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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099444
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】動物捕獲装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/18 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
A01M23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213213
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】504265570
【氏名又は名称】三角 豊
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三角 豊
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA02
2B121BA12
2B121BA17
2B121BA21
2B121BA36
2B121EA21
(57)【要約】
【課題】扉を素早く閉鎖することにより、野生動物の取り逃がしを防止した動物捕獲装置を提供する。
【解決手段】野生動物を収容する檻2と、檻2の端部に設けられた開口部3と、開口部3の上方に設けられた扉回動軸5と、扉回動軸5周りに回動することで開口部3を開閉可能な扉4と、扉4を開放状態で係止する係止手段6と、檻2の内部に野生動物が侵入した際に作動して係止手段6の係止を解除する作動装置7と、を備え、扉4は、開放状態から閉鎖状態へ向かって回動方向に付勢力を付与するねじりバネ9および開口部へ向かって直線方向に付勢力を付与する引張りバネ10によって付勢される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生動物を収容する檻と、
前記檻の端部に設けられた開口部と、
前記開口部の上方に設けられた扉回動軸と、
前記扉回動軸周りに回動することで前記開口部を開閉可能な扉と、
前記扉を開放状態で係止する係止手段と、
前記檻の内部に野生動物が侵入した際に作動して前記係止手段の係止を解除する作動装置と、を備え、
前記扉は、開放状態から閉鎖状態へ向かって回動方向に付勢力を付与する第1付勢手段および前記開口部へ向かって直線方向に付勢力を付与する第2付勢手段によって付勢されることを特徴とする動物捕獲装置。
【請求項2】
前記係止手段は、前記檻の上部に設置され、前記扉を閉鎖状態から270°回動させた開放状態で係止することを特徴とする請求項1に記載の動物捕獲装置。
【請求項3】
前記第1付勢手段は、前記開口部の上方に取り付けられたねじりバネであり、前記第2付勢手段は、前記扉と前記檻との間に架け渡された引張りバネであることを特徴とする請求項1または2に記載の動物捕獲装置。
【請求項4】
前記作動装置は、前記檻の内部に設置され、上下移動可能な踏板と、該踏板を磁力によって該檻の床面から離れた状態で保持する踏板保持部と、該踏板と前記係止手段との間を連結し、該踏板と連動する牽引部材と、を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の動物捕獲装置。
【請求項5】
前記檻は、両端部に前記開口部を有し、該開口部にはそれぞれ前記扉が設けられ、
前記係止手段は、前記扉をそれぞれ係止可能な2つの係止部と、2つの該係止部を回動させる係止部回動軸とを備え、
前記作動装置は、前記係止部回動軸を回動させることにより、2つの前記係止部の係止を同時に解除するように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の動物捕獲装置。
【請求項6】
前記開口部は、左右両側にそれぞれ上下に延びるスライドバーと、該スライドバー間に架け渡され、該スライドバーに沿って上下移動するロック部材と、を備え、
前記扉回動軸は、前記扉との間に間隔をあけ、前記扉の閉鎖状態において下向きに突出する保持部を有し、
