(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099473
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3266 20160101AFI20220628BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220628BHJP
G09G 3/3233 20160101ALI20220628BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20220628BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220628BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220628BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G09G3/3266
G09F9/30 365
G09F9/30 343
G09G3/3233
G09G3/20 621M
G09G3/20 680G
G09G3/20 622E
G09G3/20 622C
G09G3/20 611F
G09G3/20 611H
G09G3/20 622Q
H05B33/02
H01L27/32
H05B33/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213259
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】520272868
【氏名又は名称】武漢天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】特許業務法人藤央特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 玄士朗
【テーマコード(参考)】
3K107
5C080
5C094
5C380
【Fターム(参考)】
3K107CC33
3K107EE03
3K107EE04
3K107HH02
3K107HH05
5C080AA06
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD09
5C080DD22
5C080DD28
5C080FF11
5C080FF12
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ06
5C094AA09
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA09
5C094FB01
5C094FB14
5C094HA08
5C380AA01
5C380AB06
5C380AB18
5C380AB21
5C380AB23
5C380AB34
5C380BA08
5C380BA13
5C380BA17
5C380BA39
5C380CA11
5C380CB01
5C380CB11
5C380CB16
5C380CB17
5C380CB26
5C380CB32
5C380CB37
5C380CC05
5C380CC06
5C380CC07
5C380CC26
5C380CC33
5C380CC39
5C380CC64
5C380CD017
5C380CD026
5C380CE01
5C380CE19
5C380CF07
5C380CF09
5C380CF43
5C380DA02
5C380DA06
(57)【要約】
【課題】画素回路を制御するための制御信号を出力する回路の設計をより容易とする。
【解決手段】複数ラッチ回路の各ラッチ回路は、対応する画素回路行へ第1信号パルスを出力する。複数シフトレジスタユニットは、第2信号パルスを順次出力する。各ラッチ回路には、第1シフトレジスタユニットからの第2信号パルスと、第1シフトレジスタユニットより後段の第2シフトレジスタユニットからの第2信号パルスと、が入力される。各ラッチ回路からの第1信号パルスは、第1シフトレジスタユニットからの第2信号パルスに応答して第1電位レベルから第2電位レベルに変化し、第2シフトレジスタユニットからの第2信号パルスに応答して前記第2電位レベルから前記第1電位レベルに変化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数画素回路行を含む表示領域と、
連結された複数シフトレジスタユニットを含むシフトレジスタと、
前記シフトレジスタから入力された信号に応じて信号パルスを前記複数画素回路行に出力する、複数ラッチ回路と、
を含み、
前記複数ラッチ回路の各ラッチ回路は、対応する画素回路行へ第1信号パルスを出力し、
前記複数シフトレジスタユニットは、第2信号パルスを順次出力し、
前記複数ラッチ回路の各ラッチ回路には、第1シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスと、前記第1シフトレジスタユニットより後段の第2シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスと、が入力され、
前記複数ラッチ回路の各ラッチ回路からの前記第1信号パルスは、
前記第1シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスに応答して第1電位レベルから第2電位レベルに変化し、
前記第2シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスに応答して前記第2電位レベルから前記第1電位レベルに変化する、
表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
Nは整数、Kは整数、pは2以上の整数、qは1以上の整数、Hは前記シフトレジスタからのパルス幅、であり、
N段目のラッチ回路の出力は、K段目のシフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスによりセットされ、(K+p)段目のシフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスによってリセットされ、
(N+q)段目のラッチ回路の出力は、(K+q)段目のシフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスによりセットされ、(K+q+p)段目のシフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスによってリセットされ、
各ラッチ回路からの前記第1信号パルスは、H*pのパルス幅を持ち、
前記(N+q)段目のラッチ回路からの前記第1信号パルスは、前記N段目のラッチ回路からの前記第1信号パルスに対してH*qの時間遅れをもつ、
表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置であって、
Nは整数、Kは整数、pは2以上の整数、qは1以上の整数、Hは前記シフトレジスタからのパルス幅、であり、
N段目のラッチ回路の出力は、K段目のシフトレジスタユニットの出力によりリセットされ、(K+p)段目のシフトレジスタユニットの出力によってセットされ、
(N+q)段目のラッチ回路の出力は、(K+q)段目のシフトレジスタユニットからの信号パルスによりリセットされ、(K+q+p)段目のシフトレジスタユニットからの信号パルスによってセットされ、
各ラッチ回路の前記信号パルスは、H*pのパルス幅を持ち、
前記(N+q)段目のラッチ回路からの前記信号パルスは、前記N段目のラッチ回路からの前記信号パルスに対してH*qの時間遅れをもつ、
表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記複数シフトレジスタユニットの各シフトレジスタユニットは、対応する画素回路行へ前記第2信号パルスを出力し、
前記シフトレジスタは、前記第2信号パルスを前記複数画素回路行に順次出力する、
表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置であって、
前記第1信号パルスは、画素回路の駆動トランジスタの閾値補償期間を制御し、
前記第2信号パルスは、前記画素回路に対するデータの書き込み期間を制御する、
表示装置。
【請求項6】
請求項4に記載の表示装置であって、
前記第1信号パルスは、画素回路に含まれる発光素子への駆動電流の供給の有無を制御し、
前記第2信号パルスは、前記画素回路に対するデータの書き込み期間を制御する、
表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の表示装置であって、
各ラッチ回路からの前記第1信号パルスを前記画素回路行に伝送する配線は、前記第1信号パルスが終了した後、前記第1電位レベルの電位の電源線に接続される、
表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置であって、
前記配線と前記第1電位レベルの電位を与える前記電源線との間のスイッチトランジスタを含み、
前記スイッチトランジスタは、前記画素回路に含まれる発光素子への駆動電流の供給の有無を制御する信号によってON/OFFされる、
表示装置。
【請求項9】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記複数ラッチ回路は、前記シフトレジスタと前記表示領域との間に配置されている、
