送風ファンから離れた吹出開口から吹き出す風速とを略均一にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、非常に簡単な構成で送風管本体の長手方向に複数設けられた吹出開口から均一に風を吹き出せる構造の送風管ユニットを提供することができる。
【0013】
(課題を解決するための他の手段)
本願発明に係る手段2は、セパレータに設けた整風板を可動可能とし、送風管内の風の流れを調整するようにしたことである。本願発明の手段2によれば、整風板により送風管内の風の流れや風速を調整することで、送風ファン近傍の送風管内の圧力と、長手方向に離れたキャップ近傍の送風管内の圧力を略同一に調整することになり、送風管本体の長手方向に複数設けられた吹出開口から均一に風を吹き出すことができる。
【0014】
本願発明に係る手段3は、整風板がセパレータの端部にて回転可動としたことである。本願発明の手段3によれば、風速調整は整風板を回転させて傾斜角度を変更するだけであり、送風管内の風の流れや風速を簡単に調整し、送風管本体の長手方向に複数設けられた吹出開口から均一に風を吹き出すことができる。
【0015】
本願発明に係る手段4は、整風板が送風管の長手方向に伸縮可動するようにしたことである。本願発明の手段4によれば、整風板を伸縮可動することで、送風管内の各空間が賄う吹出開口の数量(開口断面積)を変化させることで、送風管本体の長手方向に複数設けられた吹出開口から均一に風を吹き出すことができる。
【0016】
本願発明に係る手段5は、セパレータを、送風管内部の長手方向に平行に3つ以上の空間に仕切るとともに、セパレータの端部に設けられた複数の整風板を可動可能としたことである。本願発明の手段5によれば、セパレータを送風管内部の長手方向に平行に3つ以上の空間に仕切ることと、セパレータの端部に設けられた複数の整風板を可動可能として送風管内の風の流れや風速を調整することで、更に長い送風管に対しても送風ファン近傍の送風管内の圧力と、長手方向に離れたキャップ近傍の送風管内の圧力を略同一に調整することができ、送風管本体の長手方向に複数設けられた吹出開口から均一に風を吹き出すことができる。
【0017】
本願発明に係る手段6は、送風管が中空円筒としたことである。本願発明の手段6によれば、中空円形断面の場合には送風管本体の長手方向に複数設けられた吹出開口から一層均一に風を吹き出すことができる。さらに、中空円筒としたことで、一般的なポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂などの樹脂パイプの他、鉄やアルミニウムなどの金属材料を使用することができる。また、LED直管灯に使用する円筒直管が使用でき、簡単に送風管ユニットを作製でき、さらに取付金具も流用でき簡単に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本願発明の実施形態の送風管ユニットを植物栽培棚に適用した例の模式斜視図である。
【
図2】本願発明の第1の実施態様における送風管ユニットの斜視図である。
【
図5】本願発明の第1の実施態様におけるセパレータ組立体部分の分解斜視図であり、(a)は一方端部、(b)は他方端部である。
【
図6】本願発明の第1の実施態様におけるセパレータ組立体の送風管への取付を示す正面図である。
【
図7】本願発明の第1の実施態様における送風管内の風の流れを表す模式図である。
【
図8】本願発明の第2の実施態様における整風板取付け部分の分解斜視図である。
【
図9】
図8において、整風板取付け部分の斜め下方から見た分解斜視図である。
【
図10】本願発明の第2の実施態様の変形例におけるセパレータ組立体の部分斜視図である。
【
図11】
図10において、整風板を長手方向に引き出した状態の部分斜視図である。
【
図12】本願発明の第3の実施態様における送風管ユニットの部分斜視図である。
【
図14】本願発明の第3の実施態様におけるセパレータ組立体を反対方向から見た部分斜視図である。