前記ロック部材は、前記扉の開放状態において、前記保持部と前記扉との間に保持され、該扉の閉鎖状態において、該保持部と該扉との間から落下するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の動物捕獲装置。
【請求項7】
アライグマを捕獲するための動物捕獲装置であって、前記檻の内部に餌箱を備え、
前記餌箱は、アライグマが腕を挿入可能な大きさの餌箱開口部を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の動物捕獲装置。
【請求項8】
前記餌箱は、前記檻の床面および側面に当接し、該床面および該側面に対向する2面が開口し、該檻に当接する1辺が回動自在に該檻に取り付けられることを特徴とする請求項7に記載の動物捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野生動物を捕獲するための動物捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アライグマ等の野生動物は、生息域が都市部に近づいており、田畑に侵入して農作物を荒らす被害が非常に増えている。従来、このような被害への対策として、檻に開閉自在な扉を設け、檻内に餌を置いた状態で扉を開放しておき、野生動物が檻内に侵入後、踏板や餌に仕掛けられた作動装置が作動して扉を閉鎖することにより、野生動物を捕獲する動物捕獲装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、閉込扉体を上向き開口揺動して開閉用バネにより水平位置に保持して進入口部を開口保持するように構成された小動物捕獲器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3153218号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
敏速に動く野生動物を捕獲するためには、可能な限り素早く扉を閉鎖することが重要である。特許文献1のように、扉を水平位置から揺動させて閉鎖する従来の捕獲器では、開閉用バネが用いられているが、1種類の付勢手段では扉の閉鎖が間に合わず野生動物を取り逃がしてしまうことが懸念される。また、特許文献1の捕獲器は、扉を水平位置に保持して開放状態とする。このような開放状態では、扉が進入口部よりも前方へ突出するため、野生動物が突出した扉に警戒して檻の中へ入り難くなるおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、扉を素早く閉鎖することにより、野生動物の取り逃がしを防止した動物捕獲装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、野生動物を収容する檻と、前記檻の端部に設けられた開口部と、前記開口部の上方に設けられた扉回動軸と、前記扉回動軸周りに回動することで前記開口部を開閉可能な扉と、前記扉を開放状態で係止する係止手段と、前記檻の内部に野生動物が侵入した際に作動して前記係止手段の係止を解除する作動装置と、を備え、前記扉は、開放状態から閉鎖状態へ向かって回動方向に付勢力を付与する第1付勢手段および前記開口部へ向かって直線方向に付勢力を付与する第2付勢手段によって付勢されることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によると、扉は回動方向に付勢力を付与する第1付勢手段および直線方向に付勢力を付与する第2付勢手段の2種類の付勢手段により付勢されているため、付勢力が相乗的に作用することにより、1種類の付勢手段を用いた場合よりも素早く扉を閉鎖することが可能であり、野生動物の取り逃がしを防止できる。また、2種類の付勢手段を用いたことにより、扉を90°開放した位置(水平位置)よりも大きな角度で開放させた位置からでも素早く扉を閉鎖することが可能である。開口部より後方に扉を位置させることができるので、野生動物の扉への警戒心を低減させることができる。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、前記係止手段は、前記檻の上部に設置され、前記扉を閉鎖状態から270°回動させた開放状態で係止することを特徴とする。