表示装置。
【請求項10】
請求項6に記載の表示装置であって、
前記複数シフトレジスタユニットの各シフトレジスタユニットからの出力パルスは、対応する一つの画素回路行の前記第2信号パルス及び対応する他の一つの画素回路行の第3信号パルスである、
表示装置。
【請求項11】
表示領域と、
前記表示領域の外側に配置された前記表示領域の駆動回路と、
を含み、
前記表示領域は、
複数の画素回路と、
前記複数の画素に接続された、複数の第1制御線、複数の第2制御線、複数の信号線、及び複数の電源線と、
を含み、
前記複数の画素回路の各画素回路は、
発光素子と、
複数の第1導電型を有するスイッチトランジスタと、
第2導電型を有し、前記発光素子の発光のON/OFFを制御する発光制御トランジスタと、
前記第2導電型を有し、前記発光素子への電流量を制御する駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタに接続された保持容量と、
を含み、
前記複数の第1制御線は、それぞれ、前記駆動回路から前記複数の第1導電型を有するスイッチトランジスタへの第1制御信号を伝送し、
前記複数の第2制御線は、それぞれ、前記駆動回路から前記第2導電型を有する発光制御トランジスタへの第2制御信号を伝送し、
前記駆動回路は、複数のトランジスタ、複数の容量及び接続配線を含み、
前記駆動回路に含まれる全てのトランジスタは、前記第1導電型のトランジスタである、
表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の表示装置であって、
前記駆動回路は、複数のシフトレジスタユニットと、複数のラッチ回路と、を含み、
前記複数のラッチ回路の各ラッチ回路は、対応する画素回路行へ第1信号パルスを出力し、
前記複数のシフトレジスタユニットは、第2信号パルスを順次出力し、
前記複数のラッチ回路の各ラッチ回路には、第1シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスと、前記第1シフトレジスタユニットより後段の第2シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスと、が入力され、
前記複数のラッチ回路の各ラッチ回路からの前記第1信号パルスは、
前記第1シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスに応答して第1電位レベルから第2電位レベルに変化し、
前記第2シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスに応答して前記第2電位レベルから前記第1電位レベルに変化する、
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(Organic Light-Emitting Diode)素子は電流駆動型の自発光素子であるため、バックライトが不要となる上に、低消費電力、高視野角、高コントラスト比が得られるなどのメリットがあり、フラットパネルディスプレイの開発において期待されている。
【0003】
アクティブマトリックス(AM)タイプのOLED表示装置は、画素を選択するトランジスタと、画素に電流を供給する駆動トランジスタとを含む。OLED表示装置におけるトランジスタは、TFT(Thin Film Transistor)であり、一般に、LTPS(Low Temperature Poly-silicon)TFTが使用される。
【0004】
TFTは、閾電圧や電荷移動度にばらつきを持っている。駆動トランジスタは、OLED表示装置の発光強度を決定するので、こうした電気特性にばらつきがあると、問題となる。そこで、一般のOLED表示装置の画素回路には、駆動トランジスタの閾値電圧のバラツキや変動を補正する補正回路が実装される。
【0005】
例えば、OLED表示装置において、残像が発生することがあり、この現象はイメージリテンションと呼ばれる。例えば、黒と白の市松模様を特定の時間表示した後に、画面全体で中間階調を表示しようとすると、異なる階調の市松模倣の残像がしばらく表示される。
【0006】
これは、駆動トランジスタが持つ履歴効果に起因する。履歴効果とは、電界効果型トランジスタにおいて、ゲートソース間の電圧が、高い電圧から低い電圧へ変化したときのドレイン電流と、低い電圧から高い電圧へ変化したときのドレイン電流が、それぞれ異なる現象を指す。
【0007】
つまり黒から中間階調に切替えたときのドレイン電流と、白から中間階調に切替えたときのドレイン電流が異なるため、OLED表示装置の発光強度に違いが生じる。また、このドレイン電流の違いが数フレーム以上にわたって続くため、残像として視認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0264493号
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0040786号
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0372046号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
イメージリテンションは、駆動TFTの履歴効果による電流過渡応答特性と、画素回路による駆動TFTの閾値電圧補償の特性に起因する。したがって、駆動TFTの閾値電圧補償の時間を長くすることで、イメージリテンションを低減できる。閾値電圧補償の時間を長くするためには、閾値電圧補償と画素回路へのデータ書き込みを異なる期間に行うことが重要である。
【0010】
しかし、データ書き込みと閾値電圧補償を異なる期間で行うことは、これらを制御するための異なる制御信号を必要とする。また、一般的なOLED表示装置は、発光制御信号によって、OLED素子の発光のON/OFFを制御する。閾値電圧補償制御信号や発光制御信号は、データ書き込み制御信号と異なるパルス幅を持ち得る。
【0011】
シフトレジスタは所定のパルス幅を有する信号パルスを順次生成して出力することができる。一般の表示装置において、シフトレジスタを含む画素制御信号を出力する回路は、表示領域と同一基板上、表示領域の外側に配置される。例えば、表示装置の額縁領域を小さくするため、制御信号を出力する回路のサイズを小さくする回路設計が求められる。または、例えば、1フレーム期間において長い時間OLED素子の発光を維持する発光制御信を出力するシフトレジスタの設計は、データ書き込みの制御信号を出力するシフトレジスタの設計と比較して、一般に困難である。
【0012】
従って、画素回路を制御するための制御信号を出力する回路の設計をより容易に行うことができる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様の表示装置は、複数画素回路行を含む表示領域と、連結された複数シフトレジスタユニットを含むシフトレジスタと、前記シフトレジスタから入力された信号に応じて信号パルスを前記複数画素回路行に出力する、複数ラッチ回路と、を含む。前記複数ラッチ回路の各ラッチ回路は、対応する画素回路行へ第1信号パルスを出力する。前記複数シフトレジスタユニットは、第2信号パルスを順次出力する。前記複数ラッチ回路の各ラッチ回路には、第1シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスと、前記第1シフトレジスタユニットより後段の第2シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスと、が入力される。前記複数ラッチ回路の各ラッチ回路からの前記第1信号パルスは、前記第1シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスに応答して第1電位レベルから第2電位レベルに変化し、前記第2シフトレジスタユニットからの前記第2信号パルスに応答して前記第2電位レベルから前記第1電位レベルに変化する。
【0014】
本開示の一態様の表示装置は、表示領域と、前記表示領域の外側に配置された前記表示領域の駆動回路と、を含む。前記表示領域は、複数の画素回路と、前記複数の画素に接続された、複数の第1制御線、複数の第2制御線、複数の信号線、及び複数の電源線と、を含む。前記複数の画素回路の各画素回路は、発光素子と、複数の第1導電型を有するスイッチトランジスタと、第2導電型を有し、前記発光素子の発光のON/OFFを制御する発光制御トランジスタと、前記第2導電型を有し、前記発光素子への電流量を制御する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタに接続された保持容量と、を含む。前記複数の第1制御線は、それぞれ、前記駆動回路から前記第1導電型を有するスイッチトランジスタへの第1制御信号を伝送する。前記複数の第2制御線は、それぞれ、前記駆動回路から前記第2導電型を有する発光制御トランジスタへの第2制御信号を伝送する。前記駆動回路は、複数のトランジスタ、複数の容量及び接続配線を含む。前記駆動回路の含まれる全てのトランジスタは、前記第1導電型のトランジスタである。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、画素回路の制御信号を出力する回路の設計が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】OLED表示装置のTFT(Thin Film Transistor)基板及びTFT基板に実装された制御回路の構成例を模式的に示す。
【
