(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099534
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/47 20060101AFI20220628BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20220628BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A61F13/47 300
A61F13/511 100
A61F13/533 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213341
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱野 椋子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA13
3B200CA11
3B200DB01
3B200DB05
3B200DC04
(57)【要約】
【課題】圧搾溝の熱融着した周辺でも吸収体に向けて体液を円滑に拡散させつつ、体液漏れ、特にお尻周りの体液の漏れが防止された吸収性物品の提供。
【解決手段】液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート30と、これらの間に配置された吸収体20と、を備える吸収性物品50であって、吸収性物品50を着用するときに、吸収性物品を50着用者の肌に沿うように変形させる、吸収性物品50の長手方向に延びて幅方向に対向する一対のエンボス80を有し、各エンボス80は、トップシート10の肌側面から吸収体20の内部に達する圧搾溝部80と、圧搾溝部80が形成されていない非圧搾溝部81と、を含む、吸収性物品50。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収性物品を着用するときに、前記吸収性物品を着用者の肌に沿うように変形させる、前記吸収性物品の長手方向に延びて幅方向に対向する一対のエンボスを有し、
前記各エンボスは、
前記トップシートの肌側面から前記吸収体の内部に達する圧搾溝部と、
前記圧搾溝部が形成されていない非圧搾溝部と、を含む、吸収性物品。
【請求項2】
前記圧搾溝部と前記非圧搾溝部とが交互に形成されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記圧搾溝部を構成する凹溝の長さは3mm以上30mm以下であり、前記非圧搾溝部の長さは3mm以上30mm以下であり、前記エンボスの全長に対する前記圧搾溝部の合計長さの割合は3%以上20%以下である、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性物品を、長手方向において、着用者の主に腹部に当接する前部と、前記前部に連設され前記着用者の主に股間部に当接する中央部と、前記中央部に連設され前記着用者の主に背部に当接する後部と、に区分したときに、前記中央部は前記吸収性物品の長手方向の一端から前記吸収性物品の長手方向寸法の15%以上70%以下の領域であり、前記一対のエンボスが前記中央部に配置され、長手方向に沿って幅方向内側に湾曲するように設けられ、及び/又は、長手方向に沿って直線状に設けられている、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品は、一般に、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含むフラッフ吸収体と、を備え、トップシートを透過してきた尿等の体液をフラッフ吸収体で吸収及び保持するように構成されている。吸収性物品には、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド、生理用ナプキン、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等、用途に応じて様々な形態が存在し、成人及び乳幼児を問わず広く汎用されている。
【0003】
従来の吸収性物品では、吸収性物品の長手方向に延び、かつトップシートの表面から吸収体の内部に向けて凹む圧搾溝(凹溝)を主体とするエンボスが設けられている。このようなエンボスは、例えば、吸収性物品を着用するときに、その長手方向の中央部が幅方向の両側から着用者の両足に挟まれることで、吸収性物品を長手方向に沿って着用者の肌に接触しやすくしたり、また、排泄された体液が圧搾溝(凹溝)部分に流入する事で、長手方向への体液の拡散性を向上させたりする。このような有用性を有するエンボス(圧搾溝又は凹溝)を備える吸収性物品について、種々の提案がなされている。
【0004】
