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特開2022-99520給湯システム、給湯装置の診断方法および診断プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099520
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】給湯システム、給湯装置の診断方法および診断プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20220628BHJP
   F24H 15/395 20220101ALI20220628BHJP
【FI】
G05B23/02 V
F24H1/00 J
G05B23/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213324
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 康司
(72)【発明者】
【氏名】若竹 孝史
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩基
(72)【発明者】
【氏名】五島 大輔
【テーマコード(参考)】
3C223
3L122
【Fターム(参考)】
3C223AA17
3C223CC01
3C223EB05
3C223FF04
3C223FF05
3C223FF13
3C223FF33
3C223FF46
3C223GG01
3C223HH02
3L122AA03
3L122AA34
3L122AA62
3L122AA63
3L122AA64
3L122BA02
3L122BA04
3L122BA12
3L122BA13
3L122BA26
3L122BA36
3L122BA41
3L122FA03
3L122FA13
3L122FA34
3L122FA35
(57)【要約】
【課題】簡便かつ精度良く給湯装置を診断することができる給湯システム、給湯装置の診断方法および診断プログラムを提供する。
【解決手段】給湯装置1のコントローラ140は、給湯回路の動作中における給湯回路の使用状況に基づいて、給湯回路の使用実績に関する情報を取得し、取得した給湯回路の使用実績に関する情報を診断装置2に送信する。給湯回路の使用実績に関する情報は、給湯装置の施工時からの給湯回路の積算使用時間を含む。診断装置2は、給湯装置1との通信により、給湯回路の使用実績に関する情報を取得すると、取得した給湯回路の使用実績に関する情報を用いて、予め想定される給湯回路の総使用時間に対する、給湯回路の積算使用時間の割合である使用率を算出する。診断装置は、算出された給湯回路の使用率に基づいて、給湯回路の余寿命を予測し、給湯回路の使用率および余寿命を表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯装置と、
前記給湯装置と通信接続され、前記給湯装置を診断する診断装置とを備え、
前記給湯装置は、
燃焼部を有し、前記燃焼部の発生熱量によって加熱された温水を出湯する給湯回路と、
前記給湯回路の動作を制御するコントローラとを含み、
前記コントローラは、
前記給湯回路の動作中における前記給湯回路の使用状況に基づいて、前記給湯回路の使用実績に関する情報を取得し、
取得した前記給湯回路の使用実績に関する情報を前記診断装置に送信し、
前記給湯回路の使用実績に関する情報は、前記給湯装置の施工時からの前記給湯回路の積算使用時間を含み、
前記診断装置は、
前記給湯装置との通信により、前記給湯回路の使用実績に関する情報を取得し、
取得した前記給湯回路の使用実績に関する情報を用いて、予め想定される前記給湯回路の総使用時間に対する、前記給湯回路の前記積算使用時間の割合である使用率を算出し、
算出された前記給湯回路の前記使用率に基づいて、前記給湯回路の余寿命を予測し、
前記給湯回路の前記使用率および前記余寿命を表示する、給湯システム。
【請求項2】
前記診断装置は、予め想定されている前記使用率の時間推移と、算出された前記使用率の時間推移との比較に基づいて、前記給湯回路の前記総使用時間を予測することにより、前記給湯回路の前記余寿命を予測する、請求項1に記載の給湯システム。
【請求項3】
前記診断装置はさらに、前記給湯回路の使用実績に関する情報を用いて、前記給湯回路の使用傾向を算出し、算出された前記使用傾向を表示する、請求項1または2に記載の給湯システム。
【請求項4】
前記診断装置は、算出された前記使用傾向に基づいて前記給湯回路の使用実績を示す指標を算出し、算出された前記指標と予め想定される前記給湯回路の寿命を示す指標との比較に基づいて、前記給湯回路の前記総使用時間を予測する、請求項3に記載の給湯システム。
【請求項5】
前記給湯装置は、COセンサを有しており、前記COセンサの寿命の到来を報知するためのエラーを発報するように構成され、
前記診断装置は、
前記給湯装置との通信により、前記COセンサの積算通電時間を取得し、
予め想定される前記COセンサの総通電時間に対する、前記積算通電時間の割合である使用率に基づいて前記エラーの発報時期を予測し、
予測された前記エラーの発報時期までの残り時間を表示する、請求項1から4のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項6】
前記給湯装置は、中和器を有しており、前記中和器の寿命の到来を報知するためのエラーを発報するように構成され、
前記診断装置は、
前記給湯装置との通信により、前記中和器の積算使用時間を取得し、
予め想定される前記中和器の総使用時間に対する、前記中和器の積算使用時間の割合である使用率に基づいて前記エラーの発報時期を予測し、
予測された前記エラーの発報時期までの残り時間を表示する、請求項1から4のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項7】
前記給湯装置は、追焚循環ポンプを有し、浴槽内の湯を加熱循環するための追焚回路をさらに含み、
前記コントローラは、
前記追焚回路の動作中における前記追焚回路の使用状況に基づいて、前記追焚回路の使用実績に関する情報を取得し、
取得した前記追焚回路の使用実績に関する情報を前記診断装置に送信し、
前記追焚回路の使用実績に関する情報は、前記給湯装置の施工時からの前記追焚回路の積算使用時間を含み、
前記診断装置は、
前記給湯装置との通信により、前記追焚回路の使用実績に関する情報を取得し、
取得した前記追焚回路の使用実績に関する情報を用いて、予め想定される前記追焚回路の総使用時間に対する、前記追焚回路の前記積算使用時間の割合である使用率を算出し、
算出された前記追焚回路の前記使用率に基づいて、前記追焚回路の余寿命を予測する、請求項1から6のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項8】
前記給湯装置は、暖房循環ポンプを有し、暖房端末に対して熱媒を循環供給するための暖房回路をさらに含み、
前記コントローラは、
前記暖房回路の動作中における前記暖房回路の使用状況に基づいて、前記暖房回路の使用実績に関する情報を取得し、
取得した前記暖房回路の使用実績に関する情報を前記診断装置に送信し、
前記給湯回路の使用実績に関する情報は、前記給湯装置の施工時からの前記暖房回路の積算使用時間を含み、
前記診断装置は、
前記給湯装置との通信により、前記暖房回路の使用実績に関する情報を取得し、
取得した前記暖房回路の使用実績に関する情報を用いて、予め想定される前記暖房回路の総使用時間に対する、前記暖房回路の前記積算使用時間の割合である使用率を算出し、
算出された前記暖房回路の前記使用率に基づいて、前記暖房回路の余寿命を予測する、請求項1から7のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項9】
給湯装置の診断方法であって、
前記給湯装置は、燃焼部を有し、前記燃焼部の発生熱量によって加熱された温水を出湯する給湯回路を含み、
前記給湯回路の動作中における前記給湯回路の使用状況に基づいて、前記給湯回路の使用実績に関する情報を取得するステップを備え、
前記給湯回路の使用実績に関する情報は、前記給湯装置の施工時からの前記給湯回路の積算使用時間を含み、
取得した前記給湯回路の使用実績に関する情報を用いて、予め想定される前記給湯回路の総使用時間に対する、前記給湯回路の前記積算使用時間の割合である使用率を算出するステップと、
算出された前記給湯回路の前記使用率に基づいて、前記給湯回路の余寿命を予測するステップと、