図2】本明細書の一実施形態に係る画素回路の構成例を示す。
【
図3】
図2に示す画素回路を制御する信号のタイミングチャートの例を示す。
【
図4】連続する4段の画素回路行における閾値補償期間及びデータ書き込み期間の関係を模式的に示す。
【
図5】ラッチ回路群に含まれるラッチ回路の構成例を示す。
【
図8】シフトレジスタ回路とラッチ回路群の構成例及び配のレイアウトの例を模式的に示す。
【
図9】ラッチ回路群に含まれるN段目のラッチ回路への入出信号を示す。
【
図10A】発光制御信号Emを生成するための、シフトレジスタ回路とラッチ回路群の構成例及び配線のレイアウトの例を模式的に示す。
【
図10B】
図10のラッチ回路群の出力信号Emのタイミングチャートである。
【
図11】ラッチ回路から選択信号S1を伝送する信号線を、電源電位VOFFに接続する構成例を示す。
【
図12】
図11に示す回路における制御信号のタイミングチャートを示す。
【
図13】S1信号線の電位に電源電位VOFFを与える他の構成例を示す。
【
図14】
図13に示す構成例における制御信号のタイミングチャートを示す。
【
図16】1フレーム期間において、
図15に示す画素回路を制御する信号のタイミングチャートを示す。
【
図17】当該ラッチ回路群において使用されるラッチ回路の構成例を示す。
【
図18】ラッチ回路の入力信号及び出力信号のタイミングチャートを示す。
【
図19】シフトレジスタ回路とラッチ回路群の組み合わせによって、制御信号S1、S2及びEmを生成、出力する回路構成例を模式的に示す。
【
図20】ラッチ回路のレイアウト例を模式的に示す平面図である。
【
図21】
図20におけるXXI-XXI切断線における断面構造を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、図面を参照して実施形態を説明する。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。説明をわかりやすくするため、図示した物の寸法、形状については、誇張して記載している場合もある。
【0018】
以下において、OLED(Organic Light-Emitting Diode)表示装置のように、駆動電流により発光する発光素子を使用する発光型表示装置において、画素回路の制御信号を生成して出力する回路の構成が開示される。本明細書の一実施形態に係る表示装置は、シフトレジスタ回路と複数ラッチ回路の組み合わせによって、画素回路を制御するための制御信号を生成し、出力する。シフトレジスタ回路と複数ラッチ回路の組み合わせにより、所望のパルス幅を有する信号パルスを出力する回路を容易に設計することができる。
【0019】
例えば、イメージリテンションは、駆動TFTの閾値電圧補償の時間を長くすることで低減できる。データ書き込みと閾値電圧補償を異なる期間で行うことで、より長い閾値電圧補償期間が可能となる。シフトレジスタ回路と複数ラッチ回路の組み合わせにより、データ書き込み期間の制御信号及び閾値電圧補償期間の制御信号を容易に生成することができる。
【0020】
シフトレジスタ回路は、連結された複数のシフトレジスタユニットを含む。例えば、各シフトレジスタユニットは、対応する画素回路行に対して、データ書き込み期間の制御信号を出力する。各ラッチ回路は、異なる二つのシフトレジスタユニットからの制御信号を受け、対応する画素回路行に対して、閾値電圧補償期間の制御信号を出力する。この構成においては、閾値電圧補償期間の制御信号のためのシフトレジスタ回路が不要であり、回路面積を小さくできる。
【0021】
他の例において、シフトレジスタ回路と複数ラッチ回路の組み合わせは、発光素子の発光のON/OFFを制御する発光制御信号を生成して出力することができる。各ラッチ回路は、異なる二つのシフトレジスタユニットからの信号を受け、対応する画素回路行に対して、発光制御信号を出力する。この構成により、発光制御信号を生成するドライバ回路を容易に設計することができる。
【0022】
シフトレジスタ回路と複数ラッチ回路の組み合わせは、発光制御信号に加えて、データ書き込み信号を生成及び出力してもよい。各シフトレジスタユニットは、対応する画素回路行に対して、データ書き込み期間の制御信号を出力する。各ラッチ回路は、異なる二つのシフトレジスタユニットからのデータ書き込み制御信号を受けて、対応する画素回路行に対して発光制御信号を出力する。
【0023】
[表示装置の構成]
以下において、本明細書の実施形態をより具体的に説明する。
図1は、OLED表示装置のTFT(Thin Film Transistor)基板及びTFT基板に実装された制御回路の構成例を模式的に示す。
図1において、複数の同種要素のうちの一つのみが、符号で指示されている。OLED表示装置1は、OLED素子及び画素回路が形成されるTFT基板10と、不図示の有機発光素子を封止する薄膜封止構造(TFE:Thin Film Encapsulation)と、を含んで構成される。
【0024】
薄膜封止構造は、封止構造部の一つであり、他の例として、封止構造部は、有機発光素子を封止する封止基板と、TFT基板と封止基板とを接合する接合部(ガラスフリットシール部)を含むことができる。TFT基板と封止基板との間には、例えば、乾燥窒素が封入される。
【0025】
TFT基板10は絶縁基板を含み、その絶縁基板上に画像を表示する表示領域101が形成されている。表示領域101の外側に、第1のシフトレジスタ(SR)回路111、ラッチ回路群113、第2のシフトレジスタ回路115、及びドライバIC117が配置されている。
図1において、シフトレジスタ回路111は表示領域101の左側、シフトレジスタ回路115は表示領域101の右側に配置されており、これらは対向している。シフトレジスタ回路111とラッチ回路群113との間の領域には、それらを接続する配線112が形成されている。
【0026】
ドライバIC117は、不図示のFPC(Flexible Printed Circuit)を介して外部の機器と接続される。FPCの接続端子は、TFT基板10上の接続端子139と相互接続される。
【0027】
第1のシフトレジスタ回路111は、TFT基板10上のS2信号線132を駆動する。S2信号線132は、シフトレジスタ回路111からX軸に沿って延びY軸に沿って配列されている。
図1において、S2信号線132は点線で表されている。シフトレジスタ回路111は、S2信号線132に対して、後述する制御信号S2のパルスを順次出力する。ラッチ回路群113は、TFT基板10上のS1信号線131を駆動する。S1信号線131は、ラッチ回路群113からX軸に沿って延びY軸に沿って配列されている。ラッチ回路群113は、S1信号線131に対して、後述する制御信号S1のパルスを順次出力する。
【0028】
第2のシフトレジスタ回路115は、エミッション信号線(Em信号線)133を駆動して、各画素の発光期間を制御する。Em信号線133は、シフトレジスタ回路115からX軸に沿って延びY軸に沿って配列されている。シフトレジスタ回路115は、Em信号線133に対して、後述するEm信号(発光制御信号)のパルスを順次出力する。
【0029】
ドライバIC117は、例えば、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を用いて実装される。ドライバIC117は、シフトレジスタ回路111、115に、電源及びタイミング信号(制御信号)を与える。ドライバIC117は、データ線137に画素の輝度を規定するデータ信号を出力する。
図1の構成例において、データ線137は、Y軸に沿って延び、X軸に沿って配列されている。ドライバIC117は、各データ線137に対して、選択されているOLED素子の輝度を規定するデータ信号を与える。
【0030】
表示領域101は、複数の画素それぞれのOLED素子の発光を制御する複数の画素回路107を含む。
図1の構成例において、画素回路は、マトリックス状に配置されている。画素回路のレイアウトは特に限定されない。カラーOLED表示装置において、各OLED素子は、例えば、赤、青又は緑のいずれかの色を発光する。複数の画素回路は、画素回路アレイを構成する。
【0031】
複数の画素回路からなる一つの画素回路行は、S1信号線131、S2信号線132及びEm信号線133がそれぞれに接続されている。S1信号線131、S2信号線132及びEm信号線133は、それぞれ、対応する画素回路行に制御信号S1、制御信号S2及び制御信号Emを伝送する。各データ線137は、一つの画素回路列に接続されており、各画素回路列は、画素回路行それぞれにおける一つの画素回路に接続されている。データ線137は、選択された画素回路行の画素回路に、発光輝度を指定するデータ信号を伝送する。
【0032】
TFT基板10上に、アノード電源線141及びリセット電源線142が配設されている。アノード電源線141は、OLED素子のアノードに与えられる電源電位を伝送する。
図1において、アノード電源線141は破線で示され、そのパターンは、X軸に沿って延びる線と、それらに接続され、Y軸に沿って延び、X軸に沿って配列された複数の線とを含む。
【0033】
リセット電源線142は、画素回路の所定ノードの電位をリセットするための電源電位を伝送する。
図1において、リセット電源線142は破線で示され、そのパターンは、X軸に沿って延びる線と、それに接続され、Y軸に沿って延び、X軸に沿って配列された複数の線とを含む。これら電源電位は、例えば、外部の電源回路又はドライバIC117内の電源回路から与えることができる。なお、
図1において、
図2を参照して後述する電源線の一部は省略されている。
【0034】