特許文献1には、トップシートと、バックシートと、これらの間に位置する吸収体と、吸収体とトップシートとが厚さ方向に重複する領域において、トップシートから吸収体に向って厚さ方向に窪み、長手方向に沿って長手方向の中央部を通るように延設され、幅方向に間隔を空けて並んだ一対のエンボス(圧搾溝)と、吸収体とトップシートとが厚さ方向に重複しない領域において、長手方向の中央部における幅方向の両端部に位置し、長手方向に伸縮可能な一対のサイドフラップと、を備え、長手方向の中心での一対のエンボス間の幅方向長さの1/2よりも、吸収体の一方の端縁から当該端縁に対向するサイドフラップ外側端縁までの距離が長い、吸収性物品が開示されている。特許文献1によれば、前述の構成により、体液を長手方向に拡散させて吸収性能を高めつつ、着用者の体勢等に関係なく、体液の幅方向の漏れを抑制することが可能になると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のようなエンボスを有する従来の吸収性物品において、エンボスの主体となる圧搾溝は、トップシートや、トップシートと吸収体との間に介在することのあるセカンドシートを突き抜けて吸収体の内部に達するように熱エンボス法等で加工されていることから、圧搾溝の周辺では、トップシートやセカンドシートが熱融着した状態になっている。このような熱融着部分では、体液を吸収体側へ移動させにくいという課題がある。また、圧搾溝は吸収体の内部まで圧搾されているため、結果として、仰向けに横たわっている時や座っている時等に体液が圧搾溝に沿って長手方向に、特にお尻の方へ漏れやすくなるという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、圧搾溝の熱融着した周辺でも吸収体に向けて体液を円滑に拡散させつつ、体液漏れ特にお尻周りの体液の漏れが防止された吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、吸収性物品にその長手方向に延びる一対のエンボスを設け、このエンボスを、圧搾溝が形成された圧搾溝部と、圧搾溝が形成されていない非圧搾溝部とで構成することにより、所望の吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記の吸収性物品に係る。
【0009】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収性物品を着用するときに、前記吸収性物品を着用者の肌に沿うように変形させる、前記吸収性物品の長手方向に延びて幅方向に対向する一対のエンボスを有し、
前記各エンボスは、
前記トップシートの肌側面から前記吸収体の内部に達する圧搾溝部と、
前記圧搾溝部が形成されていない非圧搾溝部と、を含む、吸収性物品。
(2)前記圧搾溝部と前記非圧搾溝部とが交互に形成されている、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記圧搾溝部を構成する凹溝の長さは3mm以上30mm以下であり、前記非圧搾溝部の長さは3mm以上30mm以下であり、前記エンボスの全長に対する前記圧搾溝部の合計長さの割合は3%以上20%以下である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記吸収性物品を、長手方向において、着用者の主に腹部に当接する前部と、前記前部に連設され前記着用者の主に股間部に当接する中央部と、前記中央部に連設され前記着用者の主に背部に当接する後部と、に区分したときに、前記中央部は前記吸収性物品の長手方向の一端から前記吸収性物品の長手方向寸法の15%以上70%以下の領域であり、前記一対のエンボスが前記中央部に配置され、長手方向に沿って幅方向内側に湾曲するように設けられ、及び/又は、長手方向に沿って直線状に設けられている、上記(1)乃至(3)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧搾溝の熱融着した周辺でも吸収体に向けて体液を円滑に拡散させつつ、体液漏れ、特にお尻周りの体液の漏れが防止された吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示すX
1-X
1切断線における幅方向の模式断面図である。
【
図3】実施例におけるエンボス又は圧搾溝の配置を示す模式平面図である。(a)(b)2種類の配置がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長さ方向とは吸収性物品を身体に装着したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長さ方向に対して直交する、図中Xで示す方向であり、厚さ方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。肌側面とは、吸収性物品を着用したときに、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0013】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る吸収性物品50について説明する。
図1及び
図2は、吸収性物品50を示す。これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0014】
本実施形態の吸収性物品50は、ベビー用及び成人用の種々の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド、生理用ナプキン等のパッド製品、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長手方向の寸法、及び幅方向の寸法はいずれも特に限定されないが、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整すると、種々の形態の吸収性物品が容易に得られる。