【0010】
上記の構成によると、開口部より後方であって、正面視した際に目立たない角度に扉を位置させて開放状態を維持できるため、野生動物の扉への警戒心をより低減させることができる。
【0011】
第3の発明では、第1または第2の発明において、前記第1付勢手段は、前記開口部の上方に取り付けられたねじりバネであり、前記第2付勢手段は、前記扉と前記檻との間に架け渡された引張りバネであることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によると、扉の開放状態から閉鎖状態への回動動作において、開放状態から回動し始める初動段階では、ねじりバネによって扉に付勢力が付与されるため、作動装置の作動に伴い、瞬発的に扉を回動させることが可能となる。さらに、ねじりバネによる付勢力が減衰し始める途中段階から開口部へ向かい、引張りバネによって扉に付勢力が付与される。このように、扉は、ねじりバネおよび引張りバネによって2段階で付勢力が付与されるため、大きな角度で開放されている場合であっても開放状態から閉鎖状態まで素早く動作させることが可能であり、取り逃がしを防ぐことができる。
【0013】
第4の発明では、第1から第3のいずれかの発明において、前記作動装置は、前記檻の内部に設置され、上下移動可能な踏板と、該踏板を磁力によって該檻の床面から離れた状態で保持する踏板保持部と、該踏板と前記係止手段との間を連結し、該踏板と連動する牽引部材と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記の構成によると、踏板は磁力によって床面から離れて保持されるため、大掛かりな装置を必要とせず、設置準備が容易である。
【0015】
第5の発明では、第1から第4のいずれかの発明において、前記檻は、両端部に前記開口部を有し、該開口部にはそれぞれ前記扉が設けられ、前記係止手段は、前記扉をそれぞれ係止可能な2つの係止部と、2つの該係止部を回動させる係止部回動軸とを備え、前記作動装置は、前記係止部回動軸を回動させることにより、2つの前記係止部の係止を同時に解除するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によると、檻の両端部が開口しているため、いずれの開口部からも野生動物を侵入させることができる。また、両端部が開口していることにより、野生動物の警戒心を低減させることができる。扉を係止する2つの係止部を同時に解除することにより、両側の扉を同時に閉鎖することが可能となるため、取り逃がしを防止できる。
【0017】
第6の発明では、第1から第5のいずれかの発明において、前記開口部は、左右両側にそれぞれ上下に延びるスライドバーと、該スライドバー間に架け渡され、該スライドバーに沿って上下移動するロック部材と、を備え、前記扉回動軸は、前記扉との間に間隔をあけ、前記扉の閉鎖状態において下向きに突出する保持部を有し、前記ロック部材は、前記扉の開放状態において、前記保持部と前記扉との間に保持され、該扉の閉鎖状態において、該保持部と該扉との間から落下するように構成されていることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によると、ロック部材を保持部と扉との間に挟み込んだ状態で、扉を開放状態としておけば、扉が閉鎖状態へと作動した際、扉の回動とともに保持部が扉との間にロック部材を保持したまま回動する。そして、扉が閉鎖状態となった際、ロック部材は保持部と扉との間から外れて落下し、扉をロックすることができる。捕獲した野生動物が檻の中で暴れても、扉はロック部材によって回動を規制されるため、扉がこじ開けられるおそれがない。
【0019】
第7の発明では、第1から第6のいずれかの発明において、アライグマを捕獲するための動物捕獲装置であって、前記檻の内部に餌箱を備え、前記餌箱は、アライグマが腕を挿入可能な大きさの餌箱開口部を有することを特徴とする。
【0020】