後述するように、各画素回路は、駆動TFT(駆動トランジスタ)と、駆動TFTの駆動電流を決める信号電圧を保持する保持容量を含む。データ線137が伝送するデータ信号は、補正されて保持容量に蓄積される(書き込まれる)。保持容量の電圧は、駆動TFTのゲート電圧(Vgs)を決定する。補正されたデータ信号が駆動TFTのコンダクタンスをアナログ的に変化させ、発光階調に対応した順バイアス電流をOLED素子に供給する。
【0035】
[画素回路の構成]
図2は、本明細書の一実施形態に係る画素回路107の構成例を示す。画素回路107は、N段目(Nは整数)の画素回路行に含まれる。画素回路107は、ゲート、ソースおよびドレインを持った6つのトランジスタ(TFT)M11~M16を含む。本例において、全てのトランジスタM11~M16はP型TFTである。
【0036】
トランジスタM11は、OLED素子E1への電流量を制御する駆動トランジスタである。駆動トランジスタM11は、電源電位PVDDを与えるアノード電源からOLED素子E1に与える電流量を、保持容量C10が保持する電圧に応じて制御する。保持容量C10は、書き込まれた電圧を、1フレーム期間を通じて保持する。OLED素子E1のカソードは、カソード電源からの電源電位PVEEを伝送する電源線204に接続されている。
【0037】
図2の構成例において、保持容量C10は直列に接続された容量C11及びC12で構成されている。保持容量C10の一端には、アノード電源電位PVDDが与えられ、他の一端はスイッチトランジスタM13及びM14のソース/ドレインに接続されている。また、保持容量C10の他の一端は、駆動トランジスタM11のゲートに接続されている。より具体的には、容量C12の一端は、電源線141に接続されている。容量C11の一端は、スイッチトランジスタM13及びM14のソース/ドレインに接続されている。容量C11及びC12の中間ノードが、駆動トランジスタM11のゲートに接続されている。
【0038】
保持容量C10の電圧は、駆動トランジスタM11のゲートとアノード電源線141との間の電圧である。駆動トランジスタM11のソースはアノード電源線141に接続され、ソース電位はアノード電源電位PVDDである。したがって、保持容量C10は、駆動トランジスタM11のゲートソース間電圧を保持する。
図2の構成例において、容量C12が、駆動トランジスタM11のゲートソース間電圧を保持する。
【0039】
トランジスタM15はOLED素子E1の発光のON/OFFを制御するスイッチトランジスタである。トランジスタM15のソースが駆動トランジスタM11のドレインに接続されている。トランジスタM15は、そのドレインに接続されたOLED素子E1への電流供給をON/OFFする。トランジスタM15のゲートはEm信号線(発光制御線)133に接続され、トランジスタM15は、シフトレジスタ回路115からゲートに入力される発光制御信号Emにより制御される。
【0040】
トランジスタM16は、OLED素子E1のアノードへのリセット電位Vrstの供給のために動作する。トランジスタM16のソース/ドレインの一端はリセット電位Vrstを伝送する電源線142に接続され、他端はOLED素子E1のアノードに接続されている。
【0041】
トランジスタM16のゲートはS1信号線131に接続され、トランジスタM16は、制御信号S1により制御される。トランジスタM16は、ラッチ回路群113からゲートに入力される制御信号S1によりONにされると、電源線142により伝送されたリセット電位Vrstを、OLED素子E1のアノードへ与える。また、トランジスタM16は、OLED素子E1のアノードにリセット電位Vrstを供給すると同時に、リセット期間に電源PVDDから、M11、M15を介して流れ込む電流をバイパスし、漏れ発光を防止する機能を持つ。
【0042】
トランジスタM12は、駆動トランジスタM11の閾値補正(閾値補償)を行うための電圧を保持容量C10に書き込むためのスイッチトランジスタであり、駆動トランジスタM11のゲート電位をリセットするためのトランジスタである。トランジスタM12のソース及びドレインは、駆動トランジスタM11のゲート及びドレインを接続する。そのため、トランジスタM12がONであるとき、駆動トランジスタM11はダイオード接続の状態にある。
【0043】
トランジスタM14は、駆動トランジスタM11の閾値補償を行うための電圧を保持容量C10に書き込むためのスイッチトランジスタである。トランジスタM14は、保持容量C10への基準電位Vrefの供給の有無を制御する。トランジスタM14のソース/ドレインの一端は基準電位Vrefを伝送する電源線202に接続され、他端は容量C11の一端に接続されている。トランジスタM14のゲートはS1信号線131に接続され、トランジスタM14は、ラッチ回路群113からゲートに入力される制御信号S1により制御される。
【0044】
トランジスタM12、M16及びM14は、制御信号S1により制御される。したがって、これらトランジスタM12、M16及びM14は、同時にON/OFFされる。これらがONの状態にある期間において、発光制御トランジスタM15がONされて駆動トランジスタM11のゲート電位がリセットされた後、発光制御トランジスタM15がOFFされる。トランジスタM12及びM14がONであるとき、トランジスタM11はダイオード接続されたトランジスタを構成する。電源電位PVDDと基準電位Vrefと間において、保持容量C10に閾値補償電圧が書き込まれる。
【0045】
トランジスタM13は、データ信号を供給する画素回路を選択し、保持容量C10にデータ信号(データ信号電圧)を書き込むためのスイッチトランジスタである。トランジスタM13のソース/ドレインの一端は、データ信号Vdataを伝送するデータ線137に接続され、他端は保持容量C10に接続されている。より具体的には、トランジスタM13のソース/ドレインの一端は、容量C11の一端に接続されている。
【0046】
トランジスタM13のゲートは、データ信号を書き込む画素回路行を選択する制御信号S2を伝送するS2信号線132に接続されている。トランジスタM13は、シフトレジスタ回路111から供給される制御信号S2により制御される。トランジスタM13がONのとき、トランジスタM13は、ドライバIC117からデータ線137を介して供給されるデータ信号Vdataを、保持容量C10に与える。
【0047】
図3は、
図2に示す画素回路107を制御する信号のタイミングチャートの例を示す。
図3は、N段目の画素回路行の画素回路に、駆動トランジスタM11の閾値補償電圧及びデータ信号Vdataを書き込むためのタイミングチャートを示す。具体的には、
図3は、データ信号Vdataを書き込むN段目の画素回路行の選択信号S1_N、S2_N、N段目の画素回路行の発光制御信号Em_N、(N-6)段目の画素回路行の選択信号S2_N-6の、1フレームにおける時間変化を示す。
図3は、信号電位レベルの変化を示す。選択信号は制御信号の一つであり、走査信号とも呼ぶ。
【0048】
図3のタイミングチャートにおいて、1H期間は、画素回路にデータ信号Vdataを書き込む期間であり、選択信号S2がLowである期間である。閾値補償期間は、1H以上であり、
図3の例において5Hである。
【0049】
時刻T1において、選択信号S2_N-6が、HighからLowに変化する。後述するように、選択信号S2_N-6の変化に応じて、選択信号S1_Nが、HighからLowに変化する。選択信号S1_Nの変化に応じて、トランジスタM12、M14及びM16がONになる。時刻T1において、発光制御信号Em_NはLowであるため、トランジスタM15はONである。
【0050】
トランジスタM12、M14~M16がONであるため、リセット電位VrstがOLED素子E1のアノードに与えられ、さらに、駆動トランジスタM11のゲートに与えられる。時刻T2において、発光制御信号Em_NはLowからHighに変化する。時刻T1からT2は、駆動トランジスタM11のゲート電圧のリセット期間である。時刻T2において、さらに、選択信号S2_N-6が、LowからHighに変化する。時刻T1からT2は、(N-6)段目の画素回路行へのデータ信号の書き込み期間である。時刻T1からT2の期間は1Hである。
【0051】
時刻T2から時刻T3まで、信号S1_N、S2_N、Em_N、S2_N-6の電位レベルが維持される。トランジスタM12、M14、M16がONであり、トランジスタM15を含む他のトランジスタOFFである。時刻T2から時刻T3までの期間において、保持容量C10に閾値補償電圧が書き込まれる。時刻T2から時刻T3の期間は閾値補償期間であり、その長さは5Hである。
【0052】
時刻T3において、選択信号S2_Nが、HighからLowに変化する。後述するように、選択信号S2_Nの変化に応答して、選択信号S1_Nは、LowからHighに変化する。選択信号S1_Nの変化に応答して、トランジスタM12、M14、M16はOFFになる。時刻T3以降、選択信号S1_NはHighに維持される。
【0053】
また、選択信号S2_Nの変化に応答して、トランジスタM13はOFFからONになる。これにより、保持容量C10へのデータ信号Vdataの書き込みが開始する。時刻T4において、選択信号S2_Nが、HighからLowに変化する。これにより、トランジスタM13はONからOFFになり、N段目の画素回路行へのデータ書き込みが終了する。時刻T3からT4は、N段目の画素回路行へのデータ書き込み期間であり、その長さは1Hである。時刻T4以降、選択信号S2_NはHighに維持される。
【0054】
