(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099508
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】殺コロナウイルス剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/28 20060101AFI20220628BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A61K36/28
A61P31/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213312
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】池上 志穂
(72)【発明者】
【氏名】八巻 礼訓
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB26
4C088AC01
4C088BA06
4C088BA09
4C088CA05
4C088CA11
4C088NA14
4C088ZB33
(57)【要約】
【課題】新規な殺コロナウイルス剤を提供すること。
【解決手段】エキナセアを有効成分として含む殺コロナウイルス剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキナセアを有効成分として含む殺コロナウイルス剤。
【請求項2】
対象コロナウイルスが豚感染性コロナウイルスである、請求項1に記載の殺コロナウイルス剤。
【請求項3】
前記エキナセアが、エキナセア植物体の乾燥物、及び熱水抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の殺コロナウイルス剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺コロナウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エキナセアはインフルエンザウイルスに対する活性を有することが知られている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Pleschka, et al., Virology Journal 2009, 6:197
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エキナセアによるコロナウイルスに対する殺ウイルス効果はこれまで確認されていない。
【0005】
本発明は、新規な殺コロナウイルス剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の殺コロナウイルス剤は、エキナセアを有効成分として含む。
【0007】
上記殺コロナウイルス剤において、対象コロナウイルスは豚感染性コロナウイルスであってよい。
【0008】
上記エキナセアは、エキナセア植物体の乾燥物、及び熱水抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、新規な殺コロナウイルス剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の殺コロナウイルス剤は、有効成分としてエキナセアを含む。本実施形態に係る殺コロナウイルス剤は、エキナセアを含むため、殺コロナウイルス作用を有する。
【0012】
本明細書において、殺コロナウイルスとは、コロナウイルス自体に直接作用してウイルスを殺すことを指す。殺コロナウイルスとは、具体的には例えば、対象のコロナウイルスを不活化させること、分解することであってよい。本明細書でいう殺ウイルスとは、ウイルスが体内に侵入した後にウイルスの増殖を抑制する作用である「抗ウイルス」とは異なるものである。
【0013】
本実施形態に係る殺コロナウイルス剤によるウイルス減少率は、例えば、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上であってよい。
【0014】
本実施形態に係る殺コロナウイルス剤は殺コロナウイルス作用を有するため、例えば、コロナウイルス感染症に対する予防、コロナウイルス拡散に対する予防等に用いることもできる。
【0015】
本実施形態に係る殺コロナウイルス剤の対象であるコロナウイルスは、例えば、豚感染性コロナウイルス(PEDV)、ヒトコロナウイルス(例えば、229E、NL63、HKU1、OC43)、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、又はSARSコロナウイルス2であってよい。
【0016】
エキナセアは、例えば、エキナセア・プルプレア(Echinacea purpurea)、エキナセア・アングスティフォリア(Echinacea angustifolia)、エキナセア・パリダ(Echinacea pallida)、エキナセア・テネシーエンシス(Echinacea tennesseensis)、エキナセア・パラドクサ(Echinacea paradoxa)、エキナセア・アトロルーベンス(Echinacea atrorubens)、エキナセア・ラエビガタ(Echinacea laevigata)、エキナセア・サンギニア(Echinacea sanguinea)、エキナセア・セロティナ(Echinacea serotina)、及びエキナセア・シムラタ(Echinacea simulata)からなる群から選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0017】
エキナセアは、エキナセア植物体そのものであってもよく、例えば、植物体の乾燥物又は熱水抽出物であってもよい。植物体のうち、用いる部位としては例えば、葉、花、茎等の地上部、根、又はこれらの混合物であってよい。乾燥物は、例えば破砕物、粉砕物であってもよい。植物体の乾燥物は、例えば摂取時に熱水抽出して摂取してもよい。乾燥方法は、自然乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等であってよい。熱水抽出物は、液体に、濃縮、粉末化、造粒等の処理を更に施したものであってもよい。
【0018】
熱水抽出物の場合、抽出温度は例えば80~100℃であってよく、85~95℃であってよい。抽出時間は例えば10分~3時間であってよく、30分~2時間であってよい。熱水抽出物は、抽出後の残渣から更に抽出して得られたものであってもよい。
【0019】
上記殺コロナウイルス剤は、エキナセアの固形分量として、例えば体重60kgの成人に一日当たり1mg以上、3mg以上、5mg以上、10mg以上、又は20mg以上の用量で用いることができ、10,000mg以下、5,000mg以下、2,500mg以下、1,000mg以下、800mg以下、500mg以下、300mg以下、100mg以下、80mg以下、又は50mg以下の用量で用いてもよい。
【0020】
上記殺コロナウイルス剤中のエキナセアの含有量は、固形分として、剤の全量に対して、例えば、0.000000001質量%以上、0.00000001質量%以上、0.0000001質量%以上、0.000001質量%以上、0.00001質量%以上、0.0001質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、93質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、又は100質量%であってよい。殺コロナウイルス剤中のエキナセアの含有量は、固形分として、剤の全量に対して、例えば、100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