【
図15】
図14において、整風板を長手方向に引き出した状態の部分斜視図である。
【
図16】本願発明の第1の実施態様の変形例におけるセパレータ組立体の部分斜視図であり、送風ファン近傍の端面部分から見た図である。
【
図17】
図16のセパレータ組立体を反対方向の端面部分から見た部分斜視図である。
【
図18】本願発明の第1の実施態様の他の変形例におけるセパレータ組立体の部分斜視図であり、送風ファン近傍の端面部分から見た図である。
【
図19】
図18のセパレータ組立体を反対方向の端面部分から見た部分斜視図である。
【
図20】本願発明の実施例1と比較例の100mm位置での吹出開口の平均風速を示す図である。
【
図21】本願発明の実施例1と比較例の250mm位置での吹出開口の平均風速を示す図である。
【
図22】本願発明の実施例1と比較例の250mm位置での吹出開口の平均風速のバラツキを示す図である。
【
図23】本願発明の実施例2においてセパレータの位置の変化における250mm位置での吹出開口の平均風速を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明に係る実施の形態の構成について、
図2から
図6に基づいて詳細に説明する。本願発明の第1の実施態様における送風管ユニット10の全体図を
図2に示す。送風管11は
図3および
図6に示すように合成樹脂製などの中空パイプで、中空円筒形をしており、その長手方向に沿って外周に吹出開口11aが略等間隔に複数設けられている。
【0020】
送風管11の一端には弾性を有する熱可塑性エラストマーやゴム等で作製されたダクト13を介して直流の送風ファン12(軸流ファン)が設けられ、送風管11内部に外部の空気を送り込む構造となっている。送風管11の一方の端部11bは送風ファン12と対向し、他方の端部11dは終端になっており、終端にはキャップ14が設けられ空気が漏れない構造となっており、送風ファン12により送られた空気は吹出開口11aを通して外部に流出する。(
図3参照)
【0021】
送風管ユニット10は、送風管11の長手方向に対して送風管11の長手方向の一部の空間を上下に仕切るように管の途中までセパレータ組立体15が挿入されている(
図3、
図4、
図6参照)。セパレータ組立体15の構成は、
図5に示すように異形断面を有するアルミニウム合金製の押出材などのセパレータ16に対し、一方の端部16aにはストッパ17がネジ19にてネジ溝16eに固定されている。また、他端の端部16dには送風管11の内径と隙間Y(
図6参照)を形成して近似した形状の本体部18aを有する整風板18が、ベース部18bの側面がセパレータ16の内側の案内溝16bに案内され位置決めされ、ネジ19にてネジ溝16eに固定されている。
【0022】
セパレータ組立体15の送風管11への取り付けは、送風管11の内側に設けられた2本の案内リブ11cに対して、セパレータ16の両側の案内溝16cが係合して案内することで位置が決まる構造である(
図4参照)。この結果、
図6に示すように送風管11はセパレータ16の底面16f(
図5参照)により長手方向の途中、すなわち整風板18の位置まで上下に空間A部と空間B部に仕切られることとなる。
【0023】
一方、送風管ユニット10の組み立ては、ストッパ17の面が送風管11の端部11b及び案内リブ11c端部と、
図6の4カ所のX部で当接するまでセパレータ組立体15を送風管11内に押し込み、ダクト13の送風管突当リブ13bで挟み込んで固定する。また、送風ファン12は外周がダクト13の内壁に抱え込まれ、端部12aをダクト13の突当壁13aに突き当てて固定される(
図2、
図4参照)。
【0024】
送風ファン12により送風管11内に送り込まれた風の流れについて
図7を用いて説明する。送風ファン12からの風Pの内、空間A部に分流された風Qは送風管11内を流れ、その内圧に従って空間A部の吹出開口11aから外部に流出するとともに、整風板18で反射して戻る風S及び一部は隙間Yをすり抜けて送風管11内を更に進む風Tに分かれる。