上記の構成によると、アライグマは他の野生動物とは異なり手で餌を掴むことができるため、このような餌箱の中に餌を設置しておくことで、餌箱開口部に手を入れて餌を取り出そうとするアライグマを確実に捕獲することができる。
【0021】
第8の発明では、第7の発明において、前記餌箱は、前記檻の床面および側面に当接し、該床面および該側面に対向する2面が開口し、該檻に当接する1辺が回動自在に該檻に取り付けられることを特徴とする。
【0022】
上記の構成によると、餌箱は、檻に当接する1辺を軸に回動させることで、餌箱内部となる床面を露出させることができるので、餌箱内への餌の設置が容易である。
【発明の効果】
【0023】
扉を素早く閉鎖することが可能であり、野生動物の取り逃がしを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の動物捕獲装置の閉鎖状態を示す斜視図である。
図2】本発明の動物捕獲装置の閉鎖状態を示す概略斜視図である。
図3】本発明の動物捕獲装置の開放状態を示す概略斜視図である。
図4】本発明の動物捕獲装置の閉鎖状態を示す概略側面図である。
図5】本発明の動物捕獲装置の開放状態を示す概略側面図である。
図6】本発明の動物捕獲装置の閉鎖状態を示す概略正面図である。
図7】本発明の動物捕獲装置の開放状態を示す概略正面図である。
図8】係止手段および作動装置の動作を説明するための部分斜視図である。
図9】係止手段および作動装置の動作を説明するための部分斜視図である。
図10】係止手段および作動装置の動作を説明するための部分斜視図である。
図11】扉の動作を説明するための部分側面図である。
図12】扉の動作を説明するための部分側面図である。
図13】扉の動作を説明するための部分側面図である。
図14】扉の動作を説明するための部分側面図である。
図15】餌箱の斜視図である。
図16】餌箱の動作を説明するための概略斜視図である。
図17】餌箱を設置した状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。また、説明の便宜のため、以下の説明において、檻の開口部が設けられている方向を前後方向と呼び、開口部側から見た左右方向を左右方向と呼ぶ。
【0026】
(動物捕獲装置の構成)
図1に示すように、本発明の実施形態の動物捕獲装置1は、野生動物を収容する檻2と、檻2の開口部3を開閉可能な扉4を備える。
【0027】
直方体状の檻2は、前後両端部に開口部3,3が設けられ、上下左右の面には金網が張られている。開口部3,3の上方には、左右方向に延びる扉回動軸5が設けられ、扉4の上端部が扉回動軸5に取り付けられている。扉4には檻2と同様に金網が張られている。なお、図2から図5図11から図14図16および図17については、説明の便宜上、扉4および檻2の各面の金網部分は省略して図示する。
【0028】
図2図4および図6に示すように、扉4は、扉回動軸5周りに下向きに回動することで開口部3を閉鎖し、図3図5および図7に示すように、上向きに回動することで開口部3を開放する。扉4は、閉鎖状態において、ロック部材8によって回動を規制される。
【0029】
ロック部材8は、左右に延びる棒状の部材であり、開口部3の左右両側に設けられたスライドバー8a,8aに沿って、上下にスライド可能である。左右2つのスライドバー8a,8aは、下端部が開口部3の下部から前方へ突出し、上方に屈折して扉4の上端部よりも上へ延び、扉回動軸5の外周を通るように後方へ湾曲して檻2の上端部に接続されている。ロック部材8は、扉4の前側において、上下に延びる2つのスライドバー8a,8aに架け渡されている。ロック部材8は、扉4の閉鎖状態においてスライドバー8aの下端に位置して扉4の回動を規制する。ロック部材8をスライドバー8aに沿って引き上げ、扉回動軸5の後方へ位置させると、扉4が回動可能となり、開放状態とすることができる。また、扉回動軸5にはロック部材8を保持するための保持部5aが形成されている。
【0030】