時刻T4において、発光制御信号Em_NはHighからLowに変化する。これにより、トランジスタM15は、OFFからONに変化する。これによりOLED素子E1に駆動電流が与えられ、OLED素子が発光を開始する。
【0055】
図4は、連続する4段の画素回路行における閾値補償期間及びデータ書き込み期間の関係を模式的に示す。各画素回路行において、閾値補償期間の後にデータ書き込み期間が続く。データ書き込み期間及び閾値補償期間の長さは画素回路行に共通である。データ書き込み期間の長さは1Hであり、閾値補償期間の長さは、(q-1)*Hである。qは2以上の整数である。より適切な閾値補償を行うためには、qは3以上の整数に設定される。
図3を参照して説明した例においてqは6である。
【0056】
後述するように、閾値補償期間の長さは、選択信号S1_Nを変化させるより前の段の選択信号S2_N-qに応じて変化する。上述のように、選択信号S1_NがLowである期間はqHであり、閾値補償期間は、(q-1)*Hである。表示装置の設計において適切な閾値補償期間が得られるように、qは選択される。
【0057】
図4に示すように、データ信号は、画素回路行に順次書き込まれる。各画素回路行のデータ書き込み期間は、前段のデータ書き込み期間の終了後すぐに開始し、異なる画素回路行のデータ書き込み期間が重なることはない。閾値補償期間は、直前の閾値補償期間の一部及びデータ書き込み期間と重なっている。閾値補償期間は、直前の段からいくつかの段の画素回路行のデータ書き込み期間と重なり得る。
【0058】
[シフトレジスタ回路とラッチ回路群の組み合わせ]
図5は、ラッチ回路群113に含まれるラッチ回路300の構成例を示す。
図5に示すラッチ回路300は、N段目の画素回路行に選択信号S1_Nを出力する。ラッチ回路300は、信号が入力されるSET端子301及びRST端子302を含み、信号を出力するQ端子303を含む。
【0059】
シフトレジスタ回路111からの(N-6)段目の画素回路行の選択信号S2_N-6が、SET端子301に入力される。N段目の画素回路行の選択信号S2_NがRST端子302に入力される。ラッチ回路300は、Q端子303から、S1_N信号をN段目の画素回路行のS1信号線131に出力する。
【0060】
図6は、ラッチ回路300の真理値表を示す。
図6の真理値表において、Lは論理的なLowレベルを示し、Hは論理的なHレベルを示す。
図3から5を参照して説明した構成において、信号S1及びS2のHigh電位レベルが論理的Lowに対応し、Low電位レベルが論理的Highに対応する。
【0061】
SET入力がL、RST入力がLのとき、Q出力はLである。SET入力がH、RST入力がLのとき、Q出力はHであり、その後、SET入力が変化しても、Q出力はHに保持される。SET入力がL、RST入力がHのとき、Q出力はLである。SET入力及びRST入力がHの状態は禁止される。
【0062】
図3及び5を参照した説明から理解されるように、シフトレジスタ回路111は、選択信号S2のパルスを、対応する画素回路行に、順次出力する。パルス幅は1Hである。各ラッチ回路300は、対応する画素回路行に対して、S1信号を出力する。
【0063】
上述のように、N段目のラッチ回路300は、所定の前段の選択信号S2_N-qのLow電位レベル(H論理レベル)のパルスをSET端子301において受けて、Q端子303からの選択信号S1_NをLow電位レベルに変化させる。その後、選択信号S2_N-qは、High電位レベル(L論理レベル)に変化するが、RST端子302への入力S2_NはHigh電位レベルであり、Q端子303からの選択信号S1_NはLow電位レベルに維持される。
【0064】
その後、ラッチ回路300は、N段目の画素回路行の選択信号S2_NのLow電位レベル(H論理レベル)のパルスをRST端子302において受けて、Q端子303からの選択信号S1_NをHigh電位レベル(L論理レベル)に変化させる。ラッチ回路300からの出力されるS1_N信号のパルス幅は、qHである。
【0065】
図7は、ラッチ回路300の回路構成例を示す。
図7の構成例において、ラッチ回路300は四つのトランジスタと一つの容量素子で構成されている。四つのトランジスタM21~M24は、P型トランジスタである。トランジスタM21はダイオード接続状態であり、そのドレインがSET端子301からの入力を受ける。トランジスタM22は、トランジスタM21と電源電位PVEEを与える電源との間に接続され、そのゲートがRST端子302からの入力を受ける。
【0066】
トランジスタM23は電源電位PVDDを与える電源とQ端子303との間に接続され、そのゲートはトランジスタM21とM22の中間ノードに接続されている。トランジスタM24は、トランジスタM23と電源電位PVEEを与える電源との間に接続され、そのゲートがRST入力を受ける。容量素子Cbは、トランジスタM23のゲートと、Q端子303との間に接続されている。トランジスタM23とM24の間の中間ノードが、Q端子303に接続されている。
【0067】
図8は、シフトレジスタ回路111とラッチ回路群113の構成例及び配線112のレイアウトの例を模式的に示す。シフトレジスタ回路111は、直列に連結された複数のシフトレジスタユニットを含む。
図8において一つのシフトレジスタユニットのみが符号400で指示されている。
【0068】
図8は、(N-6)段目のシフトレジスタユニット400から(N+3)段目のシフトレジスタユニット400を示している。これらシフトレジスタユニット400は、同一段目の画素回路行に対応する。二つのクロック信号CK、CKBに従って、データビットが、前段のシフトレジスタユニット400から次段のシフトレジスタユニット400に移動する。データビットを保持するシフトレジスタユニット400は、信号パルスを出力する。
【0069】
ラッチ回路群113は、複数のラッチ回路300を含む。
図8において一つのシフトレラッチ回路のみが符号300で指示されている。
図8は、(N-6)段目のラッチ回路300から(N+3)段目のラッチ回路300を示している。これらラッチ回路300は、同一段目の画素回路行に対応する。
【0070】
シフトレジスタ回路111は、画素回路行それぞれに対応するシフトレジスタユニット400を含む。画素回路行に対応するシフトレジスタユニット400は、当該画素回路行及び二つのラッチ回路300に信号パルスを出力する。シフトレジスタユニット400の数は、画素回路行の数より多い。一部のシフトレジスタユニット400(不図示)は、画素回路行に接続されておらず、ラッチ回路300のみに信号を出力する。
【0071】
各ラッチ回路300の二つの入力は、異なる段のシフトレジスタユニット400の出力に接続されている。具体的には、より前段のシフトレジスタユニット400からの出力が、SET端子に入力され、より後段のシフトレジスタユニット400からの出力がRST端子に入力される。
図8に示す構成例において、(N-6)段目のシフトレジスタユニット400の出力は、N段目のラッチ回路300のSET端子に入力され、N段目のシフトレジスタユニット400の出力は、N段目のラッチ回路300のRST端子に入力される。
【0072】
N段目のシフトレジスタユニット400は、N段目の画素列行、N段目のラッチ回路300のRST端子、及び(N+6)段目のラッチ回路300のSET端子、及びN段目の選択信号S2を出力する。N段目のシフトレジスタユニット400は、これらに同時に信号パルスを出力する。
【0073】
N段目のラッチ回路300は、N段目の画素回路行に対してQ端子から選択信号S1を出力する。上述のように、N段目のラッチ回路300は、(N-6)段目のシフトレジスタユニット400からの信号パルスに応じて選択信号S1のパルスを開始し、N段目のシフトレジスタユニット400からの信号パルスに応じてパルスを終了する。ラッチ回路350からのパルスは第1信号パルスであり、シフトレジスタユニット400からのパルスは第2信号パルスである。
図3に示した駆動信号S1_Nは、2つのシフトレジスタユニットと1つのラッチ回路から、以上のようにして生成される。
【0074】
N段目のシフトレジスタユニット400及びN段目のラッチ回路300についての上記説明は、画素回路行それぞれに対応する他の段のシフトレジスタユニット400及びラッチ回路300に適用できる。また、上記例は、6段離れた二つのシフトレジスタユニット400からの出力で、ラッチ回路300が制御されるが、ラッチ回路300を制御するシフトレジスタユニット400の位置関係は、選択信号S1のパルス幅に応じて決定される。
【0075】
より一般的に記載すると、N段目のラッチ回路300の出力は、K段目のシフトレジスタユニットからのパルスによりセットされ、(K+p)段目のシフトレジスタユニットからの信号パルスによってリセットされる。Kは整数、pは2以上の整数である。上記例において、Kは(N-6)、pは6である。
【0076】
(N+q)段目のラッチ回路の出力は、(K+q)段目のシフトレジスタユニットからの信号パルスによりセットされ、(K+q+p)段目のシフトレジスタユニットからの信号パルスによってリセットされる。qは、1以上の整数である。ラッチ回路300からのパルスは、p*Hのパルス幅を有する。また、(N+q)段目のラッチ回路300からのパルスは、N段目のラッチ回路300からのパルスに対してq*Hの時間遅れを有する。上述のように、閾値補償期間は、(p-1)*Hである。
【0077】
次に、シフトレジスタ回路とラッチ回路群の組み合わせにより、発光制御信号Emを生成する構成を説明する。
図9は、ラッチ回路群に含まれるN段目のラッチ回路350への入出信号を示す。ラッチ回路350の真理値表は、