前記給湯回路の前記使用率および前記余寿命を表示するステップとをさらに備える、給湯装置の診断方法。
【請求項10】
給湯装置を診断するための診断装置における診断プログラムであって、
前記給湯装置は、燃焼部を有し、前記燃焼部の発生熱量によって加熱された温水を出湯する給湯回路を含み、
前記診断プログラムは、前記診断装置に、
前記給湯回路の動作中における前記給湯回路の使用状況に基づいて、前記給湯回路の使用実績に関する情報を取得するステップを実行させ、前記給湯回路の使用実績に関する情報は、前記給湯装置の施工時からの前記給湯回路の積算使用時間を含み、
取得した前記給湯回路の使用実績に関する情報を用いて、予め想定される前記給湯回路の総使用時間に対する、前記給湯回路の前記積算使用時間の割合である使用率を算出するステップと、
算出された前記給湯回路の前記使用率に基づいて、前記給湯回路の余寿命を予測するステップと、
前記給湯回路の前記使用率および前記余寿命を表示するステップとをさらに実行させる、診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯システム、給湯装置の診断方法および診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平11-110038号公報(特許文献1)には、燃焼機器の使用状態をモニタするモニタ装置が開示されている。このモニタ装置は、燃焼機器の使用状況のデータを蓄積保存するデータ保存部と、燃焼機器の使用状況に対応したデータと故障率に対応したデータとの関係を示す寿命予測曲線データを格納するデータ格納部とを、データ取り込み指令を受けて、データ保存部に保存されている使用状況のデータを取り込むデータ取り込み部と、データ取り込み部により取り込まれたデータを画面表示する表示部とを有する。
【0003】
上記構成において、表示部は、データ格納部に格納されている寿命予測曲線データを画面表示するとともに、その寿命予測曲線データ上に、取り込まれた使用状況に対応したデータの位置を表示するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-110038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるモニタ装置によれば、燃焼機器の寿命予測を客観的に示すことができる。しかしながら、寿命予測曲線データは、燃焼機器の機種ごとに、燃焼機器を構成する各構成部材について、初期故障に関する故障率のデータ、偶発故障に関する故障率のデータおよび摩耗故障に関する故障率のデータに基づいて作成されるため、寿命予測曲線データの精度を高めるためには、各故障について大量の実績データが必要となり、精度向上に時間を要することが懸念される。また、実績データ量が不十分であった場合には、寿命予測曲線データを更新できず、予測の精度を保証できないことが懸念される。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、簡便かつ精度良く給湯装置を診断することができる給湯システム、給湯装置の診断方法および診断プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面では、給湯システムは、給湯装置と、給湯装置と通信接続され、給湯装置を診断する診断装置とを備える。給湯装置は、燃焼部を有し、燃焼部の発生熱量によって加熱された温水を出湯する給湯回路と、給湯回路の動作を制御するコントローラとを含む。コントローラは、給湯回路の動作中における給湯回路の使用状況に基づいて、給湯回路の使用実績に関する情報を取得する。コントローラは、取得した給湯回路の使用実績に関する情報を診断装置に送信する。給湯回路の使用実績に関する情報は、給湯装置の施工時からの給湯回路の積算使用時間を含む。診断装置は、給湯装置との通信により、給湯回路の使用実績に関する情報を取得する。診断装置は、取得した給湯回路の使用実績に関する情報を用いて、予め想定される給湯回路の総使用時間に対する、給湯回路の積算使用時間の割合である使用率を算出する。診断装置は、算出された給湯回路の使用率に基づいて、給湯回路の余寿命を予測し、給湯回路の使用率および余寿命を表示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便かつ精度良く給湯装置を診断することができる給湯システム、給湯装置の診断方法および診断プログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る診断装置が適用される給湯システムおよび通信システムの構成例を示す概略図である。
図2図1に示した給湯装置の構成例を示す概略図である。
図3】本実施の形態に係る給湯装置の診断方法を説明する機能ブロック図である。
図4】給湯回路の出力号数のヒストグラムである。
図5】表示部に表示される使用実績確認画面の一例を模式的に示す図である。
図6】給湯回路における燃焼バーナの使用率の時間推移を模式的に示す図である。
図7】表示部に表示される予測結果表示画面の一例を模式的に示す図である。
図8】診断対象の給湯装置における給湯回路の使用傾向を模式的を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る診断装置が適用される給湯システムおよび通信システムの構成例を示す概略図である。
【0012】
図1を参照して、給湯システム1は、給湯装置110と、リモートコントローラ(以下、単に「リモコン」と表記する)12とを含む。給湯装置110からの湯は、複数の給湯口111に接続された配管を経由して、給湯先へ送出される。給湯先には、カランに加えて、浴槽内に配設された浴槽および暖房端末(ともに図示せず)が含まれる。
【0013】
給湯装置110の内部には回路基板115が装着される。回路基板115には、給湯装置110を駆動および制御するためのコントローラ140が搭載される。コントローラ140は、例えばマイクロコンピュータによって構成される。コントローラ140によって、図示しない燃焼部に対する燃料ガスの供給等を制御するための電磁弁(図示せず)、および、燃料ガスと混合される空気を供給するための送風ファン(図示せず)等が制御される。
【0014】
リモコン12は、例えば、2心通信線によって給湯装置110と接続される。リモコン12は表示部および操作部を有する。ユーザは、表示部による表示画面に従って操作部を操作することにより、浴槽への湯張りや給湯設定温度等を設定することができる。例えば、リモコン12は台所または浴室に配設することができる。
【0015】
通信システム100は、給湯システム1と、診断装置2と、インターフェイス機器3と、外部通信網4と、サーバ5とを備える。
【0016】
インターフェイス機器3は、リモコン12を含む一定範囲内に存在する機器を、外部通信網4を介してサーバ5に通信接続するための通信中継器である。例えば、インターフェイス機器3は、いわゆる無線LAN(Local Area Network)ルータによって構成することができる。また、外部通信網4は、代表的にはインターネットである。以下では、外部通信網4を、単に、インターネット4とも称する。
【0017】
サーバ5は、インターネット4に接続されて、給湯システム1に対する遠隔制御(遠隔操作および遠隔監視)を管理するための機能を有する。リモコン12は、無線通信により、インターフェイス機器3に通信接続されることで、インターネット4を介して、サーバ5と通信することができる。これにより、給湯システム1はサーバ5と通信接続される。
【0018】
サーバ5に対しては、スマートフォンまたはタブレット端末等の携帯端末装置8から通信接続することも可能である。携帯端末装置8がインターフェイス機器3と接続可能な範囲内に存在する場合には、無線通信によってインターフェイス機器3と接続されることにより、携帯端末装置8は、サーバ5と通信可能である。また、携帯端末装置8が宅外等にある場合には、携帯端末装置8は、ルータ6または基地局7を介してインターネット4に接続することによって、サーバ5と通信することができる。
【0019】
診断装置2は、給湯装置110を診断するために作業員が使用する操作端末である。診断装置2には、例えば、現場作業員所有のタブレット端末またはパーソナルコンピュータ(PC)等が用いられる。図1の例では、診断装置2は、現場作業員所有のPCであり、通信線9によって給湯装置110内部の回路基板115と接続される。
【0020】