保持部5aは、扉4の前側面との間に間隔をあけ、扉4の閉鎖状態において扉回動軸5から斜め下向きに突出している。保持部5aは、扉回動軸5の回動とともに回動する。扉4の開放状態において、ロック部材8は、保持部5aと扉4の前側面との間に保持され、扉4の閉鎖状態において、保持部5aと扉4との間から落下するように構成されている。ロック部材8を、保持部5aと扉4との間に挟み込んで保持した状態で、扉4を開放状態としておけば、扉4が閉鎖状態へと作動した際、扉4の回動とともに保持部5aが扉4との間にロック部材8を保持したまま下向きに回動する。そして、扉4が閉鎖状態となった際、ロック部材8は自重によって保持部5aと扉4との間から落下し、扉4をロックすることができる。
【0031】
扉4は、開口部3を閉鎖した状態から上向きに約270°回動し、檻2の上面と対向する位置において係止手段6によって係止され、開放状態となる。係止手段6は、檻2の前後方向の略中央の上部に設置されている。係止手段6は扉4を閉鎖状態から270°回動させた開放状態で係止する。係止手段6は、前後方向に延びる係止部回動軸6aと、係止部回動軸6aの両端に、両側の扉4,4をそれぞれ係止可能な2つの係止部6b,6bと、係止部回動軸6aの長手方向略中央部に鉤部6cと、を有する。
【0032】
係止部回動軸6aは、檻2の上面に取り付けられており、両側の扉4を開放状態とした際に、前後両端部が前後の扉4にそれぞれ到達する長さである。係止部6b,6bは、係止部回動軸6aの先端部を屈折させて形成されており、両側の扉4を開放状態とした際に、扉4の金網に引っ掛けることができる。係止部6b,6bは、金網の開口よりも短い長さに形成され、金網の開口から係脱可能である。鉤部6cは、係止部回動軸6aの長手方向略中央部から、係止部回動軸6aが延びる方向と略垂直方向に延び、先端が鉤状に形成されている。鉤部6cの先端は後述の作動装置7に係合する。2つの係止部6b,6bおよび鉤部6cは係止部回動軸6aの回動に伴い回動する。
【0033】
作動装置7は、檻2の内部に設置され、上下移動可能な踏板7aと、踏板7aを磁力によって檻2の床面から離れた状態で保持する踏板保持部7cと、踏板7aと係止手段6との間を連結し、踏板7aと連動する牽引部材7dと、を有する。
【0034】
踏板7aは、檻2の前後方向略中央部において左右方向に延びる板材であり、檻2の床面に載置されている。踏板7aの一端部の下部には、台座7bが設置され、踏板7aが床面から上方にやや浮いた状態である。踏板7aは、台座7bを支点として他端部が上下移動可能である。踏板7aの他端部の上方には、踏板保持部7cが取り付けられている。踏板7aは少なくとも他端部が金属製であり、踏板保持部7cはその他端部を引き付けることのできる磁石である。なお、野生動物に警戒されないよう、檻2の床面に麻布等を敷き詰め、踏板7aを隠すことが望ましい。
【0035】
踏板7aの他端部には、牽引部材7dが取り付けられている。牽引部材7dには、例えばワイヤが用いられる。牽引部材7dは、踏板7aの他端部から檻2の側面に沿って上方へ延び、湾曲して上面に沿い、鉤部6cの先端へ向かって延びている。牽引部材7dの先端部は、逆U字形状のトリガー7eの上部に取り付けてある。トリガー7eは、下端部が回動可能に檻2の側面に取り付けてあり、牽引部材7dによって引っ張られると上部が檻2の内側へ倒れるように構成されている。トリガー7eの上部には、鉤部6cが係合される。
【0036】
扉4は、開放状態から閉鎖状態へ向かって回動方向に付勢力を付与する第1付勢手段9および開口部3へ向かって直線方向に付勢力を付与する第2付勢手段10によって付勢される。
【0037】
第1付勢手段9は、本実施形態ではねじりバネ(トーションスプリング)9であり、バネ部(図示せず)の一端部に第1腕部9aを有し、他端部に第2腕部(図示せず)を有する。ねじりバネ9は、第1付勢手段取付軸9bによって開口部3の上方に取り付けられている。第1付勢手段取付軸9bは、開口部3の上方かつ内側において檻2に設置されている。第1付勢手段取付軸9bは、左右方向に延びて両端が檻2の外側に突出しており、その両端部にそれぞれねじりバネ9,9が固定されている。具体的には、ねじりバネ9は、左右方向を軸方向にしてバネ部および第2腕部が第1付勢手段取付軸9bに固定され、バネ部に付勢力を付与する第1腕部9aが、扉4の下部へ向かって延びている。ねじりバネ9は、第1腕部9aと第2腕部とが、開く方向に付勢力を発揮するものであり、第1腕部9aは扉4の閉鎖状態へ向かって回動方向に付勢力を付与する。