図6を参照して説明した通りである。
【0078】
ラッチ回路350のRST端子352に、(N-5)段目のシフトレジスタからの選択信号S2_N-5が入力される。ラッチ回路350のSET端子351に、(N+1)段目のシフトレジスタからの選択信号S2_N+1が入力される。ラッチ回路350は、Q端子353から、N段目の画素回路行に発光制御信号Em_Nを出力する。閾値補償期間が(p-1)*Hであるとき、ラッチ回路350のRST端子352に、(N-(p-1))段目のシフトレジスタからの選択信号S2が入力される。
【0079】
図10Aは、発光制御信号Emを生成するための、シフトレジスタ回路とラッチ回路群の構成例及び配線のレイアウトの例を模式的に示す。これにより、発光制御信号Emを生成するための回路をより容易に設計することが可能となる。
【0080】
シフトレジスタ回路451は、直列に連結された複数のシフトレジスタユニット452を含む。一つのシフトレジスタユニットのみが符号452で指示されている。シフトレジスタユニット452の構成は、シフトレジスタユニット400と同様である。シフトレジスタ回路451は、画素回路に信号を直接出せず、ラッチ回路群461にのみ出力する。
【0081】
ラッチ回路群461は、画素回路行それぞれに対応するラッチ回路350を含む。一つ
のラッチ回路が、符号350で指示されている。ラッチ回路群461の構成は、
図8を参照して説明した構成と同様である。
図8の構成と比較して、シフトレジスタ回路451とラッチ回路群461との間の接続配線471が異なる。
【0082】
図10Aは、(N-6)段目のシフトレジスタユニット452及びラッチ回路350から(N+3)段目のシフトレジスタユニット452及びラッチ回路350を示している。ラッチ回路350は、同一段目の画素回路行に対応する。シフトレジスタユニット452の数は、画素回路行の数より多い。
【0083】
各ラッチ回路350の二つの入力は、異なるシフトレジスタユニット452の出力に接続されている。具体的には、より前段のシフトレジスタユニット452からの出力が、RST端子に入力され、より後段のシフトレジスタユニット452からの出力がSET端子に入力される。
図10Aに示す構成例において、(N-5)段目のシフトレジスタユニット452の出力は、N段目のラッチ回路350のRST端子に入力され、(N+1)段目のシフトレジスタユニット452の出力は、N段目のラッチ回路350のSET端子に入力される。
【0084】
N段目のシフトレジスタユニット452は、(N-1)段目のラッチ回路350のSET端子及び(N+5)段目のラッチ回路350のRST端子に制御信号を出力する。N段目のシフトレジスタユニット452は、これらに同時に信号パルスを出力する。
【0085】
N段目のラッチ回路350は、N段目の画素回路行に対してQ端子から発光制御信号Emを出力する。N段目のラッチ回路350は、(N-5)段目のシフトレジスタユニット452からの信号パルスに応じて発光制御信号Emのパルスを開始し、(N+1)段目のシフトレジスタユニット452からの信号パルスに応じてパルスを終了する。
【0086】
発光制御信号Emのパルスの向き(電位レベル)は、選択信号S1のパルスの向きと逆である。各信号のタイミングチャートは
図10Bに示す通りである。ラッチ回路350からのパルスは第1信号パルスであり、シフトレジスタユニット452からのパルスは第2信号パルスである。
【0087】
N段目のシフトレジスタユニット452及びN段目のラッチ回路350についての上記説明は、画素回路行それぞれに対応する他の段のラッチ回路350及びそれらに対応するシフトレジスタユニット452に適用できる。また、上記例は、6段離れた二つのシフトレジスタユニット452からの出力で、ラッチ回路350が制御されるが、ラッチ回路350を制御するシフトレジスタユニット452の位置関係は、発光制御信号Emのパルス幅に応じて決定される。
【0088】
より一般的に記載すると、N段目のラッチ回路の出力は、K段目のシフトレジスタユニットからのパルスによりリセットされ、(K+p)段目のシフトレジスタユニットからの信号パルスによってセットされる。上記例において、Kは(N-5)、pは6である。
【0089】
(N+q)段目のラッチ回路の出力は、(K+q)段目のシフトレジスタユニットからの信号パルスによりリセットされ、(K+q+p)段目のシフトレジスタユニットからの信号パルスによってセットされる。ラッチ回路350からのパルスは、p*Hのパルス幅を有する。また、(N+q)段目のラッチ回路350からのパルスは、N段目のラッチ回路350からのパルスに対してq*Hの時間遅れを有する。上述のように、OLED素子E1への電流供給をOFFとする期間は、(p-1)*Hである。
【0090】
図10Aを参照して説明した構成例は、シフトレジスタ回路とラッチ回路群の組み合わせにより、選択信号S2を生成することなく、発光制御信号Emのみを生成、出力する。他の構成例は、発光制御信号Emに加えて選択信号S2を生成、出力してもよい。この場合、OLED表示装置は、選択信号S1を生成し、ラッチ回路を介することなく出力するシフトレジスタを含む。
【0091】
選択信号S2及び発光制御信号Emを生成する回路は、
図10Aの構成例に、シフトレジスタユニット452の出力から対応する画素回路行への制御信号線を追加する。画素回路行と接続されているシフトレジスタユニット452は、
図10Aを参照して説明した二つのラッチ回路と共に、同一段目の画素回路行に対しても信号パルスを出力する。本発明の駆動方法は、以上説明した2つの実施例に限定されるものではなく、ラッチ回路へ入力するSET信号、RST信号の時間順序、時間間隔を変えれば、任意の時間幅のパルスを生成することができる、汎用性が高い方法である。
【0092】
図11は、ラッチ回路300から選択信号S1を伝送する信号線131を、電源電位VOFFに接続する構成例を示す。これにより、S1信号線が発光期間中にフローティングとなることを防止できる。
【0093】
発光期間においては、S1信号線に接続されるトランジスタM23とM24はオフ状態のため、S1信号線は電気的にフローティング状態となる。S1信号線の電位は、信号線全体の電気容量によって保持されるが、表示領域内においてS1信号線と交差するデータ線との結合容量を介したフィードスルーノイズによって、変動する。この電位変動が大きい場合、画像品質を低下させる可能性がある。このため、発光期間中に、S1信号線の電位を固定することが、より望ましい。
【0094】
図11の構成例は、S1信号線131と電源電位VOFFの電源線との接続をON/OFFするリセットスイッチ(スイッチトランジスタ)501を含む。
図11の構成例において、リセットスイッチ501は、P型TFTである。リセットスイッチ501は、S1信号線131それぞれに実装される。電源電位VOFFは、選択信号S1のパルス電位と反対の電位であって、
図2から10を参照して説明した構成例において、High電位レベルである。
【0095】
リセットスイッチ501のON/OFFは、シフトレジスタ回路115から出力される発光制御信号Emにより制御される。発光制御信号は、OLED素子E1への駆動電流の供給の有無を制御する信号である。具体的には、N段目のS1信号線131に対して電源電位VOFFの供給をON/OFFするリセットスイッチ501は、同じN段目の発光制御信号Em_NによりON/OFFされる。
【0096】
図12は、
図11に示す回路における制御信号のタイミングチャートを示す。以下において、
図3に示すタイミングチャートとの相違点を主に説明する。発光制御信号Em_Nは、時刻T1より1H前の時刻T0に、LowレベルからHighレベルに変化する。発光制御信号Em_NがLowレベルのとき、リセットスイッチ501はONであり、N段目のS1信号線131の電位は、電源電位VOFFに固定されている。
【0097】
発光制御信号Em_NのHighレベルへの変化に応答して、リセットスイッチ501はOFFとなる。S1信号線131は、フローティング状態にある。時刻T1において、ラッチ回路300は、選択信号S1_NにLowレベルの信号出力を開始する。発光制御信号Em_NはHighレベルであり、トランジスタM15はOFFである。OLED素子E1のアノードにリセット電位Vrstが与えられ、駆動トランジスタM11のゲートに与えられない。
【0098】
時刻T4より1Hだけ後の時刻T5において、発光制御信号Em_Nは、HighレベルからLowレベルに変化する。発光制御信号Em_NのHighレベルへの変化に応答して、リセットスイッチ501はOFFとなる。リセットスイッチ501はONとなり、N段目のS1信号線131の電位は、電源電位VOFFに固定されている。
【0099】
図13は、S1信号線の電位に電源電位VOFFを与える他の構成例を示す。
図13に示す構成例は、シフトレジスタ回路503とラッチ回路群の組み合わせにより、リセットスイッチ501を制御する信号VRSTを生成、出力する。
図13はN段目のラッチ回路505を例として示すが、全ての段のS1信号線それぞれに対応するラッチ回路505が実装される。ラッチ回路505の出力は、同段目のリセットスイッチ501のゲートに入力される。シフトレジスタユニットのパルス期間は1Hである。
【0100】
図13に示す構成例において、N段目のラッチ回路505のRST端子に(N-6)段目のシフトレジスタユニットの出力が入力され、SET端子にN段目のシフトレジスタユニットの出力が入力される。N段目のラッチ回路505は、Q端子からN段目のリセットスイッチ501のゲートに制御信号VRESETを出力する。
【0101】