【0025】
一方、空間B部に分流された風Rはセパレータ16の底面16fに案内されて外部に漏れることなく送風管11内を先に進んでいき、空間C部にて風Tと合流して風Uとなる。この風Uによる内圧に従って空間C部の吹出開口11aから外部に流出するとともに、キャップ14で反射して戻る風Vになる。すなわち、空間A部の内圧と空間C部の内圧が略均一になれば、吹出開口11aから外部に流出する風速も略均一になる。本説明では、吹出開口11aは送風管11の外周面に1列で複数個設けた例で説明しているが、吹出開口11aは例えば2列であっても放射状に複数列あっても構わない。また、送風管11は中空円筒管として説明したが、中空四角形断面や中空多角形断面、中空楕円形断面等であっても構わない。
【0026】
本願発明の第1の実施態様の変形例における、セパレータ組立体55と送風管51(想像線表示)の関係を示す送風ファン近傍の端面部分の一部分斜視図を
図16に、その反対方向の端面部分の部分斜視図を
図17示す。セパレータ56は、
図5のセパレータ16に対して底面16fの略中央部で十字状に交差するような形状のリブが設けられたもので、水平な分割リブ56p、56rから送風管51の内面に接するまで十字状リブが起立し、それぞれ分割リブ56q、56sが設けられている。
【0027】
分割リブ56qと分割リブ56sはセパレータ56の端部56dで一体となって縦壁リブ56tを形成し、そのまま長手方向にキャップ14まで伸延している(図示省略)。また、縦壁リブ56tは端部56dにおいて分割リブ56sと切り離れるようにスリット溝56uが設けられ、そのスリット溝56uに半円形をした整風板58が差し込まれネジ19にてセパレータ56の端部56dに固定されている。また、整風板58の外周と送風管51の内面は、
図6と同様に間隙Yが形成されている。
【0028】
この結果、送風管51は送風ファン12近傍の風の入り口は4つの空間AA,BB、CC、DDに仕切られ、さらに端部56dからキャップ14までは空間AA部と空間BB部が一体となった体積の空間EE部と、空間CC部と空間DD部が一体となった体積の空間FF部に仕切られる。すなわち、第1の実施態様における空間構造が縦壁リブ56tにより背中合わせに2つ設けられた構造となっている。
【0029】
一方、送風管51は、空間AA部と空間EE部に対してその外周に長手方向に沿って略等間隔に複数の吹出開口51aaが設けられ、空間AA部と空間EE部に流入した空気が吹出開口51aaを通して外部に流出する。また同様に、空間DD部と空間FF部に対してその外周に長手方向に沿って略等間隔に複数の吹出開口51abが設けられ、空間DD部と空間FF部に流入した空気が吹出開口51abを通して外部に流出する。
【0030】
2列の吹出開口51aa、51abは、送風管51の円の中心から放射状に角度を持って設けられ、第1の実施態様の場合の様に直下ではなく、例えば30度、60度、90度などの角度で、送風の目的に合わせて設けられている。また、本変形例では2列で説明するが、何列でも構わない。なお、第1の実施態様でも、吹出開口11aは、送風管11の円の中心から放射状に角度を持って2列以上設けることはできるが、本変形例のような形態にすれば、独立の空間により2列設けたことなり、吹出開口51aaと吹出開口51abの列毎に送風速度を変更することも可能となる。
【0031】
本願発明の第1の実施態様の他の変形例におけるセパレータ組立体65と送風管61(想像線表示)の関係を示す送風ファン近傍の端面部分の一部分斜視図を
図18に、その反対方向の端面部分の部分斜視図を
図19示す。セパレータ66は、略中空円筒状の胴部66wから放射状(
図18では十字方向)に分割リブ66p、66q、66r、66sが伸びて、先端が送風管61の内面に接している。なお、分割リブ66pと66rの先端部は、第1の実施態様と同様に送風管61内面に取り付けられる構造を有しており、セパレータ66の一方の端部66aには2個のストッパ67がネジ19にて取り付けられている。