診断装置2は、給湯装置110内部の回路基板115に通信接続されることで、回路基板115に搭載されたコントローラ140と通信することができる。診断装置2は、コントローラ140との間でデータを授受することにより、給湯装置110を構成する各種機器の使用実績に関する情報を取得することができる。そして、診断装置2は、コントローラ140から取得した情報を用いて、給湯装置110を構成する各種機器の劣化状態および余寿命などを診断することができる。
【0021】
診断装置2およびサーバ5には、給湯装置110を診断するためのアプリケーションプログラム(以下、「診断プログラム」とも称する)をインストールすることができる。診断プログラムはさらに、サーバ5からダウンロードされた後、携帯端末装置8にインストールすることができる。これによると、診断装置2に加えて、サーバ5および携帯端末装置8の各々を、給湯装置110を診断するための操作端末として用いることができる。
【0022】
図2は、図1に示した給湯装置110の構成例を示す概略図である。
【0023】
図2を参照して、給湯装置110は、カラン105等の給湯栓の開栓時に出湯するための給湯回路101と、浴槽700内の湯を加熱循環するための追焚回路102と、図示しない暖房端末に対して熱媒である湯水を循環供給するための暖房回路103と、コントローラ140とを備える。
【0024】
追焚回路102は、吸入口191および吐出口192の間に、浴槽700内の湯を加熱循環するための追焚循環経路を形成するように構成される。吸入口191および吐出口192は、浴槽700内に配置された循環アダプタ(図示せず)に設けられた開口部と、配管を経由してそれぞれ接続される。暖房回路103から熱媒を受ける暖房端末は、暖房戻口302と暖房出力口(低温)304との間、または、暖房戻口302と暖房出力口(高温)306との間に接続される。
【0025】
以下、給湯回路101、追焚回路102および暖房回路103の構成について説明する。
【0026】
給湯回路101は、缶体10aに格納された、一次熱交換器11a、二次熱交換器21a、燃焼バーナ30aおよび送風ファン40aを含む。給湯回路101は、入水管50、バイパス管60および出湯管70をさらに含む。
【0027】
入水管50には、水道水等が給水される。入水管50および出湯管70の間にはバイパス管60が配置される。入水管50には、バイパス管60への分流を制御するための分配弁80が介挿接続される。分配弁80の開度に応じて、給水量の一部が入水管50からバイパス管60へ分流される。全体給水量に対する分流の割合は、分配弁80の開度に応じて制御される。
【0028】
さらに、入水管50には、温度センサ112および流量センサ150が配置される。温度センサ112は、入水温度を検出する。流量センサ150は、分配弁80よりも下流側(缶体側)に配置される。したがって、流量センサ150によって検出される流量は、缶体10aを通過する流量(缶体流量)を示している。
【0029】
入水管50の水は、まず二次熱交換器21aによって余熱された後、一次熱交換器11aにて主加熱される。一次熱交換器11aおよび二次熱交換器21aによって所定温度まで加熱された湯は、出湯管70から出湯される。
【0030】
出湯管70は、合流部75においてバイパス管60と接続される。したがって、給湯システム1からは、缶体10aから出力された高温湯と、バイパス管60からの水を混合した適温の湯が、給湯栓105または図示しない浴槽への注湯回路などの所定の給湯箇所に供給される。
【0031】
出湯管70には、流量調整弁90および温度センサ120,130が設けられる。温度センサ120は、出湯管70のバイパス管60との合流部75よりも上流側(缶体側)に配置されて、缶体10aからの出力湯温(缶体出側温度)を検出する。温度センサ130は、合流部75よりも下流側(出湯側)に設けられて、バイパス管60からの水が混合された後の出湯温度を検出する。流量調整弁90は出湯流量を制御するために設けられる。
【0032】
缶体10aにおいて、燃焼バーナ30aからは、燃料ガスと、送風ファン40aによって供給される燃焼用空気との混合気が出力される。点火装置によって混合気が着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。燃焼バーナ30aからの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体10a内で一次熱交換器11aおよび二次熱交換器21aへ与えられる。
【0033】
一次熱交換器11aは、燃焼バーナ30aによる燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器21aは、燃焼バーナ30aからの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって加熱する。このように缶体10aでは、燃焼バーナ30aでの燃焼による発生熱量により、一次熱交換器11aおよび二次熱交換器21aにおいて、入水管50から供給された水を加熱する。
【0034】
缶体10aの燃焼ガスの流れ方向の下流側には、熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気経路15が設けられる。排気経路15には、COセンサ16が設置されている。COセンサ16は、燃焼排ガス中のCO濃度を検知する。COセンサ16には、例えば、接触燃焼式センサが用いられる。接触燃焼式センサは、例えば、白金線からなるコイルを酸化アルミニウム、パラジウム等の燃焼触媒によりコーティングして乾燥および焼成した構成を有している。このようなCOセンサにおいては、表面に汚染物質や水分が付着すると、センサ出力に誤差を生じる。そのため、給湯装置110の燃焼運転中は、燃焼排ガス中に含まれる汚染物質や水分が付着しないように、COセンサ16に通電することによってCOセンサ16を高温状態に維持する。
【0035】
燃焼バーナ30aへのガス供給管31には、元ガス電磁弁32、ガス比例弁33および能力切換弁35が配置される。元ガス電磁弁32は、燃焼バーナ30aへの燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管31のガス流量は、ガス比例弁33の開度に応じて制御される。
【0036】
能力切換弁35は、複数の燃焼バーナ30aのうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数(バーナ燃焼本数)を切り換えるために開閉制御される。缶体10aでの発生熱量は、バーナ本数およびガス流量の組み合わせによって決まる、燃焼バーナ30a全体の供給ガス量に比例する。したがって、要求発生熱量に対応させて、能力切換弁35の開閉パターン(バーナ燃焼本数)およびガス比例弁33の開度(ガス流量)の組み合わせを決定する設定マップを予め作成することができる。
【0037】
次に、追焚回路102を含む、給湯システム1における浴槽700への給湯に関連した構成を説明する。なお、以下では、浴槽700に対する給湯を「注湯」と表記する一方で、浴槽700以外の給湯栓(カラン105等)への給湯を、単に「給湯」と表記することとする。
【0038】
給湯装置110は、出湯管70から分岐して浴槽700へ給湯するための注湯管180をさらに備える。注湯管180は、出湯管70から流量調整弁90を経由して分岐される。さらに、注湯管180には、注湯電磁弁210および逆止弁220が介挿接続される。注湯管180は、風呂戻り配管190と、合流部185で連結される。コントローラ140による注湯電磁弁210の開閉制御によって、給湯回路101から浴槽700へ注湯するための経路の形成/遮断を制御することができる。
【0039】
追焚回路102は、風呂戻り配管190と、風呂往き配管195と、追焚循環ポンプ400と、風呂熱交換器410とを含む。
【0040】
風呂戻り配管190は、浴槽700からの吸入口191と追焚循環ポンプ400の吸入口との間に設けられる。追焚循環ポンプ400の吐出側は、風呂熱交換器410の一方端と接続される。風呂熱交換器410の他方端は、風呂往き配管195によって、浴槽700への吐出口192と連結される。
【0041】
追焚運転時には、追焚循環ポンプ400が作動することにより、吸入口191から給湯システム1へ浴槽700内の湯が吸入される。そして、吸入された湯が、風呂戻り配管190、追焚循環ポンプ400、風呂熱交換器410および風呂往き配管195を経由して、吐出口192から浴槽700内に戻される追焚循環経路が形成される。追焚循環経路において、風呂熱交換器410の入力側および出力側には、温度センサ374および375がそれぞれ設けられる。温度センサ374は、風呂戻り配管190を通流する湯の温度を検出することにより、浴槽700内の湯の温度(以下、「浴槽湯温」とも称する)を検出する。
【0042】