図14は、
図13に示す構成例における制御信号のタイミングチャートを示す。
図3に示すタイミングチャートとの相違点を主に説明する。
図14に示すように、N段目のリセットスイッチ501の制御信号VRSETは、N段目の選択信号S1と相補的に変化する。つまり、一方がHigh又はLowレベルのとき、他方はLow又はHighレベルである。これにより、S1信号線の電位を安定させることができる。
【0102】
時刻T0において、ラッチ回路505のRST端子への制御信号R_N-6のパルスにより、ラッチ回路505の出力は、論理的Hから論理的Lに変化する。つまり、ラッチ回路505の出力VRESETは、Low電位レベルからHigh電位レベルに変化する。これにより、リセットスイッチ501はOFFされる。
【0103】
その後、時刻T3において、ラッチ回路505のSET端子への制御信号R_Nのパルスにより、ラッチ回路505の出力は、論理的Lから論理的Hに変化する。つまり、ラッチ回路505の出力VRESETは、High電位レベルからLow電位レベルに変化する。これにより、リセットスイッチ501はONされ、電源電位VOFFがS1信号線に与えられる。
【0104】
図11から
図14を参照して説明したように、各ラッチ回路からのパルスを画素回路行に伝送する配線は、パルスが終了した後、Highレベルの電位の電源線に接続される。これにより、配線電位を安定させることができる。なお、配線を供給する電位レベルは、パルスの基準電位レベルであり、S1信号の波形によりLowレベルであることもある。
【0105】
図13及び14を参照して説明構成例は、第2シフトレジスタ回路503と、複数の第2ラッチ回路505を含む。各ラッチ回路505は、対応するリセットスイッチ501へ信号パルスを出力する。
【0106】
シフトレジスタ回路503は、信号パルスを順次出力する。各ラッチ回路505には、シフトレジスタ回路503の一つのシフトレジスタユニットからの信号パルスと、そのシフトレジスタユニットより後段のシフトレジスタユニットからの信号パルスと、が入力される。各ラッチ回路505からの信号パルスは、前段のシフトレジスタユニットからの信号パルスに応答して開始し、後段のシフトレジスタユニットからの信号パルスに応答して終了する。
【0107】
各ラッチ回路505は、S1信号パルスに同期した信号パルスによって対応するリセットスイッチ501を制御して、S1信号線パルスを画素回路行に伝送する配線をS1信号パルスが終了した後、Highレベルの電位の電源線に接続する。
【0108】
[他の画素回路構成]
図15は、画素回路の他の構成例を示す。画素回路550は、P型TFT及びN型TFTを含む。P型TFTは例えば低温ポリシリコンTFTであり、N型TFTは例えば酸化物半導体TFTである。画素回路550は、7つのトランジスタ(TFT)M51~M57を含む。本例において、トランジスタM51、M53及びM56はP型TFTであり、トランジスタM52、M54、M55及びM57はN型TFTである。
【0109】
トランジスタM53は、OLED素子E1への電流量を制御する駆動トランジスタである。駆動トランジスタM53は、アノード電源からOLED素子E1に与える電流量を、保持容量Cstが保持する電圧に応じて制御する。OLED素子E1のカソードは、カソード電源に接続されている。保持容量Cstは、駆動トランジスタM53のゲートソース間電圧を保持する。
【0110】
トランジスタM51及びM56は、OLED素子E1の発光の有無を制御する。トランジスタM51は、ソース端子がアノード電源に接続され、ドレイン端子に接続された駆動トランジスタM53への電流供給をON/OFFする。トランジスタM56は、ソース端子が駆動トランジスタM53のドレイン端子に接続され、ドレイン端子に接続されたOLED素子E1への電流供給をON/OFFする。トランジスタM51及びM56は、発光制御信号Emにより制御される。
【0111】
トランジスタM57は、OLED素子E1のアノードへのリセット電位の供給のために動作する。トランジスタM57は、ゲートに入力される選択信号S2によりONにされると、リセット電源からリセット電位VrstをOLED素子E1のアノードへ与える。リセット電源のもう一端は、GNDに接続されている。
【0112】
トランジスタM55は、駆動トランジスタM53のゲートへのリセット電位の供給の有無を制御する。トランジスタM55は、ゲートに入力される選択信号S1によりONにされると、ソース/ドレインに接続されたリセット電源からリセット電位Vrstを駆動トランジスタM53のゲートに与える。リセット電源のもう一端は、GNDに接続されている。なお、OLED素子E1のアノードへのリセット電位と駆動トランジスタM53のゲートへのリセット電位は異なっていてもよい。
【0113】
トランジスタM52は、データ信号を供給する画素回路550を選択するための選択トランジスタである。トランジスタM52のゲート電圧は、選択信号S2により制御される。選択トランジスタM52は、ONのとき、ドライバIC117からデータ線を介して供給されるデータ信号Vdataを、駆動トランジスタM53のゲート(保持容量Cst)に与える。
【0114】
本例において、選択トランジスタM52は、データ線と駆動トランジスタM53のソースとの間に接続されている。さらに、トランジスタM54は、駆動トランジスタM53のドレインとゲートとの間に接続されている。
【0115】
トランジスタM54は、駆動トランジスタM53の閾値電圧を補正するために動作する。トランジスタM54がONであるとき、駆動トランジスタM53はダイオード接続状態のトランジスタを構成する。データ線からのデータ信号Vdataは、ONである選択トランジスタM52、駆動トランジスタM53及びトランジスタM54のチャネル(ソース及びドレイン)を介して、保持容量Cstに与えられる。
【0116】
保持容量Cstは、駆動トランジスタM53のゲートソース間電圧を保持し、一端は駆動トランジスタM53のゲートに、他端はトランジスタM51のソースとアノード電源との間のノードに接続されている。保持容量Cstは、駆動トランジスタM53の閾値電圧Vthに応じて補正されたデータ信号(電圧)を保持する。
【0117】
図16は、1フレーム期間において、
図15に示す画素回路550を制御する信号のタイミングチャートを示す。
図16は、N番目の画素回路行を選択し、データ信号Vdataを画素回路550に書き込むためのタイミングチャートを示す。具体的には、
図16は、発光制御信号Emi_N、選択信号S1_N、選択信号S2_Nの、1フレームにおける変化を示す。
【0118】
時刻T11において、発光制御信号Em_NがLowレベルからHighレベルに変化する。トランジスタM51及びM56はOFFとなる。時刻T11において、選択信号S1_N及びS2_NはLowである。これら制御信号に応じて、トランジスタM52、M54、M55及びM57は、OFFである。時刻T11の後の時刻T12まで、これらのトランジスタ状態が維持される。
【0119】
時刻T12において、選択信号S1_Nは、LowレベルからHighレベルに変化する。時刻T12において、発光制御信号Em_NはHigh、選択信号S2_NはLowレベルである。選択信号S1_Nの変化に応じて、トランジスタM55がONとなる。トランジスタM51、M52、M54、M56及びM57は、OFFである。
【0120】
トランジスタM55がONとなることで、駆動トランジスタM53のゲート電位はリセット電位Vrstに変化する。リセット電位Vrstは、時刻T12から時刻T13まで駆動トランジスタM53のゲートに与えられる。駆動トランジスタM53のゲートにリセット電位が与えられることで、履歴効果による影響を低減することができる。
【0121】
時刻T13において、選択信号S1_Nは、HighレベルからLowレベルに変化し、選択信号S2_NはLowレベルからHighレベルに変化する。発光制御信号Em_NはHighである。選択信号S1_Nの変化に応じて、トランジスタM55がOFFとなる。選択信号S2_Nの変化に応じて、トランジスタM52、M54及びM57がONとなる。トランジスタM51及びM56はOFFである。
【0122】
トランジスタM57がONとなることで、OLED素子E1のアノードにリセット電源のリセット電位Vrstが与えられる。トランジスタM54がONであるため、駆動トランジスタM53はダイオード接続されている。トランジスタM52はONであるため、データ線からのデータ信号Vdataは、トランジスタM52、M53及びM54を介して、保持容量Cstに書き込まれる。
【0123】
保持容量Cstに書き込まれる電圧は、データ信号Vdataに対して駆動トランジスタM53の閾値電圧Vthに対する補正がなされた電圧である。時刻T13から時刻T14までの期間において、画素回路550へのデータ信号Vdataの書き込み及びその閾値補償がなされる。
【0124】
時刻T14において、選択信号S2は、HighレベルからLowにレベル変化する。時刻T14において、発光制御信号Em_NはHighレベル、選択信号S1_NはLowレベルである。選択信号S2_Nの変化に応じて、トランジスタM52、M54及びM57がOFFとなる。トランジスタM51、M52、M54~M57はOFFである。時刻T14から時刻T15まで、制御信号及びトランジスタの状態は、維持される。
【0125】
時刻T15において、発光制御信号Em_NがHighレベルからLowレベルに変化し、トランジスタM51及びM56がOFFからONに変化する。選択信号S1_N及びS2_NはLowレベルであり、トランジスタM52、M54、M55及びM57はOFFのままである。