【0032】
セパレータ66の他方の端部66dには、中間に胴部66wの胴部内面66xと同一の孔形状を有するリング円盤状の整風板68がネジ19にて端部66dに固定されている。なお、整風板68の外周と送風管61の内面は
図6と同様に間隙Yが設けられている。
【0033】
この結果、送風管61は送風ファン12近傍の風の入り口は4つの空間HH、JJ、KK、LLに仕切られ、胴部66wの胴部内面66xで形成される中央部の空間MM部がセパレータ66の端部66dまで延び、さらに整風板68からキャップ14までは空間NN部が形成されている。
【0034】
一方、送風管61は、その外周に放射状に複数の吹出開口61aが略等間隔に何列も設けられ、空間HH、JJ、KK、LLに流入した空気が吹出開口61aを通して外部に放射状に流出する。また、空間MM部を通して送られた空気は空間NN部で空間HH、JJ、KK、LLから間隙Yを通過して流入した空気と合流し、その先の吹出開口61aを通して外部に放射状に流出する。このような形態とすることで、風を均一に放射状に流出させる様な用途の送風管ユニットが実現できる。
【0035】
図1は、本願発明の実施の形態の送風管ユニットを植物工場に適用した植物栽培棚の例を示すもので、植物栽培棚1は上下2段で2連結棚の場合を示している。植物栽培棚1は天板2と上下2枚の仕切板3に対して、アングル4で連結して棚を構成している。仕切板3上には、例えば水耕栽培等の栽培トレー5が各2個づつ載せられ、栽培トレー5内には複数のレタス等の葉菜類6が栽培されている。各葉菜類6の上部には各栽培トレー5に対応して栽培用のLED照明ユニット9と略同形状の送風管ユニット10が並列に吹出開口11aが葉菜類6に向かって風を吹き付ける方向(略下方向)に天板2の下面及び中段の仕切板3の下面に設けられている。
図1の場合では2段で2連結棚であり、LED照明ユニット9と送風管ユニット10が各4本ずつ設けられている。なお、LED照明ユニット9と送風管ユニット10には図示せぬが別途給電されている。
【0036】
上記の構成の場合は、栽培トレー5に対してLED照明ユニット9と送風管ユニット10が一つのユニットとなっており、植物工場内に植物栽培棚1を増設する場合には簡単に連結するだけで、非常に拡張性のあるユニットで増設できる大きな利点がある。また、植物栽培棚1を上方に段数を増やすような増設も、栽培トレー5に対しLED照明ユニット9と送風管ユニット10の小単位のユニットで簡単に増設することができるため、大がかりな工事が不要であり非常に拡張性がある。さらに、LED照明ユニット9と送風管ユニット10が一つのユニットとなっているため、天板2や中段の仕切板3の下面に設けられたこのユニット単位で上下方向に移動可能に構成すれば、葉菜類6の生長に伴って上方に移動可能になり、常にこのユニットと葉菜類6との間隔を一定に保つことができ、最適な空気流を循環させることが可能となる。
【0037】
以上、本願発明の第1の実施態様における送風管ユニット10について説明してきたが、第1の実施態様においては、整風板18の位置により空間A部の内圧と空間C部の内圧を略均一にし、吹出開口11aから外部に流出する風速を略均一にしているが、送風ファン12の送風量に従い、最適な整風板18の位置は決まる。なお、各変形例も同様である。
【0038】
しかしながら、各棚の全ての植物が均一に生育していない場合や、生育の状況及び光合成の促進のために二酸化炭素を送風する場合には、吹出開口11aから外部に流出す風速を個別に変更する必要がある。例えば、直流印加電圧を変更して送風ファン12の送風量を変更することで、吹出開口11aから外部に流出する風速を変更しようとした場合は、内圧のバランスが崩れて風速が略均一にならない場合もある。一般に、レタスなど葉菜類の場合は、蒸散で発生した水蒸気を拡散させる空気流を発生させるためには、栽培面近傍で0.3m/sec~1.5m/sec程度の微風速が好ましいとされている。なお、1.5m/sec以上の風速の場合は、強い気流が連続的にあたると生育不良や葉擦れ等が生じる恐れがある。以下、吹出開口11aから外部に流出す風速を個別に変更する手段を説明する。