追焚運転時には、暖房回路103の熱動弁330が開放される。これにより、暖房回路103で加熱された熱媒が、風呂熱交換器410を通流する。その結果、追焚循環経路の湯が、風呂熱交換器410によって加熱されるため、浴槽湯温を上昇させることができる。
【0043】
さらに、風呂戻り配管190は、合流部185において、注湯管180と連結される。これにより、注湯電磁弁210が開放されると、給湯回路101からの湯が、注湯管180を経由して合流部185に供給される。注湯運転時には、追焚循環ポンプ400が停止されているため、供給された湯は、風呂戻り配管190および風呂往き配管195をそれぞれ経由して、吸入口191および吐出口192の両方から浴槽700内に供給される。風呂戻り配管190には、水位センサ412が接続される。水位センサ412は、追焚循環経路を循環する湯の水圧に基づいて、浴槽700内の湯の水位を検知し、検知した水位に応じた信号をコントローラ140に出力する。
【0044】
次に、給湯システム1内の暖房回路103について説明する。暖房回路103は、暖房運転時、暖房戻口302と暖房出力口(低温)304との間、および、暖房戻口302と暖房出力口(高温)306との間のそれぞれに、熱媒である湯の循環経路を形成するように構成される。
【0045】
暖房回路103は、一次熱交換器11b、二次熱交換器21bおよび燃焼バーナ30bを含む。一次熱交換器11b、二次熱交換器21bおよび燃焼バーナ30bは、缶体10b内に格納されている。一次熱交換器11b、二次熱交換器21bおよび燃焼バーナ30bは、給湯回路101の一次熱交換器11a、二次熱交換器21aおよび燃焼バーナ30aと共通の缶体内に格納されてもよい。
【0046】
一次熱交換器11bは、燃焼バーナ30bによる燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換によって加熱する、二次熱交換器21bは、燃焼バーナ30bからの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって加熱する。能力切換弁36の開閉制御によって、複数の燃焼バーナ30bのうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数が切り換えられる。燃焼バーナ30bに対しては、燃焼バーナ30aと共通のガス供給管31、元ガス電磁弁32およびガス比例弁33を経由して、燃料ガスが供給される。
【0047】
さらに、暖房回路103は、暖房循環ポンプ310と、暖房膨張タンク320と、熱動弁330と、配管350,360,370,380,390と、開閉弁610と、バイパス開閉弁365と、温度センサ382,384とを含む。
【0048】
配管350は、暖房出力口(低温)304と一次熱交換器11bの一方端との間を連結する。配管360は、一次熱交換器11bの他方端と配管362,370との間に配設される。
【0049】
配管380は、暖房戻口302と二次熱交換器21bの一方端(入側)との間を連結する。配管390は、二次熱交換器21bの他方端(出側)および暖房膨張タンク320の間を連結する。暖房循環ポンプ310の吸入口311は、暖房膨張タンク320と接続される。暖房循環ポンプ310の吐出口312は、配管350の分岐部355と接続される。
【0050】
暖房膨張タンク320は、暖房循環ポンプ310の吸入口311と連結される。暖房膨張タンク320は、暖房回路103を循環する熱媒を一時的に貯留する。暖房膨張タンク320の水位低下時には、給水弁305を開放することにより、配管51から給水することができる。
【0051】
配管360は、配管362と配管370とに分岐される。したがって、一次熱交換器11bから出力され配管360を通流した熱媒は、配管370によって暖房出力口(高温)306へ出力される経路と、配管362を経由して循環される経路とに分けられる。配管370は、さらに、バイパス開閉弁365を経由して配管390に至る配管371と、暖房出力口(高温)306に至る配管372とに分岐される。配管371は、合流部395において、配管390と接続される。配管371によって、一次熱交換器11bで加熱された熱媒を、配管390を経由して暖房膨張タンク320へ循環する経路が形成される。
【0052】
一次熱交換器11bの出力側には、暖房回路103における缶体10bからの出力温度(缶体出側温度)を検出するための温度センサ384が配置される。一方で、暖房膨張タンク320には、タンク内の湯温を検出するための温度センサ382が配置される。
【0053】
配管362には、熱動弁330が介挿接続される。熱動弁330の開閉は、コントローラ140からの開閉指令に従って制御される。熱動弁330の開放時には、一次熱交換器11bで加熱された熱媒が、風呂熱交換器410を通流する。すなわち、熱動弁330の開放時には、一次熱交換器11bから出力された熱媒を、風呂熱交換器410、合流部385および配管380を経由して二次熱交換器21bへ循環させる経路がさらに形成される。
【0054】
給湯装置110は、ドレン処理回路104をさらに備える。ドレン処理回路104は、缶体10a,10b内で発生したドレン(凝縮水)を中和して給湯装置110の外部へ排出するために設けられる。ドレン処理回路104は、集水パン323と、排出管325と、中和器327と、ドレンタンク328と、ドレン排出ポンプ329とを含む。
【0055】
集水パン323は、二次熱交換器21a,21bからドレンを集水するように構成される。集水されたドレンは排出管325を経由して中和器327へ導かれる。中和器327は、酸性のドレンを中和させた後に、ドレンタンク328にドレンを供給する。ドレンタンク328は、ドレン排出ポンプ329の吸入口と連結される。ドレンタンク328は、中和されたドレンを一時的に貯留する。ドレンタンク328内の水位が所定の上限値以上になった場合には、ドレン排出ポンプ329が駆動されて、ドレンタンク328内のドレンが排出される。ドレンの排出後、ドレンタンク328内の水位が所定の下限値未満になった場合には、ドレン排出ポンプ329が停止されて、ドレンの排出が停止される。
【0056】
図2に示す構成において、コントローラ140は、各センサからの出力信号およびユーザ操作を受けて、給湯回路101、追焚回路102、暖房回路103およびドレン処理回路104の動作を制御する。
【0057】
さらに、コントローラ140は、各回路の動作中、各回路を構成する機器の使用実績に関する情報を取得する。コントローラ140は、取得した情報を記憶部に格納する。コントローラ140は、診断装置2に通信接続されると、記憶部に格納された情報を診断装置2に送信する。診断装置2は、コントローラ140から取得した情報を用いて、給湯装置110の各回路の機器の劣化状態および余寿命を診断することができる。
【0058】
図3は、本実施の形態に係る給湯装置の診断方法を説明するための機能ブロック図である。図3に示すように、給湯装置110を診断する診断モード時には、給湯装置110に対して診断装置2が通信接続される。
【0059】
図3を参照して、給湯装置110のコントローラ140は、制御部401と、情報取得部402と、演算部404と、記憶部406と、通信部408とを有する。
【0060】
記憶部406はメモリを有し、各種のプログラムおよびデータを記憶する。制御部401、情報取得部402および演算部404の機能は、図示しないCPU(Central Processing Unit)が、記憶部406に保存されたプログラムを実行するソフトウェア処理によって実現することができる。なお、制御部401、情報取得部402および演算部404の機能の少なくとも一部は、専用の電子回路等のハードウェア処理によって実現されてもよい。
【0061】
制御部401は、各センサからの出力信号およびユーザ操作を受けて、給湯システム1の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を生成する。ユーザ操作には、給湯システム1の運転オン/オフ指令および設定湯温指令が含まれる。例えば、ユーザ操作は、リモコン12に対して入力される。制御指令には、各弁の開閉および開度指令等が含まれる。運転オン/オフ指令は、給湯回路101による給湯運転および注湯運転、追焚回路102による追焚運転、ならびに、暖房回路103による暖房運転の各々のオン/オフ指令を含む。
【0062】