【0038】
第1付勢手段取付軸9bの両端部に取り付けられた2つのねじりバネ9は、互いの第1腕部9aの先端が押圧部9cによって連結されている。押圧部9cは、左右方向に延びて開口部3の両側の第1腕部9a,9aを連結し、扉4の前側面に当接しており、第1腕部9aの付勢力によって扉4を閉鎖方向へ向かって押圧する。
【0039】
第2付勢手段10は、本実施形態では、扉4と檻2との間に架け渡された引張りバネ10である。引張りバネ10は、バネが短くなる方向に直線的に付勢力を発揮する。引張りバネ10は、一端部が扉4の下部に取り付けられ、他端部は、第1付勢手段取付軸9bよりも内側において檻2の上端部に取り付けられている。また、引張りバネ10は、扉4の左右両側にそれぞれ取り付けられる。
【0040】
(係止手段および作動装置の動作)
次に、図8から図10に沿って、係止手段6および作動装置7の動作について説明する。
【0041】
図8は、扉4を開放状態で係止した状態における係止手段6と作動装置7を示す。扉4は閉鎖状態から270°回動させた位置にあり、扉4の下部が係止部6bに到達している。係止部6bは、扉4の金網の間から上方に突出し、金網を引っ掛けた状態で左側に倒れ、扉4を押さえ込むように係止している。鉤部6cは左側に倒れ、トリガー7eの上部に引っ掛けられている。トリガー7eと牽引部材7dを介して連結される踏板7aは、牽引部材7dが取り付けられた他端部が踏板保持部7cによって引き付けられ、踏板7a全体が檻2の床面よりわずかに浮いた状態である。
【0042】
図9は、踏板7aが踏み込まれた際の係止手段6と作動装置7を示す。野生動物が檻2内に侵入し踏板7aが踏み込まれると、踏板7aの他端部が踏板保持部7cから外れて下降する。踏板7aの下降により、牽引部材7dが下方へ引っ張られると、牽引部材7dに連結されたトリガー7eの上部が檻2の内側へ倒れ込む。トリガー7eが内側へ倒れ込むと、トリガー7eの上部に引っ掛けられていた鉤部6cがトリガー7eから外れる。
【0043】
図10は、扉4の係止が解除された状態における係止手段6と作動装置7を示す。トリガー7eから鉤部6cが外れると、係止部6bは付勢力に抗して扉4を固定しておくことができず、扉4が付勢力によって跳ね上げられ、その勢いによって係止部6bが回動するとともに鉤部6cが回動する。扉4は、金網が係止部6bから外れ、係止が解除されて閉鎖状態へと回動する。作動装置7は、係止部回動軸6aを回動させることにより、2つの係止部6b,6bの係止を同時に解除し、両側の扉4,4を同時に閉鎖させることができる。
【0044】
(扉の動作)
次に、図11から図14に沿って、扉4が開放状態から閉鎖状態へと回動する際の動作について説明する。
【0045】
図11は、閉鎖状態から270°上向きに回動した開放状態で係止されている扉4を示す。この開放状態において、扉4はねじりバネ9の付勢力に抗して上向きに回動された状態である。ねじりバネ9の第1腕部9aを介し、押圧部9cが扉4を下向きの回動方向へ押圧しているが、扉4が係止部6bに係止されているので回動は規制されている。このとき、引張りバネ10は檻2の上部から、前方へ延び、第1付勢手段取付軸9bから折り返されて後方に位置している扉4の下部へ延びている。引張りバネ10は、第1付勢手段取付軸9bによって折れ曲がっているため、この状態において扉4への付勢力は弱い。
【0046】
図12は、扉4の係止が解除され、開放状態から約90°閉鎖方向に回動した状態を示す。係止部回動軸6aが回動し、係止部6bの係止が解除されると、ねじりバネ9の付勢力によって第1腕部9aが回動するとともに、押圧部9cが閉鎖方向へ扉4を勢いよく跳ね上げる。引張りバネ10は、第1付勢手段取付軸9bによって折れ曲がっているため、この状態においてもなお扉4への付勢力は弱い。なお、ロック部材8は保持部5aと扉4との間に挟まれた状態で扉回動軸5の回動とともに移動している。
【0047】