【0126】
駆動トランジスタM53は、保持容量Cstに保持されている補正されたデータ信号に基づき、OLED素子E1に与える駆動電流を制御する。つまりOLED素子E1が発光する。
図16のタイミングチャートにおいて、時刻T11からT12、時刻T12からT13、時刻T13からT14、及び時刻T14からT15の期間は、それぞれ、1Hである。
図15及び16に示す構成例においては、閾値補償とデータ書き込みは同一期間に実行され、分離されていない。
【0127】
以下において、シフトレジスタ回路とラッチ回路群との組み合わせにより、
図15及び16に示す構成例において制御信号S1、S2及びEmを生成、出力する方法を説明する。
図17は、当該ラッチ回路群において使用されるラッチ回路380の構成例を示す。
図17は、N段目のラッチ回路380を示すが、他段のラッチ回路も同様の構成を有する。
【0128】
ラッチ回路380は四つのトランジスタと一つの容量素子で構成されている。四つのトランジスタM61~M64は、N型トランジスタである。トランジスタM61はダイオード接続状態であり、そのドレインがSET端子381からの入力を受ける。トランジスタM62は、トランジスタM61と電源電位PVEEを与える電源との間に接続され、そのゲートがRST端子382からの入力を受ける。
【0129】
トランジスタM63は電源電位PVDDを与える電源とQ端子383との間に接続され、そのゲートはトランジスタM61とM62の中間ノードに接続される。トランジスタM64は、トランジスタM63と電源電位PVEEを与える電源との間に接続され、そのゲートがRST入力を受ける。容量素子Cdは、トランジスタM63のゲートと、Q端子383との間に接続されている。トランジスタM63とM64の間の中間ノードが、Q端子383に接続されている。
【0130】
図18は、ラッチ回路380の入力信号及び出力信号のタイミングチャートを示す。ラッチ回路380において、信号の論理レベルがHのとき、電位レベルはHighレベルである。ラッチ回路380の真理値表は、
図6に示した通りである。
【0131】
SET信号及びRST信号が共にLow電位レベルのとき、Q出力はLow電位レベルである。SET入力がHigh電位レベルに変化すると、Q出力はHigh電位レベルに変化する。その後、SET入力がLow電位レベルに変化しても、Q出力はHigh電位レベルを維持する。その後、RST入力がHigh電位レベルに変化すると、Q出力はLow電位レベルに変化する。その後、RST入力がLow電位レベルに変化し、Q出力はLow電位レベルである。
【0132】
図19は、シフトレジスタ回路とラッチ回路群の組み合わせによって、制御信号S1、S2及びEmを生成、出力する回路構成例を模式的に示す。
図19は、シフトレジスタ回路507及びラッチ回路群における一つのラッチ回路380を示す。シフトレジスタ回路507は、シフトレジスタ回路111と同様に、直列に連結された複数のレジスタユニットを含む。シフトレジスタ回路507の回路構成は任意である。本明細書の一実施形態において、シフトレジスタ回路507に含まれるトランジスタは、全てN型のTFTである。
【0133】
複数のレジスタユニットは、信号パルスを順次出力する。信号パルスの電位レベルはHighである。N段目のシフトレジスタユニットの出力S_Nは、N段目の画素回路行のS2信号線、(N+1)段目の画素回路行のS1信号線、(N-2)段目のラッチ回路380のRST端子及び(N+2)段目のラッチ回路380のSET端子に入力される。S1信号線及びS2信号線は、第1制御線である。
【0134】
シフトレジスタユニットは、二つの画素回路行に選択信号S1及びS2をそれぞれ出力し、さらに、二つのラッチ回路380それぞれにRST信号及びSET信号を出力する。このように、各シフトレジスタユニットからの出力パルスは、対応する一つの画素回路行のS2信号パルス及び対応する他の一つの画素回路行のS1信号パルス(第3信号パルス)である。
【0135】
例えば、N段目の画素回路行の選択信号S1_Nは、(N-1)段目のシフトレジスタユニットの出力信号S_N-1である。また、N段目の画素回路行の選択信号S2_Nは、N段目のシフトレジスタユニットの出力信号S_Nである。
【0136】
上述のように、N段目のラッチ回路380のSET端子には、(N-2)段目のシフトレジスタユニットの出力信号S_N-2が入力され、RST端子には、(N+2)段目のシフトレジスタユニットからの出力信号S_N+2が入力される。N段目のラッチ回路380は、N段目の画素回路行の発光制御信号Em_NをQ端子から出力する。Q端子の出力は、SET端子及びRST端子への信号パルスにより制御される。発光制御信号を伝送するEm信号線は、第2制御線である。
【0137】
このように、本構成例は、2行前と2行後のシフトレジスタ信号からN行目の発光制御信号Em_Nを生成する。発光制御信号Emの期間は4Hである。本構成例においては、発光制御信号Emは、P型トランジスタ51、56のゲートに供給されるため、選択信号S1、S2と同じ極性を有するパルス信号となる。
【0138】
ここで、同じ極性とは、パルスのHighレベルの時間がLowレベル時間に比べ大幅に小さいということを意味する。このような信号を生成する回路は、N型TFTを用いる方が、P型TFTを用いるよりも、少ない数のTFTで構成でき、回路面積を縮小できる。本明細書の一実施形態において、ラッチ回路及びシフトレジスタ回路の含まれるトランジスタは、全てN型TFTである。
【0139】
上述のように、
図15を参照して説明した画素回路550において、発光制御トランジスタM56、M51及び駆動トランジスタM53は、P型(第2導電型)TFTである。スイッチトランジスタM52、M54、M55及びM57は、N型(第1導電型)TFTである。
図19を参照して説明したように、シフトレジスタ回路507からの制御線(第1の制御線)は、選択信号Sを伝送し、シフトレジスタ回路507からの制御線(第2の制御線)は発光制御信号Emを伝送する。また、シフトレジスタ回路507及びラッチ回路308に含まれる全てのトランジスタは、N型(第1導電型)TFTである。
【0140】
このように、本構成例は、N型TFTで構成されたシフトレジスタ回路及びラッチ回路群によって、選択信号S1及びS2並びに1Hより長い発光制御信号Emを生成、出力することができる。なお、画素回路550のトランジスタの導電型を逆の導電型に変更して、シフトレジスタ回路及びラッチ回路をP型TFTで構成することで、一種類の導電型のトランジスタでシフトレジスタ回路及びラッチ回路を構成できる。
【0141】
[ラッチ回路のデバイス構造]
以下において、ラッチ回路のデバイス構造例を説明する。
図20は、ラッチ回路300のレイアウト例を模式的に示す平面図である。
図7を参照して説明したように、ラッチ回路300は、ランジスタM21からM24及び容量素子Cbを含む。
図20において、同一材料層は、同一パターンで塗られている。具体的には、ラッチ回路300は、半導体層SC、第1金属層MT1及び第2金属層MT3を含む。
【0142】
図21は、
図20におけるXXI-XXI切断線における断面構造を模式的に示す。
図21は、トランジスタM22の断面構造を示す。絶縁基板SUB上に、アンダーコート膜UCが形成されている。アンダーコート膜UCは、例えば、シリコン窒化膜である。
【0143】
アンダーコート膜UC上に半導体層SCが形成されている。半導体層SCは、例えば、ポリシリコンである。TFTがN型である場合、例えば、酸化物半導体を使用できる。半導体層SCは、ゲート絶縁膜GIに覆われている。ゲート絶縁膜GIは、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜又はこれらの積層膜である。
【0144】
ゲート絶縁膜GI上に、第1金属層MT1に含まれる、ゲート電極GT及び第1配線ML1が形成されている。第1金属層MT1の材料としては、例えば、Mo、W、Nb、Al等が使用できる。
【0145】
第1金属層MT1及び第1金属層MT1が露出しているゲート絶縁膜GIは、層間絶縁膜ILDで覆われている。層間絶縁膜ILD例えば、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜である。層間絶縁膜ILD上に、第2金属層MT2に含まれる、第2配線ML2が形成されている。
【0146】
第2配線ML2の一部は、層間絶縁膜ILD及びゲート絶縁膜GIに形成されたコンタクトホールを介して半導体層SCに接触している。第2配線ML2の一部は、層間絶縁膜ILD及びゲート絶縁膜GIに形成されたコンタクトホールを介して半導体層SCに接触し、さらに、層間絶縁膜ILDに形成されたコンタクトホールを介して第1配線ML1に接触している。ラッチ回路300全体は、保護絶縁膜PVで覆われている。保護絶縁膜PVは、例えば、シリコン窒化やシリコン酸化膜等の無機膜である。
【0147】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0148】
1 OLED表示装置
101 示領域
107、555 画素回路
111、115、451、503、507 シフトレジスタ回路
112、471 配線
113、461 ラッチ回路群
131 S1信号線
132 S2信号線
133 エミッション信号線
300、350、380、505 ラッチ回路
400、452 シフトレジスタユニット
501 リセットスイッチ
CK、CKB クロック信号
E1 OLED素子
M11-M15、M21-M24、M51-M57、M61-M64 トランジスタ