給湯運転および注湯運転時には、給湯回路101の燃焼バーナ30aでの燃焼によって、入水管50の低温水が加熱されて出湯管70へ出力される。制御部401は、給湯運転および注湯運転時における、燃焼バーナ30aによる要求発生熱量P*を算出する。この要求発生熱量P*は、流量センサ150によって検出される流量と、温度センサ112によって検出される入水温度と、温度センサ120によって検出される、給湯回路101での缶体出側温度とに基づいて、缶体出側温度の検出値が目標値に制御されるように算出される。なお、缶体出側温度の目標値は、ユーザによって設定された給湯運転および注湯運転時の設定温度と、バイパス管60の分流率(分配弁80の開度)に基づいて設定することができる。
【0063】
追焚運転および暖房運転時には、暖房循環ポンプ310の駆動によって形成される熱媒循環経路を循環する熱媒が、燃焼バーナ30bでの燃焼によって加熱される。制御部401は、燃焼バーナ30bによる要求発生熱量P*を、温度センサ384によって検出された一次熱交換器11bの出力温度(缶体出側温度)の検出値が目標値に制御されるように算出する。すなわち、燃焼バーナ30bによる要求発生熱量P*は、暖房回路103における缶体目標温度と、温度センサ382,384による検出温度(タンク内湯温、缶体出側温度)に基づいて算出することができる。
【0064】
制御部401は、給湯運転、注湯運転、暖房運転および追焚運転の各々において、算出された要求発生熱量P*に従って、燃焼バーナ30a,30bへの供給ガス量を算出する。さらに、制御部401は、算出された供給ガス量を実現するような、燃焼バーナ30a,30bのうちのバーナ燃焼本数およびガス流量の組み合わせを決定するともに、決定されたバーナ燃焼本数およびガス流量が実現されるように、ガス比例弁33および能力切換弁35,36の開閉を制御する。
【0065】
さらに、制御部401は、算出された供給ガス量に対して、送風ファン40a,40bによる送風量の比(空燃比)が所定値(例えば、理想空燃比)となるように、送風ファン40a,40bの回転速度を制御する。
【0066】
情報取得部402は、給湯運転、注湯運転、暖房運転および追焚運転の各々の実行中、給湯装置110を構成する各機器の使用状況を示す情報を取得する。具体的には、情報取得部402は、給湯装置110の通電時間を取得する。情報取得部402は、コンセントが電源に差し込まれてコントローラ140に通電が開始されると、その通電時間の計測を開始する。情報取得部402は、コントローラ140への通電が停止されると、通信時間の計測を終了する。
【0067】
また、情報取得部402は、給湯運転および注湯運転時において、給湯回路101を構成する各機器の使用状況を示す情報を取得する。具体的には、情報取得部402は、給湯運転および注湯運転時における燃焼バーナ30aの燃焼時間、および送風ファン40aの駆動時間を計測する。情報取得部402はさらに、給湯運転および注湯運転時における、燃焼バーナ30aによる要求発生熱量P*、および温度センサ130によって検出される出湯温度を示す情報を取得する。なお、給湯装置110では、要求発生熱量は「号数」を単位として演算されることが一般的である。号数=1は、缶体流量1L/minの流量下で湯温を25℃上昇させるのに必要な熱量に相当する。
【0068】
さらに、情報取得部402は、追焚運転時には、追焚回路102を構成する各機器の使用状況を示す情報を取得する。具体的には、情報取得部402は、追焚運転時における燃焼バーナ30bの燃焼時間、送風ファン40bの駆動時間、暖房循環ポンプ310の駆動時間、および追焚循環ポンプ400の駆動時間を計測する。情報取得部402はさらに、追焚運転時における、燃焼バーナ30bによる要求発生熱量P*、および温度センサ384によって検出される缶体出側温度を示す情報を取得する。
【0069】
また、情報取得部402は、暖房運転時において、暖房回路103を構成する各機器の使用状況を示す情報を取得する。具体的には、情報取得部402は、暖房運転時における燃焼バーナ30bの燃焼時間、送風ファン40bの駆動時間、および暖房循環ポンプ310の駆動時間を計測する。情報取得部402はさらに、暖房運転時における、燃焼バーナ30bによる要求発生熱量P*、および温度センサ384によって検出される缶体出側温度を示す情報を取得する。
【0070】
さらに、情報取得部402は、ドレン処理回路104を構成する各機器の使用状況を示す情報を取得する。具体的には、情報取得部402は、中和器327の使用時間、およびドレン排出ポンプ329の駆動時間を計測する。情報取得部402は、中和器327の使用時間として、燃焼バーナ30a,30bの燃焼時間を取得する。ただし、中和器327内の中和剤が補充された場合または中和器327が交換された場合には、情報取得部402は、中和器327の使用時間を初期化する。
【0071】
さらに、情報取得部402は、COセンサ16の使用状況に関する情報を取得する。具体的には、情報取得部402は、COセンサ16の通電時間を取得する。
【0072】
記憶部406は、情報取得部402により取得された給湯装置110の使用状況を示す情報を記憶する。記憶部406は、燃焼バーナ30aの1回の燃焼(燃焼開始~燃焼終了までの間)について、その燃焼時間と要求発生熱量P*(号数)および出湯温度とを対応付けて記憶する。記憶部406は、燃焼バーナ30bの1回の燃焼について、その燃焼時間と要求発生熱量P*および缶体出側温度とを対応付けて記憶する。
【0073】
演算部404は、記憶部406に記憶される情報を用いて、給湯システム1の施工時からの給湯装置110の使用実績に関する情報を取得する。具体的には、演算部404は、情報取得部402により計測された通電時間を積算することにより、給湯システム1の施工時からの給湯装置110の積算通電時間を取得する。
【0074】
演算部404は、情報取得部402により計測された燃焼バーナ30aの燃焼時間を積算することにより、燃焼バーナ30aの積算燃焼時間を取得する。演算部404はさらに、給湯システム1の施工時からの燃焼バーナ30aの燃焼回数を取得する。演算部404は、送風ファン40aの駆動時間を積算することにより、送風ファン40aの積算駆動時間を取得する。
【0075】
演算部404は、情報取得部402により計測された燃焼バーナ30bの燃焼時間を積算することにより、燃焼バーナ30bの積算燃焼時間を取得する。演算部404は、給湯システム1の施工時からの燃焼バーナ30bの燃焼回数を取得する。演算部404はさらに、追焚循環ポンプ400の駆動時間を積算することにより、追焚循環ポンプ400の積算駆動時間を取得する。演算部404は、暖房循環ポンプ310の駆動時間を積算することにより、暖房循環ポンプ310の積算駆動時間を取得する。演算部404は、送風ファン40bの駆動時間を積算することにより、送風ファン40bの積算駆動時間を取得する。
【0076】
演算部404は、ドレン排出ポンプ329の駆動時間を積算することにより、ドレン排出ポンプ329の積算駆動時間を取得する。演算部404は、中和器327の使用時間を積算することにより、中和器327の積算使用時間を取得する。上述したように、中和器327の使用時間の計測値は中和器327内の中和剤の補充または交換されるごとに初期化されるため、中和器327の積算使用時間は、中和器327内の中和剤の補充または交換時からの積算使用時間に相当する。演算部404は、COセンサ16の通電時間を積算することにより、COセンサ16の積算通電時間を取得する。
【0077】
記憶部406は、演算部404により取得された、給湯システム1の施工時からの給湯装置110の使用実績に関する情報を記憶する。
【0078】
通信部408は、診断装置2と通信接続されることにより、診断装置2との間でデータを授受することが可能である。診断モードにおいて、通信部408は、記憶部406に記憶される、給湯装置110の使用状況を示す情報および使用実績に関する情報を診断装置2に送信することができる。
【0079】
診断装置2は、通信部500と、情報取得部502と、演算部504と、予測部506と、記憶部508と、表示部510と、操作部512とを有する。記憶部508はメモリを有し、各種のプログラムおよびデータを記憶する。情報取得部502、演算部504および予測部506の機能は、図示しないCPUが、記憶部508に保存されたプログラムを実行するソフトウェア処理によって実現することができる。なお、情報取得部502、演算部504および予測部506の機能の少なくとも一部は、専用の電子回路等のハードウェア処理によって実現されてもよい。
【0080】
通信部500は、給湯装置110のコントローラ140と通信接続されることにより、コントローラ140との間でデータを授受することが可能である。診断モードにおいて、通信部500は、コントローラ140から、給湯装置110の使用状況を示す情報および使用実績に関する情報を受信することができる。
【0081】