【0021】
本実施形態に係る殺コロナウイルス剤の投与対象者は、例えば健常者であってよい。健常者とは例えば、殺コロナウイルス剤の対象であるコロナウイルスに感染していない者であってよい。
【0022】
本実施形態に係る殺コロナウイルス剤は、有効成分としてのエキナセアに加えて、他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、薬学的に許容される成分(例えば、賦形剤、結合材、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤、抗酸化剤)、食品として許容される成分(例えば、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤)を挙げることができる。
【0023】
本実施形態に係る殺コロナウイルス剤は、固体、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよく、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤等を含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液若しくは電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)等の剤形であってもよい。これらの各種製剤は、例えば、エキナセアと、必要に応じて他の成分とを混合して上記剤形に成形することによって調製することができる。
【0024】
上記殺コロナウイルス剤は、医薬品、医薬部外品、食品組成物、又は化粧品そのものとして、又はこれらの製品中の成分として使用することができる。殺コロナウイルス剤を一成分として含む医薬品、医薬部外品、食品組成物、又は化粧品は、例えば、これら製品の製造工程における中間製品に、上記殺コロナウイルス剤を添加することにより製造することができる。
【0025】
本実施形態に係る殺コロナウイルス剤からなる医薬品、医薬部外品、食品組成物若しくは化粧品、又は、該殺コロナウイルス剤を含む医薬品、医薬部外品、食品組成物若しくは化粧品は、殺コロナウイルス用であってよい。これらの製品には、例えば、コロナウイルスを不活化する旨、コロナウイルスを分解する旨、コロナウイルスを破壊する旨、コロナウイルスを殺ウイルスする旨、コロナウイルスを除去する旨、コロナウイルスを抑制する旨等が表示されていてもよい。
【0026】
本実施形態に係る殺コロナウイルス剤は、経口投与されてもよく、非経口により投与されてもよい。また、本実施形態に係る殺コロナウイルス剤は、皮膚外用剤であってもよい。殺コロナウイルス剤は、例えば、滴下、散布、塗布等の処置により、必要とする皮膚の部位に直接適用されてもよい。投与態様は、経口投与であってもよく、非経口投与であってもよい。本実施形態に係る殺コロナウイルス剤は、一日一回投与されてもよく、一日二回、一日三回等、複数回に分けて投与されてもよい。
【0027】
化粧品には、動物(ヒトを含む)の皮膚、粘膜、体毛、頭髪、頭皮、爪、歯、顔皮、口唇等の部位に適用され得る、あらゆる化粧品が含まれる。
【0028】
化粧品の剤形は、例えば、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油2層系、水-油-粉末3層系等であってよい。上記化粧品は、例えば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス、美容液、パック、マスク、ミスト、UV予防化粧品等の基礎化粧品、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等のメークアップ化粧品、洗顔料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、シェービングクリーム、ボディソープ、石けん、シャンプー、リンス、へアートリートメント、整髪料、へアートニック剤、ヘアミスト、ヘアフォーム、ヘアリキッド、ヘアジェル、ヘアスプレー、育毛剤、制汗剤、入浴剤、マウスリンス、口腔化粧品、歯磨剤、ハンドクリーム、ハンドソープ、などであってよい。
【0029】
化粧品には、有効成分としてのエキナセア以外に、通常化粧品に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0030】
殺コロナウイルス剤を食品組成物として又は食品組成物の一成分として用いる場合、該食品組成物は、食品の3次機能、すなわち体調調節機能が強調されたものであることが好ましい。食品の3次機能が強調された製品としては、例えば、健康食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品を挙げることができる。
【0031】
食品組成物としては例えば、コーヒー、ジュース及び茶飲料等の清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、並びに、日本酒、洋酒、果実酒及びハチミツ酒等の酒などの飲料;カスタードクリーム等のスプレッド;フルーツペースト等のペースト;チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ及びプリン等の洋菓子;大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ及び羊羹等の和菓子;アイスクリーム、アイスキャンデー及びシャーベット等の氷菓;カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等の調理済みの食品;ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料及びスープの素等の調味料などが挙げられる。食品組成物としては茶が好ましい。
【実施例0032】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
<サンプル作成>
エキナセア地上部(葉、茎、及び花を含む)乾燥物に水を加え混合し、90℃の熱水で1時間抽出した。抽出後にろ過を行い、第一の抽出物及び残渣を得た。該残渣を更に90℃の熱水で30分抽出してろ過し、第二の抽出物を得た。第一及び第二の抽出液を混合し、減圧濃縮した。その後、固形分の10%となるように賦形剤を加え、スプレードライして粉末化したものをサンプルとした。
【0034】
<殺ウイルス試験>
上記サンプルを精製水で2.4mg/mLに調製した液1mLに、Porcine epidemic diarrhea virus P-5V株(豚感染性のコロナウイルス)0.1mLを添加し、室温(25℃)で2時間感作させた。試験液中のウイルス遺伝子を抽出し、リアルタイムPCRにてウイルス遺伝子検査を行い、Ct(Threshold Cycle)値を算出した。その結果、Ct値は21.6であり、ウイルス減少率は99.12%と推定された。
【0035】
対照実験として、精製水1mLに、Porcine epidemic diarrhea virus P-5V株(豚感染性のコロナウイルス)0.1mLを添加し、2時間後、試験液中のウイルス遺伝子を抽出し、リアルタイムPCRにてウイルス遺伝子検査を行い、Ct(Threshold Cycle)値を算出した。その結果、Ct値は15.0であり、ウイルス減少率は13.51%と推定された。