【0039】
本願発明の第2の実施態様におけるセパレータ組立体25の一部分斜視図を
図8に、その裏面斜視図を
図9示す。第2の実施態様は第1の実施態様におけるセパレータ組立体15において整風板を回転可動としたものである。セパレータ組立体25はセパレータ16の端部16dに整風板28が設けられピン23を軸に回転可動できる構造となっている。
【0040】
まず、整風板取付ベース27の両側には2カ所の回転支点部27aが設けられ、中央部には整風板28のピン保持部28cが嵌合しており、回転支点部27aとピン保持部28cがピン23により同一軸で保持されている。ピン23はピン保持部28cとは一体で回動するように固着保持されて、回転支点部27aとは回転摺動可能となっている。整風板28は本体部28aが整風板取付ベース27にピン23で組み立てられ、整風板取付ベース27の横幅を案内溝16bに沿って押し込み底面からネジ19によりセパレータ16に取り付けられている。
【0041】
ピン23には一端に四角状突起部23aが設けられ、送風管21の外部から四角状突起部23aと同形状の四角状凹部22aを有する調整ノブ22により送風管21の調整ノブ用開口21dを通して係合している。すなわち、調整ノブ22を
図8中で矢印H方向に回転させると、係合するピン23も一緒に回転支点部27aを中心に回転し、整風板28が
図8中で矢印J方向に回転する。なお、整風板28の位置の保持は図示せぬ手段で保持しても良いし、調整ノブ22の一部と調整ノブ用開口21dとを摩擦嵌合させて保持しても良い。
【0042】
本願発明の第2の実施態様によれば、整風板28を回動可能としたことで調整ノブ22により外部から回動させ、
図7における隙間Y部分の間隙が調整可能となり、整風板28の回転調整により空間A部の内力と空間C部の内力を略均一に調整することができ、各吹出開口21aから流出する風速を一層均一に調整することができる。
【0043】
本願発明の第2の実施態様の変形例におけるセパレータ組立体35の一部分斜視図を
図10、
図11に示す。第2の実施態様の変形例は整風板38を送風管31の長手方向に移動させて位置を調整したことである。整風板38は本体部38aと整風板底面38d、整風板底面38dから起立した両側の整風板壁38fで構成され、上方と一端が解放された箱状の形になっている。また、整風板38の組み立ては整風板壁38fの上端面をセパレータ36の案内溝36fと係合させて端部36d側から長手方向に押し込み、さらに、送風管31の長円形のノブ案内溝31bを通してスライドノブ33が片側の整風板壁38fにねじ込まれている。
【0044】
整風板38の位置の調整は、スライドノブ33を若干緩めて整風板38を
図10中の矢印K方向に移動させる。整風板38を長手方向に移動させることにより
図10、
図11の空間A部の体積及び空間C部の体積が変化し、空間A部の内力と空間C部の内力をほぼ均一に調整することができ、各吹出開口31aから流出する風速を一層均一に調整することができる。調整を終了する場合は、調整済み位置において再度スライドノブ33を締め付けることにより、セパレータ36を送風管31の内面に押し付けて固定する。なお、このとき空間A部及び空間C部は受け持つ吹出開口31aの数(開口総面積)が変化することになる。なお、ノブ案内溝31bからの空気の漏れを防ぐために、図示せぬ弾性体のゴムや熱可塑性エラストマーなどのシートに切り込みスリットを設けたシール補助部材等でノブ案内溝31bが覆われ、切り込みスリット部を通してスライドノブ33を操作する。
【0045】
本願発明の第3の実施態様における送風管ユニット40の一部分斜視図を
図12に、セパレータ46の単体の部分斜視図を