情報取得部502は、通信部500を介して、給湯装置110の使用状況を示す情報および使用実績に関する情報を取得する。情報取得部502は、取得した情報を記憶部508に保存する。
【0082】
演算部504は、情報取得部502により取得された情報を用いて、給湯装置110を構成する各種機器の使用率を算出する。本明細書において、機器の「使用率」とは、予め想定されている機器の総使用時間に対する、当該機器の積算使用時間の割合(%)を表す。
【0083】
なお、機器の総使用時間は、給湯装置110の積算通電時間が予め想定されている寿命時間に達するまでの当該機器の総使用時間に相当する。すなわち、各機器の総使用時間は、その機器の寿命時間に相当する。各機器の総使用時間は、給湯装置110の寿命時間の設計値に基づいて設定することができる。例えば、給湯装置110の寿命時間の設計値がX(年)である場合、ある機器の1日当たりの想定使用時間をTd(時間)とすると、当該機器の総使用時間は、Td(時間)×365(日)×X(年)に設定される。この想定使用時間Td(時間)は、一般家庭での給湯装置110の平均的な使用態様を考慮して設定することができる。
【0084】
演算部504は、情報取得部502を介して、給湯装置110のある機器の積算使用時間を取得すると、当該機器の総使用時間に対する積算使用時間の割合(使用率)を算出する。具体的には、演算部504は、給湯装置110における燃焼バーナ30aの積算燃焼時間を、燃焼バーナ30aの総燃焼時間(総使用時間に相当)で除することにより、燃焼バーナ30aの使用率を算出する。同様に、演算部504は、燃焼バーナ30bの積算燃焼時間を、燃焼バーナ30bの総燃焼時間で除することにより、燃焼バーナ30bの使用率を算出する。
【0085】
なお、演算部504は、燃焼バーナ30a,30bの使用率として、燃焼バーナ30a,30bの総燃焼回数に対する、燃焼バーナ30a,30bの実燃焼回数の割合を算出することもできる。この場合、燃焼バーナ30a,30bの総燃焼回数は、燃焼バーナの1日当たりの想定燃焼回数をNd(回)とすると、Nd(回)×365(日)×X(年)に設定される。演算部504は、燃焼バーナ30a,30bの実燃焼回数を対応する総燃焼回数で除することにより、燃焼バーナ30a,30bの使用率を算出する。
【0086】
演算部504はさらに、給湯装置110に含まれるポンプ類、送風ファン40a,40bおよびセンサ類についても、各々の使用率を算出する。具体的には、演算部504は、追焚循環ポンプ400の積算駆動時間を追焚循環ポンプ400の総駆動時間で除することにより、追焚循環ポンプ400の使用率を算出する。追焚循環ポンプ400の総駆動時間は、給湯装置110の積算通電時間が予め定められている寿命時間に達するまでの追焚循環ポンプ400の総使用時間に相当する。
【0087】
同様に、演算部504は、暖房循環ポンプ310の積算駆動時間を暖房循環ポンプ310の総駆動時間で除することにより、暖房循環ポンプ310の使用率を算出する。演算部504は、ドレン排出ポンプ329の積算駆動時間をドレン排出ポンプ329の総駆動時間で除することにより、ドレン排出ポンプ329の使用率を算出する。
【0088】
また演算部504は、COセンサ16の積算通電時間を、COセンサ16の総通電時間で除することにより、COセンサ16の使用率を算出する。COセンサ16の総通電時間は、給湯装置110の積算通電時間が予め定められている寿命時間に達するまでのCOセンサ16の総使用時間に相当する。
【0089】
演算部504は、中和器327の積算使用時間を、中和器327の総使用時間で除することにより、中和器327の使用率を算出する。中和器327の総使用時間は、給湯装置110の積算通電時間が予め定められている寿命時間に達するまでの中和器327の総使用時間に相当する。
【0090】
演算部504はさらに、情報取得部502により取得された情報を用いて、給湯装置110を構成する各種機器の使用傾向を算出する。具体的には、演算部504は、給湯回路101の使用傾向を示す指標として、給湯回路101の平均出力号数を算出する。例えば、演算部504は、燃焼バーナ30aの燃焼回数と、各回における要求発生熱量P*(号数)とに基づいて、給湯回路101の平均出力号数を算出する。
【0091】
図4は、給湯回路101の出力号数のヒストグラムである。図4(A)は、あるユーザにおける第1の給湯装置110の給湯回路101の出力号数のヒストグラムである。図4(B)は、別のユーザにおける第2の給湯装置110の給湯回路101の出力号数のヒストグラムである。各ヒストグラムにおいて、横軸は出力号数(要求発生熱量P*)を示し、縦軸は使用頻度(%)を示す。使用頻度は、燃焼バーナ30aの燃焼回数に対する各出力号数の燃焼回数の割合を示している。
【0092】
図4(A)によると、第1の給湯装置110における給湯回路101の出力号数は、平均出力号数を20号として、約12号~28号の範囲で分布している。これに対して、図4(B)では、第2の給湯装置110における給湯回路101の出力号数は、平均出力号数を26号として、約23号~28号の範囲で分布している。これによると、第1の給湯装置110と第2の給湯装置110との間で燃焼バーナ30aの積算燃焼時間が同じである場合には、第2の給湯装置110の方が第1の給湯装置110に比べて、平均供給能力が大きいため、給湯回路101に含まれる熱交換器11a,21aなどの機器に与えるダメージがより大きくなることが推測される。その結果、第2の給湯装置110の方が第1の給湯装置110に比べて、給湯回路101を構成する機器の寿命時間が短くなることが予想される。
【0093】
演算部504は、算出した各機器の使用率および使用傾向を示すデータを記憶部508に保存するとともに、表示部510に表示する。表示部510は、診断対象の給湯装置110の使用実績を確認するための使用実績確認画面を表示する。
【0094】
図5は、表示部510に表示される使用実績確認画面の一例を模式的に示す図である。
【0095】
図5に示すように、使用実績確認画面は、診断対象の給湯装置110の識別情報(例えば、製品名(型番)、製品番号など)を示すデータd1、および給湯装置110の積算通電時間を示すデータd2を含む。給湯装置110の積算通電時間は、上述したように、給湯システム1の施工時からの給湯装置110の積算通電時間である。
【0096】
使用実績確認画面は、給湯回路101の使用実績を示すデータd3として、給湯用積算燃焼時間および、給湯用燃焼回数を示すデータを含む。給湯用積算燃焼時間は、給湯運転および注湯運転時における燃焼バーナ30aの積算燃焼時間に相当し、給湯用燃焼回数は、給湯運転および注湯運転時における燃焼バーナ30aの燃焼回数に相当する。
【0097】
給湯用積算燃焼時間および給湯用燃焼回数の各々は、使用率で表現されている。給湯用積算燃焼時間における使用率R1%は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間に達するまでの燃焼バーナ30aの総燃焼時間に対する燃焼バーナ30aの積算燃焼時間の割合を示す。給湯用燃焼回数における使用率R2%は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間に達するまでの燃焼バーナ30aの総燃焼回数に対する燃焼バーナ30aの燃焼回数の割合を示す。
【0098】
使用実績確認画面は、追焚回路102の使用実績を示すデータd4として、追焚用積算燃焼時間および、追焚循環ポンプ積算駆動時間を示すデータを含む。追焚用積算燃焼時間は、追焚運転時における燃焼バーナ30bの積算燃焼時間に相当し、追焚循環ポンプ積算駆動時間は、追焚循環ポンプ400の積算駆動時間に相当する。追焚用積算燃焼時間および追焚循環ポンプ積算駆動時間の各々は、使用率で表現されている。追焚用積算燃焼時間における使用率R3%は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間に達するまでの燃焼バーナ30bの総燃焼時間に対する、追焚運転時の燃焼バーナ30bの積算燃焼時間の割合を示す。追焚循環ポンプ積算駆動時間における使用率R4%は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間に達するまでの追焚循環ポンプ400の総駆動時間に対する追焚循環ポンプ400の積算駆動時間の割合を示す。
【0099】