【0015】
図1及び
図2に示す吸収性物品50は、肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向配置され、非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置された吸収体20と、トップシート10と吸収体20との間に配置されたセカンドシート60と、吸収体20を包むキャリアシート70と、トップシート10の肌側面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。さらに、トップシート10の肌側面には、吸収性物品50の長手方向に延びて幅方向に対向する、一対のエンボス80が設けられ、エンボス80は、トップシート10及びセカンドシート60を厚さ方向に突き抜けてその底面が吸収体20の内部に達する凹溝である圧搾溝部81と、圧搾処理が施されていない非圧搾溝部82とを含み、圧搾溝部81と非圧搾溝部82とが交互に形成されている。
【0016】
本実施形態によれば、吸収性物品50(又はトップシート10)の肌側面を長手方向に延びて幅方向に対向するように形成された一対のエンボス80を、圧搾処理が施されて凹溝になった圧搾溝部81と圧搾処理が施されていない非圧搾溝部(非凹溝部分)82とで構成することにより、エンボス80全体が圧搾溝部81であるときとは異なり、体液が吸収体20に向けて円滑に流れ、体液の長手方向への過度な拡散を防ぐとともに、エンボス80の一部が非圧搾溝部82であることにより、体液が幅方向外側にも適度に拡散することで、お尻側への伝い漏れを抑制することができる。なお、非圧搾溝部82により生じる体液の幅方向外側への拡散は、立体ギャザー40の配設等により、それ以上の幅方向への拡散を十分防止できるものである。
また、圧搾溝部81をエンボス80の一部に設けることにより、吸収性物品50と着用者の排尿口との密着性、フィット性を向上させ、吸収体20のヨレを予防することができ、結果として体液漏れを一層防止することができる。
【0017】
なお、本実施形態の吸収性物品50は、トップシート10、吸収体20、及びバックシート30を基本構成単位とし、その肌側面に一対のエンボス80を設けたものであるが、例えば、前述のような立体ギャザー40の配設、トップシート10と吸収体20との間へのトランスファシート(不図示)やセカンドシート60の配設、吸収体20をキャリアシート70で包む等の、公知の様々な改変を加えることができる。以下、本実施形態の吸収性物品50の構成部材について、トップシート10、セカンドシート60、吸収体20、キャリアシート70、エンボス80、バックシート30、及び立体ギャザー40の順で更に詳しく説明する。
【0018】
<トップシート>
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状基材である。トップシート10は、着用者の肌に当接する場合があることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも不織布が好ましく、トップシート10の肌側面にエンボス80を安定的に形成する観点から、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等がより好ましい。
【0019】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m2以上40g/m2以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20へと誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0020】
<セカンドシート>
セカンドシート60は、トップシート10の非肌側、より詳しくはトップシート10と吸収体20との間に配置される。セカンドシート60を配置することで、クッション性が増し、フィット性と着用感が向上するとともに、トップシート10を透過してきた体液を吸収体20全体にほぼ均一に拡散させることができる。
【0021】
セカンドシート60の基材は、例えば、体液の透過速度がトップシート10より速く、体液を吸収体20へ素早く拡散する嵩高な不織布である。該不織布としてはエアスルー不織布、スパンボンド不織布等が好ましい。セカンドシート60の厚さは例えば0.1mm以上4mm以下の範囲であり、その坪量は例えば20g/m2以上60g/m2以下の範囲、又は22g/m2以上37g/m2以下の範囲である。厚さが0.1mm未満、又は、坪量が20g/m2未満もしくは60g/m2より大きいと、吸収体20の肌側面全体に体液が十分に拡散しないとともに、吸収性物品50の着用感が低下する傾向がある。また、セカンドシート60の形状は、特に制限はないが、好ましい実施形態では、吸収体20の表面を完全に覆うことができる形状である。
【0022】
<吸収体>