図13に示す。送風管ユニット40のセパレータ組立体45はセパレータ46とストッパ47で送風管41の端部41bに位置決めされている。該セパレータ46はアルミニウム合金製の押出材で上面壁46j、下面壁46k、両側の側壁46mで囲まれた空間E部を形成している。また、送風管41に組み立てた後は、送風管41の内壁と上面壁46jとで空間D部を、送風管41の内壁と下面壁46kとで空間F部を形成し、送風管41内の一部の領域を空間D部、空間E部、空間F部と水平方向に3分割している。
【0046】
セパレータ46の他端方向は、
図14、
図15に示す様に第1の整風板当接面46dと第2の整風板当接面46hが長手方向にずれて段違いに設けられており、上面壁46jには第1の整風板案内溝46fに案内されて第1の整風板48が第1の整風板当接面46d側から挿入され、下面壁46kには第2の整風板案内溝46gに案内されて第2の整風板49が第2の整風板当接面46h側から挿入されている。また、第1の整風板48は本体部48a、第1の整風板底面48d、第1の整風板側壁48fで囲まれて構成され、上方と一端が解放された箱状の形で空間D部内に収まっている。一方、第2の整風板49は本体部49a、第2の整風板底面49d、第2の整風板側壁49gで囲まれて構成され、上方と一端が解放された箱状の形で空間E部内に収まっている。
【0047】
図14において、第1の整風板48、第2の整風板49をそれぞれ矢印M方向、矢印N方向に引き出すことにより、空間D部、空間E部、残りの空間G部(図示せず)の体積を調整して空間D部の内圧と空間E部の内圧及び空間G部の内圧をほぼ均一にすることができ、各吹出開口41a(図示せず)から流出する風速を一層均一に調整することができる。
図15は第1の整風板48及び第2の整風板49を引き出して調整した状態を示している。このように、送風管41を長手方向に3か所に分割して調整すれば、送風管ユニット40が長さ方向に長くなったとしても調整が可能であり、拡張性が増す効果がある。なお、各整風板の移動/固定は図示せぬが
図10と同一の手段でもよい。
【0048】
以上、第1の実施態様から第3の実施態様まで、各吹出開口から流出する風速を略均一にする送風管ユニットに関して説明してきたが、本願発明によれば、各吹出開口から流出する風速を略均一にできるばかりでなく、各植物栽培棚の全ての植物が均一に生育していない場合には、送風管ユニット毎に風速を個別に変更して最適な空気流を発生させて、植物の生育を見ながら最適な成育管理ができる。
【0049】
さらに、第2の実施態様や第3の実施態様の様に各空間の内圧を個別に調整する手段を有する実施態様の場合は、非常に簡単に各吹出開口から流出する風速を略均一に調整ができる。また、同一の送風管ユニット内においても、各吹出開口から流出する風速を調整して均一でなく長手方向に変化させることもできる利点がある。
上述の実施態様を採った結果、植物工場で植物栽培棚を増設する場合など、送風管ユニットレベルの小さな植物栽培棚単位で簡単に増設が可能であり、非常に拡張性に富んだ植物栽培棚を実現できる。以降、実際の実施例について説明する。
【実施例0050】
本願発明の実施例に使用した送風管ユニット、測定器具/装置の詳細を以下に示す。
(送風管ユニット)
・送風管は内径28mm、外径30mm、長さ1200mmのアクリル樹脂製円筒管。
・送風管の吹出開口は、送風ファン側から100mmの位置から直径φ3mmで50mm間隔に22個の通気孔を1列に配置。
・送風ファンは、Protechnic社(永立電機有限公司)製軸流ファン
型式MGA3812YB-028 DC9Vで駆動。
(熱式風速計)
・熱式風速計はBENETECH社製、型式:GM8903。
(測定)
・測定ポイント:吹出開口直下の吹出開口から100mmと250mm離れた位置の2箇所での風速測定。
・風速測定は測定時間20秒間の風速を計測し平均風速を算出した。
【0051】
(実施例1)