図13は、扉4が開放状態から約180°閉鎖方向に回動した状態を示す。ねじりバネ9は、270°開放状態で強い付勢力を有しており、作動装置7の作動に伴い扉4の係止解除とともに瞬発的に扉4を回動させることができるが、その付勢力は次第に減衰し始め、開放状態から約180°閉鎖方向に回動した状態では付勢力が弱まっている。しかしながら、この状態において、第2の付勢手段である引張りバネ10は、第1付勢手段取付軸9bによる折れ曲がりが解消され、付勢力が発揮できる状態にある。
【0048】
図14は、扉4が回動して閉鎖された状態を示す。扉4は、約180°閉鎖方向へ回動した状態から、ねじりバネ9よりも引張りバネ10の付勢力によって開口部3へ引き付けられる。ロック部材8は保持部5aと扉4との間に挟まれたまま移動するが、扉4が閉鎖状態となったとき、保持部5aと扉4との間から自重により落下し、スライドバー8aの下端へ位置して扉4をロックする。
【0049】
(餌箱の構成)
このように構成した動物捕獲装置1は、野生動物の中でも特にアライグマを捕獲するために、アライグマ捕獲用の餌箱11を檻2内に設置することができる。図15に示す本実施形態の餌箱11は、長矩形状の2つの側面11a,11bと正方形状の1つの側面11cとの3つの面で構成されている。2つの長矩形状の側面11a,11bは、長辺において互いに連結され、その2つの側面11a,11bに正方形状の側面11cが連結されて、立方体の一部のような形状をなしている。3つの側面11a,11b,11cは金網である。餌箱11は、一方の長矩形状の側面11aの一辺が檻2の床面に当接し、床面に対して回動自在に取り付けられている。他方の長矩形状の側面11bは、一辺が檻2の側面に当接可能である。正方形状の側面11cは、檻2の床面および側面に当接可能である。
【0050】
餌箱11は、檻2内において踏板7aよりも奥における床面と側面との角部に設置する。檻2内に餌箱11を設置すると、餌箱11は床面および前記側面に対向する2面が開口した状態である。また、長矩形状の側面11a,11bと檻2の床面および側面に囲まれた開口であって、正方形状の側面11cに対向する面が、アライグマが腕を挿入可能な大きさの餌箱開口部11dとなっている。餌箱11は、餌箱開口部11dが開口部3へ向けて開口するように設置する。アライグマは手先の器用な動物であるため、餌箱開口部11dから手を差し入れて餌Aを掴むことができる。このような餌箱11を檻2内に設置することで、アライグマを檻2の奥へ誘い込み、確実に捕獲することが可能となる。
【0051】
檻2内に設置した餌箱11は、図16に示すように、長矩形状の側面11aを回動させて、上部を開口させることができる。このように上部を開口させた状態で、餌箱11の奥に容易に餌Aを設置することが可能となる。餌Aを設置した後は、長矩形状の側面11aを回動させると、図17に示すように、餌箱11および檻2の床面および側面によって餌Aの周りが囲まれ、餌箱開口部11dのみが開口する。
【0052】
(作用効果)
このように構成した動物捕獲装置1では、扉4は回動方向に付勢力を付与するねじりバネ9および直線方向に付勢力を付与する引張りバネ10の2種類の付勢手段により付勢されているため、付勢力が相乗的に作用することにより、いずれか1種類の付勢手段を用いた場合よりも素早く扉4を閉鎖することが可能であり、野生動物の取り逃がしを防止できる。また、2種類の付勢手段を用いたことにより、扉4を90°開放した位置(水平位置)よりも大きな角度で開放させた位置からでも素早く扉4を閉鎖することが可能である。開口部3より後方に扉4を位置させることができるので、野生動物の扉への警戒心を低減させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 動物捕獲装置
2 檻
3 開口部
4 扉
5 扉回動軸
5a 保持部
6 係止手段
6a 係止部回動軸
6b 係止部
6c 鉤部
7 作動装置
7a 踏板
7b 台座
7c 踏板保持部
7d 牽引部材
7e トリガー
8 ロック部材
8a スライドバー
9 第1付勢手段(ねじりバネ)
9a 第1腕部
9b 第1付勢手段取付軸
9c 押圧部
10 第2付勢手段(引張りバネ)
11 餌箱
11a,11b,11c 側面
11d 餌箱開口部
A 餌
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図16
図17