吸収体20は、その長手方向の寸法(最大長さ)が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収体20の幅方向の寸法(最大幅)は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は70mm以上105mm以下の範囲である。また、吸収体20の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向寸法が180mm以上800mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する前部A及び後部Cの幅方向寸法がともに60mm以上400mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する中央部Bの幅方向寸法が90mm以上250mm以下の範囲である。吸収体20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
【0023】
吸収体20としては、例えば、フラッフ吸収体が挙げられる。フラッフ吸収体は、吸収基材として、吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(以下「SAP」ともいう)とを含有する。
【0024】
(吸収性繊維)
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等の綿状解繊物等が挙げられる。吸収体20に吸収性繊維としてフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、例えば100g/m2以上800g/m2以下の範囲又は325g/m2以上615g/m2以下の範囲である。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収できる。
【0025】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0026】
高吸収性ポリマーは、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマーの使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマーを用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収体20が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマーの中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0027】
吸収体20中のSAPの坪量は、例えば、60g/m2以上450g/m2以下の範囲、又は245g/m2以上445g/m2以下の範囲である。SAPの坪量を前述の数値範囲内とすることで、吸収体20でのゲルブロッキングを防止し、かつ、吸収体20に多量の体液を吸収させることができる。また、吸収体20において、吸収体20全体の重量に対する、高吸収性ポリマーの重量の比率である、(高吸収性ポリマーの重量/吸収体20全体の重量)×100(%)は、例えば、15重量%以上の範囲、又は15重量%以上70重量%以下の範囲である。
【0028】
フラッフ吸収体型の吸収体20において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートでもよい。
【0029】
<キャリアシート>
キャリアシート70は親水性シートであり、吸収体20を全体的に又は部分的に包む。例えば、キャリアシート70の幅方向中央部に吸収体20を載置し、必要に応じてキャリアシート70と吸収体20とをホットメルト接着剤等で接着した後、キャリアシート70の幅方向両端部を吸収体20の肌側で重ね合わせて必要に応じてホットメルト接着剤等で接着することにより、キャリアシート70でC折りした吸収体20が得られる。キャリアシート70としては、この分野で常用される親水性シートをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。また、キャリアシート70の厚さは例えば0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は例えば5g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0030】
<エンボス>
エンボス80は、例えば、吸収性物品50を着用するときに、吸収性物品50を着用者の身体表面に沿うように変形させて、着用感を良好なものとし、体液の漏れを防止するように機能する。
図1に示すように、着用者が吸収性物品50を着用するとき、吸収性物品50は、その長手方向に沿って、着用者の主に腹部に当接する前部Aと、前部Aに連設され、着用者の主に股間部に当接する中央部Bと、中央部Bに連設され、着用者の主に背部に当接する後部Cとに区分してもよい。ここで、中央部Bは、例えば、吸収性物品50の前部Aの長手方向一端から、吸収性物品50の全長(長手方向寸法)の15%以上70%以下までの長手方向領域である。
【0031】