使用実績確認画面は、暖房回路103の使用実績を示すデータd5として、暖房用積算燃焼時間および、暖房循環ポンプ積算駆動時間を示すデータを含む。暖房用積算燃焼時間は、暖房運転時における燃焼バーナ30bの積算燃焼時間に相当し、暖房循環ポンプ積算駆動時間は、暖房循環ポンプ310の積算駆動時間に相当する。暖房用積算燃焼時間および暖房循環ポンプ積算駆動時間の各々は、使用率で表現されている。暖房用積算燃焼時間における使用率R5%は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間に達するまでの燃焼バーナ30bの総燃焼時間に対する、暖房運転時の燃焼バーナ30bの積算燃焼時間の割合を示す。暖房循環ポンプ積算駆動時間における使用率R6%は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間に達するまでの暖房循環ポンプ310の総駆動時間に対する暖房循環ポンプ310の積算駆動時間の割合を示す。
【0100】
使用実績確認画面は、ドレン処理回路104の使用実績を示すデータd6として、中和器積算使用時間および、ドレン排出ポンプ積算駆動時間を示すデータを含む。中和器積算使用時間は、中和器327の積算使用時間に相当し、ドレン排出ポンプ積算駆動時間は、ドレン排出ポンプ329の積算駆動時間に相当する。暖房用積算燃焼時間および暖房循環ポンプ積算駆動時間の各々は、使用率で表現されている。中和器積算使用時間における使用率R7%は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間に達するまでの中和器327の総使用時間に対する、中和器327の積算使用時間の割合を示す。ドレン排出ポンプ積算駆動時間における使用率R8%は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間に達するまでのドレン排出ポンプ329の総駆動時間に対するドレン排出ポンプ329の積算駆動時間の割合を示す。
【0101】
使用実績確認画面は、センサ類の使用実績を示すデータd7として、COセンサ積算通電時間を示すデータを含む。COセンサ積算通電時間は、COセンサ16の積算通電時間に相当する。COセンサ積算通電時間は使用率で表現されている。COセンサ積算通電時間における使用率R9%は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間に達するまでのCOセンサ16の総通電時間に対する、COセンサ16の積算通電時間の割合を示す。
【0102】
使用実績確認画面はさらに、給湯装置110の使用傾向を示すデータd8として、給湯回路101の平均出力号数および平均出湯温度を示すデータを含む。給湯回路101の平均出力号数A号は、図4で説明したように、給湯回路101の燃焼回数および各回における要求発生熱量P*(号数)に基づいて算出されたものである。給湯回路101の平均出湯温度B℃は、給湯回路101の燃焼回数および各回における出湯温度(温度センサ130の検出値)に基づいて算出することができる。
【0103】
図5に示す使用実績確認画面によれば、診断対象の給湯装置110について、各機器の使用実績は、寿命に至るまでの機器の総使用時間に対する当該機器の積算使用時間の割合である使用率で表現されている。したがって、作業員は、表示された使用率の大きさに基づいて、機器の劣化状態を診断することができる。
【0104】
さらに、使用実績確認画面には、各機器の使用傾向(例えば、平均出力号数および平均出湯温度)が示される。これによると、現場作業員は、想定される使用傾向と実際の使用傾向とを比較することができ、比較結果に基づいて機器の劣化の進行度合いを推測することができる。
【0105】
図3に戻って、予測部506は、演算部504により取得された給湯装置110の各機器の使用率に基づいて、各機器の余寿命を予測する。図6を用いて、予測部506における機器の余寿命の予測方法について説明する。
【0106】
図6は、給湯回路101における燃焼バーナ30aの使用率の時間推移を模式的に示す図である。図6の横軸は給湯装置110の積算通電時間を示し、縦軸は燃焼バーナ30aの積算燃焼時間を示している。積算燃焼時間は使用率(%)で表されている。上述したように、燃焼バーナ30aの積算燃焼時間の使用率は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間X(年)に達するまでの燃焼バーナ30aの総燃焼時間(総使用時間)に対する燃焼バーナ30aの積算燃焼時間の割合を示している。図6では、給湯装置110の積算通電時間ごとに算出された使用率が棒グラフで示されている。
【0107】
図6に示すように、給湯装置110の積算通電時間がt1,t2,t3,・・・と増えるに従って、使用率は徐々に増加する。図6中のラインL1は、積算通電時間が寿命時間X(年)に達したときに、燃焼バーナ30aの積算燃焼時間が燃焼バーナ30aの総燃焼時間に到達する場合、すなわち、使用率が100%に到達する場合を想定したときの使用率の時間推移を示している。したがって、燃焼バーナ30aが想定通りに使用されている場合には、使用率は、積算通電時間の増加に従ってラインL1上を変化することになる。
【0108】
図6の例では、積算通電時間がt1,t2のときには、使用率はラインL1上を変化している。よって、積算通電時間がt2となる時点では、積算通電時間が寿命時間X(年)に達したときに、燃焼バーナ30aも総使用時間に達すると予測することができる。そして、予測された総使用時間X(年)から現在の積算通電時間t2を減算することにより、燃焼バーナ30aの余寿命を求めることができる。
【0109】
図6の例では、積算通電時間がt2を超えると、使用率はラインL1から外れて変化している。具体的には、積算通電時間がt3,t4,t5となる時点では、ラインL1上の使用率(想定値)に比べて、実際の使用率が低下している。図6中のラインL2は、積算通電時間がt3~t5のときの使用率に基づいた使用率の時間推移を示す。ラインL2は、積算通電時間がt5を超えても、積算通電時間がt3~t5のときと同様のペースで燃焼バーナ30aを使用し続けた場合を想定したときの使用率の時間推移を示している。
【0110】
ラインL2は、ラインL1に比べて傾きが小さくなっている。ラインL2によると、積算通電時間が寿命時間X(年)よりも長い時間Z(Z>X)において使用率が100%に達している。これによると、積算通電時間がt5となる時点では、積算通電時間が時間Zに達したときに、燃焼バーナ30aが総使用時間に達すると予測することができる。予測された総使用時間Zから現在の積算通電時間t3を減算することにより、余寿命を求めることができる。
【0111】
一方、積算通電時間がt7となる時点では、ラインL1上の使用率(想定値)に比べて、実際の使用率が増加している。図6中のラインL3は、積算通電時間がt5~t7のときの使用率に基づいた使用率の時間推移を示す。ラインL3は、積算通電時間がt7を超えても、積算通電時間がt5~t7のときと同様のペースで燃焼バーナ30aを使用し続けた場合を想定したときの使用率の時間推移を示している。
【0112】
ラインL3は、ラインL1に比べて傾きが大きい。ラインL3によると、積算通電時間が寿命時間X(年)よりも短い時間Y(Y<X)にて使用率が100%に達している。よって、積算通算時間がt7となる時点では、積算通電時間が時間Yに達したときに、燃焼バーナ30aが総使用時間に達すると予測することができる。そして、この予測された総使用時間Yから現在の積算通電時間t7を減算することにより、燃焼バーナ30aの余寿命を求めることができる。
【0113】
予測部506は、算出された各機器の余寿命を示すデータを記憶部508に保存するとともに、表示部510に表示する。表示部510は、図6に示した使用率の時間推移を示すグラフとともに、余寿命の算出結果を表示することができる。
【0114】
以上説明したように、給湯装置110を構成する各機器について、寿命に至るまでの総使用時間に対する積算使用時間の割合である使用率を算出し、算出した使用率の時間推移を求めることにより、各機器の余寿命を予測することができる。
【0115】
また、各機器の余寿命は、予め想定される使用率の時間推移(図6のラインL1)と、実際の使用率の時間推移のライン(図6のラインL2,L3)との比較に基づいて予測することができるため、故障実績を示す実績データの蓄積を必要とせず、簡便な手法で余寿命を予測することができる。
【0116】
さらに、上述した予測方法によれば、給湯装置110を構成する各機器について、寿命の到来を知らせるエラーが発報される時期を予測することができる。
【0117】
具体的には、図2の給湯装置110において、COセンサ16として接触燃焼式センサが用いられている場合には、その表面に排ガス中に含まれる汚染物質や水分が付着すると、センサ出力に誤差を生じさせる可能性がある。そのため、COセンサ16の検出精度を確保するために、コントローラ140は、COセンサ16の積算通電時間が所定時間に至ったと想定されると、リモコン12を用いて、COセンサ16の寿命の到来を報知するためのエラーを発報するように構成されている。