実施例1に使用した送風管ユニットは、セパレータ組立体のセパレータ厚さが1mmで、長さが端部から520mmの位置まで(長手方向略中央部まで)送風管内の空間を略均一に上下に仕切ったものを使用した。なお、比較例はセパレータ組立体が無い送風管ユニットとした。
【0052】
実施例1と比較例の各吹出開口に対して直下で送風管外周から100mm離れた位置の平均風速を
図20に、250mm離れた位置での平均風速を
図21に、250mm離れた位置での平均風速のバラツキを
図22に示す。前述したように、一般に、レタスなど葉菜類の場合は、蒸散で発生した水蒸気を拡散させる空気流を発生させるためには、栽培面近傍で0.3m/sec~1.5m/sec程度の微風速が好ましいとされている。また、植物栽培棚における葉菜類の生長を考えると、葉菜類と送風管ユニットは250mm~300mm程度離して設置することが好適である。実施例1の平均風速の結果を見ると、送風管外周から100mm離れた位置では平均風速が2~3倍強く(
図20参照)、250mm離れた位置が好適位置となっている。(
図21参照)
【0053】
本願の実施例1と比較例を比較すると、各吹出開口位置におけるバラツキの差は従来の比較例に比べて明らかに実施例1が少なくなっている。(
図22参照)このことからも、本実施例1で適用したセパレータ組立体により平均風速を均一化する効果が表れている。
【0054】
(実施例2)
本願発明の第2の実施態様の送風管ユニットを実施例2として用意した。第2の実施態様はセパレータ組立体の位置が送風管の長手方向に移動し、位置の調整ができる構造であるが、実施例2では疑似的にセパレータ組立体の位置が端部から520mmの位置を中心に両側に260mm移動した位置で吹出開口の平均風速を測定した。なお、測定は吹出開口直下で送風管外周から250mm離れた位置のみとした。その結果を
図23に示す。
【0055】
実施例2において、セパレータ組立体位置が520mmのものは、前述の実施例1と同じものである。セパレータ組立体位置が260mmの場合は、若干盛り返しているが中央部の落ち込みが発生し、セパレータ組立体位置が780mmの場合は、端部(#22近傍)の落ち込みがかなり大きいことがわかる。すなわち、セパレータ組立体位置が520mmのものは平均風速が平均化されてフラットになり、全体にわたって均一化している。このことは、セパレータ組立体位置を送風管の長手方向に調整することにより、端部と中央部を略同一風速に調整することで、全体的にバラツキをなくすことができることを表している。実際本構成では、セパレータ組立体位置が520mmのものが最もバランスが良かった。なお、実施例2ではセパレータ組立体位置を送風管の長手方向に調整する場合を例に示したが、整風板を回転させて調整してもよいことは勿論である。
【0056】
また、本実施例では実験結果を示さないが、第3の実施態様のように、送風管を水平方向に複数に区切って、さらに各整風板の位置を長手方向に調整すると、一層バラツキがなくなり平均風速のバランスが良くなることが期待できる。
【0057】
以上、本願発明の実施の形態や実施例に基づいて詳細に説明してきたが、実施の形態はこれに限定されるものでなく、本願発明の要旨を逸脱することなく、その他種々の構成をとり得ることは勿論である。
本願発明は、植物工場における植物栽培の場合に空気流を発生させ温度/湿度の管理を行い最適な生育管理に好適に用いられるが、植物栽培に限らず送風ファン付の空気を送る送風管ユニットは、コンパクトで狭い空間に敷設し、局所での空気循環装置として利用できる。また、送風管ユニットの端部に二酸化炭素発生装置を接続し、二酸化炭素を高濃度で制御することにより光合成を効率的に向上させる生育管理や、オゾン発生装置を接続しオゾンによる消臭装置や、熱風発生装置を接続し印刷物や食品などの熱風乾燥装置としても利用可能である。さらに、紫外線LED照明装置と送風管を同時に用いることで、感染対策のための殺菌装置にも利用できる。
また、空気を送るだけでなく水を送る散水装置や、ハウス栽培等の灌水、液体肥料の追肥、薬剤散布等にも利用可能である。