本実施形態の一対のエンボス80は、一対の立体ギャザー40の幅方向内側において、吸収性物品50の中央部Bの長手方向一端部から他端部まで曲線状に延び、幅方向内側に向けて凸状に対向している。エンボス80は、本実施形態の曲線状形態に限定されず、長手方向に略直線状に延びるむ直線状形態でもよい。各エンボス80は、圧搾処理により形成された、吸収性物品20の厚さ方向にトップシート10及びセカンドシート20を突き抜けてその底面が吸収体20の内部に達する凹溝である圧搾溝部81と、圧搾処理が施されておらず、前述の凹溝を有していない非圧搾溝部82とを含んで構成されている。圧搾溝部81は、例えば、ヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を利用して、トップシート10の肌側面に形成することができる。本実施形態のエンボス80は、長さが相対的に長い線状の圧搾溝部81と、長さが相対的に短い線状の非圧搾溝部82とが交互に配列されている。相対的に長い圧搾溝部81を線部分とし、相対的に短い非圧搾溝部82を点部分とすると、本実施形態は点線配列ということができる。
【0032】
また、圧搾溝部81を相対的に短い点部分とし、非圧搾部分82を相対的に長い線部分とした点線配列、圧搾溝部81及び非圧搾溝部82を同じ長さにした点線配列等でもよい。本実施形態の点線配列に限定されず、例えば、2つの異なる長さを有する圧搾溝部81(長い方が線部分で、短い方が点部分)と、その中間の長さを有する非圧搾溝部82(線部分又は点部分)とを用いるか又は2つの異なる長さを有する非圧搾溝部82(長い方が線部分で、短い方が点部分)と、その中間の長さを有する圧搾溝部81(線部分又は点部分)とを用い、一点鎖線配列、二点鎖線配列等でもよい。
【0033】
圧搾溝部81による体液の長手方向への拡散性、非圧搾溝部82による体液の幅方向への拡散性等の観点から、圧搾溝部81を構成する凹溝の長さは、例えば、3mm以上30mm以下の範囲であり、非圧搾溝部82の長さは、例えば、3mm以上30mm以下である。また、エンボス80の全長に対する圧搾溝部81の合計長さの割合は、例えば、3%以上20%以下の範囲である。この範囲であれば、体液の長手方向への拡散性と、幅方向への拡散性とがバランス良く維持され、仰向けに横たわっている時や座っている時等にお尻周りの体液漏れが十分に防止され、さらに横漏れ等も防止される。3%未満では、体液の長手方向への拡散性が不十分になり、体液を複数回吸収するときに吸収速度や吸収量等の吸収性能が低下する傾向があり、20%を超えると、体液の長手方向への拡散性が高まりすぎ、お尻周りの体液漏れが起こりやすくなる傾向がある。
【0034】
圧搾溝部81を構成する凹溝の幅寸法は、例えば、0.5mm以上15mmの範囲、3mm以上13mm以下の範囲、又は5mm以上12mm以下の範囲である。幅寸法が0.5mm未満では、体液の長手方向への拡散性が低下する傾向があり、15mmを超えると、体液が長手方向に拡散しすぎる傾向があり、さらに吸収性物品50の剛性が低下し、着用者の身体へのフィット性及び着用感が低下するとともに、体液の吸収及び保持性能も低下する傾向がある。圧搾溝部81を構成する凹溝の厚さ(深さ)は、例えば、吸収性物品50の全体厚さの20%以上50%以下の範囲である。これらの範囲とすれば、吸収性物品50の製造の最終工程で吸収性物品50を折り畳んでコンパクト折りをするときの折り易さと、展開するときの不要な折り癖や折りしわの発生の低減化とを両立できる。
【0035】
<バックシート>
バックシート30は、吸収体20が保持する体液が着用者の衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0036】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m2以上60g/m2以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0037】
<立体ギャザー>
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の着用者が排泄した体液の横漏れ等を防止するために、吸収性物品50の幅方向両端付近で吸収性物品50の長手方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0038】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収体20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0039】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの坪量は、例えば、13g/m2以上20g/m2以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0040】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、トップシート10とセカンドシート60と吸収体20とをこの順に重ね合わせた状態で、トップシート10の肌側面から吸収体20内部までに及ぶ、圧搾溝部81である凹溝を形成する工程と、吸収体20の非肌側面にバックシート30を重ね合わせ、トップシート10の縁辺とバックシート30の縁辺とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を利用して固定する工程と、立体ギャザー40をバックシート30及びトップシート10の所定位置に設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。吸収性物品50には、必要に応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等が適宜設けられる。こうして得られた吸収性物品50を折り畳んで製品化される。