【0118】
また、ドレン処理回路104では、中和器327内に充填された中和剤がドレンの中和によって消費されるため、コントローラ140は、中和剤の消費量が所定量以下に至ったと想定されると、リモコン12を用いて、中和器327の寿命の到来を報知するためのエラーを発報するように構成されている。
【0119】
本実施の形態に係る診断装置2は、診断対象の給湯装置110から取得されるCOセンサ16および中和器327の使用実績を示すデータに基づいて、上記エラーが発報される時期を予測することができる。
【0120】
具体的には、予測部506は、COセンサ16について、図6に示したような、給湯装置110の積算通電時間に対するCOセンサ16の使用率の推移を示すデータを生成する。COセンサ16の使用率は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間X(年)に達するまでのCOセンサ16の総通電時間に対するCOセンサ16の積算通電時間の割合を示している。COセンサ16の総通電時間は、COセンサ16の寿命時間に相当する。
【0121】
予測部506は、演算部504からCOセンサ16の使用率を示すデータを取得すると、直近の所定時間における使用率の時間推移を示すラインを求める。そして、予測部506は、このライン上で使用率が100%となるポイントに基づいて、COセンサ16の積算通電時間が総通電時間に達するときの積算通電時間を予測する。予測部506は、予測された積算通電時間に到達する時期を、COセンサ16の寿命の到来を報知するエラーが発報される時期とみなす。さらに予測部506は、予測された積算通電時間から現在の積算通電時間を減算することにより、エラーが発報される時期までの残り時間を求める。
【0122】
予測部506は、中和器327についても、給湯装置110の積算通電時間に対する中和器327の使用率の推移を示すデータを生成する。中和器327の使用率は、給湯装置110の積算通電時間が寿命時間X(年)に達するまでの中和器327の総使用時間に対する中和器327の積算使用時間の割合を示している。
【0123】
予測部506は、情報取得部502から中和器327の使用率を示すデータを取得すると、直近の所定時間における使用率の時間推移を示すラインを求める。そして、予測部506は、このライン上で使用率が100%となるポイントに基づいて、中和器327の積算使用時間が総使用時間に達するときの積算通電時間を予測する。予測部506は、予測された積算通電時間を、中和器327の寿命の到来を報知するエラーが発報される時期とみなす。さらに予測部506は、予測された積算通電時間から現在の積算通電時間を減算することにより、エラーが発報される時期までの残り時間を求める。
【0124】
予測部506は、予測されたエラーの発報時期、およびエラー発報時期までの残り時間を示すデータを記憶部508に保存するとともに、表示部510に表示する。表示部510は、各機器の使用率の推移を示すグラフとともに、残り時間の算出結果を表示することができる。
【0125】
図7は、表示部510に表示される予測結果表示画面の一例を模式的に示す図である。
【0126】
図7に示すように、予測結果表示画面は、診断対象の給湯装置110の識別情報(例えば、製品名(型番)、製品番号など)を示すデータd1、および給湯装置110の積算通電時間を示すデータd2に加えて、各機器の余寿命の予測結果を示すデータd11~d14を含む。データd11~d14は、給湯回路101、追焚回路102、暖房回路103およびドレン処理回路104の各々に含まれる燃焼部(燃焼バーナ、熱交換器など)およびポンプの余寿命を示すデータを含む。
【0127】
予測結果表示画面はさらに、COセンサ16のエラー発報時期までの残り時間を示すデータd15と、中和器327のエラー発報時期までの残り時間を示すデータを含む。
【0128】
従来の給湯装置には、積算通電時間が予め想定される寿命時間に到達すると、寿命の到来を報知するためのエラーを発報するように構成されたものがある。この種の給湯装置は、さらに、上述したように、特定の機器(COセンサ、中和器など)について、寿命の到来を知らせるエラーを発報するように構成されている。給湯装置からエラーが発報されると、作業員がユーザ宅を訪問して給湯装置を点検し、必要に応じて部品の修理や交換作業を行う。
【0129】
上記給湯装置によると、エラーが発報されるたびに作業員がユーザ宅を訪問することになるため、ユーザの費用負担が増えるとともに、作業員の作業負担も増えることが懸念される。本実施の形態によれば、給湯装置を構成する各機器の使用実績に基づいた使用率から予測された、機器の余寿命およびエラー発報時期までの残り時間が表示されるため、作業員は、給湯装置の点検時期を事前にユーザに知らせることができる。また、作業員は、表示された情報に基づいて、点検時期をスケジューリングすることができるため、作業の効率化およびユーザの負担軽減を図ることができる。
【0130】
[その他の構成例]
(1)余寿命の予測方法の変形例
予測部506は、上述した機器の使用率の時間推移に基づいた余寿命の予測方法に代えて、機器の使用傾向を考慮して、機器の余寿命を予測することも可能である。以下に、給湯装置110の使用傾向を考慮して、各機器の余寿命を予想する方法を説明する。
【0131】
図8は、診断対象の給湯装置110における給湯回路101の使用傾向を模式的を示すグラフである。図8のグラフは、給湯装置110の積算通電時間が1年となる時点での、給湯回路101における燃焼バーナ30aの出力号数のヒストグラムである。出力号数は1回の燃焼における、燃焼バーナ30aの要求発生熱量P*に相当する。図8の横軸は出力号数を示し、縦軸は各出力号数の使用頻度を示す。
【0132】
ここで、給湯装置110の耐久性試験によって、燃焼バーナ30aの出力号数を24号として、燃焼バーナ30aを10万回燃焼させたときに、給湯回路101が寿命に至るという試験データが得られているものとする。
【0133】
以下の説明では、給湯回路101の使用実績を示す指標として、出力号数、使用頻度および燃焼回数の積(=出力号数×使用頻度×燃焼回数)を用いる。これによると、給湯回路101の寿命は、24号×1(100%)×10万回=2,400,000で表すことができる。
【0134】
図8の例では、積算通電時間が1年となる時点での燃焼バーナ30aの燃焼回数が1万回であったとする。そして、この燃焼回数のうち、出力号数が10号のときの使用頻度が10%、出力号数が16号のときの使用頻度が15%、出力号数が20号のときの使用頻度が30%、出力号数が24号のときの使用頻度が45%であったとする。
【0135】
この場合、現時点での給湯回路101の使用実績は、各号数での使用実績の合計値となり、{10号×0.1(10%)+16号×0.15(15%)+20号×0.3(30%)+24号×0.45(45%)}×1万回=190,000となる。
【0136】
したがって、図7に示される使用傾向(ヒストグラム)に従って給湯装置110を使用し続けることを想定した場合には、給湯回路101の寿命時間は、2,400,000/190,000=12.6年と予測することができる。
【0137】
(2)メッセージ表示機能
図2に示す給湯装置110において、送風ファン40a,40bならびに、追焚循環ポンプ、暖房循環ポンプおよびドレン排出ポンプなどのポンプ類は、劣化の進行に伴って振動や異音を発生する場合がある。給湯装置110は振動および異音を検知するためのセンサを有していないため、振動および異音の発生の有無を診断することができない。そのため、診断装置2は、給湯装置110の積算通電時間と寿命時間X(年)との差が所定値以下になると、振動および異音の発生の有無に関して、ユーザに対するヒアリングを促すメッセージを表示部510に表示するように構成する。これによると、現場作業員は、点検の際に送風ファンおよびポンプ類の修理を併せて行うことができる。
【0138】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0139】
1 給湯システム、2 診断装置、16 COセンサ、101 給湯回路、102 追焚回路、103 暖房回路、104 ドレン処理回路、110 給湯装置、140 コントローラ、310 暖房循環ポンプ、327 中和器、400 追焚循環ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8