【0041】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0042】
以下に実施例を挙げ、本実施形態を更に具体的に説明する。
【0043】
(実施例1~6及び比較例1~6)
(吸収性物品の作製)
吸収体として、吸収性繊維としてのフラッフパルプ7gとSAP6gとを混合して形成した長手方向寸法270mm、幅方向寸法105mmのフラッフ吸収体を用い、液透過性のトップシートとしてエアスルー不織布(坪量25g/m
2)を用い,液不透過性のバックシートとして通気性ポリエチレンシート(坪量32g/m
2)を用い、セカンドシートとしてエアスルー不織布(坪量30g/m
2)を用い、立体ギャザーとしてスパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布(坪量15g/m
2)を用い、吸収体を木材パルプよりなるキャリアシート(坪量16g/m
2)で包み、トップシート、バックシート、吸収体を一体化する際に、ホットメルト接着剤を用いてトップシートと吸収体上面とを接合し、トップシートの肌側面には
図3(a)又は(b)に示す配置(
図3(a)では符号83Aで示す配置、
図3(b)では符号83Bで示す配置、圧搾溝部及び非圧搾溝部の各長手方向長さは表1に示す)でエンボスを形成し、長手方向寸法245mm、幅方向寸法90mmである、
図1及び
図2に示す構成を有する実施例1~6及び比較例1~6の吸収性物品を作製した。
【0044】
[評価]
実施例1~6及び比較例1~6の各吸収性物品について、次の評価を実施した。結果を表1に併記する。
(面方向の体液拡散性)
吸収性物品のトップシートを上に向けた状態で、生理食塩水120mlを吸収体の長手方向及び幅方向中心部に向かって注水し、吸収部位から製品幅方向に生理食塩水が5cm広がるまでの時間(秒)測定した。
(立体状態での体液拡散性)
直径18cmの調理用ボウルに外側面に吸収性物品を取り付け、トップシートを上に向けた状態で、生理食塩水120mlを吸収体の長手方向及び幅方向中心部に向かって注水し、注水部から幅方向に5cm広がるまでの時間(秒)を測定した。
(製品後ろ方向からの伝い漏れのしにくさ)
吸収性物品を20名のモニターに着用してもらい、製品後ろ方向からの漏れにくさについて、官能評価を行った。官能評価については、いずれの評価も、「伝い漏れしなかった」と「伝い漏れした」の二択で調査を行い、以下の基準により評価した。
○:「伝い漏れしなかった」が15人以上20人以下のとき
×:「伝い漏れしなかった」がいないか、1人以上14人以下のとき
(製品幅方向からの伝い漏れのしにくさ)
吸収性物品を20名のモニターに着用してもらい、製品幅方向からの漏れにくさについて、官能評価を行った。官能評価については、いずれの評価も、「伝い漏れしなかった」と「伝い漏れした」の二択で調査を行い、以下の基準により評価した。
○:「伝い漏れしなかった」が15人以上20人以下のとき
×:「伝い漏れしなかった」がいないか、1人以上14人以下のとき
(吸収体のよれにくさ)
吸収性物品を20名のモニターに着用してもらい、吸収体のよれにくさについて、官能評価を行った。官能評価については、いずれの評価も、「よい」と「悪い」の二択で調査を行い、以下の基準により評価した。
○:「よい」が12人以上20人以下のとき
△:「よい」が5人以上11人以下のとき
×:「よい」がいないか、1人以上4人以下のとき
(身体とのフィット性)
吸収性物品を20名のモニターに着用してもらい、着用時のフィット性について、官能評価を行った。官能評価については、いずれの評価も、「よい」と「悪い」の二択で調査を行い、以下の基準により評価した。
○:「よい」が12人以上20人以下のとき
△:「よい」が5人以上11人以下のとき
×:「よい」がいないか、1人以上4人以下のとき
【0045】
【0046】
表1の結果から、長手方向に適度な非圧搾溝部を設けた実施例1~6は、面方向及び立体状態での体液拡散性に優れ、製品後ろ方向及び幅方向伝い漏れしにくく、フィット性がよく、吸収体もよれにくいということが分かった。
一方、非圧搾溝部が設けられていない比較例1は、面方向及び立体状態での拡散性に劣るものであり、圧搾溝部を設けない比較例2と、非圧搾溝部の長さが長い比較例3、4は、フィット性が悪く着用中に吸収体がよれやすい。また、長手方向圧搾溝の他に、製品幅方向にも一対の圧搾溝を設けた比較例5、6は、製品幅方向からの伝い漏れが発生しやすいうえに、幅方向に対する剛性が高まるためフィット性がよくない。
よって、本実施形態によれば、排尿等により体液を受液した際、立体ギャザー等で吸収可能な量の体液を幅方向外側に素早く拡散させ、お尻側への伝い漏れを抑制し、且つ、身体にフィットしてよれにくい吸収性物品を提供することができる。